(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】正極電極用集電体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240423BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20240423BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M50/583
H01M50/536
(21)【出願番号】P 2022539130
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2020016146
(87)【国際公開番号】W WO2021132886
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0173632
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521018683
【氏名又は名称】ユーアンドエス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ヨン フン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-102711(JP,A)
【文献】特開2009-059571(JP,A)
【文献】特開2010-238410(JP,A)
【文献】特開2005-108835(JP,A)
【文献】特開平09-120818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0319312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、
非金属不導体材質の高分子フィルム;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一方に設けられる金属片;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と反対側の一面に設けられるか、または前記金属片の一面に設けられるリードタブ;及び
前記導電材と前記金属片との間に設けられるか、または前記導電材と前記リードタブとの間に設けられる絶縁性高分子層;を含み、
前記導電材は、内部短絡または外部短絡の発生時に電気化学的ヒューズの機能を有するか短絡電流を遮断するか下げる機能を有することを特徴とする、正極電極用集電体。
【請求項2】
金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、
非金属不導体材質の高分子フィルム;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一方に設けられる金属片;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と反対側の一面に設けられるか、または前記金属片の一面に設けられるリードタブ;及び
前記導電材と前記金属片との間に設けられるか、または前記導電材と前記リードタブとの間に設けられる絶縁性高分子層;を含み、
内部短絡または外部短絡が発生すると前記導電材は電解液と反応して前記導電材の全体厚さにわたって厚さ方向に沿って腐食されるか割れながら短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げることを特徴とする、正極電極用集電体。
【請求項3】
金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、
非金属不導体材質の高分子フィルム;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一方に設けられる金属片;
前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と反対側の一面に設けられるか、または前記金属片の一面に設けられるリードタブ;及び
前記導電材と前記金属片との間に設けられるか、または前記導電材と前記リードタブとの間に設けられる絶縁性高分子層;を含み、
内部短絡または外部短絡が発生すると前記正極電極用集電体の電位が負極電位まで落ちながら前記導電材は全体厚さにわたって厚さ方向に沿って腐食されるか割れながら短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げることを特徴とする、正極電極用集電体。
【請求項4】
前記金属片と前記高分子フィルムとの間
または前記リードタブと前記高分子フィルムの間に前記導電材が設けられ
、前記導電材の表面には前記絶縁性高分子層が設けられることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の正極電極用集電体。
【請求項5】
前記金属片は、アルミニウムフォイルまたはSUS 316Lフォイルで設けられることを特徴とする、請求項4に記載の正極電極用集電体。
【請求項6】
前記リードタブと前記金属片との溶接時に、前記絶縁性高分子層と前記高分子フィルムとが溶融して溶接ポイントが形成され、 前記溶接ポイントのみに電流パスが形成されることを特徴とする、
請求項1乃至3に記載の正極電極用集電体。
【請求項7】
前記高分子フィルムの表面にコーティングまたは塗布される前記導電材には、ナノサイズの気孔が多数個形成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の正極電極用集電体。
【請求項8】
前記導電材は、前記高分子フィルムの上面または下面のうち
少なくとも一面に設けられ、
前記高分子フィルムの上面または下面に対して前記導電材、前記絶縁性高分子層及び前記金属片は同じ方に設けられる
か、前記導電材及び前記絶縁性高分子層は同じ方に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至3に記載の正極電極用集電体。
【請求項9】
前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と
反対側の一面には、前記高分子フィルムに接合または連結される
前記リードタブが設けられることを特徴とする、請求項
8に記載の正極電極用集電体。
【請求項10】
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうちいずれか一面に設けられる
前記金属片及び前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と
反対側の一面に設けられる
前記絶縁性高分子層を含み、
前記絶縁性高分子層と前記高分子フィルムとの間に前記導電材が設けられることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の正極電極用集電体。
【請求項11】
前記絶縁性高分子層に接合または連結される
前記リードタブを含むことを特徴とする、請求項
10に記載の正極電極用集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極電極用集電体に関し、さらに詳細には、高分子フィルムにアルミニウム金属がめっきされることで短絡時の電池の過熱現象を防止するか短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げる電気化学的ヒューズの機能を果たす正極電極用集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれ、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうち高いエネルギー密度と作動電位を示し、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されている。
【0003】
リチウム金属二次電池は、最初に商用化された二次電池であって、リチウム金属を負極として使用する。しかし、リチウム金属二次電池は、リチウム金属負極の表面に形成されるリチウム樹枝状によりセルの体積膨張、容量及びエネルギー密度の漸進的な減少、樹枝状の持続成長による短絡発生、サイクル寿命減少とセル安定性の問題(爆発及び発火)があり、商用化されてわずか数年ぶりに生産が中断された。そこで、リチウム金属の代わりにより安定で格子や空いた空間内にリチウムをイオン状態で安定して貯蔵できる炭素系負極が使用され、前記炭素系負極の使用により本格的なリチウム二次電池の商用化及び普及が進められた。
【0004】
現在まで、リチウム二次電池は、炭素系または非炭素系負極素材が主流となっており、ほとんどの負極材の開発は、炭素系(黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等)と非炭素系(シリコン、スズ、チタン酸化物等)素材に集中されている。
【0005】
一方、近年は、携帯用電子機器及び情報通信機器が小型化するにつれ、これらを駆動するための超小型電源システムとしてリチウム二次電池の利用が大きく期待されている。
【0006】
さらに、近年は、柔軟性(Flexibility)、低価格、作製容易性等の長所を利用した高分子系電子機器及び素子の開発及び研究が盛んに進められている。従って、小型化した機器に使用するためには、リチウム二次電池のエネルギー密度または性能は維持しながらも電池の厚さまたは重さを減らす必要がある。
【0007】
また、リチウム二次電池の厚さまたは重さを減らしても、短絡の発生時、電流パスを遮断するか短絡電流を下げることでリチウム二次電池の安全性を高めることができなければならない。
【0008】
本出願人は、前記のような問題点を解決するために、本発明を提案することとなった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するために提案されたものであり、金属フォイルからなる集電体と比較して厚さまたは重さを減らすことができながら同時に内部短絡または外部短絡の発生時にヒューズのような機能を果たすことで温度上昇を防止し、電池の安定性を高めることができる正極電極用集電体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のような課題を達成するための本発明に係る正極電極用集電体は、金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、非金属不導体材質の高分子フィルム;及び、前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;を含み、前記導電材は、内部短絡または外部短絡の発生時に電気化学的ヒューズの機能を有するか短絡電流を遮断するか短絡電流を下げる機能を有することができる。
【0011】
また、本発明に係る正極電極用集電体は、金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、非金属不導体材質の高分子フィルム;及び、前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;を含み、内部短絡または外部短絡が発生すると前記導電材は電解液と反応して前記導電材の全体厚さにわたって厚さ方向に沿って腐食されるか割れながら短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げることができる。
【0012】
また、本発明に係る正極電極用集電体は、金属フォイルを代替する正極電極用集電体であって、非金属不導体材質の高分子フィルム;及び、前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一つの一面に0.25~0.6μmの厚さにコーティングまたは塗布されて前記正極電極用集電体の最外面を形成するアルミニウム導電材;を含み、内部短絡または外部短絡が発生すると前記正極電極用集電体の電位が負極電位まで落ちながら前記導電材は全体厚さにわたって厚さ方向に沿って腐食されるか割れながら短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げることができる。
【0013】
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうち少なくとも一方に設けられる金属片を含み、前記金属片と前記高分子フィルムとの間に前記導電材が設けられ得る。
【0014】
前記金属片は、アルミニウムフォイルまたはSUS 316Lフォイルで設けられ得る。
【0015】
前記金属片に接合または連結されるリードタブを含むことができる。
【0016】
前記導電材と前記金属片との間には、絶縁性高分子層が設けられ得る。
【0017】
前記高分子フィルムの表面にコーティングまたは塗布される前記導電材には、ナノサイズの気孔が多数個形成され得る。
【0018】
前記金属片は、前記高分子フィルムの上面及び下面に形成された前記導電材のうちいずれか一方の表面に設けられ、前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と向かい合う方で前記導電材の表面に設けられる絶縁性高分子層及び前記金属片と向かい合う方で前記絶縁性高分子層に接合または連結されるリードタブを含むことができる。
【0019】
前記導電材は、前記高分子フィルムの上面または下面のうちいずれか一面に設けられ、前記高分子フィルムの上面または下面に対して前記導電材、前記絶縁性高分子層及び前記金属片は同じ方に設けられ得る。
【0020】
前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と向かい合う一面には、前記高分子フィルムに接合または連結されるリードタブが設けられ得る。
【0021】
前記導電材と電気的に連結されるように前記高分子フィルムの上面または下面のうちいずれか一面に設けられる金属片及び前記高分子フィルムの上面または下面のうち前記金属片と向かい合う方に設けられる絶縁性高分子層を含み、前記絶縁性高分子層と前記高分子フィルムとの間に前記導電材が設けられ得る。
【0022】
前記絶縁性高分子層に接合または連結されるリードタブを含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る正極電極用集電体は、金属フォイルの代わりに不導体からなる高分子フィルムを利用し、高分子フィルムの上下両面のうち少なくとも一面に導電材をコーティングまたはめっき層を形成するため、金属フォイルからなる集電体より厚さまたは重さを減らすことができる。
【0024】
本発明に係る正極電極用集電体は、内部短絡または外部短絡の発生時、金属フォイルからなる集電体の抵抗より大きな抵抗値を有し、また高分子フィルムの一面に形成された導電材の腐食または電気化学的反応の結果物によって電流の流れが妨害を受け得るため、短絡の発生時、短絡電流を低下させることができ、電池の温度が高くなることを防止して電池の安全性を向上させることができる。
【0025】
本発明に係る正極電極用集電体は、二次電池のエネルギー密度は高めながらも、安全性を高めることができ、短絡の発生時、電池の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る正極電極用集電体を含む電極組立体を示した斜視図である。
【
図2】本発明に係る電極組立体を示した分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る正極電極用集電体を示した斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図である。
【
図5】本発明の第2実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図である。
【
図6】本発明の第3実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図である。
【
図7】本発明の第4実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる容量測定の結果を示すグラフである。
【
図9】本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる釘貫通試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、添付の図面を参照して本発明に係る実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、実施例により制限または限定されるものではない。各図面に提示された同じ参照符号は、同じ部材を示す。
【0028】
図1は、本発明に係る正極電極用集電体を含む電極組立体を示した斜視図、
図2は、本発明に係る電極組立体を示した分解斜視図、
図3は、本発明に係る正極電極用集電体を示した斜視図、
図4は、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図、
図5は、本発明の第2実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図、
図6は、本発明の第3実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図、
図7は、本発明の第4実施例に係る正極電極用集電体を示した断面図、
図8は、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる容量測定の結果を示すグラフ、
図9は、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる釘貫通試験の結果を示すグラフである。
【0029】
図1及び
図2には、本発明に係る正極電極用集電体100を含む電極組立体10が示されている。
図1及び
図2の場合、本発明に係る正極電極用集電体100は、電極組立体10に使用されるために正極電極用集電体100の表面に正極活物質103が塗布されなければならない。
【0030】
一方、負極電極用集電体200は、負極金属フォイル201に負極活物質203が塗布され、長手方向の一端側に負極リードタブ290が連結され得る。
【0031】
負極電極用集電体200と本発明に係る正極電極用集電体100との間に分離膜300が配置され得る。
図2に示されたような状態で分離膜300を挟んで上下にそれぞれ負極電極用集電体200と正極電極用集電体100を順に積むと
図1のような電極組立体10となる。
【0032】
図3には、本発明に係る正極電極用集電体100が示されている。正極電極用集電体100は、先に言及した負極電極用集電体200とは異なり金属フォイルを使用しない。
【0033】
図3に示されたような本発明に係る正極電極用集電体100は、金属フォイルからなる集電体の抵抗より大きな抵抗値を有するため、集電体を流れる電流の限界電流値を調整でき、高分子フィルムの損傷により電流の流れが妨害を受け得るため、二次電池の内部短絡の発生時、短絡電流を低下させるか発熱を防止できる。
【0034】
本発明に係る正極電極用集電体100を備えたリチウム二次電池(Lithium Secondary Battery)は、Max Current Limited Battery(MCLB)の性格または概念を有し得る。以下においては、MCLBの具現を可能とする本発明に係る正極電極用集電体について説明する。
【0035】
本発明に係る正極電極用集電体100は、既存の電池の金属フォイル(metal foil)で形成された正極電極用集電体の抵抗より高い抵抗値を有するため、限界電流を調整できるだけではなく、内部短絡時に電流パスを崩壊させることで短絡電流を低下させるか短絡時に発生する発熱現象を減らして電池の安全性を高めることができる。
【0036】
本発明に係る正極電極用集電体100は、金属フォイルを使用せず、高分子フィルム101を基本素材とし、高分子フィルム101上に薄い厚さの金属が塗布またはコーティングされ得る。
【0037】
以下においては、図面を参照して本発明に係る正極電極用集電体100の多様な形態について説明する。
【0038】
まず、
図4乃至
図7を参照すると、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101;高分子フィルム101の上面または下面のうち少なくとも一つの一面に設けられる導電材(Conductive material)102;導電材102と電気的に連結されるように高分子フィルム101の上面または下面の方に設けられる金属片(Metal element)120;及び、前記金属片120、前記導電材102または前記高分子フィルム101のいずれか一つと接合されるように設けられて前記導電材102と電気的に連結されるリードタブ(Lead tab)190;を含み、前記導電材102は、前記金属片120と前記高分子フィルム101との間に位置するか前記リードタブ190と前記高分子フィルム101との間に位置し、前記リードタブ190は、前記高分子フィルム101の上面及び下面の方に設けられた前記金属片120と溶接されるか前記リードタブ190と向かい合う前記高分子フィルム101の一面の方に設けられた前記金属片120と溶接され得る。
【0039】
このとき、前記導電材102は、前記金属片120と前記高分子フィルム101との間に位置するか前記高分子フィルム101と前記リードタブ190との間に位置し得る。
【0040】
ここで、前記導電材102は、短絡時、電解液との反応を通して電気化学的ヒューズ(electrochemical fuse)の機能を果たすことができるため、短絡防止機能を有することができる。このような導電材102の電気化学的特性については後述する。
【0041】
高分子フィルム101は、一定の長さは有するように帯状に設けられ得る。ここで、高分子フィルム101は、その長手方向(即ち、相対的に長い長さを有する方向)に沿ってロールツーロール(Roll to roll)方式で供給または移送されることで後述する電極組立体10を形成することができる。
【0042】
高分子フィルム101は、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene terephthalate)、ポリイミド(PI:Polyimide)またはポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)等の高分子不導体材質で設けられることが好ましい。
【0043】
高分子フィルム101は、50μm以下の厚さを有し、1.4μm以上、50μm以下の厚さを有することが好ましい。本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体100は、既存の金属フォイル集電体を使用する場合より電池の厚さまたは重さを減らすことができるが、厚さが1.4μm以上、50μm以下である不導体材質の高分子フィルムを高分子フィルム101として使用することで、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600を備えたリチウム二次電池の全体的な厚さまたは重さを減らすことができる。
【0044】
一方、高分子フィルム101は、300℃より低い温度で溶ける材質で形成されることが好ましい。リードタブ190を溶接して高分子フィルム101に固定するようになるが、高分子フィルム101がリードタブ190の溶接温度より低い温度で溶けなければリードタブ190が高分子フィルム101に結合され得ない。従って、高分子フィルム101は、リードタブ190を溶接する過程で溶けることができる程度の融点を有しなければならず、300℃より低い融点を有することが好ましい。
【0045】
一方、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101の上面または下面のうち少なくとも一つの表面に設けられる導電材(conductive material)102を含むことができる。
【0046】
導電材102は、アルミニウム(Al)で設けられることが好ましく、高分子フィルム101の表面にめっきまたはコーティングされた状態で形成され得る。従って、導電材102は、正極電極用集電体100の最も外面を形成する導電層(conductive layer)ともいえる。
【0047】
導電材102は、正極電極用集電体100,400,500,600の限界電流または最大電流を調節するか下げるように形成され得る。言い換えれば、導電材102は、正極電極用集電体100,400,500,600の伝導性(conductivity)を制御するために高分子フィルム101の上面または下面のうち少なくとも一つの表面にめっきまたはコーティングされるアルミニウムであり、高分子フィルム101の表面にめっきまたはコーティングされた状態に重点を置く場合は、導電材102は導電層ともいえる。以下において、導電材102は、導電層を含む概念であることを明らかにしておく。
【0048】
高分子フィルム101の上面または下面のうち少なくとも一つの表面にめっきまたはコーティングされる導電材102のコーティング量またはコーティング厚さを調節することで正極電極用集電体100,400,500,600を流れる電流の最大量を制御または下げることができ、これによって、リチウム二次電池の安全性を高めることができ、短絡の発生時、電池の安全性を確保することができる。
【0049】
言い換えれば、高分子フィルム101の表面に形成された導電材102の厚さまたは量によって正極電極用集電体100を流れる限界電流または最大電流が調節され得る。このように、本発明に係る電極用集電体100,400,500,600の導電材102によってリチウム二次電池(Lithium Secondary Battery)のMax Current Limited Battery(MCLB)の性格または概念が具現され得る。
【0050】
また、物理的な内部短絡または外部短絡の発生時、高分子フィルム101が溶けることがあり、急激な電流の発生を妨害し得るため、電池の安全性を向上させることができる。併せて、導電材102の厚さが薄い場合は、内部短絡または外部短絡の発生時、導電材102を形成するアルミニウム層の電位が低くなってアルミニウム層と電解液の電気化学的反応を誘導するため、伝導性を下げるか電流を遮断することで電池の安全性を向上させることができる。
【0051】
前記導電材102は、多様な方式により高分子フィルム101の表面に形成され得る。例えば、導電材102が金属である場合は、スパッタリング(sputtering)または蒸発コーティング(evaporation coating)によって高分子フィルム101の表面に形成され得る。
【0052】
導電材102がめっきまたはコーティングされる量(重さ)または厚さによって正極電極用集電体100の伝導性を制御するか電池の安全性を確保することができるため、めっきまたはコーティングするとき、導電材102の厚さまたは重さを制御乃至調節できる方式を使用する必要がある。
【0053】
高分子フィルム101の表面にめっきまたはコーティングされる導電材102の厚さは、リードタブ190と電極(集電体)の長さによって決定され得る。例えば、電極(集電体)の長さが長くなると導電材102のめっき厚さも増加することが好ましい。
【0054】
導電材102は、高分子フィルム101のいずれか一面にのみ形成されるか両面のいずれにも形成されてもよい。このとき、導電材102は、高分子フィルム101のいずれか一面最小0.25μm、最大0.6μmの厚さに形成されることが好ましい。
【0055】
本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、導電材102によって電流の流れが可能であるため、高分子フィルム101の表面に導電材102がめっきまたはコーティングされた状態がよく維持されなければならない。このために、高分子フィルム101の表面処理をして導電材102と高分子フィルム101の結着力を高めることが好ましい。
【0056】
導電材102と高分子フィルム101間の結着力がよくなければ、電解液が注入された状態で導電材102が高分子フィルム101の表面から分離または離脱され得るため、導電材102と高分子フィルム101間の結着力を高めることが重要である。
【0057】
高分子フィルム101の表面には、導電材102との接着力または結着力を高めるための表面処理が形成され得る。
【0058】
導電材102と高分子フィルム101の結着力を高めるために、高分子フィルム101の表面にコロナ処理をすることが好ましい。
【0059】
一方、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、外部機器との連結のためのリードタブ190を備えることができる。
【0060】
金属フォイルからなる既存の電極集電体は、金属フォイルに直接リードタブを溶接できるが、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、既存の金属フォイルに対応する構成が薄い高分子フィルム101であるため、高分子フィルム101に直接リードタブを溶接することが不可能である。即ち、高分子フィルム101の上面または下面に形成された導電材102にリードタブ190を溶接しなければならないが、高分子フィルム101が薄いため、溶接部位に十分な引張強度を確保することができず、リードタブ190が高分子フィルム101に貼り付くことが難しい。本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101の上面及び下面に金属材質の金属片120を貼り付けた状態で金属片120にリードタブ190を溶接するか、いずれか一面に金属片120を貼り付け、他面にリードタブ190を貼り付けた状態でリードタブ190を金属片120に溶接することでこのような問題を解決できる。
【0061】
本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600において、リードタブ190は、超音波溶接(ultrasonic welding)、レーザ溶接(laser welding)またはスポット溶接(spot welding)によって金属片120、導電材102または高分子フィルム101に溶接され得る。
【0062】
図4乃至
図7に示された本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101の上面及び下面のいずれにも金属からなる金属片120、リードタブ190が位置し得る。
【0063】
以下においては、
図4乃至
図7を参照して正極電極用集電体100,400,500,600についてより詳細に説明する。
【0064】
まず、
図4に示された本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体100は、高分子フィルム101の上面と下面に導電材102が設けられ得る。上下の導電材102と接合または連結されるように高分子フィルム101の上面及び下面にはそれぞれ金属片120が設けられている。即ち、金属片120は、高分子フィルム101の上面の方と下面の方で導電材102と接合または連結されるように設けられ得る。リードタブ190は、高分子フィルム101の上下に設けられた金属片120のいずれか一つに溶接されることで、リードタブ190は、金属片120及び導電材102と電気的に連結され得る。
【0065】
ここで、金属片120は、高分子フィルム101上でリードタブ190を溶接する位置を確保する役割を果たすことができる。即ち、金属片120は、リードタブ190の連結部のような役割を果たすことができる。
【0066】
金属片120は、5μm以上の厚さを有するように形成されることが好ましい。ここで、金属片120は、高分子フィルム101の一部分にのみ設けられることで十分である。高分子フィルム101上に設けられる金属片120の個数または位置等には制限がない。ただし、金属片120にリードタブ190が溶接される場合であれば、電極組立体の形態を考慮してリードタブ190が溶接される金属片120の位置を決定することが好ましい。
【0067】
上述のように、金属片120は、5μm以上の厚さを有する金属薄膜または金属フォイルの形態を有することが好ましいが、必ずしもこのような形態に限定されるものではない。即ち、金属片120は、薄膜、フォイルまたはメッシュ(mesh)の形態に設けられ得る。
【0068】
金属片120は、アルミニウムフォイル(foil)またはSUS 316Lフォイルで設けられ得る。
【0069】
このように、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体100の金属片120は、リードタブ190の溶接位置を確保することができる。
【0070】
図4に示されたように、高分子フィルム101の上下両面に導電材102が形成され得、上下の導電材102と接触するように金属片120が高分子フィルム101の上下両面の方に設けられ得る。リードタブ190は、上下の金属片120のいずれか一つに溶接され得る。溶接をするようになると高分子フィルム101が溶けながら導電材102、金属片120及びリードタブ190が電気的に連結され得る。
【0071】
また、
図4に示された本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体100を参照すると、導電材102と向かい合う金属片120の一面と導電材102との間には、絶縁性高分子層130が形成され得る。絶縁性高分子層130は、高分子フィルム101の表面または導電材102の表面に金属片120を貼り付けるか導電材102と金属片120を絶縁するためのものである。
図4の場合は、導電材102と金属片120との間に絶縁性高分子層130が設けられ得る。
【0072】
絶縁性高分子層130は、接着性または粘着性を有する物質で設けられることが好ましい。また、絶縁性高分子層130は、高分子(Polymer)材質で設けられるか高分子フィルムの形態に設けられ得る。絶縁性高分子層130が高分子フィルムの形態に設けられる場合は、厚さが50μm未満であることが好ましい。
【0073】
絶縁性高分子層130は、高分子フィルム101と同じ温度で溶けるか高分子フィルム101の低い温度で溶け得る。即ち、絶縁性高分子層130は、高分子フィルム101と同じ融点を有するか、高分子フィルム101の融点より低い温度の融点を有することが好ましい。
【0074】
絶縁性高分子層130は、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF:Polyvinylidene Difluoride)、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリイミド(PI:Polyimide)等の高分子材質で形成されるだけではなく、エチレン酢酸ビニル(EVA:Ethylene Vinyl Acetate)またはアクリレート(Acrylate)系化合物等のように接着成分を有する高分子材質で形成され得る。
【0075】
絶縁性高分子層130は、高分子フィルム101または導電材102の表面に金属片120を貼り付ける機能だけではなく、絶縁層の機能も果たすことができる。リードタブ190が溶接されるとき、絶縁性高分子層130は溶けながら導電材102と電気的に連結されるが、溶接された部分を除く部分は、絶縁性高分子層130によって絶縁された状態となる。外部短絡時、電気的に連結された部分が溶接された部分に制限された場合、溶接された部分の導電材102が反応して電流を減らすか遮断できる。電気的に連結された部分が広い場合は、反応が多く必要であるため、電流遮断が難しいことがある。従って、導電材102に金属片120が貼り付けられる場合に、導電材102と金属片120との間に絶縁性を有する絶縁性高分子層130が設けられることが好ましい。
【0076】
ここで、高分子フィルム101の両面にそれぞれ設けられた導電材102に貼り付けられる絶縁性高分子層130及び金属片120は、高分子フィルム101を基準に互いに同じ位置に設けられ得る。
【0077】
図5には、本発明の第2実施例に係る正極電極用集電体400が示されている。
図5を参照すると、正極電極用集電体400は、高分子フィルム101の上下両面に塗布された導電材102、いずれか一方の導電材102の表面に設けられる金属片120、他の一方の導電材102の表面に設けられるリードタブ190、導電材102と金属片120との間に設けられる絶縁性高分子層130、導電材102とリードタブ190との間に設けられる絶縁性高分子層130を含むことができる。
【0078】
図4の正極電極用集電体100と比較すると、金属片120が高分子フィルム101の一方に設けられ、反対側にはリードタブ190だけが設けられる点、金属片120と導電材102との間には絶縁性高分子層130があるが、絶縁性高分子層130とリードタブ190との間には金属片120がない点で差がある。しかし、
図5に示された正極電極用集電体400も高分子フィルム101の上面と下面のいずれにも金属からなる部材、即ち、金属片120とリードタブ190が位置する点では
図4に示された正極電極用集電体100と類似している。
【0079】
高分子フィルム101の上下両面にそれぞれ設けられる金属片120とリードタブ190は、同じ位置に設けられ得る。
【0080】
図6には、本発明の第3実施例に係る正極電極用集電体500が示されている。
図6を参照すると、正極電極用集電体500は、高分子フィルム101の上下両面のうちいずれか一面にのみ塗布された導電材102、導電材102の表面に設けられる金属片120、導電材102のない高分子フィルム101の表面に設けられるリードタブ190、導電材102と金属片120との間に設けられる絶縁性高分子層130を含むことができる。
【0081】
図5の正極電極用集電体400と比較すると、導電材102と金属片120が高分子フィルム101の一面にのみ設けられ、高分子フィルム101の反対面にはリードタブ190だけが設けられる点、金属片120と導電材102との間には絶縁性高分子層130があるが、高分子フィルム101とリードタブ190との間には絶縁性高分子層130がない点で差がある。しかし、
図6に示された正極電極用集電体500も高分子フィルム101の上面と下面のいずれにも金属からなる部材、即ち、金属片120とリードタブ190が位置する点では
図4に示された集電体100、
図5に示された正極電極用集電体400と類似している。
【0082】
高分子フィルム101の上下両面にそれぞれ設けられる金属片120とリードタブ190は、同じ位置に設けられ得る。
【0083】
図6に示された本発明の第3実施例に係る正極電極用集電体500は、アルミニウム導電材102が塗布されていない高分子フィルム101の一面にリードタブ190が貼り付けられるため、導電材102のない面を内側として折って電極組立体を形成するとき、リードタブ190が分離膜及び負極と当たらなくなる。従って、リードタブ190の短絡を防止するための別途の保護フィルムが不要であるという長所がある。
【0084】
図7には、本発明の第4実施例に係る正極電極用集電体600が示されている。
図7を参照すると、正極電極用集電体600は、高分子フィルム101の上下両面のうちいずれか一面にのみ塗布された導電材102、導電材102の表面に設けられるリードタブ190、導電材102のない高分子フィルム101の表面に設けられる金属片120、導電材102とリードタブ190との間に設けられる絶縁性高分子層130を含むことができる。
【0085】
高分子フィルム101の上下両面にそれぞれ設けられる金属片120とリードタブ190は、同じ位置に設けられ得る。
【0086】
図7に示された正極電極用集電体600は、金属片120とリードタブ190の位置が反対である点で
図6に示された正極電極用集電体400と差がある。しかし、
図7に示された正極電極用集電体600も高分子フィルム101の上面と下面のいずれにも金属からなる部材、即ち、金属片120とリードタブ190が位置する点では
図4に示された正極電極用集電体100、
図5に示された正極電極用集電体400及び
図6に示された正極電極用集電体500と類似している。従って、
図7に示された本発明の第4実施例に係る正極電極用集電体600もリードタブ190の溶接部位に十分な引張強度を確保することができ、良好な電気伝導度を有すると見なされる。
【0087】
上述のように、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101の上面または下面のうち少なくとも一面に高分子からなる絶縁性高分子層130を設ける場合にも、高分子フィルム101の両面に金属からなる部材、即ち、金属片120またはリードタブ190が全てあるため、高分子フィルム101またはリードタブ190が溶接された部位の引張強度が良好である。
【0088】
リードタブ190を溶接するようになると溶接部位で絶縁性高分子層130及び高分子フィルム101が溶けながらリードタブ190が接合されて導電材102と電気的に連結され得る。
【0089】
一方、
図3を参照すると、導電材102上に金属片120が位置し、金属片120上にリードタブ190が位置している。このとき、金属片120と導電材102との間には、絶縁性高分子層130が存在する。リードタブ190が溶接される過程で絶縁性高分子層130と高分子フィルム101が溶けながら溶接ポイントを形成するようになる。
図3の場合、金属片120と導電材102との間に位置する絶縁性高分子層130が溶けながらリードタブ190が溶接されるが、電気的連結は、絶縁性高分子層130が溶けながら連結された溶接ポイントだけでなされるようになる。このように、絶縁性高分子層130がある場合は、リードタブ190の溶接時に電気的連結が溶接ポイントでだけ非常に小さな部位に電流パス(pass)が形成されるため、リードタブ190または金属片120と導電材102との間を絶縁させることができる。また、溶接ポイントを除く残りの部分は、電解液に露出するか電解液が浸透しやすい状態となる。
【0090】
仮に、リードタブまたは金属片と導電材との間に絶縁性高分子層がなければ、リードタブまたは金属片と導電材が直接接触するようになるが、このとき、両者はリードタブまたは金属片の大きさに該当する面積で導電材と物理的接触をするようになる。このように、リードタブの溶接部位でリードタブまたは金属片と導電材が物理的接触する正極電極用集電体の場合、金属片と導電材との間に絶縁性高分子層がないため、金属片の広さだけ面接触を有するようになり、これによって反応すべき面積も広いしかない。このため、高分子フィルムの表面に塗布された導電材を全て反応させることが難しい。このような正極電極用集電体を使用する電池に外部短絡が発生すると電流パス(pass)が維持されるため、電流を遮断させることができず電池の温度が上昇し得る。
【0091】
高分子フィルム101の両面に設けられた金属片120のいずれか一つの金属片120にリードタブ190を溶接するとき、高分子フィルム101が溶けることで高分子フィルム101の両面に設けられた金属片120が互いに連結され、その結果、リードタブ190が高分子フィルム101の両面に設けられた導電材102と同時に電気的に連結され得る。
【0092】
高分子フィルム101の上下両面に金属片120と導電材102が設けられた状態で高分子フィルム101のいずれか一面に設けられた金属片120にリードタブ190を超音波溶接、レーザ溶接またはスポット溶接するようになると、高分子フィルム101の一部が溶け得る。リードタブ190を溶接する時に発生する溶接熱が高分子フィルム101の融点より高ければ、溶接過程で高分子フィルム101は溶け得る。
【0093】
このように高分子フィルム101が溶けた部分では高分子フィルム101が存在しないため上下の金属片120同士で直接接触し得る。このとき、金属片120も溶接熱によって溶融した状態であるため、上下の金属片120同士で接合するようになる。従って、高分子フィルム101が溶けてない部分で上下の金属片120同士で直接溶融結合されるため、いずれか一つの金属片120に溶接されるリードタブ190が上下の金属片120だけではなく、高分子フィルム101の上下面に形成された導電材102と電気的に連結され得る。
【0094】
本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、溶接熱によって高分子フィルム101の一部が溶けても金属片120が高分子フィルム101と連結された状態を維持するため、リードタブ190を連結することが可能である。
【0095】
ただし、場合によっては、高分子フィルム101が溶けていない状態でもリードタブ190を金属片120に溶接できる。
【0096】
一方、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、リチウム二次電池の正極として使用される集電体であって、既存の金属フォイルからなる集電体とは異なりリチウム二次電池の安全性を高めることができる。なぜなら、高分子フィルム101に塗布またはコーティングされた導電材102があたかもヒューズのように短絡電流を遮断するか短絡電流を下げる機能を果たすためである。
【0097】
一般に、二次電池に内部短絡または外部短絡が発生すると、短絡電流によって二次電池の温度が上がる発熱現象が生じ、また発熱のため電池が爆発する等の危険性がある。これに対して、正極として本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600を使用するリチウム二次電池に内部短絡または外部短絡が発生しても、リチウム二次電池の温度が上がることを防止し、短絡電流を遮断するか短絡電流を下げることでリチウム二次電池の安全性を確保することができる。
【0098】
正極として本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600を使用するリチウム二次電池に短絡が発生すると、アルミニウム金属が導電材102として高分子フィルム101に塗布またはコーティングされた正極電極用集電体100,400,500,600の電位が負極電位近く(即ち、<0.3volt、負極Li金属)に低くなると、アルミニウム導電材102が電解質と反応するようになると、導電材102があたかも腐食されたように割れながら短絡電流を遮断するか短絡電流を下げることができる。
【0099】
高分子フィルム101に塗布またはコーティングされた導電材102が電流パス(pass)の機能を果たすようになるが、短絡の発生時、導電材102が電解液と反応しながら腐食されたように細かく割れると、電流パスが遮断されるため、短絡電流がそれ以上流れなくなるか短絡電流が減るようになる。
【0100】
本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600の場合、短絡の発生時、電流パスを遮断するか短絡電流を下げることができる理由は、高分子フィルム101の表面に形成されたアルミニウム導電材102の厚さが非常に薄いため、導電材102の深さ方向または厚さ方向全体に対して導電材102が電解質と反応して腐食されるか割れて短絡電流パスを遮断するか短絡電流を下げることができる。
【0101】
本発明の発明者らは、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600を含むリチウム二次電池を対象に導電材102の厚さ別のリードタブの抵抗測定、電池容量測定、釘貫通試験をし、その結果、リチウム二次電池の安全性を確保できる導電材102の最適な厚さ範囲を見出すことができた。以下においては、試験の結果及び導電材102の最適な厚さ範囲について説明する。
【0102】
まず、前記実験をするために、
図4に示された本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体100を作製する。
図4を参照すると、正極電極用集電体100は、高分子フィルム101の上下両面のうち少なくとも一面にめっきまたはコーティングされて設けられた導電材102、金属片120と導電材102との間に設けられて金属片120を導電材102に接着させる絶縁性高分子層130及びいずれか一つの金属片120に溶接されるリードタブ190を含むことができる。
【0103】
ここで、高分子フィルム101は、厚さ7μmのポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)で設けられ、導電材102は、高分子フィルム101の一面に0.12μm、0.25μm、0.4μm、0.6μmの厚さにスパッタリング(sputtering)で設けられ得る。また、絶縁性高分子層130は、厚さ10μmのアクリル系接着剤で設けられ、金属片120は、厚さ12μmのアルミニウムフォイルで設けられるが、高分子フィルム101の両面に互いに90度の角度になるように設けられる。また、リードタブ190は、厚さ100μm、幅3mmのアルミニウム金属で設けられ、導電材102が形成された金属片120に超音波溶接により溶接される。
【0104】
*導電材のめっき面とリードタブとの間の抵抗測定
表1は、導電材102の厚さ別に導電材102のめっき面とリードタブ190との間の抵抗を測定した結果である。HIOKI 3554計測器を使用して抵抗を測定した。
【0105】
【0106】
表1を参照すると、導電材102の厚さが小さいほど、即ち、導電材102のめっき量が少ないほど導電材102のめっき面とリードタブ190との間の抵抗が大きくなるということを確認することができる。
【0107】
*導電材の厚さ別のリチウム二次電池の容量測定
導電材102の厚さによるリチウム二次電池の容量を測定するために、次のような特性を有するリチウム二次電池を製造した。
(1)正極組成:NCM(L&F NE-X6S)/super-P/PVDF(solef 5130)=92/4/4
(2)負極組成:黒鉛(BTR 518)/SBR(Zeon BM-400B)/CMC(Nippon paper)=97/1.5/1.5
(3)正極ローディング:3mAh/cm2
(4)負極集電体:Cu foil(8μm)
(5)負極ローディング:3.1mAh/cm2
(6)分離膜:7um PE(Tonen)
(7)電解液:EC/EMC 1M LiFP6、additive追加
正極/分離膜/負極をワインディング(Winding)してポーチタイプ(pouch type)のリチウム二次電池製造(DNP 113um)
(8)正極size:3cm×15cm
(9)電池容量:~120mAh
【0108】
表2は、前記のような特性を有するリチウム二次電池の電池容量を導電材102の厚さ別に測定した結果である。
【0109】
【0110】
表2において、括弧内の%は、導電材102の厚さ別に0.2C容量に対する割合を意味する。表2を参照すると、導電材101のめっき量が少ないほど、即ち、導電材102の厚さが小さいほど1.0C容量が小さくなることが見られる。しかし、電池は、正常に作動した。
【0111】
ただし、導電材102の厚さが0.12μmである場合は、電池が作動されなかった。従って、電池として作動するために導電材102の厚さが0.25μm以上とならなければならないということが分かる。
【0112】
図8は、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる容量測定の結果を示すグラフである。即ち、
図8は、表2の内容中、導電材の厚さが0.25μm(
図8(a)参照)、0.4μm(
図8(b)参照)、0.6μm(
図8(c)参照)である時の容量測定の結果を示すグラフである。
図8を参照すると、正極電極用集電体100の導電材102の厚さが0.25μm、0.4μm、0.6μmである全ての場合にリチウム二次電池が正常な電池の機能を発揮するということが分かる。
【0113】
*導電材の厚さ別のリチウム二次電池の安全性試験:釘貫通試験
導電材の厚さ別にリチウム二次電池の安全性を試験するために、リチウム二次電池を4.2V満充電した後、直径3mmのSUS釘(Nail)を使用して150mm/secの速度で電池の中央部を貫通させる釘(Nail)貫通短絡試験をした。表3は、釘貫通試験の結果である。
【0114】
【0115】
表3を参照すると、導電材102が0.25μm~0.6μmの厚さにめっきされた場合に、外部短絡の発生時にも電池の安全性を確保することができ、電池が正常に作動するということを確認することができた。
【0116】
図9は、本発明の第1実施例に係る正極電極用集電体を含むリチウム二次電池において導電材の厚さによる釘貫通試験の結果を示すグラフである。即ち、
図9は、表3の内容中、導電材の厚さが0.25μm(
図9(b)参照)、0.4μm(
図9(c)参照)、0.6μm(
図9(d)参照)である正極電極用集電体を含むリチウム二次電池に対して釘貫通試験をした場合の電池の温度及び電圧変化と、従来の金属フォイル正極電極用集電体を含むリチウム二次電池(
図9の(a)参照)に対して釘貫通試験をした場合の電池の温度及び電圧変化を示すグラフである。
図9(a)を参照すると、金属フォイル集電体を使用する電池の場合は、釘が貫通するようになると、電池の温度急激に上がり、電圧は急激に落ちることが分かるが、この場合、電池の安全性は極度に悪くなる。これに対して、
図9(a)乃至(c)に示されたように、0.25μm、0.4μm、0.6μmの厚さに塗布された導電材102を使用する電池の場合は、釘が貫通しても温度と電圧が徐々に減少することが分かる。従って、本発明に係る正極電極用集電体を使用するリチウム二次電池は、釘貫通時にも電池の温度と電圧が徐々に減少するため、電池の安全性を改善し、向上させることができる。
【0117】
一方、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、高分子フィルム101の表面にアルミニウム導電材102がスパッタリング(sputtering)または蒸着(evaporation)方式で塗布またはコーティングされるが、このような方式で形成されるアルミニウム導電材102には、ナノサイズの気孔(pore)が多数個形成されるか、クラックのような不規則的な形態(以下、「気孔」という)が表面に存在し得る。なぜなら、高分子フィルム101にスパッタリングまたは蒸着されるアルミニウムの微細粒子が隙間なしに100%密着した状態でスパッタリングまたは蒸着されるのではなく、アルミニウム粒子の間に微細な隙間が存在するようになるが、このような隙間が気孔となるのである。これに対して、既存の金属フォイルからなる正極電極用集電体の場合は、金属フォイルは圧延箔であるため気孔が全く存在しない。
【0118】
ここで、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600の場合は、電解液がアルミニウム導電材102に存在する多数個の気孔に染み込むようになるが、電解液は、導電材102の全体または一部の厚さにわたって気孔内に存在できるようになる。このような状態で短絡が発生するようになると、導電材120の気孔内に存在する電解液と導電材102が反応する面積を広くさせるため、導電材102がその厚さ方向に容易に腐食されるか割れ得るようになり、その結果、短絡電流が流れられなくなる。このように、導電材102に存在する多数個の気孔がヒューズのような役割を果たすようになり、短絡時、短絡電流の流れが遮断されるか短絡電流が減り得る。
【0119】
上述のように、本発明に係る正極電極用集電体100,400,500,600は、導電材102を最小断面基準0.25μm、最大断面基準0.6μmの厚さに高分子フィルム101の表面に形成することで、このような電極用集電体100,400,500,600を正極として使用するリチウム二次電池のエネルギー密度は高めながらも、安全性を高めることができ、短絡の発生時、電池の安全性を確保することができる。
【0120】
以上のように、本発明においては、具体的な構成要素等のような特定の事項と限定された実施例及び図面により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものであるだけで、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。従って、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて定められてはならず、後述する請求の範囲だけではなく、この請求の範囲と均等であるか等価的変形のある全てのものは、本発明思想の範疇に属するといえる。