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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】温度計
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20210101AFI20240423BHJP
【FI】
G01K1/08 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188159
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077344
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-08-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月26日発行の食品用中心温度センサBCシリーズのチラシにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000117814
【氏名又は名称】安立計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 生至郎
(72)【発明者】
【氏名】水門 裕介
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-17428(JP,U)
【文献】特開2018-205049(JP,A)
【文献】実開昭57-28343(JP,U)
【文献】特開昭54-25881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に挿抜可能な探針、筒状の把手、および、前記探針の先端に測温部が配置された温度検知素子を備え、前記探針が前記把手の先端から突出するとともに前記温度検出素子の信号線が前記把手の末端から導出された温度計において、
前記把手は、先端から末端に向かって順に配置される先端蓋体、筒体、および、末端蓋体が金属で構成され、前記先端蓋体が前記探針の中途位置に密閉固定されて末端部の外円筒面にネジ山が形成され、前記筒体が先端および末端の両端が開口するとともに先端部の内円筒面および末端部の内円筒面のそれぞれにネジ山が形成され、前記末端蓋体が前記信号線の中途位置に密閉固定されて先端部の外円筒面にネジ山が形成され、前記先端蓋体が前記筒体の先端部に螺合されて前記筒体の先端開口を密閉するとともに前記末端蓋体が前記筒体の末端部に螺合されて前記筒体の末端開口を密閉する密閉構造を成すことを特徴とする温度計。
【請求項2】
前記先端蓋体はネジ山が形成された外円筒面を有する先端軸部とこの先端軸部よりも先端側で外側に張り出した先端頭部と前記先端軸部および前記先端頭部を貫通して前記探針が挿通される探針用孔部とから成り、その探針用孔部の末端が前記探針に密閉固定され、
前記末端蓋体はネジ山が形成された外円筒面を有する末端軸部とこの末端軸部よりも末端側で外側に張り出した末端頭部と前記末端軸部および前記末端頭部を貫通して前記信号線が挿通される信号線用孔部とから成り、その信号線用孔部の先端が前記信号線に密閉固定される請求項1に記載の温度計。
【請求項3】
前記筒体は先端部に形成されたネジ山よりも先端側の部位にそのネジ山の谷底まで拡経した先端内円筒面と末端部に形成されたネジ山よりも末端側の部位にそのネジ山の谷底まで拡経した末端内円筒面とが形成され、
前記先端蓋体は前記先端蓋体が前記筒体に螺合された状態で前記筒体の先端開口を前記探針用孔部の部分を除いて塞ぐ先端円環面とその先端円環面から末端側に張り出して前記先端内円筒面の全域に当接する先端外円筒面とが形成された先端閉塞部を有し、
前記末端蓋体は前記末端蓋体が前記筒体に螺合された状態で前記筒体の末端開口を前記信号線用孔部の部分を除いて塞ぐ末端円環面とその末端円環面から先端側に張り出して前記末端内円筒面の全域に当接する末端外円筒面とが形成された末端閉塞部を有する請求項2に記載の温度計。
【請求項4】
前記先端蓋体および前記末端蓋体のそれぞれが前記筒体に螺合された状態で溶接された請求項1~3のいずれか1項に記載の温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計に関し、より詳細には、探針を測定対象物に差し込んでその測定対象物の内部の温度を検出する温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
探針を測定対象物に差し込んでその測定対象物の内部の温度を検出する温度計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の温度計は、係止部材が把手に形成された貫通孔に挿入して把手に対して入れ子構造となる抜止本体を把手に固定することで、ネジを用いずに、把手の先端からセンサ本体が張り出した状態の温度計を組み立てることが可能となる。それ故、把手の外表面に形成される穴や溝を小さくするには有利になり、把手自体に汚れが溜まらなくなって、常時、清潔な状態を保つという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-205049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の温度計は抜止本体の構造が複雑なことから製造工程を簡易にするには、抜止本体を樹脂で構成する必要があった。しかしながら、抜止本体を樹脂で構成すると、耐薬品性や耐熱性などの耐久性の向上が見込めない。一方、抜止本体の耐薬品性を向上するために抜止本体を金属で構成すると生産性の向上が見込めない。
【0005】
本発明の目的は、清潔な状態を保つことが可能な構造を有する温度計の生産性の向上と耐久性の向上とを両立する温度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の温度計は、測定対象物に挿抜可能な探針、筒状の把手、および、前記探針の先端に測温部が配置された温度検知素子を備え、前記探針が前記把手の先端から突出するとともに前記温度検出素子の信号線が前記把手の末端から導出された温度計において、前記把手は、先端から末端に向かって順に配置される先端蓋体、筒体、および、末端蓋体が金属で構成され、前記先端蓋体が前記探針の中途位置に密閉固定されて末端部の外円筒面にネジ山が形成され、前記筒体が先端および末端の両端が開口するとともに先端部の内円筒面および末端部の内円筒面のそれぞれにネジ山が形成され、前記末端蓋体が前記信号線の中途位置に密閉固定されて先端部の外円筒面にネジ山が形成され、前記先端蓋体が前記筒体の先端部に螺合されて前記筒体の先端開口を密閉するとともに前記末端蓋体が前記筒体の末端部に螺合されて前記筒体の末端開口を密閉する密閉構造を成すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、清潔な状態を保つことが可能な構造の把手を、樹脂に比して耐久性が高い金属で構成するとともに蓋を筒体の両端に螺合するという簡易な方法でその把手を組み立て可能になり、各部材の構造が簡易になるとともに部品点数が低減される。それ故、温度計が清潔な状態を保つことが可能な構造を有していても、生産性の向上と耐久性の向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】温度計の実施形態を例示する斜視図である。
図2図1の探針および温度検出素子の断面を例示する断面図と把手の先端蓋体の側面を例示する側面図とを合わせた図である。
図3図1の把手の末端蓋体と温度検出素子の信号線の側面を例示する側面図である。
図4図1の把手の筒体の側面を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、温度計の実施形態について、図面を参照して説明する。図中ではX方向を温度計1の先端から末端に向かう方向で、探針10の延在方向かつ把手20の筒軸方向とし、YZ平面をX方向に垂直な平面とし、Y方向およびZ方向を互いに直交する方向とする。また、本開示における先端とは温度計1において探針10が突出した側を示し、末端とは温度計1において温度検出素子30の信号線34が導出された側を示す。また、本開示における外側とは把手20の筒軸径方向外側を示し、内側とは把手20の筒軸径方向内側を示す。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0010】
図1に例示するように、実施形態の温度計1は探針10、把手20、および、温度検知素子30を備え、探針10が把手20の先端から突出するとともに温度検出素子30の信号線34が把手20の末端から導出されて構成される。温度計1は突出した探針10を測定対象物に差し込んでその測定対象物の内部の温度を温度検出素子30により検出し、信号線34が接続された図示しない測定装置が温度検出素子30が検出した温度を表示する装置である。
【0011】
温度検出素子30は2種類の金属線31、32の先端どうしを接触させた接合点である測温部33と、それらの金属線31、32が被覆材により一纏めに被覆されて形成される信号線34と、を有し、測温部33に発生する熱起電力を信号線34を介して測定装置に送信する。温度検出素子30としては、+極にクロメル、-極にアルメルを用いたタイプK、+極にクロメル、-極にコンスタンタンを用いたタイプE、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、-極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類がある熱電対が例示されるが、白金などの金属の温度変化に応じて電気抵抗値が変化する特性を利用した測温抵抗体で構成されてもよい。
【0012】
探針10は、先端が針状に尖った状態で塞がった金属管で構成され、針状の先端部11と円筒状を成して末端が開口した筒部12とを有する。金属管としてはステンレス鋼の円管が例示される。探針10は先端部11に温度検出素子30の測温部33が配置され、筒部12の内部に温度検出素子30の金属線31、32が互いに被覆材により被覆された状態で挿通され、それらの金属線31、32が筒部12の末端から導出される。探針10は金属管の先端が溶接により塞がれ、塞がれたその先端を研磨して針状の先端部11が形成されてなる。
【0013】
先端部11は、温度検出素子30の測温部33と別体に構成されてもよいが、測温部33と一体に構成されることが望ましい。具体的に、先端部11は、探針10を構成する金属管の先端が溶接に塞がれるときに、温度検出素子30の金属線31、32を同時に溶接して形成される。このように、先端部11と温度検出素子30の測温部33とが一体に構成されることで、先端部11を形成する工程と、温度検出素子30の測温部33とを形成する工程と、先端部11に測温部33を固定する工程とを一度の工程で行うことができ、生産性の向上に有利になる。また、先端部11と測温部33とが剥離して測定対象物の温度を正確に検出できない事態を回避するにも有利になる。
【0014】
把手20は先端から末端に向かって順に配置される先端蓋体40、筒体50、および、末端蓋体60が金属で構成され、筒体50の両端に先端蓋体40および末端蓋体60のそれぞれが螺合された密閉構造を成す。本開示において、密閉とは国際電気標準会議(IEC)の規格である「IEC60529:Degress of protection provaided by enclosures(IP Code)」で定められたIPコードの第二特性数字が「5」以上の状態を示す。なお、IPコードの第一特性数字は特に限定されない。把手20を構成する金属としてはステンレス鋼が例示される。
【0015】
図2に例示するように、先端蓋体40は、X方向視で中央部に配置された探針10の中途位置に密閉固定されて、きのこ型を成す。先端蓋体40は、先端頭部41、先端軸部42、探針用孔部43、および、先端閉塞部44を有し、先端から末端に向かって先端頭部41、先端閉塞部44、先端軸部42が配置されて、それらを探針用孔部43が貫通して成る。
【0016】
先端頭部41は、先端に向かって外周径が縮径する円錐台形状あるいは円錐形状を成し、末端側の最大外周が先端軸部42よりも外側に張り出して成る。先端頭部41の最大外周の外周径は筒体50の先端の外周径と等しく、先端蓋体40が筒体50の先端に螺合された場合に、先端頭部41の末端部と筒体50の先端部とが境界部分を除いて一続きの外筒面を形成する。
先端軸部42は円筒形状を成し、少なくとも末端部の外円筒面にネジ山が形成される。先端軸部42のネジ山は先端軸部42の全域に形成されてもよい。
【0017】
探針用孔部43はその内部に探針10が挿通される。探針用孔部43の先端は先端頭部41の先端から突出し、その末端は先端軸部42の末端から突出する。探針用孔部43の先端および末端は突出させなくてもよい。探針用孔部43の末端はその内周の全周が探針10の外周の全周に亘って溶接されて密閉固定される。この全周が溶接された部位を先端溶接部45とする。先端溶接部45により探針10および探針用孔部43の間を密閉することが可能となる。また、先端溶接部45が探針用孔部43の末端に形成されることで、把手20の外部に先端溶接部45が露出することなく把手20に覆われた状態となり、溶接した箇所の耐久性の向上には有利になる。
【0018】
先端閉塞部44は、先端頭部41および先端軸部42の間に位置し、互いに直交する先端円環面46および先端外円筒面47から成る。先端円環面46は先端蓋体40が筒体50に螺合された状態で筒体50の先端に当接する円環形状の面であり、探針用孔部43の部分を除いて筒体50の先端開口を塞ぐ。先端円環面46の外周径は筒体50の先端の外周径と等しい。先端外円筒面47は先端円環面46から末端側に張り出して、先端蓋体40が筒体50に螺合された状態で筒体50の先端内円筒面55の全域に当接する面である。先端外円筒面47の外周径は先端軸部42に形成されたネジ山の外径と等しい。先端蓋体40と筒体50との螺合により密閉状態を保持可能であれば先端閉塞部44が無くてもよい。本実施形態のように、先端閉塞部44が設けられることで、先端閉塞部44により螺合部分よりも先端側を探針用孔部43の部分を除いて密閉可能になり、密閉状態を保持するには有利になる。
【0019】
図3に例示するように、末端蓋体60は、X方向視で中央部に配置された信号線34の中途位置に密閉固定されて、きのこ型を成す。末端蓋体60は、末端頭部61、末端軸部62、信号線用孔部63、および、末端閉塞部64を有し、末端から先端に向かって末端頭部61、末端閉塞部64、末端軸部62が配置されて、それらを信号線用孔部63が貫通して成る。
【0020】
末端頭部61は、円柱形状を成し、その外周が末端軸部62よりも外側に張り出して成る。末端頭部61の外周の外周径は筒体50の末端の外周径と等しく、末端蓋体60が筒体50の末端に螺合された状態で、末端頭部61の外周と筒体50の先端部とが境界部分を除いて一続きの外筒面を形成する。末端頭部61の末端部はテーパー状を成すことが望ましく、先端頭部41と同様に末端に向かって外周径が縮径する円錐台形状あるいは円錐形状を成してもよい。
末端軸部62は円筒形状を成し、少なくとも先端部の外円筒面にネジ山が形成される。末端軸部62のネジ山は末端軸部62の全域に形成されてもよい。
【0021】
信号線用孔部63はその内部に信号線34が挿通される。信号線用孔部63の先端は末端軸部62の先端に位置し、その末端は末端頭部61の末端に位置する。信号線用孔部63の先端および末端は突出させてもよい。信号線用孔部63の末端はその内周の全周が信号線34を被覆する被覆材35の外周の全周に亘って接着されて密閉固定される。この接着された部位を末端接着部65とする。末端接着部65により信号線34および信号線用孔部63の間を密閉することが可能となる。また、末端接着部65が信号線用孔部63の先端に形成されることで、把手20の外部に末端接着部65が露出することなく把手20に覆われた状態となり、接着した箇所の耐久性の向上には有利になる。信号線用孔部63の末端は信号線34の耐久性を向上する目的でテーパー形状を成すことが望ましい。
【0022】
被覆材35は信号線34の外周と信号線用孔部63の内周との密閉固定を維持する部材であり、具体的に、被覆材35を信号線34に被覆した状態でその外周径が変化しないように維持する部材である。被覆材35は信号線34に密着して信号線34を収縮するとともに信号線34を構成する被覆材よりも硬質であることが望ましい。被覆材35を介して信号線用孔部63と信号線34とを接着により密閉固定することで、接着部分の剥離を防ぐには有利なる。また、この被覆材35よりも先端側の信号線34に結び目36を形成することが望ましい。結び目36を形成することで、信号線34が信号線用孔部63から抜け出ることを予防することができる。
【0023】
末端閉塞部64は、末端頭部61および末端軸部62の間に位置し、互いに直交する末端円環面66および末端外円筒面67から成る。末端円環面66は末端蓋体60が筒体50に螺合された状態で筒体50の末端に当接する円環形状の面であり、信号線用孔部63の部分を除いて筒体50の末端開口を塞ぐ。末端円環面66の外周径は筒体50の末端の外周径と等しい。末端外円筒面67は末端円環面66から先端側に張り出して、末端蓋体60が筒体50に螺合された状態で筒体50の末端内円筒面の全域に当接する面である。末端外円筒面67の外周径は末端軸部62に形成されたネジ山の外径と等しい。末端蓋体60と筒体50との螺合により密閉状態を保持可能であれば末端閉塞部64が無くてもよい。本実施形態のように、末端閉塞部64が設けられることで、末端閉塞部64により螺合部分よりも末端側を信号線用孔部63の部分を除いて密閉可能になり、密閉状態を保持するには有利になる。
【0024】
図4に例示するように、筒体50は、X方向に筒軸方向が向き、先端および末端の両端が開口する円筒形状を成す。筒体50は、先端開口部51、末端開口部52、および、それらの間に配置された中央部53を有し、それぞれの部位のYZ平面における断面が円環形状を成す。
【0025】
先端開口部51は円筒形状を成し、その外周径が中央部53の外周径よりも長い。先端開口部51は先端雌ねじ部54および先端内円筒面55を有する。先端雌ねじ部54は先端開口部51の内円筒面に形成されたネジ山である。先端内円筒面55は先端雌ねじ部54よりも先端側に配置され、少なくとも先端雌ねじ部54に形成されたネジ山の谷底まで拡径した内円筒面である。
【0026】
末端開口部52は円筒形状を成し、その外周径が中央部53の外周径よりも長い。末端開口部52は末端雌ねじ部56および末端内円筒面57を有する。末端雌ねじ部56は末端開口部52の内円筒面に形成されたネジ山である。末端内円筒面57は末端雌ねじ部56よりも末端側に配置され、少なくとも末端雌ねじ部56に形成されたネジ山の谷底まで拡径した内円筒面である。
中央部53は内周径が先端雌ねじ部54に形成されたネジ山の内径と等しい。
【0027】
温度計1の製造方法について説明する。細長い金属管の先端を温度検出素子30の金属線31、32とともに溶接して塞ぎ、塞いだその先端部分を研磨する。この工程により、探針10の先端部11および温度検出素子30の測温部33の両方の部位の形成と同時に測温部33の先端部11への固定も行う。以上が探針10の製造工程である。
【0028】
次いで、円柱状の金属ブロックの外表面を切削して、傘および柄を有するきのこ型を形成し、柄の部分の外円筒面にねじ切り加工を施す。このきのこ型の傘の部位が先端頭部41となり、柄の部位が先端軸部42となり、傘および柄の境界部分が先端閉塞部44となる。次いで、傘の先端から柄の末端まで貫通した貫通孔を形成する。この貫通孔が探針用孔部43となる。以上が先端蓋体40の製造工程である。なお、末端蓋体60の製造工程は先端蓋体40の製造工程と同様のため、その説明は省略する。
【0029】
次いで、太い金属管の筒軸方向の中央部の外表面を切削し、その金属管の先端および末端の両端の内円筒面にねじ切り加工を施す。以上が筒体50の製造工程である。
【0030】
次いで、探針10を先端蓋体40の探針用孔部43に挿通し、探針用孔部43の末端と探針10とを溶接により密閉固定する。次いで、温度検出素子30の信号線34を筒体50の内部に挿通するとともに末端蓋体60の信号線用孔部63に挿通し、信号線用孔部63と信号線34の被覆材35で被覆した箇所とを接着により密閉固定する。次いで、先端蓋体40を筒体50の先端部に螺合するとともに末端蓋体60を筒体50の末端部に螺合する。次いで、先端蓋体40および筒体50の境界部分と、末端蓋体60および筒体50の境界部分とのそれぞれに点溶接により固定する。なお、点溶接された部位を先端点溶接部48、末端点溶接部68とする。以上が温度計1の組み立て工程である。
【0031】
本実施形態の温度計1の把手20の外表面には、探針10および探針用孔部43との間の隙間と、先端蓋体40および筒体50の境界部分の隙間と、末端蓋体60および筒体50の境界部分の隙間と、信号線34および信号線用孔部63の間の隙間とがあるのみである。それ故、把手20の外表面に汚れが溜まり難くなる。
【0032】
また、探針10および探針用孔部43との間の隙間は先端溶接部45により密閉され、先端蓋体40および筒体50の境界部分の隙間は先端閉塞部44および筒体50の密着と先端蓋体40および筒体50のねじ作用による嵌め合わせにより密閉される。同様に、末端蓋体60および筒体50の境界部分の隙間は末端閉塞部64および筒体50の密着と末端蓋体60および筒体50のねじ作用による嵌め合わせにより密閉され、信号線34および信号線用孔部63の間の隙間は末端接着部65により密閉される。この密閉構造により、仮に把手20や探針10が汚れても洗浄することが可能となる。
【0033】
以上のように、本実施形態の温度計1によれば、清潔な状態を保つことができる。この温度計1は常時、清潔な状態を保つことができることに加えて、ネジやボルトなどの締結具を用いずに組み立てられており、それらの締結具が使用中に脱落するおそれがない。よって、食品などの内部温度の測定に適している。
【0034】
さらに、本実施形態の温度計1によれば、上記の清潔な状態を保つことが可能な構造の把手20を、樹脂に比して耐久性が高い金属で構成することで耐久性を向上することができる。また、その把手20を、蓋を筒の両端に螺合するという簡易な方法でその把手を組み立て可能になり、各部材の構造が簡易になるとともに部品点数が低減される。それ故、温度計1が清潔な状態を保つことが可能な構造を有していても、生産性の向上と耐久性の向上とを両立することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 温度計
10 探針
20 把手
30 温度検出素子
34 信号線
40 先端蓋体
50 筒体
60 末端蓋体
図1
図2
図3
図4