(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ワークサポート
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/10 20060101AFI20240423BHJP
B23Q 3/02 20060101ALI20240423BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20240423BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B23Q3/10
B23Q3/02 A
B23Q3/06 304H
F15B15/14 305
(21)【出願番号】P 2021545178
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2020030739
(87)【国際公開番号】W WO2021049244
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019167873
(32)【優先日】2019-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】吉村 画
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0052233(US,A1)
【文献】国際公開第2017/150464(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/008210(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/132809(WO,A1)
【文献】特表2018-528867(JP,A)
【文献】独国実用新案第202016005535(DE,U1)
【文献】特開2002-283161(JP,A)
【文献】国際公開第2006/046420(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110131235(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/02 - 3/10
F15B 15/14
F15B 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)内に軸方向の先端側および基端側へ移動可能に挿入されるサポートロッド(3)と、
前記サポートロッド(3)の外周壁に外嵌めされるコレット(5)と、
前記ハウジング(1)内に前記軸方向へ移動可能に挿入されるピストン(6)であって、前記コレット(5)に前記サポートロッド(3)を把持させるピストン(6)と、
前記ハウジング(1)の基端部に形成される作動室(21)と、
前記作動室(21)に供給される圧油によって前記軸方向の先端側に移動される出力部材(24)と、
圧油が供給される前記作動室(21)内であって、前記作動室(21)の先端壁(31)と前記出力部材(24)の基端部に設けられるフランジ部(25a)との間に装着されると共に、前記出力部材(24)を基端側へ付勢するリリースバネ(33)と、
前記サポートロッド(3)と前記出力部材(24)とを離間させるように付勢する付勢機構(38,41)と、を備える、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項2】
請求項1のワークサポートにおいて、
前記作動室(21)は、
前記フランジ部(25a)の前記軸方向の基端側に形成される基端側作動室(43)と、
前記フランジ部(25a)の前記軸方向の先端側に形成される先端側作動室(44)であって、前記出力部材(24)内に形成された連通路(28)によって前記基端側作動室(43)と連通する先端側作動室(44)と、を有し、
前記リリースバネ(33)が前記先端側作動室(44)に収容されている、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項3】
請求項2のワークサポートにおいて、
前記連通路(28)は、
前記出力部材(24)の前記軸方向の基端面に開口する第1連通路(28a)と、
前記第1連通路(28a)に連通すると共に、前記出力部材(24)の外周面に開口する第2連通路(28b)と、を有する、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項4】
請求項2または3のワークサポートにおいて、
前記作動室(21)は第2作動室(21)であって、
前記ピストン(6)を前記軸方向の基端側に移動させる第1作動室(13)であって、前記先端側作動室(44)と連通する第1作動室(13)と、
前記ピストン(6)を前記軸方向の先端側に移動させる第1バネ(14)と、を備え、
前記第1バネ(14)が、圧油が供給される前記第1作動室(13)に収容されている、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項5】
請求項4のワークサポートにおいて、
前記第1バネ(14)が、前記第1作動室(13)内のうちの前記ピストン(6)の前記軸方向の基端側に配置されている、
ことを特徴とするワークサポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コレットを縮径させてサポートロッドをロックする形式のワークサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワークサポートには、従来では、特許文献1(国際公開第2006/046420号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
固定台としてのテーブルにワークサポートのハウジングが固定されている。ハウジング内にサポートロッドが上下方向へ移動可能となるように挿入される。サポートロッドの外周にコレットが外嵌めされる。コレットの外方に環状の第1ピストンが挿入される。その第1ピストンが下方へ移動することにより、その第1ピストンがコレットを介してサポートロッドを把持する。ハウジングの下壁にシリンダ孔が形成され、そのシリンダ孔に出力部材の第2ピストンが封止部材を介して保密状で上下方向へ移動可能に挿入される。その第2ピストンよりも小径となっている出力部材のピストンロッド(操作ボルト)が第2ピストンから上方に突設される。サポートロッドとピストンロッドとの間にバネが装着され、そのバネがサポートロッドとピストンロッドとを離間させる方向に付勢する。また、第2ピストンの下側に第2作動室が形成され、その第2作動室に圧油が給排される。前記シリンダ孔の上端部の内周壁から突起部が径方向の内方へ向けて突設される。その突起部と第2ピストンの上面との間、すなわち、第2ピストンの上側にバネ室が形成される。そのバネ室にリリースバネ(第2バネ)が装着される。そのバネ室には、ハウジングの下壁に形成される呼吸孔(縦路)が連通され、その給排孔がテーブル内に形成される給排路に連通されている。第2ピストンの上下方向への移動により、上記バネ室内のエアがハウジング内と呼吸孔と給排路とを通ってハウジング外部との間で給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のワークサポートでは、第2ピストンの上側であってエアが満たされた空間にバネ室が設けられる。このため、第2ピストンの上下方向への移動により、バネ室内のエアがハウジング内に給排されてハウジング内のエアの圧力が過剰に上昇・低下することになる。そのハウジング内のエアの圧力を所定の圧力に保つためにハウジング内部のエアを外部に対して給排する呼吸孔をハウジングの下壁およびテーブル内に設ける必要がある。それに加え、ハウジングの下壁およびテーブル内には、第2作動室へ圧油を給排する給排路が形成されている。ハウジング内およびテーブル内で複数の流路が複雑に配置されている。
【0006】
本発明の目的は、簡素な構造で小型のワークサポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1から
図3、
図4に示すように、ワークサポートを次のように構成した。
【0008】
ハウジング1内にサポートロッド3が当該サポートロッド3の軸方向の先端側および基端側へ移動可能に挿入される。前記サポートロッド3の外周壁にコレット5が外嵌めされる。前記ハウジング1内にピストン6が前記軸方向へ移動可能に挿入され、そのピストン6が前記コレット5に前記サポートロッド3を把持させる。前記ハウジング1の基端部に作動室21が形成される。前記作動室21に供給される圧油によって出力部材24が前記軸方向の先端側に移動される。圧油が供給される前記作動室21内であって、前記作動室21の先端壁31と前記出力部材24の基端部に設けられるフランジ部25aとの間にリリースバネ33が装着され、そのリリースバネ33が前記出力部材24を基端側へ付勢する。前記サポートロッド3と前記出力部材24とを離間させるように付勢機構38が付勢する。
【0009】
上記の発明は次の作用効果を奏する。
【0010】
本発明のワークサポートでは、リリースバネが、圧油が供給される作動室内であって作動室の先端壁と出力部材の基端部に設けられるフランジ部との間に装着されている。このため、第2ピストンの上側(先端側)のエアで満たされた空間(バネ室)にリリースバネを装着する上記従来のワークサポートに比べて、本発明のワークサポートでは、出力部材の軸方向への移動によって出力部材がハウジング内にエアを給排する給排量を上記バネ室の容量分だけ低減できる。従って、ハウジング内のエアの圧力が過剰に上昇・低下するのを防止でき、そのハウジング内のエアの圧力を所定圧力に保つのが容易である。よって、ハウジング内部のエアを外部に対して給排する呼吸孔をハウジングの下壁およびテーブル内に設ける必要がない。また、その呼吸孔につながる給排路をテーブル内に設ける必要がない。従って、本発明では、ワークサポートを簡素な構造で小さく作ることができる。
【0011】
上記の本発明は、下記の(1)から(4)の構成を備えることが好ましい。
【0012】
(1)例えば、
図1から
図3、
図4に示すように、前記作動室21は、前記フランジ部25aの前記軸方向の基端側に形成される基端側作動室43と、前記フランジ部25aの前記軸方向の先端側に形成される先端側作動室44であって、前記出力部材24内に形成された連通路28によって前記基端側作動室43と連通する先端側作動室44と、を有する。前記リリースバネ33が前記先端側作動室44に収容されている。
【0013】
この場合、リリースバネを収容するための圧油で満たされるスペースを容易に形成することができる。
【0014】
(2)例えば、
図1から
図3、
図4に示すように、前記連通路28は、前記出力部材24の前記軸方向の基端面に開口する第1連通路28aと、前記第1連通路28aに連通すると共に、前記出力部材24の外周面に開口する第2連通路28bと、を有する。
【0015】
この場合、基端側作動室と先端側作動室とを連通させる連通路を出力部材内に容易に形成することができる。
【0016】
(3)例えば、
図4に示すように、前記作動室21は第2作動室21であって、前記ピストン6を前記軸方向の基端側に移動させる第1作動室13であって、前記先端側作動室44と連通する第1作動室13と、前記ピストン6を前記軸方向の先端側に移動させる第1バネ14と、を備える。前記第1バネ14が、圧油が供給される前記第1作動室13に収容されている。
【0017】
この場合、エアで満たされた空間(第1バネ室)に第1バネを装着する上記従来のワークサポートに比べて、本発明のワークサポートでは、出力部材の軸方向への移動によって出力部材がハウジング内にエアを給排する給排量を上記第1バネ室の容量分さらに低減できる。従って、ハウジング内のエアの圧力が過剰に上昇・低下するのをより防止でき、そのハウジング内のエアの圧力を所定圧力に保つのがより容易である。
【0018】
また、第1バネが腐食するのを第1作動室の油によって防止することができる。なお、リリースバネが腐食するのは、第2作動室の油によって防止される。
【0019】
(4)例えば、
図4に示すように、前記第1バネ14が、前記第1作動室13内のうちの前記ピストン6の前記軸方向の基端側に配置されている。
【0020】
この場合、無駄のないシンプルな構造で、第1バネによってピストンを軸方向の先端側に移動させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、簡素な構造で小型のワークサポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、ワークサポートのリリース状態を示す立面視の断面図である。
【
図2】
図2は、上記ワークサポートの動作を説明するための立面視の断面図であって、上記
図1に類似する図である。
【
図3】
図3は、上記ワークサポートのロック状態を示す立面視の断面図であって、上記
図1に類似する図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態を示し、上記
図3に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図3は、本発明の第1実施形態を示している。この実施形態では、油圧式のワークサポートに本発明を適用した場合を例示してある。まず、上記ワークサポートの構造を説明する。
【0024】
固定台としてのテーブルTに収容穴が形成され、その収容孔の内周壁に雌ネジ部が形成される。その雌ネジ部に、ハウジング1の外周壁に形成される雄ネジ部がねじ込まれて、当該ハウジング1が収容孔に固定される。そのハウジング1は、上壁1aと筒状の胴部1bと支持部材1cと第1ブロック1dと第2ブロック1eとを有する。その胴部1bの筒孔の下部に筒状の支持部材1cが固定される。その支持部材1cの筒孔には、上下方向に並べて第1ブロック1dと第2ブロック1e(基端壁)とが挿入されている。そのハウジング1の上壁1aにサポートロッド3が上下方向(当該サポートロッド3の軸方向の先端側および基端側)へ移動可能に挿入される。そのサポートロッド3の上部には、サポートロッドの一部を構成する押ボルト4が装着されている。なお、本実施形態において、上壁1a,胴部1b,支持部材1c,第1ブロック1d,第2ブロック1eを別々の部材によって設けられることに代えて、それら部材のうちの2以上の部材を一体に形成するようにしてもよい。
【0025】
上記サポートロッド3の外周面の上半部分は、下半部分に比べて小径に形成される。上半部分と下半部分との間の段差部が、ハウジング1の上壁1aに形成される受け止め部に係合可能となっている。また、下半部分に狭持固定領域Rが設けられ、その狭持固定領域Rに筒状のコレット5が外嵌される。そのコレット5は、上すぼまりのテーパ外周面5aを備え、上下方向へ延びる1つのスリット5bによって弾性的に縮径されるようになっている。そのコレット5の外周側に環状の第1ピストン(ピストン)6が配置され、その第1ピストン6のテーパ内周面6aがコレット5のテーパ外周面5aに上側から対面される。そのテーパ外周面5aとテーパ内周面6aとの間に形成した環状テーパ隙間7には多数のボール8が挿入されている。なお、本実施形態のコレット5は、その下端部がハウジング1の支持部材1cの上端面に下側から受け止められると共に、その上端部が金属製の波ワッシャ(弾性部材)9を介してハウジング1の上壁1aに上側から受け止められている。なお、弾性部材としての金属製の波ワッシャに代えて、弾性部材は、皿バネ,コイルバネ,また、他の素材、例えば、樹脂や後述するゴムなどによって形成される部材であってもよい。
【0026】
作動用の第1シリンダ10は、ハウジング1の胴部1b内に形成される第1シリンダ孔11に軸方向へ挿入される前述の第1ピストン6と、その第1ピストン6を下降させる第1作動室13と、その第1ピストン6を上昇させる第1バネ14とを備える。その第1バネ14は、第1ピストン6の下側に形成されるバネ室15に装着されている。
【0027】
より詳しくいえば、上記の第1ピストン6の上部が封止部材16によって上壁1aに保密状で上下方向に案内されると共に、第1ピストン6の下部が別の封止部材17によって支持部材1cに保密状で上下方向に案内される。そして、第1作動室13に圧油を供給することにより、第1ピストン6の上端に形成した大面積の環状受圧面に下向きの力が作用すると共に、第1ピストン6の下端に形成した小面積の環状受圧面に上向きの力が作用して、これらの上下の差力によって第1ピストン6が下降する。
【0028】
前記の第1バネ14は、ここでは圧縮コイルバネからなり、第1ピストン6の下部に装着されるバネ受け19と支持部材1cとの間に装着されている。そのバネ受け19が多数のボール8を下方から受け止めている。また、第1バネ14が支持部材1cに対して第1ピストン6を上方へ付勢する。
【0029】
上記の支持部材1c内と第1ブロック1d内と第2ブロック1e内に進退用の第2シリンダ20が設けられる。その第2シリンダ20は、次のように構成されている。支持部材1cの筒孔の一部と第1ブロック1dの筒孔と第2ブロック1eの筒孔とによってハウジング1の基端部に第2作動室(作動室)21が形成されている。その第2作動室21内に出力部材24が保密状で上下方向に移動可能に挿入される。その第2作動室21は、第2ブロック1eの筒孔内に形成される第2シリンダ孔22と、その第2シリンダ孔22よりも小径となるように支持部材1cの筒孔内に形成されるロッド孔23とを有する。そのシリンダ孔22に出力部材24の第2ピストン25のフランジ部25aが上下方向(サポートロッドの軸方向)の下限位置(基端側限界位置)と上限位置(先端側限界位置)との間で案内されると共に、ロッド孔23に出力部材24のピストンロッド26が封止部材27を介して保密状に挿入される。
【0030】
また、第2ピストン25内に連通路28が形成され、その連通路28の一端部が第2ピストン25の裏面に開口され、他端部が第2ピストン25の外周面に開口される。連通路28は、第2ピストン25の軸方向の基端面に開口する軸方向に延びる第1連通路28aと、第1連通路28aに連通すると共に、第2ピストン25の外周面に開口する径方向に延びる第2連通路28bとで構成される。なお、本実施形態では、(フランジ部25aを除く)第2ピストン25とピストンロッド26とが略同じ直径寸法に設定されて一体に形成されている。これに代えて、第2ピストン25とピストンロッド26とを別々の部材として形成し組み合わせて固定してもよい。出力部材24は、フランジ部25aを有する第2ピストン25とピストンロッド26とで構成される。
【0031】
上記第2作動室21は、フランジ部25aの軸方向の基端側に形成される基端側作動室43と、フランジ部25aの軸方向の先端側に形成される先端側作動室44とを有する。基端側作動室43と先端側作動室44とは上記連通路28によって連通される。
【0032】
上記の第2作動室21(基端側作動室43)に連通される圧油の給排路30が、第2ブロック1eの下壁に形成される。また、第1ブロック1dの上端部から突起部(作動室21の先端壁)31が出力部材24の径方向の内方に向けて突設される。その突起部31と、第2ピストン25の下端部に形成されるフランジ部25aとの間に第2バネ(リリースバネ)33が装着され、その第2バネ33がハウジング1に対して第2ピストン25を下方へ付勢する。このため、圧油が供給される第2作動室21の先端側作動室44内に第2バネ33が装着されるので、第2バネ33の腐食を防止できる。また、フランジ部25aの外周面は、第1ブロック1dの筒孔の内周面に上下方向へ摺動可能に案内される。なお、本実施形態において、第2バネ33は、圧縮コイルバネによって構成されている。
【0033】
前記ピストンロッド26の先端部がサポートロッド3の筒孔3aに挿入されている。そのピストンロッド26の先端側の外周壁に案内溝35が上下方向へ形成される。サポートロッド3の筒壁に形成される貫通孔にピン36が装着され、そのピン36が案内溝35に挿入される。その案内溝35の上端壁に上係合部35aが形成され、その下端壁に下係合部35bが形成される。また、上係合部35aに係合可能な上係止部36aがピン36の上側壁面に形成され、下係合部35bに係合可能な下係止部36bがピン36の下側壁面に形成される。そのピストンロッド26の先端面と押ボルト4の下端面との間に進出バネ(付勢機構)38が装着され、その進出バネ38がサポートロッド3とピストンロッド26とを離間させるように付勢する。本実施形態の進出バネ38は、圧縮コイルバネによって構成されている。
【0034】
上記の第1作動室13と第2作動室21とを連通させる連通路39が、第2ブロック1eの上端部に形成される溝と第1ブロック1dの下端部との間に設けられると共に、支持部材1cの周壁に貫通して設けられる。第1作動室13内であって第1ピストン6とハウジング1の第1シリンダ孔11との間に形成される環状隙間に絞り路Gが形成される。この場合、絞り路Gを流れる流体の流動抵抗が大きくなるので、第1作動室13の昇圧時間および降圧時間が長くなる。これにより、第1ピストン6の下降開始および上昇開始が遅くなる。以上により、第1ピストン6によるサポートロッド3のロック開始およびロック解除の開始を遅らせることができるので、ピストンロッド26が上昇および下降した後にサポートロッド3を確実にロックおよびロック解除させることできる。なお、本実施形態において、環状隙間全部によって絞り路Gを形成しているが、これに限られず、環状隙間の一部によって絞り路Gを設けてもよい。また、これに代えて、または、これに加えて、連通路39に絞り路を設けてもよい。
【0035】
上記のハウジング1の上壁1aに挿通孔が上下方向に形成され、その挿通孔にサポートロッド3が挿入されている。その挿通孔の上端部の周壁に封止部材としてのダストシール40が装着され、そのダストシール40のリップ部40aがサポートロッド3の外周面に密着している。このため、ハウジング1内とハウジング1の外部との間の異物(切子)やエアの出入りを遮断している。
【0036】
上記ワークサポートの作動を
図1から
図3を参照して説明する。
図1に示すリリース状態では、第1ピストン6が第1バネ14によって上昇されていることにより、コレット5が当該コレット5の弾性復元力によって拡径している。また、第2ピストン25及びピストンロッド26が第2バネ33によって下降されている。これにより、ピストンロッド26が進出バネ38に抗して上係合部35aと上係止部36aとを介してサポートロッド3を下限位置に下降させている。
【0037】
上記リリース状態で、ワークWを押ボルト4の上方位置に水平方向へ搬入する。
【0038】
そして、上記ワークサポートを
図1のリリース状態から
図3のロック状態に駆動させるときに、圧油を給排路30から第2作動室21の基端側作動室43へ供給する。すると、まず、第2作動室21の圧油が第2ピストン25およびピストンロッド26を第2バネ33に抗して上昇させていく。次いで、ピストンロッド26が進出バネ38と押ボルト4とを介してサポートロッド3を上昇させていく。このとき、ピストンロッド26がサポートロッド3の筒孔3a内から押し出したエアが、サポートロッド3の下端面と支持部材1cの上端面との間にサポートロッド3の上昇によって形成される収容室45に流れ込む。その後、
図2に示すように、押ボルト4の上端面がワークWに当接する。
【0039】
次いで、第2ピストン25が上限位置へ移動する。第2ピストン25が上限位置へ移動する過程で、第2作動室21の圧油が連通路39を通って第1作動室13へ供給される。そして、その第1作動室13の圧力が所定の設定圧力(第1バネ14の上方への付勢力に相当する押圧力)を越えると、その第1作動室13から第1ピストン6へ作用する油圧力の上下方向の差力が第1ピストン6に作用する。その下向きの差力(上下方向の差力)が第1ピストン6を下方へ移動させると、その第1ピストン6のテーパ内周面6aがボール8を下方へ転動させながらコレット5のテーパ外周面5aにスムーズに係合していき、そのコレット5を縮径させる。これにより、その縮径されたコレット5がサポートロッド3の狭持固定領域Rを当該サポートロッド3の軸心に向けて押圧し、そのサポートロッド3を
図3に示す高さ位置で狭持固定(把持)する。このロック状態でワークWの上面を機械加工し、その加工時の押し下げ力をサポートロッド3のサポート力によって下方から強力に受け止める。
【0040】
上記の機械加工が終了した後、第2作動室21の圧油を排出する。すると、まず、第2ピストン25およびピストンロッド26が下降していく。その後、サポートロッド3のロック状態が解除される。より詳しくいえば、次の通りである。
【0041】
上記の圧油の排出により、まず、第2バネ33によって第2ピストン25とピストンロッド26とが下降していく。そして、第1作動室13の圧力が所定の設定圧力を下回ると、第1ピストン6が第1バネ14によって上側へ押圧され、第1ピストン6のテーパ内周面6aがボール8を転動させながらスムーズに上方へ移動させる。これにより、コレット5が自己の弾性復元力によって拡径して、サポートロッド3のロック状態が解除される。このため、第2ピストン25およびピストンロッド26がさらに下降して、そのピストンロッド26が上係合部35aと上係止部36aとを介してサポートロッド3を
図1の下限位置に復帰させる。
【0042】
上記の第1実施形態は次の作用効果を奏する。
【0043】
上記の実施形態に示すワークサポートでは、第2バネ33が、圧油が給排される第2作動室21内に装着されている。このため、第2ピストンの上側(先端側)であってエアで満たされた空間にリリースバネを装着する上記従来のワークサポートに比べて、本実施形態のワークサポートでは、第2ピストン25の移動によってハウジング1内にエアを給排する給排量が従来技術のバネ室の容量分だけ低減させることができる。従って、ハウジング1内のエアの圧力が過剰に上昇・低下するのを防止でき、そのハウジング1内のエアの圧力を所定圧力に保つのが容易である。よって、本発明のワークサポートでは、ハウジング1の外部との間でエアをハウジング1内に給排する呼吸孔をハウジング1の下端部に設ける必要がなく、また、その呼吸孔につながる給排路をテーブルT内に設ける必要がない。従って、本発明では、ワークサポートを簡素な構造で小さく作ることができる。
【0044】
図4は、第2実施形態を示している。この第2実施形態では、上記の第1実施形態と同じ構成の部材には原則として同一の参照符号を付けてあり、その第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0045】
図4に示す第2実施形態が上記の第1実施形態と異なる点は次の通りである。
【0046】
上記の
図1に示す第1実施形態のワークサポートでは、第1ピストン6の下側にバネ室15が形成され、そのバネ室15内は、エアで満たされている。そのバネ室15内に第1バネ14が装着される。これに対して、第2実施形態のワークサポートでは、第1バネ14が、圧油が供給される第1作動室13内であって第1ピストン6の下側(第1ピストン6の基端側)に装着される。このため、第1作動室13の油によって第1バネ14が腐食するのを防止できる。
【0047】
本実施形態のワークサポートでは、押ボルト4を省略している。この場合、サポートロッド3の上端面に、ワークとの当接部が形成される。
【0048】
また、ピストンロッド26とサポートロッド3の筒孔3aとの間に付勢機構としてのエアバネ41が設けられ、そのエアバネ41は、次のように構成される。ピストンロッド26の先端側外周壁に装着溝が周方向に形成され、その装着溝に封止部材42が装着される。そのサポート3の筒孔3aにピストンロッド3が封止部材42を介して挿入されることにより、その筒孔3a内の空間が密閉される。このため、サポートロッド3の筒孔3aにピストンロッド3を挿入していくと、筒孔3a内のエアが圧縮されて、筒孔3a内の圧力が上昇する。その上昇圧力がサポートロッド3とピストンロッド26とを離間させる付勢力として当該サポートロッド3とピストンロッド26とに作用する。
【0049】
また、上記のコレット5とハウジング1の上壁1aとの間に設けられる弾性部材が、ゴム製の環状部材9Aによって構成される。
【0050】
上記第1実施形態において、第1バネ14は、第1ピストン6の下部に装着されるバネ受け19と、ハウジング1の支持部材1cとの間に形成されるバネ室15に装着される。そのバネ室15は、エアで満たされた空間となっている。これに対して、第2実施形態の第1バネ14は、第1ピストン6と支持部材1との間に形成される空間であって、第1作動室13内に装着される。圧油が供給される第1作動室13に第1バネ14が装着されるので、第1バネ14が腐食するのを第1作動室13の油によって防止できる。
【0051】
また、エアで満たされた空間(第1バネ室)に第1バネを装着する上記従来のワークサポートに比べて、本実施形態のワークサポートでは、出力部材24の軸方向への移動によって出力部材24がハウジング1内にエアを給排する給排量を上記第1バネ室の容量分さらに低減できる。従って、ハウジング1内のエアの圧力が過剰に上昇・低下するのをより防止でき、そのハウジング1内のエアの圧力を所定圧力に保つのがより容易となる。
【0052】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0053】
前記の多数のボール8に代えて、低摩擦機能を備えた円柱部材によって構成してもよい。
【0054】
本発明は、例示した構造のワークサポートに適用することに代えて、別の構造のワークサポートに適用可能であり、さらには、ワークサポートとは異なる用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:ハウジング,3:サポートロッド,5:コレット,6:第1ピストン(ピストン),13:第1作動室,14:第1バネ,21:第2作動室(作動室),24:出力部材,25a:フランジ部,28:連通路,28a:第1連通路,28b:第2連通路,33:第2バネ(リリースバネ),38:進出バネ(付勢機構),41:エアバネ(付勢機構),43:基端側作動室,44:先端側作動室.