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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560041
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2019047790
(87)【国際公開番号】W WO2020121960
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018230576
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】吉見 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 純一
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/074737(WO,A1)
【文献】特開2018-008324(JP,A)
【文献】特開2016-107370(JP,A)
【文献】特開2012-066373(JP,A)
【文献】特表2000-507167(JP,A)
【文献】特開2002-263975(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/122039(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00-3/154
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)よりも先端側へ突出されてクランプ対象物(W)の孔(Wa)に挿入可能なロック部材(23)と、
前記ロック部材(23)に先端側から係合する楔面(24)を有するクランプロッド(7)と、
前記クランプロッド(7)を基端側へクランプ駆動すると共に先端側へアンクランプ駆動する駆動手段(13)と、
前記ロック部材(23)を半径方向へ移動可能に前記ロック部材(23)の基端部を支持する支持部材(19)であって、前記ハウジング(1)の先端側に軸方向へ移動可能に挿入される支持部材(19)と、
前記支持部材(19)の先端側および基端側へのいずれの軸方向への動きにも抵抗を付与する抵抗付与機構(34)と、
前記クランプロッド(7)の前記楔面(24)と前記ロック部材(23)とを相対移動可能に係合させる係合維持機構(26)と、
を備え、
前記クランプロッド(7)が先端側へアンクランプ駆動されたとき、前記ロック部材(23)が半径方向の内方へ移動した後に、前記クランプロッド(7)が前記支持部材(19)を介して前記ロック部材(23)を先端側へ移動させる、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記支持部材(19)は、前記クランプロッド(7)が軸方向へ移動可能に挿入される筒部(20)を有し、
前記抵抗付与機構(34)は、
前記筒部(20)の外周面に形成された環状溝(32)と、
前記環状溝(32)に装着されたリング状の弾性部材(33)と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項1のクランプ装置において、
前記支持部材(19)は、前記クランプロッド(7)が軸方向へ移動可能に挿入される筒部(20)を有し、
前記抵抗付与機構(34)は、
前記ハウジング(1)の先端側の側壁にあけられた横孔(38)と、
前記横孔(38)に装着された、係合部材(39)およびこの係合部材(39)を前記筒部(20)に向けて付勢する付勢手段(40)と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項1のクランプ装置において、
前記支持部材(19)は、前記クランプロッド(7)が軸方向へ移動可能に挿入される筒部(20)を有し、
前記抵抗付与機構(34)は、
前記筒部(20)の外周に形成された軸方向に対して傾斜する傾斜面(42)に基端側から係合する楔部材(43)であって、前記傾斜面(42)と前記ハウジング(1)の内周面との間に装着された楔部材(43)と、
前記楔部材(43)を先端側に付勢する付勢手段(44)と、
前記付勢手段(44)を前記筒部(20)の外周面側に保持する保持手段(45)と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかのクランプ装置において、
前記係合維持機構(26)は、
前記クランプロッド(7)の前記楔面(24)に形成されたロッド側係合溝(24a)またはロッド側係合部と、
前記ロック部材(23)に形成された、前記ロッド側係合溝(24a)に嵌合するロック部材側係合部(25a)または前記ロッド側係合部に嵌合するロック部材側係合溝と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかのクランプ装置において、
前記クランプロッド(7)が基端側へクランプ駆動されたとき、前記クランプロッド(7)に対して前記ロック部材(23)が所定量を超えて半径方向の外方へ移動するのを制限する相対移動制限機構(31)を、さらに備える、
クランプ装置。
【請求項7】
請求項6のクランプ装置において、
前記相対移動制限機構(31)は、前記ハウジング(1)の先端側の端部に形成された、半径方向の内方へ突出する環状の突出部(30)であって、当該突出部(30)の孔径が、前記クランプ対象物(W)の孔(Wa)の径と同じ、または前記クランプ対象物(W)の孔(Wa)の径よりも小さい、
クランプ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかのクランプ装置において、
前記支持部材(19)は、
前記クランプロッド(7)が軸方向へ移動可能に挿入される筒部(20)と、
前記筒部(20)の先端側に形成された周壁部(21)であって、前記ロック部材(23)が半径方向へ移動可能に挿入されるガイド孔(21a)を有する周壁部(21)と、
前記周壁部(21)の先端側に形成された先細りの頂壁部(22)と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項9】
請求項1~8のクランプ装置において、
前記ハウジング(1)は、
下ハウジング(2)と、
前記下ハウジング(2)の上面に径方向へ移動可能に連結された筒状の上ハウジング(5)であって、前記支持部材(19)が軸方向へ移動可能に挿入される上ハウジング(5)と、を備え、
前記クランプロッド(7)は、
ロッド本体(52)と、
前記ロッド本体(52)の先端部にピン部材(53)を介して当該ロッド本体(52)の径方向に移動可能に連結されたロッド先端部(54)であって、前記楔面(24)が形成されたロッド先端部(54)と、を備える、
クランプ装置。
【請求項10】
請求項1~8のクランプ装置において、
前記ハウジング(1)は、
下ハウジング(2)と、
前記下ハウジング(2)の上面に固定された筒状の上ハウジング(5)であって、前記支持部材(19)が軸方向および径方向へ移動可能に挿入される上ハウジング(5)と、を備え、
前記クランプロッド(7)は、
ロッド本体(52)と、
前記ロッド本体(52)の先端部にピン部材(53)を介して当該ロッド本体(52)の径方向に移動可能に連結されたロッド先端部(54)であって、前記楔面(24)が形成されたロッド先端部(54)と、を備える、
クランプ装置。
【請求項11】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)よりも先端側へ突出されてクランプ対象物(W)の孔(Wa)に挿入可能なロック部材(23)と、
前記ロック部材(23)に先端側から係合する楔面(24)を有するクランプロッド(7)と、
前記クランプロッド(7)を基端側へクランプ駆動すると共に先端側へアンクランプ駆動する駆動手段(13)と、
前記ロック部材(23)を半径方向へ移動可能に前記ロック部材(23)の基端部を支持する支持部材(19)であって、前記ハウジング(1)の先端側に軸方向へ移動可能に挿入される支持部材(19)と、
前記クランプロッド(7)の前記楔面(24)と前記ロック部材(23)とを相対移動可能に係合させる係合維持機構(26)と、
前記クランプロッド(7)が基端側へクランプ駆動されたとき、前記クランプロッド(7)に対して前記ロック部材(23)が所定量を超えて半径方向の外方へ移動するのを制限する相対移動制限機構(31)と、
を備え、
前記相対移動制限機構(31)は、前記ハウジング(1)の先端側の端部に形成された、半径方向の内方へ突出する環状の突出部(30)であって、当該突出部(30)の孔径が、前記クランプ対象物(W)の孔(Wa)の径と同じ、または前記クランプ対象物(W)の孔(Wa)の径よりも小さい、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク等のクランプ対象物をクランプする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置として、従来では、下記の特許文献1に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載のクランプ装置は、ワークの孔に挿入可能なロック部材と、このロック部材に上側から楔係合するクランプロッドと、ロック部材を所定の力で上方(アンクランプ側)へ押す進出バネとを備える。ロック部材の突出部によりワークの孔の周壁が上側から押さえられることでワークはクランプされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-107370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術には次の問題がある。
上記クランプ装置の各部の構成によっては、ロック部材が拡径位置に位置するとき、すなわちクランプ状態のとき、ロック部材のベース部の外周面とワークの孔の内周面とが、塑性変形で食い付いたり強力に密着したりすることがある。
この状態でクランプロッドが上方(アンクランプ側)へ移動させられると、ロック部材がワークを把持したまま上昇することにより、ワークの載置位置がずれてしまう場合がある。
【0006】
本発明の第1の目的は、アンクランプ駆動時におけるワーク等のクランプ対象物の持ち上げを抑制することができる構成のクランプ装置を提供することである。
【0007】
前記特許文献1に記載の従来技術には、さらに下記のような改善すべき課題がある。クランプ駆動時に、ロック部材が半径方向の外方へ移動し過ぎると、ワークの孔の内周面がロック部材によって損傷してしまうことがある。特許文献1に記載のクランプ装置では、ピン部材と、ガイド部材の基端側の部分の周壁に形成された当該ピン部材が挿入されるピン孔とで構成される相対移動制限機構によって、上記損傷を抑制することができるが、この相対移動制限機構は、構成が複雑である。
【0008】
本発明の第2の目的は、ワーク等のクランプ対象物の孔の内周面がクランプ駆動時に損傷することを抑制できる従来よりも簡易な構成の機構を備えるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の第1の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図18に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
【0010】
本発明の第1の目的を達成するためのクランプ装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1よりも先端側へ突出されてクランプ対象物Wの孔Waに挿入可能なロック部材23と、前記ロック部材23に先端側から係合する楔面24を有するクランプロッド7と、前記クランプロッド7を基端側へクランプ駆動すると共に先端側へアンクランプ駆動する駆動手段13と、前記ロック部材23を半径方向へ移動可能に前記ロック部材23の基端部を支持する支持部材19であって、前記ハウジング1の先端側に軸方向へ移動可能に挿入される支持部材19と、前記支持部材19の先端側および基端側へのいずれの軸方向への動きにも抵抗を付与する抵抗付与機構34と、前記クランプロッド7の前記楔面24と前記ロック部材23とを相対移動可能に係合させる係合維持機構26と、を備える。前記クランプロッド7が先端側へアンクランプ駆動されたとき、前記ロック部材23が半径方向の内方へ移動した後に、前記クランプロッド7が前記支持部材19を介して前記ロック部材23を先端側へ移動させる。
【0011】
本発明のクランプ装置は次の作用効果を奏する。
ロック部材の外周面とクランプ対象物の孔の内周面とが食い付いたり強力に密着したりしていたとしても、クランプロッドがアンクランプ駆動されたとき、ロック部材が半径方向の内方へ移動した後に先端側へ移動するので、ロック部材がクランプ対象物を把持したまま先端側へ移動することを抑制することができる。
【0012】
本発明の上記クランプ装置において、前記支持部材19は、前記クランプロッド7が軸方向へ移動可能に挿入される筒部20を有し、前記抵抗付与機構34は、前記筒部20の外周面に形成された環状溝32と、前記環状溝32に装着されたリング状の弾性部材33と、を備えることが好ましい。
この構成によると、抵抗付与機構を容易に形成することができる。
【0013】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記支持部材19は、前記クランプロッド7が軸方向へ移動可能に挿入される筒部20を有し、前記抵抗付与機構34は、前記ハウジング1の先端側の側壁にあけられた横孔38と、前記横孔38に装着された、係合部材39およびこの係合部材39を前記筒部20に向けて付勢する付勢手段40と、を備える構成とされてもよい。
【0014】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記支持部材19は、前記クランプロッド7が軸方向へ移動可能に挿入される筒部20を有し、前記抵抗付与機構34は、前記筒部20の外周に形成された軸方向に対して傾斜する傾斜面42に基端側から係合する楔部材43であって、前記傾斜面42と前記ハウジング1の内周面との間に装着された楔部材43と、前記楔部材43を先端側に付勢する付勢手段44と、前記付勢手段44を前記筒部20の外周面側に保持する保持手段45と、を備える構成とされてもよい。
【0015】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記係合維持機構26は、前記クランプロッド7の前記楔面24に形成されたロッド側係合溝24aまたはロッド側係合部と、前記ロック部材23に形成された、前記ロッド側係合溝24aに嵌合するロック部材側係合部25aまたは前記ロッド側係合部に嵌合するロック部材側係合溝と、を備えることが好ましい。
この構成によると、安定して作動する係合維持機構を容易に形成することができる。
【0016】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記クランプロッド7が基端側へクランプ駆動されたとき、前記クランプロッド7に対して前記ロック部材23が所定量を超えて半径方向の外方へ移動するのを制限する相対移動制限機構31を、さらに備えることが好ましい。
この構成によると、ロック部材の外周面とクランプ対象物の孔の内周面とが食い付いたり強力に密着したりことを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記相対移動制限機構31は、前記ハウジング1の先端側の端部に形成された、半径方向の内方へ突出する環状の突出部30であって、当該突出部30の孔径が、前記クランプ対象物Wの孔Waの径と同じ、または前記クランプ対象物Wの孔Waの径よりも小さいことが好ましい。
この構成によると、相対移動制限機構を容易に形成することができる。
【0018】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記支持部材19は、前記クランプロッド7が軸方向へ移動可能に挿入される筒部20と、前記筒部20の先端側に形成された周壁部21であって、前記ロック部材23が半径方向へ移動可能に挿入されるガイド孔21aを有する周壁部21と、前記周壁部21の先端側に形成された先細りの頂壁部22と、を備えることが好ましい。
この構成によると、クランプ対象物の搬入時、クランプ対象物の孔の周壁がロック部材に衝突するのを上記支持部材によって防止することができる。また、クランプ駆動時およびアンクランプ駆動時には、ロック部材の作動がより安定する。
【0019】
また、本発明の上記クランプ装置において、例えば図13Aから図15図18図19に示すように、前記ハウジング1は、下ハウジング2と、前記下ハウジング2の上面に径方向へ移動可能に連結された筒状の上ハウジング5であって、前記支持部材19が軸方向へ移動可能に挿入される上ハウジング5と、を備え、前記クランプロッド7は、ロッド本体52と、前記ロッド本体52の先端部にピン部材53を介して当該ロッド本体52の径方向に移動可能に連結されたロッド先端部54であって、前記楔面24が形成されたロッド先端部54と、を備えることが好ましい。
この構成によると、孔が少し位置ずれしたクランプ対象物であっても、その孔を支持部材の周壁部に好適に外嵌めすることができる。
【0020】
また、本発明の上記クランプ装置において、例えば図16図17に示すように、前記ハウジング1は、下ハウジング2と、前記下ハウジング2の上面に固定された筒状の上ハウジング5であって、前記支持部材19が軸方向および径方向へ移動可能に挿入される上ハウジング5と、を備え、前記クランプロッド7は、ロッド本体52と、前記ロッド本体52の先端部にピン部材53を介して当該ロッド本体52の径方向に移動可能に連結されたロッド先端部54であって、前記楔面24が形成されたロッド先端部54と、を備えることが好ましい。
この構成によると、孔が少し位置ずれしたクランプ対象物であっても、その孔を支持部材の周壁部に好適に外嵌めすることができる。
【0021】
前記の第2の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図10図13Aから図19に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
【0022】
本発明の第2の目的を達成するためのクランプ装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1よりも先端側へ突出されてクランプ対象物Wの孔Waに挿入可能なロック部材23と、前記ロック部材23に先端側から係合する楔面24を有するクランプロッド7と、前記クランプロッド7を基端側へクランプ駆動すると共に先端側へアンクランプ駆動する駆動手段13と、前記ロック部材23を半径方向へ移動可能に前記ロック部材23の基端部を支持する支持部材19であって、前記ハウジング1の先端側に軸方向へ移動可能に挿入される支持部材19と、前記クランプロッド7の前記楔面24と前記ロック部材23とを相対移動可能に係合させる係合維持機構26と、前記クランプロッド7が基端側へクランプ駆動されたとき、前記クランプロッド7に対して前記ロック部材23が所定量を超えて半径方向の外方へ移動するのを制限する相対移動制限機構31と、を備える。前記相対移動制限機構31は、前記ハウジング1の先端側の端部に形成された、半径方向の内方へ突出する環状の突出部30であって、当該突出部30の孔径が、前記クランプ対象物Wの孔Waの径と同じ、または前記クランプ対象物Wの孔Waの径よりも小さい。
【0023】
この構成によると、クランプ対象物の孔の内周面がクランプ駆動時に損傷することを従来よりも簡易な構成で抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の目的を達成するためのクランプ装置によると、アンクランプ駆動時におけるワーク等のクランプ対象物の持ち上げを抑制できる。
【0025】
また、本発明の第2の目的を達成するためのクランプ装置によると、クランプ対象物の孔の内周面がクランプ駆動時に損傷することを従来よりも簡易な構成で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置のアンクランプ状態における立面視の断面図である。
図2図2は、上記クランプ装置の、アンクランプ状態からクランプ状態へ切り換わる途中の立面視の断面図である。
図3図3は、上記クランプ装置のクランプ状態における立面視の断面図である。
図4図4は、上記クランプ装置の、クランプ状態から図1に示すアンクランプ状態へ切り換わる途中の立面視の断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置のアンクランプ状態における立面視の断面図である。
図6図6は、図5に示すクランプ装置のクランプ状態における立面視の断面図である。
図7図7は、図5に示すクランプ装置の、クランプ状態から図5に示すアンクランプ状態へ切り換わる途中の立面視の断面図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態を示し、クランプ装置のアンクランプ状態における立面視の断面図である。
図9図9は、図8に示すクランプ装置のクランプ状態における立面視の断面図である。
図10図10は、図8に示すクランプ装置の、クランプ状態から図8に示すアンクランプ状態へ切り換わる途中の立面視の断面図である。
図11図11は、本発明の第4実施形態を示し、クランプ装置のアンクランプ状態における立面視の断面図である。
図12図12は、図11に示すクランプ装置のクランプ状態における立面視の断面図である。
図13A図13Aは、本発明の第5実施形態を示し、孔が水平方向に位置ずれしたクランプ対象物を下降させる前の状態におけるクランプ装置の立面視の断面図である。
図13B図13Bは、図13AのA-A断面図である。
図14図14は、図13Aに示す状態から、クランプ対象物を下降させてその孔の下角部が支持部材の頂壁部の側面に当たった状態における上記クランプ装置の立面視の断面図である。
図15図15は、図14に示す状態から、クランプ対象物をさらに下降させたときの上記クランプ装置の立面視の断面図である。
図16図16は、本発明の第6実施形態を示し、孔が水平方向に位置ずれしたクランプ対象物を下降させる前の状態におけるクランプ装置の立面視の断面図である。
図17図17は、図16に示す状態から、クランプ対象物を下降させたときの上記クランプ装置の立面視の断面図であって、図15に対応する図である。
図18図18は、本発明の第7実施形態を示し、孔が水平方向に位置ずれしたクランプ対象物を下降させる前の状態におけるクランプ装置の立面視の断面図である。
図19図19は、本発明の第8実施形態を示し、孔が水平方向に位置ずれしたクランプ対象物を下降させる前の状態におけるクランプ装置の立面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から図4は、本発明の第1実施形態を示す。この実施形態のクランプ装置は、クランプ対象物としてのワークWを固定するのに用いられる。ワークWは、例えば、自動車用パネルの材料として使用される鋼板であって、その厚さは例えば約1mm~2mmである。このワークWには孔Waがあけられている。
【0028】
図1から図4によって本発明の第1実施形態のクランプ装置の構成を説明する。
テーブル等の固定台Tにハウジング1が取り付けられる。ハウジング1は、下ハウジング2と、下ハウジング2に形成されたシリンダ孔2aの下端部開口を保密状に閉止する蓋部材3と、下ハウジング2の上面にボルト4で固定される筒状の上ハウジング5とを備える。下ハウジング2は、上記シリンダ孔2aと小径孔2bとを下から順に有する。
【0029】
上記シリンダ孔2aにピストン6が保密状に挿入され、このピストン6から上方へ突出するクランプロッド7が上記小径孔2bに保密状に挿入される。ピストン6の上側に形成されたクランプ室8にエア給排ポート10を介して圧縮空気が供給および排出される。また、ピストン6の下側に形成されたアンクランプ室11に別のエア給排ポート12を介して圧縮空気が供給および排出される。上記ピストン6とクランプ室8とアンクランプ室11とで、クランプロッド7を下方へクランプ駆動すると共に上方へアンクランプ駆動する駆動手段13が構成される。なお、クランプロッド7とピストン6とは一体成形品であるが、別々に形成された後に固定されて一体とされてもよい。上記クランプ室8には付勢手段としてのバネ14、15が収納されており、これらバネ14、15はピストン6を介してクランプロッド7を下方へ付勢する。
【0030】
上ハウジング5の上端面には、ワークWを受け止める着座部16が設けられる。また、上ハウジング5の側壁には、上下方向へ延びる検出路17が形成される。この検出路17の上端は着座部16に開口され、下端はエア供給ポート18に連通される。
【0031】
上ハウジング5の上部側に支持部材19が軸方向へ移動可能に挿入される。この支持部材19は、下側から順に筒部20と、筒部20よりも小径の周壁部21と、先細りの頂壁部22とを有する。上記周壁部21および頂壁部22は、上ハウジング5の上端よりも上側へ突出されて、ワークWの孔Waに挿入可能となっている。
【0032】
上記周壁部21には、その周方向において120°毎に3つのガイド孔21aが形成され、各ガイド孔21aにロック部材23が半径方向へ移動可能に挿入される。各ロック部材23は、下側から順に基端部27とベース部28と突出部29とを有する。上記基端部27は、支持部材19を構成する上記筒部20によって下側から支持される部分である。上記突出部29の外周面は、上記ベース部28の外周面28aよりも半径方向の外方へ突出されている。なお、図1等には、3つのロック部材23のうちの1つのロック部材23のみが図示されている。
【0033】
上ハウジング5の上端部に半径方向の内方へ突出する環状の突出部30が設けられる。この突出部30は、クランプロッド7が下方へクランプ駆動されたとき、クランプロッド7に対して上記ロック部材23が所定量を超えて半径方向の外方へ移動するのを制限する相対移動制限機構31を構成する。上記突出部30の孔径は、ワークWの孔Waの径と同じとされる。なお、突出部30の孔径は、ワークWの孔Waの径よりも小さい径とされてもよい。
【0034】
筒部20および周壁部21内にクランプロッド7が下側から軸方向へ移動可能に挿入される。クランプロッド7の上部に設けられた楔面24が、ロック部材23の上記外周面28aとは反対側の面に形成された傾斜面25に上側から係合する。上記楔面24と傾斜面25とは、下方へ向かうにつれてクランプロッド7の軸心へ近づくように傾斜されており、ここでは平面によって構成されている。本実施形態では、ロック部材23の数と同じく、クランプロッド7の周方向において120°毎に計3面の楔面24が形成される。
【0035】
上記楔面24に沿って上下方向に延びるロッド側係合溝24aが楔面24に形成され、且つ、上記傾斜面25に沿って上下方向に延びるロック部材側係合部25aが傾斜面25に形成される。上記ロック部材側係合部25aは上記ロッド側係合溝24aに嵌合し、ロック部材側係合部25aとロッド側係合溝24aとで、クランプロッド7の楔面24とロック部材23の傾斜面25とを相対移動可能に係合させる係合維持機構26が構成される。
【0036】
クランプロッド7の外周には先細りのテーパ面7aが形成されている。
【0037】
支持部材19は、直進ガイド機構35によって上下方向へ案内される。この直進ガイド機構35は、上ハウジング5の内周壁に装着されたボール36と、支持部材19を構成する上記筒部20の外周面に上下方向へ形成された直進ガイド溝37とを有する。この直進ガイド溝37に上記ボール36が挿入される。
【0038】
筒部20の下端部の外周面に環状溝32が形成され、この環状溝32にリング状の弾性部材としての止め輪33が装着される。上記環状溝32と止め輪33とで、支持部材19の先端側および基端側へのいずれの軸方向(上下方向)への動きにも抵抗を付与する抵抗付与機構34が構成される。なお、符号33aで示す部分は、止め輪33のスリット部分であり、この止め輪33は、いわゆるC字形状の止め輪である。リング状の弾性部材としてC字形状の止め輪に代えて、完全なリング形の止め輪を用いてもよい。上ハウジング5の内周面には環状の溝5aが設けられており、アンクランプ状態のとき、上記止め輪33は溝5aに嵌まり込む。
【0039】
上記構成のクランプ装置は次のように動作する。
図1に示すアンクランプ状態では、クランプ室8の圧縮空気が排出されると共にアンクランプ室11に圧縮空気が供給されている。これにより、ピストン6がクランプロッド7をバネ14、15の付勢力に抗して上方のアンクランプ位置へ移動させ、各ロック部材23は係合維持機構26によって半径方向の内方へ後退されている。
【0040】
このとき、ロック部材23の突出部29の外周面が、支持部材19の周壁部21の外周面よりも内方に後退されるため、ワークWの搬入時に、ワークWの孔Waの周壁がロック部材23に衝突するのを防止できる。上記アンクランプ状態でワークWを下降させると、ワークWの孔Waが、支持部材19の周壁部21とロック部材23との間に所定の隙間をあけて外嵌される。
【0041】
図1に示すアンクランプ状態から図3に示すクランプ状態へ切り換えるときは、アンクランプ室11の圧縮空気を排出すると共にクランプ室8に圧縮空気を供給し、ピストン6を下降させる。
【0042】
これにより、図2に示すように、まずクランプロッド7が下降していく。支持部材19およびロック部材23は、抵抗付与機構34を構成する止め輪33の弾性復元力によって図1に示すアンクランプ状態での位置をそのまま維持するか、または僅かに下降する。
【0043】
クランプロッド7が下降していくと、その楔面24がロック部材23を半径方向の外方へ押出していき、ロック部材23のベース部28の外周面28aがワークWの孔Waの内周面に接触すると共に、上ハウジング5の上端部に設けられた突出部30の内周面に当接する。ワークWの孔Waの内周面にロック部材23のベース部28の外周面28aが接触することで、ワークWは水平方向において位置決めされる。また、ロック部材23を構成する突出部29が孔Waの周壁に上方から対面する。
【0044】
上記突出部30の内周面にロック部材23が当接すると、ロック部材23はこれ以上半径方向の外方へ移動できなくなるので、クランプロッド7の楔面24がロック部材23および支持部材19を下方へ押し、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とが止め輪33の弾性復元力に抗して一体となって下降していく。突出部30の孔径が、ワークWの孔Waの径と同じとされていることで、ワークWの孔Waの内周面にロック部材23が強く当たることがないので、孔Waの内周面の損傷を抑制することができる。
【0045】
すると、図3に示すように、ロック部材23の突出部29の下面がワークWの孔Waの周壁の上面位置に達し、孔Waの周壁は、ロック部材23の突出部29によって上ハウジング5の着座部16に押し付けられる。これにより、ワークWはクランプされる。クランプ室8に収納されているバネ14、15の付勢力により、ワークWの保持力が高められている。
【0046】
図3に示すクランプ状態では、前記検出路17がワークWの下面によって閉じられるので、検出路17に供給されているワーク検出用の加圧エアの圧力が設定圧力よりも上昇する。この圧力上昇を圧力スイッチ等で検知することにより、ワークWがクランプされたことを確認できる。
【0047】
図3に示すクランプ状態から図1に示すアンクランプ状態へ切り換えるときは、クランプ室8の圧縮空気を排出すると共にアンクランプ室11に圧縮空気を供給し、ピストン6を上昇させる。
【0048】
これにより、図4に示すように、まずクランプロッド7が上昇していく。支持部材19およびロック部材23は、抵抗付与機構34を構成する止め輪33の弾性復元力によって図3に示すクランプ状態での位置(下降位置)で保持される。
【0049】
クランプロッド7が上昇していくと、ロック部材23の上方への移動が支持部材19によって制限される(ガイド孔21aの上端面でロック部材23の上方への移動が制限される)と共に、前記係合維持機構26によりクランプロッド7の楔面24とロック部材23とが相対移動可能に係合されているので、楔面24がロック部材23を半径方向の内方へ後退させていき、ロック部材23の突出部29がワークWの孔Waの周壁から半径方向の内方へ向かう方向に離間される。
【0050】
クランプロッド7がさらに上昇すると、クランプロッド7の外周に形成されたテーパ面7aが、支持部材19を構成する筒部20の内周側の上端角部に当たり、その後は、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とが止め輪33の弾性復元力に抗して一体となって上昇していく。換言すれば、クランプロッド7が支持部材19を介してロック部材23を上方へ移動させる。
【0051】
その後、上記筒部20の上端面が上ハウジング5の内周側の天面に当たりクランプロッド7の上昇が停止して、図1に示すアンクランプ状態となる。
【0052】
図5から図7は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態のクランプ装置と、第1実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0053】
第2実施形態と第1実施形態との違いは、前記抵抗付与機構34の構成の違いである。第2実施形態の抵抗付与機構34は、次のように構成される。
【0054】
上ハウジング5の側壁、すなわちハウジング1の先端側の側壁に横孔38があけられる。この横孔38に、係合部材としてのボール39、およびこのボール39を支持部材19の筒部20に向けて付勢する付勢手段としてのバネ40が装着される。上記横孔38とボール39とバネ40とで抵抗付与機構34が構成される。なお、バネ40の外方の上ハウジング5の外周面には環状のプレート41が装着される。また、アンクランプ状態のときに上記ボール39の一部が嵌まり込む横孔50が筒部20にあけられている。横孔50の径は、横孔38の径よりも小さく、支持部材19が上昇位置にあるときボール39の半分未満の部分のみが横孔50に嵌り込む。ボール39は、バネ40と共に横孔38内に常に装着されている。
【0055】
第2実施形態のクランプ装置を図6に示すクランプ状態から図5に示すアンクランプ状態にアンクランプ駆動するときに、クランプ装置は次のように動作する。
【0056】
上記のクランプ状態のクランプ装置において、クランプ室8の圧縮空気を排出すると共にアンクランプ室11に圧縮空気を供給し、ピストン6を上昇させると、図7に示すように、まずクランプロッド7が上昇していく。支持部材19およびロック部材23は、抵抗付与機構34を構成するバネ40の弾性復元力によって図6に示すクランプ状態での位置(下降位置)で保持される。
【0057】
クランプロッド7が上昇していくと、その楔面24がロック部材23を半径方向の内方へ後退させていき、ロック部材23の突出部29がワークWの孔Waの周壁から半径方向の内方へ向かう方向に離間される。
【0058】
クランプロッド7がさらに上昇すると、クランプロッド7の外周に形成されたテーパ面7aが、支持部材19を構成する筒部20の内周側の上端角部に当たり、その後は、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とがバネ40の弾性復元力に抗して一体となって上昇していく。その後、上記筒部20の上端面が上ハウジング5の内周側の天面に当たりクランプロッド7の上昇が停止して、図5に示すアンクランプ状態となる。
【0059】
図8から図10は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態のクランプ装置と、第1実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0060】
第3実施形態と第1実施形態との違いは、前記抵抗付与機構34の構成の違いである。第3実施形態の抵抗付与機構34は、次のように構成される。
【0061】
支持部材19の筒部20の外周に軸方向に対して傾斜する傾斜面42が形成され、この傾斜面42に下方から係合する楔部材43が、傾斜面42と上ハウジング5の内周面との間に装着される。上記楔部材43を上方へ付勢する付勢手段としてのバネ44が、環状のバネ受け46と止め輪47とで構成される保持手段45によって筒部20の外周面側に保持される。上記楔部材43とバネ44と保持手段45とで抵抗付与機構34が構成される。なお、環状の楔部材43はスリット43aを有し、径方向に弾性変形可能である。
【0062】
アンクランプ駆動時、第3実施形態のクランプ装置は次のように動作する。
【0063】
クランプ室8の圧縮空気を排出すると共にアンクランプ室11に圧縮空気を供給し、ピストン6を上昇させると、図10に示すように、まずクランプロッド7が上昇していく。支持部材19およびロック部材23は、抵抗付与機構34を構成するバネ44の付勢力を半径方向に分散させる楔部材43によって図9に示すクランプ状態での位置(下降位置)で保持される。
【0064】
クランプロッド7が上昇していくと、その楔面24がロック部材23を半径方向の内方へ後退させていき、ロック部材23の突出部29がワークWの孔Waの周壁から半径方向の内方へ向かう方向に離間される。
【0065】
クランプロッド7がさらに上昇すると、クランプロッド7の外周に形成されたテーパ面7aが、支持部材19を構成する筒部20の内周側の上端角部に当たり、その後は、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とが楔部材43の抵抗力に抗して一体となって上昇していく。その後、上記筒部20の上端面が上ハウジング5の内周側の天面に当たりクランプロッド7の上昇が停止して、図8に示すアンクランプ状態となる。
【0066】
図11および図12は、本発明の第4実施形態を示す。第4実施形態のクランプ装置と、第3実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0067】
第4実施形態と第3実施形態との違いは、支持部材19の構成の違いと、前記相対移動制限機構31の構成の違いと、抵抗付与機構34の構成の違いと、ロック部材23の構成の違いとである。なお、第1から第3実施形態におけるワークW(クランプ対象物)は、薄肉のものであるのに対し、第4実施形態におけるワークWは、厚肉のものである。
【0068】
第4実施形態の支持部材19は、次のように構成される。
支持部材19は、第1から第3実施形態におけるものと異なり、周壁部21および頂壁部22を有さず、筒部20のみで構成される。
【0069】
第4実施形態の相対移動制限機構31は、次のように構成される。クランプロッド7を半径方向に貫通するようにピン部材48がクランプロッド7に装着される。軸方向(上下方向)に延びる長孔49が支持部材19(筒部20)の周壁に形成され、この長孔49に上記ピン部材48の端部48aが挿入される。上記ピン部材48と長孔49とで相対移動制限機構31が構成される。
【0070】
第4実施形態の抵抗付与機構34は、次のように構成される。
抵抗付与機構34の付勢手段は、上記第3実施形態で示したバネに代えて、Oリング44および圧縮空気によって構成される。エア供給ポート18から供給された圧縮空気は、検出路17に流れることに加えて、上ハウジング5内を上昇する。具体的には、エア供給ポート18から供給された圧縮空気は、下ハウジング2の上端窪み部の底面と上ハウジング5の下面との間に形成された溝から、上ハウジング5の筒穴内にも供給される。上ハウジング5の筒穴内に供給された圧縮エアが、上記付勢手段の一つとしてOリング44を上方へ押圧する。このOリング44は、上ハウジング5の内周面と筒部20の下部外周面との間に形成された空間に、楔部材43を上方へ向かって押し込むように装着される。第3実施形態でのバネ受け46は、第4実施形態ではOリング受けということになる。なお、Oリング44の弾性復元力によっては、上ハウジング5の筒穴内にその下部から圧縮空気を供給する必要は必ずしもない。すなわち、Oリング44のみで抵抗付与機構34の付勢手段を構成することも可能である。さらには、付勢手段をOリング44の弾性復元力のみによって構成されることに代えて、上ハウジング5の筒穴内にその下部から供給する圧縮空気のみによって楔部材43を上方へ付勢することも可能である。
【0071】
第4実施形態のロック部材23は、次のように構成される。
ロック部材23は、第1から第3実施形態におけるものと異なり、突出部29を有さず、基端部27とベース部28とで構成される。また、ベース部28の外周壁に収容溝28bが周方向に形成され(図11および12には3つのロック部材23のうち1つのロック部材23のみを示す)、その3つのロック部材23の収容溝28bに跨ってリング状の弾性部材28cが装着される。この弾性部材28cは、ゴムまたは樹脂等によって構成される。この弾性部材28cが3つのロック部材23をクランプロッド7の軸心に向けて付勢する。弾性部材28cは、クランプロッド7の先端部にロック部材23を安定して保持するためのものである。
【0072】
この実施形態では、ベース部28の外周面28aがワークWの孔Waの内周面に押し付けられることで、ワークWはクランプされる。
【0073】
第4実施形態のクランプ装置は次のように動作する。
【0074】
図11に示すアンクランプ状態から図12に示すクランプ状態へ切り換えるときは、アンクランプ室11の圧縮空気を排出すると共にクランプ室8に圧縮空気を供給し、ピストン6を下降させる。
【0075】
これにより、クランプロッド7が下降していくと、その楔面24がロック部材23を半径方向の外方へ押出していき、ロック部材23のベース部28の外周面28aがワークWの孔Waの内周面を押圧する。これにより、ワークWはクランプされる。なお、クランプロッド7を下降させると、上記ピン部材48の端部48aが、上記長孔49の底面に当接し、支持部材19およびロック部材23は僅かに下降する。ピン部材48の端部48aが、長孔49の底面に当接すると、ロック部材23の半径方向の外方への移動が制限される。
【0076】
図12に示すクランプ状態では、前記検出路17がワークWの下面によって閉じられるので、検出路17に供給されているワーク検出用の加圧エアの圧力が設定圧力よりも上昇する。この圧力上昇を圧力スイッチ等で検知することにより、ワークWがクランプされたことを確認できる。
【0077】
図12に示すクランプ状態から図11に示すアンクランプ状態へ切り換えるときは、クランプ室8の圧縮空気を排出すると共にアンクランプ室11に圧縮空気を供給し、ピストン6を上昇させる。
【0078】
これにより、まずクランプロッド7が上昇していく。支持部材19およびロック部材23は、抵抗付与機構34を構成するOリング44の付勢力を半径方向に分散させる楔部材43によってクランプ状態での位置(下降位置)で保持される。
【0079】
クランプロッド7が上昇していくと、その楔面24がロック部材23を半径方向の内方へ後退させていき、ロック部材23のベース部28の外周面28aがワークWの孔Waの内周面から半径方向の内方へ向かう方向へ移動する。
【0080】
クランプロッド7がさらに上昇すると、クランプロッド7の上部側の角部7bが支持部材19の内周側の上端角部に当たり、または、ピン部材48の端部48aが長孔49の天面に当たり、その後は、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とが楔部材43の抵抗力に抗して一体となって上昇していく。その後、クランプロッド7の上昇が停止して、図11に示すアンクランプ状態となる。
【0081】
図13Aから図15は、本発明の第5実施形態を示す。第5実施形態のクランプ装置と、第1実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0082】
第5実施形態と第1実施形態との主たる違いは、ハウジング1の構成の違いと、クランプロッド7の構成の違いとである。
【0083】
第5実施形態のハウジング1は、次のように構成される。ハウジング1は、下ハウジング2の上面に径方向(本実施形態では水平方向)へ移動可能に連結された筒状の上ハウジング5を備える。上ハウジング5の基端部に径外方向へ拡がる鍔部5bが形成され、この鍔部5bに先端側から対面する環状の上ハウジング保持部材51が下ハウジング2の上面にボルト4で固定される。この構成により、上ハウジング5はその径方向へ下ハウジング2に対して移動可能に連結されている。
【0084】
第5実施形態のクランプロッド7は、次のように構成される。クランプロッド7は、ピストン6から上方へ突出するロッド本体52と、ロッド本体52の先端部にピン部材53を介して当該ロッド本体52の径方向に移動可能に連結されたロッド先端部54とを備える。ロッド先端部54の基端部には、長孔54bが形成されており、この長孔54bに上記ピン部材53が挿入される。このロッド先端部54に前記楔面24が形成されている。ピン部材53の挿入される孔が長孔54bとされることで、ロッド先端部54はピン部材53の軸方向に加えて、当該軸方向に対して斜めの方向へもロッド本体52に対して移動可能である。なお、ロッド先端部54の基端部に形成される、ピン部材53が挿入される孔は、長孔54bに代えて、ピン部材53の外径よりも少し大きな径の真円であってもよい。
【0085】
第5実施形態では、上ハウジング5に検出路17が設けられていない。エア供給ポート18から供給された圧縮空気は、下ハウジング2内を通って、支持部材19を構成する筒部20の外周面と上ハウジング5の内周面との間に形成された環状の隙間を上昇し外部へ噴出する。この圧縮空気は、エアブロー用として機能する。また、第5実施形態では、バネ15、直進ガイド機構35(ボール36および直進ガイド溝37)が設けられていない。
【0086】
第1実施形態では、抵抗付与機構34(環状溝32および止め輪33)は、上記筒部20の下端部の外周面に設けられている。これに対して、第5実施形態では、抵抗付与機構34(環状溝32および止め輪33)は、上記筒部20の上端部の外周面に設けられている。なお、抵抗付与機構34(環状溝32および止め輪33)は、筒部20の軸方向の中央部など、上端部、下端部以外の外周面に設けられてもよい。
【0087】
孔Waが水平方向に位置ずれしたワークWを下降させてその孔Waを支持部材19に外嵌めしていくとき、第5実施形態のクランプ装置は次のように動作する。図13A図14に示すように、例えば、孔Waの中心軸Z1と上ハウジング5の中心軸Z2とが、水平方向であって、且つピン部材53の軸方向に距離Lだけ位置ずれしていたとする。
【0088】
ワークWを下降させていくと、図14に示すように、ワークWの孔Waの下角部が、支持部材19の先端部を構成する先細りの頂壁部22の側面に上方から当たる。ワークWをさらに下降させると、孔Waの下角部が頂壁部22を押し、図15に示すように、支持部材19、クランプロッド7のロッド先端部54、ロッド先端部54に係合するロック部材23、および上ハウジング5は、水平方向において上記距離Lが小さくなる方向へ移動する。そして、ワークWの孔Waは、支持部材19の周壁部21に外嵌めされる。
【0089】
その後の、クランプ駆動の動作、アンクランプ駆動の動作は、第1実施形態のクランプ装置の場合と同様である。
【0090】
第5実施形態のクランプ装置によると、孔Waが水平方向に少し位置ずれしたワークWであっても、その孔Waを支持部材19の周壁部21に好適に外嵌めすることができる。
【0091】
図16および図17は、本発明の第6実施形態を示す。第6実施形態のクランプ装置と、第5実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0092】
第6実施形態と第5実施形態との違いは、ハウジング1の構成の違いと、支持部材19を構成する筒部20の構成の違いとである。
【0093】
第6実施形態のハウジング1を構成する上ハウジング5は、第1実施形態の上ハウジング5と同じく、下ハウジング2の上面にボルト4で固定されており、下ハウジング2に対して移動可能にはされていない。
【0094】
第6実施形態の筒部20は、筒部本体部55と、環状の抵抗付与機構保持部56とで構成される。抵抗付与機構保持部56は、止め輪57およびリング部材58で筒部本体部55の外周面に装着されており、筒部本体部55(抵抗付与機構保持部56部分を除く支持部材19)は、その径方向へ抵抗付与機構保持部56および上ハウジング5に対して移動可能とされている。
【0095】
孔Waが水平方向に位置ずれしたワークWを下降させてその孔Waを支持部材19に外嵌めしていくとき、第6実施形態のクランプ装置は次のように動作する。図16に示すように、例えば、孔Waの中心軸Z1と上ハウジング5の中心軸Z2とが、水平方向であって、且つピン部材53の軸方向に距離Lだけ位置ずれしていたとする。
【0096】
ワークWを下降させると、孔Waの下角部が頂壁部22を押し、図17に示すように、抵抗付与機構保持部56部分を除く支持部材19、クランプロッド7のロッド先端部54、およびロッド先端部54に係合するロック部材23は、水平方向において上記距離Lが小さくなる方向へ移動する。そして、ワークWの孔Waは、支持部材19の周壁部21に外嵌めされる。
【0097】
第6実施形態のクランプ装置によると、孔Waが水平方向に少し位置ずれしたワークWであっても、その孔Waを支持部材19の周壁部21に好適に外嵌めすることができる。
【0098】
図18は、本発明の第7実施形態を示す。第7実施形態のクランプ装置と、第5実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0099】
第7実施形態と第5実施形態との違いは、支持部材19の構成の違いと、クランプロッド7を構成するロッド先端部54の構成の違いと、ロック部材23を構成する突出部29の構成の違いとである。
【0100】
第7実施形態の支持部材19は、第5実施形態におけるものと異なり、周壁部21および頂壁部22を有さず、筒部20のみで構成される。
【0101】
第7実施形態のクランプロッド7を構成するロッド先端部54は、その先端部54aが先細りの形状とされている。また、ロック部材23を構成する突出部29も、その先端部29aが先細りの形状とされている。
【0102】
ワークWを下降させると、孔Waの下角部が上記先端部54aを押し、支持部材19、クランプロッド7のロッド先端部54、ロッド先端部54に係合するロック部材23、および上ハウジング5は、水平方向において距離Lが小さくなる方向へ移動する。
【0103】
図19は、本発明の第8実施形態を示す。第8実施形態のクランプ装置と、第5実施形態のクランプ装置との違いは下記のとおりである。
【0104】
第8実施形態では、抵抗付与機構34が設けられていない。また、第8実施形態では、支持部材19を先端側に付勢する付勢手段としてのバネ59が上ハウジング5に収納されている。
【0105】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
駆動手段13に使用する作動流体は、圧縮空気に代えて圧油などの液体であってもよい。駆動手段13として、例示の複作動式に代えて、バネリリース式やバネロック式などの単作動式を採用してもよい。また、駆動手段13は、例示の流体アクチュエータに代えて、電動アクチュエータなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0106】
クランプ室8に2本のバネ14、15が収納されている。クランプ室8に収納されるバネは例えば第5、6実施形態のように1本であってもよいし、クランプ室8にバネが収納されていなくてもよい。
【0107】
ロック部材23は、3つ設けることに代えて2つ設けてもよいし、4つ以上設けてもよい。さらには、スリットを有する環状コレットによってロック部材を構成することも可能である。
【0108】
係合維持機構26に関し、ロック部材23の傾斜面25にロック部材側係合部25aに代えて溝形状のロック部材側係合溝を設け、クランプロッド7の楔面24にロッド側係合溝24aに代えて、上記ロック部材側係合溝に嵌合するロッド側係合部を設けてもよい。
【0109】
さらには、上記ロック部材側係合部25aおよび上記ロッド側係合溝24aを設けず、楔面24が形成されたクランプロッド7の上端部およびロック部材23に環状の弾性体を外嵌めして、クランプロッド7の楔面24とロック部材23との係合を維持してもよい。例えば、図11図12に示す第4実施形態のロック部材23のように、ベース部28の外周壁に収容溝28bを形成し、この収容溝28bに上記弾性体としての環状の弾性部材28cを外嵌めして、クランプロッド7の楔面24とロック部材23との係合を維持してもよい。
【0110】
第1、5~7実施形態における抵抗付与機構34に関し、止め輪33に代えてOリングなどの弾性部材を用いてもよい。
【0111】
第1から第3実施形態のアンクランプ駆動時の動作説明の中で、クランプロッド7の外周に形成されたテーパ面7aが、支持部材19を構成する筒部20の内周側の上端角部に当たり、その結果、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とが一体となって上昇していくとした。これに代えて、クランプロッド7の上端面を、支持部材19を構成する頂壁部22の内壁面に当てて支持部材19を持ち上げることで、ロック部材23および支持部材19とクランプロッド7とを一体的に上昇させてもよい。
【0112】
第1から第3実施形態のクランプ装置の支持部材19に代えて、第4実施形態、または第7実施形態のクランプ装置の支持部材19のように、周壁部21および頂壁部22を有さない筒部20のみで構成される支持部材19を採用してもよい。
【0113】
第1から第3実施形態のクランプ装置の相対移動制限機構31に代えて、第4実施形態のクランプ装置の相対移動制限機構31を採用してもよい。また、第4実施形態のクランプ装置の相対移動制限機構31に代えて、第1から第3実施形態のクランプ装置の相対移動制限機構31を採用してもよい。
【0114】
第1実施形態のクランプ装置において、第4実施形態のクランプ装置の抵抗付与機構34を採用してもよい。また、第4実施形態のクランプ装置において、第1から第3実施形態のクランプ装置の抵抗付与機構34を採用してもよい。また、第5、第7実施形態のクランプ装置において、第2から第4実施形態のクランプ装置の抵抗付与機構34を採用してもよい。
【0115】
第8実施形態のクランプ装置において、バネ59の付勢力によって支持部材19を上方に付勢することに代えて、支持部材19の下方に形成される流体室に圧力流体を供給して、その圧力流体の圧力によって支持部材19を上方(先端側)に付勢するように構成してもよい。
【0116】
本発明のクランプ装置は、例示した上下姿勢に配置することに代えて、上下逆の姿勢、水平姿勢、または斜め姿勢に配置してもよい。
【0117】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0118】
1:ハウジング、2:下ハウジング、5:上ハウジング、7:クランプロッド、13:駆動手段、19:支持部材、20:筒部、21:周壁部、21a:ガイド孔、22:頂壁部、23:ロック部材、24:楔面、24a:ロッド側係合溝、25a:ロック部材側係合部、26:係合維持機構、30:突出部、31:相対移動制限機構、32:環状溝、33:止め輪(弾性部材)、34:抵抗付与機構、38:横孔、39:ボール(係合部材)、40:バネ(付勢手段)、42:傾斜面、43:楔部材、44:バネ(付勢手段)、45:保持手段、52:ロッド本体、53:ピン部材、54:ロッド先端部、W:ワーク(クランプ対象物)、Wa:孔
図1
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