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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】自動二輪車用ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/22 20060101AFI20240423BHJP
   A42B 3/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A42B3/22
A42B3/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022507370
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2021026858
(87)【国際公開番号】W WO2023286279
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519143199
【氏名又は名称】株式会社スポーツネット
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東出 耕典
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-316929(JP,A)
【文献】特開2020-177153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部の一部又は全部を被覆し、かつ、前記装着者の顔面前方側に開口部を有するヘルメット本体部と、
下降位置で前記開口部の少なくとも一部を覆い、上昇位置で前記開口部を開放する様に、前記ヘルメット本体部に回動可能に支持して設けられたシールド部と、
前記シールド部の外側面及び内側面の少なくとも何れか一方の中央に設けられ、角柱状体であり、前記装着者の視線の矯正を可能にする視線矯正部と、
を備え、
前記視線矯正部は、
前記装着者に対向する対向面、前記対向面に対して右側に位置する右側面、及び前記対向面に対して左側に位置する左側面に於いて、相互に異なる色を有しており、
かつ、前記装着者の視野を右側視野と左側視野に区画し、
前記視線矯正部が設けられている前記シールド部の外側面又は内側面には、前記外側面又は内側面から突出し、前記視線矯正部を係止するための一対の係止部が設けられており、
前記一対の係止部の一方は、前記視線矯正部の上部の少なくとも一部を嵌合させる嵌合溝を備え、
前記一対の係止部の他方は、前記視線矯正部の下部の少なくとも一部を嵌合させる他の嵌合溝を備える自動二輪車用ヘルメット。
【請求項2】
前記視線矯正部は、
前記シールド部が前記開口部の少なくとも一部を覆う下降位置では、前記装着者に対向する前記対向面が前記装着者の顔面に当接せず、かつ、前記シールド部が前記開口部を開放する上昇位置では、前記ヘルメット本体部の外側面に当接しない請求項に記載の自動二輪車用ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車用ヘルメットに関し、より詳細には、自動二輪車の運転技能及び技量を各段に上達させることが可能な自動二輪車用ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車は、走行時に姿勢の平衡を保持する必要性がある。例えば四輪自動車等と比較して走行時の姿勢制御が困難である。走行時の自動二輪車を制御し、バランスを保持して安定化させるためには、自動二輪車の運動特性や車両安定性等の性能の他、運転者の運転技能及び技量も大きく関係する。特にカーブを曲がる際の操舵系に作用させる力や、体重移動を含む運転者の身体の動作及び変位などは、運転者の運転技能及び技量により大きく異なり、運転の安全性に直結する。従って、運転者の運転技能及び技量を向上させることは重要な問題になる。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、運転者が極端に前傾姿勢となっても、ヘルメットのフィッティングを維持したまま、ヘルメット前方上部の視界を良好に確保することが可能なヘルメットが開示されている。そして特許文献1によれば、カーブを曲がる際、運転者が乗車姿勢を大きく傾け、低い姿勢の状態になっても、前方上部が見難くなるのを防止できるとされている。しかし、運転者の前方上部の視野を良好に確保できたとしても、カーブを曲がる際の運転者の運転技能及び技量を向上させることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-037669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、自動二輪車の運転技能及び技量を各段に上達させることが可能な自動二輪車用ヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動二輪車用ヘルメットは、前記の課題を解決する為に、装着者の頭部の一部又は全部を被覆し、かつ、前記装着者の顔面前方側に開口部を有するヘルメット本体部と、前記ヘルメット本体部に於いて前記開口部を形成するフレーム部の中央に、前記開口部を区画する様に設けられ、角柱状体であり、前記装着者の視線の矯正を可能にする視線矯正部と、を備え、前記視線矯正部は、前記装着者に対向する対向面、前記対向面に対して右側に位置する右側面、及び前記対向面に対して左側に位置する左側面に於いて、相互に異なる色を有しており、かつ、前記装着者の視野を右側視野と左側視野に区画することを特徴とする。
【0007】
前記の構成に於いては、前記視線矯正部が、前記フレーム部の中央に着脱可能に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る他の自動二輪車用ヘルメットは、前記の課題を解決する為に、装着者の頭部の一部又は全部を被覆し、かつ、前記装着者の顔面前方側に開口部を有するヘルメット本体部と、下降位置で前記開口部の少なくとも一部を覆い、上昇位置で前記開口部を開放する様に、前記ヘルメット本体部に回動可能に支持して設けられたシールド部と、前記シールド部の外側面及び内側面の少なくとも何れか一方の中央に設けられ、角柱状体であり、前記装着者の視線の矯正を可能にする視線矯正部と、を備え、前記視線矯正部は、前記装着者に対向する対向面、前記対向面に対して右側に位置する右側面、及び前記対向面に対して左側に位置する左側面に於いて、相互に異なる色を有しており、かつ、前記装着者の視野を右側視野と左側視野に区画することを特徴とする。
【0009】
前記の構成に於いて、前記視線矯正部が設けられている前記シールド部の外側面又は内側面には、前記外側面又は内側面から突出し、前記視線矯正部を係止するための一対の係止部が設けられており、前記一対の係止部の一方には、前記視線矯正部の上部の少なくとも一部を嵌合させる嵌合溝を備え、前記一対の係止部の他方は、前記視線矯正部の下部の少なくとも一部を嵌合させる他の嵌合溝を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘルメット本体部の開口部を形成するフレーム部の中央には、装着者(運転者)の視線の矯正を可能にする視線矯正部が設けられている。又は、シールド部の外側面及び内側面の少なくとも何れか一方の中央に、視線矯正部が設けられている。この視線矯正部は角柱体状であり、装着者に対向する対向面に対して右側に位置する右側面と、当該対向面に対して左側に位置する左側面とで、相互に異なる色を有している。
【0011】
ここで、自動二輪車の走行中に右又は左にカーブを曲がる際には、装着者が車体上で体重移動することにより、曲がる方向に車体を傾斜させることがある。これにより、前後輪が傾いた側に自然に曲がろうとする特性、いわゆるセルフステア特性を利用してスムーズなコーナリングを可能にする。ここで、車体を曲がる方向に傾斜させる際、装着者の視線(目線)は車体が曲がる方向に安定した状態(定まった状態)であることが好ましい。これにより、頭の向き、体重移動及び体の傾きをコントロールすることが可能になり、スムーズなコーナリングが可能になる。視線が車体の曲がる方向に対して定まっておらず、頭の位置が不安定な状態であると、反対側に曲がるときの体重移動がスムーズにできず、車両が曲がりきれずに道路から外れたり、あるいは道路の内側の方に転倒する等して事故を招来する。しかし、本発明の自動二輪車用ヘルメットは、視線矯正部をヘルメット本体部のフレーム部中央に備え、又はシールド部の外側面及び内側面の少なくとも何れか一方の中央に備えた構成を採用している。そしてこの視線矯正部は、装着者に対向する対向面の右側に位置する右側面と、左側に位置する左側面とで異なる色を有している。そのため、車両が右側に曲がろうとする際は、装着者の左側視野に於いて、左側面の色を視認させることができる。その一方、車両が左側に曲がろうとする際は、装着者の右側視野に於いて、右側面の色を視認させることができる。この様に、右又は左にカーブを曲がろうとする際に、車両が曲がろうとする方向とは反対側の視野領域で、視線矯正部の右側面又は左側面の色を視認させることで、装着者が常に利き目で曲がろうとするのを矯正することができる。これにより、装着者は、カーブのアール(曲率半径)の程度にかかわらず、当該カーブをスムーズに曲がることが可能になり、運転技能及び技量、特に車両がカーブを曲がろうとする際の運転技能及び技量を各段に上達させることができる。その結果、例えば、カーブに於ける転倒リスクを低減し、運転の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る自動二輪車用ヘルメットを模式的に表す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る自動二輪車用ヘルメットを模式的に表す要部断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る自動二輪車用ヘルメットに於ける視線矯正部を模式的に表す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る自動二輪車用ヘルメットを模式的に表す平面図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る自動二輪車用ヘルメットを模式的に表す要部断面図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る自動二輪車用ヘルメットのシールド部を模式的に表す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る自動二輪車用ヘルメットに於ける視線矯正部を模式的に表す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る自動二輪車用ヘルメットの他のシールド部を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る自動二輪車用ヘルメット(以下、「ヘルメット」という。)について、図1図4を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係るヘルメットを模式的に表す斜視図である。図2は、前記ヘルメットを模式的に表す要部断面図である。図3は、前記ヘルメットに於ける視線矯正部を模式的に表す斜視図である。図4は、前記ヘルメットを模式的に表す平面図である。尚、各図に於いては、説明に不要な部分を省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0014】
本実施の形態に係るヘルメット1は、図1に示すように、ヘルメット本体部11と、シールド部12と、視線矯正部13とを少なくとも備えるフルフェイス型ヘルメットである。本実施の形態のヘルメット1は、例えば、自動二輪車用に好適であり、主に事故の際、ヘルメット1の装着者(運転者)の頭部及び顔面を保護する役割を担う。また、装着者の視界の確保や、エンジン音など自動二輪車の走行時に発生する耳障りな各種の騒音をある程度遮断する機能も有している。
【0015】
ヘルメット本体部11は装着者の頭部の一部又は全部を被覆することで、当該頭部の保護を図る。ヘルメット本体部11は、外側シェル11aと、内側シェル11bとを有する。外側シェル11aは硬質材料からなり、当該硬質材料としては、例えば、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維等が挙げられる。内側シェル11bは衝撃吸収ライナー11cと、衝撃吸収ライナー11cに設けられた通気性を有する頭部用裏当てカバー11dとを有する。頭部用裏当てカバー11dは、接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより衝撃吸収ライナー11cの内側面に部分的に取り付けられる。また、頭部用裏当てカバー11dの下端部は、係止部11eにより外側シェル11a及び衝撃吸収ライナー11cに取り付けられている。衝撃吸収ライナー11cの構成材料としては特に限定されず、例えば、発泡ポリスチレン等が挙げられる。
【0016】
ヘルメット本体部11には、装着者の顔面前方側に開口部14を形成するためのフレーム部15が設けられている。フレーム部15には、その全周囲にわたって縁部材16が接着等により設けられている。縁部材16の構成材料としては特に限定されず、例えば、合成ゴム等の可撓性を有する弾性材料等が挙げられる。
【0017】
さらに、フレーム部15には、その下部周縁内側に沿って内方に延在するブレスガード部18が設けられている。ブレスガード部18は、ヘルメット装着時にブレスガード部18が装着者の鼻を覆うことで、装着者の呼気によりシールド部12の内側面が曇るのを防止し、呼気案内板として機能する。ブレスガード部18は全体形状が円弧状であり、その中央部には上方に向かって隆起する隆起部18aが設けられている。隆起部18aは装着者の鼻を覆う機能を有している。ブレスガード部18は、例えば、ポリエチレン発泡材等で構成されるクッション材の表面を塩化ビニルレザー等で覆い、裏面をナイロンパイル地等のクロスで被覆して構成することができる。
【0018】
またヘルメット本体部11には、ヘルメット1を装着するためのアゴ紐19等が設けられていてもよい(図2参照)。外側シェル11a、内側シェル11b、アゴ紐19等の形状、構造及び材料等に関する詳細な条件については、特に限定せず適宜設定することができる。
【0019】
ヘルメット本体部11(より具体的には、外側シェル11a)の側面には、回動可能にシールド部12を連結させる一対の連結部17が設けられている。連結部17の設置位置は、外側シェル11aの外側面であれば特に限定されず、連結部17の種類、設置数等を考慮して、適宜設定すればよい。連結部17の種類としては特に限定されず、例えば、ボタン、ボルトナット又は雄雌型の連結手段などを採用することができる。また、外側シェル11aの側面に穴を設けて、シールド部12をピン又はビス等で連結固定してもよい。さらに、シールド部12がヘルメット本体部11に対し着脱自在となる様に、連結部17で連結させてもよい。
【0020】
シールド部12は、装着者の顔及び目を、風や前方からの飛来物(例えば、小石、虫、ゴミ等)から保護し、視界を確保することができる。シールド部12は、その両端部に於いて左右一対の連結部17により外側シェル11aに取り付けられている。連結部17でシールド部12が回動することにより、シールド部12を昇降させることができる。シールド部12の昇降は、開口部14を完全に、又は部分的に覆うことが可能な下降位置と、開口部14を開放する上昇位置との間で行うことができる。シールド部12により開口部14を覆う位置は、シールド部12が完全に下降した位置と一致する。その一方、シールド部12が開口部14を開放する位置は、シールド部12が完全に上昇した位置と一致する。また、シールド部12は光透過性を有している。これにより、シールド部12が開口部14を覆う場合にも装着者はシールド部12を介して外部を視認することができる。
【0021】
シールド部12の形状は開口部14の開口形状を考慮して、適宜必要に応じて設定することができる。シールド部12の形状は少なくとも開口部14を覆うものであれば特に限定されない。例えば、シールド部12が縁部材16と密接する形状を有する場合、シールド部12により開口部14を隙間なく覆うことができる。これにより、装着者が自動二輪車を走行させる際、シールド部12と開口部14との隙間から風等が侵入するのを防止し、視界の確保等が一層向上する。
【0022】
シールド部12の材料としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート等の高分子材料が挙げられる。またシールド部12の表面には、紫外線の防止、シールド部12の損傷防止等を目的として、紫外線の反射性を付与するコーティング液を塗布したり、フィルム等をシールド部12の表面に貼着させてもよい。また、シールド部12の色彩及び構造等も特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0023】
視線矯正部13は、その全体形状が直方体状であり、図1及び図2に示すように、フレーム部15の中央に位置する様に設けられる。視線矯正部13は、ヘルメット1の装着時に、装着者の顔面に当接しないことが好ましい。また、視線矯正部13は、シールド部12が開口部14を覆う際に、当該シールド部12の内側面に当接してもよく、又は当接しなくてもよい。
【0024】
視線矯正部13の上面13eは、図3(a)及び3(b)に示すように、水平方向に平行な平坦面となっている。上面13eは、フレーム部15の上端に於ける係止部11eと密着して接合されている。接合方法としては特に限定されず、例えば、接着剤等による接着等が挙げられる。尚、視線矯正部13の上面13eは平坦面である場合に限定されない。接合させるフレーム部15の上端の縁部材16の形状に応じて、例えば、傾斜面等であってもよい。
【0025】
また、視線矯正部13の下部の下面13dは、対向面13aに向かうに従い、当該対向面13aの面積が小さくなるように傾斜した傾斜面となっている。下面13dは、フレーム部15のブレスガード部18に於ける隆起部18aに密着して接合されている。接合方法としては特に限定されず、例えば、接着剤等による接着等が挙げられる。尚、視線矯正部13に於ける下部の下面13dの傾斜の程度は特に限定されず、接合させる隆起部18aの形状に応じて適宜設定することができる。例えば、下面13dは水平方向に平行な平坦面であってもよい。
【0026】
視線矯正部13に於いて、装着者に対向する対向面13a、対向面13aに対して右側に位置する右側面13b、及び当該対向面に対して左側に位置する左側面13cは、少なくとも相互に異なる色を有している。これにより、装着者の視野を右側視野Aと左側視野Bに区画することができる(図4参照)。そして、装着者が視線を左側視野の方向に向けたとき、右目が右側面13bの色を視認することができ、その反対に、視線を右側視野の方向に向けたとき、左目が左側面13cの色を視認することができる。また、対向面13aを右側面13b及び左側面13cと異なる色とするのは、右側面13b及び左側面13cが有する色を明確に視認できるようにするためである。これにより、自動二輪車の進行方向の切り替えを行う際に、対向面13aの色を視認させることができる。尚、視線矯正部13に於ける対向面13aとは反対側の面13fの色は特に限定されず、任意である。
【0027】
また、視線矯正部13は直方体状の場合に限定されず、多角柱等の角柱体状であればよい。さらに、対向面13a、右側面13b及び左側面13cの各色の組合せは特に限定されず、例えば、対向面13aを黒色、右側面13bを赤色、左側面13cを青色にするなど、色差が相互に大きくなる組合せにするのが好ましい。
【0028】
視線矯正部13の構成材料としては、剛性又は弾性を有し、かつ、加工性に優れるものが好ましい。例えば、視線矯正部13が装着者の顔面に当接しない態様である場合、視線矯正部13は剛性を有するものであってもよい。また、装着者の安全性向上の観点からは、弾性を有するものが好ましい。視線矯正部13の構成材料の具体例としては、例えば、ポリカーボネート等の高分子樹脂や、低反発のスポンジ及びゴム等が挙げられる。
【0029】
尚、本実施の形態1に於いては、視線矯正部13に関し、その上面13eが水平方向に対し平行な平坦面を有し、下面13dが傾斜面を有する場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。係止部11eやブレスガード部18の表面形状に応じて、密着する様に適宜変更することができる。
【0030】
また、本実施の形態1に於いては、視線矯正部13が係止部11e及びブレスガード部18の隆起部18aにそれぞれ密着して接合されている場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、弾性を有する視線矯正部13を、その長尺方向に於いて押圧により変形させ、これにより視線矯正部13を係止部11eとブレスガード部18の隆起部18aとの間に係止させてもよい。視線矯正部13を押圧によりその長尺方向に変形させることで、視線矯正部13が元の形状に復元しようとする力の作用により、係止部11eと隆起部18aとの間に係止させることができる。この場合、視線矯正部13は、ヘルメット本体部11に対し着脱自在にすることができる。
【0031】
さらに、視線矯正部13は、その上面13e及び/又は下面13dを、フレーム部15の縁部材16に密着して接合ないし係止させる様に設けてもよい。この場合、視線矯正部13の上面13e及び下面13dは縁部材16に対し十分に密着可能となる様に適宜形状を変更するのが好ましい。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係るヘルメットについて、図5図7を参照しながら以下に説明する。図5は、実施の形態2に係るヘルメットを模式的に表す要部断面図である。図6はヘルメットのシールド部を模式的に表す斜視図である。図7は、前記ヘルメットに於ける視線矯正部を模式的に表す斜視図である。
【0033】
本実施の形態2に係るヘルメットは実施の形態1に係るヘルメットと比較して、図5及び図6に示すように、視線矯正部21をシールド部12の内側面に設けた点が異なる。
【0034】
視線矯正部21は、その全体形状が直方体状であり、シールド部12の中央に於いて、両端部がシールド部12から逸脱しない様に設けられている。これにより、シールド部12が下降位置で開口部14を覆う際、開口部14を隙間なく覆うことができる。また視線矯正部21は、シールド部12が下降位置で開口部14を覆う際、装着者に対向する対向面21aが装着者の顔面に当接しない大きさであることが好ましい。さらに視線矯正部21は、開口部14を開放する上昇位置では、ヘルメット本体部11の外側シェル11aに当接しない大きさであることが好ましい。
【0035】
視線矯正部21に於いて対向面21aとは反対側の面21fは、シールド部12の内側面に密着して接合されている。接合方法としては特に限定されず、例えば、粘着剤、接着剤、両面接着テープ等による接着等が挙げられる。
【0036】
また視線矯正部21に於いて、対向面21a、対向面21aに対して右側に位置する右側面21b、及び当該対向面に対して左側に位置する左側面21cは、少なくとも相互に異なる色を有している。これにより、装着者の視野を右側視野Aと左側視野Bに区画することができる(図4参照)。そして、装着者が視線を左側視野の方向に向けたとき、右目が右側面21bの色を視認することができ、その反対に、視線を右側視野の方向に向けたとき、左目が左側面21cの色を視認することができる。また、対向面21aを右側面21b及び左側面21cと異なる色とするのは、右側面21b及び左側面21cが有する色を明確に視認できるようにするためである。これにより、自動二輪車の進行方向の切り替えを行う際に、対向面21aの色を視認させることができる。尚、視線矯正部21に於ける対向面21aとは反対側の面21fの色は特に限定されず、任意である。
【0037】
視線矯正部21の上面21e及び下面21dは、図7(a)及び7(b)に示すように、それぞれ水平方向に平行な平坦面となっている。尚、視線矯正部21の上面21e及び下面21dは平坦面である場合に限定されず、例えば、傾斜面や段差を備えた形状等であってもよい。
【0038】
また、視線矯正部21は直方体状の場合に限定されず、多角柱等の角柱体状であればよい。さらに、対向面21a、右側面21b及び左側面21cの各色の組合せは特に限定されず、例えば、対向面21aを黒色、右側面21bを赤色、左側面21cを青色にするなど、色差が相互に大きくなる組合せにするのが好ましい。
【0039】
視線矯正部21の構成材料としては、剛性又は弾性を有し、かつ、加工性に優れるものが好ましい。本実施の形態2に於いては、シールド部12の湾曲形状に追随することが可能な弾性を有するものが好ましい。視線矯正部21の構成材料の具体例としては、例えば、ポリカーボネート等の高分子樹脂や、低反発のスポンジやゴム等が挙げられる。
【0040】
尚、本実施の形態2に於いては、視線矯正部21が、その対向面21aとは反対側の面21fに於いてシールド部12の内側面と密着して接合されている場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、視線矯正部21をシールド部12の外側面と密着して接合させてもよい。この場合、視線矯正部21はシールド部12の外側面に対し外方に突出して設けられる。また、シールド部12の外側面と密着して接合させる面は、視線矯正部21の対向面21aとなる。視線矯正部21とシールド部12の外側面との接合方法としては特に限定されず、例えば、粘着剤、接着剤、両面接着テープ等による接着等が挙げられる。粘着剤による接合の場合、視線矯正部21はシールド部12に対し着脱することができる。さらに、前述の実施の形態1に係る視線矯正部13をフレーム部15の中央に位置する様に設け、本実施の形態の視線矯正部21と併用してもよい。
【0041】
また本実施の形態2に於いては、図8に示すように、シールド部31の内側面の上下方向に於いて、相互に離間した一対の係止部32を設け、この一対の係止部32により視線矯正部21を係止させて設けてもよい。図8は、シールド部31を模式的に表す断面図である。一対の係止部32により係止される視線矯正部21は、対向面21aとは反対側の面21fがシールド部31の内側面に密着している。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。視線矯正部21の面21fは、シールド部31の内側面と離間していてもよい。
【0042】
一対の係止部32は装着者に向かって突出する様に設けられている。また、一対の係止部32はシールド部31と一体となる様に成形されている。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、シールド部31の内側面に接着剤等により接合して設けてもよい。
【0043】
一対の係止部32の一方(上側係止部32a)には、視線矯正部21の上面21eを収容することで、当該視線矯正部21の上部を嵌合させることが可能な嵌合溝部33aが設けられている。また、一対の係止部32の他方(下側係止部32b)には、視線矯正部21の下面21dを収容することで、当該視線矯正部21の下部を嵌合させることが可能な嵌合溝部33bが設けられている。これにより、視線矯正部21がシールド部31から脱落するのを防止することができる。また、視線矯正部21をシールド部31に対し着脱可能にする。
【0044】
尚、一対の係止部はシールド部の外側面に設けてもよい。この場合、一対の係止部は外方に向かって突出する様に設けられる。
【0045】
また本実施の形態2に於いては、フルフェイス型ヘルメットを例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、フルフェイス型ヘルメットに於いて装着者の顎に当接する部分が欠如したジェット型ヘルメットでもよい。この場合に於いても、シールド部12の外側面及び/又は内側面に於ける中央に視線矯正部21を設けることで、装着者の視野を右側視野と左側視野に区画し、自動二輪車がカーブを曲がろうとする際の装着者の視線の矯正を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…自動二輪車用ヘルメット、11…ヘルメット本体部、11a…外側シェル、11b…内側シェル、11c…衝撃吸収ライナー、11d…カバー、11e…係止部、12…シールド部、13、21…視線矯正部、13a、21a…対向面、13b、21b…右側面、13c、21c…左側面、13d、21d…下面、13e、21e…上面、13f、21f…対向面とは反対側の面、14…開口部、15…フレーム部、16…縁部材、17…連結部、18…ブレスガード部、18a…隆起部
図1
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図8