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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20240423BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240423BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240423BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240423BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240423BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20240423BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20240423BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60L15/20 K
B60L50/16
B60W10/02 900
B60W20/17
F16D48/02 640P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191567
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080475
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
(72)【発明者】
【氏名】波多野 崇
(72)【発明者】
【氏名】進矢 義之
(72)【発明者】
【氏名】大石 潔
(72)【発明者】
【氏名】横倉 勇希
(72)【発明者】
【氏名】井脇 隆議
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103938(WO,A1)
【文献】特開2016-196278(JP,A)
【文献】特開2014-083863(JP,A)
【文献】特開2019-034677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/547
B60L 15/20
B60L 50/16
B60W 10/02
B60W 20/17
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両の制御システムであって、
エンジンと、
前記ハイブリッド車両の車輪への動力伝達経路上において前記エンジンの下流側に設けられたモータと、
前記動力伝達経路上において前記モータの下流側に設けられたトランスミッションと、
前記モータと前記トランスミッションとの間に断続可能に設けられたクラッチと、
前記トランスミッションと前記車輪との間に設けられ、前記車輪の右車輪と左車輪とに動力を分配するデファレンシャルギヤ機構であって、前記トランスミッション側に設けられたギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、前記車輪側に設けられたギヤを含む第2動力伝達作動部とを備える前記デファレンシャルギヤ機構と、
前記ハイブリッド車両が減速状態である際にドライバから加速要求を受けたときに、締結状態にある前記クラッチをスリップ状態に移行させた後に、前記デファレンシャルギヤ機構において動力が前記第2動力伝達作動部から前記第1動力伝達作動部へと伝達される状態から前記第1動力伝達作動部から前記第2動力伝達作動部へと伝達される状態へと移行させるべく、前記第1動力伝達作動部と前記第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うよう構成された制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御として、前記モータの回転軸に連結された前記クラッチの第1軸部の第1回転速度が、前記トランスミッションの回転軸に連結された前記クラッチの第2軸部の第2回転速度を超えたときに、前記第1回転速度の前記第2回転速度に対する差回転速度を増加させるように前記モータに対する制御を行い、この後に前記第1回転速度を前記第2回転速度よりも一時的に下回らせるために前記差回転速度を減少させるように前記モータに対する制御を行うよう構成される、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御中に、当該ガタ詰め制御の前よりも前記クラッチの伝達トルク容量を低下させるように当該クラッチを制御するよう構成される、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御中において、前記クラッチによるクラッチ伝達トルクが前記第1軸部から前記第2軸部の方向に伝達される状態から前記第2軸部から前記第1軸部の方向に伝達される状態へと一時的に変化するような、当該ガタ詰め制御中において前記クラッチに適用されるべき目標クラッチ伝達トルクを設定し、この目標クラッチ伝達トルクが実現されるように、前記モータ及び前記クラッチを制御するよう構成される、請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記クラッチによる実際のクラッチ伝達トルクを推定し、この推定されたクラッチ伝達トルクを前記目標クラッチ伝達トルクに一致させるべく、前記モータ及び前記クラッチをフィードバック制御するよう構成される、請求項3に記載のハイブリッド車両の制御システム。
【請求項5】
前記クラッチを第2クラッチとすると、前記ハイブリッド車両の制御システムは、前記エンジンと前記モータとの間に断続可能に設けられ、前記第2クラッチとは異なる第1クラッチを更に有し、
前記制御装置は、
前記ハイブリッド車両が前記減速状態にあるときには、前記第1クラッチを解放状態に設定し且つ前記第2クラッチを締結状態に設定すると共に、前記エンジンを停止させ且つ前記モータを回生させるように制御を行い、
前記ハイブリッド車両が前記減速状態である際にドライバから加速要求を受けたときに、前記第2クラッチを締結状態からスリップ状態に移行させた後に、前記第1クラッチを解放状態から締結状態に移行させてから、前記モータによって前記エンジンを始動させつつ前記ガタ詰め制御を行い、この後に前記第2クラッチを締結状態に設定するよう構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源と車輪との間に設けられたクラッチの締結と解放とを制御することで、走行モードを切り替え可能なハイブリッド車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンと、エンジンの下流側に設けられたモータと、モータの下流側に設けられたトランスミッション(以下では適宜「TM」と表記する。)と、モータとTMとの間に断続可能に設けられたクラッチと、TMと車輪との間に設けられ、車輪の右車輪と左車輪とに動力を分配するデファレンシャルギヤ機構(以下では適宜「デフ機構」と表記する。)と、モータやクラッチを制御する制御装置と、を有するハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両は、モータの駆動力で走行する電気走行モードと、エンジン及びモータの駆動力で走行するハイブリッド走行モードとを切り替え可能に構成されている。
【0003】
上記のようなハイブリッド車両に関して、例えば特許文献1には、クラッチが解放状態に設定され且つエンジンが停止される減速状態(コースティング走行(惰性走行))から、クラッチが締結状態に設定され且つ少なくともエンジンの駆動力が用いられる加速状態への移行時に、クラッチの締結に伴うショックを低減しつつ、主にデフ機構内に存在するギヤのガタ詰めに要する時間の短縮を図った技術が開示されている。
【0004】
ここで、減速走行時やコースティング走行時には、デフ機構においては、車輪側ギヤがTM側ギヤに対して当接する接触状態(減速用接触状態)となっており、それにより、車輪側からの動力が車輪側ギヤ(主動側作動部となる)を介してTM側ギヤ(従動側作動部となる)へと伝達される。これに対して、加速走行時には、TM側ギヤが車輪側ギヤに対して当接する接触状態(加速用接触状態)となっており、それにより、動力源側からの動力がTM側ギヤ(主動側作動部となる)を介して車輪側ギヤ(従動側作動部となる)へと伝達される。このようなデフ機構の各々のギヤにおける減速用接触状態から加速用接触状態までの相対角度差を、状態変位に関するガタ(バックラッシュ)と見做すことができる。
【0005】
上記の特許文献1に開示された技術では、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態に移行するときに、デフ機構における主動側作動部と従動側作動部との間に減速用接触状態から加速用接触状態に変位するための相対角度差を形成し、クラッチの締結後に、減速用接触状態から加速用接触状態に移行する期間内において主動側作動部と従動側作動部との相対角速度を収束させるようにモータを制御している。これにより、クラッチ締結に伴うショックの低減と、デフ機構のガタ詰め時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-34677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ハイブリッド車両が減速状態にある間に、モータを回生(減速回生)させる場合、上記のモータとTMとの間に設けられたクラッチは締結状態に設定される。このような減速状態から、ドライバ要求などによりハイブリッド車両を加速させる場合には、クラッチを締結状態からスリップ状態に移行させてから、モータによってエンジンを始動させることが考えられる。こうしてエンジンを始動させているときに、クラッチ前後の部材の回転速度の大小関係が逆転する。具体的には、モータの回転軸に連結されたクラッチの軸部の回転速度(第1回転速度)がTMの回転軸に連結されたクラッチの軸部の回転速度(第2回転速度)未満である状態から、第1回転速度が第2回転速度以上となる状態へと切り替わる。これにより、デフ機構内のギヤのガタが詰まるように動作するが、このガタが詰まるときにギヤ同士が勢いよく衝突することで、衝撃(ガタ詰めショック)が発生する場合がある。上記した特許文献1には、このような問題及びそれに対処する方法については開示されていない。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を短縮しつつ、クラッチ前後の部材の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制することができるハイブリッド車両の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ハイブリッド車両の制御システムであって、エンジンと、ハイブリッド車両の車輪への動力伝達経路上においてエンジンの下流側に設けられたモータと、動力伝達経路上においてモータの下流側に設けられたトランスミッションと、モータとトランスミッションとの間に断続可能に設けられたクラッチと、トランスミッションと車輪との間に設けられ、車輪の右車輪と左車輪とに動力を分配するデファレンシャルギヤ機構であって、トランスミッション側に設けられたギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、車輪側に設けられたギヤを含む第2動力伝達作動部とを備えるデファレンシャルギヤ機構と、ハイブリッド車両が減速状態である際にドライバから加速要求を受けたときに、締結状態にあるクラッチをスリップ状態に移行させた後に、デファレンシャルギヤ機構において動力が第2動力伝達作動部から第1動力伝達作動部へと伝達される状態から第1動力伝達作動部から第2動力伝達作動部へと伝達される状態へと移行させるべく、第1動力伝達作動部と第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うよう構成された制御装置と、を有し、制御装置は、ガタ詰め制御として、モータの回転軸に連結されたクラッチの第1軸部の第1回転速度が、トランスミッションの回転軸に連結されたクラッチの第2軸部の第2回転速度を超えたときに、第1回転速度の第2回転速度に対する差回転速度を増加させるようにモータに対する制御を行い、この後に第1回転速度を第2回転速度よりも一時的に下回らせるために差回転速度を減少させるようにモータに対する制御を行うよう構成される、ことを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明では、制御装置は、ガタ詰め制御として、まず、モータの回転軸に連結されたクラッチの第1軸部の第1回転速度が、TMの回転軸に連結されたクラッチの第2軸部の第2回転速度を超えたときに、第1回転速度の第2回転速度に対する差回転速度を増加させるようにモータに対する制御を行う。これにより、ガタ詰め制御開始時に、デフ機構の第1及び第2動力伝達作動部の相対角速度を加速させることができ、つまり第1及び第2動力伝達作動部の相対角加速度を上昇させることができ、デフ機構のガタ詰め時間を短縮することが可能となる。
また、制御装置は、こうして差回転速度を増加させるよう制御した後に、第2回転速度を超えた第1回転速度を当該第2回転速度よりも一時的に下回らせるために差回転速度を減少させるようにモータを制御する。これにより、デフ機構の第1及び第2動力伝達作動部のギヤのガタが詰まるときの第1及び第2動力伝達作動部の相対角度差の変化を緩やかにすることができ、つまり第1及び第2動力伝達作動部の相対角速度を小さくすることができ、第1及び第2動力伝達作動部のギヤのガタが詰まるときにギヤ同士を緩やかに衝突させることができる。よって、クラッチ前後の部材の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制することができる。
以上より、本発明によれば、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、デフ機構におけるガタ詰め時間の短縮及びガタ詰めショックの抑制を適切に両立することができる。
なお、本明細書等で使用する「回転速度」は、単位時間当たりに物体が回転する速さを意味するが、これは、単位時間当たりに物体が回転する回数を意味する「回転数」と同義である。なお、上述したガタは、デフ機構だけでなく、他の各種ギヤやジョイント部にも大小存在するが、本明細書では、それらのガタも含めて、デフ機構に存在するガタと呼ぶ。
【0011】
本発明において、好ましくは、制御装置は、ガタ詰め制御中に、当該ガタ詰め制御の前よりもクラッチの伝達トルク容量を低下させるように当該クラッチを制御するよう構成される。
このように構成された本発明によれば、デフ機構においてギヤのガタが詰まるときにギヤ同士をより緩やかに接触させることができ、ガタ詰めショックを確実に抑制することが可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御装置は、ガタ詰め制御中において、クラッチによるクラッチ伝達トルクが第1軸部から第2軸部の方向に伝達される状態から第2軸部から第1軸部の方向に伝達される状態へと一時的に変化するような、当該ガタ詰め制御中においてクラッチに適用されるべき目標クラッチ伝達トルクを設定し、この目標クラッチ伝達トルクが実現されるように、モータ及びクラッチを制御するよう構成される。
このように構成された本発明によれば、設定された目標クラッチ伝達トルクを用いてガタ詰め制御を行うことで、クラッチ前後の部材の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックの抑制を効果的に実現することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御装置は、クラッチによる実際のクラッチ伝達トルクを推定し、この推定されたクラッチ伝達トルクを目標クラッチ伝達トルクに一致させるべく、モータ及びクラッチをフィードバック制御するよう構成される。
このように構成された本発明によれば、クラッチ伝達トルクの推定値と目標値に基づきフィードバック制御を行うことで、クラッチの目標クラッチ伝達トルクを適切に実現することが可能となる。
【0014】
本発明において好適な例では、クラッチを第2クラッチとすると、ハイブリッド車両の制御システムは、エンジンとモータとの間に断続可能に設けられ、第2クラッチとは異なる第1クラッチを更に有し、制御装置は、ハイブリッド車両が減速状態にあるときには、第1クラッチを解放状態に設定し且つ第2クラッチを締結状態に設定すると共に、エンジンを停止させ且つモータを回生させるように制御を行い、ハイブリッド車両が減速状態である際にドライバから加速要求を受けたときに、第2クラッチを締結状態からスリップ状態に移行させた後に、第1クラッチを解放状態から締結状態に移行させてから、モータによってエンジンを始動させつつガタ詰め制御を行い、この後に第2クラッチを締結状態に設定するよう構成されるのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハイブリッド車の制御システムによれば、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を短縮しつつ、クラッチ前後の部材の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御システムの概略構成図である。
図2】(a)はデフ機構の動力伝達作動部における減速用接触状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図3】(a)はデフ機構の動力伝達作動部における減速用接触状態と加速用接触状態との過渡状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図4】(a)はデフ機構の動力伝達作動部における加速用接触状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図5】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
図6】従来制御による問題点を説明するためのタイムチャートである。
図7】従来制御によるガタ詰めショックをより具体的に説明するためのタイムチャートである。
図8】第2クラッチにおける第1、第2回転速度の差回転速度とクラッチ伝達トルクとの関係を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態によるガタ詰め制御の基本概念を説明するためのタイムチャートである。
図10】本発明の実施形態によるガタ詰め制御を具体的に示すタイムチャートである。
図11】本発明の実施形態によるガタ詰め制御において行われるフィードバック制御を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御システムを説明する。
【0018】
[システム構成]
まず、図1を参照して、本実施形態によるハイブリッド車両の制御システムの構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるハイブリッド車両の制御システムはパワートレインPTを有し、このパワートレインPTは、エンジン1と、ハイブリッド車両の動力伝達経路上においてエンジン1の下流側位置に配設されたモータジェネレータ(以下、「モータ」と略す。)2と、ハイブリッド車両の動力伝達経路上においてモータ2の下流側位置に配設されたトランスミッション(TM)3と、駆動力を左右1対の車輪5(右車輪及び左車輪)に対して分配するデファレンシャルギヤ機構(デフ機構)4と、を備えている。なお、TM3は、オートマチックトランスミッションである。
【0020】
エンジン1の出力軸とモータ2の回転軸とは、断続可能な第1クラッチ11を介して軸6によって同軸状に連結されている。第1クラッチ11は、モータやソレノイド(図示略)によりクラッチ作動油流量及び/又はクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して、伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチや湿式多板クラッチなどによって構成されている。この第1クラッチ11の上流側端部は、軸部6aを介してエンジン1の出力軸に連結され、第1クラッチ11の下流側端部は、軸部6bを介してモータ2の回転軸の上流側端部に連結されている。
【0021】
モータ2の回転軸とTM3の回転軸とは、断続可能な第2クラッチ12を介して軸7によって同軸状に連結されている。第2クラッチ12も、第1クラッチ11と同様に、モータやソレノイド(図示略)によりクラッチ作動油流量及び/又はクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して、伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチや湿式多板クラッチなどによって構成されている。この第2クラッチ12の上流側端部は、軸部(第1軸部)7aを介してモータ2の回転軸の下流側端部に連結され、第2クラッチ12の下流側端部は、軸部(第2軸部)7bを介してTM3の回転軸に連結されている。軸部7aには、所定重量を有する上流側フライホイールが配設され、軸部7bには、下流側フライホイールが配設されている(何れも図示略)。なお、第2クラッチ12は、少なくともモータ2とTM3との駆動力の伝達を断続可能であれば良く、TM3の内部に形成しても良い。
【0022】
図1に示すように、デフ機構4は、TM3の出力軸8を介して駆動力が入力され、操舵状態に応じて左右の車輪5に夫々対応した駆動軸9(ドライブシャフト)への駆動力分配率を変更可能に構成されている。軸6、軸7、出力軸8、及び駆動軸9は、何れもねじり変形可能に形成され、特に、駆動軸9は、バネマスモデルを用いてモデル化可能な特性を有している。
【0023】
次に、図2に示すように、デフ機構4は、デファレンシャルギヤ、ファイナルギヤ及びピニオン等からなる複数の動力伝達作動部13、14を備えている。動力伝達作動部13(第1動力伝達作動部に相当する)は、TM3側に設けられ、動力伝達作動部14(第2動力伝達作動部に相当する)は、車輪5側に設けられ、動力伝達作動部13と噛合可能に構成されている。これら動力伝達作動部13、14は、車両の走行状態に応じて、隣り合う作動部を各々のギヤの噛み合いを介して駆動する主動側作動部と、この主動側作動部から各々のギヤの噛み合いを介して駆動される従動側作動部とにそれらの機能が切り替え可能に構成されている。
【0024】
具体的には、図2に示すように、減速走行時(或いはコースティング走行時)には、動力源が負荷となるため、下流側(車輪5側)の動力伝達作動部14が主動側作動部の機能を果たす一方で、この主動側作動部から駆動される上流側(TM3側)の動力伝達作動部13が従動側作動部の機能を果たしている。なお、下流側の動力伝達作動部14によって駆動される従動側作動部としての動力伝達作動部13であっても、その作動部よりも上流側の作動部に対しては駆動力を伝達する主動側作動部の機能を果たしている。
【0025】
一方、図4に示すように、加速走行時には、車輪5が負荷となるため、上流側の動力伝達作動部13が主動側作動部の機能を果たす一方で、この主動側作動部から駆動される下流側の動力伝達作動部14が従動側作動部の機能を果たしている。
【0026】
本明細書では、下流側に位置する動力伝達作動部14が主動側作動部で且つ上流側に位置する動力伝達作動部13が従動側作動部である状態、つまり、下流側作動部からの動力が上流側作動部に円滑に伝達される状態(図2)を減速用接触状態と定義する。この減速用接触状態では、動力伝達作動部14のギヤにおいて回転方向側の面が、動力伝達作動部13のギヤにおいて回転方向と反対側の面と当接する。また、上流側に位置する動力伝達作動部13が主動側作動部で且つ下流側に位置する動力伝達作動部14が従動側作動部である状態(図4)を加速用接触状態と定義する。この加速用接触状態では、動力伝達作動部13のギヤにおいて回転方向側の面が、動力伝達作動部14のギヤにおいて回転方向と反対側の面と当接する。
【0027】
また、動力伝達作動部13と動力伝達作動部14との間には、所定の隙間(ガタ又はバックラッシュとも言う)が夫々形成されている。図3に示すように、車両の運転状態が減速走行から加速走行に操作された直後において、上流側の動力伝達作動部13が従動側作動部の機能から主動側作動部の機能への機能変更途中、動力伝達作動部13のギヤが隣り合う動力伝達作動部14のギヤから所定距離離隔した過渡状態になる。そして、動力伝達作動部13、14には、構造全体として、下流側作動部の動力が上流側作動部に伝達される減速用接触状態から上流側作動部の動力が下流側作動部に伝達される加速用接触状態にわたって変位するための相対角度差が形成されている。この相対角度差は、例えば、比較的大きな約4°に予め設定されている。なお、加速用接触状態から減速用接触状態にわたって変位するための相対角度差は、減速用接触状態から加速用接触状態にわたって変位するための相対角度差と同じである。
【0028】
ところで、ハイブリッド車両のパワートレインPTでは、低負荷・低速運転時に実行される電気走行モード(以下、「EVモード」と表す。)が要求された場合、第1クラッチ11が解放され、第2クラッチ12が締結される。この状態でモータ2を駆動した場合、モータ2の回転出力がTM3側に伝達される。TM3は、伝達された回転出力を選択中の変速段に変速してTM3の出力軸8から出力する。TM3の出力軸8からの駆動力は、デフ機構4を介して左右の車輪5に至り、EVモードによる走行が実行される。
【0029】
他方で、高負荷・高速運転時に実行されるハイブリッド走行モード(以下、「HVモード」と表す。)が要求された場合、第1、第2クラッチ11、12が共に締結される。この状態では、エンジン1の回転出力又は、エンジン1の回転出力及びモータ2の回転出力の双方がTM3側に伝達される。TM3は、伝達された回転出力を選択中の変速段に変速してTM3の出力軸8から出力する。出力軸8からの駆動力は、デフ機構4及び駆動軸9を介して左右の車輪5に至り、HVモードによる走行が実行される。なお、EVモード及びHVモードの走行モード切り替えタイミングは、車速や負荷やバッテリ状態やエンジン温度などに基づき判定される。
【0030】
また、パワートレインPTは、ドライバによる加速解除操作、つまりドライバによりアクセルペダルの踏み戻し操作がなされた場合(他の例では、自動運転やオートクルーズなどの車両要求でのエンジン復帰による加速もある)、燃料カット制御によってエンジン1を停止する。この場合、パワートレインPTは、第1クラッチ11が解放され且つ第2クラッチ12が締結されて、モータ2の回生により車両を減速させる減速回生走行が実行される(他の例では、第1、第2クラッチ11、12が共に解放されたコースティング走行(惰性走行)が実行される)。この場合、エンジン1は停止状態になり、デフ機構4の作動部の状態は、下流側作動部の動力が上流側作動部に伝達される減速用接触状態になっている。
【0031】
次に、図5を参照して、本実施形態によるハイブリッド車両の制御システムの電気的構成について説明する。図5に示すように、ハイブリッド車両のパワートレインPTは、統合コントローラとしてのVCM(Vehicle Control Module)20(制御装置)によって統合制御されている。
【0032】
VCM20は、エンジン1に対して目標回転速度及び目標トルクの指令信号を出力するPCM21と、モータ2に供給する電気量を制御するインバータ15に対してモータ2の目標回転速度及び目標トルクに応じた指令信号を出力するTMCM22と、第1、第2クラッチ11、12のモータに対して作動指令信号を出力するTCM23とに電気的に接続され、これらの制御モジュール対して周期的に制御指令を出力している。
【0033】
また、VCM20は、エンジン回転速度センサ31と、モータ回転速度センサ32と、モータトルクセンサ33と、車両の走行速度を検出する車速センサ34と、アクセルペダル(図示略)の踏込量を検出するアクセルセンサ35と、インバータ15に電気を供給するバッテリ16の蓄電状態を検出する蓄電センサ36と、ブレーキセンサ(図示略)等に電気的に接続され、これらのセンサから周期的に夫々の検出信号を入力している。これにより、VCM20は、検出されたスロットルバルブ開度や車速等に応じて、ドライバが要求する走行状態(運転状態)を実現するように、PCM21に対してエンジン1の目標回転速度及び目標トルクを指令し、TMCM22に対してモータ2の目標回転速度及び目標トルクを指令している。
【0034】
本実施形態では、VCM20は、ハイブリッド車両を、エンジン1が停止し且つモータ2が回生を行う減速状態から、ドライバのアクセルペダルの踏込操作に応じて(つまりドライバからの加速要求に応じて)、少なくともエンジン1の駆動力によって車両を走行させる加速状態へと変化させるための制御を行う。VCM20は、ハイブリッド車両が減速状態にあるときには、第1クラッチ11を解放状態に設定し且つ第2クラッチ12を締結状態に設定すると共に、エンジン1を停止させ且つモータ2を回生させるように制御を行う。そして、VCM20は、ハイブリッド車両がこの減速状態から加速状態へと変化するときに、第2クラッチ12を締結状態からスリップ状態に移行させた後に、第1クラッチ11を解放状態から締結状態に移行させてから、モータ2によってエンジン1を始動させる。この場合、VCM20は、モータ2によってエンジン1を始動させているときに、デフ機構4において動力が動力伝達作動部14から動力伝達作動部13へと伝達される減速用接触状態から動力伝達作動部13から動力伝達作動部14へと伝達される加速用接触状態へと移行するように、動力伝達作動部13、14の間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行い、このギヤのガタが完全に詰まった後に第2クラッチ12を締結状態に設定する。
【0035】
特に、本実施形態では、VCM20は、上記のガタ詰め時間を短縮しつつ、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制するように、ガタ詰め制御を行う。この第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転とは、モータ2の回転軸に連結された第2クラッチ12の軸部7aの回転速度(第2クラッチ12のエンジン側のクラッチ板の回転速度であり、以下では「第1回転速度」と呼び、適宜「ωMot」を用いて表す。)が、TM3の回転軸に連結された第2クラッチ12の軸部7bの回転速度(第2クラッチ12のTM3側のクラッチ板の回転速度であり、以下では「第2回転速度」と呼び、適宜「ωTM」を用いて表す。)未満である状態から、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTM以上となる状態へと切り替わることを意味する。より詳しくは、VCM20は、ガタ詰め制御として、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMを超えたときに、第1回転速度ωMotの第2回転速度ωTMに対する差回転速度を増加させるようにモータ2に対する制御を行い、この後に第1回転速度ωMotを第2回転速度ωTMよりも一時的に下回らせるために差回転速度を減少させるようにモータ2に対する制御を行う。以下では、このような本実施形態によるガタ詰め制御について具体的に説明する。
【0036】
[従来制御による問題点]
本実施形態による制御を説明する前に、図6を参照して、ハイブリッド車両を減速状態から加速状態へと変化させるための従来制御による問題点について説明する。図6は、この従来制御によるタイムチャートを示す。
【0037】
図6は、上から順に、回転速度と、加速度と、第1、第2クラッチ11、12の伝達トルク容量と、を示している。具体的には、グラフG11は、第2クラッチ12の軸部7aの第1回転速度ωMotを示し、グラフG12は、第2クラッチ12の軸部7bの第2回転速度ωTMを示し、グラフG13は、駆動軸9の回転速度(車輪5の回転速度)を示し、グラフG14は、エンジン1の回転速度を示し、グラフG15は、ハイブリッド車両の要求加速度を示し、グラフG16は、ハイブリッド車両の実際の加速度(実加速度)を示し、グラフG17は、第2クラッチ12の伝達トルク容量を示し、グラフG18は、第1クラッチ11の伝達トルク容量を示している。なお、伝達トルク容量は、第1、第2クラッチ11、12の状態(解放状態、締結状態、スリップ状態)に応じて変化する量である。
【0038】
まず、エンジン1が停止し且つモータ2が回生を行う減速状態において、ドライバがアクセルペダルの踏込操作を行うと、時刻t10において要求加速度が上昇し、時刻t11において、第2クラッチ12が締結状態からスリップ状態へと移行される(矢印A11)。第2クラッチ12をスリップ状態にするのは、エンジン1の始動に起因するショックを緩和するためである。そして、時刻t12において、第1クラッチ11が解放状態から徐々に締結状態に移行され(矢印A12)、この第1クラッチ11の締結状態への移行に起因して第1回転速度ωMotが低下する(矢印A13)。この場合、第1回転速度ωMotと第2回転速度ωTMとの間に差回転速度(ωMot<ωTM)が生じる。また、時刻t12より、停止しているエンジン1を始動させるべく、モータ2を用いてエンジン1のクランキングが開始される。このときに、ハイブリッド車両の走行に用いられていたトルクがエンジン1を始動させるために用いられて、つまり車両側からエンジン1へのトルクの引き込みが生じて、ハイブリッド車両の実加速度が減少する(矢印A14)。
【0039】
この後、エンジン1の回転速度が徐々に上昇すると共に(エンジン1の回転速度がモータ2の回転速度に一致するようになる)、ハイブリッド車両の実加速度も上昇して、時刻t13において、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係が逆転する、具体的には、第2回転速度ωTMを下回っていた第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMを上回る(矢印A15)。そして、時刻t13から時刻t14の間に、デフ機構4において動力伝達作動部13、14の接触状態が減速用接触状態から加速用接触状態へと移行していく、つまり動力伝達作動部13、14の間に存在するギヤのガタが詰まっていく。このガタ詰め途中の期間では、ハイブリッド車両の実加速度は一定になる(矢印A16)。そして、時刻t14の後、上記のような第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転に起因して、デフ機構4の動力伝達作動部13、14のギヤのガタが詰まるときに両者のギヤが勢いよく衝突することで(ガタ詰めショック)、ハイブリッド車両の実加速度が大きく変動する(矢印A17)。この後、時刻t15において、第2クラッチ12がスリップ状態から締結状態に設定される(矢印A18)。
【0040】
なお、図6に示すタイムチャートにおいて、期間T11は、モータ2による回生によって、ハイブリッド車両に負の加速度が発生する期間である。期間T12は、エンジン1の始動に起因して、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達されることで、ハイブリッド車両に負の加速度が発生する期間である。期間T13は、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMを上回って、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが軸部7aから軸部7bの方向に伝達されることで、ハイブリッド車両に正の加速度が発生する期間である。期間T14は、エンジン1及びモータ2の両方の駆動力により、ハイブリッド車両に正の加速度が発生する期間、つまりハイブリッド走行モード(HVモード)が行われる期間である。
【0041】
次に、図7を参照して、上述した第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転によるガタ詰めショックについて、より具体的に説明する。図7も、図6と同様に、ハイブリッド車両を減速状態から加速状態へと変化させるための従来制御を行った場合のタイムチャートである。特に、図7のタイムチャートは、従来制御を行った場合の、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係が逆転するときの各状態値の変化について示している。
【0042】
図7において、グラフG21は、第2クラッチ12の軸部7aの第1回転速度ωMotを示し、グラフG22は、第2クラッチ12の軸部7bの第2回転速度ωTMを示し、グラフG23は、駆動軸9の回転速度を示し、グラフG24は、ハイブリッド車両の実加速度を示し、グラフG25は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14における減速用接触状態から加速用接触状態までの相対角度差(換言するとガタ位置)を示し、グラフG26は、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクを示し、グラフG27は、第2クラッチ12に適用される作動油圧を示している。なお、従来制御では、ハイブリッド車両の減速状態から加速状態への変化時(特にガタ詰め制御中)、第2クラッチ12は、作動油圧を一定にしてスリップ状態に設定される。
【0043】
まず、時刻t21において、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係が逆転し始める(矢印A21)。具体的には、第2回転速度ωTMを下回っていた第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMを超える。これにより、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが負から正に切り替わる(矢印A22)。すなわち、第2クラッチ12における軸部7aと軸部7bとの間において、クラッチ伝達トルクが伝達される方向が逆転する。具体的には、クラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達される状態から、クラッチ伝達トルクが軸部7aから軸部7bの方向に伝達される状態へと切り替わる。
【0044】
この後、時刻t21以降、デフ機構4において動力伝達作動部13、14の間に存在するギヤのガタが詰まっていき(矢印A23)、動力伝達作動部13、14の接触状態が減速用接触状態から加速用接触状態へと移行していく。そして、時刻t22において、動力伝達作動部13、14のガタ詰めが完了する(矢印A24)。この場合、ガタが詰まるときの動力伝達作動部13、14の相対角度差(ガタ位置)の変化が大きいため、つまり動力伝達作動部13、14の相対角速度(差回転速度)が大きいため、動力伝達作動部13、14のガタが詰まるときに両者のギヤが勢いよく衝突して、ガタ詰めショックが発生する。その結果、ハイブリッド車両において実加速度が大きく変動するのである(矢印A25)。
【0045】
この後、時刻t23において、第2クラッチ12の作動油圧が増加されて、クラッチ伝達トルクが増加し、第2クラッチ12が締結状態となる。これにより、第2クラッチ12の第1回転速度ωMotが、第2クラッチ12の第2回転速度ωTM及び駆動軸9の回転速度に一致するようになる、つまり第1回転速度ωMotと第2回転速度ωTMとの間の差回転が無くなる。
【0046】
[本実施形態による制御]
次に、本実施形態においてVCM20によって行われる、ハイブリッド車両を減速状態から加速状態へと変化させるために行われる制御、特にガタ詰め制御について説明する。
【0047】
本実施形態では、VCM20は、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、デフ機構4のガタ詰め時間を短縮しつつ、上述したような第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制するようにガタ詰め制御を行う。ここで、この第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転によるガタ詰めショックは、第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクによる影響を受けるものと考えられる。よって、第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクを制御することにより、ガタ詰めショックを抑制することができると考えられる。このクラッチ伝達トルクについて、図8を参照して説明する。
【0048】
図8は、第2クラッチ12について、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度(横軸)と、クラッチ伝達トルク(縦軸)との関係を示す。図8に示すように、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMよりも大きいときには(ωMot>ωTM)、クラッチ伝達トルクは正となる。この場合には、クラッチ伝達トルクは軸部7aから軸部7bの方向に伝達される。これに対して、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMよりも小さいときには(ωMot<ωTM)、クラッチ伝達トルクは負となる。この場合には、クラッチ伝達トルクは軸部7bから軸部7aの方向に伝達される。また、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの間に差回転速度が存在する状態において、クラッチ伝達トルクの大きさ(絶対値)、つまり第2クラッチ12の伝達トルク容量は、第2クラッチ12の作動油圧に応じて増減する。
【0049】
このようなことから、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度及び第2クラッチ12の作動油圧を調整することで、第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクを制御することができる。したがって、本実施形態では、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度及び第2クラッチ12の作動油圧を調整することで、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転によるガタ詰めショックを抑制するようにした。
【0050】
次に、図9を参照して、本実施形態によるガタ詰め制御の基本概念について説明する。図9は、本実施形態によるガタ詰め制御時におけるデフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対的な状態を示すタイムチャートである。図9において、グラフG31は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14における減速用接触状態から加速用接触状態までの相対角度差(換言するとガタ位置)を示し、グラフG32は、動力伝達作動部13、14の相対角速度を示し、グラフG33は、動力伝達作動部13、14の相対角加速度を示している。
【0051】
本実施形態では、VCM20は、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときのガタ詰めショックを抑制すべく、デフ機構4の動力伝達作動部13、14のガタが詰まるときに両者のギヤを緩やかに衝突させるように制御する。具体的には、VCM20は、ガタが詰まるときの動力伝達作動部13、14の相対角度差(ガタ位置)の変化を緩やかにするよう制御する(矢印A31)、すなわちガタが詰まるときの動力伝達作動部13、14の相対角速度を緩やかに0に近付けるよう制御する(矢印A33)。また、本実施形態では、VCM20は、ガタ詰め制御によるガタ詰め時間を短縮すべく、ガタ詰め制御開始時に、動力伝達作動部13、14の相対角速度として比較的大きな速度を与えるように制御する(矢印A32)。このように、VCM20は、ガタ詰め制御開始時には、動力伝達作動部13、14の相対角速度を加速させ、つまり動力伝達作動部13、14の相対角加速度を急上昇させ(矢印A34)、この後、動力伝達作動部13、14の相対角速度を0に向けて減速させる、つまり動力伝達作動部13、14の相対角加速度を大きく低下させるように制御する(矢印A35)。
【0052】
ここで、動力伝達作動部13、14の相対角速度の変化(つまり相対角加速度)は、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクの方向(軸部7aから軸部7bへの方向及び軸部7bから軸部7aへの方向のいずれか)の影響を受ける。具体的には、動力伝達作動部13、14における減速用接触状態から加速用接触状態への移行時において、クラッチ伝達トルクが軸部7aから軸部7bの方向に伝達されるときには、動力伝達作動部13の動力伝達作動部14に対する相対角速度は加速する傾向にあり、クラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達されるときには、この相対角速度は減速する傾向にある。他方で、上述したように、クラッチ伝達トルクの伝達方向は、第2クラッチ12前後の第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度に応じて変わる(図8)。よって、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度を調整することで、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角速度の加減速を制御することができるのである。
【0053】
したがって、本実施形態では、VCM20は、ガタ詰め制御開始時には、動力伝達作動部13、14の相対角速度を加速させるべく、第1回転速度ωMotの第2回転速度ωTMに対する差回転速度を増加させる制御を行い、この後、動力伝達作動部13、14の相対角速度を減速させるべく、第1回転速度ωMotを第2回転速度ωTMよりも下回らせるように差回転速度を減少させる制御を行う。ここで、第1、第2回転速度ωMot、ωTMに関して、第2回転速度ωTMは駆動軸9の回転速度(車輪5の回転速度)に相当するものなので基本的には制御できないが、第1回転速度ωMotはモータ回転速度に相当するものなので制御することができる。よって、VCM20は、モータ2を制御することで(特にモータ回転速度を制御する)、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの所望の差回転速度を実現するようにする。
【0054】
また、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角速度の変化量は、第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクの大きさ(伝達トルク容量)によって変わり、このクラッチ伝達トルクの大きさは、第2クラッチ12の作動油圧によって変化する(図8)。したがって、本実施形態では、VCM20は、上述したように、動力伝達作動部13、14の相対角速度について所望の加減速を実現するために、第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度を変化させるようにモータ2を制御する一方で、このような制御時において動力伝達作動部13、14の相対角速度の所望の変化量を実現するために第2クラッチ12を制御する(特に第2クラッチ12の作動油圧を制御する)。典型的には、VCM20は、ガタ詰め制御中に、当該ガタ詰め制御の前よりも第2クラッチ12の作動油圧を低下させる(これにより第2クラッチ12の伝達トルク容量が低下する)。
【0055】
次に、図10を参照して、本実施形態によるガタ詰め制御について具体的に説明する。図10は、本実施形態によるガタ詰め制御を示すタイムチャートである。特に、図10のタイムチャートは、本実施形態によるガタ詰め制御を行った場合の、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係が逆転するときの各状態値の変化を示す。なお、ここで特に説明しない制御内容は、上述した従来制御と同様であるものとする。例えば、ハイブリッド車両を減速状態から加速状態へと変化させるときにおいて、ガタ詰め制御の前に行われる制御は従来制御と同様である。
【0056】
図10において、グラフG41は、第2クラッチ12の軸部7aの第1回転速度ωMotを示し、グラフG42は、第2クラッチ12の軸部7bの第2回転速度ωTMを示し、グラフG43は、駆動軸9の回転速度を示し、グラフG44は、ハイブリッド車両の実加速度を示し、グラフG45は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14における減速用接触状態から加速用接触状態までの相対角度差(換言するとガタ位置)を示し、グラフG46は、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクを示し、グラフG47は、第2クラッチ12に適用される作動油圧を示している。
【0057】
まず、VCM20は、第2クラッチ12前後の第1、第2回転速度ωMot、ωTMをセンサ(例えばモータ回転速度センサ32や車速センサ34など)や演算式を用いて求め、これら第1、第2回転速度ωMot、ωTMを監視することで、第2回転速度ωTMを下回っていた第1回転速度ωMotが当該第2回転速度ωTMを超えるタイミング、つまり第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係が逆転するタイミングを求める。そして、VCM20は、第1回転速度ωMotが第2回転速度ωTMを超えると(時刻t41)、ガタ詰め制御を開始する。この場合、VCM20は、第1回転速度ωMotの第2回転速度ωTMに対する差回転速度を大きく増加させるように(矢印A41)、モータ2のモータ回転速度を制御する(典型的にはモータ回転速度を増加させる)。これにより、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが負から正に切り替わる(矢印A42)。すなわち、クラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達される状態から、クラッチ伝達トルクが軸部7aから軸部7bの方向に伝達される状態へと切り替わる。また、VCM20は、時刻t41より、ガタ詰め制御中の第2クラッチ12の伝達トルク容量を低下させるように、第2クラッチ12の作動油圧を低下させる(矢印A43)。
【0058】
そして、VCM20は、時刻t42において、第1回転速度ωMotを第2回転速度ωTMよりも一時的に下回らせるように差回転速度を減少させるべく(矢印A44)、モータ2のモータ回転速度を制御する(典型的にはモータ回転速度を一時的に低下させる)。これにより、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが正から負に切り替わる(矢印A45)。すなわち、クラッチ伝達トルクが軸部7aから軸部7bの方向に伝達される状態から、クラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達される状態へと切り替わる。そして、時刻t43において、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角度差の変化が緩やかな状態でガタ詰めが完了する(矢印A46)、つまり動力伝達作動部13、14のギヤが緩やかに衝突する。この後、VCM20は、第2クラッチ12をスリップ状態から締結状態に移行させるべく、第2クラッチ12の作動油圧を増加させる(矢印A47)。これにより、第2クラッチ12の第1回転速度ωMotが、第2クラッチ12の第2回転速度ωTM及び駆動軸9の回転速度に一致するようになる、つまり第1回転速度ωMotと第2回転速度ωTMとの間の差回転が無くなる。このような本実施形態によるガタ詰め制御の結果、ハイブリッド車両は、上述した従来制御のように実加速度が変動することなく(図6図7)、滑らかに加速する(矢印A48)。
【0059】
ここで、本実施形態では、ガタ詰め時間の短縮とガタ詰めショックの抑制を両立するために第2クラッチ12に適用すべき目標クラッチ伝達トルク(ガタ詰め制御中に適用すべきクラッチ伝達トルクのプロファイルに相当する)を事前に規定しておく。そして、VCM20は、ガタ詰め制御時において第2クラッチ12による実際のクラッチ伝達トルク(以下では「推定クラッチ伝達トルク」と呼ぶ。)を推定し、この推定クラッチ伝達トルクを目標クラッチ伝達トルクに一致させるべく、モータ2及び第2クラッチ12をフィードバック制御する。このフィードバック制御について、図11を参照して説明する。
【0060】
図11は、本実施形態によるガタ詰め制御において行われるフィードバック制御を示すブロック図である。ここで、図11において、「aVeh」は車両加速度を示し、「ωDif」は第2クラッチ12の軸部7a、7bの差回転速度を示し、「τCL」は第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクを示し、「τMot」はモータ2のモータトルクを示し、「τDS」は駆動軸9等からTM3へと伝達されるねじれ反力を示し、「τe_CL」は第2クラッチ12の推定クラッチ伝達トルクを示し、「τt_CL」は第2クラッチ12の目標クラッチ伝達トルクを示し、「ωt_Dif」は第2クラッチ12の目標差回転速度を示し、「isol」は第2クラッチ12を駆動するソレノイドに供給されるソレノイド電流(作動油圧(伝達トルク容量)に相当する)を示している。
【0061】
図11に示すように、VCM20のクラッチ伝達トルク制御部51及び差回転速度制御部52は、上述したようにガタ詰め時間の短縮とガタ詰めショックの抑制を両立するために設定された目標クラッチ伝達トルクτt_CL及び目標差回転速度ωt_Difをそれぞれ指令する。これらの目標クラッチ伝達トルクτt_CL及び目標差回転速度ωt_Difは、事前に規定しておいてもよいし、ガタ詰め制御中にオンラインで計算してもよい。
【0062】
具体的には、クラッチ伝達トルク制御部51は、クラッチ伝達トルク推定部53によって推定された推定クラッチ伝達トルクτe_CLが目標クラッチ伝達トルクτt_CLとなるように、第2クラッチ12のクラッチ伝達トルクτCLを制御する。この場合、クラッチ伝達トルク制御部51は、第2クラッチ12を駆動するためのソレノイド電流isolを求め、このソレノイド電流isolを第2クラッチ12に出力する。これにより、第2クラッチ12は、現在の第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度ωDifに応じたクラッチ伝達トルクτCLを発生する。
【0063】
また、差回転速度制御部52は、目標差回転速度ωt_Difと現在の第1、第2回転速度ωMot、ωTMの差回転速度ωDifとの差と、クラッチ伝達トルク推定部53によって推定された推定クラッチ伝達トルクτe_CLとに基づき、第2クラッチ12の差回転速度ωDifを制御する。この場合、差回転速度制御部52は、目標差回転速度ωt_Difを実現するためにモータ2が設定されるべきモータ回転速度を発生させるためのモータトルクτMotを出力する。これにより、モータトルクτMotとクラッチ伝達トルクτCLとの差と、モータ2における所定の慣性とに応じて、第2クラッチ12の軸部7aが第1回転速度ωMotにて回転する。
【0064】
他方で、クラッチ伝達トルクτCLと駆動軸9等からのねじれ反力τDSとの差と、TM3における所定の慣性とに応じて、第2クラッチ12の軸部7bが第2回転速度ωTMにて回転する。このねじれ反力τDSは、所定の車両モデルより求められ、また、車両加速度aVehも車両モデルより求められる。
【0065】
次に、クラッチ伝達トルク推定部53は、上記したモータトルクτMot、ソレノイド電流isol、差回転速度ωDif、及び第1回転速度ωMotに基づき、所定の車両モデルを用いて、推定クラッチ伝達トルクτe_CLを求める。なお、クラッチ伝達トルク推定部53は、このようなパラメータに基づき車両モデルを用いて推定クラッチ伝達トルクτe_CLを求めることに限定はされず、他の例では、第2クラッチ12の作動油圧とクラッチ面の摩擦係数などに基づき、推定クラッチ伝達トルクτe_CLを求めてもよい。
【0066】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御システムの作用効果について説明する。
【0067】
本実施形態では、VCM20は、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、締結状態にある第2クラッチ12をスリップ状態に移行させた後に、デフ機構4において動力が動力伝達作動部14から動力伝達作動部13へと伝達される減速用接触状態から動力伝達作動部13から動力伝達作動部14へと伝達される加速用接触状態へと移行させるべく、デフ機構4の動力伝達作動部13、14に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行う。
具体的には、VCM20は、ガタ詰め制御として、まず、モータ2の回転軸に連結された第2クラッチ12の軸部7aの第1回転速度ωMotが、TM3の回転軸に連結された第2クラッチ12の軸部7bの第2回転速度ωTMを超えたときに、第1回転速度ωMotの第2回転速度ωTMに対する差回転速度を増加させるようにモータ2に対する制御を行う。これにより、ガタ詰め制御開始時に、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角速度を加速させることができ、つまり動力伝達作動部13、14の相対角加速度を上昇させることができ、デフ機構4のガタ詰め時間を短縮することが可能となる。
また、VCM20は、こうして差回転速度を増加させるよう制御した後に、第2回転速度ωTMを超えた第1回転速度ωMotを当該第2回転速度ωTMよりも一時的に下回らせるために差回転速度を減少させるようにモータ2を制御する。これにより、デフ機構4の動力伝達作動部13、14のギヤのガタが詰まるときの動力伝達作動部13、14の相対角度差の変化を緩やかにすることができ、つまり動力伝達作動部13、14の相対角速度を小さくすることができ、動力伝達作動部13、14のギヤのガタが詰まるときにギヤ同士を緩やかに衝突させることができる。よって、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを抑制することができる。
以上より、本実施形態によれば、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、デフ機構4におけるガタ詰め時間の短縮及びガタ詰めショックの抑制を適切に両立することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、VCM20は、ガタ詰め制御中に、当該ガタ詰め制御の前よりも第2クラッチ12の伝達トルク容量を低下させる制御を行うので、デフ機構4においてギヤのガタが詰まるときにギヤ同士をより緩やかに接触させることができ、このときのガタ詰めショックを確実に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、VCM20は、ガタ詰め制御中において、第2クラッチ12によるクラッチ伝達トルクが軸部7bから軸部7aの方向に伝達される状態から軸部7bから軸部7aの方向に伝達される状態へと一時的に変化するような、当該ガタ詰め制御中において第2クラッチ12に適用されるべき目標クラッチ伝達トルクを設定し、この目標クラッチ伝達トルクが実現されるように、モータ2及び第2クラッチ12を制御する。このような目標クラッチ伝達トルクを用いてガタ詰め制御を行うことで、第2クラッチ12前後の回転速度の大小関係の逆転に起因するガタ詰めショックを効果的に抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、VCM20は、第2クラッチ12の推定クラッチ伝達トルクを求め、この推定クラッチ伝達トルクを目標クラッチ伝達トルクに一致させるべく、モータ2及び第2クラッチ12をフィードバック制御する。このようなクラッチ伝達トルクの推定値と目標値に基づきフィードバック制御を行うことで、第2クラッチ12の目標クラッチ伝達トルクを適切に実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(モータ)
3 トランスミッション(TM)
4 デファレンシャルギヤ機構(デフ機構)
5 車輪
7a 軸部(第1軸部)
7b 軸部(第2軸部)
9 駆動軸
11 第1クラッチ
12 第2クラッチ
13 動力伝達作動部(第1動力伝達作動部)
14 動力伝達作動部(第2動力伝達作動部)
20 VCM(制御装置)
PT パワートレイン
図1
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