(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】蒸気及び高温液体供給装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20240423BHJP
A47J 27/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A47J27/16 D
A47J27/04 D
(21)【出願番号】P 2022162028
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597089026
【氏名又は名称】藤精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142136
【氏名又は名称】深澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】武川 登
(72)【発明者】
【氏名】向山 容平
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-043933(JP,A)
【文献】特開平08-002561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0302606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0188437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が放出される蒸気口及び液体が放出される液体口と
、
前記蒸気口及び
前記液体口と対向するとともに前記蒸気口及び前記液体口に対して接離可能に配される被覆対象物を覆う蒸気及び高温液体供給装置用キャップ
と、
を備え、
該蒸気及び高温液体供給装置用キャップが、
中心軸線方向に開口端を有し、前記蒸気口及び前記液体口を内包した状態で前記開口端側で前記被覆対象物と密着して該被覆対象物と前記蒸気口及び前記液体口との間に密閉空間を形成する本体と、
該本体を前記蒸気口及び前記液体口に対して着脱可能に接続させる接続部と、
を備え
、
前記接続部側よりも前記開口端側が拡開して前記本体が形成され、
該本体及び前記接続部のそれぞれ少なくとも一部が弾性変形可能に形成され、
前記接続部が、前記中心軸線方向に伸縮及び/又は前記中心軸線に対して湾曲可能とされ、
前記蒸気口における前記蒸気の放出方向断面積が先端に向かって扇状に漸次拡開して形成された蒸気及び高温液体供給装置。
【請求項2】
液体が貯留される第一収容部と、
該第一収容部内に配され、該第一収容部内に貯留された前記液体を加熱して一部を前記蒸気にする加熱部と、
前記第一収容部内に挿通され、前記液体が供給されたときに前記液体へ前記蒸気の熱の一部を移動させる熱交換部と、
該熱交換部によって昇温された前記液体が貯留される第二収容部と、
前記第一収容部と前記蒸気口とを連通する蒸気配管部と、
前記第二収容部と前記液体口とを連通する液体配管部と、
前記第一収容部と前記蒸気配管部とを連通するとともに一部が前記第二収容部内に挿通された第一配管と、
を備える請求項
1に記載の蒸気及び高温液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気及び高温液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品に蒸気を噴霧することによって食用に適した状態に解凍するとともに食品に熱湯を提供可能な装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、容器昇降装置によって蒸気噴出ノズルに対して液状食品用容器が上昇した場合に、上方に固定された蒸気噴出ノズルが容器本体に配された蓋を貫通して容器内に自動的に挿入され、液状食品を加熱するものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。容器本体に蓋が配されている場合、蒸気噴出ノズルから蒸気等が噴出されても蓋によって蒸気等が外部へ飛散することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2022-530164号公報
【文献】特開2006-246949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記装置における容器本体に配される蓋は、蒸気噴出ノズルが貫通可能なものに限定される。また、容器側に蓋を設置できない場合には蒸気等が容器外へ飛散してしまい加熱効率が低下する。さらには液状食品等に接したノズルが液状食品等により汚染される場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、容器外への蒸気等の飛散を抑えて内容物の加熱効率を高めることができる蒸気及び高温液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る蒸気及び高温液体供給装置は、蒸気が放出される蒸気口及び液体が放出される液体口と、前記蒸気口及び前記液体口と対向するとともに前記蒸気口及び前記液体口に対して接離可能に配される被覆対象物を覆う蒸気及び高温液体供給装置用キャップと、を備え、該蒸気及び高温液体供給装置用キャップが、中心軸線方向に開口端を有し、前記蒸気口及び前記液体口を内包した状態で前記開口端側で前記被覆対象物と密着して該被覆対象物と前記蒸気口及び前記液体口との間に密閉空間を形成する本体と、該本体を前記蒸気口及び前記液体口に対して着脱可能に接続させる接続部と、を備え、前記接続部側よりも前記開口端側が拡開して前記本体が形成され、該本体及び前記接続部のそれぞれ少なくとも一部が弾性変形可能に形成され、前記接続部が、前記中心軸線方向に伸縮及び/又は前記中心軸線に対して湾曲可能とされ、前記蒸気口における前記蒸気の放出方向断面積が先端に向かって扇状に漸次拡開して形成されている。
【0011】
また、本発明に係る蒸気及び高温液体供給装置は、さらに、液体が貯留される第一収容部と、該第一収容部内に配され、該第一収容部内に貯留された前記液体を加熱して一部を前記蒸気にする加熱部と、前記第一収容部内に挿通され、前記液体が供給されたときに前記液体へ前記蒸気の熱の一部を移動させる熱交換部と、該熱交換部によって昇温された前記液体が貯留される第二収容部と、前記第一収容部と前記蒸気口とを連通する蒸気配管部と、前記第二収容部と前記液体口とを連通する液体配管部と、前記第一収容部と前記蒸気配管部とを連通するとともに一部が前記第二収容部内に挿通された第一配管と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器外への蒸気等の飛散を抑えて内容物の加熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の一実施形態に係る要部拡大図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る一実施形態について、
図1から図を参照して説明する。
本実施形態に係る蒸気及び高温液体供給装置10は、蒸気V及び熱湯Hを生成するために給水部11から供給された水(液体)Wが内部に貯留される第一収容部12と、第一収容部12内に配される加熱部13と、第一収容部12内に挿通される熱交換部15と、熱交換部15によって水Wが加熱された熱湯H1が貯留される第二収容部16と、蒸気Vが放出される蒸気口17と、熱湯H1が放出される熱湯口(液体口)18と、容器(被覆対象物)COに入れられた冷凍食材Fを加熱する調理室20と、放出された熱湯H1を回収する排水部21と、容器COの開口部CA側を覆うキャップ(蒸気及び/又は高温液体供給装置用キャップ)22と、給水部11と第一収容部12及び熱交換部15とを接続する給水配管部23と、第一収容部12と蒸気口17とを接続する蒸気配管部25と、第二収容部16と熱湯口18とを接続する熱湯配管部(液体配管部)26と、調理プロセスを制御する制御部27と、を備える。
【0015】
給水部11は、内部に水Wが貯留される給水タンク28と、水Wを汲み出す第一ポンプ30と、を備える。なお、給水タンク28及び第一ポンプ30の代わりに、常時水Wを供給可能な不図示の水道等と給水配管部23とが接続されていても構わない。
【0016】
第一収容部12は、給水部11と接続された第一給水口31と、加熱部13によって水Wが加熱された熱湯H2の貯留量を計測する第一水位計32と、熱湯H2より生成された蒸気Vが放出される第一放出口33と、内部の蒸気圧を計測する圧力計35と、蒸気Vの温度を計測する第一温度計36と、を備える。加熱部13は常時熱湯H2内に没入されるように第一収容部12の底面側に配されている。
【0017】
熱交換部15は、熱伝導率の高い材質からなり、給水部11から供給される水Wが内部に挿通される。熱交換部15は、第一収容部12内で熱湯H2には触れず蒸気Vと接触しやすい位置に配されている。
【0018】
第二収容部16は第一収容部12の上部に配され、熱交換部15と接続された第二給水口37と、熱湯Hの貯留量を計測する第二水位計38と、熱湯Hの温度を計測する第二温度計40と、熱湯配管部26が接続されて内部の熱湯H1が放出される第二放出口41と、を備える。第一水位計32及び圧力計35は第二収容部16内を挿通されて制御部27と接続されている。
【0019】
熱交換部15の一端15Aは、第二収容部16内に挿通されるとともに貯留される熱湯H1の水面よりも上方に突出して配されている。熱湯配管部26は途中で第一分岐弁42によって分岐され、熱交換部15の他端15B及び給水配管部23と第二分岐弁43を介して第一配管45によって接続されている。また、給水タンク28と第二収容部16の上部とは第二配管46によって接続されている。
【0020】
蒸気配管部25及び熱湯配管部26は調理室20とそれぞれ接続され、蒸気口17及び熱湯口18は調理室20内部に突出して配される。蒸気口17及び熱湯口18における蒸気及び熱湯の放出方向断面積は先端に向かって扇状に漸次拡開して形成されている。なお、蒸気口17及び熱湯口18は一つに限らず、複数個が角度別に分散して配されていても構わない。
【0021】
調理室20は、冷凍食材Fが内部に配されて略円形の開口部CAを有する容器COが載置される台部47と、蒸気口17及び熱湯口18に対して台部47を接離移動させる台部駆動機構48と、を備える。蒸気口17及び熱湯口18は調理室20内に突出して配され、蒸気口17及び熱湯口18の基部にはキャップ22が着脱可能に接続される取付部50が配されている。容器CO内には例えば冷凍食材Fが収容される。
【0022】
キャップ22は、開口端51Aを有し、蒸気口17及び熱湯口18を内包した状態で開口端51A側で容器COの開口部CAと密着して容器COと蒸気口17及び熱湯口18との間に密閉空間Sを形成する本体51と、本体51を蒸気口17及び熱湯口18に対して着脱可能に接続させる接続部52と、を備える。
【0023】
本体51は、例えばシリコーンゴム等の柔軟性と耐熱性とを有する樹脂からなり、柔軟に弾性変形可能な厚さを有する。そして、中心軸線Cを有し、中心軸線Cに沿って接続部52側から開口端51A側に向かって円錐状に漸次拡開して形成されている。接続部52は、本体51と同様に例えばシリコーンゴム等の柔軟性と耐熱性とを有する樹脂からなり、柔軟に弾性変形可能な厚さを有するとともに中心軸線C方向に伸縮可能及び中心軸線Cに対して湾曲可能な蛇腹状に形成されている。接続部52が弾性変形して取付部50と接続されることによって蒸気口17及び熱湯口18が本体51に内包される。
【0024】
制御部27は、不図示の操作パネルや、各種センサー、各種弁、台部駆動機構48と電気的に接続されており、水Wや蒸気V、熱湯Hの管理、台部47の移動制御を行う。この際、熱湯H2の温度や第一収容部12内の圧力が免許や特別な教育が必要となる領域に到達しないように加熱部13などの制御を行う。また、制御部27には、冷凍食材Fに応じた解凍シーケンスが格納されており、操作パネルからの操作によって冷凍食材Fの解凍調理が自動的に行われる。
【0025】
次に本実施形態に係る蒸気及び高温液体供給装置10の作用について、蒸気及び高温液体供給方法とともに説明する。
本実施形態に係る蒸気及び高温液体供給方法は、第一供給工程(S11)と、加熱工程(S12)と、熱交換工程(S13)と、調理準備工程(S14)と、蒸気放出工程(S15)と、液体放出工程(S16)と、容器取り出し工程(S17)と、を備える。なお、一連のプロセスにおいて、制御部27は、各圧力計や温度計、水位計などのモニタとともに、各弁の開閉や、加熱部13による加熱、台部駆動機構48の駆動などの指示を行う。
【0026】
第一供給工程(S11)では、第一ポンプ30を駆動して給水部11より水Wを第一収容部12に給水する。第一水位計32にて水位を検知して所定の水位に到達したところで給水を終了する。
【0027】
加熱工程(S12)では、第一収容部12内の水Wを加熱部13にて加熱して熱湯H2から蒸気Vを発生させる。このとき、第一温度計36にて所定温度内となるように、また、圧力計35にて所定の圧力内となるように制御部27にて加熱温度を調整する。
【0028】
熱交換工程(S13)では、給水部11より水Wを熱交換部15に挿通する。このとき、熱交換部15が蒸気Vによって加熱されているので、高温側の蒸気Vの一部の熱が低温側の水Wに伝わり、水Wが加熱されて熱湯H1となる。生成された熱湯H1は、第二収容部16内に貯留され、第二温度計40にて温度管理される。第二水位計38にて水位を検知して第二収容部16内で熱湯H1が所定の水位に到達した場合には給水を終了する。
【0029】
調理準備工程(S14)では、冷凍食材Fが収容された容器COを台部47に載置する。
【0030】
蒸気放出工程(S15)では、台部駆動機構48によって台部47をキャップ22側に移動する。そして、キャップ22の本体51の開口端51A側の内面が容器COの開口部CAの端部と密着して蒸気口17及び熱湯口18と容器COとの間に密閉空間Sを形成する。この際、容器COの開口部CAが真円等でなくてもキャップ22と当接した際、本体51が変形したり、接続部52が中心軸線C方向に伸縮又は中心軸線Cに対して湾曲したりして開口部CAを覆うことによって密閉空間Sが形成される。密閉空間Sを形成後、冷凍食材Fに向けて蒸気Vを蒸気口17から放出する。これによって冷凍食材Fが解凍され加熱される。所定時間経過後、蒸気放出工程(S15)を終了する。
【0031】
液体放出工程(S16)では、熱湯H1を熱湯口18に供給して冷凍食材Fに向けて放出する。熱湯H1と例えば不図示のスープ等を混ぜ合わせたものを容器CO内に放出しても構わない。所定の流量が放出された後、液体放出工程(S16)を終了する。
【0032】
食材取り出し工程(S17)では、台部駆動機構48によって台部47をキャップ22から離間する方向に移動する。そして、調理室20から容器COを取り出して容器取り出し工程(S17)を終了する。
【0033】
この蒸気及び高温液体供給装置10によれば、冷凍食材Fの解凍のために蒸気Vだけでなく熱湯を使用する場合、蒸気V生成のために加熱された熱湯H2を利用するのではなく、蒸気Vと熱交換させて加熱した熱湯H1を使用することができる。そのため、必要量の熱湯H2を確保していつでも蒸気V生成が可能となり、次の冷凍食材の解凍作業に速やかに移行することができ、蒸気Vや熱湯を必要なときに必要な量を供給することができる。
【0034】
また、蒸気Vの一部の熱や、第一水位計32、圧力計35、第一温度計36を通して一部の熱が外部に放熱されようとしても、その熱を第二収容部16内に貯留された熱湯H1に取り込ませて熱湯H1の高温状態を維持することができる。
【0035】
さらに、熱湯H1の一部が第一配管45によって熱交換部15の入口側に送水され、熱交換部15において蒸気Vと再度熱交換させることができ、熱交換部15での熱交換効率を高めることができる。
【0036】
また、キャップ22によって蒸気口17及び熱湯口18と容器COとの間に密閉空間Sが形成されるので、容器外への蒸気等の飛散を抑えて内容物の加熱効率を高めることができる。この際、本体51が接続部52側から開口端51A側に向かって漸次拡開して形成され、接続部52が弾性変形可能に形成されているので、容器COの形状がゆがんでいたり、容器COの中心位置が中心軸線Cからずれて設置されていたりしても、本体51や接続部52が容器COと接触した際に形状や位置に合わせて変形することができ、密閉空間Sを形成することができる。
【0037】
また、蒸気口17における蒸気の放出方向断面積が先端に向かって扇状に漸次拡開して形成されているため、広い範囲に蒸気Vを一様に放出することができ、容器CO内の冷凍食材Fを一様に解凍するとともに解凍時間を早めることができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、蒸気口17及び熱湯口18が配された蒸気及び高温液体供給装置10がキャップ22を備えるとしているが、これに限らず、蒸気口17又は熱湯口18の一方のみが配されている装置がキャップ22を備えてもよい。
【0039】
また、容器COの開口部CAは略円形に限らず、容器の開口部の形状に合わせた形状であれば構わない。そして、キャップの本体は、必ずしも円錐状に形成されている必要はなく、接続部側から開口端側に向かって漸次拡開されている必要もなく、例えば、
図3に示すように、接続部55側よりも開口端56A側がドーム状に拡開された本体56を有するキャップ57でもよい。
【0040】
さらに、キャップ22の接続部52は蛇腹状に形成されているとしているが、接続部が蛇腹状のものに限らず、
図3に示すキャップ57のように接続部55が本体56と一体化されていてもよい。また、本体や接続部の全体ではなく一部が、中心軸線C方向に伸縮可能であったり中心軸線Cに対して湾曲可能であったりする弾性変形可能な形状や材質で構成されていれば構わない。
【0041】
また、容器CO内に冷凍食材Fが収容されているとしているが、冷凍食材Fに限らず、冷蔵食材や、常温食材、乾燥食材等、また食材に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
10 蒸気及び高温液体供給装置
12 第一収容部
13 加熱部
15 熱交換部
16 第二収容部
17 蒸気口
18 熱湯口(液体口)
22,57 キャップ(蒸気及び/又は高温液体供給装置用キャップ)
25 蒸気配管部
26 熱湯配管部(液体配管部)
45 第一配管
51,56 本体
52,55 接続部
CO 容器(被覆対象物)
S 密閉空間