(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】耐熱フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20240423BHJP
D04H 1/4326 20120101ALI20240423BHJP
D04H 1/587 20120101ALI20240423BHJP
【FI】
B01D39/16 A
D04H1/4326
D04H1/587
(21)【出願番号】P 2019234840
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 達也
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160394(JP,A)
【文献】実開昭52-082188(JP,U)
【文献】特開平11-290625(JP,A)
【文献】特開2009-097117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド繊維
が、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダによって接着されている不織布から構成され
、
不織布に含まれる繊維が、繊度が3~50dtexのポリイミド繊維のみである、
耐熱フィルタ(ただし、NO
X選択性接触触媒を含むものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、250℃以上の高温で使用できる、耐熱性の高い耐熱フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥炉のフィルタなど、高温の環境下でも使用できる耐熱性の高いフィルタが従来から求められている。例えば、特開2011-183236号公報(特許文献1)には、アラミド繊維やポリイミド繊維などの耐熱性繊維と、融点が100~180℃の低融点繊維又は該繊維を鞘部とする複合繊維をニードルパンチしたのち低融点繊維を融着固化したものを、熱硬化性樹脂で固着固化した、耐熱フィルター用濾材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の耐熱フィルター用濾材を250℃以上の高温環境下に置いた際に、低融点繊維が溶解して、濾材が収縮し、また濾材の低融点繊維がフィルタケースなどに貼りつくことがあった。
【0005】
本発明はこのような状況においてなされたものであり、収縮が小さく、かつ、貼りつきのない、耐熱性の高い耐熱フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「ポリイミド繊維を主体とする繊維が、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダによって接着されている不織布から構成された、耐熱フィルタ。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐熱フィルタは、ポリイミド繊維を主体とする繊維が、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダで接着されている不織布から構成されていることによって、耐熱性が高く、かつ、貼りつきのないフィルタを提供できることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の耐熱フィルタを構成する不織布に含まれる繊維は、ポリイミド繊維を主体とする。この「ポリイミド繊維を主体とする」とは、不織布に含まれる繊維のうち、ポリイミド繊維の割合が50mass%以上であることを意味する。不織布に含まれる繊維のうち、ポリイミド繊維の割合が大きければ大きいほど、より耐熱フィルタの耐熱性が優れることから、70mass%以上であるのがより好ましく、100mass%、すなわち不織布に含まれる繊維がポリイミド繊維のみであるのが更に好ましい。
【0009】
ポリイミド繊維の繊度は、特に限定するものではないが、1~50dtexが好ましく、3~40dtexがより好ましく、5~30dtexが更に好ましい。なお、「繊度」は、JIS L 1015(2010)、8.5.1に規定されているA法に則って測定した値をいう。また、ポリイミド繊維の平均繊維長も特に限定するものではないが、10~100mmが好ましく、30~90mmがより好ましく、50~80mmが更に好ましい。なお、「平均繊維長」は、JIS L 1015(2010)、8.4.1に規定されているC法に則って測定した値をいう。
【0010】
本発明の耐熱フィルタを構成する不織布には、ポリイミド繊維以外の繊維を含んでいてもよいが、耐熱フィルタの耐熱性が優れ、また、耐熱フィルタがフィルタケースなどへの貼りつきが起こらないように、ポリイミド繊維以外の繊維はポリフェニレンサルファイド繊維や、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維などの耐熱性を有する繊維であるのが好ましい。
【0011】
ポリイミド繊維を主体とする繊維の目付は、特に限定するものではないが、50~350g/m2が好ましく、80~300g/m2がより好ましく、100~250g/m2が更に好ましい。なお、「目付」とは、最も広い面(主面)1m2当たりの重量をいう。
【0012】
本発明の耐熱フィルタは、ポリイミド繊維を主体とする繊維を、ポリイミド繊維を固定して耐熱フィルタの物理的強度を向上し、また耐熱フィルタの耐熱性のため、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダで接着している。
【0013】
本発明の耐熱フィルタに含まれる、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダの目付は、低すぎると繊維間の接着強度が低くなり、耐熱フィルタの物理的強度の低下が発生するおそれがある。一方、目付が高すぎると耐熱フィルタの通気性が低下し、耐熱フィルタの圧力損失の上昇につながるおそれがあるため、5~100g/m2が好ましく、10~90g/m2がより好ましく、20~80g/m2が更に好ましい。
【0014】
更に、バインダにはポリアミドイミド樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料(無機顔料および/または有機系顔料)、抗菌剤、抗黴剤、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、セルロース由来の材料などの添加剤を含有していてもよい。
【0015】
ポリイミド繊維に含まれるポリイミド樹脂、及び、バインダに含まれるポリアミドイミド樹脂は、直鎖状高分子化合物または分岐状高分子化合物のいずれからなるものでも構わず、また高分子化合物がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また高分子化合物の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定するものではない。
【0016】
本発明の耐熱フィルタの目付は、特に限定するものではないが、100~400g/m2が好ましく、150~350g/m2がより好ましく、150~300g/m2が更に好ましい。また、耐熱フィルタの厚さについても特に限定するものではないが、2~30mmが好ましく、5~28mmがより好ましく、8~25mmが更に好ましい。なお、「厚さ」とは、加湿シートの主面からもう一方の主面に向けて、主面上へ20g/cm2の荷重を付加した時の両主面間の長さを、高精度デジタル測長機を用いて測定し、その長さをいう。
【0017】
以下に、本発明の製造方法について説明する。
【0018】
まず、ポリイミド繊維を主体とする繊維ウエブを調製する。繊維ウエブの調製方法としては、例えば、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を液体に分散させシート状に抄く湿式法、繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する直接法などが挙げられる。これらの中でもフィルタが塵埃を保持できるようにある程度の厚さが必要なことから、乾式法により繊維ウエブを調製するのが好ましい。また、繊維ウエブにおける繊維の絡合の程度を調整するため、繊維ウエブをニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することができるが、繊維の絡合により繊維ウエブが緻密になることで耐熱フィルタの通気性が低下し、耐熱フィルタの圧力損失の上昇につながるおそれがあるため、繊維ウエブをニードルパンチ装置や水流絡合装置に供しないのが好ましい。
【0019】
次いで、ポリイミド繊維を主体とする繊維ウエブを、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダによって接着させる。この接着は、例えば、繊維ウエブの片面に、バインダ液を含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーした後に、乾燥して実施できる。なお、繊維ウエブの両面をバインダで接着する場合には、前記操作を繰り返しても良いし、繊維ウエブの片面にバインダ液を付与し、他面にもバインダ液を付与した後に、乾燥して実施することもできる。
【0020】
最後に、270℃以上の高温雰囲気下でバインダに含まれるポリアミドイミド樹脂を十分に熱硬化させることにより、本発明の耐熱フィルタを製造することができる。270℃以上の高温雰囲気下で熱硬化させる時間は、特に限定するものではないが、1~60分が好ましく、3~50分がより好ましく、5~40分が更に好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
(実施例1)
ポリイミド繊維(繊度:6dtex、繊維長:76mm、ポリイミド樹脂一成分からなる)100mass%をカード機により開繊してポリイミド繊維ウエブ(目付:120g/m2、厚さ:8mm)を形成した。
次にポリアミドイミド樹脂を含む水溶液(樹脂固形分:10重量%)を、スプレーノズルでポリイミド繊維ウエブの両面にスプレーし、ポリアミドイミド樹脂をポリイミド繊維ウエブに付与した。この時のポリアミドイミド樹脂を含む水溶液の付着量は470g/m2であった。
その後、ポリアミドイミド樹脂を付与したポリイミド繊維ウエブを130℃のドライヤーで10分間乾燥させて、耐熱フィルタ前駆体(目付:180g/m2、厚さ:8mm、バインダ量:60g/m2)を調製した。
最後に、耐熱フィルタ前駆体を270℃のオーブンで10分間乾燥させて、耐熱フィルタ前駆体に含まれるポリアミドイミド樹脂を熱硬化させ、耐熱フィルタ(目付:150g/m2、厚さ:8mm、バインダ量:30g/m2)を調製した。
【0023】
(耐熱性試験)
(1)実施例1の耐熱フィルタを15cm×15cmに切り取ってサンプルとし、サンプルの重量を測定した。
(2)(1)のサンプルを300℃に設定したオーブン中の金属板の上に500時間静置した。
(3)(2)のサンプルをオーブンから取り出し、熱処理後のサンプルの面積と重量を測定し、熱による面積変化率と重量変化率を以下の式により求めた。
面積変化率(%):(225-a)/225×100
(a:熱処理後のサンプルの面積(cm2))
重量変化率(%):(g1-g2)/g1×100
(g1:熱処理前のサンプルの重量(g)、g2:熱処理後のサンプルの重量(g))
【0024】
耐熱性試験の結果、実施例1の耐熱フィルタの熱による面積変化率は1%と小さく、また、重量変化率は10%と小さかった。さらに、サンプルをオーブンから取り出す際に、サンプルの金属板への貼りつきはなかった。
【0025】
このことから、本発明の耐熱性フィルタは収縮が小さく、かつ、貼りつきのない、耐熱性が高いものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の耐熱フィルタは、乾燥炉のフィルタや排ガスフィルタなど、250℃以上の高温環境下で用いるフィルタとして好適に使用できる。