(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】毒性が低減されたハイブリッドアムホテリシンB誘導体
(51)【国際特許分類】
C07H 17/08 20060101AFI20240423BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240423BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07H17/08 K CSP
A61K31/7048
A61P31/10
(21)【出願番号】P 2021512448
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 US2019049971
(87)【国際公開番号】W WO2020051465
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513016884
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ イリノイ
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】バーク,マーティン ディー
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ジアバオ
(72)【発明者】
【氏名】カンデルウォル,アニュジ
(72)【発明者】
【氏名】サンタマリア,アナ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190587(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/168568(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/100171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化1】
[式中、出現ごとに独立して、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
4は、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、ハロアルキルからなる群より選択される]。
【請求項2】
R
4が、
【化2】
からなる群より選択され、
式中、R
eは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(IV)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化3】
[式中、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6はC(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される]。
【請求項4】
R
2が水素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
-XR
1が、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3、-NHCH(CH
3)
2、-NH(2-ブチル)、-NHシクロプロピル、-NHシクロブチル、-NHシクロペンチル、-NHシクロへキシル、-NHCH
3、
【化4】
からなる群より選択され、
式中、出現ごとに独立して、
R
aは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
bは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ニトロ、シアノ、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミド、アジド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
cは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、およびアミノアルキルからなる群より選択される基であり;
R
dは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
あるいは、-XR
1が
【化5】
である場合、R
aおよびR
dは、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
-XR
1が、
【化6】
からなる群より選択される、あるいは
-XR
1が、
【化7】
からなる群より選択される、あるいは
-XR
1が、
【化8】
からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
-XR
1が、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3、-NHCH(CH
3)
2、-NH(2-ブチル)、-NHシクロプロピル、-NHシクロブチル、-NHシクロペンチル、-NHシクロへキシル、
【化9】
からなる群より選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項8】
-XR
1が、
【化10】
からなる群より選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
式(V)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化11】
[式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
-XR
1は、
【化12】
からなる群より選択される]。
【請求項10】
-XR
1が、
【化13】
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
5が水素であり、かつ-XR
1が、
【化14】
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化15】
[式中、出現ごとに独立して、
R
4は、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択される]。
【請求項13】
R
4が、
【化16】
からなる群より選択され、
R
eは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式(III)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化17】
[式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6は-C(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される]。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
静脈内剤形または経口剤形である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物を含む、真菌感染症を処置するための組成物。
【請求項18】
静脈内投与または経口投与される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
以下のスキームに示す変換に従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法であって、
【化18】
スキーム中、1は、
【化19】
を表し、Rはそれぞれ独立して、水素、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項20】
以下のスキームに示す変換に従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法であって、
【化20】
スキーム中、1は、
【化21】
を表し、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項21】
以下のスキームに示す変換に従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法であって、
【化22】
スキーム中、1は、
【化23】
を表し、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項22】
以下のスキームに示す変換に従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法であって、
【化24】
スキーム中、1は、
【化25】
を表し、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年9月7日出願の米国仮特許出願第62/728,203号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、アメリカ国立衛生研究所によって授与された助成金番号GM118185号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
アムホテリシンB(AmB)は、広範囲の真菌病原体に対して強力で用量依存的な殺菌活性を有し、半世紀以上にわたって耐性を回避してきた。靜真菌活性とは対照的に、AmBの抗真菌活性は、感染を取り除くのを助けるために堅牢な免疫システムを欠く免疫不全患者に不可欠である。病原体の正体が不明であり、即時の経験的治療が必要な重症患者では、広範な抗真菌活性が特に重要である。残念ながら、AmBは非常に毒性が高く、それによって、病気の根絶に失敗することが多い低用量プロトコルに使用が制限される。強力かつ広域スペクトルで耐性回避の殺菌活性を保持するが用量制限毒性を欠くAmB誘導体は、臨床効果が改善された新しい高用量治療パラダイムを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化1】
式中、出現ごとに独立して、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
4は、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、ハロアルキルからなる群より選択される。
【0005】
本発明の一態様は、式(IV)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化2】
式中、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6はC(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される。
【0006】
本発明の一態様は、式(V)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化3】
式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
-XR
1は、
【化4】
からなる群より選択される。
【0007】
本発明の一態様は、式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化5】
式中、出現ごとに独立して、
R
4は、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択される。
【0008】
本発明の一態様は、式(III)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化6】
式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6は-C(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される。
【0009】
本発明の一態様は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0010】
本発明の一態様は、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与し、それによって真菌感染症を処置することを含む、真菌感染症を処置する方法である。
【0011】
本発明の一態様は、スキーム1に示される4つの変換のいずれか1つに従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法である:
【化7】
スキーム中、1は、
【化8】
を表し、
Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】アムホテリシンB、主要な真菌ステロールであるエルゴステロール、および主要なヒトステロールであるコレステロールの化学構造を表す。
【
図1B】AmBの細胞破壊(または殺細胞)作用(cytocidal action)の2段階の「ステロールスポンジ」モデルを示す。
【
図2A】AmB、AmdeB、C2’deOAmB、およびC2’epiAmBの化学構造および生物物理学的活性を表す。
【
図2B】AmB、AmdeB、C2’deOAmB、およびC2’epiAmBの初代ヒト腎上皮細胞における生物物理学的活性を表す。
【
図2C】AmB、AmdeB、C2’deOAmB、およびC2’epiAmBのエルゴステロールおよびコレステロール活性を表す。
【
図3A】N-ヨードアシルAmBのX線結晶構造である。
【
図3B】AmB-Erg複合体の提案された構造モデルを示す。同様のモデルがコレステロールについても提案されている。
【
図4】AmBからのC2’epiAmBの11ステップ合成を表す。
【
図5A】ステロール結合を示す。AmBからin vitroで形成されたステロールスポンジをエルゴステロールで滴定し、UV-Vis分光法で分析した。
【
図5B】ステロール結合を示す。AmBからin vitroで形成されたステロールスポンジをコレステロールで滴定し、UV-Vis分光法で分析した。
【
図5C】ステロール結合を示す。C2’epiAmBからin vitroで形成されたステロールスポンジをエルゴステロールで滴定し、UV-Vis分光法で分析した。
【
図5D】ステロール結合を示す。C2’epiAmBからin vitroで形成されたステロールスポンジをコレステロールで滴定し、UV-Vis分光法で分析した。
【
図6】マウスにおけるAmB-デオキシコール酸塩およびC2’epiAmB-デオキシコール酸塩の毒性データを表す。
【
図7】腎遺伝毒性バイオマーカーによって判断された、C2’epiAmBと直接比較したAmBisome(登録商標)の毒性データを表す。
【
図8A】カンジダ属およびアスペルギルス属の分離株のパネルにおける広範囲の真菌病原体に対するAmBおよびC2’epiAmBのin vitro抗真菌活性を示す。
【
図8B】アスペルギルス属の分離株のパネルにおける広範囲の真菌病原体に対するAmBおよびC2’epiAmBのin vitro抗真菌活性を示す。
【
図8C】臨床的に関連する侵襲性糸状菌(invasive mold)のパネルにおける、広範囲の真菌病原体に対するAmBおよびC2’epiAmBのin vitro抗真菌活性を示す。
【
図9】エルゴステロールとの事前複合体形成がある場合とない場合のカンジダ・アルビカンス(C.albicans)に対するAmBおよびC2’epiAmBのMICを示す。
【
図10】侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおけるAmBおよびC2’epiAmBの有効性を表す。
【
図11A】AmBからのAmBUreaの実用的な3ステップ合成を表す。
【
図11B】臨床分離株のパネルに対するいくつかの誘導体のin vitro抗真菌活性を示す。
【
図11C】広範囲の臨床的に関連する病原体に対するいくつかの誘導体のin vitro抗真菌活性を示す。
【
図11D】臨床的に関連するカンジダ種およびアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)の挑戦的な菌株に対するAmB、AmBAU、およびAmBTACBUのin vitro抗真菌活性を示す。
【
図12】侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおけるAmB、AmBMU、およびAmBAUの有効性を表す。
【
図13】カンジダ症マウスモデルにおけるAmBCBU、AmBMEU、AmBAU、ファンギゾン(Fungizone(登録商標))、およびアムビゾーム(AmBisome(登録商標))の有効性を表す。
【
図14】マウス、ラット、およびイヌにおけるAmBおよびAmBAUのPK特性を示す。
【
図15】AmBまたは誘導体のエルゴステロールおよびコレステロールへの結合を示し、さらにAmBMUがコレステロールに結合する能力を保持していることを示し、これは、AmBUreaの保持された哺乳類毒性と合致する。
【
図16】格別な効力および最小毒性を有する、ハイブリッドAmB誘導体であるC2’epiAmBAUを表す。
【
図17】合成の対象となるハイブリッドC2’epiAmBUreaを表す。
【
図18】C2’epiAmBAUハイブリッドと、AmB、C2’epiAmB、およびAmBAUとのin vitro抗真菌活性の比較を示す。
【
図19】最も有望なC2’epiAmBUreaを特定するための臨床指向のスクリーニングファンネルを示す。
【
図20】高用量のC2’epiAmBUreaの体系的な有効性評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アムホテリシンB(AmB)は、マイコサミン付加物(appendage)を有するポリエンマクロライドであり、完全な化合物は次の構造を有する:
【化9】
【0014】
AmBは通常、ストレプトマイセス・ノドサス(Streptomyces nodosus)の菌株から得られる。現在、米国では、とりわけ、全身性または深部組織カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、ヒストプラズマ症、ムコール症などの、進行性の生命を脅かす可能性のある真菌感染症の治療に臨床使用が承認されている。それは一般的に静脈内注射用に処方されている。アムホテリシンBは、ファンギゾン(Fungizone(登録商標))(Squibb社)、アムホシン(Amphocin(登録商標))(Pfizer社)、アベルセット(Abelcet(登録商標))(Enzon社)、およびアムビゾーム(AmBisome(登録商標))(Astellas社)などとして市販されている。その望ましくない毒性副作用のために、投与量は一般に最大約1.0mg/kg/日に制限され、総累積投与量はヒトで約3gを超えないように制限される。
【0015】
AmBは、細胞破壊性の膜外ステロールスポンジを形成することにより、真菌細胞およびヒト細胞の両方を殺す。Anderson, T. M. et al., Nat Chem Biol 2014, 10 (5), 400-6。この大きな集合体は、脂質二重層の表面に位置し、膜ステロールを急速に抽出して、細胞死を引き起こす。膜透過処理(membrane permeabilization)は必要ない。このメカニズムに基づき、小分子ベースのリガンド選択的アロステリック効果は、コレステロールよりもエルゴステロールの選択的結合を可能にし、(C2’epiAmBの形態で)AmBの哺乳類毒性を排除する。Wilcock, B. C. et al., J Am Chem Soc 2013, 135 (23), 8488-91を参照されたい。本発明は、AmBステロールスポンジに対するエルゴステロールおよびコレステロールの結合に関するKDsを開示し、これは、この臨床的に重要な天然物の治療指数の合理的な最適化を導くための定量的かつメカニズム的に根拠のある生物物理学的パラメータを提供する。
【0016】
本発明は、少なくとも部分的に、AmBと比較して改善された治療指数も特徴とするAmBのさらなる誘導体の本発明者による発見に関する。様々な誘導体、すなわち本発明の化合物は、半合成または完全合成であってよい。本発明の一態様は、エルゴステロールの強力な結合を保持するが、コレステロールの検出可能な結合を示さない、AmBの新しい合成誘導体の開発である。この誘導体は、多くの酵母および糸状菌に対して殺真菌力を保持するが、検出可能な哺乳類毒性ゼロを示す。これは、コレステロールと比較してエルゴステロールの差別的結合が可能であり、望ましい抗真菌特性を維持するAmBの非毒性変形物(variant)を提供することを示す。本発明の化合物は、著しく改善された安全性プロファイルで、生命を脅かす侵襲性真菌感染症を根絶するための新規な高用量処置戦略を可能にする。
【0017】
本発明の化合物および本発明の医薬組成物は、真菌の成長を阻害するのに有用である。一実施形態では、有効量の本発明の化合物を真菌と接触させ、それにより真菌の成長を阻害する。一実施形態では、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、組織培養培地に添加されるか、または組織培養培地に含まれる。
【0018】
本発明の化合物および本発明の医薬組成物は、対象における真菌感染症の処置に有用である。一実施形態では、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩が、それを必要とする対象に投与され、それによって真菌感染症を処置する。
【0019】
酵母は、真菌界に分類される真核生物である。真菌には、酵母(yeast)、糸状菌(mold)、およびキノコを含むより大きな生物が含まれる。酵母および糸状菌は、感染性病原体として臨床的に重要である。酵母は通常、出芽型の真菌として説明される。本発明に関連して特に重要なのは、哺乳類宿主に感染を引き起こすことができる酵母の種である。このような感染症は、感染に対するバリアが損なわれた宿主(例えば、火傷の患者)や免疫系が損なわれた宿主(例えば、化学療法や免疫抑制療法を受けている宿主、HIVに感染した宿主)など、免疫不全の宿主で最も一般的に発生する。病原性酵母には、カンジダ属ならびにクリプトコッカス属の様々な種が含まれるが、これらに限定されない。カンジダ属の病原性酵母の中で特に注目すべきは、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(C.stellatoidea)、カンジダ・グラブラタ(C.glabrata)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、カンジダ・パラシローシス(C.parapsilosis)、カンジダ・ギリエルモンジィ(C.guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(C.viswanathii)、およびカンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae)である。クリプトコッカス属には、特に、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)が含まれる。酵母菌は、粘膜の感染症、例えば、ヒトの口腔、食道、および膣の感染症、ならびに骨、血液、尿生殖路(urogenital tract)、および中枢神経系の感染症を引き起こすことができる。このリストは例示的なものであり、決して制限するものではない。
【0020】
多くの真菌(酵母以外)は、哺乳類宿主に感染を引き起こすことができる。このような感染症は、感染に対するバリアが損なわれた宿主(例えば、火傷の患者)や免疫系が損なわれた宿主(例えば、化学療法や免疫抑制療法を受けている宿主、HIVに感染した宿主)など、免疫不全の宿主で最も一般的に発生する。病原性真菌(酵母以外)には、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス(クモノスカビ)属(Rhizopus)、ムコール(ケカビ)属(Mucor)、ヒストプラズマ属(Histoplasma)、コクシジオイデス属(Coccidioides)、ブラストミセス属(Blastomyces)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)、およびエピデルモフィトン属(Epidermophyton)の種が含まれるが、これらに限定されない。上記の中で特に注目すべきは、アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(A.flavus)、アスペルギルス ニガー(A.niger)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(H.capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(C.immitis)、およびブラストミセス・デルマティティディス(B.dermatitidis)である。真菌は、いくつか例を挙げると、肺、骨、血液、尿生殖路、および中枢神経系における全身性および深部組織の感染症を引き起こすことができる。一部の真菌は、皮膚や爪の感染症の原因である。
【0021】
定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここにまとめる。
【0022】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「アシル」という用語は、-C(=O)Rを指し、ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキル基を表す。アミド(RC(O)NR2)およびエステル(RC(O)OR’)は、ケトン(RC(O)R)およびアルデヒド(RC(O)H)と同様に、アシル化合物のクラスである。アシル基の非限定的な例には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、およびベンジルが含まれる。
【0024】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、当技術分野で認識されており、本明細書に記載のアルキルと長さおよび可能な置換において類似するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基を指す。
【0025】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、酸素原子を介して親分子部分に付加されたアルキル基を意味する。アルコキシの代表的な例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
「アルコキシカルボニル」という用語は、本明細書で定義されるように、-C(=O)-で表されるカルボニル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルコキシ基を意味する。アルコキシカルボニルの代表的な例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、およびtert-ブトキシカルボニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびn-ヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
「アルキル」という用語は当技術分野で認識されており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、およびシクロアルキル(脂環式)基を含む、飽和脂肪族基が含まれる。ある実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格(主鎖)に約30以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC1~C30、分岐鎖の場合はC3~C30)、あるいは約20以下の炭素原子を有する。ある実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に約10個以下の炭素原子を有する。ある実施形態では、直鎖アルキルは、その骨格に1~6個の炭素原子を有する。ある実施形態では、分枝鎖アルキルは、その骨格に3~8個の炭素原子を有する。直鎖および分岐鎖アルキル基の代表的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびn-ヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキルは、その環構造中に約3~約10個の炭素原子を有する。ある実施形態において、シクロアルキルは、環構造中に3、4、5、6、または7個の炭素を有する。シクロアルキル基の代表的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される「アルキルカルボニル」という用語は、本明細書で定義されるカルボニル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。アルキルカルボニルの代表的な例には、アセチル、1-オキソプロピル、2,2-ジメチル-1-オキソプロピル、1-オキソブチル、および1-オキソペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「アルキルカルボニルオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルキルカルボニル基を意味する。アルキルカルボニルオキシの代表的な例には、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、およびtert-ブチルカルボニルオキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される「アルキルチオ」という用語は、硫黄原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。アルキルチオの代表的な例には、メチルチオ、エチルチオ、tert-ブチルチオ、およびヘキシルチオが含まれるが、これらに限定されない。たとえば、「アリールチオ」、「アルケニルチオ」、および「アリールアルキルチオ」という用語は、同様に、対応するやり方で定義される。
【0032】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、次の一般式で表すことができる部分を指す:
【化10】
式中、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、シクロアルケニル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキルから選択される基を表す。アミドの非限定的な例には、R
10が水素であり、R
11が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、シクロヘキシル、ベンジル、
【化11】
から選択されるものが含まれる。アミドの追加の非限定的な例には、R
10が水素であり、R
11が、-CH
2NH
2、-CH
2N(CH
3)
2、および-CH(NH
2)(CH
2)
nNH
2から選択され、nが1~6の整数であるものが含まれる。アミドのさらに追加の非限定的な例には、R
10が水素であり、R
11が、
【化12】
から選択されるものが含まれる。
【0033】
「アミノ」および「アミン」という用語は、当技術分野で認識されており、非置換アミンおよび置換アミンの両方を指し、例えば、次の一般式によって表すことができる部分を指す:
【化13】
式中、R
20、R
21、およびR
22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、-(CH
2)
m-R
61を表す、あるいはR
20およびR
21は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~10個の原子を有する複素環を完成し、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;R
61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、または多環を表し;mはゼロまたは1~8の範囲の整数である。他の実施形態では、R
20およびR
21(および任意選択でR
22)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、または-(CH
2)
m-R
61を表す。したがって、「アルキルアミン」という用語は、置換もしくは非置換のアルキルが結合した、すなわちR
20およびR
21のうちの少なくとも1つはアルキル基である、上記で定義されたアミン基を含む。アミノ基の非限定的な例には、-NH
2、-N(H)CH
3、-N(H)CH
2CH
3、-N(H)CH
2CH
2CH
3、-N(H)CH
2CH
2CH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-N(CH(CH
3)
2)
2、-N(CH
3)CH
2CH
3、-N(CH
3)CH
2CH
2CH
3、-N(CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3,-N(CH
2CH
3)
2、-N(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
3、-N(CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-N(CH
2CH
2CH
3)
2、-N(CH
2CH
2CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3、-N(CH
2CH
2CH
2CH
3)
2、
【化14】
が含まれる。ある実施形態では、アミノは-NH
2である。ある実施形態では、アミノは-N(H)CH
3である。
【0034】
本明細書で使用される「アミノアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアミノ基を意味する。
【0035】
「芳香族」という用語は、4n+2個(nは整数の絶対値である)の電子を含む環状共役分子部分を特徴とする平面単環式または多環式構造を指す。環構造中に炭素原子のみを含む芳香族基は、「アリール」基と称される。これらの環構造中に1つまたは複数のヘテロ原子を含む芳香族基は、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」基と称される。縮合または結合した環を含む芳香族基は、多環芳香族基とも称される。例えば、炭化水素環構造中にヘテロ原子を含む二環式芳香族基は、二環式ヘテロアリール基と称される。
【0036】
0~4個のヘテロ原子を含み得る5員、6員、および7員の単環式芳香族基の例には、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどが含まれる。
【0037】
多環式芳香族基およびヘテロ芳香族基の非限定的な例には、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ナフタレン、アントラセン、およびピレンが含まれる。
【0038】
本発明のアリール基は、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、ホスフィニル、シリルおよびシリルオキシからなる群より独立して選択される1、2、3、4または5個の置換基で、任意選択で置換されていてよい。「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である2つ以上の環状環(その環は「縮合環」である)を有する多環式環系を含み、それらの環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環状環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。
【0039】
本明細書で使用される「アリールカルボニルオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアリールカルボニル基を意味する。アリールカルボニルオキシの代表的な例には、フェニルカルボニルオキシが含まれるが、これに限定されない。
【0040】
「アリーレン」という用語は当技術分野で認識されており、本明細書で使用される場合、上記で定義されたアリール環の2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分に関する。
【0041】
本明細書で使用される「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアリール基を意味する。アリールアルキルの代表的な例には、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、および2-ナフト-2-イルエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される「アジド」という用語は、-N3を指す。
【0043】
本明細書で使用される「カルバマート」という用語は、次の一般式で表すことができる部分を指す:
【化15】
式中、R
30およびR
31は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキルから選択される基を表す。カルバマートの非限定的な例には、R
30が水素であり、R
31が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、シクロヘキシル、ベンジル、
【化16】
から選択されるものが含まれる。
【0044】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、-C(=O)-基を意味する。
【0045】
本明細書で使用される「カルボキシル」という用語は、-CO2H基を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「シアノ」という用語は、-CN基を意味する。
【0047】
本明細書で使用される「シクロアルキルアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるシクロアルキル基を指す。
【0048】
本明細書で使用される「グアニジニル」という用語は、次の一般式によって表され得る部分を指す:
【化17】
式中、R
40、R
41、R
42、およびR
43は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキルから選択される基を表す。一実施形態では、R
40、R
41、R
42、およびR
43はそれぞれ水素を表す。
【0049】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br、または-Iを意味する。
【0050】
「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンを意味する。ハロアルキルの代表的な例には、クロロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、および2-クロロ-3-フルオロペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される「ヘテロアラルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるヘテロアリールを意味する。ヘテロアリールアルキルの代表的な例には、ピリジン-3-イルメチルおよび2-(チエン-2-イル)エチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、単環式、二環式、および三環式環を含むがこれらに限定されない芳香族環系を含み、窒素、酸素、または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~12個の原子を有する。本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない例示の目的のために、以下はヘテロアリールの例である:アザインドリル、ベンゾ(b)チエニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、フラニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、インドリル、インドリニル、インダゾリル、イソインドリニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピロロ[2,3-d]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル、キノリニル、キナゾリニル、トリアゾリル、チアゾリル、チオフェニル、テトラヒドロインドリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、トリアゾリルまたはトロパニル。ヘテロアリール基は、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、ホスフィニル、シリルおよびシリルオキシから独立して選択される0、1、2、3、4または5個の置換基で置換されていてよい。
【0053】
「ヘテロ原子」という用語は、当技術分野で認識されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を指す。例示的なヘテロ原子には、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレンが含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「ヘテロシクリル」という用語は、完全に飽和されていてよくまたは1つまたは複数の不飽和単位を含んでいてもよい(誤解を避けるために、不飽和度は芳香環系をもたらさない)、窒素、酸素、または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~12個の原子を有する、単環式、二環式、三環式およびスピロ環式環を含むがこれらに限定されない非芳香族環系を指す。本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない例示の目的で、ヘテロシクリル環(複素環)の例を以下に示す:アゼピン、アゼチジニル、モルホリニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、キニクルジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、およびテトラヒドロフラニル。ヘテロシクリル基は、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、ホスフィニル、シリルおよびシリルオキシから独立して選択される0、1、2、3、4または5個の置換基で置換されていてよい。
【0055】
本明細書で使用される「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を意味する。
【0056】
本明細書で使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのヒドロキシ基が、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加されることを意味する。ヒドロキシアルキルの代表的な例には、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2,3-ジヒドロキシペンチル、および2-エチル-4-ヒドロキシヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される「ニトロ」という用語は、-NO2基を意味する。
【0058】
本明細書で使用される「シリル」という用語には、シリル(H3Si-)基のヒドロカルビル誘導体(すなわち、(ヒドロカルビル)3Si-)が含まれ、ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価基であり、例えば、エチル、フェニル等である。ヒドロカルビル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS/TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、および[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)などの多くのシリル基を提供するために、多様であり得る異なる基の組み合わせであってよい。
【0059】
本明細書で使用される「シリルオキシ」という用語は、本明細書で定義されるシリル基が、酸素原子を介して親分子に付加されることを意味する。
【0060】
本明細書で使用される「スルフヒドリル」という用語は、-SH基を意味する。
【0061】
「スルホニル」という用語は、当技術分野で認識されており、-SO2-を指す。
【0062】
本明細書で使用される「尿素」という用語は、次の一般式によって表され得る部分を意味する:
【化18】
式中、Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、-N(R
1)(R
2)は、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を表し、ここで、前記環は単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、独立して、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基である。
【0063】
トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルという用語は、当技術分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基を指す。トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフラートという用語は、当技術分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基、ならびに前記基を含む分子を指す。
【0064】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、およびメタンスルホニルを表す。当業者が利用する略語のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に掲載されている:このリストは通常、「Standard List of Abbreviations」というタイトルの表に示されている。
【0065】
本発明の組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何学的または立体異性体の形態で存在してもよい。さらに、本発明のポリマーは光学活性であってもよい。本発明において、シスおよびトランス異性体、R-およびS-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含む、すべてのそのような化合物が、本発明の範囲内に含まれると企図される。追加の不斉炭素原子がアルキル基などの置換基に存在してもよい。そのようなすべての異性体、ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図されている。
【0066】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望まれる場合、不斉合成によってそれを調製することができ、あるいは不斉補助剤を用いた誘導によって調製してもよく、得られたジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して純粋な所望のエナンチオマーを提供する。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性酸または塩基を用いてジアステレオマー塩を形成し、その後、分別晶析法または当技術分野でよく知られるクロマトグラフィー手段によって形成されたジアステレオマーを分割し、続いて純粋なエナンチオマーの回収を行う。
【0067】
「置換」または「で置換された」は、そのような置換が、置換される原子および置換基の許容される原子価に従うという暗黙の条件を含み、置換は、例えば、転位、環化、除去、または他の反応などによる変換を自発的に受けない、安定な化合物をもたらすことを理解されたい。
【0068】
「置換(された)」という用語はまた、有機化合物のすべての許容される置換基を含むと考えられる。広い態様では、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、(シクロアルキル)アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシカルボニル、アリールオキシスルホニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、ホスフィニル、アシル、アシルオキシ、シリルおよびシリルオキシが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つであっても複数であってもよく、また同じであっても異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、水素置換基および/または本明細書に記載の有機化合物の任意の許容可能な置換基を有し得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によっていかようにも制限されない。
【0069】
本明細書で使用される「保護基」という句は、潜在的に反応性の官能基を望ましくない化学変換から保護する一時的な置換基を意味する。このような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、およびそれぞれアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールが含まれる。保護基化学の分野がレビューされている(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。本発明の化合物の保護された形態は本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
本発明の目的のために、化学元素は、化学および物理学ハンドブック、第67版、1986-87(Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87)の内表紙のCASバージョンの元素周期表に従って特定される。
【0071】
本発明の化合物
本発明は、(i)C13での特定の修飾;(ii)C3’での特定のN修飾;(iii)C16での特定の尿素誘導体;および(iv)C16での特定の尿素誘導体とC2’epiAmBとの組み合わせを特徴とする誘導体を含む、多数のAmBの誘導体を提供する。
【0072】
例えば、本発明は、(i)C13での特定の修飾;(ii)C3’での特定のN修飾;(iii)C16での特定の尿素誘導体;および(iv)C16での特定の尿素誘導体とC2’epiAmBとの組み合わせを特徴とする誘導体を含む、多数のAmBの誘導体を提供する。
【0073】
本発明の一態様は、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化19】
式中、出現ごとに独立して、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
4は、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択される。
【0074】
ある実施形態では、R2は水素である。
【0075】
ある実施形態において、-XR
1は、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3、-NHCH(CH
3)
2、-NH(2-ブチル)、-NHシクロプロピル、-NHシクロブチル、-NHシクロペンチル、-NHシクロヘキシル、NHCH
3、
【化20】
からなる群より選択され、
式中、出現ごとに独立して、
R
aは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
bは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ニトロ、シアノ、あるいは置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミド、アジド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
cは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、およびアミノアルキルからなる群より選択される基であり;
R
dは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、-XR
1が
【化21】
である場合、R
aおよびR
dは、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式である。
【0076】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化22】
からなる群より選択される。
【0077】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化23】
なる群より選択される。
【0078】
ある実施形態では、-XR
1は、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3、-NHCH(CH
3)
2、-NH(2-ブチル)、-NHシクロプロピル、-NHシクロブチル、-NHシクロペンチル、-NHシクロヘキシル、
【化24】
からなる群より選択される。
【0079】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化25】
からなる群より選択される。
【0080】
ある実施形態において、R4は第二級アミノである。
【0081】
ある実施形態では、R4は第三級アミノである。
【0082】
ある実施形態では、R4はアミドである。
【0083】
ある実施形態では、R4はアジドである。
【0084】
ある実施形態では、R4はイソニトリルである。
【0085】
ある実施形態では、R4はニトロである。
【0086】
ある実施形態では、R4は尿素である。
【0087】
ある実施形態では、R4はイソシアナートである。
【0088】
ある実施形態では、R4はカルバマートである。
【0089】
ある実施形態では、R4はグアニジニルである。
【0090】
ある実施形態では、R
4は、
【化26】
からなる群より選択され、
式中、
R
eは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基である。
【0091】
ある実施形態では、R5は水素である。
【0092】
ある実施形態では、R5はアルキルである。
【0093】
ある実施形態では、R5はハロアルキルである。
【0094】
本発明の一態様は、式(IV)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化27】
式中、
Xは-N(R
2)-であり;
R
1は、置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;あるいは、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式であり;
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6はC(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される。
【0095】
ある実施形態では、R2は水素である。
【0096】
ある実施形態において、-XR
1は、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3、-NHCH(CH
3)
2、-NH(2-ブチル)、-NHシクロプロピル、-NHシクロブチル、-NHシクロペンチル、-NHシクロヘキシル、-NHCH
3、
【化28】
からなる群より選択され;
式中、出現ごとに独立して、
R
aは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
bは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ニトロ、シアノ、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミド、アジド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり;
R
cは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、およびアミノアルキルからなる群より選択される基であり;
R
dは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基であり:あるいは、-XR
1が
【化29】
である場合、R
aおよびR
dは、それらが結合している窒素と共に、置換もしくは非置換の3~10員の複素環を形成してもよく、ここで、前記環は、単環式、二環式、三環式、またはスピロ環式である。
【0097】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化30】
からなる群より選択される。
【0098】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化31】
からなる群より選択される。
【0099】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化32】
からなる群より選択される。
【0100】
ある実施形態では、-XR
1は、
【化33】
からなる群より選択される。
【0101】
ある実施形態では、R5は水素である。
【0102】
ある実施形態では、R5はアルキルである。
【0103】
ある実施形態では、R5はハロアルキルである。
【0104】
ある実施形態では、Rfは2-アルケン-1-イルである。
【0105】
ある実施形態では、Rfはtert-ブチルである。
【0106】
ある実施形態では、Rfはベンジルである。
【0107】
ある実施形態では、Rfはフルオレニルメチルである。
【0108】
本発明の一態様は、式(V)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化34】
式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
-XR
1は、
【化35】
からなる群より選択される。
【0109】
ある実施形態では、R5は水素である。
【0110】
ある実施形態では、R5はアルキルである。
【0111】
ある実施形態では、R5はハロアルキルである。
【0112】
ある実施形態では、-XR
1は
【化36】
である。
【0113】
ある実施形態では、R
5は水素であり;-XR
1は
【化37】
である。
【0114】
本発明の一態様は、式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化38】
式中、出現ごとに独立して、
R
4は、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、アミド、アジド、イソニトリル、ニトロ、尿素、イソシアナート、カルバマート、およびグアニジニルからなる群より選択され;
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択される。
【0115】
ある実施形態において、R4は第一級アミノである。
【0116】
ある実施形態において、R4は第二級アミノである。
【0117】
ある実施形態では、R4は第三級アミノである。
【0118】
ある実施形態では、R4はアミドである。
【0119】
ある実施形態では、R4はアジドである。
【0120】
ある実施形態では、R4はイソニトリルである。
【0121】
ある実施形態では、R4はニトロである。
【0122】
ある実施形態では、R4は尿素である。
【0123】
ある実施形態では、R4はイソシアナートである。
【0124】
ある実施形態では、R4はカルバマートである。
【0125】
ある実施形態では、R4はグアニジニルである。
【0126】
ある実施形態では、R
4は、
【化39】
からなる群より選択され、
R
eは、水素、または置換もしくは非置換の、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクリル、(ヘテロシクリル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アミノ、アミド、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される基である。
【0127】
ある実施形態では、R5は水素である。
【0128】
ある実施形態では、R5はアルキルである。
【0129】
ある実施形態では、R5はハロアルキルである。
【0130】
本発明の一態様は、式(III)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化40】
式中、
R
5は、水素、アルキル、およびハロアルキルからなる群より選択され;
R
6は-C(O)OR
fであり;
R
fは、2-アルケン-1-イル、tert-ブチル、ベンジル、およびフルオレニルメチルからなる群より選択される。
【0131】
ある実施形態では、R5は水素である。
【0132】
ある実施形態では、R5はアルキルである。
【0133】
ある実施形態では、R5はハロアルキルである。
【0134】
ある実施形態では、Rfは2-アルケン-1-イルである。
【0135】
ある実施形態では、Rfはtert-ブチルである。
【0136】
ある実施形態では、Rfはベンジルである。
【0137】
ある実施形態では、Rfはフルオレニルメチルである。
【0138】
医薬組成物
本発明はまた、医薬組成物およびそれを作製する方法を提供する。
【0139】
本発明の一態様は、本発明の化合物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。ある実施形態において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適した、1つまたは複数の適合性のある固体または液体のフィラー、希釈剤、または封入材料(encapsulating substance)を意味する。「担体」という用語は、適用を容易にするために有効成分と組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を意味する。医薬組成物の成分はまた、所望の医薬効果を実質的に損なう相互作用がないような態様で、本発明の化合物とおよび他の成分と混合することができる。
【0140】
ある実施形態において、医薬組成物は静脈内剤形である。
【0141】
ある実施形態では、医薬組成物は経口剤形である。
【0142】
ある実施形態において、医薬組成物は、リポソームに挿入された、またはリポソームに封入された活性化合物の凍結乾燥製剤である。
【0143】
ある実施形態において、医薬組成物は、水性懸濁液中の化合物の脂質複合体である。
【0144】
本発明の医薬組成物の前述の実施形態は、例示的であることが意図されており、限定するものではない。
【0145】
そのような医薬組成物を作製する方法も提供される。この方法は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体に入れることを含む。
【0146】
本発明の方法
本発明の化合物は、特に病原体として臨床的に重要な真菌および酵母を含む、真菌および酵母の成長を阻害するために有用である。有利なことに、本発明の化合物は、AmBと比較して改善された治療指数を有し、それにより、AmBと比較して改善された効力および低減された毒性を有する薬剤を提供する。本発明の化合物は、特に全身性真菌および酵母感染症を含む、真菌および酵母感染症を処置する方法において有用である。本発明の化合物はまた、特に全身性真菌および酵母感染症を含む、真菌および酵母感染症を処置するための医薬の製造において有用である。本発明はさらに、特に全身性真菌および酵母感染症を含む、真菌および酵母感染症の処置のための本発明の化合物の使用を提供する。
【0147】
本発明の一態様は、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の化合物を投与し、それによって真菌感染症を処置することを含む、真菌感染症を処置する方法である。
【0148】
本明細書で使用される場合、「阻害する」または「阻害」とは、対照と比較して客観的に測定可能な量または程度だけ低減することを意味する。一実施形態では、阻害するまたは阻害は、対照と比較して少なくとも統計的に有意な量だけ低減することを意味する。一実施形態では、阻害するまたは阻害は、対照と比較して少なくとも5パーセント低減することを意味する。様々な個々の実施形態において、阻害するまたは阻害は、対照と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、または95パーセント(%)低減することを意味する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「処置する」および「処置」という用語は、(a)状態または疾患を発症するリスクがあるか、またはその状態または疾患を有する素因がある可能性があるがまだそれを有すると診断されていない対象において、状態または疾患が発生するのを防ぐ;(b)状態または疾患を阻害する、例えば、その発症を遅らせるまたは停止させる;または(c)状態または疾患を軽減または改善する、例えば、状態または疾患の退行を引き起こす;ことをもたらす介入を実施することを意味する。一実施形態では、「処置する」および「処置」という用語は、(a)状態または疾患を阻害する、例えば、その発症を遅らせるまたは停止させる;または(b)状態または疾患を軽減または改善する、例えば、状態または疾患の退行を引き起こす;ことをもたらす介入を実施することを意味する。例えば、一実施形態では、「処置する」および「処置」という用語は、(a)真菌感染症を阻害する、例えば、その発症を遅らせるまたは停止させる;または(b)真菌感染症を軽減または改善する、例えば、真菌感染症の退行を引き起こす;ことをもたらす介入を実施することを意味する。
【0150】
本明細書で使用される「真菌感染症」は、本明細書で定義される真菌による対象におけるまたは対象の感染症を指す。一実施形態では、「真菌感染症」という用語は、酵母感染症を含む。本明細書で使用される「酵母感染症」は、本明細書で定義される酵母菌による対象におけるまたは対象の感染症を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、「対象」は、生きている哺乳動物を指す。様々な実施形態において、対象は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、または非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物である。一実施形態では、対象はヒトである。
【0152】
本明細書で使用される場合、「真菌感染症を有する対象」は、真菌感染症の少なくとも1つの客観的症状を示す対象を指す。一実施形態では、真菌感染症を有する対象は、真菌感染症を有すると診断され、その処置を必要としている対象である。真菌感染症を診断する方法はよく知られており、ここで詳細に説明する必要はない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「酵母感染症を有する対象」は、酵母感染症の少なくとも1つの客観的症状を示す対象を指す。一実施形態では、酵母感染症を有する対象は、酵母感染症を有すると診断され、その処置を必要としている対象である。酵母感染症を診断する方法はよく知られており、ここで詳細に説明する必要はない。
【0154】
ある実施形態では、化合物は静脈内投与される。
【0155】
ある実施形態において、化合物は経口投与される。
【0156】
ある実施形態では、化合物は全身投与される。
【0157】
ある実施形態では、化合物は非経口的に投与される。
【0158】
ある実施形態では、化合物は腹腔内投与される。
【0159】
ある実施形態において、化合物は経腸的に投与される。
【0160】
ある実施形態では、化合物は眼内に投与される。
【0161】
ある実施形態において、化合物は局所的に投与される。
【0162】
本発明の化合物の追加の投与経路も本発明によって企図されており、膀胱内(膀胱)、肺、および髄腔内が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を指す。
【0164】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、例えば、真菌または酵母感染症を処置するために、所望の治療効果を達成するのに十分な量を指す。
【0165】
本明細書に記載の任意の化合物について、治療有効量は、一般に、in vitro研究、動物モデル、またはin vitro研究と動物モデルの両方から最初に決定することができる。in vitroの方法はよく知られており、最小発育阻止濃度(MIC)、最小殺真菌濃度(MFC)、成長が50%阻害される濃度(IC50)、成長が90%阻害される濃度(IC90)などの決定を含んでいてよい。治療有効量はまた、ヒトで試験された本発明の化合物についてのヒトデータ、および他の関連する活性物質(例えば、AmB)などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物についてのヒトデータから、決定することができる。非経口投与には、より高い用量が必要になる場合がある。適用される用量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調整することができる。本明細書に記載の方法および当技術分野でよく知られている他の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、通常の当業者の能力の範囲内である。
【0166】
本明細書に記載の任意の化合物について、ヒト対象で使用するための治療有効量は、in vitro研究、動物モデル、またはin vitro研究と動物モデルの両方から最初に決定することができる。ヒト対象で使用するための治療有効量はまた、ヒトで試験された本発明の化合物についてのヒトデータ、および他の関連する活性剤(例えば、AmB)などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物についてのヒトデータから決定することができる。非経口投与には、より高い用量が必要になる場合がある。適用される用量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調整することができる。上記の方法および当技術分野で周知の他の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、通常の当業者の能力の範囲内である。
【0167】
投薬および処方
本発明の化合物は、他の治療薬と組み合わせることができる。本発明の化合物および他の治療薬は、同時または順次に投与することができる。他の治療薬が同時に投与される場合、それらは同じまたは別々の製剤で投与することができるが、それらは実質的に同時に投与される。他の治療薬と本発明の化合物の投与が時間的に分離されている場合、他の治療薬は、互いにおよび本発明の化合物と、順次に投与される。これらの化合物の投与間の時間的分離は、数分であってよく、またはそれより長くてもよい。
【0168】
他の治療薬の例には、AmBを含む他の抗真菌剤、ならびに他の抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、および抗がん剤が含まれる。
【0169】
上記のように、「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を指す。本明細書で提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度および好ましい投与様式などの因子を重み付けすることにより、実質的な望ましくない毒性を引き起こさないがなお特定の対象を処置するのに効果的である、有効な予防的または治療的処置レジメンを計画することができる。特定の適用のための有効量は、処置される疾患または状態、投与される本発明の特定の化合物、対象のサイズ、または疾患または状態の重症度などの因子に応じて変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とせずに、本発明の特定化合物および/または他の治療薬の有効量を経験的に決定することができる。一般に、最大用量、すなわち、何らかの医学的判断による最高の安全用量を使用することが好ましい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、1日あたり複数回の投与が企図され得る。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続血漿レベルの測定によって決定することができる。「用量(dose)」および「投薬量(dosage)」は、本明細書で交換可能に使用される。
【0170】
一般に、活性化合物の毎日の経口用量は、ヒト対象の場合、約0.01ミリグラム(mg)/kg/日~1000mg/kg/日であろう。1日1回または数回の投与で、0.5~50mg/kgの範囲の経口用量が、所望の結果をもたらすことが期待される。投薬量は、局所的または全身的など、投与様式に応じて、所望の薬物レベルを達成するために適切に調整され得る。例えば、静脈内投与は、1日あたり1桁から数桁低い用量であることが予想される。対象における応答がそのような用量で不十分である場合、患者の忍容性が許す範囲で、さらに高い用量(または異なるより局所化された送達経路による、有効なより高い用量)を使用することができる。適切な化合物の全身レベルを達成するために、1日あたり複数回の投与が企図される。
【0171】
一実施形態では、本発明の化合物の静脈内投与は、典型的には、0.1mg/kg/日~20mg/kg/日であり得る。したがって、静脈内投与は、AmBの最大耐量(maximal tolerated dose)と同様であるか、または有利にそれを超える可能性がある。静脈内投与はまた、AmBの1日最大耐量と同様であるか、または有利にそれを超える可能性がある。静脈内投与はまた、AmBの累積最大耐量と同様であるか、またはそれを有利に超える可能性がある。
【0172】
静脈内投与はまた、AmBの推奨最大投与量と同様であるか、または有利にそれを超える可能性がある。静脈内投与はまた、AmBの推奨最大1日投与量と同様であるか、または有利にそれを超える可能性がある。静脈内投与はまた、AmBの推奨最大累積投与量と同様であるか、または有利にそれを超える可能性がある。
【0173】
本明細書に記載の任意の化合物について、治療有効量は、最初に動物モデルから決定することができる。治療有効用量はまた、ヒトで試験された本発明の化合物についてのヒトデータ、および他の関連する活性物質などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物についてのヒトデータから決定することができる。非経口投与には、より高い用量が必要になる場合がある。適用される用量は、投与される化合物の相対的なバイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調整することができる。上記の方法および当技術分野でよく知られている他の方法に基づいて最大の有効性を達成するように用量を調整することは、通常の当業者の能力の範囲内である。
【0174】
本発明の製剤は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバント、および任意選択で他の治療成分を日常的に含み得る、薬学的に許容される溶液で投与される。
【0175】
アムホテリシンBは、デオキシコール酸塩ベース(デオキシコール酸塩ベースと呼ばれることもある)製剤や脂質ベース(リポソームを含む)製剤など、多くの製剤で市販されている。本発明のアムホテリシンB誘導体化合物は、同様に、例えば、限定はされないが、デオキシコール酸塩ベース製剤および脂質ベース(リポソームを含む)製剤として製剤化され得る。
【0176】
治療に使用するために、本発明の化合物の有効量を、本発明の化合物を所望の表面に送達する任意の様式によって対象に投与することができる。本発明の医薬組成物の投与は、当業者に知られている任意の手段によって達成することができる。投与経路には、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注射(例えば、腫瘍または膿瘍への)、粘膜、肺(例えば、吸入)、および局所が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
静脈内および他の非経口投与経路の場合、本発明の化合物は、一般に、AmBと同様に製剤化され得る。例えば、本発明の化合物は、デオキシコール酸を用いた凍結乾燥製剤として、リポソーム挿入または封入された活性化合物の凍結乾燥製剤として、水性懸濁液中の脂質複合体として、またはコレステリル硫酸複合体(cholesteryl sulfate complex)として製剤化することができる。凍結乾燥された製剤は、一般に、投与の直前に、適切な水溶液、例えば、滅菌水または生理食塩水中で再構成される。
【0178】
経口投与の場合、化合物(すなわち、本発明の化合物、および他の治療薬)は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤として入手でき、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて適切な助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、フィラーであり、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールなどの糖;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を添加してもよい。任意選択で、経口製剤はまた、生理食塩水または緩衝液、例えば、内部酸状態を中和するためのEDTA中に製剤化してよく、あるいは担体なしで投与してもよい。
【0179】
上記の1つまたは複数の成分の経口剤形も具体的に企図されている。誘導体の経口送達が効果的であるように、1つまたは複数の成分を化学的に修飾してもよい。一般に、企図される化学修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の取り付けであり、前記部分は、(a)酸加水分解の阻害;および(b)胃または腸から血流への取り込みを可能にする。1つまたは複数の成分の全体的な安定性の上昇、および体内での循環時間の増加も望まれる。そのような部分の例には、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリプロリンが含まれる。Abuchowski and Davis, “Soluble Polymer-Enzyme Adducts”, In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383 (1981); Newmark et al., J Appl Biochem 4: 185-9 (1982)。使用できる他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカンである。上記のように、医薬用途に好ましいのは、ポリエチレングリコール部分である。
【0180】
成分(または誘導体)について、放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、もしくは回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、十二指腸または腸の他の場所で物質を放出する利用可能な製剤を有する。好ましくは、その放出は、本発明の化合物(または誘導体)の保護によって、または腸内などの胃環境を超えての生物学的活性物質の放出によって、胃環境の有害な影響を回避するであろう。
【0181】
完全な胃抵抗性を確実にするためには、少なくともpH5.0に対して不浸透性のコーティングが不可欠である。腸溶コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(またはセルロースアセテートフタレート)(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびシェラック(shellac)である。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用することができる。
【0182】
コーティングまたはコーティングの混合物は、胃からの保護を目的としていない錠剤にも使用できる。これには、糖コーティング、または錠剤を飲み込みやすくするコーティングが含まれる。カプセルは、乾燥治療薬(例えば、粉末)を送達するためのハードシェル(ゼラチンなど)から構成され得る;液体形態の場合、ソフトゼラチンシェルを使用することができる。カシェのシェル材料は、厚いでんぷんまたは他の食用紙であってよい。丸薬、トローチ剤、成形錠剤、または粉薬錠剤の場合、湿式塊化法(moist massing technique)を使用できる。
【0183】
治療薬は、約1mmの粒子サイズの顆粒またはペレットの形態の微細な多粒子として製剤に含めることができる。カプセル投与用の材料の製剤はまた、粉末として、軽く圧縮されたプラグとして、または錠剤としてあり得る。治療薬は、圧縮によって調製することができる。
【0184】
着色剤および香味料はすべて含めてよい。例えば、本発明の化合物(または誘導体)は、(リポソームまたはミクロスフェア封入などによって)製剤化することができ、その後に、着色剤および香味料を含む冷蔵飲料などの食用製品内にさらに含めてよい。
【0185】
不活性材料で治療薬の量を希釈または増加させてもよい。これらの希釈剤には、炭水化物、特に、マンニトール、α-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストラン、およびデンプンが含まれ得る。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどの特定の無機塩もフィラーとして使用できる。市販の希釈剤には、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、Emcompress、およびAvicellがある。
【0186】
崩壊剤は、固形剤形への治療薬の処方に含まれ得る。崩壊剤として使用される材料には、デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含むがこれらに限定されないデンプンが含まれる。デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト(Amberlite)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ、およびベントナイトをすべて使用できる。崩壊剤の別の形態は、不溶性カチオン交換樹脂である。粉末ガムは、崩壊剤および結合剤として使用することができ、これらには、寒天、カラヤまたはトラガカントなどの粉末ガムが含まれ得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0187】
結合剤は、治療薬を一緒に保持して硬質錠剤を形成するために使用することができ、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンなどの天然物からの材料を含み得る。その他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を両方ともアルコール溶液で使用して、治療薬を造粒することができる。
【0188】
製剤化プロセス中の付着を防ぐために、減摩剤(anti-frictional agent)を治療薬の処方に含めることができる。滑沢剤(lubricant)は、治療薬とダイ壁の間の層として使用することができ、これらには、マグネシウム塩およびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、およびワックスが含まれるが、これらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000などの、可溶性滑沢剤も使用することができる。
【0189】
製剤化中の薬物の流動特性を改善し、圧縮中の再配置を助け得る流動化剤(glidant)も添加してよい。流動化剤には、デンプン、タルク、熱分解法シリカ、および水和アルミノケイ酸塩が含まれ得る。
【0190】
水性環境への治療薬の溶解を助けるために、界面活性剤が湿潤剤として添加され得る。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、およびジオクチルソジウムスルホネートなどの陰イオン界面活性剤が含まれ得る。陽イオン界面活性剤も使用することができ、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが含まれ得る。界面活性剤として製剤に含めることができる潜在的な非イオン界面活性剤には、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが含まれる。これらの界面活性剤は、本発明の化合物または誘導体の製剤中に、単独で、または様々な比率の混合物として存在し得る。
【0191】
経口的に使用できる医薬製剤には、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)で作られた密封されたソフトカプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどのフィラー、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意選択で安定剤と混合して、活性成分を含むことができる。ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤を加えてもよい。経口投与用に処方されたミクロスフェアも使用することができる。そのようなミクロスフェアは、当技術分野で十分に定義されている。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した投薬量でなければならない。
【0192】
頬側(buccal)投与の場合、組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはトローチの形態をとることができる。
【0193】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための化合物は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定され得る。吸入器または吹送器で使用するための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように処方され得る。
【0194】
本明細書では、本発明の化合物(またはその誘導体)の肺送達も企図されている。本発明の化合物(または誘導体)は、吸入すると哺乳動物の肺に送達され、肺上皮内層を横切って血流に移動する。吸入された分子の他の報告には、Adjei et al., Pharm Res 7:565-569 (1990); Adjei et al., Int J Pharmaceutics 63:135-144 (1990) (リュープロレリン酢酸塩); Braquet et al., J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl. 5):143-146 (1989) (エンドセリン-1); Hubbard et al., Annal Int Med 3:206-212 (1989) (α1-アンチトリプシン); Smith et al., 1989, J Clin Invest 84:1145-1146 (a-1-プロテイナーゼ); Oswein et al., 1990, "Aerosolization of Proteins", Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, (組換えヒト成長ホルモン); Debs et al., 1988, J Immunol 140:3482-3488 (インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子α) 、およびPlatzらの米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)が含まれる。全身効果のための薬物の肺送達のための方法および組成物は、Wongらの1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号に記載されている。
【0195】
本発明の実施において使用することが企図されているのは、治療用製品の肺送達用に設計された広範囲の機械的装置であり、ネブライザー、定量吸入器、および粉末吸入器を含むがこれらに限定されず、これらはすべて当業者によく知られている。
【0196】
本発明の実施に適した市販のデバイスのいくつかの特定の例は、ミズーリ州セントルイスのMallinckrodt社によって製造されたウルトラベント(Ultravent)ネブライザー;コロラド州イングルウッドのMarquest Medical Products社によって製造されたAcorn IIネブライザー;ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークのGlaxo社によって製造されたVentolin定量吸入器;マサチューセッツ州ベッドフォードのFison社製のスピンヘラー(Spinhaler)粉末吸入器である。
【0197】
そのような装置はすべて、本発明の化合物(または誘導体)の分配に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、使用されるデバイスのタイプに特異的であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/または担体に加えて、適切な推進剤材料の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェア、包接複合体、または他のタイプの担体の使用が企図されている。本発明の化学修飾された化合物はまた、化学修飾のタイプまたは使用されるデバイスのタイプに応じて、異なる製剤に調製され得る。
【0198】
ジェットまたは超音波のいずれかのネブライザーでの使用に適した製剤は、典型的には、溶液1mLあたり約0.1~25mgの本発明の生物学的に活性な化合物の濃度で水に溶解された本発明の化合物(または誘導体)を含む。製剤はまた、(例えば、本発明の化合物の浸透圧の安定化および調節のために)緩衝液および単糖を含み得る。ネブライザー製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧化によって引き起こされる本発明の化合物の表面誘導凝集を低減または防止するために、界面活性剤を含み得る。
【0199】
定量吸入装置で使用するための製剤は、一般に、界面活性剤の助けを借りて推進剤に懸濁された本発明の化合物(または誘導体)を含む微粉末を含む。推進剤は、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または炭化水素などの、この目的のために使用される任意の従来の材料であってよく、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2-テトラフルオロエタン、またはそれらの組み合わせが含まれる。適切な界面活性剤には、ソルビタントリオレエートおよび大豆レシチンが含まれる。オレイン酸も界面活性剤として有用であり得る。
【0200】
粉末吸入装置から分配するための製剤は、本発明の化合物(または誘導体)を含む乾燥微粉末を含み、また装置からの粉末の分散を促進する量、例えば製剤の50~90重量%の、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールなどの増量剤も含むことができる。本発明の化合物(または誘導体)は、肺深部への最も効果的な送達のために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5~5μmの平均粒径を有する粒子形態で有利に調製されるべきである。
【0201】
本発明の医薬組成物の経鼻送達もまた企図される。経鼻送達は、肺に製品が堆積する必要なしに、治療用製品を鼻に投与した直後に、本発明の医薬組成物の血流への通過を可能にする。経鼻送達用の製剤には、デキストランまたはシクロデキストランを用いた製剤が含まれる。
【0202】
経鼻投与の場合、有用な装置は、定量噴霧器が取り付けられた小さくて硬いボトルである。一実施形態では、本発明の医薬組成物の溶液を規定された容積のチャンバー内に引き込むことによって計量された用量が送達され、このチャンバーは、チャンバー内の液体が圧縮されたときにスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法決定された開口を有する。チャンバーは、本発明の医薬組成物を投与するために圧縮される。ある実施形態では、チャンバーはピストン構成である。このようなデバイスは市販されている。
【0203】
あるいは、圧搾時にスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法決定された穴または開口部を備えたプラスチックスクイズボトルが使用される。開口部は通常、ボトルの上部にあり、エアロゾル製剤を効率的に投与するために、上部は一般に鼻腔に部分的に適合するように先細になっている。好ましくは、鼻吸入器は、測定された用量の薬物を投与するために、計量された量のエアロゾル製剤を提供するであろう。
【0204】
化合物は、それらを全身的に送達することが望ましい場合、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与用に処方され得る。注射用製剤は、防腐剤を添加した、例えばアンプル中または複数回投与容器中の、単位剤形で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳濁液(エマルジョン)などの形態をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含むことができる。
【0205】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。任意選択で、懸濁液はまた、化合物の溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤または物質を含み得る。
【0206】
あるいは、活性化合物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリー水で構成するための粉末形態であってもよい。
【0207】
化合物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸または膣用組成物に処方され得る。
【0208】
上記の製剤に加えて、化合物はデポー製剤としても処方され得る。そのような長時間作用型製剤は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として、処方され得る。
【0209】
医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相担体または賦形剤を含み得る。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
適切な液体または固体の医薬製剤の形態は、例えば、吸入用の水溶液または生理食塩水溶液である、マイクロカプセル化されている、渦巻形に内包化されている(encochleated)、微細な金粒子上にコーティングされている、リポソームに内包されている、噴霧化されている、エアロゾルである、皮膚への移植用ペレットである、または皮膚を引っ掻くための鋭器上で乾燥されている。医薬組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、乳濁液(エマルジョン)、懸濁液、クリーム、液滴、または活性化合物の徐放を有する調製物を含み、その調製物において、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、香味料、甘味料または可溶化剤などの、賦形剤および添加剤および/または補助剤が、上記のように慣習的に使用される。医薬組成物は、様々な薬物送達システムでの使用に適している。薬物送達のための方法の簡単なレビューについては、参照により本明細書に組み込まれるLanger R, Science 249:1527-33 (1990)を参照されたい。
【0211】
本発明の化合物および任意選択で他の治療薬は、それ自体(ニート)または薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。医学で使用される場合、塩は薬学的に許容されるものであるべきであるが、薬学的に許容されない塩をその薬学的に許容される塩を調製するために都合よく使用してもよい。このような塩には、以下の酸から調製されたものが含まれるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、そのような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などの、アルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0212】
適切な緩衝剤には、酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);リン酸および塩(0.8~2%w/v)が含まれる。適切な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)が含まれる。
【0213】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に含まれる、有効量の本発明の化合物、および任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬を含む。
【0214】
本発明の化合物を具体的に含むがこれに限定されない治療薬は、粒子で提供され得る。本明細書で使用される粒子は、全体的にまたは部分的に、本発明の化合物または本明細書に記載の他の治療薬からなり得るナノ粒子またはマイクロ粒子(あるいは場合によってはより大きな粒子)を意味する。粒子は、腸溶コーティングを含むがこれに限定されないコーティングによって囲まれたコア内に治療薬を含み得る。治療薬はまた、粒子全体に分散させてもよい。治療薬はまた、粒子に吸着されてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびそれらの任意の組み合わせなどを含む、任意の次数放出動態であり得る。粒子は、治療薬に加えて、侵食性、非浸食性、生分解性、または非生分解性材料またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、薬局および医学の分野で日常的に使用される材料のいずれかを含み得る。粒子は、溶液または半固体状態で本発明の化合物を含むマイクロカプセルであり得る。粒子は事実上任意の形状であり得る。
【0215】
非生分解性および生分解性の両方のポリマー材料を、治療薬を送達するための粒子の製造に使用することができる。そのようなポリマーは、天然または合成ポリマーであり得る。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特に関心のある生体接着性ポリマーには、Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7に記載されている生体侵食性ヒドロゲルが含まれ、その教示は本明細書に組み込まれる。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が含まれる。
【0216】
治療薬は、制御放出システムに含まれ得る。「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式およびプロファイルが制御されている任意の薬物含有製剤を指すことが意図されている。これは、即時放出製剤および非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤には、持続放出および遅延放出製剤が含まれるが、これらに限定されない。「持続放出」(「徐放」とも呼ばれる)という用語は、その従来の意味で使用され、長期間にわたって薬物の漸進的放出を提供する製剤を指し、好ましくは、必ずしもそうではないが、長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中濃度をもたらす。「遅延放出」という用語は、その従来の意味で用いられ、製剤の投与とそこからの薬物の放出との間に時間遅延がある薬物製剤を指す。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の漸進的放出を伴う場合も伴わない場合もあり、したがって、「持続放出」であってもそうでなくてもよい。
【0217】
長期持続放出インプラントの使用は、慢性状態の処置に特に適している可能性がある。本明細書で使用される「長期」放出は、インプラントが、治療レベルの活性成分を少なくとも7日間、好ましくは30~60日間送達するように構成および配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者によく知られており、上記の放出システムのいくつかを含む。
【0218】
ハイブリッドアムホテリシンB誘導体を作製する例示的方法
本発明は、(i)C13での特定の修飾;(ii)C3’での特定のN修飾;(iii)C16での特定の尿素誘導体;および(iv)C16での特定の尿素誘導体とC2’epiAmBとの組み合わせ;を特徴とする誘導体を含む、多くのAmBの誘導体を提供する。
【0219】
本発明は、AmBの原子論的修飾を行うための合成プラットフォームを説明し、これは、膜透過化ではなく、ステロール結合が、主に細胞破壊作用を駆動することの発見につながった。ある実施形態において、AmBの部位選択的修飾のための新規方法は、AmBに付加されている10個のヒドロキシル基の部位選択的アシル化を達成するアシル転移のための部位識別遷移状態(site-discriminating transition state)を達成するためにアシル化試薬の電子チューニング(electronic tuning)を含む。その教示が参照により本明細書に組み込まれるWilcock, B. C. et al., Nat Chem 2012, 4 (12), 996-1003を参照されたい。この方法論は、AmBのC2’位置にある単一の立体中心の効率的なエピマー化を可能とし、非毒性AmB誘導体への実用的なアクセスを可能にする。ある実施形態では、AmBの高度に複雑なマクロライド骨格は、C16でのクルチウス転位を含み、得られたイソシアナートをC15-OHによって捕捉するタンデムシーケンス(tandem sequence)を受けることができる。これにより、ワンステップの後期段階の幅広いAmBUrea誘導体への変換の用意ができた、分離可能であるが立体配座的に歪みのある(strained)「スプリングローディッド(spring-loaded)」のオキサゾリジノン中間体が生成される。その教示が参照により本明細書に組み込まれるDavis, S. A. et al., Nat Chem Biol 2015, 11 (7), 481-7を参照されたい。この化学的性質が、新規なハイブリッドC2’epiAmBUrea誘導体であるC2’epiAmBAUの調製を可能にする。この新規なAmB誘導体は、低減された毒性プロファイルを維持しながら、カンジダ菌株とアスペルギルス菌株の両方に対して劇的に改善された活性を示す(効力が最大>500倍増加)。したがって、これらの新規AmB誘導体は、著しく改善された安全性プロファイルをもって生命を脅かす侵襲性真菌感染症を根絶するための新しい高用量処置戦略を可能にする。
【0220】
本発明の一態様は、スキーム1に示される4つの変換のいずれか1つに従って、C2’エピ-アムホテリシンBのC16尿素誘導体を作製する方法である:
【化41】
スキームにおいて、1は
【化42】
を表し、
式中、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より選択される。
【実施例】
【0221】
本発明を詳細に説明したが、以下の実施例を参照することにより、同じことがより明確に理解され、これらの実施例は、例示のみを目的として本明細書に含まれ、本発明を限定することを意図するものではない。
【0222】
実施例1.哺乳類毒性のない新規な化学設計
新規なAmB誘導体の効率的な修飾のためのフロンティア合成法の開示された開発によって可能になり、代わりに、AmBが主にエルゴステロールとコレステロールにそれぞれ結合することによって真菌細胞とヒト細胞を殺すことを発見した(
図1A);チャネル形成は必要ない。すべてのデータは「ステロールスポンジ」モデル(
図1B)と合致しており、AmBは自己集合(self-assemble)して大きな膜外集合体になり、真菌およびヒト細胞から生理学的に重要なステロールを迅速に抽出し、それによって細胞死を引き起こす。フロンティアSSNMR研究(UIUCのChad Rienstraによる)は、AmBスポンジ-ステロール複合体の構造に対する重要な洞察をさらに明らかにした。Anderson, T. M. et al., Nat Chem Biol 2014, 10 (5), 400-6。
【0223】
この重要な発見は、非毒性のAmB変形物の合理的な開発への道を開いた。ステロール結合におけるその予測される役割を調べるために、マイコサミン付加物のC2’位置のヒドロキシル基を合成的に除去した。得られた誘導体C2’deOAmB(
図2A)は、エルゴステロールに結合するが、等温滴定熱量測定(ITC)の検出限界内で、コレテロールに結合しないことが分かった(
図2C)。ステロールスポンジモデルと合致して、この誘導体は酵母に対して良好な活性を保持したが、最も重要なことに、ヒト赤血球および初代(hREC)に対して非毒性であった(
図2B)。
【0224】
2-デオキシ配糖体は合成が難しいことで有名であり、C2’deOAmBへのスケーラブルなアクセスを欠くことによりその開発が妨げられてきた。しかしながら、これらの発見は、同様の選択性プロファイルを有するより合成が容易な(または合成的にアクセス可能な)誘導体の開発を導くための予測モデルにつながった。Crich, D. et. al., The Journal of Organic Chemistry 2011, 76 (22), 9193-9209; Hou, D. et al., Carbohyd Res 2009, 344 (15), 1911-1940; Rodriguez, M. A. Et al., The Journal of Organic Chemistry 2005, 70 (25), 10297-10310;およびHou, D., et al., Organic Letters 2007, 9 (22), 4487-4490。具体的には、ヒト細胞と対比した真菌に対するC2’deOAmBの選択的毒性を理論的に説明するために、C2’-OHが、エルゴステロールとコレステロールの両方に容易に結合するAmBの配座異性体(conformer)を安定化するモデルが提案された。このヒドロキシル基の欠失は、エルゴステロールに結合する能力を保持するがより立体的にかさばるコレステロールに結合する能力は保持しない異なる配座異性体または配座異性体のセットへのシフトに有利に働く。あるいは、このモデルは、AmBのC2’OHの除去が、リガンド選択的結合をもたらす小分子ベースのアロステリック効果を引き起こすことを示唆する。N-ヨードアシルAmBの高分解能X線結晶構造(
図3A)に基づくと、C2’とC13のヒドロキシル基の間に顕著な水架橋水素結合があり、ポリエンマクロライドコアに対するマイコサミン付加物の特定の立体配座を安定化させるのに役立つ可能性がある。この観察結果は、マイコサミン付加物がエルゴステロールとコレステロールの両方への結合に重要であるという以前の我々の発見、およびAmBポリエンとエルゴステロールのA/B環との間の直接分子間接触のSSNMRによる観察と組み合わせて、すべてのデータと合致する両方のAmB-ステロール複合体のための特異的構造モデルを提案することを可能にした(
図3B)。Woerly, E. M. et al, Nat Chem 2014, 6 (6), 484-91; Anderson, T. M. et al., Nat Chem Biol 2014, 10 (5), 400-6。
【0225】
このモデルに導かれて、より合成が容易なC2’ヒドロキシル基の単純なエピマー化が、同様に水架橋C2’OH-C13OH相互作用を排除し、C2’deOAmBで予測されたものと同様のマイコサミン付加物の配向のシフトを引き起こす。得られた誘導体であるC2’epiAmB(
図2A)は、エルゴステロールに選択的に結合し、真菌に対して細胞破壊作用を発揮するが、ヒト細胞に対しては作用しない。特に、C2’epiAmBは、単一原子での立体化学のみがAmBと異なる。
【0226】
フロンティア部位選択的アシル化法を使用したC2’epiAmBの実用的な11ステップ合成が開発された(
図4)。Wilcock, B. C. et al., Nat Chem 2012, 4 (12), 996-1003; Uno, B. E. A synthesis enabled understanding of Amphotericin B leading to derivatives with improved therapeutic indices. University of Illinois at Urbana-Champaign, 2014。次に、ステロール結合および細胞殺傷活性が決定された。予測されたように、C2’deOAmBと同様に、C2’epiAmBは、ITCによってエルゴステロールに結合するが(検出可能には)コレステロールに結合せず、最も重要なことに、真菌を殺すがヒト細胞は殺さないことがわかった(
図2A~C)。
【0227】
これらのITC研究では、S字型の等温線を生成できず、結合定数やその他の熱力学的パラメータを決定できなかった。ただし、in vitroでの均質なAmBおよびC2’epiAmBのステロールスポンジ集合体の再現可能な形成のための代替方法が開発された。これらの調製物を使用して、AmBおよびC2’epiAmBのエルゴステロールおよびコレステロールへの結合の見かけのK
Dsを決定するための定量的UV-Visおよび主成分分析(PCA)ベースのアッセイが開発された(
図5A~D)。この天然物の小さな治療指数と合致して、エルゴステロール(K
D,erg=120nM)とコレステロール(K
D,chol=840nM)の両方へのAmBの強い結合が観察された。in vitroでのC2’epiAmBの評価と合致して、C2’epiAmBのエルゴステロールへの強い結合(K
D,erg=150nM)が観察された(
図5C)が、
コレステロールの結合はほとんどまたはまったく観察されなかった(
図5D)。データは、後者の相互作用にK
Dを確実に割り当てることを可能にしなかったが、それは少なくとも>2000nMであると推定された(データを適合させた場合の推定K
D,cholである)。C2’epiAmBは哺乳類毒性を示さないため、これらのメカニズム的に根拠に基づく生物物理学的パラメータをベンチマークとして使用して、さらなる開発のための新しいハイブリッド誘導体に優先順位を付けることができる。
【0228】
実施例2.動物毒性が観察されないAmB誘導体
>100mgのC2’epiAmBを調製し、それを対応するデオキシコール酸塩複合体として処方し、この誘導体をAmB-デオキシコール酸塩と直接比較して、動物モデルにおいて毒性および有効性を評価した。マウスへのAmB-デオキシコール酸塩の静脈内(IV)投与は、2~4mg/kgで致死的であることがわかった(
図6、左)。対照的に、C2’epiAmB-デオキシコール酸塩のIV注射では、128mg/kg(試験した最高用量)でさえ死亡は見られなかった。ラットへのAmB-デオキシコール酸塩のIV投与(2.5mg/kg)は、血中尿素窒素(BUN)、アラニントランスアミナーゼ/アスパラギン酸トランスアミナーゼ(ALT/AST)、および死亡率の有意な上昇を引き起こした(
図6、右)。代わりに、2、10、および17.5mg/kg(試験した最高用量)の用量でのC2’epiAmBのIV注射によりラットを処置した場合、BUNまたはALT/ASTの上昇および死亡は観察されなかった。17.5mg/kgでのC2’epiAmBのC
maxは、1mg/kgでのAmBのC
maxよりも>16倍高かった。
【0229】
ファンギゾン(Fungizone(登録商標))(AmB-デオキシコール酸塩)よりも毒性がやや低いため臨床的に広く使用されているAmBのリポソーム製剤であるアンビゾーム(AmBisome(登録商標))に対して、C2’epiAmBの毒性を直接比較した(
図7)。先例の文献と一致して、AmBisome(登録商標)は、最先端の腎遺伝毒性バイオマーカーによって判断して、48mg/kgでマウスにおいて有意な毒性を示すことを確認した。Kondo, C. et al., J Toxicol Sci 2012, 37 (4), 723-37。代わりに、マウスに同じ高用量(48mg/kg)のC2’epiAmB-デオキシコール酸塩を注射したところ、これら同じバイオマーカーに有意な上昇は見られなかった。したがって、C2’epiAmBは、マウスにおいてAmBisome(登録商標)よりも有意に毒性が低い。
【0230】
いずれの場合も、C2’epiAmBは、試験した最高用量まで、ヒト赤血球、初代hREC、マウス、およびラットに対して非毒性である。これらの結果は、すべての実験の検出限界内で、C2’epiAmBがコレステロールに結合しないという発見と合致する。
【0231】
実施例3.部分的に保持されたin vitro抗真菌活性
C2’epiAmBのin vitro抗真菌活性を、Evotec(オックスフォードシャー、英国)での広範な一連のカンジダ属およびアスペルギルス属の臨床分離株(
図8A)に対するAmBの抗真菌活性と比較した。C2’epiAmBは、多くのカンジダ菌株およびいくつかのアスペルギルス菌株に対して良好な活性を示した。ただし、C2’epiAmBがAmBよりも4倍効力が低いアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)のいくつかの菌株(AF293、A1163、およびATC204305)があり、また1つの菌株(AF91)ではC2’epiAmBは>32倍効力が低かった。アゾール耐性のアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(A.flavus)、およびアスペルギルス・テレウス(A.terreus)を含む、特に挑戦的である40のアスペルギルス属の臨床分離株の拡大パネルに対する抗真菌試験のために、テキサス大学サンアントニオ校(UT-San Antonio)の米国国立真菌試験研究所(US national Fungus Testing Laboratory)にもC2’epiAmBを送った(
図8B)。C2’epiAmBは、AmBよりも2~16倍効力が低いことがわかった(40株すべての平均で5.6倍効力が低い)。最近、SteinbachとBurkeは、臨床的に関連する侵襲性糸状菌のさらに広範なパネルに対する、AmB、アムビゾーム(AmBisome(登録商標))、カスポファンギン(Caspofungin)、ボリコナゾール(Voriconazole)、およびC2’epiAmBの活性を直接比較した(
図8C)。これらの研究は、汎アゾール(pan-azole)耐性株(F14196)を含む多くの菌株に対するC2’epiAmBの優れた抗真菌効力を示したが、またアスペルギルス属に対する活性を改善するための重要な機会でもあった。
【0232】
実施例4.in vitro抗真菌活性の保持された主要なメカニズム
ステロールスポンジメカニズムの強力な証拠を提供し、AmBステロールスポンジをエルゴステロールと事前複合体形成して、酵母細胞からエルゴステロールを抽出する(抜き取る)能力をブロックすることによって、AmBの抗真菌活性が低減されることを以前に実証した。Anderson, T. M. et al., Nat Chem Biol 2014, 10 (5), 400-6。MITのSusan Lindquistと共同で実施された追跡調査では、エルゴステロール標的を変異させると病原性が失われるため、このメカニズムはそれが本質的に臨床的耐性を回避することも示した。Davis, S. A., et al., Nat Chem Biol 2015, 11 (7), 481-7。C2’epiAmBが主に同じステロールスポンジメカニズムを介して細胞を殺すか否かを試験するために、C2’epiAmBスポンジを同様にエルゴステロールと事前複合体形成させた(
図9)。エルゴステロールを事前複合体形成させると、AmBおよびC2’epiAmBについて同じ効力の低下が観察された。したがって、C2’epiAmBは同様に、主にステロール結合を介して酵母を殺し、ひいては、この出願で対象となる新規化合物は、AmBで過去50年以上観察されてきたのと同様の真菌耐性に対するバリアを持つと予想される。
【0233】
実施例5.マウス侵襲性カンジダ症における非毒性の用量依存的有効性
最後に、侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおけるC2’epiAmB-デオキシコール酸塩複合体の用量依存的有効性を試験した(
図10)。好中球減少症のICR/Swissマウスに、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)の致死接種物を外側尾静脈から注射し、その後、AmB-デオキシコール酸塩(1または4mg/kg)、あるいはC2’epiAmB-デオキシコール酸塩(1、4、8、または16mg/kg)の単回IP注射で処置した。Andes研究所の以前の研究は、AmB-デオキシコール酸塩の用量依存的有効性を示す。Andes, D. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy 2001, 45 (3), 922-6。実際に、結果と最もよく相関するPDパラメータはCmax-/MICである。その後、侵襲性アスペルギルス症の肺モデルでも同じことが観察された。Wiederhold, N. P. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy 2006, 50 (2), 469-73。
図10に示すように、C2’epiAmBも用量依存的有効性を示し、16mg/kgの用量で真菌負荷(fungal burden)が著しく減少した。
【0234】
これらの結果は、C2’epiAmBが、アムホテリシン誘導体としては初めての、いくつかのカンジダ菌株およびアスペルギルス菌株に対して強力な抗真菌活性を有しかつ検出可能な哺乳類毒性のないユニークな抗真菌剤であることを示す。ただし、C2’epiAmBは、効力と病原体の範囲に関していくつかの重要な制限を有する。したがって、次の計画は、その毒性のなさを維持しながら、C2’epiAmBの抗真菌効力および病原体範囲を改善するように設計された新規な一連の「ハイブリッド」誘導体を開発することである。
【0235】
実施例6.優れた有効性をもたらすが、毒性の限定を保持する化学修飾
C16で修飾されたAmB尿素誘導体は、AmBと比較して、in vitroおよびin vivoで抗真菌活性を実質的に高めることが示されている。これらの化合物は、AmBよりも桁違いに水溶性が高く、このことが効力の向上を部分的に説明している可能性がある。これらの尿素誘導体は病原体耐性を回避し、マウス、ラット、イヌでも優れたPK/PD特性を示した。しかしながら、これらの誘導体は、許容できない毒性を有していた。したがって、C2’epiAmBに見られる毒性除去修飾を、C16での有効性増進修飾と組み合わせて、非毒性でありかつ侵襲性真菌感染症の根絶に極めて効果的な新規なクラスのハイブリッドポリエン抗真菌剤を開発した。
【0236】
Burke、Andes、およびLindquistは、2015年に、AmBからのスケーラブルな3ステップ合成によって、C16酸が尿素モチーフに置き換えられた一連のAmB誘導体を報告した(
図11A)。Davis, S. A., et al., Nat Chem Biol 2015, 11 (7), 481-7。Burkeが創設者兼コンサルタントであり、Steinbachが臨床諮問委員会を務めたバイオテクノロジー企業であるREVOLUTION MedicinesにおいてAmBUreaの研究を行った。いくつかの誘導体は、臨床分離株のパネルに対して、AmBと同様のin vitro効力および範囲を示した(
図11B)。
【0237】
SteinbachとBurkeは最近、AmB耐性のスケドスポリウム属(Scedosporium)の菌株を含む幅広い臨床的に関連する病原体に対する一連のAmBUrea(AmBAU、AmBMU、およびAmBCU)の活性をアムビゾーム(AmBisome(登録商標))、C2’epiAmB、カスポファンギン、およびボリコナゾールとさらに比較するために協力した(
図11C)。繰り返すが、AmBAUは、広範囲の病原体にわたりAmBが示すものより優れているとは言わないまでも同等の効力を示し、重要なことに、AmBAUは難治性のスケドスポリウム・プロリフィカンス(Scedosporium prolificans)に対して活性であった。
【0238】
最近、第一級アミンを有する別のAmB尿素、AmBTACBU(
図11B)が同定され、これはin vitroでAmBよりも強力であることが見出された(
図11B)(AmBの平均MIC=1.23μM、AmBTACBUの平均MIC=0.95μM)。臨床的に関連するカンジダ種の4つの菌株、およびアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)の4つの挑戦的な菌株株に対して、AmBAUおよびAmBTACBUの両方をさらに試験し、AmBと比較した(
図11D)。効力の実質的な増加(AmBの平均MIC=1.33μM;AmBAUの平均MIC=0.5μM;AmBTACBUの平均MIC=0.4μM)が観察された。重要なことに、これらのAmBUreaはAmBよりも水溶性が高いことがわかり、これは、効力の増加を部分的に説明する可能性がある。
【0239】
AmBAUは、侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおいて腹腔内投与された場合に極めて効果的であることが証明された(
図12)。AmB尿素誘導体との直接比較を可能にするために、AmBは非デオキシコール酸塩複合体として提供された。溶解性の欠如は、これらの実験においてAmBで観察された用量反応の非定型的な欠如を説明する可能性がある。これらのAmBUreaを、EvoTec(オックスフォードシャー、英国)で同様のモデルにおいて静脈内投与によっても試験し、それらの活性をIV AmB-デオキシコール酸塩(ファンギゾン(登録商標))およびリポソームAmB(AmBisome(登録商標))と直接比較した(
図13)。AmBCBUおよびAmBMEUで良好な活性が観察され、各化合物について4および16mg/kgで腎臓真菌負荷が実質的に減少した。ここでも、AmBAUは非常に効果的であり、わずか1mg/kgのIV AmBAUで複数のマウスにおいて(アッセイ検出の制限内で)滅菌をもたらした。これは、そのMTD(1.5mg/kg)で送達されたIV ファンギゾン(登録商標)の活性と同等であり、IV AmBisome(登録商標)(2.5mg/kg)よりも優れていた。最も重要なことは、16mg/kgのAmBAUで完全な滅菌が達成されたことである。AmBAUは、マウス、ラット、イヌにおいて好ましいPK/PD特性を示し(
図14)、AmBと同様の病原体耐性を回避する能力を有していた。
【0240】
AmBUreaはまた、in vitroおよびin vivoでAmBよりも毒性が低かったが、C2’epiAmBで観察された毒性の完全な排除よりは毒性低下が少なかった(
図6および7)。具体的には、初代hRECに対する最小毒性濃度(MTC)は、AmBについて2.4μM、AmBAUについて11.3μM、AmBMUについて44.4μM、そしてC2’epiAmBについて>80μMである。IV注射マウスにおいて、AmBAUでは32mg/kgで死亡が観察されたが、128mg/kgのC2’epiAmBで処置したすべてのマウスは生存した。ラットでは、AmBMUおよびAmBAUの両方とも6mg/kgで重大な毒性を引き起こし、さらなる開発を妨げた。上記のように、最高試験用量(17.5mg/kg)のC2’epiAmBで、同じラットにおいてそのような毒性は観察されなかった(
図6)。
【0241】
生物物理学的研究は、コレステロールに結合するさまざまな能力が、AmBUreaとC2’epiAmBとの毒性の顕著な違いの根底にあるという結論を支持する(
図15)。等温滴定熱量測定では、これら2つのシリーズにおけるコレステロール結合を区別できない。ただし、上記のより感度が高くかつ定量的なUV-Vis/PCAベースのスポンジステロール滴定実験(実施例1を参照)を使用して、代表的なAmB尿素(AmBAU)のエルゴステロールおよびコレステロールへの結合を定量化した。AmBと同様に、AmBAUはエルゴステロールおよびコレステロールに結合することが確認され、このクラスの化合物の抗真菌性および哺乳類毒性が保持されていることと合致する。対照的に、C2’epiAmBは、エルゴステロールへの保持された結合を示したが、コレステロールへの検出可能な結合および哺乳類毒性は示さなかった。リガンド選択的アロステリック効果へのC2’epiAmBのコレステロール結合の欠如は、C2’立体中心のエピマー化によって生じたと推論され(実施例1を参照)、したがって、C2’-エピマー化に関連する生物物理学的効果は他のAmB誘導体に転移可能であるはずであると予測する。
【0242】
したがって、目標は、C2’epiAmBの毒性除去修飾を、最も効力を増進するC16尿素修飾とハイブリダイズさせて、両方のシリーズの有利な特徴を組み合わせた新規なクラスのハイブリッドAmB誘導体を作製することである(
図16)。この戦略を使用して、侵襲性真菌感染症の高用量治療パラダイムを可能にする、新しいタイプの殺真菌性、広域スペクトル、耐性回避、および非毒性のポリエン抗真菌剤が作製される。
【0243】
実施例7.C2’での毒性排除エピマー化とC16での有効性増進アミノアルキル尿素修飾をハイブリダイズする新規な一連のAmB誘導体の合成
AmBからC2’epiAmB(
図4)およびAmBUrea(
図11A)を合成するための2つの異なる半合成経路が開発された。これらの経路を融合して、共通のオキサゾリジノン中間体から単一ステップで、新規シリーズの約50のハイブリッドC2’epiAmBUreaを合成した(
図17)。1.5グラム(g)のC2’epiAmBを
図4に記載するように調製し、次にAmB用に以前に開発されたプロセスを使用して、対応するオキサゾリジノン中間体に変換した;500mgのこの中間体を調製し、逆相MPLCによって精製する。同じ経路および精製プロトコルを使用したAmBからのグラム以上の類似の中間体が以前に調製された。Davis, S. A., et al., Nat Chem Biol 2015, 11 (7), 481-7; Wilcock, B. C. et al., Nat Chem 2012, 4 (12), 996-1003、これらは参照により本明細書に組み込まれる。次に、このオキサゾリジノン中間体を20mgのバッチに小分けし、(商業的供給源から入手したまたは確立された方法を使用して合成した)小さなアルキルジアミンのコレクションと縮合させて、新規な目的ハイブリッドC2’epiAmBUrea(
図17に代表的な例)をもたらした。これは、多様化ステップを手順の最後に置き、スケーラブルで利用しやすくかつ安定なオキサゾリジノン中間体を採用して、この発見プログラムの全体的な効率を実質的に最大化する。
【0244】
重要な結果として、小規模での合成は、
図17のように、第1の目的ハイブリッド誘導体、C2’epiAmBAUで達成され、これら天然物類似体への経路の実現可能性を確認した。C2’epiAmBと比較してC2’epiAmBAUの抗真菌効力の実質的な増加が観察されたため、この第1のC2’epiAmBUrea誘導体の最初の生物学的分析は非常に有望であった(
図18)。具体的には、C2’epiAmBAUはC2’epiAmBよりも最大>500倍強力であり、一連の重要な病原体に対して、ほとんどの場合、AmBよりも強力である。これらには、C2’epiAmBに対して完全なまたはほぼ完全な耐性を示したアスペルギルス属の非常に挑戦的な菌株(A.fumigatus 91、A.fumigatus 1163、およびA.fumigatus 1100)が含まれる。さらに、hRECでの予備分析は、AmBと比較してC2’epiAmBAUの毒性が実質的に低減されていることを実証した(AmBの最小毒性濃度(MTC)=2~4μM、予備研究ではC2’epiAmBAUのMTCは64μMであった)。
【0245】
この新規シリーズについてSARを迅速に確立するために、アミノアルキル変形物の多様なコレクションを最初に合成し、以下に説明するスクリーニングファンネル(screening funnel)の最初のラウンドで試験する(実施例8)。アミン官能基が一般に効力の増加を与えるか否かをスポットチェックするために、アミノ基を持たないいくつかの誘導体も調製する。哺乳類毒性に関連する研究は行われなかったが、最近報告されたC2’epiAmBC41メチルエステル誘導体が強力な抗真菌活性を保持していたことは有望である。Croatt, M. P. et al., Organic Letters 2011, 13 (6), 1390-1393。最も有望と思われる尿素置換基のタイプが特定されると、臨床指向の抗真菌性スクリーニングファンネルに投入するためのこれら誘導体の構造的および立体異性的変形物の濃厚なコレクションを合成し(実施例8)、より大きな動物における詳細なPK/PDおよび毒性試験のための最適な誘導体の特定を可能にする(実施例9)。
【0246】
各誘導体は、対応するAmB尿素を精製するために以前に使用したのと同じ方法を使用して、逆相HPLCにより精製される。Davis, S. A., et al., Nat Chem Biol 2015, 11 (7), 481-7。各製品の構造は、以前にAmBUreaで行われたように、一次元および二次元の1Hおよび13C NMR技術(COSY、HMBC、HMQC、NOESY)の標準Suite、ならびに高分解能質量分析によって明確に確認される。各製品の純度は、3つの異なる波長(406、383、254nm)での分析HLPCによって判断され、いずれの場合も95%純度のカットオフを用いる。化合物は、ホイルで包まれたバイアル中不活性雰囲気下で乾燥粉末として保管され、ドライアイスでSteinbach研究所およびAndes研究所に出荷される。
【0247】
AmBUreaおよびC2’epiAmBAUの合成における豊富な経験に基づいて、提案された経路はすべての目的誘導体へのアクセスを提供し、ジアミンとオキサゾリジノン中間体との間の縮合は、5~10mgの各C2’ epiAmBアミノアルキル尿素をもたらすことが予測される。目的の縮合のいずれかの収率が遊離ジアミンで予想外に低い場合、アルキルジアミンのモノ保護変形物が合成され、縮合反応において大過剰のアミン求核試薬を使用して反応が繰り返される。
【0248】
実施例8.ハイブリッドC2’epiAmBUreaを最先端の毒性、作用機序、および有効性スクリーニングファネルで特徴付けし、さらに進めるための上位2つの候補を特定する
C.3.1.理論的根拠
図19に示される厳密かつ効率的なスクリーニングファンネルを採用し、最も広く強力でかつ非毒性の5つのC2’epiAmBUreaが最初に特定される。次に、続く侵襲性カンジダ症およびアスペルギルス症のマウスモデルにおける「高用量」QD投与のために最も効果的な誘導体が決定される。
図20は、高用量のC2’epiAmBUreaの体系的な有効性評価を示す。
【0249】
科学的厳密性および生物学的変数:偏った解釈を避けるために、データを分析する個人は処置の詳細を知らされない。マウスを実験群にランダムに割り当て、NIHのガイドラインに従って、生物学的変数として性別を説明するために、50:50のオス:メスの比が含められる。これらの結果は、二元配置ANOVAで評価され、性別と処置群の間の相互作用が検査される。性別と処置の間に有意性がある場合は、性別固有の違いの根底にあるメカニズムを理解するための研究が求めらる。3つの独立した実験に由来する3つの生物学的複製からin vitro研究を分析する。
【0250】
C.3.2.エルゴステロールおよびコレステロールの結合のKDsおよび初代hRECにおけるin vitro毒性
C2’epiAmBは、試験した最高用量で動物において非毒性である。C2’epiAmBUrea誘導体の毒性を評価するための最初のスクリーニングとして、C2’epiAmBの特異性の欠如をメカニズム的に裏付けた2つのアッセイが適用され、それらは初代hRECに対するin vitro毒性およびUV-Visステロール結合である。まず、高感度のスポンジ-ステロール結合アッセイは、C2’epiAmBが、エルゴステロールへの強い結合を保持し(KD,erg=120nM)、コレステロールへの結合をほとんどまたはまったく保持しない(KD,chol>2000nM)ことを実証する。これは、初めて、細胞毒性を駆動する主要なメカニズムに直接関連する生化学的パラメータの厳密な定量化に基づき、治療指数の最適化を合理的に導くことを可能にする。具体的には、対応するKDsを新規C2’epiAmBUreaのそれぞれについて決定し、同様にエルゴステロールへの結合が保持され(KD,erg≦200nM)かつコレステロールへの結合がほとんどまたはまったくない(KD,chol>2000nM)誘導体の前進を優先させる。
【0251】
これらの研究により、ヒト患者における毒性の主要な標的であるhRECに対する毒性アッセイが、AmB誘導体の毒性を評価する際に一般的に使用される赤血球溶解アッセイよりも有利であることが分かった。C2’epiAmBを使用したin vitro研究はまた、hRECに対する最小毒性濃度(MTC)が>80μMであることを示した。動物において許容できないほど毒性であることが証明された他の誘導体(AmBAUなど)は、この同じアッセイでMTCが低かった(AmBおよびAmBAUのMTCはそれぞれ、2.4μMと11.3μMである)。対照的に、AmBAUは、試験した最高濃度(>500μM)で、赤血球を完全に溶解することはできなかった。したがって、hRECを使用したin vitroでの初期毒性は、より一般的に使用される赤血球溶解アッセイと比較して、in vivo毒性の良好かつ優れた予測因子であると結論付けられた。スクリーニングファンネルの補完的な並列の最初のステップとして、すべての新しい誘導体のMTCを、前述のようにWST-8細胞増殖アッセイキットを使用してhRECに対して評価する。MTCは、少なくとも2つの生物学的複製の平均を計算することによって決定される。このアッセイでMTC>80μMを示す化合物も前進を優先させる。したがって、これらの測定基準を組み合わせて、KD,erg≦200nM、KD,chol>2000nM、およびhRECでMTC>80μMであると決定されたすべての化合物が、in vitro有効性試験のために進められる(C3.3.を参照)。
【0252】
C.3.3.カンジダ属およびアスペルギルス属の菌株の臨床的に関連するパネルに対するin vitro抗真菌活性
有望なC2’epiAmB-尿素誘導体を、最も一般的な病原性カンジダ種およびアスペルギルス種のパネルに対するin vitro活性について評価する。この研究では、三重で、FDAが承認した抗真菌剤対照(AmB、AmBisome(登録商標)、フルコナゾール、カスポファンギン、およびボリコナゾール)ならびにC2’epiAmBと並行して、標準のCLSI M27-A3およびM38-A2抗真菌薬感受性試験法に従って、カンジダ属の5つの最も一般的な種(カンジダ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・グラブラタ(C.glabrata)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、およびカンジダ・パラシローシス(C.parapsilosis))、ならびにアスペルギルス属の5つの最も一般的な種(アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(A.flavus)、アスペルギルス ニガー(A.niger)、アスペルギルス・テレウス(A.terreus)、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)に対する各化合物のMICを決定する。http://shop.clsi.org/site/Sample_pdf/M27A3_sample.pdf。両方の菌株のセットに対して平均MIC≦2μMであり、かつ>8μMの個々のMICがない化合物が、作用機序を評価するために進められる(C.3.4.を参照)。
【0253】
C.3.4.細胞破壊作用および耐性を回避する保持された能力の主要なメカニズムとしてのステロールスポンジの検証
この研究は、残った各C2’epiAmBUreaが主にステロールスポンジメカニズムを介して酵母を殺すか否かを特定する。AmBを使用した広範な先行研究に基づいて、この研究は、1)酵母細胞からエルゴステロールを抽出する能力、2)エルゴステロールとの事前複合体形成による、酵母からエルゴステロールを抽出する能力の喪失、および3)エルゴステロールとの事前複合体形成による抗真菌効力の喪失について、各C2’epiAmBUreaを試験する。次に、主にステロールスポンジメカニズムを介して酵母を殺すことが確認されている各C2’epiAmBUreaが、AmBの特徴である耐性回避特性を保持しているか否かを特定する。他の広範な研究に基づいて、このステップは、1)カンジダ・アルビカンス(C.albicans)erg変異株の確立されたパネルに対する保持されたMICのAmB様パターンを検査し、2)液体培養でC2’epiAmBUrea濃度を2倍段階希釈させて段階的な耐性選択プロトコルを実施して、MICの4倍以上の増加を示す変異株を特定する。次のステップでは、そのような変異株が、3)Hsp90への依存性を高める酸化ストレスに対する感受性を含む、AmB耐性株で以前に示された顕著な適合度欠陥(fitness defect)を回避すること、4)ウシ胎児血清での刺激によるフィラメント形成の能力を保持すること、および/または5)マウスにおいて致死的な感染を引き起こす能力を保持することができるか否かを試験する。主にステロールスポンジメカニズムを介して作用し、耐性を回避するAmB様の能力を有することが確認されたC2’epiAmBUreaを、二次in vitroスクリーニングに進める(C.3.5.を参照)。
【0254】
C.3.5.拡張された広域スペクトルのin vitro抗真菌活性についての二次スクリーニング
次に、残ったC2’epiAmBUreaを、臨床的に関連する病原体の拡張パネルにおいて広域スペクトルの有効性について評価する。具体的には、Steinbach研究所は、アゾール耐性のカンジダ・アルビカンス(C.albicans)、エキノカンジン耐性のカンジダ・グラブラタ(C.glabrata)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、A.calidoustus、アスペルギルス・レンツルス(A.lentulus)、アゾール耐性のアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)、エキノカンジン耐性のA.fumigatus、スケドスポリウム・プロリフィカンス(Scedosporium prolificans)、スケドスポリウム・アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、ムーコル・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、およびペシロマイセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii)に対して3回試験して、これらの化合物の活性を測定する。これらの菌株は、承認されたまたは効果的な抗真菌療法がないかまたは抗真菌耐性の出現を有する、侵襲性酵母および糸状菌感染症を処置するのが困難である菌株を代表するように注意深く選択された。広域スペクトル活性のベンチマークとして、化合物は、試験した菌株の95%に対してMIC≦8μM、および各クラスの病原体に対して平均MIC≦2μMを示す必要がある。前述の基準を満たす化合物は、平均MICに基づきランク付けされ、上位5つの候補が、in vivo PKおよび毒性を評価するために進められる(C.3.6を参照)。
【0255】
C.3.6.用量漸増試験におけるPKおよび毒性
AmBを使用した以前の研究に基づき、用量漸増試験において単回IP投与としてすべての化合物のPKおよび毒性を直接特徴付けすることにより、AmB、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB、および上位5つのC2’epiAmBUreaの最大ピーク血漿濃度を最初に決定する。具体的には、好中球減少症[注射の4日前(150mg/kg)および1日前(100mg/kg)にシクロホスファミドをIP投与]のICR/Swissマウス(4匹/群)に、AmB-デオキシコール酸塩、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、またはC2’epiAmB-デオキシコール酸塩を0.25、1、2.5、5、10、20、40、80、および120mg/kgの単回用量でIP注射する。次に、この研究では、0、10分(m)、20分、30分、40分、1時間(h)、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、および60時間目に、血清中の対応する薬物濃度をHPLCにより決定する。60時間後に、血清尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cr)の比(BUN/Cr)、腎遺伝毒性マーカー(Kim1、Lcn2、Timp1、およびSpp1)のレベル、および腎組織病理を決定する。遺伝毒性マーカーおよび腎組織病理は、動物を屠殺して腎臓を採取し、続いて一方の腎臓をホモジナイズし、RT-PCRによりKim1、Lcn2、Timp1、およびSpp1の発現を定量化し(
図7)、もう一方の腎臓の組織病理学的評価を行う(H&Eおよびオステオポンチン)。この多面的な薬物動態および毒性戦略を使用して、AmB-デオキシコール酸塩、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB-デオキシコール酸塩、および上位5つのC2’epiAmBUreaの統計的に有意な毒性のない最大用量が特定される。
【0256】
C.3.7.毎日(QD)複数回投与処置試験においてMTDを決定する
AmB、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB、および上位5つのC2’epiAmBUreaについて、この研究では次に、7日間のQD複数回投与処置試験でより高い1つの用量およびより低い1つの用量と共に、BUN/Crまたは腎遺伝毒性マーカーの統計的に有意な上昇を引き起こさない最大単回用量(C.3.6を参照)について、動物における毒性を試験する。選択した各用量について、好中球減少症のICR/Swissマウス(4匹/群)に7日間毎日(QD)、IPで注射する。一方の腎臓は、RT-PCRにより腎遺伝毒性マーカーKim1、Lcn2、Timp1、およびSpp1について分析し、もう一方の腎臓は、オステオポンチンおよびH&E染色により腎病理について分析する。7日間のQD処置プロトコルのMTDは、死亡を引き起こさず、BUN/Cr、腎遺伝毒性マーカー、および腎病理学指標に軽度の変化(≦20%の増加)しか引き起こさない各化合物の用量として定義される。
【0257】
C.3.8.QD複数回投与処置試験におけるMTDのPK
次に、この研究では、7日間のQD複数回投与処置に続いて、AmB、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB、および上位5つのC2’epiAmBUreaのMTDのPKプロファイルを決定する。具体的には、好中球減少症のICR/Swissマウスに各化合物のMTD(試験C.3.7で決定)をQDで7日間IP注射し、C.3.6に詳述されているように13ポイントのPK曲線を作成する。
【0258】
C.3.9.侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおいて、QD複数回投与処置のMTDで高用量有効性試験を実施する
AmB、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB、および上位5つのC2’epiAmBUreaのよく特徴付けられたMTDを使用して、この研究では、Andes研究所で20年間使用されている確立されたマウス侵襲性カンジダ症モデルにおいて2つの異なる菌株を使用して、侵襲性カンジダ症のマウスモデルにおいて7日間のQD処置プロトコル後の各化合物の有効性を試験する。Andes, D. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy 2001, 45 (3), 922-6。各アームには10匹のマウスが含まれる。簡単に説明すると、好中球減少症のICR/Swissマウスに、治療開始の2時間前に外側尾静脈を介してカンジダ・アルビカンス(C.albicans)を感染させる。動物を、MTDの各化合物またはビヒクル対照で7日間QD処置する。有害事象について動物を毎日監視し、最後の注射の24時間後にすべての生き残った動物を屠殺し、両方の腎臓を取り出し、生存真菌コロニー数の計測のためにプレーティングする。
【0259】
C.3.10.侵襲性アスペルギルス症のマウスモデルにおいて、QD複数回投与処置のMTDを使用して高用量有効性試験を実施する
この研究では、同様に、Steinbach研究所で15年以上使用されている侵襲性アスペルギルス症のよく確立されたモデルにおいて2つの異なる菌株を使用して、7日間のQD処置プロトコル後のAmB、AmBisome(登録商標)、ボリコナゾール、カスポファンギン、C2’epiAmB、および上位5つのC2’epiAmBUreaの有効性を試験する。Steinbach, W. J. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy 2004, 48 (9), 3217-25。これらの菌株のそれぞれを免疫無防備状態のマウス[シクロホスファミド150mg/kg(-2日、+3日)およびトリアムシノロン40mg/kg(-1日、+6日)]で試験し、菌株のエアロゾルに曝し(0日目)、肺浸潤性アスペルギルス症を発症させる。各アームには、適切な統計的検出力のために10匹のマウスが含まれる。生存率を、ログランクのペアワイズ比較を使用してカプランマイヤー(Kaplan-Meier)曲線にプロットする。事前に決定された時点(感染後+5日)でのガラクトマンナンアッセイによる真菌負荷(fungal burden)を、ダンの事後検定を伴うクラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis)で分析する。肺が炎症のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色され、また真菌浸潤のためにGomoriのメテナミン銀染色で染色された組織病理学的疾患および組織浸潤を、我々が開発した5点の肺梗塞スコアに従って評価する。これらの実験で侵襲性カンジダ症およびアスペルギルス症を根絶するのに最も効果的であることが判明した2つのC2’epiAmBUreaを、より大きな動物でのさらなる研究のために進める(実施例9を参照)。
【0260】
C.3.11.期待される結果、潜在的な落とし穴、および代替戦略
C2’epiAmBAUの結果は、C16の修飾がC2’epiAmBと比較して効力の向上を示すという予測を強く支持する。重要なことに、C2’epiAmBAUはAmBよりも実質的に毒性が低いが、この研究では、hRECに対する低いが測定可能な毒性が観察された。AmBAUは先の一連のAmBUreaの中で最も毒性が高く、他の多くのAmBUreaはAmBAUよりもはるかに毒性が低いが、それでも優れた溶解性および抗真菌効力を示したことに留意されたい。したがって、C2’epiAmBと他の尿素側鎖とのハイブリダイゼーションは、哺乳類毒性なしに同様の効力の増加をもたらすと予想される。もしこれが当てはまらないことが判明した場合は、効力を高める他のクラスのC16修飾が追求される。たとえば、C2’epiAmBC16メチルエステル(C2’epiAmBME)が最近合成され、アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)91(MICは、C2’epiAmBについて>64μM、およびC2’epiAmBMEについて4μM)およびアスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)1100(MICは、C2’epiAmBについて32μM、C2’epiAmBMEについて4μM)に対して、C2’epiAmBと比較して効力が実質的に改善されていることがわかった。この研究では最近、AmBのC16アミドが広範囲の臨床的に関連する病原体に対する効力を実質的に向上させることも分かった。水架橋C2’OH-C13OHの水素結合を同様に排除し(たとえばC2’脱酸素化、C2’-ハロ脱酸素化(halodeoxygenation)、またはC2’-メチル脱酸素化(methyldeoxygenation))、したがってコレステロール結合を排除するとモデリングが予測する、代替の修飾をマイコサミン付加物で行うことができる(
図3Aおよび3Bを参照)。この研究は、高用量の非毒性C2’epiAmBUreaが、AmB-デオキシコール酸塩(ファンギゾン(登録商標))、AmBisome(登録商標)、C2’epiAmB、ボリコナゾール、およびカスポファンギンと比較して、QD投与有効性試験において、真菌負荷の有意な減少をもたらし、したがって生存率を高めると予測する。
【0261】
実施例9.大型動物において上位2つのC2’epiAmBUreaの安全性を特徴付ける
C.4.1.ラットでの安全性
C.3.7から選択された上位2つのC2’epiAmBUreaを、Sprague Dawleyラット(生物学的変数として性別を説明するために、オス3匹/メス3匹)に1、10、20、40、および80mg/kgでIV投与し、毒性および薬物動態特性を評価する(C.3.6でマウスについて説明)。体重減少、死亡、ならびにBUN、クレアチニン、およびALT/ASTの上昇についてラットを評価する。さらに、この研究では、尿中腎臓バイオマーカーNGAF、アルブミン、クラステリン、Kim1、シスタチン(Cystatin)、オステオポンチンを定量化し、また腎臓を切片化し、染色し、病理学者が腎病理について分析する。この研究の終わりに、腎臓組織に加えて、すべてのラットの内臓[脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、胃、小腸、大腸、膀胱および性腺器官(卵巣または精巣)]を、組織学的分析、および骨髄細胞診のために収集する。これらラットにおける全体的な毒性が最も低くかつCmaxが最も高いC2’epiAmBUreaを、ビーグル犬でのさらなる研究のために選択する。
【0262】
C.4.2.ビーグル犬でのPKおよび安全性
最高のパフォーマンスを発揮するC2’epiAmBUreaを、大型の哺乳類でげっ歯類ではない種である健康なビーグル犬でさらに特徴付けする。AmB-デオキシコール酸塩の広範な前臨床毒性データがイヌで存在し、再現性のある腎病変に関連するMTDとして、30日間連続で毎日0.625mg/kg IVを特定する。最高のパフォーマンスを発揮するC2’epiAmBUreaが、強力な抗真菌活性を保持しながら、AmB-デオキシコール酸塩と比較して生物学的忍容性を少なくとも10倍高めることを期待して、性的な処置を施していないビーグル犬6匹(オス3匹/メス3匹)を、最上位のC2’epiAmBUreaを用いて、6.25mg/kgで10分間の低速IVボーラスとして、連続14日間(ヒトの侵襲性真菌感染症を管理するための臨床的に関連する曝露期間)、毎日処置する。次に、この研究では、C2’epiAmBUreaの投与の1日目(初日)および14日目(最終日)にHPLCにより、0、10分、20分、30分、40分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、および24時間での血清中の対応する薬物濃度を決定する。関連する血液学的毒性、非血液学的毒性、尿細管毒性の検出のために、連続的な全血球数、化学パネル、および尿検査を、処置前(0日目)、ならびに薬物投与の7日目および14日目に評価する。不活発、食欲不振、嘔吐、下痢などの毒性に関連する臨床症状についてビーグル犬を毎日観察する。15日目に、ビーグル犬を人道的に屠殺し、次の内臓[脳、肺、心臓、胸腺、甲状腺、肝臓、脾臓、リンパ節、胃、腎臓、副腎、小腸、大腸、膀胱、性腺器官(卵巣または精巣)および骨髄]の詳細な計量および組織学的評価を含む剖検を行う。
【0263】
C.4.3.期待される結果、および代替戦略
これらの研究は、最上位のC2’epiAmBUreaがラットおよびビーグル犬でほとんどまたはまったく毒性を示さないと予想する。いずれかの種で予期しない毒性が観察された場合、この研究は、スクリーニングファンネルで良好に機能した他のC2’epiAmBUreaを代わりに試験する。上記のように、必要に応じて、この研究は、効力を集合的に最大化するが、コレステロール結合および哺乳動物毒性をもたらさない他のマイコサミンおよび/またはC16修飾も追求する。
【0264】
実施例10.AmBのC16尿素誘導体の合成および特徴付け
上記のように、AmBからAmBUreaへの半合成経路(
図11A)が開発された。AmBの一連のC16尿素誘導体は、この経路を介して合成されている。これらのAmB尿素の合成は、幅広いアミンからハイブリッドAmB尿素を作成するための、C2’-エピ-マイコサミンを有するオキサゾリジノン試薬(スキーム1、化合物1)の幅広い適用性をさらに支持する。
【0265】
【0266】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082ミリモル(mmol)、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0267】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0268】
得られた固体をTHF(14mL、0.01M)に溶解した。この溶液に、トリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、反応物を室温に冷却し、メチルアミン(THF中1.0M、2.17mL、4.4mmol、8当量)を加えた。次に、反応物を室温で8時間撹拌し、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。固体をDMSO(約100mg/mL)に溶解し、単一の分取HPLC精製(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~59:41の0.3%HCO2H(水溶液(aq)):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程でメチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて、AmBMUを黄色の固体として得た。
【0269】
計算精密質量952.5382;HRMS(ESI)実測値[C48H77N3O16+H]+:952.5378
【0270】
【0271】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0272】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0273】
得られた固体をTHF(14mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、反応物を室温に冷却し、エチルアミン(198mg、4.4mmol、8当量)を加えた。次に、反応物を室温で8時間撹拌し、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。固体をDMSO(約100mg/mL)に溶解し、単一の分取HPLC精製(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~59:41の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0274】
計算精密質量966.5539;HRMS(ESI)実測値[C49H79N3O16+H]+:966.4875
【0275】
【0276】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0277】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0278】
得られた固体をTHF(14mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、反応物を室温に冷却し、プロピルアミン(321mg、4.4mmol、8当量)を加えた。次に、反応物を室温で8時間撹拌し、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過によって単離して、黄色の固体を得た。固体をDMSO(約100mg/mL)に溶解し、単一の分取HPLC精製(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~59:41の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)とトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0279】
計算精密質量980.5695;HRMS(ESI)実測値[C50H81N3O16+H]+:980.5666
【0280】
【0281】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0282】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0283】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、エチレンジアミン(0.15mL、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0284】
計算精密質量980.5569;HRMS(ESI)実測値[C49H80N4O16+H]+:981.4964
【0285】
【0286】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0287】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0288】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、プロパン-1,3-ジアミン(124mg、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0289】
計算精密質量995.5804;HRMS(ESI)実測値[C50H82N4O16+H]+:995.5757
【0290】
【0291】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0292】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0293】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、2-アミンペタン-1-オール(102mg、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0294】
計算精密質量982.5488;HRMS(ESI)実測値[C49H79N3O17+H]+:982.5463
【0295】
【0296】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0297】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0298】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、(3S)-ピロリジン-3-アミン(144mg、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)およびトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0299】
計算精密質量:1006.5726;HRMS(ESI)実測値[C51H82N4O16+H]+:1007.5057
【0300】
【0301】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0302】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0303】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、(3R)-ピロリジン-3-アミン(144mg、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)とトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0304】
計算精密質量:1006.5726;HRMS(ESI)実測値[C51H82N4O16+H]+:1007.5061
【0305】
【0306】
丸底フラスコにアムホテリシンB(0.5g、約1.082mmol、1当量)およびFmocスクシンイミド(0.28g、0.81mmol、1.5当量)を添加し、室温で2:1のDMF:MeOHの混合物(16.9mL)に溶解した。続いて、ピリジン(0.25mL、3.10mmol、5.74当量)を加え、反応物を室温で12時間撹拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注いだ。30分間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得た。フィルターケーキをフィルター上で10分間乾燥させた後、真空下で1時間保管した。
【0307】
得られた粉末を1:1のTHF:MeOH(18mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(69mg、0.30mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.07mL、0.30mmol、0.55当量)を用いて0℃で反応をクエンチした。反応物を真空中で濃縮して、溶媒の約半分を除去した。得られた飽和溶液を1:1のヘキサン:ジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、ワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により黄色の沈殿物を収集し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色の固体を得た。
【0308】
得られた固体をTHF(27mL、0.01M)に溶解した。この溶液にトリエチルアミン(0.075mL、0.54mmol、1当量)を加え、次にジフェニルホスホリルアジド(0.35mL、1.63mmol、3当量)を加えた。反応物を50℃に加熱し、12時間撹拌した。12時間後、2-アミンペタン-1-オール(102mg、1.67mmol、4当量)を加え、反応物を50℃で3時間撹拌し続け、黄色の沈殿物をゆっくりと発生させた。次に反応混合物をジエチルエーテル(0.5L)に注ぎ、得られた黄色の沈殿物をワットマン#50濾紙を用いたブフナー濾過により単離して、黄色の固体を得て、これをDMSO(約66mg/mL)に溶解し、分取HPLC(C18、5μm、50x250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20~50:50の0.3%HCO2H)(aq):MeCN)により精製した。HPLC精製後、溶媒を40℃で真空除去した。溶媒が完全に除去されたら、milliQ水(10mL)とトルエン(50mL)を用いた共沸により残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返して、ギ酸を確実に除去した。このHPLC精製の過程で、メチルケタールは定量的にヘミケタールに変換され、次に化合物をDMSOに溶解し、凍結乾燥機で乾燥させて黄色の固体として得た。
【0309】
計算精密質量:1007.5566;HRMS(ESI)実測値[C51H81N3O17+H]+:1008.4974
【0310】
参照による援用
上記の説明に記載されているすべての米国特許および公開された米国特許およびPCT特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0311】
同等物
理解を明確にするために、例示および例によりある程度詳細に本発明を全て説明したが、本発明の範囲またはその具体的な実施形態に影響を与えることなく、広い同等の条件、配合物、および他のパラメータの範囲内で本発明を修正または変更することによって同じことを実行でき、さらにそのような修正または変更が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることは、当業者に明らかであろう。