(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】抗菌シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 63/14 20200101AFI20240423BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20240423BHJP
A01N 65/06 20090101ALI20240423BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240423BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20240423BHJP
A01N 1/00 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
A01N63/14
A01N25/34
A01N65/06
A01P3/00
A23L3/00 101Z
A01N1/00
(21)【出願番号】P 2022128529
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520392513
【氏名又は名称】ウィズハニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】山本幸枝
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0299044(US,A1)
【文献】世界のウェブアーカイブ|ブログ「夕焼けブログ」に掲載の2021年 5月22日付けで更新された記事「[蜜蝋ラップ]自家製エコラップの作り方、材料、比率、分量まとめました」(https://sangtao.blog/2021/03/22/簡単!!お家で蜜蝋ラップの作り方/)についての2021年 5月12日付けアーカイブ,2021年 5月,[オンライン],[2023年10月20日検索],URL,https://web.archive.org/web/20210512092438/https://sangtao.blog/2021/03/22/簡単!!お家で蜜蝋ラップの作り方/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は生花を載置又は包装するため
に用いられ、天然素材からなるシート体と、前記シート体を覆うように前記シート体に付着した被覆部と、を備え、前記被覆部が、西洋ミツバチの巣から得られる蜜蝋と、植物由来の天然樹脂と、植物由来の天然油と、を含み、
前記天然素材が綿であり、前記シート体が織地からなる布地であり、前記天然樹脂が松脂であり、前記天然油が、大豆油、ベニバナ油、米油及びゆず油からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、前記シート体の単位面積当たりの質量が、100~180g/m
2
であり、前記被覆部の単位面積当たりの付与量が、100~300g/m
2
であり、前記被覆部における前記天然樹脂の含有割合が2質量%以上であり、前記被覆部における前記天然油の含有割合が2質量%以上であり、塑性変形によって形状を付与することが可能であり、且つ異なる部分同士を互いに粘着させることが可能
であり、生分解性材料で構成された抗菌性を有する抗菌シート
の製造方法であって、
前記蜜蝋、前記天然樹脂及び前記天然油を加熱溶融して混合攪拌し、混合液とする工程と、
前記シート体を前記混合液に浸漬させる工程と、
前記シート体の表面にドクターブレードを当接させ、前記シート体の表面に付与された混合液を平坦にする工程と、
前記シート体に付与された前記混合液を冷却固化させる工程と、
を有する抗菌シートの製造方法。
【請求項2】
前記被覆部における前記天然樹脂の含有割合が2~45質量%であり、
前記被覆部における前記天然油の含有割合が2~15質量%である請求項1記載の抗菌シートの製造方法。
【請求項3】
前記天然油が、大豆油又は米油である請求項1記載の抗菌シートの製造方法。
【請求項4】
前記被覆部における前記天然樹脂の含有割合が5質量%であり、
前記被覆部における前記天然油の含有割合が5質量%である請求項3記載の抗菌シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は生花を載置又は包装するために用いられ、塑性及び粘着性を有する抗菌シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、時間が経過するにしたがって、酸化、カビや細菌の発生による腐敗等により、劣化するという問題がある。
特に、生鮮食品は、劣化速度が速いため、問題になり易い。
同様に、生花においても、カビや細菌の発生により劣化するという問題がある。
【0003】
食品においては、通常、食品の劣化を極力抑制するため、食品用ラップフィルム等に包まれた状態で保管される。
ところが、かかる食品用ラップフィルムは、プラスチック製であるため、環境にやさしいとは言えない。
これに対し、生分解性の材料を用い、且つ、劣化を抑制する効果(以下「劣化抑制効果」という。)を有するシートの開発が行われている。
【0004】
例えば、紙、防湿層、紙、シーラント層がこの順序で積層された紙を基材とする包装材料で、防湿層がポリイソプレンを含む天然の樹脂又はその誘導体からなる生分解性材料、もしくはこれに紙浸透性を有する天然樹脂、ワックス類及びこれらの誘導体から選択される材料を混合した生分解性材料であり、シーラント層が、耐油性を有する生分解性材料である紙を基材とする生分解性包装材料から作製した生分解性紙容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、セラック、ロジン、サンダラック、ゴマラカリマオ、アカロイド、カルナバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、イボタロウ、セラックワックス、ライスワックス、ラノリンの中から選ばれる一種以上から成る天然樹脂成分と、銀、銀イオン、酸化銀、ヨウ素、ヨウ素包接デキストリン誘導体、マグネシウム、酸化マグネシウム、亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化チタン系光触媒の中から選ばれる一種以上から成る添加物成分と、を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える食品包装材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-11287号公報
【文献】特開2005-75912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の生分解性紙容器、及び、上記特許文献2記載の食品包装材は、一応、食品の劣化抑制効果を有するものの、十分とはいえない。
このため、生分解性の材料を用いたもので、且つ、劣化抑制効果が更に優れるシートが求められている。
なお、生花においても劣化抑制効果に優れるシートが求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生分解性に優れ、劣化抑制効果にも優れる抗菌シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、全ての材料を、生分解性を有するものとし、且つ、シート体を覆う被覆部として蜜蝋、天然樹脂及び天然油を採用し、これらにより塑性及び粘着性を有するものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、食品又は生花を載置又は包装するために用いられ、天然素材からなるシート体と、シート体を覆うようにシート体に付着した被覆部と、を備え、被覆部が、西洋ミツバチの巣から得られる蜜蝋と、植物由来の天然樹脂と、植物由来の天然油と、を含み、塑性変形によって形状を付与することが可能であり、且つ異なる部分同士を互いに粘着させることが可能であり、生分解性材料で構成された抗菌性を有する抗菌シートの製造方法であって、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を加熱溶融して混合攪拌し、混合液とする工程と、シート体を混合液に浸漬させる工程と、シート体の表面にドクターブレードを当接させ、シート体の表面に付与された混合液を平坦にする工程と、シート体に付与された混合液を冷却固化させる工程と、を有する抗菌シートの製造方法である。
【0011】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、天然素材が綿であり、シート体が織地からなる布地であり、シート体の単位面積当たりの質量が、100~180g/m2であることが好ましい。
【0012】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、天然樹脂が松脂であり、被覆部の単位面積当たりの付与量が、100~300g/m2であり、被覆部における天然樹脂の含有割合が2質量%以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、天然油が、大豆油、ベニバナ油、米油及びゆず油からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、被覆部の単位面積当たりの付与量が、100~300g/m2であり、被覆部における天然油の含有割合が2質量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、シート体が天然素材であり、被覆部が、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を含むものであるので、全ての材料が生分解性材料で構成されている。このため、抗菌シートは、生分解性に優れるものであり、サステナブルな環境保全に配慮したものとなっている。
【0016】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、蜜蝋として、西洋ミツバチの巣から得られる蜜蝋を採用することにより、いわゆるプロポリスが含まれることになるので、それに基づく抗菌性、抗酸化性等の特性を発揮することが可能となる。
また、抗菌シートにおいては、被覆部が、上記蜜蝋だけでなく、天然樹脂及び天然油を更に含むので、劣化防止効果をより向上させることができる。
その結果、抗菌シートにおいては、食品又は生花を載置又は包装することにより、劣化防止効果を十分に発揮することができる。
【0017】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、塑性を有するので、仮にシート体が綿布地であっても、塑性変形によって形状を付与することができる。これにより、対象物(食品又は生花)の形状に追従させて当該対象物を包装することができる。
また、本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、粘着性を有するので、異なる部分同士を互いに粘着させることができる。その結果、抗菌シートの一部を他部に粘着させることにより、別の留め具を利用しなくとも、留め合わせることが可能となる。
これらのことから、抗菌シートは、極力、対象物の形状に追従させた形態で包み、一部を他部に粘着させて留め合わせることにより、対象物を効果的に包装することができる。
【0018】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、天然樹脂として松脂を採用し、被覆部の単位面積当たりの付与量及び天然樹脂の含有割合を上記範囲内とした場合、劣化防止効果がより向上する。松脂を採用することにより劣化防止効果がより向上する理由については定かではないが、松脂自体が有する抗菌性等の特性と、蜜蝋自体が有する特性とが相俟って、相乗効果を発揮するためと考えられる。
【0019】
また、天然油として、大豆油、ベニバナ油、米油及びゆず油からなる群より選ばれる少なくとも1つを採用し、被覆部の単位面積当たりの付与量及び天然油の含有割合を上記範囲内とした場合、柔軟性がより向上する。したがって、この場合、対象物をより包装し易くなる。
【0020】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、天然素材を綿とすることにより、十分な強度を備えると共に、シート体と被覆部との接着性を向上させることができる。
また、シート体を布地とすることにより、繰り返し利用することができ、風合いにも優れるものとなる。
このとき、シート体の単位面積当たりの質量を、上記範囲内とすることにより、対象物を包装し易くなるため、取り扱い性に優れるものとなる。
【0021】
本発明の抗菌シートの製造方法において、抗菌シートは、被覆部が、少なくとも、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を加熱溶融した混合液に、シート体を浸漬させ、冷却固化させることにより、形成されたものである場合、比較的簡単な操作で、シート体に対して十分な量の被覆部を極力均一に付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る
抗菌シートの製造方法で得られる抗菌シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る
抗菌シートの製造方法で得られる抗菌シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る抗菌シートAは、シート状である。
そして、抗菌シートAは、対象物を載置又は包装するために用いられる。なお、かかる包装には、例えば、対象物を直接包装する場合だけでなく、皿に配置した対象物を密封するために、ラップフィルムのように、皿に取り付ける場合も含まれる。
なお、対象物は、食品又は生花であり、食品としては、生鮮食品であっても加工食品であってもよい。
【0025】
図2は、
図1に示す抗菌シートの断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る抗菌シートAは、シート体1と、シート体1を覆うように付着した被覆部2とを備える。
すなわち、抗菌シートAは、シート体1の表裏が外部に露出しないように、被覆部2により被覆された構成となっている。
なお、
図2においては、シート体1及び被覆部2が十分な厚みを有するように記載しているが、実際は極めて薄いものである。
このとき、被覆部2は、シート体1の表裏だけでなく、シート体1の内部にも付着していてもよい。
【0026】
シート体1は、天然素材からなる。具体例としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、絹、獣毛(羊毛等)等の動物繊維が挙げられる。
これらの中でも、シート体1は、植物繊維であることが好ましい。
この場合、後述するように、天然樹脂及び天然油として植物由来のものを採用するので、両者の接着性が優れるものとなる。
また、シート体1は、綿であることがより好ましい。
この場合、シート体1は、被覆部との接着性に優れるだけでなく、十分な強度を備えると共に、適度な保湿性を担保することが可能となる。
【0027】
シート体1の形態としては、紙、布地、不織布等が挙げられる。
これらの中でも、シート体1の形態は、布地であることが好ましい。
この場合、抗菌シートAを繰り返し利用することが可能となり、風合いにも優れるものとなる。
なお、かかる布地は、織地であっても編地であってもよいが、商品を包装するという観点から、伸縮性を有しない織地であることが好ましい。
また、シート体1には、模様が付されていてもよく、いわゆる改質加工(マーセル化等)、防炎加工、抗菌防臭加工、プラズマ加工等が施されていてもよい。
【0028】
被覆部2は、蜜蝋と、天然樹脂と、天然油とを含む。
すなわち、被覆部2も天然由来の材料からなっている。
これらのことから、抗菌シートAは、全ての材料が生分解性材料で構成されており、生分解性に優れるものである。
すなわち、サステナブルな環境保全に配慮したものとなっている。
【0029】
被覆部2において、蜜蝋は、西洋ミツバチの巣から得られるものが採用される。
西洋ミツバチの巣から得られる蜜蝋には、いわゆるプロポリスが含まれているので、それに基づく抗菌性、抗酸化性等の特性を発揮することが可能となる。
なお、かかる蜜蝋は、蝋の不純物のみを取り除いた未精製のものであってもよく、蝋の不純物を取り除いた後、公知の漂白処理が施された精製されたものであってもよい。
【0030】
被覆部2において、天然樹脂は、植物由来の樹脂である。
具体例としては、例えば、バルサム、松脂、漆、ダマール、コーパル、天然ゴム等が挙げられる。
これらの中でも、天然樹脂は、松脂であることが好ましい。
天然樹脂として松脂を採用することにより、劣化防止効果を極めて向上させることができる。
【0031】
被覆部2において、天然油は、植物由来の油である。
具体例としては、例えば、キャノーラ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツオイル、菜種油、サフラワー油、ごま油、ヒマワリ油、あんず油、リンゴ油、大豆油、ベニバナ油、アボガド油、ババスオイル、モリンガ油、ボルネオ脂、コフネヤシ油、コリアンダー種油、アマナズナ油、アマニ油、グレープシードオイル、ペンプオイル、カポック実油、マルーラ油、メドウフォーム油、カラシ油、ナツメグバター、オクラ油、パパイヤ油、シソ油、ペクイ油、松の実油、ケシ油、プルーン油、キヌア油、ニガー種子油、米油、ゆず油、ツバキ油、アザミ油、トマト油、コムギ油、カブ油、ブドウ油、ひまし油、ホホバ油、レモン油、、マンゴー油、ニンジン種油、オレンジ油等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、天然油は、大豆油、ベニバナ油、米油及びゆず油からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。天然油としてこれらを採用することにより、抗菌シートAの柔軟性が向上する。
【0033】
抗菌シートAにおいて、シート体1の単位面積当たりの質量は、100~180g/m2であることが好ましく、120~160g/m2であることがより好ましい。
シート体1の単位面積当たりの質量が100g/m2未満であると、当該質量が上記範囲内にある場合と比較して、強度が不十分となり、対象物を包装する際に、角部や突起部に引っ掛けて破れる恐れがあり、シート体1の単位面積当たりの質量が180g/m2を超えると、当該質量が上記範囲内にある場合と比較して、商品を包み難くなり、取り扱い性が低下するという欠点がある。
【0034】
抗菌シートAにおいて、被覆部2の単位面積当たりの付与量は、100~300g/m2であることが好ましい。
被覆部2の単位面積当たりの質量が100g/m2未満であると、当該質量が上記範囲内にある場合と比較して、劣化抑制効果、粘着性又は塑性が不十分となる恐れがあり、被覆部2の単位面積当たりの質量が300g/m2を超えると、当該質量が上記範囲内にある場合と比較して、被覆部2が剥がれ易くなるという欠点がある。
【0035】
被覆部2において、天然樹脂の含有割合は、被覆部2の全質量に対して、2質量%以上であることが好ましく、2~80質量%であることがより好ましく、2~45質量%であることが更に好ましい。
天然樹脂の含有割合が2質量%未満であると、当該含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、劣化抑制効果、粘着性又は塑性が不十分となる恐れがある。
【0036】
被覆部2において、天然油の含有割合は、被覆部2の全質量に対して、2質量%以上であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましい。
天然油の含有割合が2質量%未満であると、当該含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、柔軟性が低下し、対象物を包装し難くなる欠点がある。
【0037】
抗菌シートAは、蜜蝋、天然樹脂及び天然油の付与量や配合量を調整することにより、粘着性を有するものである。
これにより、抗菌シートAは、異なる部分同士を互いに粘着させることが可能となる。
その結果、抗菌シートAの一部を他部に粘着させることにより、別の留め具を利用しなくとも、留め合わせることが可能となる。
【0038】
抗菌シートAは、蜜蝋、天然樹脂及び天然油の付与量や配合量を調整することにより、仮にシート体1が綿布地であっても、塑性変形によって形状を付与することができる。
すなわち、塑性を有するものである。
これにより、対象物の形状に追従させて当該対象物を包装することが可能となる。
【0039】
これらのことから、本実施形態に係る抗菌シートAによれば、極力、対象物の形状に追従させた形態で包み、一部を他部に粘着させて留め合わせることにより、対象物を効果的に包装することができる。
そして、包装した対象物に対し、十分な劣化抑制効果を発揮することが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る抗菌シートAの製造方法について説明する。
まず、上述した、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を加熱溶融して混合攪拌し、混合液とする。
そして、シート体1を混合液に浸漬させ(ディップ)、一対のローラーで挟み込むようにして絞る(ニップ)。
すなわち、いわゆるディップニップ方式により混合液がシート体1に付与される。
なお、絞った後、シート体1の表面に付与された混合液を平坦にするため、ドクターブレード等をシート体1の表面に当接させてもよい。
【0041】
次に、混合液が付与されたシート体1を冷却することにより、混合液を固化させ、被覆部2を形成する。
かかる冷却は、空冷であってもよく、冷却器による積極的な冷却であってもよい。
こうして、抗菌シートAが得られる。
なお、得られた抗菌シートAは、必要に応じて、適当なサイズに裁断してもよい。
【0042】
抗菌シートAは、上述したような比較的簡単な操作で、シート体1に対して十分な量の被覆部2を付与することができる。
また、シート部1に対して、被覆部2を極力均一に付与することができる。
その結果、シート体1の内部にまで被覆部2が付与されることになるので、より十分は劣化抑制効果を発揮することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0044】
本実施形態に係る抗菌シートAにおいて、被覆部2は、蜜蝋、天然樹脂及び天然油からなるものであるが、これに添加剤が更に含まれていてもよい。
添加剤としては、着色料、香料、保存料、防腐剤、帯電防止剤、表面改質剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの添加剤の添加量は、微量であることが好ましく、また、添加剤自体が天然由来のものであることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る抗菌シートAにおいては、対象物を包装して用いているが、対象物を載置するための敷布として用いてもよい。
この場合であっても、一定の劣化抑制効果を発揮することができる。
【0046】
本実施形態に係る抗菌シートAにおいては、被覆部2が、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を加熱溶融した混合液に、シート体1を浸漬させ、冷却固化させることにより、形成されたものとなっているが、被覆部2の形成方法はこれに限定されない。
例えば、シート体1の表裏面に、混合液をコーディングすることにより、被覆部を形成してもよく、シート体1の表裏面に、混合液をスプレーすることにより、被覆部を形成してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1,2、参考例1~6及び比較例1~5)
綿100%の織地(質量140g/m2)をシート体として用い、当該シート体を、蜜蝋、天然樹脂及び天然油を加熱溶融した混合液に浸漬させ、その後、空冷することにより、当該シート体に被覆部(付与量200g/m2)を形成した。こうして、実施例及び比較例の各サンプルを得た。
このとき用いた天然樹脂及び天然油、並びに、配合割合(質量%)を表1に示す。
なお、蜜蝋としては、西洋ミツバチの巣から得られる未精製のものを用いた。
また、表1中、「-」は加えていないことを意味する。
【0049】
【0050】
(評価)
対象物として、市販のキャベツを用いた。
すなわち、当該キャベツを分断し、分断されたキャベツを各サンプルとした。
1.劣化抑制効果
各サンプルを露出しないように包み込み、1週間経過後のサンプルの状態について、以下の基準に基づいて、目視評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
◎:充分な劣化抑制効果を発揮している。
〇:適度な劣化抑制効果を発揮している。
△:劣化抑制効果を発揮するが不十分である。
×:劣化抑制効果を発揮していない。
2.粘着性評価
各サンプルの一部を他部に粘着させた時の状態について、以下の基準に基づいて、目視評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
なお、表2中、「-」は評価を行っていないことを意味する。
〇:適度な粘着性を有する。
△:粘着性を有するが不十分である。
×:粘着性を有しない。
3.塑性評価
各サンプルを折り畳んだ時の状態について、以下の基準に基づいて、目視評価を行った。得られた結果を表2に示す。
〇:適度な塑性を有する。
△:塑性を有するが不十分である。
×:塑性を有しない。
4.柔軟性評価
各サンプルを触った時の感触について、以下の基準に基づいて、評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
なお、表2中、「-」は評価を行っていないことを意味する。
〇:適度な柔軟性を有する。
×:柔軟性を有しない。
【0051】
【0052】
表2より、本発明である実施例1及び2のサンプルは、本発明ではない比較例1~5のサンプルと比較して、何れも劣化抑制効果に優れ、粘着性及び塑性を有し、柔軟性にも優れることがわかった。特に、実施例1及び2のサンプルは、劣化抑制効果及び塑性が特に優れるものであった。
これらのことから、本発明に係る抗菌シートの製造方法で得られる抗菌シートは、対象物を好適に包装することができ、且つ、劣化抑制効果が優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る抗菌シートの製造方法で得られる抗菌シートは、対象物を載置又は包装するためのシートとして利用できる。
本発明に係る抗菌シートの製造方法によれば、生分解性に優れ、対象物の劣化を十分に抑制することができる抗菌シートを得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・シート体
2・・・被覆部
A・・・抗菌シート