(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】吸入器用アクセサリ、吸入器及び薬剤投与プロセスの検出方法
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020526712
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2018055639
(87)【国際公開番号】W WO2019021254
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】102017000086905
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520034794
【氏名又は名称】アミコ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ファート、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】グリノベーロ、フェデリーコ マーティン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514511(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106794324(CN,A)
【文献】国際公開第2016/111633(WO,A1)
【文献】米国特許第8807131(US,B1)
【文献】特表2013-516265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器(100、200)のケース(101、201)に取り外し可能に取り付けられるようになった吸入器(100、200)のためのアクセサリ(110、210)であって、
加速度センサ(112、212)と、
近接センサ(113、213)と、
前記加速度センサ(112、212)と前記近接センサ(113、213)に電気的に接続された電子回路(114、214)と、
を備え、
前記電子回路(114、214)は、前記加速度センサ(112、212)と前記近接センサ(113、213)との組み合わせで薬剤投与プロセスを検出するように適合され、
前記電子回路(114、214)は、前記加速度センサ(112、212)との組み合わせで前記吸入器(100、200)内部の吸入流に起因する振動を検出するように適合され、
前記電子回路(114、214)は、前記アクセサリ(110、210)の動作を決定するように適合されたプログラムを記憶し、前記動作は、スリープ動作状態とアクティブ動作状態とを含む異なる動作状態を想定し、
前記アクティブ動作状態は、前記吸入器の装填を検出するための低電力動作下位状態と、薬剤の吸入動作を検出するための高電力動作下位状態と、
を含む
アクセサリ(110、210)。
【請求項2】
前記電子回路(114、214)は、少なくとも1つの薬剤投与プロセスの検出の後に、
薬剤の投与が行われたか否か、またいつ行われたかを含む患者の実効的挙動、及びデバイスの準備と使用と保守を含む患者の吸入技術が、医師により処方された「治療療法」にどの程度従っているか、を検出するように適合された、請求項1の記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項3】
前記近接センサ(113、213)は、吸入器(100、200)の内部又は外部の構成要素の位置及び/又は動きを検出し、前記電子回路(114、214)は、前記電子回路(114、214)に記憶された
事象と、前記近接センサによって検出された吸入器(100、200)の内部又は外部の構成要素の位置及び/又は動きと、を比較するように適合された、請求項1又は請求項2に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項4】
前記電子回路(114、214)は、更に、前記電子回路(114、214)に記憶された
事象と、前記加速度センサ(112、212)によって検出された前記吸入器(100、200)内部の吸入流に起因する振動と、を比較する、請求項3に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項5】
前記電子回路(114)は前記近接センサ(113)及び/又は前記加速度センサ(112)との組み合わせで、前記吸入器(100)のマウスピースへのシャッタ(102)又はアクセスキャップの開閉を検出するように適合された、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項6】
前記電子回路(114、214)は、前記近接センサ(113、213)及び/又は前記加速度センサ(112、212)との組み合わせで、前記吸入器(101、201)の前記ケース(101、201)への取り付け及び/又は取り外しを検出するように適合された、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項7】
前記電子回路(114)は、前記近接センサ(113)との組み合わせで、前記吸入器(100)のマウスピース(104)の、人の唇との近接度を検出するように適合された、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項8】
前記電子回路(114、214)は、前記近接センサ(113、213)及び/又は前記加速度センサ(112、212)との組み合わせで、前記吸入器(100、200)内への薬剤用量の装填を検出するように適合された、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項9】
前記電子回路(114、214)は、前記近接センサ(113、213)及び/又は前記加速度センサ(112、212)との組み合わせで、前記吸入器(100、200)の前記装填に係わる前記吸入器(100、200)の内部又は外部の構成要素(205)の動きを検出するように適合された、請求項8に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項10】
前記電子回路(114、214)は、前記近接センサ及び/又は前記加速度センサとの組み合わせで、前記吸入器(100,200)の内部の吸入流に関連する前記吸入器(100、200)の内部又は外部の構成要素の動きを検出するように適合された、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項11】
特に乾燥粉末型の吸入器へ適合された、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のアクセサリ(110、210)。
【請求項12】
請求項1に記載のアクセサリ(110、210)を用いて吸入器(100、200)を介して実現される薬剤投与プロセスの検出方法であって、
前記アクセサリ(110、210)の電子回路(114、214)は、薬
剤の投与が行われたか否か、またいつ行われたかを含む患者の実効的挙動、及びデバイスの準備と使用と保守を含む患者の吸入技術が、医師により処方された「治療療法」にどの程度従っているか、の検出に使用される、方法。
【請求項13】
前記電子回路(114、214)に記憶された
事象と、前記近接センサ(113、213)によって検出された吸入器(100,200)の内部又は外部の構成要素の位置及び/又は動き、並びに前記加速度センサ(112、212)によって検出された前記吸入器(100、200)内部の吸入流に起因する振動と、を比較する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加速度センサ(112、212)及び/又は前記近接センサ(113、213)によって、前記吸入器(100、200)が開放されたまま、及び/又は装填されたまま長期間放置されなかったかどうか
、前記吸入器(110、200)が落とされたことがないかどうかを含む前記吸入器(100、200)の保管の妥当性の検証することを特徴とする、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記保管の妥当性は、前記加速度センサ(212、212)
及び前記近接センサ(113、213)を介して検証されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
特に乾燥粉末型吸入器に対して適合された、請求項12、請求項13、請求項14、又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記近接センサ(113、213)は、前記吸入器(100、200)の内部又は外部の構成要素の位置及び/又は動きの検出に使用される、請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記加速度センサ(112、212)及び/又は前記近接センサ(113、213)は前記吸入器(100、200)へのアクセサリ(110、210)の取り付け及び/又は取り外しの検証に使用され、前記加速度センサ(112、212)及び/又は前記近接センサ(113、213)は前記アクセサリ(110、210)に組み込まれる、請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16、又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加速度センサと、
近接センサと、
前記加速度センサ及び前記近接センサに電気的に接続された電子回路と、
を備え、
請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16、又は請求項17に記載の方法を実現するように適合された、吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器用アクセサリ、吸入器及び薬剤投与プロセスの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者による薬剤の服用の正確、確実かつ自動的な検出に関心があることは知られている。吸入療法においては、薬剤の投与動作の実効性は、薬剤の投与プロセス、例えば吸入流の持続時間と強度に大きく依存するので、薬剤の投与動作の発生を特定するだけでは十分でない。
【0003】
したがって、薬剤の投与動作の発生の特定((薬剤投与の有無及びその時刻)を、薬剤投与プロセス(どのように薬剤が投与されたか)の検出と統合することが必要である。
【0004】
乾燥粉末吸入器(DPI)では、薬剤投与プロセスは、例えばその実行時に生成される振動をまず測定して、次いで評価することにより検出可能である。そのような測定のために、例えばMEMS技術による加速度計などの電子デバイスの使用が知られている。
【0005】
本出願人は、そのような振動測定の好適な解決策に関する国際公開第2014184293(A1)号で公開された国際特許出願の所有者である。
【0006】
したがって、他の特許文書からも、薬剤投与プロセスの検出のための解決策は知られている。
【0007】
国際公開第2011157561(A1)号で公開された国際特許出願明細書からは、圧力センサと加速度センサを有する監視システムを備えた吸入器が知られる。ここで圧力センサが吸入器内の空気圧を測定し、したがって吸入器内の吸入流の検出(すなわち推定)に使用され、加速度センサが、吸入器の位置及び/又は(巨視的な)動きに依存する加速度の測定に使用される。
【0008】
国際公開第2015178907(A1)号で公開された国際特許出願明細書からは、マイクロフォンと加速度センサを備えた監視システムを有する、吸入器用のアクセサリが知られる。ここでマイクロフォンが吸入器を通る吸入流に起因する音を検出し、加速度センサが、吸入器の位置及び/又は(巨視的な)動きに依存する加速度の測定に使用される。
【0009】
国際公開第2016111633(A1)号で公開された国際特許出願明細書からは、マイクロフォンを備えた監視システムを有する吸入器用のアクセサリが知られる。ここでマイクロフォンが吸入器を通る吸入流に起因する音を検出し、監視システムは吸入器の配向を検出するための他のセンサ、具体的には加速度センサを備えることもできる。
【0010】
米国特許第8807131号明細書からは、温度センサと加速度センサを備える監視システムが知られる。ここで温度センサが吸入器内の温度を測定し、したがって吸入器内の吸入流の検出(すなわち推定)に使用され、加速度センサが、吸入器の位置及び/又は(巨視的な)動きに依存する加速度の測定に使用される。
【0011】
米国特許出願第2013008436号明細書からは、吸入器内部の吸入流を測定するために流量センサ(特にMEMS技術による流量センサ)が設けられ、吸入器の撹拌を検出するために運動センサ(特に加速度計)が設けられ、吸入器の作動を検出するために力センサ(特にロードセル又は歪ゲージ)が設けられた、1つ以上のセンサを有する監視システムを備える吸入器が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2014184293(A1)号明細書
【文献】国際公開第2011157561(A1)号明細書
【文献】国際公開第2015178907(A1)号明細書
【文献】国際公開第2016111633(A1)号明細書
【文献】米国特許出願第2013008436号明細書
【文献】米国特許出願第2013008436号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
出願人は先行技術の改善、特に以前のその解決策の改善に着手した。
【0014】
具体的には、薬剤投与プロセスの(正確な)検出のための、吸入器、特に乾燥粉末吸入器に取り付けるアクセサリの提供に着手した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのような目的は、本明細書の不可欠な部分を構成する添付の特許請求の範囲に説明される技術的特徴を有する、アクセサリ及び方法のおかげで実質的に達成される。
【0016】
出願人は、薬剤の投与時に吸入器に生成される(具体的には吸入流が吸入器の内壁に与える衝撃による)振動の測定に基づく投与プロセスの検出は、近接センサを用いることにより、より正確、確実かつ効率的とすることができることに気が付いた。
【0017】
したがって、本発明によれば、薬剤の投与プロセスの(正確な)検出が、加速度センサと近接センサ、特に光学式の近接センサとにより実行される。これにより具体的に服薬遵守性及び使用の妥当性の検出が可能である。加速度センサは、少なくとも吸入器内部の吸入流の検出、具体的には吸入動作時に吸入器に生成される振動の検出、より具体的には、吸入流が吸入器の内壁に与える衝撃による吸入動作時に吸入器に生成される振動の検出のために使用される。
【0018】
好ましくはアクセサリの加速度センサは、典型的にはアクセサリのケースを介して吸入器のケースと密着する。したがってアクセサリは、吸入動作時に吸入器のケースに生成される振動を検出可能である。また、所望であれば、吸入器の位置及び/又は(巨視的な)動きに依存する加速度も測定可能である。
【0019】
本発明によれば一般に、吸入時に吸入流が吸入器の内壁に与える衝撃によって内部振動が発生する。本発明のいくつかの例示的実施形態によれば、薬は、吸入器の内室に収容されたカプセルに含まれ、これらのカプセルが吸入流の影響で吸入動作中に移動して内室の壁に繰り返し当たり、内部振動を発生させる。典型的には、内部振動(1つ以上の原因による)は、まず吸入器のケースに伝達され、次いでアクセサリのケース、そして最後にアクセサリの加速度センサに伝わって、このセンサによって検出される。
【0020】
一般的に、本発明による方法は、使用時(吸入動作時のみではない)の吸入器の動作を監視し、吸入器に結合するか組み込まれた加速度センサ、及び吸入器に結合するか組み込まれた近接センサの使用を想定する。加速度センサは吸入器内部のガス流の検出に使用される。そのような監視を利用して、服用遵守性及び使用の妥当性をチェックする。
【0021】
近接センサは、吸入器の内部又は外部の構成要素の位置及び/又は動きの検出に使用可能である。
【0022】
本発明の目的に関しては、療法の遵守を検証することは、検出されたステップの組を、どこか(必ずしも吸入器やアクセサリの内部である必要はない)に記憶された一連のステップと比較することを意味することに留意されたい。
【0023】
本発明の目的に関しては、使用の妥当性を検証することは、検出された吸入器の一組の状態及び状態変化を、どこか(必ずしも吸入器のアクセサリの内部である必要はない)に記憶された一組の規則と比較することを意味することに留意されたい。
【0024】
更なる態様によれば、本発明はそのような方法の実施に適合された吸入器に関する。
【0025】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と共に考慮することにより明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】第1の吸入器の2つの動作状態における概略側面図である。
【
図1B】第1の吸入器の2つの動作状態における概略側面図である。
【
図2A】本発明によるアクセサリに結合された第1の吸入器の、2つの動作状態における概略側面図である。
【
図2B】本発明によるアクセサリに結合された第1の吸入器の、2つの動作状態における概略側面図である。
【
図3A】本発明によるアクセサリに結合された第1の吸入器の2つの動作状態を、アクセサリの主たる内部構成要素を強調して示す概略側面図である。
【
図3B】本発明によるアクセサリに結合された第1の吸入器の2つの動作状態を、アクセサリの主たる内部構成要素を強調して示す概略側面図である。
【
図4A】第2の吸入器の2つの動作状態における概略側面図である。
【
図4B】第2の吸入器の2つの動作状態における概略側面図である。
【
図5A】本発明によるアクセサリに結合された第2の吸入器の、2つの動作状態における概略側面図である。
【
図5B】本発明によるアクセサリに結合された第2の吸入器の、2つの動作状態における概略側面図である。
【
図6A】本発明によるアクセサリに結合された第2の吸入器の2つの動作状態を、アクセサリの主たる内部構成要素を強調して示す概略側面図である。
【
図6B】本発明によるアクセサリに結合された第2の吸入器の2つの動作状態を、アクセサリの主たる内部構成要素を強調して示す概略側面図である。
【
図7】本発明によるアクセサリの、可能な状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の特許請求の範囲にその主たる有利な態様が定義される本発明を、実際に実施するには様々な方法があることは容易に理解されるであろう。
【0028】
本発明の実際の詳細な説明を始める前に、いくつかの導入的な考慮事項を以下に示す。
【0029】
吸入器は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患の患者に対する、主要な治療手段である。慢性疾患患者は、医師により処方される治療療法を守る努力をする。しかし、治療として吸入器の使用が必要な場合にはそれだけでは充分でない。実際に、患者は吸入器を常に正しく使用することが必須となる。
【0030】
「服用遵守性」は、医師により処方された治療療法と患者の実効的挙動(薬剤の投与が行われたか否か、またいつ行われたか)との間の類似性の程度として定義可能である。「吸入技術」は、医師により処方された「治療療法」に関する指示にどの程度患者が従うかを記述する。これには、準備、デバイスの使用と保守(薬剤投与の発生の「方法」)に関する指示が含まれる。
【0031】
正しい「吸入技術」は特定の吸入器に依存する。主要な3つの種類の吸入器としては、「定量吸入器」又はMDI、「乾燥粉末吸入器」又はDPI、及び「ソフトミスト吸入器」又はSMIがある。本発明は「乾燥粉末吸入器」用に考案、設計されたが、厳密にそれに限定されるものではない。
【0032】
非常に多数の乾燥粉末吸入器があって、それぞれのデバイスは効果的な治療のためには特定の吸入技術を必要とする。技術としては、吸入器の扱い、例えば準備(具体的には保護キャップの外し方及び薬剤の準備)、事後点検(具体的には保護キャップの閉じ方及び乾燥した場所への保管)、及び薬剤の最適な吸入、がある。
【0033】
DPIデバイスは通常、1)カプセル、2)ブリスタ、3)タンク/カートリッジの3つに大きく分類される。
【0034】
カプセルデバイスは通常、カプセルを入れるチャンバを有する。カプセルは、外部からのねじり力又は引き裂き力により破壊される。吸入中は、カプセル内に含まれる粉末が出てくる。
【0035】
ブリスタデバイスは普通、デバイスの内部に、アルミニウムでできた「ブリスタ」として知られる、リング状の小さい空洞を有する。各ブリスタには1回分の薬剤が含まれる。デバイスにはまた、用量を示すドース計がある。薬剤粉末は、吸入の前にブリスタが引き裂かれて解放される。薬剤粉末は、使用者の吸入により生成される空気流によって運ばれて行く。
【0036】
タンク/カートリッジデバイスは、粉末薬剤を入れるチャンバを有する。このデバイスは各吸入時に粉末を分配するための機構を有する。この多用途デバイスは投与器を有する。
【0037】
図1は、「ELLIPTA」吸入器(GLAXO社の登録商標)と類似の吸入器100を概略的に示す。本発明は、例えばこの種の既知の吸入器に適用される。
【0038】
図4は、「TURBOSPIN」吸入器(NTC社の登録商標)と類似の吸入器200を概略的に示す。本発明は、例えばこの種の既知の吸入器に適用される。
【0039】
本発明はその他の種類の既知の吸入器にも適用される。例えば、「SPIROMAX」吸入器(IVAX社の登録商標)、「NEXTHALER」吸入器(CHIESI社の登録商標)、「DISKUS」吸入器(GLAXO社の登録商標)、「TURBUHALER」吸入器(ASTRAZENECA社の登録商標)、「BREEZHALER」吸入器(NOVARTIS社の登録商標)、「RS01」吸入器(PLASTIAPE社の登録商標)、「ZONDA」吸入器(ARS PRIVILEGIUM社の登録商標)、「PODHALER」吸入器(NOVARTIS社の登録商標)、「REVOLIZER」吸入器(CIPLA社の登録商標)、「HANDIHALER」吸入器(BOEHRINGER INGELHEIM社の登録商標)、「EASYHALER」吸入器(ORION社の登録商標)、「GENUAIR」又は「PRESSAIR」吸入器(ASTRAZENECA社の登録商標)、である。
【0040】
本明細書において本発明は、既存の粉末吸入器に取り付けるアクセサリの形態で示される。この形態では、本発明は吸入器に対して内部、外部のいかなる変更も必要としない。また吸入器の分解すらも必要としない。
【0041】
代替実施形態では、以下で説明するように、本発明は吸入器に統合された、いくつかの構成要素の存在を想定する。すなわちアクセサリは吸入器の不可欠な部品である。
【0042】
吸入器100は、特にケース101によって閉じられた本体とマウスピース104とを備える。さらに、人による手動操作の結果としてケース101上でスライドするシャッタ102がある。シャッタ102が閉位置(
図1A)にあるとき、マウスピース104へはアクセスできない。シャッタ102が開位置(
図1B)にあるとき、人は唇300を当てて、マウスピース104を密閉し、マウスピース104経由で吸入する。シャッタ102の(
図1Aの第1の最端位置から
図1Bの第2の最端位置への)開運動により、吸入器100への装填が起きる。すなわち1用量分の薬剤が、その後の吸入器を介しての投与に備えて事前配置される。
図1ではケース101を人が開くことはできない。実際に、薬剤の容器(図示せず)は、吸入器の製造時に、様々な個別の用量の薬剤を有するブリスタ(blister)の形態で吸入器100の内部に配置される。
【0043】
吸入器200は特にケース201とマウスピース204とによって閉じられた本体を備える。さらに、人による手動操作、すなわち押し込み及び解放の結果としてケース201に向かう方向、及びケースから離れる方向に移動するボタン203がある。人はいつでもマウスピース204に向かって唇300を動かして、マウスピース204を介して吸入することができる。あるいは、キャップ又はシャッタがあってそれを外すか開くかしてマウスピースにアクセスしてもよい。ボタン203の(
図4Aの第1の最端位置から
図4Bの第2の最端位置への)運動により、吸入器200への装填が起きる。すなわち1用量分の薬剤が、その後の吸入器を介しての投与に備えて事前配置される。この場合、装填は、薬剤の入ったカプセルをケース201の内部の着座に配置し、その後カプセルを穿刺することにより起きる。ボタン203には、その一端に少なくとも1つの針(図示せず)を備えたピストン205が固定され、ボタン203が押し込まれるとピストン205がケース201内部にさらに挿入されて、吸入器200の内部の着座にあるカプセルを穿刺する。
図4には、ケース201を分割する線がある。この線は、ケース201を人が開けて、カプセルの形態をした薬剤容器(図示せず)を吸入器200の内部の着座に挿入できるようになっていることを示す。
【0044】
図1~
図3の例示的実施形態によれば、本発明のアクセサリが参照番号110で示されている。
【0045】
図4~
図6の例示的実施形態によれば、本発明のアクセサリが参照番号210で示されている。
【0046】
アクセサリ110/210はケース111/121を備え、そこには、加速度センサ112/212、光学式近接センサ113/213、加速度センサ112/212と近接センサ113/213に電気接続された電子回路114/214、電子回路114/214に電気接続されたブルートゥース送信器115/215(アンテナ記号で模式的に表示)、これらの構成要素に電力を供給する電池116/216、が内包される。さらには、例えば、吸入器とアクセサリの組合せを使用する人に様々な種類の信号を発するための、電子回路に電気接続された音響及び/又は視覚及び/又は触覚の信号デバイス、及び/又はアクセサリのデータ記憶容量を増加させるための、電子回路に外付けされた不揮発性メモリ、などのそのほかの構成要素があってもよい。
【0047】
ブルートゥース送信器の代替又は追加として、別の種類の送信器、例えばUSBケーブル、又はNFC、GSM若しくはUMTS方式の無線が備えられてもよい。送信器は通常、測定データ及び/又は電子回路による処理情報を、アクセサリ外部へ送信するために使用される。
【0048】
電池(化学エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイス)の代替として、再充電可能な蓄電池を備えてもよい。
【0049】
図3及び
図6から特にわかるように、アクセサリ110/210は吸入器100/200に着脱可能に取り付けられる。より正確には、アクセサリ110/210のケース111/211は吸入器100/200のケース101/201に着脱可能に取り付けられる。図の例では、ケース111/211の内表面の一部がケース101/201の外表面の一部に接触する。この取り付けは、例えば自由挿入及び/又はガイド挿入及び/又はスナップ嵌合及び/又はクリップ結合により、かつ摩擦及び/又は圧縮及び/又はプラスチック又はゴムの、可動及び/又は固定の、弾性及び/又は剛性タイプの結合を介する機械的保持を有する結合により得ることができる。この取り付けは一般に、この吸入器の使用を必要とする(かつ薬剤の服用を必要とする)人、又はそれらの関係者又は健康管理者によって実現される。言い換えれば、組み立てには専門家を必要としない。
【0050】
特に
図3と
図6からわかるように、アクセサリ110/210の加速度センサ112/212は、吸入器100/200の動きにより生成される加速度のみならず、吸入動作時に吸入器100/200のケース101/201に生成され、ケース111/211によってアクセサリ110/210へ伝達される振動を検出するために、吸入器100/200のケース101/201に密接に接触している。加速度センサは単純に一方向の加速度に対して感応する。あるいは、加速度センサは互いに直交する2又は3方向の加速度を検出することも可能であってよい。あるいはさらに、加速度センサは、ジャイロセンサ及び/又は磁気計などの方位センサを組み込んでもよい。アクセサリに数多くの加速度センサが存在することは排除されない。
【0051】
特に
図3と
図6からわかるように、アクセサリ110/210の光学式近接センサ113/213は、吸入器100/200に対して適切に配向される。この配向(太い実線で模式的に示す)は
図1~
図3の例示的実施形態の場合と
図4~
図6の例示的実施形態の場合では異なる。
図3では、センサ113は、シャッタ102(吸入器100がある場合)、マウスピース104(シャッタ102が開放されている場合)、及び唇300(それがある場合)を検出するように配向される。
図6では、センサ213は、ケース201(吸入器200がある場合)、ケース201の中のピストン205(ボタン203が押されている場合)を検出するように配向される。有利なことには光学センサは、恐らくは一緒に統合された(例えば赤外線の)送信器と(例えば赤外線の)受信器とを備える。アクセサリ内に数多くの近接センサがあることも排除されない。
図4~
図6の例示的実施形態においては、第1の近接センサ(センサ213に対応)がピストン205を検出し、場合によっては第2の近接センサ(図示せず)が唇300を検出可能である。
【0052】
代替形式によれば、静電式及び/又は誘導式の近接センサを介して、電子回路が、吸入器のマウスピースと人の皮膚、具体的には唇の皮膚の近接、例えばマウスピース104と唇300の接触を検出するようになっていてもよい。実際にそのような配置は通常静電的及び誘電的な変化を生じさせる。
【0053】
代替形式によれば、静電式また誘電式の近接センサを介して、電子回路が、例えば吸入器の装填及び/又は薬剤の投与に関連する内部及び/又は外部構成要素の動きを検出するようになっていてもよい。
【0054】
代替形式によれば、機械式近接センサ(例えば移動してストローク端に達する機械部品の影響で閉鎖する、常時開の電気接点)を介して、電子回路が、吸入器の装填及び/又は薬剤の投与に関連する内部及び/又は外部構成要素の動きを検出するようになっていてもよい。例えば、機械式近接センサは、常時開の構成でケース111上に配置され、シャッタ102が閉じられると閉鎖構成になってもよい。
【0055】
最後に、アクセサリ内に温度センサ及び/又は環境光センサがあることも排除されない。
【0056】
電子回路は加速度センサ及び近接センサとの組み合わせにより、薬剤の投与プロセスを検出するように適合される。そのような検出は、薬剤の投与プロセス時に生成される加速度(特に振動)をまず(繰り返し)測定し、次いでそれを評価すること、及び薬剤の投与プロセス時に生成される近接センサ(特に光学信号)をまず(繰り返し)測定し、次いでそれを評価することにより得られる。
【0057】
特に、アクセサリは、準備ステップ、吸入ステップ及び「フォローアップステップ」などの、薬剤の投与プロセスのステップに起因する特定のイベントの発生を識別し、かつ適切なデータ構造で記憶するように適合されている。
図1~
図3を参照すると、第1の例によれば、吸入器100の準備ステップにおいて、アクセサリはシャッタ102の開くことを、シャッタ102が近接センサ113から移動して離れることによる光学信号の変化を通して識別する。
図1~
図3を参照すると、第2の例によれば、吸入器100の準備ステップにおいて、アクセサリはシャッタ102の開放の完了を、薬剤の装填のための内部ギヤの作動時に生成される振動を評価することを通して識別する。
図1~
図3を参照すると、更なる例によれば、吸入器100を介する吸入ステップにおいて、吸入動作中に生成される振動を評価することによりシステムは吸入事象を識別する。
【0058】
具体的には、事象が識別されると、一連の情報、主として発生した事象の種類と、副次的にすべての事象に共通の情報とが記憶される。例えば、日付と時間、及び/又は例えば吸入動作の継続時間及び流量ピークなどのその事象の種類に特定の情報などである。さらに、事象の情報の記憶される順序は有利には、事象の発生の時間順序を反映することができる。
【0059】
電子回路は、吸入器へのアクセサリ、例えば、ケース101上のアクセサリ110及びケース201上のアクセサリ210の取り付け及び/又は取り外しを検出するように適合可能である。そのような取り付け/取り外しは光学的変化及び振動の両方を生じ得る。
【0060】
電子回路は、吸入器のマウスピースのキャップ又はアクセスシャッタ、例えばシャッタ102の開放及び/又は閉鎖を検出するように適合可能である。そのような動きは光学的変化及び振動の両方を生じさせ得る。シャッタは、例えば摺動すること(例えば
図1など)及び/又は回転可能であることなどで、吸入器のケースに拘束され得ることに留意されたい。
【0061】
電子回路は、吸入器の内部又は外部の構成要素、例えば吸入器の装填に係わる例えばピストン205などの動きを検出するように適合可能である。そのような動きは振動と光学的変化の両方を生じさせ得る。
【0062】
電子回路は、例えば薬剤の投与に係わる、吸入器の内部及び/又は外部の構成要素の動きを検出するように適合可能である。例えば、特定の吸入器は、薬剤が効果的に投与される確率を上げる内部機構を使用する。これは例えば「ロックアウト機構」であって、吸入流が特定の閾値より低い場合には薬剤の投与を妨げる機構(例えばNEXTHALER吸入器)、及び/又は使用者が特定の所望の吸入流に到達したときに音響又は視覚的な警報を発生させる機構(例えばGENUAIR吸入器)などである。そのような動き、特にそのような機構は、振動と光学的変化の両方を生じさせ得る。
【0063】
電子回路が、吸入器のマウスピースと人の皮膚、具体的には唇の皮膚との間の、例としてマウスピース104と唇300との間の、近接、具体的には接触を検出するようになっていてもよい。そのような配置は通常光学的な変化を生じさせる。
【0064】
電子回路は1用量分の薬剤が吸入器内に装填されたことを検出するように適合可能である。シャッタ102が(ストローク端まで)完全に開くと、1用量分の薬剤が吸入器内に装填される。そのような動きは光学的変化と振動の両方を生じ得る。
【0065】
ピストン205がケース201に完全に挿入されると、1用量分の薬剤が吸入器内に装填される。そのような動きは光学的変化と振動の両方を生じ得る。
【0066】
一般的に、装填量は1回分以上の用量であってよく、装填が適切に行われたことのみでなく、装填された用量の数も検出することが可能であり得る。例えば、投与プロセスの検出に基づいて、使用者が間違って2用量を装填したかどうかを吸入動作の前に理解することが可能である。もしこれが「ELLIPTA」吸入器で発生した場合には、2用量の内の最初のものが完全に廃棄されて、装填された2用量の内の第2のものを正しく服用することができる。
【0067】
電子回路は加速度センサを介して、吸入器が吸入の前、吸入中及び/又は吸入後に適切に配向されているか否かを検出するように適合させることができる。
【0068】
電子回路は吸入器に含まれる薬剤を検出するように適合可能である。例えば、
図1の吸入器の場合、シャッタ102の色は含まれる薬剤に依存し、光学式の近接センサでそれを検出可能である。あるいは、吸入器に含まれる薬剤は、アクセサリの電子回路によって読み出せるようになった(図又は電子式の)ラベルによって指示することが可能である。
【0069】
吸入器に挿入された薬剤が、アクセサリに以前に記憶されたプログラムと一致しない場合には、有利なことにアクセサリは、光学的及び/又は音響的及び/又は触覚的な信号を生成することができる。
【0070】
通常、アクセサリの電子回路は、(内外部のメモリ手段に接続された)プロセッサを備え、アクセサリの動作を決定するように適合されたプログラムを記憶する。
【0071】
一般的に、本発明によるアクセサリは、特に乾燥粉末タイプの吸入器に必要とされて、吸入器のケースに取り外し可能に組み込まれるようになっている。そして、加速度センサ、近接センサ及びそれらのセンサに電気接続された電子回路を備える。
【0072】
近接センサは、例えば以下の事象を識別するのに特に有利であり得る。
・マウスピースにアクセスするためのキャップ又はシャッタの開放
・マウスピースにアクセスするためのキャップ又はシャッタの閉鎖
・マウスピースにアクセスするためのキャップ又はシャッタの変位
・吸入チャンバ内に薬剤を装填するための可動体の変位
・適切な最小の吸入動作により生じる可動体の変位
・吸入器ケースのアクセサリへの取り付け
・吸入器ケースのアクセサリからの取り外し
・マウスピース近辺における唇の存在
・アクセサリに取り付けられた吸入器に含まれる薬剤の識別
【0073】
加速度センサは、例えば以下の事象を識別するのに特に有利であり得る。
・吸入器の静止
・吸入器の動き
・吸入器チャンバ内への薬剤の適切/不適切な装填
・薬剤を含む吸入器の揺動
・薬剤を含む吸入器の反転
・吸入器内部の吸入流
・アクセサリ並びにアクセサリと吸入器のアセンブリの衝撃又は落下
【0074】
両方のセンサの使用は、薬剤投与プロセス検出の精度及び完全性の向上に適合される。これにより例えば、プロセス自体の間で使用者が犯すエラーを識別可能とし得る。
【0075】
例えば、吸入器100の準備ステップでは、近接センサ113により、マウスピース104にアクセスするためのシャッタ102の開放を検出し、また加速度センサ112により、吸入器が適切に装填された場合に発生する振動のないことを検出することで、薬剤の不適切な装填(シャッタがストローク端まで到達していない場合)を識別可能である。例えば、吸入器200の場合には、近接センサ213により、ピストン203の変位を検出し、また加速度センサ212により、カプセルが適切に装填された場合に発生する振動のないことを検出することで、薬剤の不適切な装填(カプセルが存在しない場合)を識別可能である。例えば、吸入器100の場合には、近接センサ113により、マウスピース104の近傍に使用者の唇300が存在することを検出し、また加速度センサ112により、最適又は許容可能な吸入事象に起因する振動の発生がないことを検出することで、薬剤の不適切な吸引を識別可能である。
【0076】
両センサの使用はまた、薬剤投与プロセスの検出の信頼性向上にも有利である。これは例えば、2つのセンサのうちの1つだけで生成されるデータに基づいて「適正」とされた事象を除外させること可能である。
【0077】
例えば、吸入器100の場合、加速度センサ112によって検出され、恐らくは吸入器の適正な装填に起因する振動を、マウスピース104にアクセスするためのシャッタ102の開放不良を近接センサ113によって検出して、排除することが可能である。例えば、吸入器200の場合、加速度センサ212によって検出され、恐らくは吸入器の適正な装填に起因する振動を、ピストン203の変位不良を近接センサ213によって検出して、排除することが可能である。例えば、吸入器100の場合、加速度センサ112によって検出され、恐らくは吸入動作に起因する振動を、マウスピース104の近傍に唇300が存在しないことを近接センサ113によって検出して、排除することが可能である。
【0078】
典型的には1か月以上、そして少なくとも1週間、連続かつ信頼性良く動作しなければならない装置(又はアクセサリ)にとって、省エネルギーは重要な因子である。事実、電子回路を動作させるのに十分な電力がなければ、薬剤投与プロセスの検出は役に立たない。
【0079】
両方のセンサを使用することは、薬剤投与プロセス検出の総エネルギー消費の改善にも有利である。
【0080】
例えば、吸入器100の場合、マウスピース104にアクセスするためのシャッタ102の開放を近接センサ113によって検出した後にのみ、加速度センサ112によって、適正な吸入器の装填の識別プロセスを作動させるとエネルギー効率が良い。例えば、吸入器200の場合、ピストン203の変位を近接センサ213によって検出した後にのみ、加速度センサ212によって、適正な吸入器の装填の識別プロセスを作動させるとエネルギー効率が良い。例えば、吸入器100の場合、マウスピース104の近傍に唇300が存在することを近接センサ113によって検出した後にのみ、加速度センサ212によって、吸入動作の検出プロセスを作動させるとエネルギー効率が良い。
【0081】
一般的に、アクセサリの少なくとも2つの異なる動作状態を識別可能である。
【0082】
第1の状態SP(スリープ)では、アクセサリは、薬剤投与プロセスの開始、例えば薬剤の投与に先行する、アクセサリの把持動作を識別するために必要な、最小のエネルギープロファイルを採用する。
【0083】
第2の状態AC(アクティブ)では、アクセサリは、薬剤投与プロセスの検出(及び可能であれば、データ及び/又は情報の記憶、及び/又は送信及び/又は同期)に必要な、最小のエネルギープロファイルを採用する。
【0084】
具体的には、AC状態を更に少なくとも2つの別々の状態に細分することが可能である(正確には「下位状態」と称する)。それはアクセサリが吸入器の装填を検出するために(そして可能であればデータ及び/又は情報の記憶及び/又は送信及び/又は同期のために)必要な最小エネルギープロファイルをとる、LP(低電力)状態と、アクセサリが吸入器動作を検出するために(そして可能であればデータ及び/又は情報の記憶及び/又は送信及び/又は同期のために)必要な最小エネルギープロファイルをとる、HP(高電力)状態である。
【0085】
吸入器がまだ組み込まれていないアクセサリの場合には、吸入器単独のアセンブリの識別に必要な最小エネルギープロファイルに関する、第3の下位状態NI(非挿入)を提供することも有利である。
【0086】
動作状態を
図7に示す。ここで状態は丸で囲まれた文字で表し、状態間の可能な遷移は矢印で表す。
【0087】
一般的にアクセサリの動作は、薬剤投与プロセスの検出に適合されるAC動作状態と、薬剤投与プロセスの開始の検出に適合されるSP動作状態とを与える。
【0088】
具体的に、AC動作状態は、少なくとも吸入器の装填を検出するように適合されたLP動作下位状態、及び/又は少なくとも薬剤の吸入を検出するように適合されたHP動作下位状態、及び/又は吸入器のアセンブリの検出に適合されたNI動作下位状態を少なくとも提供可能である。
【0089】
一般的に、本発明は薬剤投与プロセスを(正確に)検出可能とすることを目的とし、上記の吸入器に結合するか組み込まれた(少なくとも)1つの加速度センサ、及び上記の吸入器に結合するか組み込まれた近接センサを介して実行される、服薬遵守性と使用の妥当性の検証を想定する。他のセンサの使用も排除されない。
【0090】
具体的には、使用の妥当性が、加速度センサと近接センサの両方により検証される。
【0091】
有利には、特に、薬剤投与プロセスの検出の精度及び完全性を向上するために、吸入器の保管の妥当性の検証が想定される。
【0092】
保管の妥当性は、電子回路に接続されるか又は組み込まれた、加速度センサ及び/又は近接センサ及び/又は温度センサ及び/又は環境光センサなどのセンサを介して検証可能である。例えば、吸入器が開放されたまま、及び/又は装填されたまま長期間放置されなかったかどうか、吸入器が期限切れの薬剤を含んでいないかどうか、吸入器が落とされたことがないかどうか、吸入器が輸送されたことがあるか又は静置されていたかどうか、吸入器が明るい所又は暗い所に保持されていたかどうか、吸入器が推奨範囲の温度より高い及び/又は低い温度の曝されたことはないかどうか、吸入器が特定の家具、又は使用者の体内、又はバッグの中、又は使用者の手の中に保管されたことがないかどうか、を確証することに関心がある場合もある。この場合、使用者が係わる活動の効力及び/又は効率を向上させる目的で、無線送信出力を変更及び/又は変化及び/又は修正するか、音響及び/又は視覚及び/又は触覚の信号強度を変更及び/又は変化させることが有利である。例えば、アクセサリと吸入器のアセンブリ(あるいは統合型の吸入器)が使用する人(の例えばポケット内)に見つかる場合、触覚信号が音響信号よりも効果的であり、その一方で視覚信号は全く効果がなく、したがって回避可能である。その結果、電気エネルギーが節約される。例えば、アクセサリと吸入器のアセンブリ(あるいは統合型の吸入器)がバッグ内にある場合、音響信号は視覚信号よりも効果的であり、その一方で触覚信号は全く効果がなく、したがって回避可能である。その結果、電気エネルギーが節約される。
【0093】
前述の例の両方において、ブルートゥース受信器(例えば使用者の携帯電話)はアクセサリと吸入器のアセンブリ(又は統合型吸入器)の直近にある可能性が高く、無線通信の品質を損なうことなく、無線送信出力を下げるように選択することが可能である。その結果、電気エネルギーが節約される。その反対に、アクセサリと吸入器のアセンブリ(又は統合型吸入器)が特定の家具(例えば薬用キャビネット)内にある場合には、ブルートゥース受信器(例えば使用者の携帯電話)はアクセサリと吸入器のアセンブリ(又は統合型吸入器)から離れた場所にある可能性が高く、無線通信の品質を維持するために無線送信出力を増加させるように選択する可能性がある。
【0094】
アクセサリは吸入器とは別のものであるので、アクセサリの吸入器への取り付け/取り外しを自動的に制御することは利点がある。その目的で、加速度センサ及び/又は近接センサを使用可能である。当然ながら、加速度センサ及び/又は近接センサはアクセサリに統合されている。
【0095】
既に述べたように、特定の態様によれば、本発明は、吸入器が外部アクセサリと結合するようになっていない場合には、吸入器に組み込まれるいくつかの構成要素の存在を想定する。
【0096】
統合されるべき構成要素は、少なくとも、1つの加速度センサ、1つの近接センサ、及びこれらのセンサに電気的に接続された電子回路である。
【0097】
センサの有用性と使用法を、本発明によるアクセサリ、及び本発明による方法を参照して上で説明した。