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特許7477092制御された環境ゾーンを有する細胞培養および組織工学システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】制御された環境ゾーンを有する細胞培養および組織工学システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240423BHJP
   C12M 1/38 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/38 Z
C12N5/00
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021537836
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 CA2019051878
(87)【国際公開番号】W WO2020132743
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】62/785,998
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520070448
【氏名又は名称】オクタン バイオテック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】OCTANE BIOTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オラム, ガイ
(72)【発明者】
【氏名】プラント, テイラー
(72)【発明者】
【氏名】グラント, イアン
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ティモシー
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/035182(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/141055(WO,A1)
【文献】特開2012-217435(JP,A)
【文献】特開2012-130297(JP,A)
【文献】特開2006-174828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための細胞培養システムであって、前記自動細胞培養カセットが、前記自動細胞培養カセット内での生体プロセスを促進するためのものであり、
自動細胞培養カセットが、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを備え、前記システムが、
前記バイオリアクタモジュールを取り囲む暖気流経路を循環させるように構成された温暖ゾーンと、
前記試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を循環させるように構成された低温ゾーンと、
外側シェルカバーおよび内側シェル本体を有する筐体であって、前記外側シェルカバーが、前記システムが閉鎖されたときに、前記内側シェル本体の前方開口部を包み込む、筐体と、
前記内側シェル本体内に位置決めされた動作ロボットインターフェースと、
前記自動細胞培養カセットを設置するための係止解除された上昇位置、および前記温暖ゾーンを前記低温ゾーンから熱分離するための係止された下降位置を有する可動熱バリアアセンブリであって、前記動作ロボットインターフェースに対して前記自動細胞培養カセットを動作的に拘束する可動熱バリアアセンブリと、を備え、
前記係止された下降位置にあるときに、前記熱バリアアセンブリが、前記温暖ゾーンの下部表面境界の一部および前記低温ゾーンの上部表面境界の一部を形成する、細胞培養システム。
【請求項2】
前記動作ロボットインターフェースが、前記自動細胞培養カセット上の対応する接続部と嵌合するための、バルブアクチュエータ、蠕動ポンプコネクタ、関連制御システムを含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項3】
前記可動熱バリアアセンブリが、関連する上部手摺部を備えた中央サーマルプラットフォームを支持する前記動作ロボットインターフェースのいずれかの側面で内部接続された、離間されたアームの対を含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記内側シェル本体が、前記自動細胞培養カセットの底面の一部を支持する前方カンチレバー状棚部を有するトレイを支持するフロア部を備える、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項5】
加熱アセンブリが、前記内側シェル本体の上部セクションに設けられ、前記加熱アセンブリが、前記バイオリアクタモジュールに誘導された暖気流経路を生成する、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記加熱アセンブリが、加熱気流誘導器に動作可能に接続された高容量リニアファンを備える、請求項5に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記高容量リニアファンおよび前記加熱気流誘導器が、一貫した均質な流れを生成する、請求項6に記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記加熱アセンブリが、前記温暖ゾーンにわたって実質的に均一な温度を維持する、請求項5に記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記内側シェル本体の後部のコールドサーマルアセンブリが、前記試薬流体リザーバを取り囲む前記低温気流経路を生成および制御する、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項10】
前記コールドサーマルアセンブリが、ホットシンクに熱を伝達するために、前記ホットシンクに対してペルチエデバイスとともに加圧された複数のコールドシンクを含むコールドシンクアレイを含む、請求項9に記載の細胞培養システム。
【請求項11】
前記バイオリアクタモジュールが、前記試薬流体リザーバに流体接続される、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項12】
前記低温ゾーンが、結露制御部をさらに含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項13】
前記低温ゾーンが、前記試薬流体リザーバに隣接して位置するコールドリザーバを含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項14】
前記コールドリザーバが、少なくとも1つのバッフルを含む、請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項15】
前記熱バリアアセンブリが、少なくとも1つのチャネルを含み、前記熱バリアアセンブリが前記係止された下降位置にあるときに、前記コールドリザーバの前記少なくとも1つのバッフルが、前記熱バリアアセンブリの前記少なくとも1つのチャネルと位置合わせされる、請求項14に記載の細胞培養システム。
【請求項16】
自動細胞培養カセット内での生体プロセスのための制御された熱環境を用意するための方法であって、前記自動細胞培養カセットが、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを備え、前記方法が、
可動熱バリアアセンブリを係止解除された上昇位置に上昇させることと、
前記自動細胞培養カセットを、外側シェルカバーおよび内側シェル本体を有する筐体内に、前記内側シェル本体内に位置決めされた動作ロボットインターフェースに対して設置することと、
前記可動熱バリアアセンブリを係止された下降位置に下降させて、前記動作ロボットインターフェースに対して前記自動細胞培養カセットを拘束し、温暖ゾーンの下部表面境界の一部および低温ゾーンの上部表面境界の一部を形成することと、
前記バイオリアクタモジュールを取り囲む暖気流経路および前記試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を循環させることと、
を含む方法。
【請求項17】
前記循環させることが、前記内側シェル本体の上部セクションの加熱アセンブリによって前記暖気流経路を循環させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱アセンブリが、加熱気流誘導器に動作可能に接続された高容量リニアファンを含み、前記循環させることにより、前記高容量リニアファンおよび前記加熱気流誘導器によって一貫した均質な流れが生成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱アセンブリによって、前記温暖ゾーンにわたって実質的に均一な温度を維持することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記内側シェル本体の後部のコールドサーマルアセンブリによって、前記試薬流体リザーバを取り囲む前記低温気流経路を生成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記コールドサーマルアセンブリが、ホットシンクに熱を伝達するために、前記ホットシンクに対してペルチエデバイスとともに加圧された複数のコールドシンクを含むコールドシンクアレイによって、前記低温気流経路を生成する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための細胞培養システムであって、前記自動細胞培養カセットが、前記自動細胞培養カセット内での生体プロセスを促進するためのものであり、
前記自動細胞培養カセットが、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを備え、前記システムが、
筐体と、
動作ロボットインターフェースと、
前記自動細胞培養カセットを設置するための係止解除された上昇位置、および温暖ゾーンを低温ゾーンから熱分離するための係止された下降位置を有する可動熱バリアアセンブリであって、前記動作ロボットインターフェースに対して前記自動細胞培養カセットを動作的に拘束する可動熱バリアアセンブリと、を備え、
前記係止された下降位置にあるときに、前記熱バリアアセンブリが、前記温暖ゾーンの下部表面境界の一部および前記低温ゾーンの上部表面境界の一部を形成する、細胞培養システム。
【請求項23】
前記温暖ゾーンが、前記バイオリアクタモジュールを取り囲む暖気流経路を循環させるように構成される、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項24】
加熱アセンブリが、前記筐体の上部セクションに設けられ、前記加熱アセンブリが、前記バイオリアクタモジュールに誘導された前記暖気流経路を生成する、請求項23に記載の細胞培養システム。
【請求項25】
前記低温ゾーンが、前記試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を循環させるように構成される、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項26】
前記動作ロボットインターフェースが、前記自動細胞培養カセット上の対応する接続部に嵌合するための、バルブアクチュエータ、蠕動ポンプコネクタ、および関連制御システムを含む、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項27】
前記可動熱バリアアセンブリが、関連する上部手摺部を備えた中央サーマルプラットフォームを支持する前記動作ロボットインターフェースのいずれかの側面で内部接続された、離間されたアームの対を含む、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項28】
加熱アセンブリが、前記バイオリアクタモジュールに誘導された暖気流経路を生成する、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項29】
コールドサーマルアセンブリが、前記試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を生成および制御する、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項30】
前記バイオリアクタモジュールが、前記試薬流体リザーバに流体接続される、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項31】
前記低温ゾーンが、結露制御部をさらに含む、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項32】
前記低温ゾーンが、前記試薬流体リザーバに隣接して位置するコールドリザーバを含む、請求項22に記載の細胞培養システム。
【請求項33】
前記コールドリザーバが、少なくとも1つのバッフルを含む、請求項32に記載の細胞培養システム。
【請求項34】
前記熱バリアアセンブリが、少なくとも1つのチャネルを含み、前記熱バリアアセンブリが前記係止された下降位置にあるときに、前記コールドリザーバの前記少なくとも1つのバッフルが、前記熱バリアアセンブリの前記少なくとも1つのチャネルと位置合わせされる、請求項33に記載の細胞培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化された細胞培養および組織工学のための組織工学システムおよび方法に関し、システムは、より一貫した生体プロセスを提供するための均一な動作環境ゾーンを含む。かかるシステムおよび方法は、様々な臨床および実験室環境で使用される。
【背景技術】
【0002】
細胞培養の自動化は、大量生産のためのスケーラビリティ、培養における変動性の減少、培養汚染のリスクの減少、ならびに臨床治療用の細胞または組織ベースのインプラントおよび診断評価用の細胞ベースのアッセイシステムの生成に関する多くの経済的なコストおよび時間枠の利点を提供するために、望ましい傾向である。
【0003】
しかしながら、より複雑な生体プロセス、例えば、自家患者治療などに使用される自動細胞培養プロトコルでは、より複雑で、より正確な操作制御が必要とされる場合がある。自家患者治療には、生体培養を成功させることが重要であるため、各動作態様は、特定のプロトコルに厳密に従う必要がある。例えば、初期培養培地は、37℃などの好適な温度で細胞培養物に供給するようにプログラムすることができるが、数日にわたり得る細胞培養プロセス全体を通してこの温度を厳密に維持することはより困難である。現在使用されている細胞インキュベーション能力を提供する多くの自動化システムは、全体的な熱均一性を実現および維持する試み、外部オペレータのアクセスによる空気温度の変化、冷蔵試薬貯蔵の維持、および潜在的な微生物汚染につながり得る筐体内の結露の発生など、熱的な課題を抱えている。
【0004】
試薬の劣化を回避するには、冷蔵貯蔵が望ましいが、冷蔵試薬貯蔵は、細胞バイオリアクタの熱性能および安定性に悪影響を及ぼし、細胞培養に必要な所望の高温を維持することがより困難になる可能性がある。さらに、プロセス試薬のための貯蔵環境の温度を冷蔵温度に低減させることで、必然的に結露が生じる。露点以下に空気を冷やすと結露を形成する。特に、周囲に比べて低温の表面上では、空気中の水蒸気が液体状に結露する。試薬を充填するためにシステムを開放した時に、温暖で湿潤な空気が貯蔵環境のより低温の表面と接触する可能性がある。この結露は、結露量によっては、貯蔵環境での取り扱い上の問題または汚染の問題が発生した場合に問題となり得る。
【0005】
また、COなどのガスが活性培養物のpHを調節するために使用されるため、ガス濃度は、生体性能に著しく影響を及ぼし得る。培養システムにおいて、供給されたCOの緩衝の役割へのアクセスが制限されている場合、培養ゾーン全体で不均一なpH制御が行われる可能性がある。したがって、細胞培養および組織工学システムにおいても、ガス濃度の均一性が必要である。
【0006】
したがって、システム内の環境制御のより高い忠実度を提供するなど、自動化された細胞培養および組織工学システムの態様を継続的に改善する必要がある。
【0007】
本明細書の背景の議論は、本明細書に記載される発明の文脈を説明するために含まれている。参照される資料のいずれかが、いずれかの請求項の優先日時点で公開、既知、または一般的な知識の一部であったことを認めるものと見なされるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、生体プロセスに対してより一貫した制御を提供するための均一な動作環境を含む、細胞培養ならびに組織工学システム、および方法が記載される。気流、温度、ガス制御、および結露制御に関する均一な動作環境が、本明細書に記載のシステムおよび方法に統合されている。
【0009】
本明細書に記載の自動化された細胞培養および組織工学システムは、細胞培養カセット、ひいては進行中の生体プロセスの適切な動作のために制御され隔離された環境ゾーンを生成、調整、および維持するように構成される。温度、湿度レベル、およびガス濃度が制御される。温度変動および湿度変動が最小限に抑えられる。
【0010】
注目すべきことに、細胞培養カセットが設置され、動作されるシステムのカセット受容領域内に、2つの別個の温度ゾーンが作りだされ、維持されている。システムの動作中、試薬流体リザーバの構成要素は、低温ゾーンに保持され、一方、カセットのバイオリアクタモジュールの構成要素は、温暖ゾーンに保持されている。温暖ゾーンには、隣接する個別の加熱アセンブリによって生成されるバイオリアクタモジュールを取り囲む、再循環する温暖高気流経路が含まれる。暖かい循環空気は、換気スロットを通してカセットの培養面にも浸透する。これはリザーバのスロットと同様の概念である。低温ゾーンには、試薬流体リザーバの一部分を取り囲み、部分的に貫通する(流れる)、循環するダクト付きの低温気流経路が含まれる。低温気流経路は、隣接するコールドサーマルアセンブリによって生成される。低温ゾーンには、低温ゾーン内の結露を制御および除去するための結露制御手段も含まれる。
【0011】
温暖ゾーンおよび低温ゾーンの両方には、それぞれ独立して制御されたガス環境がさらに含まれる。温暖ゾーンにおいて、これは、特定のガス濃度を提供するのに役立つ。ガス濃度は、流体表面のガス交換を通じて酸素および二酸化炭素などの細胞培養培地中に存在する溶存ガスに影響を与える。溶存ガスの調整および/または維持は、生体性能の観点から影響を及ぼすものであり、これには、酸素の供給および細胞培養のための標的pHの維持などの態様が含まれる。培養培地内の溶存ガスの制御は、ガス交換膜(シリコーンチューブなど)全体の培養培地の再循環を通じて実現されるため、培養流体内の溶存ガスの濃度は、流体と周囲の気体環境との間の濃度勾配に応答する。環境を調整することにより、培養流体液中の溶存ガスのレベルが同時に調整される。
【0012】
自動化された細胞培養および組織工学システムは、可動熱バリアアセンブリで構成され、可動熱バリアアセンブリは、細胞培養カセットの設置中に、システム動作インターフェース内でカセットを係止する役割を果たし、そうすることによって、温暖ゾーンおよび低温ゾーンを形成し、これらの2つのゾーンの熱的かつ物理的な分離を維持する。温暖ゾーンおよび低温ゾーンが互いに断熱され、細胞培養物または貯蔵された試薬の特性のいずれにも影響を与えないように、断熱機構が設けられる。可動熱バリアアセンブリは、温暖ゾーンおよび低温ゾーンの各々の境界の一部を作りだし画定する。
【0013】
システムの加熱アセンブリおよび冷却アセンブリ、ならびに動作ロボットは、システムのカセット受容領域とは個別に包含/位置決めされており、暖気流経路または低温気流経路およびその機能を妨げることはない点有益である。さらに、加熱アセンブリは、冷却アセンブリから分離および絶縁されるように隔離される。システムの加熱アセンブリは、必要に応じて数日間、連続的に温暖高気流経路の温度を生成および調整するように構成されており、システムの開放および検査中により低温の室温空気が入ることによって起こり得る任意の温度低下を、さらに迅速に調整することができる。バイオリアクタモジュールのみに誘導され、その周囲およびそれを通って継続的に循環する暖気流経路を提供するのに、システムの構成および形状が役立つ。コールドサーマルアセンブリは、低温ゾーン内の気流がコールドサーマルアセンブリを通して連続的に引き込まれ、空気温度が低減されるにつれて、連続的に熱を除去するように構成されている。低温ゾーンは、チャネル化した気流を有するように構成される。すなわち、低温気流経路は、気流チャネル、気流遮断器、および気流ベントを含む構造的特徴に従い、冷却された空気を、低温ゾーンを通じて試薬流体リザーバの周囲に、および部分的に通過させて送るのに役立ち、さらに、試薬流体リザーバの外部にある任意選択の隣接するコールドリザーバを通過させるのに役立つ。これらの構造的特徴は、コールドサーマルアセンブリに向かって移動する(充填された流体バッグによる)戻り空気のいかなる詰まりも防止し、最小限に抑えるのに役立つ。
【0014】
個別の温暖ゾーンおよび個別の低温ゾーンを設けることで、システムは、結露を効果的に防止、制御、および除去するための機構を有する低温ゾーン内でのみ結露にさらされるため、システム内で形成され得る結露の量および場所が最小限に抑えられる。
【0015】
本発明の態様は、自動化された細胞培養および組織工学システムを含む。システムには、細胞源単離、細胞増殖(proliferation)/増殖(expansion)、細胞分化、細胞単離、細胞標識、細胞精製、細胞洗浄、および組織形成(生成物形成)のための足場上への細胞播種のうちの1つ以上のための閉鎖型自動細胞培養カセットが含まれる。態様では、細胞は哺乳類細胞である。さらなる態様では、ヒト細胞。細胞または組織の種類は、限定されない。1つの非限定的な例では、胚性幹細胞および人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞を培養し、細胞置換療法のために増殖させてもよい。
【0016】
自動細胞培養カセットは、閉鎖型単回使用使い捨てカセットの態様にあり、これには、試薬流体リザーバに流体接続された1つ以上の滅菌バイオリアクタモジュールが含まれる。滅菌バイオリアクタには所望の細胞および/または組織が充填され、滅菌バイオリアクタは、必要な流体試薬を包含するように予め充填された試薬流体リザーバに接続される。カセットの滅菌は、全体を通じて維持されている。
【0017】
自動細胞培養カセットは、所望のプロセス(複数可)を供給および追跡するための専用のソフトウェアプログラムとともに、自動化された細胞培養および組織工学システム内で動作可能に採用される。好適で非限定的な自動化された細胞培養および組織工学システムは、米国特許第8,492,140号、同第9,701,932号、同第9,534,195号、同第9,499,780号、および同第9,783,768号に記載されている(これらの米国特許の各々の内容は、参照によりそれらの全体が組み込まれる)。
【0018】
細胞培養カセット内に埋め込まれたセンサは、リアルタイムのバイオフィードバックを提供し、細胞源の挙動の自然な変化に対応するためにバイオ処理の自動調整を可能にする。バイオプロセス全体は、使い捨てカセット内に包含されており、患者とオペレータとの安全性が最大限確保され、物流が合理化される。さらに、細胞プロセス配列内の複数の生体ステップを正常に支持するために、カセットバイオリアクタ(複数可)は、1つ以上の相互連結されたバイオリアクタ内のバイオセンサフィードバックと組み合わせて統合され、各細胞および組織段階で正確な制御を有する、非常に直感的なシステムが提供される。この包括的なレベルの自動化により、技術的に実現可能で経済的な規模の拡大、患者規模での細胞製造能力が可能となり、良好な適正製造基準(GMP)条件下での細胞療法の合理化された生産が可能となるため、細胞および組織療法の様々な自家および同種異系の臨床応用に固有の課題が解決される。
【0019】
有利には、バイオリアクタモジュールが別個の温暖ゾーン内にのみ存在し、試薬流体リザーバが別個の低温ゾーン内にのみ存在するように、細胞培養カセットが、細胞培養および組織工学システム筐体内に設置され、動作的に保持される。システムへの細胞培養カセットの設置は、可動熱バリアアセンブリの作動および係止を介して行われ、可動熱バリアアセンブリは、温度、ガス、および湿度に関して第1の熱ゾーンを第2の熱ゾーンから環境的に分離する。細胞培養カセットは、付着試薬流体リザーバを有するバイオリアクタモジュールを含む。この単一の細胞培養カセットとの組み合わせは、よりユーザフレンドリであるが、一方で、個別の環境ゾーンに位置し得る物理的に別個のバイオリアクタモジュールおよびリザーバにより基づく単純な設計と比べて、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバのための別個の異なる環境ゾーンを作るという、より多くの課題が生じる。
【0020】
本発明では、温暖ゾーンおよび低温ゾーン内の専用気流経路を設け、各ゾーンにおける均一性の歪みが排除されるように、細胞培養物(複数可)を収容するバイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバの周囲に制御された温度/ガスの分布を提供されることを保証する。
【0021】
細胞培養および組織工学システムである本発明の態様では、システムには、2つの別個の独立した熱気流と、細胞培養カセットのバイオリアクタモジュールおよびその周囲を誘導するための高速暖気流を含む第1の気流と、バイオリアクタモジュールに動作可能に接続された試薬流体リザーバの周囲およびそれを通って循環するための低温気流を含む第2の気流と、が含まれ、
当該第1の気流および当該第2の気流は、(実施形態では、これらのゾーンは互いに気密密封されておらず)実質的に隔離されており、混合することができない。
【0022】
態様では、第1の気流および当該第2の気流は、当該システムの細胞培養カセット受容領域内に包含される。
【0023】
態様では、細胞培養カセット受容領域は、システムの動作可能な、加熱アセンブリおよび冷却アセンブリから隔離されている。
【0024】
態様では、細胞培養カセット受容領域は、高速暖気流を含む温暖ゾーンを画定する。
【0025】
態様では、温暖ゾーンは、温暖ゾーン内の実質的に均一な温度を含む。
【0026】
態様では、細胞培養カセット受容領域は、低温気流を含む低温ゾーンを画定し、当該低温ゾーンは、温暖ゾーンの下に位置決めされる。
【0027】
態様では、低温ゾーンには、結露を低減または排除するための手段が含まれる。
【0028】
態様では、サーマルプラットフォームは、温暖ゾーンを低温ゾーンから分離する。態様では、サーマルプラットフォームは、シールを包含する。
【0029】
細胞培養カセットのバイオリアクタモジュール内で生体プロセスのための熱環境の制御を維持するための方法である本発明の態様では、方法は、
バイオリアクタモジュールおよびその周囲に高速暖気流を含む第1の気流を誘導することと、同時に、バイオリアクタモジュールに動作可能に接続された試薬流体リザーバの周囲の低温気流およびそれを通る低温気流を循環させることと、を含み、
当該第1の気流および当該第2の気流は、隔離されており、混合することができない。
【0030】
生体プロセスを促進するためのより一貫した制御された環境を提供するための熱ゾーンアーキテクチャを含む細胞培養および組織工学システムである本発明の態様によると、システムは、
バイオリアクタモジュールの周囲およびその周囲に誘導された高速暖気流経路を連続的に循環させながら、バイオリアクタモジュールを保持する別個の温暖ゾーン区画と、
バイオリアクタモジュールに機能的に接続された試薬流体リザーバを保持しながら、試薬流体リザーバの周囲およびそれを通って低温気流経路を連続的に循環させる、別個の低温ゾーン区画と、を含む。
【0031】
態様では、別個の低温ゾーン区画は、結露を低減または排除するための手段をさらに含む。
【0032】
態様では、温暖ゾーン区画は、低温ゾーン区画とは異なるガス環境をさらに含む。
【0033】
2つの異なる温度およびガス制御された環境で細胞培養カセットを保持する細胞培養および組織工学のための自動化システムである本発明のさらなる態様によると、カセットの生体リアクタ構成要素は、制御されたガス濃度を有する実質的に均質な暖気流ゾーンに動作可能に保持され、カセットの試薬流体リザーバ構成要素は、実質的に均質な低温気流ゾーンに存在し、暖気流ゾーンは、低温気流ゾーンから別個に隔離され、低温気流ゾーンは、低温気流ゾーンの中の望ましくない水分蓄積を防止または排除するための手段をさらに含む。
【0034】
生体プロセスのためのより一貫して制御された環境中で自動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための細胞培養および組織工学システムである本発明のさらなる態様によると、細胞培養カセットは、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを含み、システムは、
バイオリアクタモジュールを取り囲む暖気流経路を循環させるように構成された温暖ゾーンと、
試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を循環させるように構成された低温ゾーンと、
細胞培養カセットの設置時に当該温暖ゾーンを当該低温ゾーンから熱分離し、温暖ゾーン内のみにバイオリアクタモジュールを固定し、低温ゾーン内のみに試薬流体リザーバを固定するための可動熱バリアアセンブリと、を含む。
【0035】
細胞培養カセットである本発明のさらなる態様によると、細胞培養カセットは、
-底部に試薬流体リザーバが取り付けられたバイオリアクタモジュールと、
-リザーバの前壁および後壁に位置する開放空気ダクトを有する流体バッグ容器を含む試薬流体リザーバと、を含む。
【0036】
態様では、流体バッグ容器は、屋根部およびフロア部を含み、屋根部は、下向きに延在するバッフルを含む。
【0037】
態様では、カセットは、バイオリアクタモジュールの底部と流体バッグ容器の屋根部との間に位置決めされた熱絶縁層をさらに含み、当該熱絶縁層は、バイオリアクタモジュールからの熱の移動を絶縁する。
【0038】
態様では、試薬流体リザーバは、当該流体バッグ容器の屋根部上に位置決めされたポート接続部であって、当該熱絶縁層によって遮断されない、ポート接続部を介して取り付けられる。
【0039】
態様では、試薬流体リザーバは、バイオリアクタモジュールに取り付けるためのスナップタブをさらに含む。
【0040】
バイオリアクタモジュールに接続するための試薬流体リザーバである本発明のさらなる態様によると、試薬流体リザーバは、リザーバの前壁および後壁に位置する開放空気ダクトを有する流体バッグ容器を含む。
【0041】
態様では、流体バッグ容器は、屋根部およびフロア部を含み、屋根部は、下向きに延在するバッフルを含む。
【0042】
生体プロセスのためのより一貫して制御された環境中で自動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための自動化された細胞培養および組織工学システムである本発明の一態様によると、細胞培養カセットは、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを含み、システムは、
バイオリアクタモジュールを取り囲む接線状の暖気流経路を循環させるように構成された温暖ゾーンと、
試薬流体リザーバを取り囲む接線状の低温気流経路を循環させるように構成された低温ゾーンと、
細胞培養カセットの設置時に当該温暖ゾーンを当該低温ゾーンから熱分離し、温暖ゾーン内のみにバイオリアクタモジュールを固定し、低温ゾーン内のみに試薬流体リザーバを固定するための可動熱バリアアセンブリと、を含む。
【0043】
前述の態様のいずれかでは、システムおよび方法は、1つ以上のコントローラ、ならびに関連するソフトウェア、センサ、およびユーザインターフェースを含み得る。
【0044】
以下は、非限定的な態様である。
1A.細胞培養および組織工学システムであって、2つの別個の独立した熱気流と、細胞培養カセットのバイオリアクタモジュールでおよびその周囲を誘導するための高速暖気流を含む第1の気流と、バイオリアクタモジュールに動作可能に接続された試薬流体リザーバの周囲およびその周囲を循環するための低温気流を含む第2の気流と、を含み、
該第1の気流および該第2の気流が、隔離されており、混合することができない、システム。
1B.該第1の気流および該第2の気流が、該システムの細胞培養カセット受容領域内に包含される、請求項1Aに記載のシステム。
1C.該細胞培養カセット受容領域が、高速暖気流を含む温暖ゾーンを画定する、請求項1Bに記載のシステム。
1D.該温暖ゾーンが、温暖ゾーン内の実質的に均一な温度を含む、請求項1Cに記載のシステム。
1E.該細胞培養カセット受容領域が、低温気流を含む低温ゾーンを画定し、該低温ゾーンが、温暖ゾーンの下に位置決めされる、請求項1B、1Cまたは1Dに記載のシステム。
1F.該低温ゾーンが、結露を低減または排除するための手段を含む、請求項1Eに記載のシステム。
1G.サーマルプラットフォームが、温暖ゾーンを低温ゾーンから分離する、請求項1Fに記載のシステム。
1H.細胞培養カセットのバイオリアクタモジュール内で生体プロセスのための制御された熱環境を維持するための方法であって、方法が、
バイオリアクタモジュールおよびその周囲に高速暖気流を含む第1の気流を誘導することと、同時に、バイオリアクタモジュールに動作可能に接続された試薬流体リザーバの周囲の低温気流およびそれを通る低温気流を循環させることと、を含み、
該第1の気流および該第2の気流が、隔離されており、混合することができない、方法。
1J.請求項1A~1Hのいずれか一項に記載のシステムを使用する、請求項1Hに記載の方法。
2A.生体プロセスを促進するためのより一貫した制御された環境を提供するための熱ゾーンアーキテクチャを含む細胞培養および組織工学システムであって、システムが、
バイオリアクタモジュールの周囲およびその周囲に誘導された高速暖気流経路を連続的に循環させながら、バイオリアクタモジュールを保持する別個の温暖ゾーン区画と、
バイオリアクタモジュールに機能的に接続された試薬流体リザーバを保持しながら、試薬流体リザーバの周囲およびそれを通って低温気流経路を連続的に循環させる、別個の低温ゾーン区画と、を含む、システム。
2B.別個の低温ゾーン区画が、結露を低減または排除するための手段をさらに含む、請求項2Aに記載のシステム。
2C.該温暖ゾーン区画が、低温ゾーン区画とは異なるガス環境をさらに含む、請求項2Aまたは2Bに記載のシステム。
2D.バイオリアクタ内の生体プロセスのための制御された環境を維持し、安定性のためにバイオリアクタに必要な流体を冷却温度で維持するための方法であって、請求項2A~2Cのいずれか一項に記載のシステムの使用を含む、方法。
3A.2つの異なる温度およびガス制御された環境で細胞培養カセットを保持する細胞培養および組織工学のための自動化システムであって、カセットの生体リアクタ構成要素が、制御されたガス濃度を有する実質的に均質な暖気流ゾーンに動作可能に保持され、カセットの試薬流体リザーバ構成要素が、実質的に均質な低温気流ゾーンに存在し、暖気流ゾーンが、低温気流ゾーンから別個に隔離され、低温気流ゾーンが、低温気流ゾーンの中の望ましくない水分蓄積を防止または排除するための手段をさらに含む、システム。
3B.バイオリアクタ内の生体プロセスのための制御された環境を維持し、安定性のためにバイオリアクタに必要な流体を冷却温度で維持するための方法であって、請求項3Aに記載のシステムの使用を含む、方法。
1.生体プロセスのためのより一貫して制御された環境中で自動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための細胞培養および組織工学システムであって、前記細胞培養カセットが、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを含み、システムが、
バイオリアクタモジュールを取り囲む暖気流経路を循環させるように構成された温暖ゾーンと、
試薬流体リザーバを取り囲む低温気流経路を循環させるように構成された低温ゾーンと、
細胞培養カセットの設置時に当該温暖ゾーンを当該低温ゾーンから熱分離し、温暖ゾーン内のみにバイオリアクタモジュールを固定し、低温ゾーン内のみに試薬流体リザーバを固定するための可動熱バリアアセンブリと、を含む、細胞培養および組織工学システム。
2.当該低温ゾーンが、低温ゾーンの中の望ましくない水分蓄積を最小限に抑え、排除するための結露制御手段をさらに含む、請求項1に記載の細胞培養および組織工学システム。
3.当該温暖ゾーンおよび当該低温ゾーンが、各々実質的に隔離されたガス環境を含む、請求項1または2に記載の細胞培養および/または組織工学システム。
4.当該システムが、外側シェルカバーと内側シェル本体とを含む筐体を有し、外側シェルカバーは、システムが閉鎖されたときに、内側シェル本体の前方開口部を包み込むように封入する、請求項1、2、または3に記載の細胞培養および組織工学システム。
5.当該外側シェルカバーは、内側シェル本体が静止したままである間、回転のために内側シェル本体に接続され、外側シェルカバーは、内側シェル本体の外弧に沿って回転し、内側シェル本体にアクセスするために内側シェル本体の前方開口部を露出させ、外側シェルカバーが内側シェル本体を格納するときに回転を停止する、請求項5に記載の細胞培養および組織工学システム。
6.内側シェル本体の当該前方開口部が、システムが閉鎖されているときに外側シェル本体の内面と密封係合するための膨張可能な密封手段を有する周辺部を含む、請求項4または5に記載の細胞培養および組織工学システム。
7.当該周辺部が、当該膨張可能な密封手段を保持するためのU字形チャネルを含む、請求項6に記載の細胞培養および組織工学システム。
8.密封手段が、U字チャネル内に嵌合するエラストマーチューブを含み、システムが開放されたときにエラストマーチューブが実質的に平坦であり、システムを閉鎖すると密封手段が作動して、シールの変位を引き起こし、外側シェルカバーと内側シェル本体の前方開口部との間に確実なシールをもたらす膨張可能なシールのキャビティに膨張厚圧力を導入する、請求項7に記載の細胞培養および組織工学システム。
10.当該外側シェルカバーが、バイオリアクタモジュールを取り囲む循環暖気流経路を誘導するのに役立ち、試薬流体リザーバを取り囲む循環低温気流経路を誘導するのに役立つ円弧形状の本体として構成されている、請求項9に記載の細胞培養および組織工学システム。
11.当該円弧形状の本体が、外部熱バリアとして機能する複数の熱セルを含む、請求項10に記載の細胞培養および組織工学システム。
12.可動熱バリアアセンブリが、内側シェル本体の前方開口部内に位置決めされた動作ロボットインターフェース上に配置されている、請求項4~11のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
13.当該動作ロボットインターフェースが、関連する内部ロボットに接続されており、細胞培養カセット上の対応する接続と嵌合するためのバルブアクチュエータ、蠕動ポンプ、および関連制御システムを含む、請求項12に記載の細胞培養および組織工学システム。
14.当該可動熱バリアアセンブリが、
-関連する上部手摺部を備えた中央サーマルプラットフォームを支持する動作ロボットインターフェースのいずれかの側面で内部接続された、離間されたレバーアームの対を含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
15.当該可動熱バリアアセンブリが、細胞培養カセットを設置するための第1の上昇位置から、正確な位置合わせおよび保持のために動作ロボットインターフェースに対して細胞培養カセットを係止および保持し、同時に温暖ゾーンを低温ゾーンから隔離する第2の下降位置まで可動である、請求項14に記載の細胞培養および組織工学システム。
16.当該上部手摺部が、細胞培養カセットの寸法に密接に適合し、カセットを動作のために所定の位置に係止するか、またはサーマルプラットフォームを上昇させるための把持手段を提供するようにサイズ設定されている、請求項15に記載の細胞培養および組織工学システム。
17.アセンブリを開放するためのオペレータ制御アクセスを提供するために、当該レバーアームに隣接する動作ロボットインターフェース上に凹部が設けられている、請求項14、15、または16に記載の細胞培養および組織工学システム。
18.当該サーマルプラットフォームが、前方に延在し、細胞培養カセットの周囲から外側シェルカバーに放射する、請求項14~17のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
19.サーマルプラットフォームが、サーマルプラットフォームと外側シェルカバーとの間の相対運動に対応するためのその前方の外側境界の可撓性外側シールと、細胞培養カセットに直接隣接する可撓性内側シールと、を含む、請求項18に記載の細胞培養および組織工学システム。
20.可撓性内側シールが、細胞培養カセットの取り付け公差に対応する、請求項19に記載の細胞培養および組織工学システム。
21.当該可撓性外側シールおよび当該可撓性内側シールが、弾性であり、蒸気に対して不透過性である、請求項19または20に記載の細胞培養および組織工学システム。
22.当該可撓性外側シールおよび当該可撓性内側シールが、ワイパー式シールである、請求項21に記載の細胞培養および組織工学システム。
23.係止位置にあるときに、サーマルプラットフォームが、温暖ゾーンの下部表面境界の一部および低温ゾーンの上部表面境界の一部を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
24.内側シェル本体が、細胞培養カセットの底面の一部を支持する前方カンチレバー状棚部を有するトレイを支持するフロア部を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
24a.気流ダクトが、フロア部およびトレイによって画定される、請求項24に記載の細胞培養および組織工学システム。
25.加熱アセンブリが、内側シェル本体の上部セクションに設けられ、バイオリアクタモジュールに誘導された暖気を生成する、請求項4~24のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
26.加熱装置が、加熱された気流誘導器に動作可能に接続され、高速暖気流経路を生成および誘導する高容量リニアファンを含む、請求項25に記載の細胞培養および組織工学システム。
27.バイオリアクタモジュールを取り囲む高い接線状の暖気流経路が、温暖ゾーンの温度の均一性、ひいてはバイオリアクタ内の生体プロセスの均一性を促進する、請求項26に記載の細胞培養および組織工学システム。
28.バイオリアクタモジュールを取り囲む接線状の高速暖気流経路が、バイオリアクタ内部温度を約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、または約39℃で維持するのに役立つ、請求項27に記載の細胞培養および組織工学システム。
28a.ガスが、温暖ゾーンに選択的に導入される、請求項28に記載の細胞培養および組織工学システム。
28b.ガスが、酸素、二酸化炭素、および窒素のうちの1つ以上を含む、請求項28aに記載の細胞培養および組織工学システム。
28c.温暖ゾーンが、ガスを監視するために、暖気流経路内のセンサを含む、請求項28aまたは28bに記載の細胞培養および組織工学システム。
28d.センサが、ガスのフィードバック制御を提供するPID(比例積分微分)コントローラに動作可能に接続されている、請求項28cに記載の細胞培養および組織工学システム。
29.コールドサーマルアセンブリが、内側シェル本体の背面を形成し、試薬流体リザーバを取り囲む低温ゾーン気流経路を生成し、制御して、試薬安定性を向上させる、請求項4~28のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
30.当該コールドサーマルアセンブリが、ホットシンクに熱を伝達するために、ペルチエデバイスによりホットシンクに圧縮された複数のコールドシンクを含むコールドシンクアレイを含む、請求項29に記載の細胞培養および組織工学システム。
31.圧縮は、各々がコイルばねを含むばね圧縮ボルトのアレイを含むペルチエ固体デバイスを利用したばね圧縮であり、ホットシンクが、熱除去のための熱伝導経路として機能する、請求項30に記載の細胞培養および組織工学システム。
32.当該ペルチエ固体デバイスが、後続の周囲環境への熱伝達のために、コールドシンクからホットシンクに熱を送り出すように機能する、請求項31に記載の細胞培養および組織工学システム。
33.各コールドシンクアレイが、コールドシンクおよび関連する軸方向ファンを含む機能ユニットにセグメント化されている、請求項30~32のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
34.軸方向ファンが、軸方向フロー構成を有する、請求項33に記載の細胞培養および組織工学システム。
35.コールドシンクが、垂直フィン構造を含む、請求項33または34に記載の細胞培養および組織工学システム。
36.ホットシンクからコールドシンクへの熱の戻りを阻害する熱絶縁体をさらに含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
37.当該結露制御手段が、ホットシンクに接続されたダクト内に封入された水分輸送材料を含み、水分輸送材料は、形成され得る任意の結露物であって、コールドシンクを下り、それが蒸発するホットシンクまで移動する、任意の結露物を、収集し、移動させる、請求項2~36のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
38.当該結露制御手段が、水分蓄積からの望ましくない微生物汚染を最小限に抑え、排除する、請求項37に記載の細胞培養および組織工学システム。
39.コールドサーマルアセンブリは、内側シェル本体の底部からヒンジを外して、クリーニングのために開放構成で吊るすことができる、請求項29~38のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
40.コールドシンクアレイおよび関連する軸方向ファンは、クリーニングのために結合解除され得る、請求項39に記載の細胞培養および組織工学システム。
41.ホットシンクファンおよび関連するカウリングが、内側シェル本体の上部から取り外され、クリーニングのために開放構成に上昇され得る、請求項40に記載の細胞培養および組織工学システム。
42.試薬流体リザーバが、バイオリアクタモジュールの下側のポートと嵌合するための上部搭載ポート接続部を介してバイオリアクタモジュールに流体接続されている、請求項1~41のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
43.試薬流体リザーバが、バイオリアクタモジュールへの可逆的取り付けのためのスナップタブをさらに含む、請求項42に記載の細胞培養および組織工学システム。
44.試薬流体リザーバが、生体プロセスに必要な試薬を収容し、バイオリアクタモジュールから除去された排出物の保持に対応する、請求項43に記載の細胞培養および組織工学システム。
45.試薬流体リザーバが、複数の別個の試薬を貯蔵し、排出物を貯蔵するための流体バッグ容器を含む、請求項44に記載の細胞培養および組織工学システム。
46.当該複数の別個の試薬が、試薬バッグ内に貯蔵される、請求項45に記載の細胞培養および組織工学システム。
47.排出物が、試薬バッグ内に貯蔵される、請求項46に記載の細胞培養および組織工学システム。
48.当該試薬バッグが、可撓性試薬バッグである、請求項46または47に記載の細胞培養および組織工学システム。
49.試薬流体リザーバが、前壁および後壁の上部に位置する開放空気ダクトをさらに含み、その結果、開放空気ダクトが、試薬バッグの真上に低温気流を提供する当該試薬バッグの上に位置決めされる、請求項44~48のいずれか一項に記載の細胞培養および組織工学システム。
50.試薬流体リザーバが、下向きに延在するバッフルを有する屋根部をさらに含み、試薬バッグの上方および試薬バッグを横断する低温気流を誘導するのに役立つ、請求項49に記載の細胞培養および組織工学システム。
51.当該細胞培養カセットが、当該バイオリアクタモジュールと当該試薬流体リザーバとの間に位置決めされた熱絶縁層をさらに含み、当該熱絶縁層が、バイオリアクタモジュールからの熱のいかなる移動も絶縁する、請求項50に記載の細胞培養および組織工学システム。
52.細胞培養カセットであって、
-底部に試薬流体リザーバが取り付けられたバイオリアクタモジュールと、
-リザーバの前壁および後壁に位置する開放空気ダクトを有する流体バッグ容器を含む試薬流体リザーバと、を含む、細胞培養カセット。
53.流体バッグ容器が、屋根部およびフロア部を含み、屋根部が、下向きに延在するバッフルを含む、請求項52に記載の細胞培養カセット。
54.カセットが、バイオリアクタモジュールの底部と流体バッグ容器の屋根部との間に位置決めされた熱絶縁層をさらに含み、当該熱絶縁層が、バイオリアクタモジュールからの熱の移動を絶縁する、請求項52または53に記載の細胞培養カセット。
55.試薬流体リザーバが、当該流体バッグ容器の屋根部上に位置決めされたポート接続部であって、用該熱絶縁層によって遮断されない、ポート接続部を介して取り付けられる、請求項53または54に記載の細胞培養カセット。
56.試薬流体リザーバが、バイオリアクタモジュールに取り付けるためのスナップタブをさらに含む、請求項55に記載の細胞培養カセット。
57.請求項52~56のいずれか一項に記載の細胞培養カセットを含む、自動化された細胞および組織培養工学システム。
57a.カセットが、論理手段に連結された1つ以上のセンサを含む、請求項57に記載の自動化されたシステム。
58.バイオリアクタモジュールに接続するための試薬流体リザーバであって、リザーバの前壁および後壁に位置する開放空気ダクトを有する流体バッグ容器を含む、試薬流体リザーバ。
59.流体バッグ容器が、屋根部およびフロア部をさらに含み、屋根部が、下向きに延在するバッフルを含む、請求項57に記載の試薬流体リザーバ。
60.請求項58または59に記載のバイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを含む、細胞培養カセット。
61.生体プロセスのためのより一貫して制御された環境中で自動細胞培養カセットを受容し、動作的に支持するための自動化された細胞培養および組織工学システムであって、細胞培養カセットが、バイオリアクタモジュールおよび試薬流体リザーバを含み、システムが、
バイオリアクタモジュールを取り囲む接線状の暖気流経路を循環させるように構成された温暖ゾーンと、
試薬流体リザーバを取り囲む接線状の低温気流経路を循環させるように構成された低温ゾーンと、
細胞培養カセットの設置時に当該温暖ゾーンを当該低温ゾーンから熱分離し、温暖ゾーン内のみにバイオリアクタモジュールを固定し、低温ゾーン内のみに試薬流体リザーバを固定するための可動熱バリアアセンブリと、を含む、自動化された細胞培養および組織工学システム。
62.細胞培養カセットのバイオリアクタモジュール内で生体プロセスのための環境の制御を維持するための方法であって、方法が、
バイオリアクタモジュールおよびその周囲に別個の高速暖気流を作り維持することと、同時に、バイオリアクタモジュールに動作可能に接続された試薬流体リザーバの周囲およびそれを通るように別個の低温気流を作り循環させることと、を含み、
当該第1の気流および当該第2の気流が、隔離されており、混合することができない、方法。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本明細書に記載の典型的な態様の以下の説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、図面には、現在典型的な態様が示される。しかしながら、本発明は、図面に示される態様の正確な構成および器具に限定されないことを理解されたい。同様の参照番号は、図面に示され、説明で参照されるように、異なる実施形態にわたって同様の要素を指すことに留意されたい。
本明細書の説明は、以下の図面を考慮してより完全に理解されるであろう。
図1】本発明の細胞培養および組織工学システムの一実施形態の断面図を例示し、動作ロボットに係合した細胞培養カセットを示しており、熱バリアアセンブリは、係止位置にある。
図2】開放構成のシステムの断面を例示しており、熱バリアアセンブリが係止解除位置にある状態で示され、細胞培養カセットが露出されている。
図3a】細胞培養カセットの設置のための直立位置にある、熱バリアアセンブリとの動作ロボットインターフェースを示すシステムの正面図を例示する。
図3b】熱バリアアセンブリが係止位置にある、図3aのシステムの正面図を例示する。
図3c】低温ゾーンの一部を形成し、設置された試薬流体リザーバに隣接して位置する外部コールドリザーバの拡大正面図を例示し、外部コールドリザーバは、コールドシンクへの空気戻りを遮断しないようにするためのバッフルを有する。これらのバッフルは、図3bに見られる熱バリアアセンブリの下地構造と位置合わせされる。
図4】温暖ゾーン気流経路および加熱アセンブリの特徴を例示する。
図5】低温ゾーン気流経路およびコールドサーマルアセンブリの特徴を例示する。
図6】試薬流体リザーバ構造の拡大斜視図を例示する。
図7】コールドシンクアレイの拡大断面図を例示する。
図8a】コールドシンクアレイに隣接する結露制御構造の場所を例示する。
図8b】結露制御構造の拡大断面図を例示する。
図9】システムからヒンジを外したコールドサーマルアセンブリを例示する。
図10】固定されていないコールドファンを有するコールドサーマルアセンブリを例示する。
図11】システムの背面から放出されるホットシンクファンおよび関連するカウリングを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書において論じられる刊行物および出願は、本願の出願日の前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明によってかかる刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。加えて、材料、方法、および例は、例示的であるのみであり、限定することを意図するものではない。
【0047】
矛盾が生じた場合、定義を含め、本明細書が優先される。
【0048】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書の主題が属する技術分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、本発明の理解を容易にするために以下の定義が提供される。
【0049】
本明細書で使用される場合、要素または構成要素の前の冠詞「a」および「an」は、要素または構成要素のインスタンス(すなわち、出現)の数に関して非制限的であることが意図される。したがって、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むように読み取られるべきであり、数値が明らかに単数であることを意味しない限り、要素または構成要素の単数形には、複数も含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「発明」または「本発明」という用語は、非限定的な用語であり、特定の発明の任意の単一の態様を指すことを意図するものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記載される全ての可能な態様を包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、ならびにそれらの語尾変化形および共役は、「含む(including)がこれに限定されない」を示しており、オープンエンドであること、例えば、含む(including)がこれに限定されないことを意味することを理解されたい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値量の変動を指す。一態様では、「約」という用語は、報告される数値の10%以内を意味する。別の態様では、「約」という用語は、報告される数値の5%以内を意味する。さらに、別の態様では、「約」という用語は、報告される数値の10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%以内を意味する。
【0053】
本明細書に含まれるとして定義される任意の構成要素は、但し書きまたは否定的な制限により、明示的に特許請求の範囲の発明から除外され得ることが理解されよう。
【0054】
本明細書で使用され得るように、「実質的に」(またはその同義語)という用語は、文脈に関して、参照される実体の大部分(a large part)もしくは大部分(most)を包含する尺度もしくは範囲、または量もしくは程度、または参照される実体に対して、または参照される主題に関して、少なくとも中程度もしくは極めて大きいか、またはより効果的もしくはより重要な範囲を示す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「可能性がある(may)」という用語は、本発明の範囲を限定することなく、本発明のいくつかの実施形態またはその結果の少なくとも一部を構成するが、含まれるか、または含まれないか、かつ/または使用されるか、かつ/または実装されるか、かつ/または生じる選択肢もしくは効果を示す。
【0056】
本明細書および特許請求の範囲で本願で使用されるとき、「および/または」という語句は、そのように結合された要素、例えば、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」という句によって具体的に識別される要素以外の他の要素は、反対に明確に示されない限り、具体的に識別されるこれらの要素に関連するか、または関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「支持された」、「搭載された」、「取り付けられた」、「接続された」、「接合された」、「結合された」、「連結された」は、本発明の自動化デバイスの構成要素の係合に関して互換的に使用され得る。さらに、これらの用語のいずれかが、「可逆的に」という用語とともに使用され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「熱ゾーン」は、暖かいという点または低温という点で定義された一貫した温度を有する、隔離された領域であると理解されるべきである。さらに、定義された温度または定義された温度範囲を有するゾーンは、その定義された温度または定義された温度範囲内に維持され、その結果そのゾーンは、定義された温度または定義された温度範囲に対して安定、均一、不変的、または均質である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「温暖ゾーン」は、室温を上回る(すなわち、約23℃を上回る)正確な温度を有する隔離された制限領域であると理解されるべきである。一般に、哺乳類細胞の正確な温度は、約37℃である。しかしながら、特定の細胞培養物の特定のニーズに応じて、37℃より上および37℃未満の温度は、依然として正確な温度として選択され、「温暖ゾーン」として実現することができる。例えば、分化因子が存在しない場合、幹細胞は、分化が無い状態でも37℃で増殖する。逆に、37℃より上および37℃未満の温度で成長する幹細胞は、分化因子が存在しなくても分化する。さらに、所与の培養物に温度ストレスを適用するためには、異なる「温暖ゾーン」温度が必要とされ得る。「温暖ゾーン」には、高速暖気流経路が包含される。当業者は、通常の気流速度と比較して「高速」の意味を理解するであろう。「温暖ゾーン」は、バイオリアクタモジュールを収容し、別個のガス調整手段を有する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「低温ゾーン」は、約2℃~8℃の温度範囲を有する隔離された制限領域であると理解されるべきである。「低温ゾーン」の正確な温度は、正確である必要はなく、むしろ約2℃~8℃のような全体的な温度低減である必要がある。「低温ゾーン」には低温気流が包含される。「低温ゾーン」には、流体試薬リザーバおよび任意のさらなる流体試薬バッグが収容されている。「低温ゾーン」には、結露制御手段が収容されている。
【0061】
「温暖ゾーン」は、「低温ゾーン」から隔離されているため、いずれかのゾーンの温度が他のゾーンに移行することはない。高速暖気流は、低温気流と混合しない。
【0062】
細胞培養カセットは、温暖ゾーン内に存在する。
【0063】
試薬流体リザーバは、低温ゾーン内に存在する。
【0064】
外部(追加)流体バッグは、低温ゾーン内に存在する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「温暖ゾーン」または「低温ゾーン」に関して「存在する」とは、対象の構造要素が、培養システムの閉鎖動作においてその特定のゾーン内の雰囲気にのみさらされることを意味する。
【0066】
本発明の一般的で非限定的な概要および本発明の実施を以下に提示する。概要は、本発明の実施形態/態様の例示的な実施の概要を示し、変形および/または代替および/または相違する態様/実施形態の建設的基礎を提供し、その一部は後で説明される。
【0067】
図1および図2は、それぞれ、閉鎖構成および開放構成の本発明のシステムの実施形態を示している。図1は、使い捨て細胞培養カセット2が設置され、自動状態下で動作する、本発明の細胞培養および組織工学システム1の実施形態を例示している。細胞培養カセット2は、バイオリアクタモジュール4および付着試薬流体リザーバ6を含む。システム1は、「繭形」に似ており、内側シェル本体8と、内側シェル本体の開口部12を覆う外側シェルカバー10とが含まれる。外側シェルカバー10は、内側シェル本体の前方開口部12を包み込み、内側シェル本体の両側で回転可能な接続部(図示せず)を介して内側シェル本体8に接続され、その結果、外側シェルカバー10は、外側シェルカバーが内側シェル本体を格納するまで、内側シェル本体の外側円弧形状に沿って、第1の閉鎖位置から接続点を中心に回転する開放位置まで回転して、開放され得る(図2に示す)。内側シェル本体8の前方開口部12は、膨張可能なシール17を含むU字形チャネル16を有する周辺部14を含む。その結果、システムが閉鎖されると、膨張可能なシールが作動して膨張し、外側シェル本体の内面と係合して気密にシステムを密封する。外側シェルカバー10は、外部熱バリアとして機能する熱セル18を含む。
【0068】
細胞培養カセット2は、内側シェル本体8の開口部12内に位置決めされた動作ロボットインターフェース20に対して設置される。動作ロボットインターフェース20は、内側シェル本体内に、関連するロボットおよび電子機器22をさらに含む。細胞培養カセット2は、動作ロボットインターフェース20に対して動作的に拘束され、細胞培養カセット2から外側シェルカバー10に延在する可動熱バリアアセンブリ24によって、この位置で係止される。細胞培養カセット2を可動熱バリアアセンブリ24によって動作ロボットインターフェース20に係止することにより、上部温暖ゾーン26および下部低温ゾーン28が作りだされる。バイオリアクタモジュール4は、温暖ゾーン26内に固定される。試薬流体リザーバは、低温ゾーン28内に固定される。追加の外部コールドリザーバ29は、低温ゾーン内に位置しており、設置された細胞培養カセットの試薬流体リザーバに隣接している。この外部コールドリザーバ29は、流体排出物を収集するための追加のリザーババッグ(複数可)を包含してもよく、かつ/または追加の必要な培養流体(複数可)および試薬(複数可)を提供してもよい。したがって、細胞培養システムにより、生体プロセスに好適な暖かくインキュベートされた環境(例えば、約37℃+/-5℃)、および試薬貯蔵期間中(例えば、0℃~約10℃)に試薬安定性を向上させるための別個の低温環境の両方が提供される。
【0069】
図2において、システム1は、検査および/または除去のために細胞培養カセット2を露出させる開放構成にあり、さらに、開放上昇位置にある可動熱バリアアセンブリ24が示されている。細胞培養カセット2のバイオリアクタモジュール4は、嵌合ポート接続部(図示せず)を介して試薬流体リザーバ6に流体接続される。バイオリアクタモジュール4は、細胞培養または組織工学などの生体プロセスの動作要件を支持しており、直列に動作可能に接続され得る1つ以上のバイオリアクタを含む。試薬流体リザーバ6は、バイオリアクタモジュールの1つ以上のバイオリアクタ内で発生する生体プロセスに必要な試薬を実質的に収容し、貯蔵する。試薬流体リザーバ6は、複数の可撓性試薬バッグ(図示せず)を含み、試薬バッグの各々は、バイオリアクタモジュールから除去された培養培地、成長因子、薬剤、細胞標識、および排出物のうちの1つ以上を包含する。
【0070】
動作中、外側シェルカバー10は、開放位置に回転され、可動バリアアセンブリ24の構造的構成によって動作ロボットインターフェース20に対して拘束される細胞培養カセットの設置または取り外しのためのカセット2へのアクセスが可能となる。細胞培養カセットの設置/除去が必要な場合、可動熱バリアアセンブリ24は、細胞培養カセットへの完全なアクセスを可能にする内部連結機構を介して、カセットから離して上昇させることができる。カセット2の設置後、図1に示すように、熱バリアアセンブリ24を係合(下降)位置に移動させ、それにより、ロボット7および関連するインターフェース接続との正確な位置合わせが確保され、別個の温暖ゾーンおよび低温ゾーンが形成される。細胞培養カセットが設置され、可動熱バリアが所定の位置に係止されると、熱バリアにより、カセットの周囲の温暖ゾーンの下部表面の一部およびカセットの周囲の低温ゾーンの上部表面が効果的に形成される。
【0071】
図3aおよび図3bは、可動熱バリアアセンブリ24が開放上昇位置にある動作ロボットインターフェース20の正面立面図を示している。動作ロボットインターフェース20は、いくつかのバルブアクチュエータおよび蠕動ポンプ接続部を含んでおり、これらには、細胞培養カセットが位置合わせして接続される。可動熱バリアアセンブリ24は、レバー離間アーム30を含み、レバー離間アーム30は、上昇位置に示されるサーマルプラットフォーム32を支持する動作ロボットインターフェース20のいずれかの側面で接続されている。サーマルプラットフォームの下側には、チャネル33を有することが示されている。図3bでは、サーマルプラットフォーム32が、関連する上部手摺部34とともに示されており、上部手摺部34は、係止された細胞培養カセットの寸法に厳密に一致して設置される。凹部36は、可動熱バリアアセンブリ24を開放および拡張するためのオペレータ制御アクセスを提供するレバーアーム30に隣接して提供される。上部手摺部34により、ユーザが細胞培養カセットを動作のための位置に係止するか、またはサーマルプラットフォーム32の係止を解除して上昇させるための把持手段が提供される。サーマルプラットフォーム32は、細胞培養カセットの周囲を前方に延在し、(図1に示される)外側シェルカバーに放射するように示される。サーマルプラットフォームは、サーマルプラットフォームと外側シェルカバー(図示せず)との間の相対運動に対応するためのその前方の外側境界における可撓性外側シールと、細胞培養カセット(図示せず)に直接隣接して細胞培養カセットの取り付け公差に対応するための可撓性内側シールとの両方を有する。両方のシールは弾性であり、湿気および蒸気に対して不透過性である。
【0072】
図3cは、外部コールドリザーバの背面に示されるコールドサーマルアセンブリへの空気戻りを遮断しないようにするためのバッフル40を有する外部コールドリザーバ38の内部を示している。外部コールドリザーバ38は、試薬流体リザーバに隣接して位置決めされ、両方とも低温ゾーン28内に位置する。冷蔵空間には、試薬流体リザーバ(図示せず)の外側に別の外部リザーババッグ(複数可)が包含され得る。バッフル40は、外部コールドリザーバに包含される任意のリザーババッグがコールドシンクへの戻り空気を遮断しないことを防止するように機能する。サーマルプラットフォームが細胞培養カセットの周囲の下部係止位置にあるとき、下側チャネル33は、バッフル40と並んで、遮断されていない低温気流のための連続構造を作る。
【0073】
図4は、細胞培養システム1の温度制御された温暖ゾーン26および低温ゾーン28を示している。システム1は、閉鎖位置に示されている。温暖ゾーンは、低温ゾーンのガス環境と実質的に隔離されたガス環境を有する。温暖ゾーンには、酸素、二酸化炭素、および窒素などのガスのためのガス制御のシステムが含まれる。窒素は、酸素および/または二酸化炭素の濃度を周囲濃度未満にする。温暖ゾーン26は、内側シェル本体の上部セクションに位置する加熱アセンブリ41によって作りだされる。加熱アセンブリは、高容量リニアファン42を含み、高容量リニアファン42は、バイオリアクタモジュール4の周囲を循環する高温暖気流経路45(矢印により示される)を生成および誘導するために加熱された気流誘導器44に、動作可能に接続されている。高容量リニアファンは、高速気流を提供し、温暖ゾーン内の空間的、および時間的な温度の不均一性を最小限に抑える。リニアファン42は、フロー構成を有し、フロー構成には、積層流量、最小圧力降下、および最小気流方向の変化の組み合わせにより、高速の気流速度を提供する。高い気流速度により、高い対流熱伝達による温度均一性が促進され、これにより、本質的に、競合する熱源からの温暖ゾーン内で生じる表面温度の差が最小限に抑えられる。
【0074】
さらに、高速暖気流の連続循環は、外側シェルカバーの内壁の円弧形状によって補助され、暖高速気流の円形経路が一貫して均質になることを補助する。温暖ゾーンは、低温ゾーンから完全に断熱されていることが示されている。競合する熱負荷は、細胞培養システム内の他の領域との熱伝達によって、かつ周りの周囲環境への熱伝達によって、温暖ゾーン上に配置される。低温ゾーンおよび典型的な周囲環境は、温暖ゾーンの温度設定点を下回る温度で動作する傾向があり、これらの要因は、結果的に温暖ゾーンの熱損失を表す。対照的に、ロボットアーキテクチャ内の特定の電子部品は、温暖ゾーンの温度を上回る温度で動作する場合があり、結果的に、かかる部品は、温暖ゾーンの熱利得を表す。温暖ゾーンの構成および動作により、本質的に温度不均一性を引き起こす熱伝達状態の問題が排除され、その結果、均一な温暖ゾーンにより、バイオリアクタモジュール内で進行中の生体プロセスのより一貫した動作状態が維持される。
【0075】
温暖ゾーンでは、特定の生体プロセスで必要とされる一貫した加熱温度を選択することができる。制御温度は、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、またはそれ以上から選択されてもよい。
【0076】
図5は、低温ゾーン28の主要な機能部品を例示している。内側シェル本体は、トレイ46を支持するフロア部を有し、トレイ46は、トレイの下にダクト付き気流経路を形成する細胞培養カセットの底面を支持するための前方カンチレバー状棚部48を備え、低温ゾーン気流経路49(矢印により示される)を生成する。
【0077】
コールドサーマルアセンブリ50は、内側シェル本体の後部に包含され、試薬安定性を向上させるために試薬流体リザーバを取り囲む低温ゾーン気流経路を生成および制御する。コールドサーマルアセンブリ50は、コールドシンクアレイ52を含み、コールドシンクアレイ52は、コールドシンクファン56を介して低温ゾーン気流経路から熱を受け取る複数のフィン形状のコールドシンク54(図7を参照)を各々含む。ペルチエ固体熱電デバイス(図7を参照)により、コールドシンク54から隣接するホットシンク58に熱が伝達される。熱は、その後、ホットシンクファン60によってホットシンクから周りの周囲空気62へ放出される。
【0078】
コールドシンクファン56は、ホットシンクフィン58における乱流に起因する高い対流熱伝達係数を提供する軸方向フロー構成を有し、冷蔵ゾーン内の気流とコールドシンクとの間の最小温度差をもたらす。冷蔵ゾーン内の試薬は、低温気流経路に囲まれることによって冷却される。試薬の安定性を向上するための重要な基準は、正確な温度ではなく、全体的な温度の低減であるため、低温ゾーン内の温度は、温暖ゾーン内よりも均一ではない場合がある。
【0079】
図6は、可撓性試薬バッグ(図示せず)などの別個の流体容器に複数の試薬を貯蔵する試薬流体リザーバ6を例示している。試薬バッグは、流体バッグ容器64内に拘束されている。試薬流体リザーバ6は、バイオリアクタモジュールへの取り付けを維持するのに役立つポート接続部67およびスナップタブ66を介して、バイオリアクタモジュールに接続される。試薬バッグは、カセット熱絶縁体68によって、温暖ゾーンからの熱の移動に対して断熱される。試薬バッグの冷蔵温度は、試薬流体リザーバの周囲および内部の低温空気の循環によって維持されており、これには、試薬流体リザーバの上部に隣接して前壁および後壁に設けられた試薬流体リザーバ開放空気ダクト70を介した試薬バッグの上の気流が含まれる。試薬流体リザーバ(屋根部分)の上部は、リザーバ(図示せず)内に延在する下向きに延在するバッフルを有する。バッフルは、試薬バッグの上方、および試薬バックを横断する低温気流を誘導し、内部のバッフル40によってガイドされる外部のコールドリザーバに気流が移動して、遮断されずにコールドシンクアレイに戻ることを可能にするのに役立つ。
【0080】
低温ゾーンの構造は、最小限の障害を有するダクト付き/チャネル化された気流を低温ゾーンの中に作り、低温ゾーン全体にわたって循環する連続的な低温気流を提供し、試薬流体リザーバの下および周囲に低温気流を提供するとともに、その低温気流は低温空気がリザーバを通って流れるために通気孔を通って試薬流体リザーバの上部を貫通し、流体バッグを直接流れ、さらに通気孔を通って外部コールドリザーバに出て、そこでバッフルを介してコールドサーマルアセンブリのコールドシンクに戻って熱を排除するようにするものである。熱を除去し、低温空気を循環させるために、チャネル、バッフル、通気孔、熱絶縁体、およびサーマルプラットフォームのシールならびに下側チャネルを一緒に提供することで、低温気流への障害を最小限に抑えて、低温空気が低温ゾーンに維持されることが保証される。
【0081】
図7は、ペルチエ固体熱電デバイスの構造を示しており、ペルチエ固体熱電デバイスは、後続の周囲環境への熱伝達のために、コールドシンクからホットシンクに熱を送り出す。固体デバイスはコンパクトで、故障しやすい可動部品を有しないため、ペルチエ固体デバイスは、蒸気圧縮冷蔵などの他の従来の冷蔵方法よりも好ましい。熱がホットシンクからコールドシンクに戻るのを阻害するために、熱絶縁体が設けられている。かかる熱が戻ると、熱効率が損なわれるためである。コールドシンクは、コールドシンクの延長部を形成する、隣接する組み込みモニュメントを有しており、コールドシンクからペルチエ固体デバイスへ移動する熱の伝導経路を表している。ペルチエ固体デバイスからホットシンクに供給される後続の熱は、コールドシンクから送り出される熱と、ペルチエ固体デバイスによって消費される電力との合計である。このように、ホットシンクに供給される熱の合計は、コールドシンクから除去される熱よりも大幅に大きくなる。
【0082】
モニュメントは、ホットシンクではなくコールドシンクに組み込むと、モニュメントを介した熱伝達が少なくて済むので有利である。結果的に、モニュメント全体の温度差は、モニュメントがホットシンク上に位置している場合の温度差よりも著しく小さいため、熱損失が低減する。ペルチエ固体デバイスでは、性能係数(消費電力に対する送り出された熱の比率)は、温度差の減少とともに増加する。したがって、ホットシンクの一部としてモニュメントを組み込む代替方法と比較して、コールドシンク上のモニュメントの場所により、性能係数が著しく向上する。
【0083】
コールドシンクアレイ52は、モノリスであるホットシンク58に対して、複数の個々のコールドシンク54で構成される。コールドシンク54のモニュメントと、ペルチエ固体デバイスと、ホットシンク58との間の密接な熱接触を確保するために、コールドシンクは、機能ユニット(コールドシンクおよび軸方向ファン)にセグメント化されており、それにより、各機能的コールドシンクユニットは、ばね圧縮ボルト70の使用およびアレイを通じて(ペルチエ固体デバイスを介して)モノリスホットシンクに密接に接触する。ばね圧縮は、コイルばね72の使用によって実現される。モノリスホットシンクに対するコールドシンクのばね圧縮の主な利点は、熱歪みおよび/または製造歪みが自己修復され、各コールドシンクアセンブリが、関連するペルチエ固体デバイスに対して、かつモノリスホットシンクに対して、前方に独立して位置合わせされ、均質な圧縮荷重を実現することができるという点である。かかる自己補正圧縮荷重により、モノリスホットシンクへの個々のコールドシンク熱伝達の効率が最大化される。
【0084】
細胞培養システムが開放されると、低温ゾーンは必然的に周囲環境と空気を交換する。結果として、細胞培養システムがその後閉鎖されると、周囲環境からの空気が低温ゾーン内に閉じ込められる。流入した周囲の空気の湿度によって、露点が低温ゾーンの最終温度を上回る場合、環境の空気からの水分が結露する。その結果、必然的に結露が生じ、低温ゾーン内に望ましくない水分蓄積ゾーンが生成される可能性がある。かかる蓄積は、潜在的な微生物汚染部位となる可能性がある。この構成要素の表面は冷蔵ゾーン内で最も低温の表面であるため、コールドシンク上で自然に結露が開始され、継続する。結露の煩わしさを自動的に管理および除去するために、細胞培養システムの低温ゾーン内には、図8aに示す場所に結露制御機構73が採用されている。図8bにより詳細に示されるように、結露制御機構73は、水分輸送材料74を含む。水分輸送材料74は、結露がコールドシンク上に形成されるときに結露物を収集し、重力の影響およびコールドシンクフィン上を下向きに流れる気流の作用により、コールドシンクのフィンを下向きに移動する。水分輸送材料は、専用ダクト76を通ってコールドシンクからホットシンクに突出し、その後、ホットシンクの熱によって、移動した水分が周囲の環境内に連続的に蒸発する。この結露管理対策は、可動部品または余分な電力を必要としない。
【0085】
適正製造基準には、細胞培養システムのサービスおよびクリーニングが必要である。図9は、サービスおよびクリーニングを可能にするために、コールドサーマルアセンブリ50を取り外し、ヒンジ51上で支持することができることを示している。コールドサーマルアセンブリは、ラッチ78の作動およびその後のヒンジ点の周囲の下向き回転によって、通常の動作位置から解放される。冷蔵電源コネクタ82により、コールドサーマルアセンブリが通常の閉鎖動作構成に戻ったときに、データおよび電力のための信頼性の高い電気接続が提供される。
【0086】
図10は、コールドシンクファン56がアセンブリ84を含むことをさらに例示している。アセンブリ84は、コールドシンクから連結を解除して引き出すことができ、下にあるコールドシンクをさらに細かいクリーニングを可能にすることができる。
【0087】
図11は、ホットシンクファン60および関連するカウリングが、ヒンジを介してホットシンクから上方に引き出され得、下にあるホットシンクのさらに細かいクリーニングを可能にする。
【0088】
実施形態では、中空シャフトを使用することで、細胞培養システムの内部とシステムの外部とを接続することができ、シャフト内に独自の第3の制御ゾーンを設けて、培養温度または冷蔵温度以外の温度でプロセスを実行することができる。かかる実施形態は、中間温度から潜在的に益となるプロセスステップに使用され得、この遷移ゾーンで制御され得る。
【0089】
追加の実施形態では、サーマルウィンドウは、外側シェルに組み込まれたツイン液晶(LCD)ウィンドウ(または機能的等価物)から構成される温暖ゾーンおよび/または低温ゾーンに含まれ得る。LCDウィンドウにより、LCDが透明であるときの内部カセット動作の表示と、LCDが活性化され不透明であるときの試薬にとって有害な光劣化に対する不透明性と、閉じ込められた空気空間を形成するツインLCD壁に起因する熱バリアと、が可能となる。
【0090】
実施形態では、個別の内部気流は、複数の製造ユニットを制御し得る集中型気流管理システムに連結させることができる。
【0091】
追加の実施形態では、空気濾過は、空気循環経路内に含めることができ、かかるフィルタは、各処理または他の合理的な期間の後に使い捨てとすることができる。
【0092】
当業者は、可能な場合、本明細書に記載のシステムの構成要素の製造のための材料が、生体適合性(例えば、非毒性、USPクラスVI準拠)または構造的特性(例えば、強度、剛性、靭性、および重量)に関する構成要素の主要機能を損なうことなく、熱絶縁特性を最大化するように選択されることを理解するであろう。システムは概して繭形状で構成されていることが示されているが、内部に暖気流経路および低温気流経路を維持する形状である限り、これはサイズと同様に変化してもよい。
【0093】
さらに、本発明の細胞培養および組織工学システムは、様々なセンサを含んでおり、センサは、低温ゾーン、ホットゾーン、細胞培養カセット、加熱アセンブリ、コールドサーマルアセンブリに関連付けられるか、かつ/またはそれらの中に位置し、動作ロボットインターフェースおよび関連する内部ロボットならびに電子機器に関連付けられ、コンピュータ手段にさらに関連付けられている。
【0094】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者に明らかになるであろうことを理解されたい。かかる変更および修正は、本主題の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得、その意図された利点を減少させることなく行われ得る。したがって、かかる変更および修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11