(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】グラフェン繊維、糸、複合体、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/16 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
D02G3/16
(21)【出願番号】P 2019563551
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 US2018032970
(87)【国際公開番号】W WO2018213446
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-19
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510243539
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ヨン,ラック
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,リン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン,ワン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190982(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103848415(CN,A)
【文献】国際公開第2015/084945(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308517(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317790(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015064(US,A1)
【文献】特表2019-513914(JP,A)
【文献】米国特許第02160962(US,A)
【文献】特開昭53-086847(JP,A)
【文献】特開昭53-090433(JP,A)
【文献】特開2004-143652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0248100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/39
D01F 9/08 - 9/32
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン糸は50ミクロン以下の平均直径を有しており、
前記グラフェン繊維が、5ミクロン以下の平均直径を有しており、前記グラフェン繊維は、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成している、ことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項2】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン繊維が、0.2ミクロン~50ミクロンの範囲の平均直径を有しており、前記グラフェン繊維は、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成しており、前記グラフェン成分が繊維長さの少なくとも50%に沿って連続形態を形成している、ことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項3】
グラフェン成分を含むグラフェン繊維であって、
前記グラフェン繊維が、0.2ミクロン~50ミクロンの範囲の平均直径を有しており、前記グラフェン繊維は、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成している、ことを特徴とするグラフェン繊維。
【請求項4】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン繊維が、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分が10ミクロン以上の平均幅を有し、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成している、ことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項5】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン繊維が、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されており、しかも、前記グラフェン成分が、前記グラフェン繊維の一端から他端まで、または、繊維の長さの少なくとも75%に沿って連続的に延びて前記グラフェン繊維を形成している、ことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項6】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン繊維が、0.2ミクロン~50ミクロンの範囲の平均直径を有しており、前記グラフェン繊維は、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成しており、
前記グラフェン糸が更にポリマーを含むことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項7】
複数のグラフェン繊維が一方向に整列した束からなるグラフェン糸であって、
前記グラフェン繊維が、0.2ミクロン~50ミクロンの範囲の平均直径を有しており、前記グラフェン繊維は、複数の二次元のグラフェン成分を含むものであり、
前記グラフェン成分が、平均長さおよび平均幅を有しており、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記グラフェン成分の平均長さが20ミクロン以上であり、前記グラフェン成分の平均幅は、前記グラフェン繊維の平均直径よりも大きく、前記グラフェン成分が折り畳まれるかまたは巻かれ、前記グラフェン繊維の長さに沿って
、隣接するグラフェン成分が融合されて前記グラフェン繊維を形成しており、前記グラフェン成分が、グラフェン、酸化グラフェン(GO)、還元された酸化グラフェン(rGO)、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とするグラフェン糸。
【請求項8】
前記グラフェン成分が、前記繊維の平均直径よりも大きい幅を有しており、前記グラフェン成分が繊維構造体内で折り畳まれるかまたは巻かれることを特徴とする、請求項2、4~7のいずれか1項に記載のグラフェン糸または請求項3記載のグラフェン繊維。
【請求項9】
前記の1つ以上のグラフェン成分が少なくとも10ミクロンの平均幅を有することを特徴とする請求項1~3、5~8のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項10】
前記の1つ以上のグラフェン成分が少なくとも20ミクロンの平均幅を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項11】
前記の1つ以上のグラフェン成分が少なくとも1mmの平均長さを有することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項12】
前記グラフェン成分が、2-15のグラフェン層を含む多層グラフェン成分であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項13】
前記グラフェン繊維の少なくとも1つが、グラフェンナノ繊維であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項14】
前記グラフェン糸が、合計すれば50重量%未満の黒鉛および非晶質炭素を含むことを特徴とする請求項1、2、4~13のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項15】
更にポリマーを含むことを特徴とする請求項1~5、7~14のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項17】
前記グラフェン成分の融合後のアスペクト比(長さ/幅)が、少なくとも100であり、融合前のアスペクト比の少なくとも5倍であることを特徴とする請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載のグラフェン糸または請求項3に記載のグラフェン繊維。
【請求項18】
炭素および酸素含有量が、合計すれば少なくとも80重量%であることを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項19】
前記の糸が1g/cm
3未満の密度を有することを特徴とする請求項1、2、4~18のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項20】
前記グラフェン糸が、50ミクロン以下の平均直径を有することを特徴とする請求項1、2、4~19のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項21】
前記の束ねられた繊維が撚られていることを特徴とする請求項1、2、4~20のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項22】
前記グラフェン糸が少なくとも1.5GPaの引張強度を有することを特徴とする請求項1、2、4~21のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項23】
前記グラフェン糸が20g/d(グラム力/デニール)以上の靱性(tenacity)を有することを特徴とする請求項1、2、4~22のいずれか1項に記載のグラフェン糸。
【請求項24】
1つ以上の前記グラフェン成分が、前記グラフェン繊維内で連続した形態を集合的に形成していることを特徴とする請求項1~23のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項25】
前記グラフェン成分が、グラフェン、酸化グラフェン(GO)、還元された酸化グラフェン(rGO)、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~6、8~24のいずれか1項に記載のグラフェン繊維または糸。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載のグラフェン繊維および/またはグラフェン糸と、流動媒体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項27】
前記流動媒体が、水および/またはアルコールを含むことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記流動媒体が、更に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
前記流動媒体が、更にイオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項26~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記流動媒体が、更にアンモニウムイオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項26~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記流動媒体が、更にポリマーを含むことを特徴とする請求項26~30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1~25のいずれか1項に記載のグラフェン繊維またはグラフェン糸と、マトリックス材料を含むことを特徴とする複合体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2017年5月16日に出願された米国仮出願第62/506,956号の優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
炭素繊維の需要は着実に増加しており、2020年までに89,000トンに達すると予想される。炭素繊維の最大の用途は航空宇宙および防衛産業であり、これは、炭素繊維における世界の需要の30%および世界の収入の50%を占める。炭素繊維は一般に、400℃未満の温度でポリマー(PAN)繊維を安定化し、約1500℃でポリマー(PAN)繊維を炭化し、3000℃までの温度で繊維を任意に黒鉛化することによって製造される。
【0003】
炭素繊維は、鋼よりも6倍までの比強度および67%大きい相対剛性を示すことができる。具体的には、典型的な炭素繊維では、繊維の引張強度が約2~7GPaで非常に高い。炭素繊維の密度/質量は非常に高く、典型的には約1.8~2g/ccの高い密度を有する。この密度/質量により、炭素繊維はいくつかの用途において非常に使いにくいものとなる。例えば、航空宇宙および自動車用途では、密度の増加はペイロードの増加につながり、推進のために追加の動力を必要とする。さらに、炭素繊維の破壊歪みは低く、典型的な値は2%未満であり、これにより多くの用途に不適当となる。
【発明の概要】
【0004】
場合によってはグラフェン状(例えば、グラフェン)繊維は、炭素繊維について観察されるものよりもはるかに低い密度およびより低い脆性(より高い破壊歪み)を有するように製造される。特定の例ではグラフェン状(例えば、グラフェン)繊維は、約1.8g/cc以下、約1.5g/cc以下、または約1g/cc以下の密度を有する。十分に高い強度と十分に低い密度のために、グラフェン繊維の強度/重量比は特に、ペイロードの全体的な質量が重要な考慮事項である航空宇宙産業および自動車産業などの場合に、炭素繊維に代わる興味深い代替物を提供する。
【0005】
炭素繊維(例えば、2~7GPa)と比較して、低密度であるが、低引張強度(例えば、0.1~0.5 GPa)を有するグラフェン繊維を製造するいくつかの予備的な試みは、高強度および低質量が所望される用途において、全体的な利益をほとんど提供しない。なぜならば、炭素繊維と同等の強度利益を達成するために、より多くの体積および同等の質量のグラフェン繊維を必要とするからである。
【0006】
本明細書で提供されるのは、多数の(複数の)束ねられたグラフェンフィラメント(繊維)からなるグラフェン糸である。特定の例では、このようなグラフェン繊維および/または糸は、低密度(例えば、約1.5g/cc以下、約1.2g/cc以下、約0.2g/cc~約1.2g/cc、約0.5g/cc~約1g/cc等)で非常に良好な引張強度(例えば、>1 GPa、>1.5 GPa、約2~3GPa等)を有する。このような強度および密度は、炭素繊維に対して非常に良好な強度対質量比をもたらし、グラフェン繊維の初期の試みを提供する。このような糸、個々のフィラメント(繊維)、ならびにこのようなフィラメントおよび糸の前駆体を製造する方法もまた、本明細書中に提供される。
【0007】
特定の実施形態では、複数の束ねられた繊維からなるグラフェン糸であって、前記複数の束ねられた繊維が、1つ以上のグラフェン成分を含む少なくとも1つのグラフェン繊維を含み、前記グラフェン繊維が平均厚さを有し、前記1つ以上のグラフェン成分が平均長さおよび平均幅を有し、前記平均長さが前記平均幅よりも大きく、前記1つ以上のグラフェン成分の平均長さおよび幅が、前記平均のグラフェン繊維の厚さよりも大きい、グラフェン糸が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される糸は本明細書に記載されるように、低密度および高強度を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸は、約20g/d(グラム力/デニール)以上の靭性(tenacity)を有する。さらなるまたは代替の実施形態では、そのような糸は、約4%以上(例えば、約5%以上)の破壊歪みを有するなど、炭素繊維よりも脆くない。
【0008】
また、本明細書の特定の実施形態では、グラフェン繊維(またはフィラメント)が提供され、そのようなファイバーは独立しており、および/または本明細書で提供される糸の一部である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは1つ以上のグラフェン成分を含むグラフェン繊維である。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるグラフェン繊維(例えば、ナノファイバー)は、グラフェン繊維の一端から他端まで、または繊維の長さの少なくとも25%、ファイバーの長さの少なくとも50%、ファイバーの長さの少なくとも75%、ファイバーの長さの少なくとも90%などの実質的な長さに沿って連続的に延びるグラフェン成分などの連続グラフェン成分を含む。特定の実施形態では、グラフェン繊維は平均厚さを有し、1つ以上のグラフェン成分は平均長さおよび平均幅を有し、この平均長さは平均幅よりも大きく、1つ以上のグラフェン成分の平均長さおよび平均幅は、平均グラフェン繊維厚さまたは平均直径よりも大きい。
【0009】
特定の実施形態では、前記のグラフェン繊維は、高含有量(例えば、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%など) の炭素を含む。いくつかの実施形態では、このグラフェン繊維は、高含量の1つ以上のグラフェン成分(例えば、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%など)を含む。特定の実施形態では1つまたは複数のグラフェン成分は、グラフェン(例えば、未処理または低欠陥グラフェン)、還元型酸化グラフェン、酸化グラフェン、またはそれらの任意の組合せを含む。特定の実施形態では、前記の繊維は、(集合的に)繊維内に(例えば、繊維の長さの少なくとも50%に沿って)連続形態を形成する1つ以上のグラフェン成分を含む。より特定の実施形態(例えば、1つ以上の酸化グラフェン成分が熱処理されて高アスペクト比グラフェンを形成する(例えば、元のグラフェンまたは比較的低欠陥のグラフェン(例えば、2%未満の欠陥密度を有する)))では、繊維が繊維内に(例えば、繊維の長さの少なくとも50%に沿って)1つ以上の連続的なグラフェンを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される繊維は、本明細書に記載されるように、低密度と高強度を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸は、約20g/d(グラム力/デニール)以上の靭性を有する。さらなるまたは代替の実施形態では、そのような糸は、約4%以上(例えば、約5%以上)の破壊歪みを有するなど、炭素繊維よりも脆くない。
【0010】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン成分、例えば本明細書のストックまたは繊維は、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、またはより好ましくは少なくとも20ミクロンの横方向寸法(例えば、最長寸法)を有する。場合によっては、より小さい横方向寸法のグラフェン材料を使用すると、繊維および/または脆いもしくは弱いグラフェン繊維の形成が不十分になる。特定の例では、より大きな横方向寸法のグラフェン繊維の使用は、熱処理の間にグラフェン成分の互いに対する融合を容易にし、これは、次に、繊維を横切っておよび/または繊維に沿って非常に良好な強度を有するグラフェン繊維の形成を容易にする。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン成分(例えば、本明細書中のストックまたは繊維)は、例えば、少なくとも2つのグラフェン層を含むなどの多層グラフェン成分である。好ましい実施形態では、前記の多層グラフェン成分は2~15のグラフェン層を含む。より好ましい実施形態では、この多層グラフェン成分は3~10のグラフェン層を含む。いくつかの例では、2~3のグラフェン状層が形成または繊維に形成されるときに、構造安定性がグラフェン構造にもたらされ、および/またはグラフェン構造の改善された整列を容易にし、例えば、プロセス後処理の間(例えば、熱融合処理の間)にグラフェン成分の良好な融合を容易にする。特定の例では、上記の成分がさらに多くの層を含み、本質的によりグラファイト状になるにつれて、黒鉛構造は、後処理処理の間にもはや繊維中に形成されず、性能パラメータの低下をもたらし得る。
【0012】
本明細書で提供される幾つかでは、前記のグラフェン繊維は、1つ以上のグラフェン成分と、ポリマーおよび/または炭素(例えば、非晶質および/またはグラファイト状)などの二次材料(例えば、マトリックスおよび/または連続材料)とを含む複合(ハイブリッド形態を含む)繊維である。特定の実施形態では、ポリマー/グラフェン繊維はポリマーと酸化グラフェンを含む。特定の実施形態では、このような繊維は、高グラフェン繊維および/またはグラフェン/炭素繊維の前駆体として有用である。
【0013】
本明細書のいくつかの実施形態では、グラフェン繊維または糸を製造するための方法が提供され、当該方法は以下を含む:
a. ストックを流動媒体(例えば、空気流入及び/又は凝固浴へ)中で電解し、当該ストックはグラフェン状成分と液状媒体(例えば、水)を含み、繊維(例えば、複数の非融合グラフェン状成分から成る)を製造する;および
b. 例えば、前記の非融合グラフェン成分を1つ以上の(例えば、複数の)連続的なグラフェン成分に融合させるなどして、前記繊維を熱処理する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記の流動媒体は凝固浴などの液状媒体である(例えば、プロセスは「湿式紡糸」として知られている)。特定の実施形態では液状媒体は水性媒体である。いくつかの実施形態では、液状媒体(例えば、水性媒体)は界面活性剤または塩を含む。特定の実施形態では、前記界面活性剤はイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤である。特定の実施形態では、イオン性界面活性剤は脂肪アルキル(例えば、6~26個の炭素、10~26個の炭素、14~22個の炭素などを含むアルキル)などの炭化水素基を含む。いくつかの実施形態ではイオン性界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、スルフェート、第四級アンモニウム、またはリン酸塩を含む。特定の実施形態では、イオン性界面活性剤は第四級アンモニウム基を含む。いくつかの実施態様において、脂肪アルキル基及び第四アンモニウムを含む例示的な界面活性剤としては、非限定的な例として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、及びジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0015】
特定の実施形態では、前記の液状媒体は約30℃以上の温度などに加熱される。特定の実施形態では、この液状媒体は約40℃以上、例えば約30℃~約60℃の温度を有する。より特定の実施形態では、液状媒体は約40℃~約55℃の温度を有する。ある場合には、高温の液状媒体は、個々の繊維または糸の良好な形成を促進し、より良好なパッキングおよびより良好な取扱い特性を有する。いくつかの例では、繊維が十分に充填されていない場合、ロール上に集められたときなどに、繊維が変形して、他の同様に構造化された繊維などの隣接する材料に付着するか、または結合することが可能な、より平坦なリボン状構造を形成し得る。
【0016】
本明細書のいくつかの実施形態では、グラフェン繊維または糸を製造するための方法が提供され、この方法は、1つまたは複数のガス流と共に、またはその中に流体ストックを注入することを含む。特定の実施形態では、上記の方法は、流体ストックを静電気的に帯電させる工程と、静電気的に帯電された流体ストックを1つまたは複数のガス流中に、および/または1つまたは複数のガス流と共に注入する工程とを含む(例えば、エレクトロスピニング工程)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは1つ以上のファイバー(例えば、フィラメント)を製造するための流体ストックのガスアシスト紡糸(例えば、エレクトロスピニング)の方法である。特定の実施形態では、流動媒体は、少なくとも0.1m/s、少なくとも0.5m/s、少なくとも5m/sなどの速度を有するような高速ガスである。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書中の方法は、グラフェン糸を形成するために、本明細書中に記載されるガスアシスト工程によって製造される1つ以上の繊維の束ねることをさらに含む。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の方法は(例えば、繊維のグラフェン状成分を整列させるために)繊維および/またはその束を延伸することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、例えば撚り糸を製造するために、繊維および/または束を撚ることを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、束ねられた繊維(糸)を、例えばスプール上に巻くことを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記の流体ストックは、酸化グラフェン(例えば、酸化グラフェン)などのグラフェン成分および液状媒体を含む。任意の適切な濃度のグラフェン成分が任意に利用される。特定の実施形態では、流体ストックは(例えば、繊維形成を促進するために)ポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、グラフェン成分の使用が特に、高品質かつ高度に均一な生成物の製造を可能にするように、そのような成分が高濃度で含まれる場合に、高粘度(ポリマー成分もストック中に含まれる場合にはより一層)を有する流体ストックをもたらす。いくつかの場合には、ストック中のグラフェン成分の濃度は0.5重量%を超え、例えば約1重量%以上である。より好ましい実施形態では、ストック中のグラフェン成分の濃度は約1.5重量%以上、例えば約2重量%である。特定の実施形態では、本明細書で提供される製造技術により、このような高粘度ストックの処理が可能になる。さらに、いくつかの例では、本明細書で提供される技術により、材料のコア/シェル効果を最小限に抑え、高性能繊維材料の製造を可能にする微細フィラメント(繊維)の形成が可能になり、次いで、高性能繊維材料を束ねて、本明細書で説明されるような束ねられた材料(糸)を製造することができる。いくつかの好ましい実施形態では、例えば微細繊維(例えば、その後、束ねられる)の形成を容易にするために、前記ストック中にポリマーが包含され、この微細繊維は、単にグラフェン成分を凝固させて不十分な性能特性および/または強いシェル/コア効果を有する大きな直径材料になるよりもむしろ、束ねられ得る。
【0020】
より詳細かつさらなる実施形態が、本明細書中の本発明の詳細な説明にて議論されている。本明細書で開示されるシステムおよび/または処理のこれらおよび他の目的、特徴、および特性、ならびに構造の関連要素の動作および機能、ならびに部品の組合せおよび製造の経済性は、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を考察することにより、より明らかになるのであろう。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的とするものであり、本発明の限定の定義として意図されるものではないことを明確に理解されたい。本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は文脈がそわないことを明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。さらに、特に断らない限り、本明細書で個々の成分について説明される値および特性は、そのような成分の複数(すなわち、2つ以上)の平均としての、そのような値および特性の開示も含む。同様に、本明細書における平均値および特性の開示は、本明細書における単一の成分に適用される個々の値および特性の開示も含む。
【0021】
場合によっては、示された値の「約」の値は、適切な結果および/または識別された値を使用して達成されたのと同様の結果を達成するのに適した値である。場合によっては、示された値の「約」の値は、示された値の1/2から2倍の間である。ある場合には、示された値の「約」の値は、示された値の±50%、示された値の±25%、示された値の±20%、示された値の±10%、示された値の±5%、示された値の±3%などである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の新規な特徴を、添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるのであろう。:
【0023】
図1は、酸化グラフェンにおけるグラフェン構造の様々な例示的な機能的改変を含む、酸化グラフェンの例示的な構造を示す。
【0024】
図2は、還元された酸化グラフェン、または非原始(non-pristine)グラフェン中のグラフェン構造の様々な例示的な機能的修飾を含む、還元された酸化グラフェンの例示的な構造を示す。
【0025】
図3は、本明細書に提供される例示的なグラフェン/ポリマー複合繊維を製造するためのシステムの例示的な概略図を示す。
【0026】
図4は、本明細書の繊維内の個々のグラフェン成分のローリング/フォールディングの例示的な概略図を示す。
【0027】
図5は、本明細書で提供されるサブミクロン繊維に含まれる例示的なGOシートのTEM画像を示す。
【0028】
図6は、例示的なミクロトーム化グラフェン状/ポリマー(GO/PVA)繊維(1.2% GO)のTEM画像を示す。
【0029】
図7は、例示的なミクロトーム化グラフェン状/ポリマー(GO/PVA)繊維(6% GO)のTEM画像を示す。
【0030】
図8は、本明細書に提供される例示的なエレクトロスプレーノズル装置の概略図を示す。
【0031】
図9は、本明細書に提供される例示的な撚りグラフェン糸を製造するためのシステムの概略図を示す。
【0032】
図10は、本明細書に提供される例示的な(ねじれていない)グラフェン糸を製造するためのシステムの例示的な概略図を示す。
【0033】
図11は、本明細書で提供される例示的なグラフェン繊維の画像を示し、このような繊維は、様々な温度に保持された凝固浴を使用して製造される。
【0034】
図12は、本明細書で提供される例示的なグラフェン繊維(熱処理なし)のTEM画像を示す。
【0035】
図13は、本明細書で提供される例示的なグラフェン繊維(熱処理を伴う)のTEM画像を示す。
【0036】
図14は、より大きなノズル導管を使用して製造された、本明細書で提供される例示的なアニールされたグラフェン繊維の画像を示す。
【0037】
図15は、より小さいノズル導管を使用して製造された、本明細書で提供される例示的なアニールされたグラフェン繊維の画像を示す。
【発明の詳細な説明】
【0038】
本明細書の特定の実施形態では、グラフェン糸、グラフェン繊維、それらの前駆体、それらの前駆体組成物、任意のそのような材料を製造する方法などが提供され、それらは本明細書でより詳細に説明される。
【0039】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのはグラフェン糸およびグラフェン繊維である。特定の実施形態では、グラフェン糸は、複数の(すなわち、2つ以上の)束ねられた繊維を含み、複数の束ねられた繊維は少なくとも1つのグラフェン状繊維を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン繊維は1つ以上のグラフェン成分を含む。場合によっては、本明細書で提供されるグラフェン繊維のグラフェン成分(例えば、事前融合)は、複数の大きな横方向寸法(例えば、および約10未満のアスペクト比(長さ/幅))のグラフェン成分(例えば、酸化グラフェン、酸化還元グラフェン、またはグラフェン)を含む。特定の例において、本明細書で提供される(融合後)グラフェン繊維は1つ以上のグラフェン成分(グラフェン)を含み、例えば、このグラフェン成分は、大きなアスペクト比(少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100などの長さ/幅)を有し、および/または繊維の長さに沿ってほぼ連続している。
【0040】
好ましい実施形態では、1つ以上のグラフェン成分(例えば、溶融前および/または溶融後)は平均長さおよび平均幅を有し、平均長さは平均幅よりも大きく、1つ以上のグラフェン成分(両方)の平均長さおよび幅は平均グラフェン繊維の厚さまたは直径よりも大きい。いくつかの実施形態では、この繊維(フィラメント)はベルト状または円筒構造を有する。グラフェン成分が繊維の平均直径より大きい幅を有する特定の実施形態では、グラフェン成分は繊維構造体内で折り畳まれるかまたは巻かれる。いくつかの例では、このような構成は、良好な横方向の可撓性および/または良好な長手方向の強度を容易にする。
【0041】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン成分(例えば、予め融合されたグラフェン繊維)は、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、またはより好ましくは少なくとも20ミクロンの横方向寸法(例えば、長さまたは最長寸法)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン状成分(例えば、融合後グラフェン繊維)は少なくとも100ミクロン、少なくとも200ミクロン、または少なくとも500ミクロンの横方向寸法(例えば、長さまたは最長寸法)を有する。ある場合には前溶融および後溶融グラフェン成分は、類似または異なる幅を有する(例えば、ある場合には、いくらかのグラフェン溶融がグラフェン成分の幅に沿って起こっても起こらなくてもよい)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン状成分は、約5ミクロン以上、約10ミクロン以上、約15ミクロン以上、約20ミクロン以上などの幅を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン成分(例えば、本明細書中のストックまたは繊維)は、多層グラフェン成分(例えば、少なくとも2つのグラフェン層を含む)である。好ましい実施形態では、前記の多層グラフェン成分は2~15のグラフェン層を含む。より好ましい実施形態では、前記の多層グラフェン成分は3~10のグラフェン層を含む。
【0043】
本明細書で提供される糸は、本明細書中の繊維を含むあらゆる糸を包含するが、好ましい実施形態では、前記の糸は複数のグラフェン繊維を含む。特定の実施形態では、前記糸内の繊維(フィラメント)の少なくとも20%がグラフェン状(例えば、数で)である。より具体的な実施形態では、前記糸内の繊維(フィラメント)の少なくとも40%がグラフェン状である。さらにより特定の実施形態では、前記糸内の繊維(フィラメント)の少なくとも60%がグラフェン状である。さらにより特定の実施形態では、前記糸内の繊維(フィラメント)の少なくとも80%がグラフェン状である。より特定の実施形態では、前記糸内の繊維(フィラメント)の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも98%など)がグラフェン状である。
【0044】
特定の実施形態では、高濃度のグラフェン成分(例えば、グラフェン)が、例えば、高強度、炭素繊維よりも低い脆性などを含むグラフェンの有利な特性を利用するために、本明細書の糸に含まれる。しかしながら、いくつかの実施形態では、他の材料(例えば、非グラフェン性炭素、ポリマーなど)が、本明細書で提供されるグラフェン繊維および/または糸に含まれる。このような材料は、繊維および/または糸の特性を改変するために、製造コストを低減するために、および/または本明細書で提供される前駆体中に提供される材料として含まれてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記糸の少なくとも10重量%がグラフェン繊維である。特定の実施形態では、前記糸の少なくとも20重量%がグラフェン繊維である。より特定の実施形態では、前記糸の少なくとも40重量%がグラフェン繊維である。さらにより特定の実施形態では、前記糸の少なくとも60重量%がグラフェン繊維である。より特定の実施形態では、前記糸の少なくとも80重量%がグラフェン繊維である。さらにより特定の実施形態では、前記糸の少なくとも90重量%(例えば、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%など)がグラフェン繊維である。いくつかの実施形態では、前記糸の少なくとも10重量%がグラフェン成分である。特定の実施形態では、前記糸の少なくとも20重量%がグラフェン成分である。より特定の実施形態では、前記糸の少なくとも40重量%がグラフェン成分である。さらにより特定の実施形態では、前記糸の少なくとも60重量%がグラフェン成分である。より特定の実施形態では、前記糸の少なくとも80重量%がグラフェン成分である。さらにより特定の実施形態では、前記糸の少なくとも90重量%(例えば、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%など)がグラフェン成分である。
【0046】
特定の実施形態では、本明細書で提供される糸は、グラフェン成分(単数または複数)および任意の非黒鉛状炭素成分(例えば、非晶質および/または黒鉛状炭素)を含む。特定の実施形態では、前記の糸はグラフェン成分(単数または複数)および非グラフェン炭素成分を含む。好ましい実施形態では、グラフェン成分は非グラフェン炭素成分よりも、糸および/または繊維の割合が大きい。例えば、特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン糸または繊維は、グラファイトおよびアモルファス炭素を合計すると50重量%未満にて含む。特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン糸または繊維は、合計すると40重量%未満の黒鉛状および非晶質炭素を含む。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン糸または繊維は、合計すると20重量%未満の黒鉛状および非晶質炭素を含む。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン糸または繊維は、合計すると10重量%未満の黒鉛状および非晶質炭素を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸は、その質量および/または密度を不必要に増加させることなく、例えばグラフェンの良好な性能特性を維持するために、より高いグラフェン成分を含む。
【0047】
特定の実施形態では、本明細書中の糸または繊維の炭素含有量(例えば、元素ベースで)は糸または繊維が複合体であるか、または高度にグラフェン性の糸/繊維であるかに応じて変化する。例えば、場合によっては糸/繊維の炭素含有量は、グラフェン/ポリマー複合糸繊維については同じ糸/繊維の熱分解後または洗浄後(例えば、それによってポリマーが溶媒で除去される)よりも低い。特定の実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも10重量%である。特定の実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも20重量%である。より特定の実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも40重量%である。さらにより特定の実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも60重量%である。さらにより特定の実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも80重量%である。好ましい実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも90重量%である。より好ましい実施形態では、炭素含有量は、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも95重量%である。場合によっては、本明細書で提供される高炭素含有糸は、樹脂、ポリマー、貴金属などのバルクマトリックス材料中の強化材料として使用される。
【0048】
特定の実施形態では、本明細書で提供される糸および繊維のグラフェン成分は、酸化グラフェンなどの酸化グラフェンである。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、高度の酸素および炭素を含む。いくつかの実施形態では、炭素および酸素含有量は合計すると、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも40重量%である。特定の実施形態では、炭素および酸素含有量は合計すると、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも60重量%である。さらにより特定の実施形態では、炭素および酸素含有量は合計すると、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも80重量%である。好ましい実施形態では、炭素および酸素含有量は合計すると、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも90重量%である。より好ましい実施形態では、炭素および酸素含有量は合計すると、本明細書で提供される糸および/または繊維の少なくとも95重量%である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、グラフェン成分(例えば、酸化グラフェンなどの酸化グラフェン)とポリマーを含む。特定の実施形態では、このような複合糸または繊維は、グラフェン/炭素複合糸/繊維、グラフェン糸/繊維を形成するためにさらに加工されるか、または材料用途自体で使用される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン糸および/または繊維は90重量%未満のポリマーである。特定の実施形態では、前記の糸および/または繊維は80重量%未満のポリマーである。より特定の実施形態では、前記の糸および/または繊維は60重量%未満のポリマーである。より特定の実施形態では、前記の糸および/または繊維は40重量%未満のポリマーである。より特定の実施形態では、前記の糸および/または繊維は20重量%未満のポリマーである。より特定の実施形態では、前記の糸および/または繊維は10重量%未満(例えば、5重量%未満、2重量%未満など)のポリマーである。
【0050】
様々な実施形態では、本明細書に記載の糸、繊維、フィラメント、ストック、方法などにおいて、任意の適切なポリマーが使用される。特定の実施形態では、前記ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはこのようなポリマーの1つ以上の任意の組合せである。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、比較的低い密度で良好な強度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書の糸または繊維の強度は、炭素繊維の強度に匹敵するが、より低い密度を有する(例えば、強度/密度は典型的な炭素繊維の強度/密度よりも大きい)。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、2g/cc(立方cm)未満の密度を有する。特定の実施形態では、前記の糸または繊維は1.9g/cm3未満の密度を有する。より特定の実施形態では、前記の糸または繊維は1.5g/cm3未満の密度を有する。より特定の実施形態では、前記の糸または繊維は1g/cm3未満の密度を有する。さらにより特定の実施形態では、前記の糸または繊維は0.8g/cm3未満の密度を有する。さらにより特定の実施形態では、前記の糸または繊維は0.6g/cm3未満の密度を有する。より特定の実施形態では、前記の糸または繊維は0.4g/cm3未満の密度を有する。いくつかの実施形態では、前記の糸または繊維は少なくとも約0.1g/cm3の密度を有する。特定の実施形態では、前記の糸または繊維は少なくとも約0.2g/cm3の密度を有する。
【0053】
様々な実施形態では、本明細書で提供される糸および繊維は任意の適切な直径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸は市販の炭素繊維の直径に匹敵する直径を有する。いくつかの例では、本明細書で提供される糸の直径は、同様の用途で使用される炭素繊維の直径と一致するように、特定の用途に合わせて調整されるが、そのようなサイズ一致は必要ではない。様々な実施形態では、本明細書で提供される方法は、フィラメントおよび糸サイズについて多くの制御をもたらし、その結果、要望に応じて、本明細書で提供される糸のサイズを調整するために、様々な実施形態にて束ね技法が修正される。様々な実施形態では、数百ミクロンから数分の1ミクロンまでのような、大きなまたは小さな糸および/または繊維が任意に提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約100ミクロン(ミクロン)以下の平均直径を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約50ミクロン以下の平均直径を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約25ミクロン以下の平均直径を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約0.2ミクロン以上の平均直径を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約0.5ミクロン以上の平均直径を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約1ミクロン以上の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約5ミクロン~約20ミクロンの平均直径を有する。代替の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は約1ミクロン~約10ミクロンの平均直径を有する。ある場合には、本明細書において糸が提供され、この糸は、繊維の直径が必然的に糸の直径よりも小さくなった複数の繊維を含む。特定の例において、グラフェンナノファイバー(例えば、5ミクロン未満、2ミクロン未満などの直径を有する)は、本明細書に記載される方法のような適切な処理によって製造され、この際、ストックは、ガス流でエレクトロスピニング(例えば、ガスアシストエレクトロスピニング)される。いくつかの例では、より大きなグラフェンナノファイバー(例えば、少なくとも2ミクロン、少なくとも5ミクロン、少なくとも10ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロンなどの直径を有する)が適切な処理によって、例えば、ストックが液状媒体に電気紡糸(例えば、湿式紡糸)される本明細書に記載される方法によって製造される。
【0054】
様々な実施形態では、本明細書で提供される糸は、繊維(フィラメント)の一方向に整列した束を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸は、撚られた繊維(フィラメント)の束を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸は、複数の束ねられた繊維(それ自体が撚られていても撚られていなくてもよい)を含み、そのような繊維の束は、より大きな繊維の束を形成するように撚られている。いくつかの例では、本明細書に記載される糸を提供するために本明細書に提供される繊維を束ねることは、材料全体におけるシェル/コア効果を低減し、および/または同様のサイズの繊維(例えば、大きなグラフェン繊維および/または同様の直径の炭素繊維)と比較して、改善された性能特性(例えば、強度、特に密度または質量に対する強度)をもたらす。
【0055】
特定の実施形態では、前記の糸および繊維は、低い脆性および高い強度(特に、本明細書に記載される密度などの質量および/または密度に対して)などの良好な性能特性を有する。特定の実施形態では、少なくとも1 GPaの引張強度を有する糸または繊維が本明細書にて提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約1.5 GPa以上の引張強度を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約2 GPa以上の引張強度を有する。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約2.5 GPa以上の引張強度を有する。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約3 GPa以上の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約2GPa~約3 GPaの引張強度を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、約10g/d(グラム力/デニール)以上の靭性を有する糸または繊維である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約15g/d以上の靭性を有する糸または繊維である。好ましい実施形態では、本明細書で提供されるのは、約20g/d以上の靭性を有する糸または繊維である。より好ましい実施形態では、本明細書で提供されるのは、約22.5以上の靭性を有する糸または繊維である。特定の実施形態では、高いグラフェン含有量(例えば、およびより低い非グラフェン炭素含有量、より低いポリマー含有量など)を有する糸または繊維はさらに高い靭性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸または繊維は、約25g/d以上の靭性を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供される糸またはは、約30g/d以上の靭性を有する。
【0057】
特定の実施形態では、本明細書に提供される糸は、本明細書に記載されるような1つ以上のグラフェン繊維を含む。一般に、本明細書で提供されるグラフェン繊維は、1つ以上のグラフェン成分を含む。様々な実施形態では、このグラフェン成分は、グラフェン(例えば、未処理または低欠陥)、還元酸化グラフェン、酸化グラフェン(または他の酸化グラフェン化合物)などである。特定の実施形態では、低欠陥グラフェンは3%未満の欠陥を有する(例えば、点ごとに、すなわち、グラフェンハニカム格子中のいくつの「点」が、元のグラフェンの完全なハニカム格子と異なるか)。いくつかの実施形態では、低欠陥グラフェンは2%未満の欠陥を有する。特定の実施形態では、低欠陥グラフェンは1%未満の欠陥を有する。特定の実施形態では、低欠陥グラフェンは0.5%未満の欠陥を有する。様々な場合において、欠陥には、水素、ハロゲン化物、炭化水素(例えば、アルキル基、アルキル架橋など)、酸素含有基(例えば、カルボキシレート、ヒドロキシル、カルボニル、ケトン、エーテルなど)、窒素含有基(例えば、アルキルアミノを含むアミノ)、硫黄などによるグラフェンの官能化、および/または欠けている炭素からの開環などのグラフェンの格子構造における他の欠陥などが含まれる。例えば、
図2の下部還元グラフェン酸化物は、開環、水素の付加(例えば、C=C二重結合の損失をもたらす)、および酸素含有基(例えば、エポキシド、水酸化物、およびカルボン酸塩(COOH))の付加をもたらす、炭素の欠失を含む、多くの欠陥を示す。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書の繊維、糸、流体ストックなどにて提供されるグラフェン成分は、酸化グラフェン成分(例えば、酸化グラフェン)である。特定の実施形態では酸化グラフェン成分は、本明細書に記載の熱、照射、化学、および/または他の方法などによる還元反応条件を介して還元材料に変換される。特定の実施形態では、還元性(例えば、水素ガス、不活性ガスと混合された水素ガスなど)または不活性雰囲気(例えば、ニトゲンガス、アルゴンガスなど)を使用する熱条件が利用される。特定の実施形態では、前記酸化グラフェン成分は、カルボニル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸基、カルボキシレート基、COOR基(例えば、RはC1~C6アルキルなど))、-OH基、エポキシド基、エーテルなどの、酸素で官能化されたグラフェン成分である。特定の実施形態では、前記酸化グラフェン成分(または酸化グラフェン)は、約60%以上の炭素(例えば、60%~99%)を含む。より具体的な実施形態では、前記酸化グラフェン成分は約60重量%~約90重量%の炭素、または約60重量%~約80重量%の炭素を含む。さらなるまたは代替の特定の実施形態では、前記酸化グラフェン成分は約40重量%以下の酸素、例えば、約10重量%~約40重量%の酸素、約35重量%以下の酸素、約1重量%~35重量%の酸素などを含む。様々な場合において、酸化グラフェンは、
図1の非限定的な例示的構造によって示されるような酸化グラフェン、および/または
図2の非限定的な例示的構造によって示されるような還元された酸化グラフェンを含む。
【0059】
特定の実施形態では、グラフェン成分(例えば、還元型酸化グラフェン)は、約60重量%以上の炭素(例えば、60重量%~99重量%)、例えば約70重量%以上、約75 重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、または約95重量%以上(例えば、約99重量%以上まで)を含む。特定の実施形態では、前記グラフェン成分(例えば、rGO)は、約35重量%以下(例えば、0.1重量%~35重量%)の酸素、例えば約25重量%以下(例えば、0.1重量%~25重量%)の酸素、または約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下(例えば、約0.01重量%~約0.1重量%~約1重量%以下など)の酸素を含む。特定の実施形態では、前記グラフェン成分(例えば、rGO)は、約0.1重量%~約10重量%、例えば約4重量%~約9重量、約5重量%~約8重量%などの酸素を含む。特定の実施形態では、例えば、酸化炭素含有材料(例えば、グラフェン成分)が還元される場合、グラフェン成分について、炭素対酸素のより高い比率が考慮される。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グラフェン成分(例えば、酸化グラフェン成分)の高スループット処理に有用であり、非常に均一な繊維および糸を形成する。特定の実施形態では、従来の技術を使用して可能であるよりも高い濃度のグラフェン含有成分を処理することができる。特定の実施形態では、本明細書で提供される流体ストックは、少なくとも0.5重量%、または少なくとも1重量%のグラフェン成分、例えば、少なくとも2重量%のグラフェン成分、少なくとも2.5重量%のグラフェン成分、少なくとも3重量%の成分、少なくとも5重量%のグラフェン成分など(例えば15重量%まで、10重量%までなど)を含む。特定の実施形態では、前記の流体ストックは、約2重量%~約15重量%(例えば、約10重量%~約15重量%)のグラフェン成分を含む。
【0061】
添加剤は、本明細書で提供される流体ストック中に、所望の任意の濃度で、本明細書に記載される方法またはシステムを使用する処理が可能な濃度まで存在する。いくつかの例では、本明細書の特定の例に記載されるような、制御されたガス蒸気で流体ストックを処理することにより、非常に高濃度のポリマーおよび/またはグラフェン成分を含む流体ストックの処理が可能になる。場合によっては、流体ストック中の添加剤の濃度は約70重量%までである。特定の実施形態では、流体ストック中の添加剤の濃度は約5重量%~約50重量%である。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記グラフェン成分は、酸化された形態のグラフェン(例えば、酸化グラフェン)である。特定の実施形態では、本明細書で利用されるプロセスが場合によってはそのような形態のグラフェン成分を可溶化、操作、分散、および/または他の方法で処理することがより容易であるため、酸化形態のグラフェンを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される繊維は、その中に埋め込まれた酸化形態のグラフェン成分(例えば、酸化グラフェン)、例えば、グラフェンまたは還元酸化グラフェンを含むグラフェン繊維の前駆体などを含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維はグラフェンを含む。特定の実施形態では、前記のグラフェンは高アスペクト比のグラフェンである(例えば、長さがその幅よりも著しく長い)。ある場合には、より低いアスペクト比のグラフェン成分前駆体(例えば、酸化グラフェン)の熱処理は、複数の(2つ以上の)グラフェン成分前駆体を融合させて、より長い第2のグラフェン成分(例えば、繊維の長さ全体までのような、より長い部分に沿ってに及ぶ)を形成する。さらに、場合によっては熱処理は、グラフェン成分を減少させ(すなわち、酸化状態またはグラフェン成分の酸素含有量を減少させ)、および/またはグラフェン格子内の欠陥を修復する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは1つ以上のグラフェン成分を含むグラフェン繊維である。場合によっては、このグラフェン繊維は、複数のグラフェン成分を含み、グラフェン繊維内に連続形態を集合的に形成する。特定の実施形態では、前記の連続形態が繊維の長さの少なくとも20%に及ぶ。より特定の実施形態では、前記の連続形態は、繊維の長さの少なくとも40%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続形態は繊維の長さの少なくとも60%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続形態は繊維の長さの少なくとも80%に及ぶ。特定の実施形態では、グラフェン繊維は連続的なグラフェン成分(例えば、連続的なグラフェン)を含む。特定の実施形態では、連続的なグラフェン成分が繊維の長さの少なくとも20%に及ぶ。より特定の実施形態では、連続的なグラフェン成分が繊維の長さの少なくとも40%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続的なグラフェン成分が繊維の長さの少なくとも60%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続的なグラフェン成分が繊維の長さの少なくとも80%に及ぶ。
【0064】
特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維はポリマーをさらに含む。特定の実施形態では、前記繊維は、繊維の長さ方向に沿って延びた連続ポリマーマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、この連続マトリックスは繊維の長さの少なくとも20%に及ぶ。より特定の実施形態では、連続マトリックスは繊維の長さの少なくとも40%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続マトリックスは繊維の長さの少なくとも60%に及ぶ。さらにより特定の実施形態では、連続マトリックスは繊維の長さの少なくとも80%に及ぶ。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは非常に高いアスペクト比のグラフェン成分を含むグラフェン繊維(例えば、熱処理などによって、記載される(前駆体)ファイバー内に連続マトリックスを形成するグラフェン成分の融合によって得られる)である。特定の実施形態では、グラフェンは少なくとも10のアスペクト比を有する。好ましい実施形態では、グラフェンは少なくとも100のアスペクト比を有する。特定の実施形態では、グラフェンは少なくとも250のアスペクト比を有する。より特定の実施形態では、グラフェンは少なくとも500のアスペクト比を有する。さらにより特定の実施形態では、グラフェンは少なくとも1,000のアスペクト比を有する。さらにより特定の実施形態では、グラフェンは少なくとも1万のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比グラフェンは、埋め込まれるか、またはそれが形成される繊維と(例えば、繊維に沿って点ごとに決定されるなど、平均して長手方向軸の15度以内(例えば、10度以内、5度以内、3度以内など)にて)実質的に整列される。
【0066】
特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維またはフィラメントは、任意の適切な直径(例えば、平均で)を有する。いくつかの実施形態では、前記繊維は、シェル/コア効果(例えば、シェルとコアが著しく異なる性能特性を有する効果、特にシェル性能特性がコアの性能特性より著しく良好である効果)を低減または最小化するのに十分に小さい直径を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維(フィラメント)は約5ミクロン以下の平均直径を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約2ミクロン以下の平均直径を有する繊維である。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約20nm~約2ミクロンの平均直径を有する繊維である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約5ミクロン以下の平均直径を有する複数のグラフェン繊維からなる糸である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約2ミクロン以下の平均直径を有する複数のグラフェン繊維からなる糸である。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約20nm~約2ミクロンの平均直径を有する複数のグラフェン繊維からなる糸である。
【0067】
本明細書中の特定の実施形態において、本明細書中に記載される繊維または糸を製造するための方法が提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されるようなグラフェン状繊維または糸を製造するための方法である。より特定の実施形態では、本方法は以下の工程を含む:
a. グラフェン成分と液状媒体を含む液体ストックを準備する工程;
b. 1つ以上の流動媒体(例えば、凝固剤浴またはガス流)と共に、またはその中に、前記流体ストックを注入する工程;および
c.(例えば、糸を作るときに)複数の繊維を糸に束ねる工程。
【0068】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流動媒体(例えば、ガス流)への流体ストックの注入は1つ以上の繊維を提供する。特定の実施形態では、1つ以上の流体ストックが複数のガス流および/または複数の液状媒体(例えば、凝固剤浴)とともに、またはその中に、例えば複数のノズルを用いて注入される。いくつかの実施形態では、流体ストックおよびガス流は、ノズル(例えば、エレクトロスピン)に供給され、ノズルは流動媒体(例えば、ガス流)と共に、または流動媒体(例えば、ガス流)内に流体ストックを(例えば、ジェットとして)噴出するように構成される。特定の実施形態では、流体ストックは、複数の繊維を製造するために、複数のノズルに供給される。他の実施形態では、単一のノズルが複数の繊維、繊維マット、または長繊維もしくは連続繊維を生成する。繊維マットまたは長繊維または連続繊維が製造されるいくつかの例では、それらのセグメントを整列させて束を形成し、本明細書に記載の糸を形成する。複数の繊維セグメントが束ねられるこのような場合は、本明細書に記載される「複数の繊維」を束ねる反復に含まれる。
【0069】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は以下の工程を含む:
a. グラフェン成分と液状媒体を含む流体ストックを準備する工程;
b. 前記流体ストックを静電気的に帯電させる工程;
c. 1つ以上の流動媒体(例えば、ガス流または液状媒体)と共に、またはその中に前記流体ストックを注入する工程;および
d. 複数の繊維を糸に束ねる工程(例えば、糸を形成するとき;繊維のみが形成される場合には、この工程は存在しない)。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書中の任意の方法は、ポリマーをさらに含む流体ストックを使用する。特定の例において、ポリマーの使用は微細繊維形成を促進する。場合によっては、微細なグラフェン繊維(例えば、酸化グラフェンなどの酸化グラフェンを含む前駆体ファイバーまたは前駆体)はグラフェン繊維に加工される。特定の例では、単一の大きな繊維ではなく、束ねられた微細繊維の形成は、コア/シェル効果の低減を促進する、および/または強度および/または強度対重量比などの性能特性を改善する。
【0071】
いくつかの実施形態では、グラフェン繊維または糸を製造するための方法が本明細書にて提供され、この方法は以下の工程を含む:
a. グラフェン成分と液状媒体を含む流体ストックを準備する工程;
b. 1つ以上の流動媒体(例えば、ガス流または液状媒体)と共に、またはその中に前記流体ストックを注入する工程;および
c. 複数の繊維を糸に束ねる工程(例えば、糸を形成するとき;繊維のみが形成される場合には、この工程は存在しない)。
【0072】
特定の実施形態では、グラフェン繊維または糸を製造するための方法が本明細書にて提供され、この方法は以下の工程を含む:
a. グラフェン成分、液状媒体及び任意のポリマーを含む流体ストックを準備する工程;
b. 前記の流体ストックを静電気的に帯電させる工程(例えば、流体ストックまたは静電流体ストックを1つまたは複数のノズル出口に供給して、繊維または複数の繊維を提供する(例えば、静電気的に帯電した流体ストックを液状媒体またはガス流などの流動媒体に注入する);
c. 複数の繊維を糸に束ねる工程(例えば、糸を形成するとき;繊維のみが形成される場合には、この工程は存在しない)。
【0073】
いくつかの実施形態では、グラフェン繊維または糸を製造するための方法が本明細書にて提供され、この方法は以下の工程を含む:
a. ポリマー、液状媒体及びグラフェン成分を含む流体ストックを準備する工程;
b. 前記流体ストックを、ノズル装置の第1の導管の第1の入口に供給する工程;この際、前記第1の導管は内面および外面を有する第1の壁によって第1の導管の長さに沿って囲まれ、第1の導管が第1の出口を有する;
c. 前記ノズル装置の第2の導管の第2の入口にガスを供給する工程;この際、第2の導管が、内面を有する第2の壁によって第2の導管の長さに沿って囲まれており、第2の導管が第2の出口を有し、第2の導管の少なくとも一部分が、前記第1の導管に沿って(例えば、第1の導管の1つまたは複数の側に)および/または第1の導管に対して少なくとも部分的に取り囲む関係で配置され、それによって、ガス流(例えば、高速ガス)が第2の出口に供給される;
d. 前記ノズル装置に電圧を供給する工程;および
e. 複数の繊維を糸に束ねる工程(例えば、糸を形成するとき;繊維のみが形成される場合、ステップは存在しない)。
【0074】
特定の実施形態では、特定の実施形態にて本明細書で提供される方法は、注入された流体ストックに対して少なくとも部分的に取り囲む関係で1つまたは複数のガス流を提供することを含む。特定の実施形態では、ガス流及び流体ストックがノズルに供給され、例えば、ガス流及び流体ストックはノズルから互いに近接して噴射される。いくつかの例では、ノズルが噴射された流体ストックに沿って(例えば、並んで)1つまたは複数のガス流を噴射するように構成される。特定の例では、1つまたは複数のガス流が、噴射された流体ストックに沿って(例えば、それに沿って)噴射され、噴射された流体ストックは噴射された流体ストックを取り囲む関係で噴射される。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1つのガス流が、噴出された流体ストックに対して少なくとも部分的に取り囲む関係で噴出される。より特定の実施形態では、少なくとも1つのガス流が、噴出された流体ストックに対して完全に取り囲む関係で噴出される。特定の実施形態では、流体ストックは、例えば、ガス流が注入された流体ストックを取り囲むように、1つ以上のガス流に注入される(例えば、本明細書に記載のノズルから放出される場合)。
【0075】
図3には、本明細書の方法の非限定的な例示的な概略図が示されている。図示されているように、流体ストックは、導電性炭素を炭素前駆体ポリマー(例えば、PAN、PVA、PVPなど)溶液と混合することによって調製される。この流体ストックはグラフェン繊維を製造するために、エレクトロスピニングノズルのようなノズルを通して供給される。
図4には、紡糸工程の間に、どのように大きく、二次元のグラフェン成分が変形し、最終的には、本明細書の方法に従って調製される場合のように、繊維形態で折り畳まれるか、または巻かれるかの概略図が示されている。図示されているように、大きいグラフェン状シートは、グラフェン状シートの幅および長さの両方よりも小さい直径を有する繊維に適合することができる。
図5~
図7には、同じ効果を示す実際の材料のTEM画像が示されている。図には、大きなグラフェン成分(酸化グラフェン)が示されている。図示されているように、グラフェン成分の横方向寸法は5~10ミクロンよりもはるかに大きいが、
図5および
図6に示されている得られた繊維は、直径が1ミクロンよりもはるかに小さい。
【0076】
特定の実施形態では、流体ストックは本明細書で提供されるノズルを介して、ガス流中に、またはガス流と共に注入される。いくつかの実施形態では、前記ノズルはストック導管を介して流体ストックを供給し、1つまたは複数のガス導管を介してガス流を供給し、ストック導管および1つまたは複数のガス導管は互いに15度以内の平均方向を有する。より特定の実施形態では、このような導管は互いに10度以内である。さらにより特定の実施形態では、このような導管が互いに5度以内(例えば、3度以内)である。特定の実施形態では、ストック導管およびガス導管は、その1つ以上の壁によって囲まれ、ガス導管の外壁または遠位壁の方向は、ストック導管を囲む壁の15度(例えば、平均して)以内である。より特定の実施形態では、当該角度は10度、5度、3度などの範囲内である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、本明細書で提供されるエレクトロスピニングノズルなどのノズル(例えば、それぞれ、ストック導管およびその1つまたは複数のガス導管)に、流体ストックおよび加圧された(例えば、キャニスタまたはポンプを介して)ガスを供給することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載のノズルに電圧を供給すること、例えば、本明細書に提供されるストックに電荷を供給することを含む。様々な実施形態では、任意の適切な電圧(例えば、直流電圧)が(例えば、ノズルに)印加される。特定の実施形態では、電圧は約8kV~約30 kV印加される。より特定の実施形態では、印加される電圧は約10kV~約25 kVである。特定の実施形態では、電源がノズルに電圧を供給するように構成される。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って提供される1つまたは複数のガス流は、ストックが提供される角度から15度を超えて逸脱しない(例えば、平均)角度で提供される。より特定の実施形態では、偏差角度は10度未満である。さらにより特定の実施形態では、偏差角度は5度未満である。さらにより特定の実施形態では、偏差角度は3度未満である。いくつかの実施形態では、偏差角度は1つまたは複数のガス流のそれぞれの平均、および/または1つまたは複数のガス流の円周方向に平均された方向により集合的に決定される。
【0080】
1つ以上のガス流がその中またはそれと共に注入される流体ストックに対して15度より大きい(例えば、10度未満、5度未満、3度未満など)偏差角度を有さない、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記のガス流は高速ガス流である。場合によっては、高速ガス流がストック、特にグラフェン成分を含む粘性ストックの押出または紡糸(スピニング)を容易にする。いくつかの例では、前記ストックは、例えばグラフェン成分とポリマーの両方を含み、高粘度である。特定の実施形態では、(例えば、1つまたは複数のガス導管のノズルまたは出口における)ガス流は、少なくとも0.05m/sの速度を有する。いくつかの実施形態では、前記速度は少なくとも0.1m/sである。特定の実施形態では、前記速度は少なくとも0.5m/sである。より特定の実施形態では、前記速度は少なくとも1m/sである。さらにより特定の実施形態では、前記速度は少なくとも5m/s、例えば少なくとも10m/s、少なくとも25m/s、少なくとも50m/sなどである。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の方法が提供されるか、あるいは、本明細書に記載のシステムは、ノズルの外側導管の外側入口に加圧ガスを供給するように構成される。いくつかの実施形態では、外側導管は内面を有する外壁によって導管の長さに沿って囲まれ、この外側導管は外側導管入口および外側導管出口を有する。場合によっては、加圧ガスが加圧キャニスタから、ポンプによって、または任意の他の適切な機構によって供給される。一般に、外側チャネルの入口に加圧ガスを供給すると、ノズルの外側チャネルの出口から高速ガスが放出される。任意の適切なガス圧力またはガス速度は、本明細書の方法および/またはシステムにおいて任意に利用される。特定の実施形態では、(例えば、外側チャネルの入口に)印加されるガス圧力は約15psi以上である。より特定の実施形態では、前記ガス圧が約20psi以上、約25psi以上、または約40psi以上である。特定の実施形態では、前記ノズル(例えば、その外側チャネルの出口)におけるガスの速度は約0.5m/s以上、約1m/s以上、約5m/s以上、約25m/s以上などである。より特定の実施形態では、前記速度は約50m/s以上である。さらにより特定の実施形態では、前記速度は約100m/s以上、例えば、約200m/s以上、または約300m/sである。特定の実施形態では、前記のガスは、空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、またはそれらの組み合わせを含むなどの、任意の適切なガスである。
【0083】
様々な実施形態では、前記の流体ストックが約0.01mL/分以上、約0.05mL/分以上、約0.1mL/分以上、約0.2mL/分以上、または約0.01mL/分~約10mL/分などの任意の適切な流量でノズルに供給される。特定の実施形態では、前記流体ストックは約0.01~約10mL/分、例えば、約0.05mL/分~約5mL/分、または約0.5mL/分~約5mL/分の速度で(例えば、第1の)入口に提供される。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書におけるガス流中にストックを注入する工程、および/または本明細書におけるストックを静電気的に帯電させる工程(例えば、ジェットなどの静電気的に帯電したストックを、ノズルまたはそのストック導管から放出する)により、繊維または複数の繊維が提供される。特定の実施形態では、繊維(例えば、そのファイバーセグメント)または繊維を本明細書に記載されているような糸に束ねる前に、ウェブまたは不織マットのような状態で、1つまたは複数の繊維が集められる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の繊維は、接地されたコレクターなどのコレクター上またはコレクターに近接して集められる。いくつかの例では接地コレクターの使用は、繊維ウェブ/マット形成に対する改善された制御を容易にし、特定の例では繊維ウェブ/マット形成の束ねを容易にする。特定の実施形態では、コレクターは本明細書に記載のノズルなどのストックを噴出するノズルに対して回転する。特定の実施形態では、コレクターはスピンしているか、または回転している。さらなるまたは代替の実施形態では、前記ノズルはコレクターの周りを回転する。
【0085】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、本明細書の方法に従って製造された繊維、糸、ウェブ、マットなどを、水、アルコール、または他の適切な溶媒などの溶媒で洗浄するか、またはそうでなければ曝すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄は、本明細書の方法に従って製造されるような、本明細書に記載の繊維、糸、または他の材料中のポリマーおよび/または非グラフェン性炭素含有量(例えば、ポリマーの炭化後)を減少させるためなどに、ポリマーの除去を容易にする。さらなるまたは代替の実施形態では、溶媒は、本明細書中の方法(例えば、凝固浴中)によって製造される繊維の結束または凝固を容易にする。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、本明細書のストックを紡糸(例えば、エレクトロスピニング)してジェットまたは繊維を提供することを含み、ジェットまたは繊維は紡糸されるか、そうでなければ、流動浴などの浴中に噴出される。場合によっては、浴は紡糸ノズルから離れる方向に流動する。特定の実施形態では、浴(例えば、流動浴)は本明細書に記載される糸へのような、繊維の束ねを容易にする。
【0086】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、液状媒体または溶媒と、本明細書で提供される繊維および/または糸(例えば、繊維、糸、および流動流動媒体などの流動媒体を含む凝固浴)とを含む。場合によっては、前記の繊維および/または糸はポリマーを含む。特定の例において、ポリマーは、流動媒体に溶解しない。他の実施形態では、ポリマーは流動媒体に少なくとも部分的に可溶性であり、繊維および/または糸からポリマーを少なくとも部分的に除去する。特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、流動媒体、本明細書で提供される繊維および/または糸、ならびにポリマー(例えば、流動媒体に溶解された)を含む。水、アルコール(例えば、メタノール、アルコール、プロパノールなど)、アルカン(例えば、ヘプタン)、ハロアルカン(例えば、ジクロロメタンまたはクロロホルム)、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの任意の適切な流動媒体または溶媒が任意に利用される。好ましい実施形態では、流動媒体は水および/またはエタノールを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記の流動媒体は、凝固浴などの液状媒体である(例えば、この方法は「湿式紡糸」として知られている)。特定の実施形態では、前記の液状媒体は水性媒体である。いくつかの実施形態では、前記液状媒体(例えば、水性媒体)は界面活性剤または塩を含む。特定の実施形態では、前記の界面活性剤はイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤である。特定の実施形態では、前記イオン性界面活性剤は、脂肪アルキル(例えば、6~26個の炭素、10~26個の炭素、14~22個の炭素などを含むアルキル)などの炭化水素基を含む。いくつかの実施形態では、前記イオン性界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、スルフェート、第四級アンモニウム、またはリン酸塩を含む。特定の実施形態では、前記イオン性界面活性剤は第四級アンモニウム基を含む。いくつかの実施態様において、脂肪アルキル基及び第四アンモニウムを含む例示的な界面活性剤は、非限定的な例として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、及びジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリドを含む。
【0088】
特定の実施形態では、前記の液状媒体は約30℃以上の温度などに加熱される。特定の実施形態では、液状媒体が約30℃~約60℃の温度を有する。より特定の実施形態では、液状媒体が約40℃~約55℃の温度を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で製造された繊維または糸は、そのグラフェンおよび/またはポリマー成分を還元および/または熱分解するなどのために、さらに化学的および/または熱的に処理される。特定の実施形態では、前記の繊維または糸は熱処理される。特定の実施形態では、前記繊維または糸は、酸化グラフェン成分(例えば、酸化グラフェン(GO))を還元グラフェン成分、例えば、還元グラフェン酸化物(rGO)またはグラフェンに還元するのに適した温度で熱処理される。いくつかの実施形態では、繊維または糸は、隣接するグラフェン成分を融合させてより長いグラフェン成分(例えば、グラフェン)を形成するのに適した温度で熱処理される。特定の実施形態では、繊維または糸は、ポリマーを非黒鉛状炭素(例えば、非晶質および/または黒鉛状炭素)に炭化するのに適した条件下で(例えば、不活性または還元条件下で高温で)熱処理される。いくつかの実施形態では、繊維または糸は、当該繊維または糸中に存在する非グラフェン成分(例えば、ポリマー)の量を除去または低減するのに適した条件下で熱処理される。
【0090】
特定の実施形態では、本明細書中の方法は、本明細書中で製造されるような本明細書中の繊維または糸を少なくとも1200℃の温度に熱処理することを含む。好ましい実施形態では、本発明の方法は、本明細書の繊維または糸を少なくとも1500℃の温度に熱処理することを含む。特定の実施形態では、本発明の方法は、繊維または糸を少なくとも2000℃の温度に熱処理することを含む。より特定の実施形態では、本発明の方法は、繊維または糸を少なくとも2500℃の温度に熱処理することを含む。さらにより特定の実施形態では、本発明の方法は、繊維または糸を約3000℃以上の温度に熱処理することを含む。特定の実施形態では、そのような熱処理は、本明細書で提供されるようなグラフェン/ポリマー繊維または糸のポリマーを(例えば、少なくとも部分的に)除去する。いくつかの実施形態では、(例えば、ポリマーを酸素で燃焼または燃やすことによって)ポリマーは炭化および/または除去される。
【0091】
特定の実施形態において、熱処理は、繊維または糸の減少したグラフェン成分(例えば、より少ない酸素含有量)をもたらす。場合によっては、他の還元技術(例えば、化学技術)が熱処理技術の代わりに、または熱処理技術に加えて使用される。特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維および/または糸のグラフェン成分(例えば、後-還元処理)は、5重量%未満などの低い酸素含有量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン繊維および/または糸は3重量未満の酸素を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン繊維および/または糸は1重量%未満の酸素を含む。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン繊維および/または糸は0.5重量%未満の酸素を含む。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供されるグラフェン繊維および/または糸は0.2重量%未満の酸素を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記の熱処理は、繊維内に連続または高アスペクト比グラフェン成分を形成するなど、紡糸ストックの複数のグラフェン成分が繊維の長さに沿って一緒に融合されるなど、融合グラフェン成分をもたらし、グラフェン成分は少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100などのアスペクト比(長さ/幅)を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックまたは非融合グラフェン成分は、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、またはより好ましくは少なくとも20ミクロンの横方向寸法(例えば、長さまたは最長寸法)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される融合グラフェン成分は、少なくとも100ミクロン、少なくとも200ミクロン、少なくとも500ミクロン、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも5mmなどの横方向寸法(例えば、長さまたは最長寸法)を有する。
【0093】
特定の実施形態では、本明細書で提供される繊維または糸(例えば、熱処理後)は、高いアスペクト比および/または低い欠陥を有するグラフェン成分を含む。いくつかの例では高アスペクト比グラフェン成分が(例えば、そのグラフェン成分が熱処理中に融合されて、1つ以上のより高いアスペクト比のグラフェン成分(例えば、低減された酸素含有量および/またはより少ない欠陥を有する)を生成することにつれて)繊維構築物と実質的に整列される。特定の実施形態では、本明細書中のグラフェン成分のアスペクト比は、熱処理前のグラフェン成分のアスペクト比の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、本明細書中の熱処理後グラフェン成分の酸素含有量は、本明細書中の熱処理前グラフェン成分の酸素含有量の50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、またはそれ未満である。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのはグラフェン成分を含む流体ストックである。より特定の実施形態では、前記流体ストックはグラフェン成分とポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーが除去および/または炭化された場合に、グラフェン繊維の収率を改善するためなどに、ポリマーに対して高濃度のグラフェン成分が望ましい。特定の実施形態では、本明細書中の流体ストック中に存在するグラフェン成分対ポリマーの重量比が少なくとも1:10である。好ましい実施形態では、グラフェン成分対ポリマーの重量比が少なくとも1:8である。特定の実施形態では、グラフェン成分の重量比は約1:6である。より特定の実施形態では、グラフェン成分の重量比は約1:5である。さらにより特定の実施形態では、グラフェン成分の重量比は約1:4である。さらにより特定の実施形態では、グラフェン成分の重量比は約1:3である。特定の実施形態において、グラフェン成分の重量比は、約1:1まで、またはそれ以上である。
【0095】
さらに、いくつかの実施形態では、スループット、繊維/糸の均一性、繊維/糸の連続性、および性能特性を改善するなどのために、流体ストック中のグラフェン成分およびポリマーの高充填が望ましい。一般に、流体ストック中への包含材料のこのような高い充填は、ストックに高い粘度をもたらし、これは、従来の技術を使用して押出、スピン、またはエレクトロスピンすることが困難または不可能である。いくつかの例では、本明細書に記載のガスアシストプロセスが、本発明の方法における高粘性流体ストックの高処理量を促進する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも5 cPの粘度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも10 cPの粘度を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも20 cPの粘度を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも50 cPの粘度を有する。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも100 cPの粘度を有する。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックが少なくとも250 cPの粘度を有する。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは少なくとも500 cPの粘度を有する。さらにより特定の実施形態では、本明細書で提供されるストックは1,000 cPまで、またはそれ以上の粘度を有する。
【0096】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、ノズルの第1の導管の第1の入口に流体ストックを提供することを含み、この第1の導管は、内面および外面を有する壁によって導管の長さに沿って囲まれ、第1の導管は第1の出口を有する。特定の例では、第1の導管の壁は、毛細管または他の構造を形成する。場合によっては第1の導管は円筒形であるが、本明細書の実施形態はそのような構成に限定されない。
【0097】
図8には、本明細書で提供される例示的なノズル装置800および830が示されている。いくつかの実施形態のノズル部品800および830の両方によって示されるように、このノズル装置は、第1(内側)導管を備えるノズル部品を備え、この第1の導管は、内部および外部表面を有する第1の壁801および831によって導管の長さに沿って囲まれ、第1の導管は第1の入口(または供給)末端802および832(例えば、第1の供給チャンバーに流体接続され、流体ストックを受け取るように構成される)と、第1の出口末端803および833とを有する。一般に、前記第1の導管は、第1の直径804および834(例えば、導管を取り囲む壁の内面に対して測定される平均直径)を有する。さらなる例では、前記ノズル部品は、第2(外側)導管を含み、第2の導管は内部および外部表面を有する第2の壁805および835によって導管の長さに沿って囲まれ、第2の導管は第2の入口(または供給)末端806および836(例えば、第2の供給チャンバーに流体接続され、高速または加圧ガス(例えば、空気)などのガスを受け取るように構成される)と、第2の出口末端807および837とを有する。いくつかの例では、第2の入口(供給)末端806および836は供給チャンバーに接続される。場合によっては、第2の入口(供給)末端806および836は、供給部品を介して第2の供給チャンバーに接続される。
図8には、供給チャンバー(図示せず)を入口供給部品815および845に流体接続する接続供給部品(例えば、管)813および843を備える例示的な供給部品が示されており、入口供給部品815および845は、導管の入口末端に流体接続される。この図は、外側導管のこのような構成を示しているが、このような構成は内側導管および任意の中間導管についても考えられる。一般に、第1の導管は、第1の直径808および838(例えば、導管を取り囲む壁の内面に対して測定される平均直径)を有する。第1および第2の導管は、任意の適切な形状を有する。いくつかの実施形態では、これらの導管は円筒形(例えば、円形または楕円形)、プリズム形(例えば、八角形プリズム)、円錐形(例えば、切頭円錐-例えば、外側導管835によって示されるよう)(例えば、円形または楕円形)、ピラミッド形(例えば、切頭八角錐などの切頭ピラミッド)などである。特定の実施形態では、これらの導管は円筒形である(例えば、導管および前記導管を囲む壁が針を形成する)。いくつかの例では導管の壁は平行であるか、または約1または2度以内の平行である(例えば、導管は円筒またはプリズムを形成する)。例えば、前記ノズル装置800は、平行な壁801と805(例えば、801a/801bおよび805a/805bによって示されるように、導管の反対側の壁に平行であるか、または中心長手方向軸809に平行)を有する第1および第2の導管を備える。他の実施形態では、導管の壁は平行ではない(例えば、導管が円錐(例えば、切頭円錐)またはピラミッド(例えば、切頭ピラミッド)を形成する場合など、直径が入口端で出口端よりも広い)。例えば、ノズル装置830は、平行な壁831(例えば、831a/831bによって示されるように、導管の反対側の壁、または中心長手方向軸839に平行)を有する第1の導管と、非平行な壁835(例えば、835a/835bによって示されるように、導管の反対側の壁、または中心長手方向軸839に平行でないか、または角度が付けられている)を有する第2の導管とを備える。特定の実施形態では、導管の壁は約15度の平行内(例えば、中心長手方向軸に対して測定され場合、または壁の対向する側面間の角度の半分)、または約10度の平行内である。特定の実施形態では、導管の壁は約5度の平行範囲内(例えば、約3度または2度の平行範囲内)にある。場合によっては、円錐形またはピラミッド形の導管が利用される。そのような実施形態では、平行な壁を有さない導管の直径は、前記導管の平均幅または直径を指す。特定の実施形態では、円錐またはピラミッドの角度は約15度以下(例えば、中心長手方向軸に対して、または反対側の導管側部/壁に対して測定された、導管側部/壁の平均角度)、または約10度以下である。特定の実施形態では、円錐またはピラミッドの角度は約5度以下(例えば、約3度以下)である。一般に、導管重複長さ810および840を有する第1の導管801および831、ならびに第2の導管805および835は、第1の導管が(第1および/または第2の導管の長さの少なくとも一部について)第2の導管の内側に配置される。場合によっては、第1の壁の外面および第2の壁の内面は、導管間隙811および841によって分離される。場合によっては、第1の出口端部は、突出長さ812および842だけ第2の出口端部を越えて突出する。特定の例では、導管重複長さ対第2の直径の比は、本明細書に記載される量などの任意の適切な量である。さらなる例または代替例では、突出部の長さ対第2の直径の比は、本明細書に記載される量、例えば、約1以下など、任意の適切な量である。
【0098】
また、
図8には、本明細書で提供される様々なノズル部品850、860、及び870の断面が示されている。各々は、第1の導管851、861および871と、第2の導管854、864および874とを含む。本明細書で論じられるように、いくつかの例では第1の導管は、内部表面および外部表面を有する第1の壁852、862および872によって導管の長さに沿って囲まれ、第2の導管は内部表面および外部表面を有する第2の壁855、865および875によって導管の長さに沿って囲まれる。一般に、第1の導管は、任意の適切な第1の直径853、863および864、ならびに任意の適切な第2の直径856、866および876を有する。導管の断面形状は任意の適切な形状であり、導管に沿った異なる点で任意に異なる。場合によっては、導管の断面形状は円形851/854および871/874、楕円形、多角形861/864などである。
【0099】
いくつかの例では、本明細書で提供される同軸構成ノズルおよび本明細書で提供される同軸ガス制御エレクトロスプレーは、第1の長手方向軸に沿って第1の導管または流体ストックを提供することと、第2の長手方向軸の周りに第2の導管またはガス(例えば、加圧または高速ガス)を提供すること(例えば、その工程で流体ストックをエレクトロスプレーすること)とを含む。特定の実施形態では、前記の第1および第2の長手方向軸は同じである。他の実施形態では、前記の第1および第2の長手方向軸は異なる。特定の実施形態では、第1および第2の長手方向軸は互いに500ミクロン以内、100ミクロン以内、50ミクロン以内などである。いくつかの実施形態では、第1および第2の長手方向軸は互いに15°以内、10°以内、5°以内、3°以内、1°以内などで整列される。例えば、
図8には、外側導管874と中心がずれている(又は中心長手方向軸を共有していない)内側導管871を有するノズル部品870の断面が示されている。場合によっては、この導管間隙(例えば、内壁の外面と外壁の内面との間の測定値)は任意選択で平均化され、例えば、外壁876の内面の直径と、内壁872の外面の直径との間の差を半分にすることによって決定される。場合によっては、外壁876の内面と内壁872の外面の直径との間の最小距離は、外壁876の内面と内壁872の外面の直径との間の最大距離の少なくとも10%(例えば、少なくとも25%、少なくとも50%、または任意の適切なパーセンテージ)である。
【0100】
特定の実施形態では、前記の導管は任意の適切な直径を有する。いくつかの実施形態では、外側導管の直径は約0.2mm~約10mm、例えば、約1mm~約10mmである。より特定の実施形態では、外側導管の直径は約0.2mm~約5mm、例えば、約1mm~約3mmである。特定の実施形態では、内側導管の直径は約0.05mm(例えば、約0.1mm)~約8mm、例えば、約0.5mm~約5mm、例えば、約1mm~約4mmである。
【0101】
好ましい実施形態(例えば、原料が液状媒体に紡糸される-「湿式紡糸」)では、流体ストックが0.4mm未満、例えば約0.35mm以下、約0.3mm以下、または約0.25mm以下の内部断面直径または幅を有する針または導管を通して紡糸され、注入され、射出され、または他の方法で処理される。場合によっては、この導管は約0.05mm~約0.4mm、例えば約0.05mm~約0.35mm、例えば約0.1mm~約0.3mmの内部断面直径を有する。特定の実施形態において、より小さい針が好ましく、例えば、紡糸および凝固の際に、例えば、凝固浴中で一定の繊維サイズを形成するために十分に少ない量の材料を供給する。
【0102】
いくつかの例では本明細書で論じられるように、前記のストック導管は、ガス導管に沿って、および/またはその内側に構成される。いくつかの例では、そのような導管は同一の軸に沿って構成されるが、オフセット配置もまた、本開示の範囲内であると考えられる。いくつかの実施形態では、外壁はガス導管を取り囲み、この外壁は内面を有する(例えば、ガス導管を画定する)。いくつかの例ではオフセット配置は、1つ以上の位置において、内側導管の外壁の側部を外側導管の内壁に接触させる結果となり、そのような配置は本明細書に提示される「囲まれた」の開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、ストック導管壁の外面とガス導管壁の内面との間の平均距離(本明細書では導管間隙と呼ぶ)は、任意の適切な距離である。特定の例では、導管間隙は約0.2mm以上、例えば約0.5mm以上である。より特定の実施形態では、導管間隙は約0.5mm~約5mmである。特定の実施形態では、この間隙は、(例えば、十分に小さい液滴サイズ、およびプルーム内および収集基材上の十分に均一な含有物分散をもたらすように)ノズルでの高速ガスを促進し、ノズルから噴出される荷電流体(ジェット)の十分な分裂を促進するのに十分に小さい。いくつかの実施形態では、ストックチャネルおよびガスチャネルが同一または類似の長手方向軸に沿って延び、その軸に沿って延びるストックチャネルおよびガスチャネルの両方の長さが、導管重複長さである。いくつかの実施形態では、上記のストック導管長さ、ガス導管長さ、および導管重複長さは約0.1mm~約100mm、またはそれ以上である。特定の実施形態では、ストック導管長さ、ガス導管長さ、および導管重複長さは約0.5mm~約100mm、例えば、約1mm~約100mm、約1mm~約50mm、約1mm~約20mmなどである。特定の実施形態では、第1の直径に対する前記導管重複長さの比が約0.5~約10、例えば、約1~約10である。いくつかの実施形態では、ストック導管がガス導管よりも長く、ストック導管は例えば、
図8に示されるように、ガス導管を越えて突出している。いくつかの実施形態では、突出部の長さは約-0.5mm~約1.5mm、例えば、約0mm~約1.5mmである。
【0103】
また、本明細書のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の糸または繊維などのグラフェン成分を含む複合体が提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、グラフェン含有率の高い糸などのグラフェン糸を含む複合体である。より特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、低欠陥高グラフェン含量糸を含む複合体である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される糸の長さは、本明細書の複合体などにおいて、少なくとも100ミクロン、少なくとも500ミクロン、少なくとも1mm、少なくとも0.1cm、少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも2cm、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、グラフェン糸が本明細書に記載の複合体などの織物マットの織物にて提供される。グラフェン糸対バルク材料の任意の適切な重量比が、任意に利用される。例示的な実施形態では、本明細書で提供される複合体は、約1:20~約1:1、例えば約1:10~約1:5のグラフェン糸対バルクマトリックス材料の重量対重量比を含む。このような複合体は、本明細書に記載されるバルクマトリックス材料に本明細書に提供される糸を埋め込むことなど、任意の適切な方法で製造される。いくつかの実施形態では、本明細書中の複合体を調製するための方法は、本明細書中の方法に従って糸を製造する工程をさらに含む。
【0104】
様々な実施形態では、熱可塑性樹脂、樹脂、金属などの任意の適切なバルク材料が本発明にて利用される。特定の実施形態では、バルク材料はエポキシ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノール樹脂などである。
【0105】
様々な実施形態では、本明細書で提供される複合体は、航空宇宙、自動車、土木、または他の用途で使用される。本明細書では、このような複合体を含む飛行機、ヘリコプター、宇宙船、自動車(自動車、トラックなど)が提供される。様々な実施形態では、そのような複合体は、そのような車両のフレーム、胴体、本体、ブレードなどに使用される。
【実施例】
【0106】
実施例1‐GO/PVA流体ストック
グラフェン成分である酸化グラフェン(0.75重量%)を水性媒体に充填することによって、第1のストック画分を調製する。この懸濁液を均質になるまで撹拌する。ポリビニルアルコール(PVA)を水性媒体(脱イオン水)(0.1gポリマー/ mL媒体)に充填することによって、第2の画分ストックを調製する。この混合物を均質になるまで(溶解するまで)撹拌する。
【0107】
1:10のGO:PVA重量比を有する流体ストックを、前記の第1および第2のストック画分を適切な量で混合し、均質になるまで撹拌することによって調製する。
【0108】
1:5、1:3、および1:2のGO:PVAの重量比を有する他の流体ストックを上記のように調製する。
実施例2‐エレクトロスピニングGO/PVA
【0109】
実施例1の流体ストックを、ガスアシスト技術によって電気紡糸する。全体の工程および装置を
図1に示す。流体ストックを、4.13×10
-4mの内側ノズル直径(流体ストック)および1.194×10
-3mの外側(空気)直径を有する紡糸口金に接続されたシリンジポンプに装填する。ノズルとコレクターとの間の距離は約15~20cmであり、流体ストックは、約0.1~0.5ml/分の速度で紡糸される。約+15~25kVの電荷がコレクターにて維持される。ノズルにおける空気速度は>5m/sである。ノズルにおける空気および流体ストックの温度は、約300 Kである。
実施例3‐GO/PVA糸(回転コレクター)
【0110】
実施例2の(接地された)コレクターは、電気紡糸ノズルに面した開放端を有する円錐の形状である。
図9に示されるように、一対のノズルがコレクターの両側に配置されている。流体ストックが電気紡糸されると、繊維ウェブ又はマットがコレクター上及びコレクターに近接して形成される。コレクターが回転すると、繊維ウェブは撚り合わされて撚り糸を形成し、この撚り糸は
図9に示されるように、スプール上に延伸されて集められる。
実施例4‐GO/PVA糸(凝固浴)
【0111】
流体ストックは湿式紡糸されるか、または紡糸ノズルを通して(例えば、流動している)流体中に押し出される。
図10に示されるように、紡糸流体ストックは、流体浴内にナノファイバーを提供し、浴の流動性および/または巻き取りコレクターは繊維を一方向に延伸するのに役立ち、その結果、その整列および(ねじれていない)結束をもたらす。液状媒体の流体浴は、流体ストックからのあらゆる残留流体の除去を容易にし、繊維形成を強化する。ポリマーおよび/または酸化グラフェンと非相溶性の溶媒の使用は、繊維のさらなる結束を促進する。ポリマーと相溶性であり、かつ酸化グラフェンと相溶性でない溶媒の使用は、繊維からのポリマーの除去、および得られるポリマーを含まない(またはポリマー含量が減少した)繊維の束ねを容易にする。ロール装置は繊維を延伸するために使用され(例えば、グラフェン状整列をさらに容易にする)、スプール上に集められる。
実施例5‐焼成糸
【0112】
実施例3および4で集められた複数の糸を収集し、不活性雰囲気(Ar)または還元雰囲気(H2/Ar)中で約3,000℃に加熱して、炭素-グラフェン複合糸を得る。
【0113】
実施例3および4で集められた複数の糸を、別に収集し、空気中で1,200℃に加熱してポリマーを「燃焼」させ、次いで、不活性雰囲気(Ar)または還元雰囲気(H2/Ar)中で約3,000℃に加熱し、高グラフェン含量の糸を得る。
実施例6:交替ポリマー
【0114】
実施例1の手順に従って、ポリエチレンオキシド(PEO)とポリアクリロニトリル(PAN)(ポリマー溶媒としてDMFを使用する)を使用して、さらに別の流体ストックを同様に調製する。これらの流体ストックは実施例2~4に従って処理されて、それから繊維および糸を形成し、実施例5の方法に従って焼成され、炭素-グラフェン複合体および/または高グラフェン含有糸を製造する。
実施例7‐GO湿式紡糸
【0115】
約0.5重量%の剥離された大きな酸化グラフェン(例えば、約20ミクロン以上);約0.5重量%の剥離された小さな酸化グラフェン(約10ミクロン);2重量%の剥離された大きな酸化グラフェン;2重量%の剥離された小さな酸化グラフェン;および2重量%の多層の大きな酸化グラフェンを含む水性ストックを含む、種々の酸化グラフェンストックを調製する。これらのストックは、実施例4に記載されたものと同様の方法を使用して液状媒体中にエレクトロスピニングされ、この際、凝固浴はイオン性界面活性剤を含む水溶液を含む。
【0116】
観察された結果は、低濃度(0.5重量%)のGO溶液が紡糸時に連続繊維を形成しなかったことである。(凝集したGOを含む)より小さいサイズを有する2重量%のGOの紡糸では繊維を形成したが、このような繊維は触ると極めて脆かった。大きなサイズを有する2重量%のGOの紡糸によってもまた、脆いファイバー(凝集GOを含む)を形成したが、より小さなGOを含むGOファイバーよりも良好に形成された。大きな多層GOを有する2重量%のGOの紡糸は、良好に形成され、扱いやすく、連続した繊維の形成をもたらした。
【0117】
得られた繊維を集め、熱処理した。
図12には、熱処理前の繊維の例示的な透過型電子顕微鏡写真(TEM)が示されている。
図13には、熱処理前の繊維の例示的な透過型電子顕微鏡写真(TEM)が示されている。観察されるように、グラフェン成分のいくらかの整列が熱処理の前に繊維において観察されるが、熱処理の後には、グラフェンシートの明確な整列が観察される(
図13)。
実施例8‐GO湿式紡糸界面活性剤
【0118】
実施例7と同様の方法を用いて、種々の液状媒体の中に多層で大きなGOストックを紡糸する。凝固浴/液状媒体を形成するために、様々な塩および溶媒を利用した。塩化カルシウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩、および第四級アンモニウム界面活性剤などの界面活性剤を溶媒に溶解または懸濁させた。酢酸エチルと塩とを含む浴中に紡糸すると、不十分な繊維形成が観察された。塩と共に水溶液を使用した場合、より良好な結果が観察されたが、一貫した連続繊維は観察されなかった。水およびエタノールと塩との混合物を使用した場合、さらに良好な繊維形成が観察されたようであったが、試料をわずかに振盪すると、繊維は崩壊した。しかしながら、水性イオン性界面活性剤(第四級アンモニウム)浴を使用した場合、連続的なグラフェン繊維を回収して非常に良好な結果が得られた。
実施例9‐GO湿式紡糸温度
【0119】
実施例7と同様の方法を用いて、多層で大きなGOストックを、イオン性界面活性剤を含む水性浴中に紡糸し、この浴を所与の温度で一定に保つ。浴温度は、室温、40℃、50℃、および60℃とした。室温浴中に紡糸し、繊維をグラファイト棒上に集めると、大きな繊維が形成されるが、このような繊維は乾燥後にグラファイト棒から除去するのが困難である。40℃に保持された浴に紡糸すると、繊維は良好に形成され、黒鉛ロッド上に集められる(圧延される)。乾燥後、上記の繊維はロッドから容易に除去された。50℃の浴を使用した場合にも同様の結果が得られ、重なり合った繊維を互いに分離する能力が改善された。50℃で得られたものと同様の結果が60℃の浴で得られたが、得られた繊維はより脆く、取り扱いが困難であった。
図11には、様々な温度で得られた繊維の画像が示されており、浴温度が上昇することにつれて繊維直径が減少している。
実施例9‐GO湿式紡糸導管サイズ
【0120】
実施例7と同様の方法を用いて、多層で大きなGOストックを、イオン性界面活性剤を含む水性浴中に紡糸する。22ゲージ針(~0.413mm)および27ゲージ針(~0.21mm)を使用して、紡糸ノズルを変化させる。繊維を集め(室温)、乾燥し、熱処理(アニール)する。より大きな針(22G)は乾燥および熱処理の両方の後に、約70ミクロン~約105ミクロンのサイズを有する乾燥繊維および約40ミクロン~約90ミクロンのサイズを有するアニールされた繊維と共に、より大きなナノ繊維を生成した。
図14には、より大きなノズル(22G)から製造された例示的な繊維の画像が示されている。より小さい針(27G)は、乾燥および熱処理の両方の後に、より小さいナノファイバーを生成し、乾燥されたファイバーは約30ミクロンの直径を有し、アニールされたファイバーは約20ミクロンのサイズを有していた。
図15には、より小さいノズル導管(27G)から製造された例示的な繊維の画像が示されている。
図14および
図15の画像に見られるように、より小さいノズル導管を使用すると、乾燥後およびアニーリング後の両方で、繊維の長さに沿って、はるかに一貫した均一な繊維(例えば、サイズ)を有する繊維が生成した。