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特許7477183新規な等温単一反応用プローブセット及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】新規な等温単一反応用プローブセット及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20240423BHJP
   C12Q 1/6862 20180101ALI20240423BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6862 Z
C12N15/09 Z ZNA
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021562969
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2020005331
(87)【国際公開番号】W WO2020218831
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0046713
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520077610
【氏名又は名称】ポステック・リサーチ・アンド・ビジネス・ディベロップメント・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】POSTECH RESEARCH AND BUSINESSDEVELOPMENT FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ギョヨル
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チャンハ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ソンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ギヨン
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06379899(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0196330(US,A1)
【文献】Chem. Commun.,2018年,54,p. 3010-3013及びSupporting Information
【文献】CLIN. CHEM.,1993年,39/9,p. 1934-1938
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プローブ及び第2プローブを含む、ターゲット核酸配列検出用プローブセットであって、
前記第1プローブは、下記一般式(I)の構造を有するプロモータープローブ(promoter probe、PP)であり;
3’-X-Y-5’ (I)
一般式(I)において、
前記Xは、RNA重合酵素が認識できるプロモーター配列を含むステム-ループ構造(Stem-loop structure)部位であり;前記Yは、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するUHS(Upstream Hybridization Sequence)部位であり;前記ターゲット核酸配列は、DNAまたはRNAであり;前記X及びYは、デオキシリボヌクレオチドであり;
前記第2プローブは、下記一般式(II)の構造を有するレポータープローブ(reporter probe、RP)であり;
3’-Y’-Z-5’ (II)
一般式(II)において、
前記Y’は、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するDHS(Downstream Hybridization Sequence)部位であり;前記Zは、検出可能なシグナルを発生させる一つの標識(label)または二つ以上の標識を含む相互作用的標識システムを有するアプタマー配列部位であり;前記ターゲット核酸配列は、DNAまたはRNAであり;前記Y’及びZは、デオキシリボヌクレオチドであり;
前記第1プローブ及び第2プローブは、ターゲット核酸配列と混成化された後、ライゲーション(ligation)されて、前記第1プローブ及び第
2プローブからなるライゲーション産物を形成し、前記ライゲーション産物の転写はRNA重合酵素によって開始され、アプタマーを含む転写産物を形成し、転写産物内のアプタマーのシグナル生成を検出し;
ここで、ライゲーション、転写、及び検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)なしで、単一の温度条件下で1つの容器内で実行され;かつ
ライゲーション、転写、及び検出は、Tris-HCl、MgCl、NTP、NaCl、及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むバッファーで実行されることを特徴とする、
ターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項2】
前記ライゲーションは、SplintRリガーゼ、バクテリオファージT4リガーゼ、E.coliリガーゼ、Afuリガーゼ、Taqリガーゼ、Tflリガーゼ、Mthリガーゼ、Tthリガーゼ、Tth HB8リガーゼ、Thermus species AK16Dリガーゼ、Apeリガーゼ、LigTkリガーゼ、Aaeリガーゼ、Rmリガーゼ、Pfuリガーゼ、及びリボザイム(ribozyme)からなる群から選択された1種のライゲーション作用剤により実施されることを特徴とする、
請求項1に記載のターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項3】
前記RNA重合酵素は、バクテリオファージT7 RNA重合酵素、バクテリオファージT3重合酵素、バクテリオファージRNA重合酵素、バクテリオファージΦII重合酵素、サルモネラバクテリオファージsp6重合酵素、シュードモナスバクテリオファージgh-1重合酵素、大腸菌(E.coli)RNA重合酵素ホロ酵素(holoenzyme)、大腸菌(E.coli)RNA重合酵素コア酵素、ヒトRNA重合酵素I、ヒトRNA重合酵素II、ヒトRNA重合酵素III、及びヒトミトコンドリアRNA重合酵素からなる群から選択されることを特徴とする、
請求項1に記載のターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項4】
前記標識は、化学的標識、酵素標識、放射能標識、蛍光標識、発光標識、化学発光標識及び金属標識からなる群から選択されることを特徴とする、
請求項1に記載のターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項5】
単一の温度条件は、15℃~50℃の範囲から選択される温度であることを特徴とする、
請求項1に記載のターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項6】
バッファーは 50 mM Tris-HCl、10 mM MgCl、 1 mM NTP、10.5 mM NaCl、及び400 ng の ET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むことを特徴とする、
請求項1に記載のターゲット核酸配列検出用プローブセット。
【請求項7】
請求項1に記載の第1プローブ及び第2プローブを含むターゲット核酸配列検出用プローブセット、ライゲーション作用剤、RNA重合酵素及びTris-HCl、MgCl、NTP、NaCl、及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むバッファーを含む、
ターゲット核酸配列検出用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、2種以上のターゲット核酸配列検出用プローブセットを含むことを特徴とする、
請求項7に記載のターゲット核酸配列検出用組成物。
【請求項9】
前記2種以上のターゲット核酸配列検出用プローブセットは、それぞれ互いに異なる相互作用的標識システムを含み;前記2種以上のプローブセットそれぞれは、それぞれ互いに異なるターゲット核酸配列に結合して;これによって互いに異なるターゲット核酸配列の多重検出が可能であることを特徴とする、
請求項8に記載のターゲット核酸配列検出用組成物。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載のターゲット核酸配列検出用組成物を含む、ターゲット核酸配列検出用キット。
【請求項11】
次のステップを含む、ターゲット核酸配列を検出する方法:
(a)請求項1に記載の第1プローブ及び第2プローブを含むターゲット核酸配列検出用プローブセットで、サンプルを処理してターゲット核酸配列と混成化させるステップ;
(b)(a)ステップの混成化産物をライゲーション作用剤で処理して前記プローブセットの第1プローブ及び第2プローブをライゲーションさせ、ライゲーション産物をRNA重合酵素で処理して転写を開始させるステップ;及び
(c)(b)ステップの転写産物をアプタマー-反応物質で処理して転写産物内のアプタマーのシグナル生成を検出するステップであって、前記シグナル生成は、サンプル中のターゲット核酸配列の存在を示すステップ;
ここで、ライゲーション、転写、及び検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)なしで、単一の温度条件下で1つの容器内で実行され;かつ
ライゲーション、転写、及び検出は、Tris-HCl、MgCl、NTP、NaCl、及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むバッファーで実行されることを特徴とする、
ターゲット核酸配列を検出する方法。
【請求項12】
単一の温度条件は、15℃~50℃の範囲から選択される温度であることを特徴とする、
請求項11に記載のターゲット核酸配列を検出する方法。
【請求項13】
バッファーは 50 mM Tris-HCl、10 mM MgCl、 1 mM NTP、10.5 mM NaCl、及び400 ng の ET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むことを特徴とする、
請求項11に記載のターゲット核酸配列を検出する方法。
【請求項14】
次のステップを含む、病原性微生物の検出方法であって:
(a)サンプルを、請求項1に記載の第1プローブ及び第2プローブを含むターゲット核酸配列検出用プローブセットで処理して、病原性微生物のターゲット核酸配列と混成化させるステップ;
(b)(a)ステップの混成化産物をライゲーション作用剤で処理して前記プローブセットの第1プローブ及び第2プローブをライゲーションさせ、ライゲーション産物をRNA重合酵素で処理して転写を開始させるステップ;及び
(c)(b)ステップの転写産物をアプタマー-反応物質で処理して転写産物内のアプタマーのシグナル生成を検出するステップであって、前記シグナル生成は、サンプル中のターゲット核酸配列の存在を示すステップ;
ここで、ライゲーション、転写、及び検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)なしで、単一の温度条件下で1つの容器内で実行され;
ライゲーション、転写、及び検出は、Tris-HCl、MgCl、NTP、NaCl、及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むバッファーで実行され;かつ
病原性微生物は、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus Aureus)、ビブリオバルニフィカス(Vibrio vulnificus)、大腸菌(E.coli)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)、インフルエンザAウイルス(Influenza A virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、呼吸器細胞融合ウイルス(RSV)、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、デング熱ウイルス、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus(HBV))、黄熱病ウイルス、狂犬病ウイルス、プラスモジウム、サイトメガロウイルス(CMV)、ミコバクテリウムチュバクローシス、クラミジアトラコマチス、ロタウイルス、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、クリミアコンゴ出血熱ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever virus)、エボラウイルス、ジカウイルス、ヘニパウイルス、ノロウイルス、ラッサウイルス、ライノウイルス、フラビウイルス、リフトバレー熱ウイルス、手足口病ウイルス、サルモネラ(Salmonella sp.)、シゲラ(Shigella sp.)、エンテロバクテリアセアエ(Enterobacteriaceae sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、モラクセラ(Moraxella sp.)、ヘリコバクター(Helicobacter sp.)及びステノトロホモナス(Stenotrophomonas sp.)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、病原性微生物の検出方法。
【請求項15】
単一の温度条件は、15℃~50℃の範囲から選択される温度であることを特徴とする、請求項14に記載の病原性微生物の検出方法。
【請求項16】
バッファーは 50 mM Tris-HCl、10 mM MgCl、 1 mM NTP、10.5 mM NaCl、及び400 ng の ET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)を含むことを特徴とする、請求項14に記載の病原性微生物の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な等温単一反応用プローブセット及びその用途に関する。具体的に、等温条件下、単一反応組成物を利用して核酸配列-基盤に現場適用可能な形態の易しく正確で速やかに現場で分子診断する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
特定の核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質を検出する方法は、科学研究の分野で基本的に重要な技術である。特定の核酸またはタンパク質を検出し、同定できるようになることで、研究者らは、どのような遺伝的、生物学的標識がヒトの健康状態を示す指標になるかを判定できるようになった。
このような核酸またはタンパク質を検出する方法を利用すると、試料に存在するターゲット遺伝子、例えば、病原体遺伝子及びその変形、または特定の遺伝子の発現等を見出すことができる。
しかし、現代に所得の水準が高くなるにつれ、健康及び衛生に対して高い関心を示すのに対し、直接目に見えない微生物を検出し、それを定量的に評価することは容易でない状況である。
ヒトが使用するくし、携帯電話、机、衣服等のような日常的な物やトイレ、寝室等の空間、その上に一般的な空気中には多様な微生物が生息しており、このような微生物の中には日和見感染菌及び病原性細菌等が含まれている可能性がある。
微生物の量を測定する伝統的な方法としては、標準平板法であって、微生物を培養できる培地に環境から採取した試料をステップ希釈して塗抹し、2~3日後に培地から生成されるコロニーの数を計算してその量を推定することである。このような伝統的な方法は、専門的な実験道具及び熟練した実験者が必要であるだけではなく、時間も非常に長くかかる短所を持っており、普通の人が速やかに生存微生物を測定するには困難なところがある。
伝統的な方法の問題点を解決するために、近年、様々な方法が開発されている。細胞内に常時存在する多様な構成物質の量を測定することで間接的に微生物の量を測定することである。
代表的な方法として、ATPの量を基盤に測定する方法がある。ATPは、細胞内で主な生体エネルギー源として使用されており、全ての生物に共通して存在する構成物であり、試料で細胞量を測定するに有用な物質である。このような長所によって、ATP測定方法は、微生物定量測定に現在広く使用されており、それを測定するために、一般にルシフェラーゼ(luciferase)酵素を使用して発光反応を誘導し、光の強度を通して定量をするようになる。このとき、基質としては、ルシフェリン(luciferin)を使用する。
しかし、前記方法は、反応試料内のATPが早く枯渇して信号が長く持続できず、添加する酵素及び基質の生産単価が高い短所が存在する。
また、測定するための構成物が酵素である点によって貯蔵性に限界点を保有しており、問題になっている。このようなATP測定を通した微生物細胞の定量方法には、また他の問題点が存在する。細胞が死滅してもATPの機能は維持され、死滅したか、または生存力が非常に低い微生物もまた測定される可能性が高いということである。
病原性微生物を診断するまた他の一般的な方法は、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)またはIRMA(Immunoradiometric assay)等のような抗体基盤の技術である。しかし、この方法もまた特定の抗原に反応する抗体を生成するのに2~3ヶ月が必要となるので、変異が頻繁で短時間で拡散されるので、伝染性疾病の診断方法として適していない。
従って、伝染性疾病を診断するためには、抗体基盤の診断技術の代わりに極微量の感染物質の情報を含んでいるDNA、RNAのような核酸を検査して判断できる分子水準の分子診断技術が適している。
このような分子診断技術の中にリガーゼ(ligase)を利用する方法がある。これは、特定のDNA断片を試料に入れると、細胞内に存在するリガーゼがこれを認知し、重合反応を通して二つの断片を繋ぐようになる。このように繋いだ断片に特定のプライマーを利用してreal-time PCR分析を遂行する場合、微生物の量も評価できるものと知られている。
しかし、リガーゼとDNA鎖との反応を通して作られた新たな核酸分子を確認するためには、RT-PCR及びPCR、ゲル電気泳動過程が要求されるため、高価な装備及び熟練した実験者が必要であり、分析時間が非常に長く必要となる。また、ルシフェラーゼ測定法のようにATP分子が死んだ細胞上にも存在するため、生存微生物だけの測定が不可能であるという短所がある。
即ち、このような核酸を用いた分子診断技術は、既存の診断方法より感度に優れるので、疾患の予防を目的として特定の遺伝子を検出するか感染疾患を予防するための選別検査、早期確認及び早い対応が可能であるが、ほとんどの核酸を用いた分子診断技術は、温度循環型核酸増幅装置(thermocycler)の装備とその機械を扱うことのできる専門人材が必要であるという短所がある。
従って、上述した従来の抗体基盤の診断技術が有する問題点である特定の抗原に結合して抗体が生成されるのに必要となる時間的な消耗を減らし、高価な装備及び熟練した人材の確保なしに非常に効果的に正確に短時間内に目的のDNA/RNA配列の検出および/または診断できる方法の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況下で、本発明者らは、従来の技術の問題点を克服しながら単一または多数のターゲット核酸配列の検出をより簡便かつ偽陽性及び偽陰性結果なしに検出できる技術を開発しようと鋭意研究努力した。その結果、本発明者らは、特定のプロモーター配列;及びターゲット遺伝子と混成化する配列で構成されるプロモータープローブ(PP、promoter probe)である第1DNAプローブ、及びターゲット遺伝子と混成化する配列;及び蛍光-標識RNAアプタマーを暗号化する配列で構成されるレポータープローブ(RP、reporter probe)である第2DNAプローブを設計した。また、ターゲット遺伝子を副木(splint)として使用した前記DNAプローブのライゲーション反応、前記ライゲーションされた一本鎖DNAからRNA重合酵素による転写過程及び前記転写過程で生成された転写産物内のアプタマー構造が特定の化学分子と結合する蛍光反応の3ステップを等温条件下で様々なステップ、特に、増幅ステップなしに、単一反応で遂行され得るように一元化し、これによって容易かつ簡便にターゲット遺伝子を検出するだけではなく、実際に高病原性微生物を単独または多重検出して、速やかな対応が必要な高病原性疾患を診断するプラットホームになり得ることを糾明することで本発明を完成した。
従って、本発明の一目的は、ターゲット核酸配列検出用等温単一反応(isothermal one-pot reaction)プローブセットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記プローブセットを含むターゲット核酸配列検出用組成物を提供することにある。
また、本発明のまた他の目的は、ターゲット核酸配列検出用キットを提供することにある。
また、本発明のまた他の目的は、別途の増幅反応なしに、等温単一反応条件下でターゲット核酸配列を検出する方法を提供することにある。
また、本発明のまた他の目的は、別途の増幅反応なしに、等温単一反応条件下での現場用分子診断方法を提供することにある。
本発明の他の目的及び利点は、下記の添付の請求の範囲及び図面からより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において使用した用語は、単に説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図で解釈されてはならない。単数の表現は、文脈上、明らかに異に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
異に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用される全ての用語は、実施例の属する技術の分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願において明らかに定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味に解釈されない。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一様態によれば、本発明は、第1プローブ及び第2プローブで構成される、ターゲット核酸配列検出用等温単一反応(isothermal one-pot reaction)プローブセットを提供し、
前記第1プローブは、下記一般式Iの構造を有するプロモータープローブ(promoter probe、PP)であり;
3’-X-Y-5’ (I)
前記一般式(I)において、
前記Xは、RNA重合酵素が認識できるプロモーター配列を含むステム-ループ構造(Stem-loop structure)部位であり;前記Yは、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するUHS(Upstream Hybridization Sequence)部位であり;前記ターゲット核酸配列は、DNAまたはRNAであり;前記X及びYは、デオキシリボヌクレオチドであり;
前記第2プローブは、下記一般式IIの構造を有するレポータープローブ(reporter probe、RP)であり;
3’-Y’-Z-5’ (II)
前記一般式(II)において、
前記Y’は、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するDHS(Downstream Hybridization Sequence)部位であり;前記Zは、検出可能なシグナルを発生させる一つの標識(label)または多数の標識を含む相互作用的標識システムを有するアプタマー配列部位であり;前記ターゲット核酸配列は、DNAまたはRNAであり;前記Y’及びZは、デオキシリボヌクレオチドであり;
前記第1プローブ及び第2プローブは、ターゲット核酸配列と混成化された後、ライゲーション(ligation)され;前記ライゲーション産物は、RNA重合酵素により転写が開始されてシグナルを生成する。
本発明の前記プローブセットを利用する本発明の技術は、「等温単一反応プラットホーム」または「ライゲーション反応を利用した分子診断プラットホーム」等と呼称される。
本発明のプローブセットの第1プローブは、それぞれ一つのオリゴヌクレオチド分子の中に2個の固有の他の部位(portion)を含む構造を有する:
RNA重合酵素が認識できるプロモーター配列を含むステム-ループ構造(Stem-loop structure)部位であるX;及びターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するUHS(Upstream Hybridization Sequence)部位であるY。
また、本発明のプローブセットの第2プローブもそれぞれ一つのオリゴヌクレオチド分子の中に2個の固有の他の部位を含む構造を有する:
ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を有するDHS(Downstream Hybridization Sequence)部位であるY’;検出可能なシグナルを発生させる一つの標識(label)または多数の標識を含む相互作用的標識システムを有するアプタマー配列部位であるZ。
このような構造は、本発明のプローブセットが一元化されたステップで等温単一反応条件下で短時間で高い検出効果を示すプローブになるようにする。
より具体的に、本発明のプローブデザインは、二つの一本鎖DNAプローブがターゲット認識配列が露出されるように設計されて等温(例えば、酵素が作用できる温度)でターゲットRNA/DNAとプローブセットの混成化を可能とする。混成化配列は、ターゲットRNA/DNAに対する混成化を最大化しながら任意の他の構造形成を最小化するようにデザインする。プローブとターゲットRNA/DNAとの間の効率的な混成化過程は、等温反応の間、高い敏感度を有するようにする。
第1プローブであるプロモータープローブは、幹-ループ構造(Stem-loop structure)を形成できるようにデザインされ、幹部分は、二本鎖のRNA重合酵素プロモーター配列を形成してRNA重合酵素を利用した転写過程が開始されるようにする。二本鎖のRNA重合酵素プロモーター部分が物理的にループ配列により連結されているため、二本鎖プロモーターが機能できる形態に形成される確率がループ配列により連結されていない場合より高い。従って、プロモータープローブでヘアピン構造が形成された自己組み立てプロモーター配列は、混成化過程及び後続転写過程を効果的に促進できる。
第2プローブであるレポータープローブは、レポーターとしてアプタマー配列を含むようにデザインされ、特定の物質に反応してシグナルを生成するアプタマーにより最終生産物を確認することができる。
本発明において、レポーターとして使用される「アプタマー(Aptamer)」は、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合できる特徴を有する一本鎖核酸(DNA、RNAまたは変形核酸)である。
SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)というアプタマー発掘技術が開発された以後、低分子有機物、ペプチド、膜タンパク質まで多様な標的分子に結合できるアプタマーが引き続き発掘されてきた。アプタマーは、固有の高い親和性(普通pM水準)と特異性で標的分子に結合できるという特性のため、よく単一抗体と比較され、特に「化学抗体」というほど代替抗体としての高い可能性がある。また、結合する物質によって吸収する波長帯と放出される波長帯が異なり、蛍光を発現する等の方法でアプタマーと特定の化学分子の結合を確認することができる。
本発明のアプタマー及び前記アプタマーと相互作用する反応物質は、目的効果として検出可能なシグナルを発生できる限り、いかなる種類のアプタマー及び反応物質を利用してよい。
混成化後、ターゲット核酸配列に混成化された第1プローブ及び第2プローブがライゲーションされる。
即ち、本発明の第1プローブ及び第2プローブがターゲット核酸配列と混成化された以後、ライゲーション作用剤を利用して二つのプローブの間に形成されたニック(nick)をライゲーションさせる。
本発明の好ましい具現例によれば、第1プローブ及び第2プローブが前記ターゲット核酸配列とそれぞれ混成化する場合、第1プローブ及び第2プローブは、互いに直に近接した(immediately adjacent)位置に位置する。
近接した位置に位置することが二つのプローブの間のライゲーション反応のために必要である。本明細書において、第1プローブ及び第2プローブの混成化位置を言及しながら使用される用語「近接した(adjacent)」は、前記二つのプローブの末端が互いに連結され得るように前記一つのプローブの3’-末端及び残りの一つのプローブの5’-末端が互いに十分に隣接していることを意味する。
酵素性ライゲーションは、第1プローブ及び第2プローブを共有結合で連結させる好ましい方法であるので、用語「ライゲーション」は、本明細書全体的に利用される。
しかし、用語「ライゲーション」は、一般的な用語であり、二つのプローブを共有結合で連結させるいかなる方法も含むというものと理解される。
本発明のライゲーション反応は、非常に多様なライゲーション作用剤を利用して実施され得、酵素性ライゲーション作用剤及び非-酵素性ライゲーション作用剤(例えば、化学的作用剤及びフォトライゲーション作用剤)を含む。
化学的ライゲーション作用剤は、カルボジイミド、BrCN(cyanogen bromide)、N-シアノイミダゾール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール/カルボジイミド/シスタミン、DTT(dithiothreitol)及びウルトラバイオレットライトのような活性剤、凝縮剤及び還元剤を含むが、これに限定されるものではない。
また、オートライゲーション、即ち、ライゲーション作用剤の不存在下での自発的ライゲーションも本発明の教示範囲に含まれる。化学的ライゲーション方法の詳細なプロトコル及び適切な作用基の詳細な説明は、Xu等、Nucl.Acids Res.,27:875-81(1999);Gryaznov and Letsinger,Nucl.Acids Res.21:1403-08(1993);Gryaznov等、Nucleic Acid Res.22:2366-69(1994);KanayaとYanagawa、Biochemistry 25:7423-30(1986);LuebkeとDervan、Nucl.Acids Res.20:3005-09(1992);Sieversとvon Kiedrowski、Nature 369:221-24(1994);LiuとTaylor、Nucl.Acids Res.26:3300-04(1999);WangとKool、Nucl.Acids Res.22:2326-33(1994)から見つけることができる。
ライゲーション作用剤として適した波長の光を利用したフォトライゲーションもまた本発明の教示範囲に含まれる。本発明の具現例によれば、フォトライゲーションは、ヌクレオチドアナログを含むプローブを含み、s4T(4-thiothymidine)、5-ビニルウラシル及びその類似物またはこれらの組み合わせ物を含むが、これに限定されるものではない。
本発明の好ましい具現例によれば、ライゲーション反応は、酵素性ライゲーション作用剤によるものであり、前記ライゲーション作用剤は、SplintRリガーゼ、バクテリオファージT4リガーゼ、E.coliリガーゼ、Afuリガーゼ、Taqリガーゼ、Tflリガーゼ、Mthリガーゼ、Tthリガーゼ、Tth HB8リガーゼ、Thermus species AK16Dリガーゼ、Apeリガーゼ、LigTkリガーゼ、Aaeリガーゼ、Rmリガーゼ、Pfuリガーゼ、リボザイム(ribozyme)及びその変異体からなる群から選択された1種を利用して実施される。
ライゲーションにより生成されたヌクレオチド間連結(internucleotide linkage)は、ホスホジエステル結合及び他の連結を含む。例えば、リガーゼを利用したライゲーションは、一般的にホスホジエステル結合を生成する。
ライゲーションのための非-酵素性方法は、他のヌクレオチド間連結を形成することができる。他のヌクレオチド間連結は、α-ハロアシル基及びホスホチオエート基の間に形成されるチオホスホリルアセチルアミノ基、ホスホチオエート基及びトシレート基またはアイオダイド基の間に形成される5’-ホスホロチオエステル、及びピロホスフェート連結のような適した反応基の間の共有結合の形成を含むが、これに限定されるものではない。
ライゲーション反応後、その結果物であるライゲーション産物は、アプタマー配列を含み、ターゲットRNA/DNAを増幅させるための鋳型として一本鎖DNAとなる。
次いで、RNA重合酵素により転写過程が開始されると、前記アプタマー配列を含有するターゲットRNA/DNAを増幅させるための鋳型である一本鎖DNAからターゲットRNA/DNAが延び、特定の化学分子と結合することで蛍光を示すように導入されたアプタマーにより速やかで簡単にシグナルが生成される。
また、従来の蛍光タンパク質を利用する蛍光シグナルと比較したとき、RNAアプタマーをレポーターとして使用した場合、生成されたシグナルを観察するのにかかる時間が短縮される。
仮に、第1プローブ及び第2プローブが前記のように実施されなければ、最終的に第1プローブ及び第2プローブの転写結果物上の標識から出るシグナルが生成されないので、ターゲット核酸配列検出は達成されない。
本発明の前記RNA重合酵素は、目的効果として転写を開始できるようにプロモーター部位を認識できる限り、いかなる種類のRNA重合酵素も利用できる。
好ましくは、前記RNA重合酵素は、バクテリオファージT7 RNA重合酵素、バクテリオファージT3重合酵素、バクテリオファージRNA重合酵素、バクテリオファージΦII重合酵素、サルモネラバクテリオファージsp6重合酵素、シュードモナスバクテリオファージgh-1重合酵素、大腸菌(E.coli)RNA重合酵素ホロ酵素(holoenzyme)、大腸菌(E.coli)RNA重合酵素コア酵素、ヒトRNA重合酵素I、ヒトRNA重合酵素II、ヒトRNA重合酵素III、ヒトミトコンドリアRNA重合酵素及びその変異体からなる群から選択され得るが、これに限定されない。
本発明の一実施例においては、バクテリオファージT7 RNA重合酵素を利用した。
同様に、RNA重合酵素により転写が開始され得る限り、RNA重合酵素が認識する本発明の第1プローブ内のプロモーター部位は、当業界に公知になった任意のプロモーター配列を利用できる。
本発明の等温単一反応の最適化のために、ライゲーション作用剤及び重合酵素は適切に調節され得、好ましくは、単一反応溶液内1:1~1:5unit、より好ましくは1:4unit、最も好ましくは1:1unitで含まれ得る。
本発明の好ましい具現例によれば、前記標識は、化学的標識、酵素標識、放射能標識、蛍光標識、発光標識、化学発光標識及び金属標識からなる群から選択され得る。
本発明の前記等温単一反応は、別途の増幅反応なしに、15℃~50℃の範囲の温度のいずれか一つの指定された温度に一元化して同時遂行される。
前記15℃~50℃の範囲の温度は、当業界に酵素が作用するものと知られた温度であって、本発明の目的効果を獲得できる限り、これに制限されない。
本発明の一実施例においては、好ましくは、前記指定された温度は、37℃である。
また、前記等温単一反応は、Tris-HCl、MgCl、NTPs、NaCl及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)が含まれた単一反応溶液に一元化されて同時遂行される。
本発明において、前記単一反応溶液は、好ましくは、1~100mM Tris-HCl;1~50mM MgCl;0.1~10mM NTPs及び1~50mM NaCl;及び1~800ng ET-SSBを含み、より好ましくは、10~60mM Tris-HCl;1~30mM MgCl;0.5~5mM NTPs;1~30mM NaCl;及び100~600ng ET-SSBを含み、最も好ましくは、50mM Tris-HCl;10mM MgCl;1mM NTPs;10.5mM NaCl;及び400ng ET-SSBを含む。
本発明の他の様態によれば、本発明は、次のステップを含む、別途の増幅反応なしに、等温単一反応条件下でターゲット核酸配列を検出する方法を提供する:
(a)サンプルに、上述した第1プローブ及び第2プローブで構成されるターゲット核酸配列検出用等温単一反応(isothermal one-pot reaction)プローブセットを処理してターゲット核酸配列と混成化させるステップ;
(b)前記(a)ステップの混成化産物にライゲーション作用剤を処理して前記プローブセットの第1プローブ及び第2プローブをライゲーションさせ、前記ライゲーション産物に重合酵素を処理して転写を開始させるステップ;及び
(c)前記(b)ステップの転写産物にアプタマー-反応物質を処理して転写産物内のアプタマーのシグナル生成を検出するステップであって、前記シグナル生成は、サンプル中のターゲット核酸配列の存在を示す。
本発明の前記等温単一反応は、別途の増幅反応なしに、15℃~50℃の範囲の温度のいずれか一つの指定された温度に一元化して同時遂行され、好ましくは、前記指定された温度は、37℃である。
前記等温単一反応は、Tris-HCl、MgCl、NTPs、NaCl及びET-SSB(Extreme Thermostable Single-Stranded DNA Binding Protein)が含まれた単一反応溶液に一元化されて同時遂行される。
また、本発明は、さらなる別個の増幅過程(例えば、PCR)が要求されず、単一等温反応が起こる過程で増幅過程が自動的に実施されることを特徴とする。
このような増幅過程が含まれている単一等温反応が可能である理由は、(i)ヘアピン構造を持つ二本鎖のプロモーター配列を含む第1プローブとライゲーション反応が起こってはじめて下流に存在するアプタマーが形成されるように設計した第2プローブのデザインのためであり;(ii)ライゲーションされた産物が転写開始を通した転写されたとき、ターゲット配列(即ち、副木)のように使用され得ることを利用して別途の増幅過程がなくても反応内で自然的に増幅過程が起こるためである。
即ち、第1プローブと第2プローブのライゲーション反応が起こったライゲーション産物がヘアピン構造を形成する第1プローブのRNA重合酵素プロモーター配列から転写開始が起こって転写体が作られると、前記転写体は、ターゲットRNA配列と同じ配列を含んでいるので、ターゲットRNAのように使用され得る。また、転写されたライゲーション産物は、ターゲット核酸配列のような配列を含んでいるので、ターゲット核酸の中でもターゲットRNAとして作用され得るものである。
従って、本発明のプローブセットを利用するプラットホームは、ライゲーション、転写反応、蛍光反応まで同時に起こるように設計されたものであり、併せてライゲーションされた産物の転写反応が起こった転写体が副木RNAとして使用されて増幅過程が含まれている単一等温反応であるものである。
従って、本発明の(a)~(c)ステップは、一つの容器、例えば、チューブ内で同時に遂行可能である。
本発明において、DNAプローブの配列は、目的効果を達成する限り、本発明の実施例に記載の配列に制限されず、全てのターゲット遺伝子配列に適用が可能である。また、最終信号確認に使用されるアプタマーは、マラカイトグリーンアプタマーに制限せず、いかなる種類のRNA基盤の蛍光アプタマーも使用可能である。
本発明の一実施例によれば、1)作製した二つのDNAプローブとターゲットRNA、SplintRリガーゼを使用したライゲーションステップ、2)前記ライゲーションされたプローブアセンブリをT7 RNA重合酵素を通した転写産物を作り出すステップ、3)前記生成された転写産物の下流に存在するアプタマーが特定の化学分子に結合して蛍光の強さで検出有無を確認するステップを含む特定の疾病の感染有無を見出すことができる分子診断法を提供する。これに対する図式を図6に示した。
本発明の他の様態によれば、本発明は、上述した第1プローブ及び第2プローブで構成されるターゲット核酸配列検出用等温単一反応プローブセット;ライゲーション作用剤、重合酵素及び等温単一反応溶液を含むターゲット核酸配列検出用組成物を提供する。
本発明の好ましい具現例によれば、前記組成物は、2種以上のターゲット核酸配列検出用等温単一反応プローブセットを含むことができる。
前記2種以上のターゲット核酸配列検出用等温単一反応プローブセットは、それぞれ互いに異なる相互作用的標識システムを含み;前記2種以上のプローブセットそれぞれは、それぞれ互いに異なるターゲット核酸配列に結合して;これによって互いに異なるターゲット核酸配列の多重検出が可能である。
即ち、前記2種以上のターゲットは、相互作用的に異なる分子診断対象、例えば、感染性有害微生物であってよく、この場合、互いに異なる病原体を同時検出及び診断が可能である。
また、前記2種以上のターゲットは、単一病原体に存在する互いに異なるターゲット部位であってよく、この場合、ターゲットの異なる部位を効果的に検出してさらに正確かつ精密な診断が可能である。
本発明の組成物は、上述された本発明のプローブセットによるターゲット核酸配列検出を実施するために作製されるため、重複した内容は、本明細書の複雑性を避けるために、その記載を省略する。
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、上述したターゲット核酸配列検出用組成物を含む、ターゲット核酸配列検出用キットを提供する。
本明細書において上述した本発明のキットは、さらに、多様なポリヌクレオチド分子、酵素、多様なバッファ及び試薬を含むことができる。また、本発明のキットは、陽性対照群及び陰性対照群反応を実施するのに必須な試薬を含むことができる。ある一つの特定の反応で使用される試薬の最適量は、本明細書に開示事項を習得した当業者によって容易に決定され得る。
典型的に、本発明のキットは、先に言及された構成成分を含む別途の包装または区分で作製される。
本発明のキットは、上述された本発明のプローブセットによるターゲット核酸配列検出を実施するために作製されるため、重複した内容は、本明細書の複雑性を避けるために、その記載を省略する。
本発明のまた他の様態によれば、本発明は、次のステップを含む、別途の増幅反応なしに、等温単一反応条件下での現場用分子診断方法を提供する:
(a)サンプルに、上述した第1プローブ及び第2プローブで構成されるターゲット核酸配列検出用等温単一反応(isothermal one-pot reaction)プローブセットを処理してターゲット核酸配列と混成化させるステップ;
(b)前記(a)ステップの混成化産物にライゲーション作用剤を処理して前記プローブセットの第1プローブ及び第2プローブをライゲーションさせ、前記ライゲーション産物に重合酵素を処理して転写を開始させるステップ;及び
(c)前記(b)ステップの転写産物にアプタマー-反応物質を処理して転写産物内のアプタマーのシグナル生成を検出するステップであって、前記シグナル生成は、サンプル中のターゲット核酸配列の存在を示す。
本発明の方法により診断され得る限り、前記ターゲットの種類は制限されない。
本発明においては、好ましくは、感染性有害微生物である。
前記感染性有害微生物は、スタフィロコッカスアウレウス(StaphylococcusAureus)、ビブリオバルニフィカス(Vibrio vulnificus)、大腸菌(E.coli)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)、インフルエンザAウイルス(Influenza A virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、呼吸器細胞融合ウイルス(RSV)、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、デング熱ウイルス、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus(HBV))、黄熱病ウイルス、狂犬病ウイルス、プラスモジウム、サイトメガロウイルス(CMV)、ミコバクテリウムチュバクローシス、クラミジアトラコマチス、ロタウイルス、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、クリミアコンゴ出血熱ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever virus)、エボラウイルス、ジカウイルス、ヘニパウイルス、ノロウイルス、ラッサウイルス、ライノウイルス、フラビウイルス、リフトバレー熱ウイルス、手足口病ウイルス、サルモネラ(Salmonella sp.)、シゲラ(Shigella sp.)、エンテロバクテリアセアエ(Enterobacteriaceae sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、モラクセラ(Moraxella sp.)、ヘリコバクター(Helicobacter sp.)及びステノトロホモナス(Stenotrophomonas sp.)からなる群から選択された1種以上であってよい。
本発明の方法は、2種以上のターゲット核酸配列検出用等温単一反応プローブセットを設計し、それを利用して2種以上のターゲット核酸配列を現場で速やかで正確に検出できる。
本発明の一実施例において、本発明者らは、高度にモジュール化されたプローブ構造を基盤に最小限の設計だけを利用して6個の病原体に適用し、成功的に多重-検出及び診断した。
従って、本発明のプローブセットは、ターゲット核酸配列の長さが適切であれば、いかなるRNA/DNAからデザインされ得るので、このような特徴により伝染病の発生に速やかに対応でき、抗体基盤診断に比して相当な利点を提供する。
即ち、本発明のプローブセットを利用したターゲット配列検出プラットホームは、目的対象のRNA/DNA探知のための強力な診断プラットホームとして作用して短い診断時間、高い感度及び特異度(specificity)及び簡単な分析手順を提供するだけではなく、高価な機器及び診断専門家を要しないので、速やかな対応が必要な新種の感染病に適した診断方法になるだろう。
また、このような高度にモジュール化された構造を有する本発明の第1プローブ及び第2プローブのプローブセットは、多重ターゲット検出において偽陽性及び偽陰性結果から完壁に自由になる。
本発明の方法は、上述した本発明のプローブセットを含むので、重複した内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る分子診断プラットホームを利用すると、ターゲット遺伝子が非常に低い濃度で存在しても、速く正確に病原菌を検出できる。また、診断過程で必要な要素(反応溶液、酵素)が既存の抗体基盤の診断より遥かに簡素かつ簡便であり、誰でも進行でき、一般的な核酸基盤分子診断技術に使用される高価な装備なしに等温で全ての反応が同時に進行するので、診断の敏感度と迅速性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1a】本発明の二つのDNAプローブの構造を示す。
図1b】SplintRリガーゼを利用したライゲーション反応を示す。
図1c】本発明のライゲーション基盤の分子診断方法の3つの核心反応を示す。
図1d】本発明のライゲーション反応を利用した核酸検出法の全体的な概略図を示す。
図2】ターゲットRNAが存在するとき、二つのプローブがライゲーション反応が起こったことを毛細管電気泳動(Capillary Electrophoresis)で確認した結果を示す。
図3】本発明のライゲーション反応が起こった産物が転写過程を通して転写されて作られた転写産物を確認するためのアガロースゲル電気泳動の結果を示す。
図4】転写産物が正確にマラカイトグリーンアプタマー構造を形成したかを確認するために、ターゲット物質であるマラカイトグリーンを添加して蛍光値を測定した結果を示す。
図5a】本発明の等温単一反応でなされた核酸検出プラットホームの概略図を示す。
図5b】20個の単一反応溶液候補群の中で単一反応のために適した反応溶液を見つけるために蛍光値を測定した結果を示す。
図5c】ライゲーションの効率を高めるために選別された反応溶液(1番の反応溶液)にさらにタンパク質(ET-SSB)を添加することで現れる蛍光値の差を示す。
図5d】本発明の単一反応溶液が実際に一つのチューブ内で一連の反応(ライゲーション、転写反応、蛍光反応)を実施するのに適していることを示す。
図6a】単一反応の最適化のために必要な酵素(SplintRリガーゼ、T7 RNA重合酵素)の量を調節して最適な酵素量を見出した結果を示す。
図6b】単一反応で蛍光反応を媒介するマラカイトグリーンの量を最適化した結果を示す。
図6c】等温単一反応のために37℃でターゲットRNAを検出できるかを確認した結果である。
図7a】副木(Splint)としてDNAを利用する場合の本発明のプローブセットによる検出結果(ゲルイメージ)を示す。
図7b】副木(Splint)としてDNAを利用する場合の本発明のプローブセットによる検出結果(Electropherogram)を示す。
図7c】副木(Splint)としてDNAを利用する場合の本発明のプローブセットによる転写産物がマラカイトグリーンと結合して蛍光シグナルを示す結果を示す。
図7d】37℃等温下で、単一反応溶液で一つの容器で副木(Splint)としてDNAを利用する場合の本発明のプローブセットによる結果を示す。
図8a】等温単一反応で進行される反応を通してターゲットRNAがどの程度時間が過ぎてはじめて検出され得るのか診断の迅速性を示した結果を示す。
図8b】等温単一反応で進行される反応を通してターゲットRNA濃度による蛍光値の変化を通して検出限界を示した結果を示す。
図9a-9f】等温単一反応で進行される反応を通して多様な病原菌のターゲットRNA濃度による蛍光値の強さを示した結果を示す。
図10a-10d】等温単一反応で進行される反応を通して実際に病原菌の細胞が直接検出されるかに対する結果を示す。
図11a-11c】等温単一反応で進行される反応を通して互いに異なる二つの病原菌を独立してそれぞれ異なる蛍光信号と強さで探知できるかに対する結果を示す。
図12a-12c】等温単一反応で進行される反応を通して特定の病原体の互いに異なるターゲット部位をそれぞれ異なる蛍光信号と強さで探知できるかに対する結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施例を通して本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、ひたすら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものとは解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であるだろう。
【0008】
実施例1.ライゲーション反応を利用した分子診断プラットホームの検証
1-1.リガーゼを利用したライゲーション反応
本発明者らは、速く安価で正確にターゲット(例えば、特定の疾患)を検出するためにライゲーション反応を利用した極微量のターゲットRNAを検出する分子診断プラットホームを開発しようとした。
そこで、本実施例においては、直接作製した特殊なDNAプローブ構造及び配列を基盤にリガーゼのライゲーション反応を利用した。本発明において、特殊なDNAプローブは、ライゲーション、それ以後の転写、アプタマー構造形成及び蛍光発現まで3つが全て可能にデザインした。
そのためには、下記のような3つの条件が満たされなければならない。
第一に、まず、等温(例えば、37℃)で全ての反応が進行されなければならないので、この温度でプローブとターゲットRNA配列との間の重合反応が十分によく起こらなければならず、その過程で所望しない構造が形成されてはならない。
第二に、ターゲットRNAと重合するDNAプローブ上の区域が不要な構造をなすことなく、一本鎖で存在しなければならない。また、ライゲーション反応が起こった後、RNA重合酵素により転写が起こらなければならないので、DNAプローブ上に二本鎖のプロモーターが存在しなければならない。
第三に、下流に存在するアプタマーが上流の混成化(hybridization)配列と相互作用せず、独立した構造をよく形成しなければならない。
上述した3つの条件を満たしたDNAプローブセットの構造及び反応は、図1a及び図1bに示したとおりである。
上述したDNAプローブセットは、2個のプローブで構成され、前記プラットホームは、下記のような3つの核心技術からなっている(図1c):
(1)リガーゼを利用したプローブ同士のライゲーション反応
-DNAプローブとRNAが存在するとき、ターゲットRNAを副木(splint)として2種のDNAプローブからなるプローブセットを連結させる。即ち、ターゲットRNAの配列に相補的なDNAプローブ2種を作製し、リガーゼ(SplintR ligase)を利用して互いに連結させることでライゲーション反応を遂行する。
(2)ライゲーションされた産物(Ligated product)のIn vitro転写反応
-ライゲーションされた産物の5’部分に位置したT7プロモーター配列にT7 RNA重合酵素がついて転写過程を進行して、ライゲーションされた産物から転写産物であるRNAを作り出す。
(3)RNAアプタマーを利用した蛍光発現
-RNA3´末端部分に位置したアプタマーが特定の化学物質と結合して示す蛍光を利用して目標RNA分子の存在有無を確認する。
本実施例においては、前記(1)-(3)の核心技術を通して一具現例としてMRSA感染有無を診断しようとする。
この過程は、2時間以内で反応が完了するので、早く結果が導出され得、(1)の反応が起こってはじめてそれ以後の過程が順になされ、そのように(1)-(3)までの反応が全てなされる時にのみ所望の結果を得ることができるので、診断の正確性を信頼できる(図1d)。
前記DNAプローブセットは、下記2種のプローブで構成されている:
第1DNAプローブ[プロモータープローブ(PP、promoter probe)と命名]であって、
前記PPは、プロモーター配列とターゲット遺伝子と混成化(hybridization)するUHS(Upstream Hybridization Sequence)配列の二つの部分からなっており;
第2DNAプローブ[レポータープローブ(RP、reporter probe)と命名]であって、
前記RPは、ターゲット遺伝子と混成化するDHS(Downstream Hybridization Sequence)配列と最終生産物を確認できるレポーターとして蛍光-反応RNAアプタマーを暗号化する配列の二つの部分からなっている。
本実施例1において、ターゲットRNA(副木RNA)としてMRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)のターゲット遺伝子であるmecA;プロモーター配列としてT7プロモーター配列;及び蛍光-反応RNAアプタマーとしてマラカイトグリーンRNAアプタマーを利用し、本実施例1に利用された前記2種のDNAプローブの詳細な配列は、下記表1に示した。
[表1]
(大文字で表示したヌクレオチドは、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を指す。小文字で表示したヌクレオチドは、ステム-ループ構造(Stem-loop structure)をなすT7プロモーターcomplementary配列+ループ配列+T7プロモーター配列を指し、下線を引いたヌクレオチドは、ステム-ループ構造(Stem-loop structure)中、ステムをなすヌクレオチドを指す。
小文字イタリック体で表示したヌクレオチドは、アプタマー配列を指す。)
簡略に、先に作製した二つのDNAプローブとターゲットRNAを10xアニーリング(annealing)反応溶液[100mM Tris-HCl(pH7.4)、500mM KCl]で95℃で3分間熱で変性させた後、常温でゆっくり冷ました。ターゲットRNAは、MRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)のターゲット遺伝子であるmecA DNA配列上流にT7プロモーター配列を挿入してクローニングした後、T7 RNA重合酵素(New England Biolabs.,Ipswich,USA)を使用して転写させた。転写反応で得たRNAは、DNaseI(Takara Bio Inc.,Nojihigashi,Japan)で処理した後、RiboClear((株)ジーンオールバイオテクノロジー、ソウル、大韓民国)を利用して精製した。
このようにアニーリングされたオリゴヌクレオチドを、通常知られている方法で、SplintRリガーゼ(New England Biolabs)、10x SplintRリガーゼ反応反応溶液[50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl、1mM ATP、10mM DTT、15mM NaCl]を入れて37℃で30分間反応させた。

1-2.T7重合酵素を利用した転写反応
前記実施例1-1においてライゲーションされた産物を、通常知られている方法で、25mM NTPs、10mM DTT、RNase Inhibitor(Takara Bio Inc)と共に10x T7重合酵素反応溶液[40mM Tris-HCl(pH7.9)、6mM MgCl、1mM DTT、10mM NaCl、2mM Spermidine]を入れて37℃で16時間の間反応させた。

1-3.下流のアプタマー配列とマラカイトグリーン結合を通した蛍光反応
前記実施例1-2において生成されたRNA(アプタマー配列のある)を1μMになるように入れて、マラカイトグリーンアプタマー反応溶液[50mM Tris-HCl(pH7.5)、1mM ATP、10mM NaCl、140mM KCl]に混ぜた後、通常知られている方法で、95℃で10分間熱で変性させてリフォールディングさせた後、20分間室温に冷却させた。MgClをRNA溶液に最終濃度10mMになるように添加し、溶液を室温で15分間安定化させた。それ以後、ターゲット物質は、マラカイトグリーン水溶液(320μM)を5μL添加した。マラカイトグリーン水溶液は、マラカイトグリーンシュウ酸塩(Sigma-Aldrich.,St.Louis,USA)をRNase-free waterに希釈させて使用した。それ以後、96well black polystyrene microplate clear flat bottom(Corning Inc.,New York,USA)に100μLの容量でHidex Sense Microplate Readerで蛍光を測定した(excitation:616nm、emission:665nm)。上述した実施例1での一連の反応を図1cに示した。

1-4.結果
本実施例においては、マラカイトグリーンと結合して蛍光を発現するRNAアプタマーを利用してターゲット遺伝子を感知してライゲーションされたプローブで生成された転写産物を検出しようとした。
前記設計したプローブのSplintRリガーゼを通したライゲーション反応遂行有無を検証するために、反応産物を電気泳動方法で確認した。このとき、ライゲーションされたプローブアセンブリ(Full-lengthプローブ)の敏感な検出のために毛細管電気泳動(Capillary electrophoresis)[ABI 3130XL Genetic Analyzer(16-Capillary Array,50cm;Applied Biosystems Inc.,Foster City,USA)]を使用して分析した。まず、RPの5’に6-FAM(6-Carboxyfluorescein)を付けたオリゴヌクレオチドを作製した。この5’6-FAM RPは、ライゲーション反応有無と関係なく特定の位置のピークを示すようになり、ライゲーションが起こった試料ではこれと異なる位置にピークが現れるようになる。SplintRリガーゼは、ターゲットRNAが存在する場合にのみ2個のプローブを連結させるため、ターゲットRNAが入っている試料でだけライゲーション反応が起こり、それによって5’6-FAM RPのピークと異なる位置に2個のプローブが連結されたライゲーションされたプローブアセンブリピークが生成された(図2)。
以後、プローブアセンブリが正しく転写されるかを検討するためにアガロースゲル電気泳動でバンドの位置を確認した。使用したゲルは、2.5%アガロースゲル変性ゲルであり、ターゲットRNAが存在しないサンプルを陰性対照群に、合成したプローブアセンブリ[Integrated DNA Technoloiges,INC.(IDT).,Coralville,USA]を陽性対照群に設定した。このとき、陰性対照群ではライゲーション反応が起こらなかったので、T7プロモーター配列からPPまでの長さである55ntの転写産物が作られ、陽性対照群と実験群ではライゲーション反応が進行されたので、T7プロモーター配列からPP、RPを全て含む89ntの転写産物が作られることを確認することができる(図3)。
また、転写産物がマラカイトグリーンと結合して蛍光を出すかをHidex Sense Microplate Reader(Hidex.,Lemminkaisenkatu,Finland)を利用して確認した(図4)。
【0009】
実施例2.ライゲーション反応を利用した単一反応分子診断プラットホームの構築
前記実施例1においてライゲーション反応を基盤とした分子診断プラットホームを検証する過程で、実施例1-1、1-2、1-3それぞれの反応は、互いに異なるチューブで互いに異なる反応溶液の条件で進行した。また、各ステップ反応に最適化された温度を使用して温度も一定に維持させなかった。
前記工程は、非常に煩わしく、時間的な消耗が大きい。
そこで、本発明者らは、簡便で速やかにターゲット配列の検出を通した診断を遂行するために、図5aに示したように、単一組成の反応溶液を利用して一つのチューブで一定の温度条件下で全ての反応を進行させることができるように一元化された「等温単一反応分子診断法」を開発しようとした。
このとき、使用される構成成分が少ないほど、温度及び緩衝液組成の側面で最適化することがさらに容易である。
そこで、本発明者らは、検出プラットホームを設計するとき、意図的に構成成分の種類を減らすことを試みた。
このとき、本実施例2においては、前記実施例1において設計されたプローブセット(ターゲットRNAとしてMRSAのターゲット遺伝子であるmecAに混成化される配列;プロモーター配列としてT7プロモーター配列;及びマラカイトグリーンRNAアプタマー配列部位を含む構成のプローブセット)とSplintRリガーゼ、T7 RNA重合酵素及びマラカイトグリーンを利用した。

2-1.反応溶液の一元化
ライゲーション反応を利用した分子診断プラットホームを構成する反応は、それぞれ最適な反応溶液がある。当業界に公知になったそれぞれの反応溶液の構成成分及び反応に必要な構成要素を濃度と共に下記表2に示した。
[表2]
上述したように、反応溶液の一元化を進行するために、SplintRリガーゼ、T7 RNA重合酵素それぞれの反応プロトコルに出ている構成成分のうちATP、Spermidine等を除く、Tris-HCl、MgCl、NTPs、NaCl、DTTを基本成分として一元化された反応溶液の候補群20個を作製した。
作製した反応溶液の候補は、下記表3に示した。
[表3]
前記した20種の反応溶液候補を利用してライゲーション、転写、蛍光反応を順次に進行した後、蛍光の強さを測定して、各反応溶液が3ステップの反応に全て適するか、そして、どの反応溶液候補で反応効率が最も高いかを確認した。
その結果、DTTが除去された、50mM Tris-HCl、10mM MgCl、1mM NTPs、10.5mM NaClで構成された1番の候補を利用して反応させた時に測定された蛍光の強さが最も強かった(図5b)。
また、上述したように副木RNAの存在有無に依存してPPとRPのライゲーション反応が起こってはじめてその後の過程が進行されるので、ライゲーション反応は、診断の側面で精密性と正確性を決定づけるステップといえる。また、ライゲーション反応の効率が診断の効率及び敏感度を決定する。
そこで、本発明者らは、ライゲーション反応の効率を高めるために、さらに前記1番の反応溶液に、ET-SSB(Extreme Thermostable Single-stranded DNA Binding Protein,New England Biolabs)を添加した。ET-SSBは、一本鎖DNAを安定化させ、ライゲーション反応時にoff-target効果を減らすことでライゲーション効率を高めるタンパク質と知られている。このタンパク質は、重合酵素が作用する反応溶液の中では全て活性を帯びる。この点に着眼して、本発明者は、ET-SSBを100μLの反応容量基準に0.8μL(50μL反応容量に400ngのET-SSB)添加して蛍光を測定した。
その結果、図5cに示したように、ET-SSBが添加されていない試料より添加された試料の蛍光がさらに高く出たことを確認することができた。
このように、ライゲーション反応に必要な酵素、化学物質、タンパク質等の添加量を最適化することで、先に作製した表3の「1番の反応溶液」上でターゲットRNAが存在するとき、下流のアプタマー配列とマラカイトグリーンが特異的に結合して蛍光を出す反応の効率を極大化した。
また、ET-SSBが添加された1番の候補反応溶液でライゲーション、転写、蛍光反応を一つのチューブで同時に進行させた時も蛍光が検出されることを確認した(図5d)。
結果的に、ステップ別に進行してきたライゲーション、転写、蛍光反応まで3ステップの反応を、本発明のET-SSBが添加された1番の反応溶液を含む一つのチューブで同時に進行しても一連の反応が問題なく起こるということを確認した。
以下、下記実施例においては、1番の反応溶液(50mM Tris-HCl、10mM MgCl、1mM NTPs、10.5mM NaCl)にET-SSBを添加して作製した、本発明の一連の反応を最適に達成できる溶液を「単一反応溶液」と命名して利用した。

2-2.反応に必要な分子の量の最適化
ライゲーション反応を利用した分子診断プラットホームに核心的な役割を果たすタンパク質には、リガーゼ、RNA重合酵素等の酵素も存在し、マラカイトグリーンのような化学物質もある。そこで、本発明者らは、単一反応溶液上で蛍光の強さを極大化するために前記した分子の添加量を最適化した。
このとき、リガーゼは、SplintRリガーゼを利用し、RNA重合酵素は、T7 RNA重合酵素を利用した。
まず、本発明者らは、SplintRリガーゼとT7 RNA重合酵素の添加量を最適化するために、多様な組み合わせで実験した。
その結果、数回の最適化実験を通して100μLの容量を基準にSplint Rリガーゼは250unit、T7 RNA重合酵素は250unitであるとき、蛍光値が最も大きく測定された(図6a)。
また、本発明者らは、蛍光信号と直接的な関連のある下流アプタマー配列と特異的に結合する化学分子であるマラカイトグリーンの濃度を最適化した。
マラカイトグリーンの添加量を多様に調節してみた結果、16μMを添加したとき、最も大きな蛍光値を示した(図6b)。

2-3.反応温度の単一化(等温反応化)
本発明は、単一反応溶液を利用した単一ステップ反応であるので、全ての反応が一か所で起こらなければならない。単一ステップ反応が成立するためには、反応温度も単一化されなければならない。実施例1での各反応がなされる温度が互いに全て異なる。アニーリング過程とライゲーション過程とマラカイトグリーン反応でそれぞれ95℃という高温が必要である。しかし、この温度でSplintRリガーゼとT7 RNA重合酵素は変性する。また、分子診断を構成するほとんどの反応は、全て37℃で進行される。
そこで、本発明者らは、反応温度もまた一元化するために、先に確認された単一反応溶液を利用して分子診断を構成する全ての反応(ライゲーション、転写及び蛍光反応)を一つのチューブで37℃の条件で進行した。
その結果、ターゲットRNAの存在有無によって区別可能な水準の蛍光が発現されることを確認することができた(図6c)。
前記結果を通して37℃の等温条件で単一反応溶液を利用して単一ステップ反応を実施できることを立証した。
以下、本発明において、前記反応を「等温単一反応(isothermal one-pot reaction)」と命名し、本実施例上で利用された前記等温単一反応溶液の組成及び濃度を下記表4にまとめた。
[表4]
【0010】
実施例3.副木(Splint)としてDNAを利用する場合の本発明のプローブセットによる検出
前記実施例1-1~1-3においては、副木(Splint)、即ち、ターゲット配列としてRNAを利用したが、本発明者らは、さらにターゲット配列としてDNAを利用して、前記実施例1-1及び1-2に開示されたものと同じ条件及び方法でSplint Rリガーゼを利用したプローブ同士のライゲーション反応、T7重合酵素を利用した転写反応を実施した後、バイオアナライザを通して確認した。
バイオアナライザは、Agilent 2100を使用し、この時に使用したkitは、Agilent RNA 6000 nano kitである。これは、電気泳動分離と微細流体技術の特性を有するRNAの断片と大きさの分析が敏感にできる。
その結果、図7a(ゲルイメージ)及び図7b(Electropherogram)に示したように、副木としてDNAを利用した場合にも、ターゲットDNAが検出されることを確認した。
即ち、前記結果を通して、プロモータープローブ(PP)、レポータープローブ(RP)、ターゲットDNA、SplintRリガーゼが全て存在してはじめてライゲーション反応が起こって、プローブアセンブリになり、そのプローブアセンブリが正しく転写されることを、合成したプローブアセンブリを陽性対照群として使用することで確認した。
また、図7cに示したように、転写産物がマラカイトグリーンと結合して蛍光を出すかをHidex Sense Microplate Reader(Hidex.,Lemminkδisenkatu,Finland)を利用して確認した。
即ち、前記結果を通して、副木(Splint)がRNAでないDNAでもライゲーション反応、In vitro転写反応、RNAアプタマーを利用した蛍光発現反応の全てがよく起こることを確認した。
また、さらに上述した3つの反応(ライゲーション反応、In vitro転写反応、RNAアプタマーを利用した蛍光発現反応)が、前記実施例2において糾明された「等温単一反応」条件、即ち、37℃の等温下で、50mM Tris-HCl、10mM MgCl、1mM NTPs、10.5mM NaCl及びET-SSB 400ngを含む単一反応溶液で一つの容器で実施する場合にも起こるかを確認した。
副木DNAとしてSARS-CoV-2(新種のコロナウイルス)のターゲット遺伝子であるRdRp(RNA dependent RNA polymerase)のDNAを利用し、DFHBI-1T((5Z)-5-[(3,5-Difluoro-4-hydroxyphenyl)methylene]-3,5-dihydro-2-methyl-3-(2,2,2-trifluoroethyl)-4H-imidazol-4-one)に結合するブロッコリーアプタマー(DFHBI-1T/BRApt)を利用してこれらの間の蛍光反応でターゲット対象を検出しようとした。
その結果、図7dに示したように、ターゲットDNAが入っていない状態よりターゲットDNAが入っているサンプルで蛍光の強さがさらに高くなることを確認することができる。
従って、本発明のライゲーション反応を利用した分子診断プラットホームは、副木としてDNAを使用してもターゲット検出に無理なく適用できるということを立証した。
【0011】
実施例4.等温単一反応プラットホームを利用した診断の迅速性、敏感性及び特異性の確認
4-1.等温単一反応プラットホームを利用した迅速性の確認
本発明者らは、前記実施例2の表4で確認した本発明の最適な等温単一反応条件である37℃等温及び単一反応溶液の条件下で、本発明のプローブセット、ターゲットRNA(副木RNAとしてMRSAのターゲット遺伝子であるmecA)、マラカイトグリーン、リガーゼ及び重合酵素が含まれた一つの容器で等温単一反応を実施した時に必要となる時間を測定した。
このとき、96-well black polystyrene microplate clear flat bottom(Corning Inc)を使用し、反応容量は、100μLであった。
ターゲットRNAの分子数を異にして添加し、0分、30分、60分、90分、120分の経過後、Hidex Sense Microplate Readerを利用して蛍光を測定した。
その結果、図8aに示したように、最終結果を単に2時間ぶりに速やかに確保することができ、これは、従来の増幅反応を利用するPCR方法より検出時間を顕著に短縮させたということを示す。
特に、30分以後から蛍光値の差を示し始め、60分の反応時間が過ぎると、ターゲットRNAの存在有無によって蛍光値の差を明確に区分できるものと示された。

4-2.等温単一反応プラットホームを利用した診断敏感性(sensitivity)の確認
等温単一反応が可能であることを明らかにした後、この反応を通した検出限界(Limit of detection)を測定した。まず、ターゲットRNAのステップ別の希釈を通して220nM-0.1aMの濃度範囲の試料を作製した。検出しようとするターゲットRNAの分子数で示すと、220nMのmecA RNAは253ntの長さであり、100μL反応に含まれたRNAは2.2pmolesであるので、これは、1.32x1012個のRNA分子に該当する。
本実施例においては、1.32x1012個のRNA(220nM)から6個のRNA(0.1aM)までの範囲のターゲットRNAを添加し、等温単一反応を進行した後に蛍光を測定して、ターゲットRNAが存在しない陰性対照群との蛍光差を通してターゲットRNAの存在有無を判断した。本発明者らは、本発明において開発した等温単一反応で6個のRNAまで検出できることを確認した(図8b)。
【0012】
実施例5.等温単一反応プラットホームを通した多様な病原菌RNA検出の確認
次に、本発明者らは、多様な病原体からRNAマーカーの検出のために等温単一反応プラットホームを再構成して本発明の等温単一反応用プローブを利用する場合、実際に目的とするターゲットを速やかで正確かつ容易で効果的に検出できるだけではなく、高い敏感度で検出できることを糾明した。
ターゲット遺伝子によってターゲット遺伝子と混成化(hybridization)するプローブの二つの領域(UHS及びDHS)だけを変えればよいので、多くの計算ステップなしにプローブ設計プロセスを速く簡単に遂行できる。この等温単一反応は、ヌクレオチド配列だけを必要とするので、多様な感染性疾患に対して容易くプローブをデザインし、構成できるようにする(図9a)。ターゲット遺伝子の配列だけ確保されれば、本発明者らが所望の配列を上流、下流に加えることで容易にプローブセットを作製できる。そのように作製されたプローブ配列は、表5に並べた。
[表5]
(MG-RPは、マラカイトグリーンアプタマー配列を含むレポータープローブ配列を指す。BR-RPは、ブロッコリーアプタマー配列を含むレポータープローブ配列を指す。大文字で表示したヌクレオチドは、ターゲット核酸配列と相補的な混成化配列を指す。
小文字で表示したヌクレオチドは、ステム-ループ構造(Stem-loop structure)をなすT7プロモーターcomplementary配列+ループ配列+T7プロモーター配列を指し、下線を引いたヌクレオチドは、ステム-ループ構造(Stem-loop structure)中、ステムをなすヌクレオチドを指す。
小文字イタリック体で表示したヌクレオチドは、アプタマー配列を指す(マラカイトグリーンアプタマー;MG、ブロッコリーアプタマー配列;BR)。
5’-Phは、5’-末端にリン酸化させたものを指す。)
そこで、等温単一反応に対する多様な病原体検出を立証するために、まず、V.vulnificus(Vibrio vulnificus)とE.coli O157:H7(Escherichia coli O157:H7)の二つの病原性微生物を標的にした。V.vulnificusは、ヒトの胃腸炎、傷感染及び敗血症を誘発するものと知られている。これを検出するために、本発明者は、vvhA遺伝子をターゲットにした。vvhAは、細胞外で細胞毒性効果、溶血活性を有する遺伝子である。
その結果、本発明の等温単一反応を通してV.vulnificusが効果的に検出された。また、In vitro転写反応を通して作られたvvhAを検出するためのプローブ対を利用した等温単一反応の敏感度は、0.1aM(10-18mol/L)であり、ターゲット遺伝子濃度と蛍光の強さとの間の線形相関関係R2=0.9566と観察された(図9b)。
また、食中毒を起こすE.coli O157:H7を検出するプローブ対をデザインし、そのプローブ対でtir遺伝子をターゲット遺伝子として利用して検出した。
その結果、本発明の等温単一反応を通してE.coli O157:H7が効果的に検出された。また、類似するように、0.1aMの低いRNA濃度が等温単一反応により検出され、RNAの濃度と蛍光の強さとの間の高い線形相関関係R2=0.9684が観察された(図9c)。
また、ターゲットを致命的な疾病を起こすヒト感染性RNAウイルスに拡張した。
まず、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus、MERS-CoV)を目標とした。MERS-CoVの死亡率は35%と報告されており、ヒトからヒトへ伝染され得、速く敏感な現場診断テストの必要性が高い。
その結果、本発明の等温単一反応を通してMERS-CoVが効果的に検出された。また、MERS-CoVターゲット遺伝子upEに対するプローブ対は、バクテリアの事例と類似した敏感度及び線形性を示した(図9d)。
また、本発明者らは、インフルエンザAウイルスターゲット遺伝子、HA(血球凝集素)遺伝子に対するプローブ対を設計した。
その結果、本発明の等温単一反応を通してインフルエンザAウイルスが効果的に検出された。また、同様に高い敏感度と高い線形性を示した(図9e)。
また、近年出現したウイルスであるSARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)(新種のコロナウイルス)に対するプローブ対を設計した。RNA-依存的RNAポリメラーゼ(RdRp)遺伝子をターゲットにSARS-CoV-2に対する標準リアルタイム重合酵素連鎖反応(Real time-PCR)に基づいてターゲット遺伝子配列を選択した。
その結果、本発明の等温単一反応を通してSARS-CoV-2が効果的に検出された。また、等温単一反応は、0.1aMだけ低い標的RNAを成功的に検出しており(図9f)、これは、多様なターゲットRNA検出において高い汎用性を立証する。
【0013】
実施例6.等温単一反応プラットホームを通した実際の病原菌検出の確認
次に、本発明者らは、病原体の生きている細胞からターゲットRNA検出のために等温単一反応を使用した。既に等温単一反応で検出されたことがあるMRSAをターゲット病原菌とした。実験の正確度を高めるためにターゲットRNAを持っていないMSSA(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus)を陰性対照群として使用した。MRSAとMSSA細胞を95℃に加熱して溶解させた後、RNAを放出させた。これを希釈した後、等温単一反応に添加して特異性及び敏感度を調査した。
その結果、MRSAとMSSAを入れたサンプルの蛍光の強さにおいて有意味な差が観察された。100μL反応当たり2CFU(Cell forming unit)からMRSA、MSSAを入れたサンプル間の蛍光の差が明確に現れ、生きている病原体サンプルを利用した等温単一反応でも高い敏感度と特異性を表すことを示した(図10a及び図10b)。
最後に、ヒト血清に希釈したMRSA、MSSA病原菌サンプルを注入して臨床サンプルと類似した状態でのターゲットRNA検出に対する等温単一反応の性能をさらに検証した(図10c)。
その結果、図10dに示したように、2CFU/μLから検出可能であることを確認した。
これを通して、本発明の等温単一反応が実際の応用分野(類似臨床サンプル)でも高い敏感度及び特異度で適用可能であることを確認した。
【0014】
実施例7.等温単一反応の直交性(orthogonal)2個のプローブ対を利用した二重ターゲットの探知
7-1.等温単一反応を利用した互いに異なる種類の病原体の同時探知
本発明者らは、簡単なプローブデザインを活用して等温単一反応で二つのターゲットRNAを同時に検出できるようにその機能を拡張した。
偽陽性及び偽陰性結果を減らすことでもう少し正確なターゲット検出有無に対する判断を下すためには、様々なバイオマーカーを探知することが重要である。等温単一反応プローブの高い特異性と独特なスペクトル特性を有するRNAアプタマーの可溶性に基づいて、本発明者らは、それぞれの標的RNAを検出するために、単一反応で直交性を有する2セットの等温単一反応プローブを設計した。まず、インフルエンザAウイルスに対する直交レポータープローブを開発した。MRSA感染は、インフルエンザと類似した症状を誘発するので、一般的なインフルエンザAウイルスとこの病原体を区別すべき必要性がある。また、インフルエンザA感染患者は、MRSA感染にさらに脆弱である。総合的に、二つの病原体の同時探知及び識別は、診断と後続措置に役立つことができる。インフルエンザAウイルスに対する直交レポータープローブは、そのアプタマー配列をDFHBI-1T((5Z)-5-[(3,5-Difluoro-4-hydroxyphenyl)methylene]-3,5-dihydro-2-methyl-3-(2,2,2-trifluoroethyl)-4H-imidazol-4-one)に結合するブロッコリーアプタマー配列に変えてデザインした。ブロッコリーアプタマーは、マラカイトグリーンアプタマーとは全く異なるスペクトル特性を示す。マラカイトグリーンのスペクトル範囲がemission:616nm、excitation:665nmであるのに対し、ブロッコリーアプタマーは、スペクトルの範囲がemission:460nm、excitation:520nmである。NUPACKを使用して新たなレポータープローブ及び該当full-length RNA転写体の二次構造をシミュレーションし、これは、さらなる最適化なしでも本発明者らのプローブ設計基準を満たした。MRSA及びインフルエンザAウイルスの二重検出は、2個のプローブ対、それらが結合する蛍光染料及び多様な濃度のターゲットRNAが添加された状況で等温単一反応で進行された(図11a)。プローブ対がそれらのそれぞれの標的RNAに混成化(hybridization)され、成功的な転写反応が後続するようになると、RNAアプタマーは、それらが結合する蛍光染料に結合して区別可能な蛍光を放出する。それぞれのターゲットRNAの存在は、等温単一反応からの蛍光パターンにより決定され得る:MRSAに対するマラカイトグリーンアプタマー蛍光及びインフルエンザAウイルスに対するブロッコリーアプタマー蛍光。実際に、ターゲットRNA(1nM)の存在は、互いに異なる蛍光パターンにより容易に検出された(図11b)。多様な濃度の各ターゲットRNAにわたって、等温単一反応プローブは、それぞれの標的にのみ反応する蛍光が特異的に生成されることを確認し(図11c)、本発明者らは、等温単一反応を利用した2個病原体の二重探知が可能であることを検証した。

7-2.等温単一反応を利用した特定の病原体の多数のターゲット領域の同時探知
本発明者らは、直交二重検出をSARS-CoV-2に適用した。ゲノムに沿って多数のターゲット部位を同時に検出すると、この病原体を高い配列相同性を有する多くの関連ウイルスから区別することができる。以前に立証された(図9f参照)プローブ対の他にもマラカイトグリーンアプタマー(MG)またはブロッコリーアプタマー(BR)を使用してRdRp遺伝子の他の領域に対して3個の追加のプローブ対をデザインした。それぞれのプローブ対は、プロモータープローブ(PP、promoter probe)の5’-末端またはレポータープローブ(RP、reporter probe)の3’-末端にmismatchされた塩基を含んでおり、これは他の類似したウイルスに比較してSARS-CoV-2にのみ存在する(図12a)。プローブとターゲットでないRNAとの間では混成化(hybridization)ができないので、それ以後の過程であるライゲーション及び転写反応、蛍光反応を含む反応が起こらずSARS-CoV-2の特異的検出を可能にすることができる。実際に、この4個のプローブ対は、1aMのSARS-CoV-2ターゲットRNAを検出することができ、関連ウイルスRNA配列に比してさらに高い蛍光の強さを示す(図12b)。その後、SARS-CoV-2-MG1及びSARS-CoV-2-BR2プローブ対を使用して二つの対象領域の直交二重探知が可能であるかを実験した。
その結果、等温単一反応の二重探知でターゲットRNAの他の領域をそれぞれ効果的に検出することを確認した(図12c)。
従って、等温単一反応を利用した二重探知は、互いに補完できる二つの検出結果を提供して、さらに正確な診断のために使用され得る。
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであるだろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されるといえるだろう。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a-9f】
図10a-10d】
図11a-11c】
図12a-12c】
【配列表】
0007477183000001.app