(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】バッテリから材料を回収するためのプロセス、装置、およびシステム
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240423BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C22B7/00 C
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2023010933
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019566646の分割
【原出願日】2018-05-30
【審査請求日】2023-02-27
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519423091
【氏名又は名称】エルアイ - サイクル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッチャール、アジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン、ティモシー ジョージ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-260426(JP,A)
【文献】中国実用新案第206082718(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102011082187(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置であって、
a)ハウジングと、
b)バッテリ材料を通過させてハウジングに導入することができるバッテリ入口と、
c)前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの第1の粉砕装置であって、前記バッテリ材料をサイズ削減してサイズ削減バッテリ材料を形成し、前記バッテリ材料内から電解質材料と、アノードおよびカソード粉末を含む黒色塊材料とを遊離させるように構成された、第1の粉砕装置と、
d)前記ハウジング内の浸漬液であって、前記浸漬液は、前記第1の粉砕装置を浸漬しており、前記浸漬液は、塩基性でありかつ少なくとも導電性を有することにより、前記バッテリ材料のサイズ削減が火花を引き起こすことを抑制し、前記サイズ削減によって生じる熱が前記浸漬液に吸収され、前記電解質材料と、前記黒色塊材料と、前記サイズ削減バッテリ材料とが、前記浸漬液の中に取り込まれてサイズ削減供給流を形成し、前記浸漬液が
、水酸化カルシウ
ムを含む、浸漬液と、
e)前記第1の粉砕装置の下流にある供給出口であって、前記電解質材料と、前記黒色塊材料と、前記サイズ削減バッテリ材料とが前記浸漬液の中に取り込まれた前記サイズ削減供給流が、前記供給出口を通過して前記ハウジングから出ることができる、供給出口とを備え、
前記浸漬液が塩基性である、装置。
【請求項2】
前記浸漬液が、前記サイズ削減中に前記電解質材料の遊離を経て生成されたフッ化水素と反応し、それにより、前記サイズ削減中のフッ化水素の発生が抑制される、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハウジング内の前記浸漬液が、前記電解質材料と前記浸漬液との間の化学反応を抑制するために、70℃未満の動作温度にある、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記動作温度は60℃未満である、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記浸漬液のpHが約12である、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記浸漬液が塩を含み、それにより、前記浸漬液が導電性を有し、前記サイズ削減の間に放出される前記バッテリ材料内の残留電荷を散逸させ、
前記塩が、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、有機アルキル炭酸塩およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項7】
前記サイズ削減中に前記第1の粉砕装置によって前記バッテリ材料から遊離した粉塵粒子が、前記浸漬液内に捕捉されて取り込まれ、前記ハウジングから周囲の大気中に放出されることを抑制することを特徴とする、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
前記ハウジング内の前記浸漬液は、前記電解質材料と前記浸漬液との間の化学反応を抑制するために、平均動作温度が70℃未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記平均動作温度が60℃度未満である、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バッテリのリサイクルの分野に関する。より具体的には、本出願は、バッテリ、特に充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセス、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン充電式バッテリによる自動車、家電製品、および産業用エネルギー貯蔵用途への電力供給はますます増えている。しかしながら、産み出された使用済みリチウムイオンバッテリのうちリサイクルされているのは世界全体で約5%未満に過ぎず、これは年間にリサイクルされる使用済みリチウムイオンバッテリとしては約70,000トンに相当する。対照的に、電気自動車などの電気モビリティ用途にリチウムイオンバッテリが適用されることにより、2017年から2030年の間に推定1,100万トンを超える使用済みリチウムイオンバッテリパックが廃棄されると予想される。
【0003】
このような使用済みリチウムイオンバッテリパックには、貴重な含有物であるコバルト、リチウム、銅、グラファイト、ニッケル、アルミニウム、マンガンなどが含まれるため、使用済みのリチウムイオンバッテリパックは、リチウムや他の多くの貴重な金属の高品質な「都市採掘」源と見なすことができる。しかしながら、現在のリチウムイオンバッテリのリサイクルプロセスは、例えば、主に金属合金(通常、コバルト、銅、および/またはニッケル)を回収する溶融製錬すなわち乾式製錬で構成されている。乾式製錬により、使用済みのリチウムイオンバッテリ内のリチウムは、例えば、製錬所の炉(複数可)からのスラグおよび/または排出ガス流中に失われる。スラグは、一般に、例えば路盤として使用するために建設業界に販売され、リチウムは採算が合うようには回収できない。
【0004】
このように、使用済みリチウムイオンバッテリの量および貴重な含有物のためには、廃棄物転換業界が適応する必要があり、例えば、使用済み鉛蓄電池の約90%以上が世界中の多くの管轄区域でリサイクルされている、鉛蓄電池のリサイクル産業を見習う必要がある。
【0005】
高度なリチウムイオンバッテリのリサイクルプロセスは、経済的および環境的な機会を提供し得る。例えば、推定1,100万トンを超える使用済みバッテリパックは、金属および他の成分に約650億米ドルの残存価値を含んでいる。さらに、リチウムイオンバッテリのリサイクルにより、一次供給源(つまり、採掘、精製)から得られる原材料の量を相殺/削減することにより、2017年から2040年の間に世界全体で温室効果ガスの排出をCO2換算で約12億トン削減でき、また場合により使用済みリチウムイオンバッテリに由来する金属(例えば、重金属)および材料が埋め立てられるのを防止できる。
【0006】
上記の情報は、出願人が本出願と関連性があり得ると考えている情報を伝える目的で提供されている。上述の情報のいずれかが本出願に対する先行技術を構成することを必ずしも認めるものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0007】
以下でさらに詳しく述べるように、充電式リチウムイオンバッテリはいくつかの異なる材料から構成される。「黒色塊」は、リチウム金属酸化物およびリン酸鉄リチウム(正極)ならびにグラファイト(負極)を含む正極および/または負極電極粉末の組み合わせを含む、充電式リチウムイオンバッテリの成分であることが知られている。充電式リチウムイオンバッテリに含まれる材料は、炭酸アルキル(例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびそれらの混合物などのC1~C6炭酸アルキル)などの有機物、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック、グラファイト、コバルト、ニッケル、マンガン、そして当然のことながらリチウムを含む。充電式リチウムイオンバッテリからこのような材料を回収することが極めて望ましい。
【0008】
よって、本出願の一態様によれば、充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセスが提供され、本プロセスは、
i)リチウムイオンバッテリを処理して、サイズ削減供給流を形成するステップと、
ii)サイズ削減供給流を磁性生成物流と非磁性供給流とに分離するステップと、
iii)場合により、磁性生成物流から鉄系生成物を単離するステップと、
iv)非磁性供給流をストリッピング溶媒でストリッピングして、ストリッピングされたスラリ流を形成するステップと、
v)ストリッピングされたスラリ流を篩上固形部分と篩下のストリッピングされたスラリ流とに分離するステップと、
vi)場合により、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分を、予備アルミニウム生成物流、予備銅生成物流、およびプラスチック生成物流に分離するステップと、
vii)篩下のストリッピングされたスラリ流を固液分離に供して、黒色塊固体流と回収されたストリッピング溶媒とを形成するステップと、
viii)黒色塊固体流を酸で浸出して、浸出貴液および残留固形物を形成するステップと、
ix)残留固形物から浸出貴液を分離して、残留固形物を含む第1の生成物流と浸出貴液を含む第2の生成物流とを形成するステップと、
x)場合により、第1の生成物流からグラファイト生成物を単離するステップと、
xi)第2の生成物流から銅生成物を単離して、第3の生成物流を形成するステップと、
xii)第3の生成物流からアルミニウム(Al)および/または鉄(Fe)生成物を単離して、第4の生成物流を形成するステップと、
xiii)第4の生成物流からコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および/またはマンガン(Mn)生成物を単離して、第5の生成物流を形成するステップと、
xiv)第5の生成物流から塩副生成物を単離して、第6の生成物流を形成するステップと、
xv)第6の生成物流からリチウム生成物を単離するステップと、
を含む。
【0009】
別の態様では、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置が提供され、本装置は、
浸漬液を保持するように構成されたハウジングと、
ハウジング内に第1の種類のバッテリ材料を受け入れるための開口部を内部に画定する第1の供給シュートと、
第1の供給シュートから第1の種類のバッテリ材料を受け入れるようにハウジング内に配置された第1の浸漬型粉砕デバイスであって、上記第1の浸漬型粉砕デバイスが、第1の種類のバッテリ材料をサイズ削減させて第1のサイズ削減バッテリ材料を形成するように構成される、第1の浸漬型粉砕デバイスと、
第1の浸漬型粉砕デバイスから第1のサイズ削減バッテリ材料を受け入れるようにハウジング内に配置された第2の浸漬型粉砕デバイスであって、第2の浸漬型粉砕デバイスが、第1のサイズ削減バッテリ材料をさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料を形成するように構成される、第2の浸漬型粉砕デバイスと、
を備える。
【0010】
さらに別の態様では、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するためのシステムが提供され、システムは、
(a)第1の種類のバッテリ材料を受け入れるための第1の浸漬型粉砕デバイスであって、第1の浸漬型粉砕デバイスが、第1の種類のバッテリ材料をサイズ削減させて第1のサイズ削減バッテリ材料を形成する、第1の浸漬型粉砕デバイスと、
(b)第1のサイズ削減バッテリ材料を受け入れるための第2の浸漬型粉砕デバイスであって、第2の浸漬型粉砕デバイスが、第1のサイズ削減バッテリ材料をさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料を形成する、第2の浸漬型粉砕デバイスと、
(c)第1の浸漬型粉砕デバイス、第2の浸漬型粉砕デバイス、第1のサイズ削減バッテリ材料、および第2のサイズ削減バッテリ材料のそれぞれが浸漬される浸漬液と、
を備える。
【0011】
本出願、ならびに他の態様、実施形態、およびそのさらなる特徴をより良く理解するために、添付の図面および/または表と併せて使用される以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本明細書で説明される第1のプロセス(「プロセス1」)の一実施形態のブロックフロー図である。
【
図1B】本明細書で説明される第2のプロセス(「プロセス2」)の一実施形態のブロックフロー図である。
【
図2】本出願の一実施形態による例示的な装置およびシステムを示す図である。
【
図3(a)】浸漬条件下で動作するように修正された2軸シュレッダである、修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の写真である。
【
図3(b)】
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)のための制御および電気パネルの写真である。
【
図3(c)】
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の粉砕部の写真である。
【
図3(d)】浸漬液に浸漬された粉砕部を示す、
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の粉砕部の写真である。
【
図4(a)】第1段階の湿式破砕を通過した後の材料の写真である(物理的検証の実施例。粗破砕ミニパイロット)。
【
図4(b)】第2段階の湿式破砕を通過した後の材料の写真である(物理的検証の実施例。細破砕ミニパイロット)。
【
図4(c)】造粒機を通過した後の材料の写真である(物理的検証の実施例。乾式破砕ミニパイロット)。
【
図4(d)】開き目が500μmの網篩を通過させてからろ過した後、第1段階の湿式破砕後に単離された微粒子材料の写真である。
【0013】
表1は、2025年および2030年の使用済み/廃棄済みの小型および大型のLiイオンバッテリ構成部品の潜在的な概要予測を示している。
【0014】
表2は、プロセス1およびプロセス2のそれぞれのフェーズ1供給サイズ削減ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0015】
表3は、プロセス1のフェーズ2の磁気分離および渦電流分離の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0016】
表4は、プロセス1のフェーズ2の浸出および向流式デカンテーション(CCD)ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0017】
表5は、IDEASプロセスシミュレーションパラメータによるプロセス1およびプロセス2のフェーズ2の浸出するステップの主要な反応化学を示している。
【0018】
表6は、プロセス1のフェーズ2の中間生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0019】
表7は、プロセス1のフェーズ3の最終生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0020】
表8は、プロセス1のIDEASプロセスシミュレーションパラメータによるフェーズ3の最終生成物の調製ステップの主要な反応化学を示している。
【0021】
表9は、プロセス2のフェーズ2の磁気分離、ストリッピング、および場合により比重分離の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0022】
表10は、プロセス2のフェーズ2の浸出の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0023】
表11は、プロセス2のフェーズ2の中間生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0024】
表12は、プロセス2のフェーズ3の最終生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0025】
表13は、IDEASプロセスシミュレーションパラメータによるプロセス2のフェーズ3の最終生成物の調製ステップの主要な反応化学を示している。
【0026】
表14は、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置/システムの一実施形態のための機械的設計基準を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本出願が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指定のない限り、複数の指示対象を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、その語に続くリストが網羅的ではなく、任意の他の追加の適切な項目、例えば、必要に応じて、1つまたは複数のさらなる特徴(複数可)、構成要素(複数可)、および/または成分(複数可)を含んでも含まなくてもよいことを意味するものとして理解されたい。
【0030】
本明細書で使用される「バッテリ(batteryまたはbatteries)」という用語は、文脈上明らかに別段の指定のない限り、充電式リチウムイオンバッテリを指す。
【0031】
リチウムイオンバッテリ
構成部品
リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンが電気化学反応を引き起こす一種の充電式バッテリである。リチウムは電気化学的ポテンシャルが高く、重量当たりのエネルギー密度が高い。通常、リチウムイオンバッテリセルには、次の4つの主要な構成部品がある。
a.正の電極/正極:正極裏当て箔/集電体(例えば、アルミニウム)にインターカレートされた、バッテリの用途および製造業者に応じたリチウム金属酸化物およびリン酸鉄リチウムの様々な配合を含み、例えば、LiNixMnyCozO2(NMC)、LiCoO2(LCO)、LiFePO4(LFP)、LiMn2O4(LMO)、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)を含む。
b.負の電極/負極:一般に、負極裏当て箔/集電体(例えば、銅)にインターカレートされたグラファイトを含む。
c.電解質:例えば、有機溶媒(例えば、炭酸アルキルの混合物、例えば、エチレンカーボネート(EC、十分な負の電極/負極の不動態化のための混合物の一部として一般的に必要)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)などのC1~C6炭酸アルキル)に溶解させたヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム一水和物(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(ビストリフルオロメタンスルホニル)(LiTFSI)、リチウム有機ホウ酸塩、またはリチウムフルオロアルキルホスフェート。
d.正極と負極との間のセパレータ:例えば、ポリマーまたはセラミックベースのセパレータ。
【0032】
このように、充電式リチウムイオンバッテリは、いくつかの異なる材料から構成される。「黒色塊」という用語は、上記で参照したように、リチウム金属酸化物およびリン酸鉄リチウム(正極)ならびにグラファイト(負極)を含むカソードおよび/またはアノード電極粉末の組み合わせを指す。したがって、充電式リチウムイオンバッテリに含まれる材料は、炭酸アルキル(例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびそれらの混合物などのC1~C6炭酸アルキル)などの有機物、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック、グラファイト、コバルト、ニッケル、マンガン、そして当然のことながらリチウムを含む。充電式リチウムイオンバッテリからこのような材料を回収することが極めて望ましい。
【0033】
リチウムイオンバッテリセルは、次のような様々な形状/フォームファクタで製造される。
a.円筒型のセル、
b.角型のセル、および
c.パウチ型のセル。
【0034】
小型リチウムイオンバッテリ(例えば、家電製品用途)は、一般に1つまたはいくつかのセルで構成され、各セルが正極、負極、電解質、およびセパレータを備える。通常、各セルは鋼鉄、アルミニウム、および/またはプラスチックに収容される。小型リチウムイオンバッテリに複数のセルが含まれている場合(例えば、ラップトップリチウムイオンバッテリでよくあるように)、バッテリパック全体は通常、プラスチックに、または場合により用途に応じてアルミニウムおよび/または鋼鉄などの他の材料に収容される。
【0035】
大型リチウムイオンバッテリパック(例えば、自動車や定置エネルギー貯蔵システム用途)は、一般に次のように構成される。
a.セル:セルは、鋼鉄、アルミニウム、および/またはプラスチックに収容された正極、負極、電解質、およびセパレータを含む。
b.モジュール:複数のセルがモジュールを構成し、通常は鋼鉄、アルミニウム、および/またはプラスチックに収容される。
c.バッテリパック:複数のモジュールがバッテリパックを構成し、通常は鋼鉄、アルミニウム、および/またはプラスチックに収容される。
【0036】
混合型リチウムイオンバッテリパックの推定加重平均組成(すなわち、可能性のある現在および当面の製造に基づく特定のリチウムイオンバッテリ正極化学作用の寄与を組み込んだ、小型および大型リチウムイオンバッテリの加重平均混合)は、重量パーセント(すなわち、kg材料/kgリチウムイオンバッテリパック)では、Ni約4%、Mn約5%、Co約7%、Li2CO3(炭酸リチウム当量として表される)約7%、Cu約10%、Al約15%、グラファイト約16%、および他の材料33%を含む。さらなる例として、2025年および2030年に予測される小型および大型のリチウムイオンバッテリ構成部品の推定された可能な要約を表1に示す。
【0037】
これらの構成部品のうちの約7つ、すなわち、コバルト、リチウム、銅、グラファイト、ニッケル、アルミニウム、およびマンガンが使用済みリチウムイオンバッテリの残存価値の90%以上を占めると推定されている。例えば、使用済みリチウムイオンバッテリに含まれる材料の残存価値に基づいた混合型リチウムイオンバッテリパックの推定加重平均組成
(kg材料/kgリチウムイオンバッテリパック当たりの米ドル)は、Ni約9%、Mn約2%、Co約39%、Li2CO3(炭酸リチウム当量として表される)約16%、Cu約12%、Al約5%、グラファイト約10%、他の材料約7%を含む。
【0038】
充電
リチウムイオンバッテリセルが充電および放電すると、リチウムイオンが負極および正極に出入りする。この電気化学反応中に、リチウム化された負極(例えば、内部にリチウムを含むグラファイト)およびリチウムを欠く遷移金属酸化物が形成される。リチウム化された負極および遷移金属酸化物の両方が反応する。これらの遷移材料は、通常有機系電解質溶液(上記のように炭酸アルキルを含む)で「寄生反応」を起こす可能性がある。
【0039】
負極は特にこのような寄生反応を受け、その結果、負極表面に堆積する固体生成物が生じる。この固体生成物は、固体電解質界面(SEI)と呼ばれる。時間が経つにつれて、これは、さらなる電気化学反応を減速させ、制限する不動態化膜を形成する。
【0040】
例えば、経時変化/充放電した正極材料および負極材料の走査型電子顕微鏡画像によれば、有機系電解質混合溶液を使用するリチウムイオンセルの正極については、正極の表面への固体電解質界面の堆積はわずかであった。対照的に、グラファイトから構成された経時変化/充放電した負極は固体電解質界面を呈する。層状グラファイト負極全体に固体電解質界面が存在すると、リチウムがインターカレートする部位が制限されることにより、リチウムイオンセルに電力を供給する電気化学反応効率が低下する。時間が経つにつれて、これは、リチウムイオンバッテリセルのエネルギー供給能力を低下させ、最終的にバッテリセルを「使用済み」にさせる。
【0041】
プロセス1
プロセス1の1つの実施形態では、充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセスが提供され、本プロセスは、
a)リチウムイオンバッテリを処理して、サイズ削減供給流を形成するステップと、
b)サイズ削減供給流を磁性生成物流と第1の非磁性供給流とに分離するステップと、
c)場合により、磁性生成物流から鉄系生成物を単離するステップと、
d)第1の非磁性供給流をアルミニウム生成物流と第2の非磁性供給流とに分離するステップと、
e)場合により、アルミニウム生成物流からアルミニウム生成物を単離するステップと、
f)酸で第2の非磁性供給流を浸出して、浸出されたスラリを形成するステップと、
g)浸出されたスラリを第1の生成物流と第2の生成物流とに分離するステップと、
h)場合により、第1の生成物流から第1の銅生成物を単離するステップと、
i)第2の生成物流をグラファイト生成物流と第3の生成物流とに分離するステップと、
j)場合により、グラファイト生成物流からグラファイト生成物を単離するステップと、
k)場合により、第3の生成物流をろ過して、有機物および固形物を単離して、第4の生成物流を形成するステップと、
l)第3または第4の生成物流から第2の銅生成物を堆積させて、第5の生成物流を形成するステップと、
m)第5の生成物流からCo、Ni、および/またはMn生成物を単離して、第6の生成物流を形成するステップと、
n)第6の生成物流からリチウム生成物を単離するステップと、
を含む。
【0042】
例えば、プロセス1の一実施形態のブロックフロー図を示す
図1Aを参照されたい。
【0043】
プロセス1の別の実施形態では、処理するステップa)が、場合により、リチウムイオンバッテリを約1~2Vまで、または約0Vまで放電するステップと、場合により、放出されたエネルギーを電力貯蔵部に貯蔵するステップと、水溶液浸漬下でリチウムイオンバッテリを粉砕(crush)、破砕(shred)、または粉砕(mill)するステップと、場合により、粉砕、破砕、または粉砕されたリチウムイオンバッテリを、第1のサイズの供給材料を含む第1のサイズ削減供給流と、第2サイズの供給材料を含む第2のサイズ削減供給流とに分離するステップと、場合により、第2のサイズ削減供給を粉砕、破砕、または粉砕して、第1のサイズの供給材料を得るステップと、を含む。別の実施形態では、水溶液浸漬は、水または塩水浸漬を含む。さらに別の実施形態では、第1のサイズは約10mm以下である。さらに別の実施形態では、処理するステップa)が、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の動作温度を有する。またさらに別の実施形態では、分離するステップb)が、湿式磁気分離を介して、サイズ削減供給流を磁性生成物流と第1の非磁性供給流とに分離するステップを含む。別の実施形態では、分離するステップd)は、渦電流分離、比重分離、風力選別分離、またはそれらの組み合わせを介して、第1の非磁性供給流からアルミニウム生成物流と第2の非磁性供給流とを分離するステップを含む。またさらに別の実施形態では、浸出するステップf)の酸は、硫酸、硫酸と過酸化水素との混合物、硝酸、硝酸と過酸化水素との混合物、または塩酸を含む。またさらに別の実施形態では、分離するステップg)は、向流式デカンテーションを介して浸出されたスラリを第1の生成物流と第2の生成物流とに分離するステップを含む。別の実施形態では、分離するステップi)は、第2の生成物流を、凝集剤を場合により使用する凝集および浮選を介してグラファイト生成物流と第3の生成物流とに分離するステップを含む。別の実施形態では、浮選は、第1の浮選ステップおよび第2の浮選ステップを含む。さらに別の実施形態では、ろ過するステップk)は、第3の生成物流を二重ろ過を介してろ過して、有機物と固形物とを単離するステップと、場合により、活性炭ろ過器により第4の生成物流をろ過する。別の実施形態では、二重ろ過は、第1の媒体としてアンスラサイトを、第2の媒体としてガーネットを有する二重ろ過器を通して第3の生成物流をろ過するステップを含む。さらに別の実施形態では、堆積させるステップl)は、第3または第4の生成物流から銅生成物流を単離するステップと、電解採取により銅生成物流からCu0を堆積させるステップと、を含む。別の実施形態では、第3または第4の生成物流から銅生成物流を単離するステップが、銅イオン交換または銅溶媒抽出を含む。さらに別の実施形態では、銅溶媒抽出が、有機ケトキシム抽出剤などの抽出剤の使用を含む。またさらに別の実施形態では、単離するステップm)が、第5の生成物流に水酸化物源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させるステップ、第5の生成物流に炭酸塩源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn炭酸塩生成物を沈殿させるステップ、硫酸塩源の存在下で第5の生成物流を蒸発結晶化させて、Co、Ni、および/もしくはMn硫酸塩生成物を形成するステップ、または第5の生成物流に水酸化物源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させた後、加熱脱水してCo、Ni、および/もしくはMn酸化物生成物を生成するステップを含む。別の実施形態では、単離するステップn)が、第6の生成物流に炭酸塩を添加して、炭酸リチウムを沈殿させる、または第6の生成物流に水酸化物を添加して、水酸化リチウム溶液を形成し、水酸化リチウム溶液を蒸発結晶化させて、水酸化リチウム一水和物を形成するステップを含む。別の実施形態では、プロセスは、炭酸リチウムを重炭酸リチウムに変換するステップと、重炭酸リチウムを蒸気処理して、炭酸リチウムを再形成するステップと、を介して炭酸リチウムを精製するステップをさらに含む。別の実施形態では、プロセスは、水酸化リチウム一水和物を水に溶解させるステップと、機械式蒸気再圧縮晶析装置を使用して水酸化リチウム一水和物を再結晶させるステップと、を介して水酸化リチウム一水和物を精製するステップをさらに含む。さらに別の実施形態では、浸出するステップf)の酸が、硫酸、または硫酸と過酸化水素との混合物を含む場合、プロセスは、第5または第6の生成物流のいずれかから硫酸塩生成物流を単離するステップ(o)をさらに含む。別の実施形態では、単離するステップo)が、硫酸塩生成物流を蒸発結晶化させて硫酸塩生成物を形成するステップ、またはドラフトチューブバッフル晶析装置を使用して硫酸塩生成物流を結晶化して、硫酸塩生成物を形成するステップを含む。
【0044】
よって、本出願のプロセス1の一実施形態では、3つの主要なフェーズ、すなわち、(i)供給サイズ削減(例えば、
図1Aのステップaを参照)、(ii)浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製(例えば、
図1Aのステップb~fを参照)、ならびに(iii)最終生成物の調製(例えば、
図1Aのステップg~nを参照)を含む充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセスが提供される。
【0045】
図1Aを参照すると、ステップa)は、供給サイズ削減の結果としてサイズ削減供給流を提供する。
【0046】
供給サイズ削減の一実施形態では、場合により、小型リチウムイオンバッテリ(例えば、電話、ラップトップなどからのもの)および/または大型リチウムイオンバッテリ(例えば、電気自動車からのもの)を約1~2Vまで、または約0Vまで放電するステップを含むプロセスが提供される。別の実施形態では、場合により、放出されたエネルギーを中央電力貯蔵部に貯蔵するステップを含むプロセスが提供される(例えば、プラント施設全体の電力消費におけるピーク負荷を削減するため)。
【0047】
供給サイズ削減の別の実施形態では、場合により、放電されたリチウムイオンバッテリを粉砕、破砕、または粉砕して、サイズ削減バッテリ供給流を形成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、バッテリは10mm以下のサイズに粉砕/破砕される。さらなる実施形態では、バッテリは水/水溶液浸漬下で、またはより具体的には水または塩水浸漬下で粉砕/破砕される(火花などから熱を吸収するため)。さらに他の実施形態では、バッテリは、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の温度で粉砕/破砕される。
【0048】
供給サイズ削減の別の実施形態では、バッテリを2段階粉砕して、サイズ削減バッテリ供給流を形成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、2段階粉砕は、水/水溶液浸漬下で、またはより具体的には水または塩水浸漬下で行われて、(i)酸素の蓄積を制限し、(ii)粉砕により引き起こされる火花を抑制し、それを熱として吸収することにより、粉砕中の燃焼のリスクを最小化し、(iii)バッテリの電解質溶液を連行する。いくつかの実施形態では、ブライン溶液は塩化ナトリウム水溶液を含む。他の実施形態では、ブライン溶液は、水酸化カルシウム(消石灰または水和石灰としても知られる)の希釈水溶液を含んで、電解質塩からの潜在的なハロゲン化物の中和を助け、それにより材料/機器の腐食を増やし得る加水分解(例えば、含水フッ化水素酸/HFの形成)を最小化する、および/またはフッ化ナトリウム塩を形成する可能性を最小化する。実施形態では、2段階粉砕は、大型リチウムイオンバッテリを受け入れ、それらを400mm以下にサイズ削減させる第1の粉砕機と、小型リチウムイオンバッテリおよびサイズ削減された大型リチウムイオンバッテリを受け入れ、その組み合わされバッテリ供給流を100mm以下にサイズ削減させる第2の粉砕機と、を備える。実施形態では、2段階粉砕は、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の温度で行われる。
【0049】
供給サイズ削減の別の実施形態では、サイズ削減バッテリ供給流を篩過するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、サイズ削減バッテリ供給流は、10mm以下の篩下分と、10mm以上100mm以下の篩上分とに分離される。実施形態では、篩下分は固液分離を経て、10mm以下の粒子を含むろ過ケークを形成する。いくつかの実施形態では、固液分離はベルト型ろ過器を介して行われる。実施形態では、篩上分は10mm以下に破砕される。いくつかの実施形態では、篩上分は、廃棄電子機器リサイクル施設および食品加工施設に見られる工業規模のシュレッダと同様のシュレッダを使用して破砕される。実施形態では、
図1Aのステップaのように、10mm以下の篩下分と10mm以下に破砕された篩上分とが組み合わされて、サイズ削減供給流が形成される。
【0050】
供給サイズ削減の別の実施形態では、非磁性/非鉄系材料および不活性材料(例えば、
図1Aの第1の非磁性供給流)から磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可)、
図1Aの磁性生成物流)を分離するためのサイズ削減バッテリ供給の磁気分離(例えば、
図1Aのステップbを参照)を含むプロセスが提供される。実施形態では、磁気分離は湿式磁気分離である。いくつかの実施形態では、湿式磁気分離は、「粗選」および「精選」磁気分離ステップを含む。いくつかの実施形態では、湿式磁気分離は低強度磁気分離装置を使用する。
【0051】
供給サイズ削減の別の実施形態では、非磁性/非鉄系材料および不活性材料からあらゆる残留磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))を分離するための非磁性/非鉄系のサイズ削減バッテリ供給の渦電流分離を含むプロセスが提供される。実施形態では、渦電流分離は、アルミニウム生成物流(例えば、
図1Aのステップd)およびアルミニウム生成物流を参照)の分離を提供する。他の実施形態では、渦電流分離、比重分離、風力選別分離、またはそれらの組み合わせは、アルミニウム生成物流の分離を提供する。実施形態では、渦電流分離は、残留磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))の単離を提供して、湿式磁気分離にリサイクルして戻す。
【0052】
浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製の一実施形態では、浸出されたスラリを形成するための、(分離されたアルミニウム生成物流、例えば
図1Aの第2の非磁性供給流を除く)渦電流分離からの非磁性/非鉄系材料および不活性材料の酸浸出を含むプロセスが提供される(例えば、
図1Aのステップf)を参照)。実施形態では、使用される酸は、硫酸、塩酸、または硝酸である。いくつかの実施形態では、過酸化水素は、貴金属の浸出を促進するために使用される。いくつかの実施形態では、浸出は、約60~95℃の動作温度で行われる。いくつかの実施形態では、浸出は、高せん断攪拌下の円錐底タンクで行われる。
【0053】
浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製の一実施形態では、浸出されたスラリを5mm以下の篩下分と5mm以上の篩上分とに篩過するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、篩上分は、さらなる分離のために湿式磁気分離に再利用のために戻される。
【0054】
浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製の一実施形態では、浸出されたスラリの向流式デカンテーション(CCD)を含むプロセスが提供される(例えば、
図1Aのステップg)を参照)。実施形態では、CCDは、主に銅、いくらかの残留破断アルミニウム、残留破断鋼鉄、紙、およびプラスチックから構成されるスライム/残留物すなわち「銅濃縮物」をアンダーフロー流(例えば、
図1Aの第1の生成物流)として分離し、組み合わされた水溶液浸出液相(浸出貴液またはPLS)および浮遊/低密度相(例えば、グラファイト、有機物)をオーバーフロー流(例えば、
図1Aの第2の生成物流)として分離する。いくつかの実施形態では、CCDは、数段の高密度濃縮槽を使用する。
【0055】
浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製の一実施形態では、凝集剤が添加されて、グラファイト相および有機相の凝集を助けるための凝集タンクにCCDオーバーフロー流が送達されるプロセスが提供される。実施形態では、凝集タンクからの溶液は浮選セルに送達されて、親水性相(例えば、水性PLS)から疎水性相(例えば、凝集剤により凝集したグラファイトおよび有機物、
図1Aのグラファイト生成物流)を選択的に分離する。実施形態では、浮選セルは、疎水性相と親水性相との予備分離を完了する「粗浮選セル」と、疎水性相と親水性相とをさらに分離するために「粗浮選セル」のフロスが送達される「精選浮選セル」と、を含む。実施形態では、「精選浮選セル」からのフロスは固液分離に送られて、場合により固相または「グラファイト濃縮物」相を単離する(例えば、
図1Aのステップjを参照)。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離を達成する。
【0056】
浸出、向流式デカンテーション、および中間生成物の調製の一実施形態では、「粗浮選セル」および「精選浮選セル」(例えば、
図1Aの第3生成物流)(場合により「精選浮選セル」からのフロスの固液ろ過からの液体(例えば、遠心分離液)、
図1Aのステップj))からの残留PLSを組み合わせるステップと、場合により、混合された液体流を二重ろ過器でろ過して、連行有機物を分離するステップ(例えば、
図1Aのステップk)を参照)と、を含むプロセスが提供される。実施形態では、銅溶媒抽出で見られるろ過器と同様の二重ろ過器が使用される。実施形態では、二重ろ過器は、アンスラサイト、ガーネット、および/または砂などのろ過媒体を含む。いくつかの実施形態では、二重ろ過器から得られた液体流(例えば、
図1Aの第4の生成物流)は、場合により、活性炭ろ過器に送達されて、連行有機物をさらに分離する。
【0057】
一実施形態では、場合により、磁気分離からの磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))を脱水するステップと、上記の脱水された材料(例えば、
図1Aのステップcを参照)および鉄系生成物を収集および貯蔵するステップと、を含むプロセスが提供される。実施形態では、本プロセスは、場合により、渦電流分離からのアルミニウム生成物流を脱水するステップと、脱水されたアルミニウム生成物(例えば、
図1Aのステップe)およびアルミニウム生成物参照)を収集および貯蔵するステップと、を含む。実施形態では、脱水スクリーンが使用され、スクリーンは、水/水溶液の排出を促進するために急勾配に傾斜している。
【0058】
最終生成物の調製の一実施形態では、銅濃縮物を生成するために、CCDからのスライム/残流物または最終アンダーフロー流の固液分離を場合により含むプロセスが提供される。いくつかの実施形態では、固液分離を達成するためにベルト型ろ過器が使用される。例えば、
図1Aのステップh)および第1の銅生成物を参照されたい。
【0059】
最終生成物の調製の一実施形態では、「精選浮選セル」からのフロスの固液分離からのグラファイト濃縮物を収集するステップを場合により含むプロセスが提供される。いくつかの実施形態では、グラファイト濃縮物は、「精選浮選セル」からのフロスの遠心分離から固形生成物として収集される。例えば、
図1Aのステップj)およびグラファイト生成物を参照されたい。
【0060】
最終生成物の調製の一実施形態では、二重ろ過から得られた液体流の銅イオン交換を含むプロセスが提供される。実施形態では、銅選択性樹脂、例えばLEWATIT(登録商標)M+TP 207が使用される。いくつかの実施形態では、本プロセスは、二重ろ過から得られた液体流の溶媒抽出を含む。いくつかの実施形態では、溶媒抽出は、希釈剤(例えば、ケロシン)中の有機ケトキシム抽出剤(例えば、LIX(登録商標)84)などの銅選択性抽出剤に銅カチオンを担持させるミキサセトラ抽出段階(複数可)を含む。他の実施形態では、溶媒抽出は、銅電解採取(以下)からの使用済み電解質を使用して銅担持有機物をストリッピングし、銅電解採取の前に水相に銅カチオンを移動させるミキサセトラストリッピング段階(複数可)を含む。
【0061】
最終生成物の調製の一実施形態では、銅イオン交換からの銅リッチ液を銅電解採取して、元素銅(すなわち、Cu
0)を生成することを含むプロセスが提供される。実施形態では、銅電解採取(例えば、従来の銅電解採取、emew(登録商標)電解採取など)が、銅板としての銅/Cu
0の堆積に使用される。例えば、
図1Aのステップl)および第2の銅生成物を参照されたい。
【0062】
最終生成物の調製の一実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物を生成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は水酸化物生成物である。実施形態では、銅イオン交換からの銅をストリッピングした液(例えば、
図1Aの第5の生成物流)は、水酸化物源(例えば、水酸化ナトリウム/NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など)と反応して、Co、Ni、および/またはMn水酸化物生成物を沈殿させる(例えば、
図1AのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。他の実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は炭酸塩生成物である。実施形態では、銅イオン交換から送達された銅をストリッピングした液(例えば、
図1Aの第5の生成物流)は、炭酸塩源(例えば、炭酸ナトリウム/Na
2CO
3などのアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩など)と反応して、Co、Ni、および/またはMn炭酸塩生成物を沈殿させる(例えば、
図1AのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。他の実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は酸化物生成物である。実施形態では、銅イオン交換からの銅をストリッピングした液(例えば、
図1Aの第5の生成物流)は、水酸化物源(例えば、水酸化ナトリウム/NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など)と反応して、Co、Ni、および/またはMn酸化物生成物(例えば、酸化コバルト(II、III)、Co
3O
4、酸化ニッケル(II)、NiO、二酸化マンガン(IV)、MnO
2、例えば、
図1AのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)を生成するための加熱脱水に送られる、Co、Ni、および/またはMn水酸化物生成物を沈殿させる。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は、固形ろ過ケークを収集するために固液ろ過に送られる。いくつかの実施形態では、固液分離を達成するためにフィルタープレスが使用される。硫酸または硫酸と過酸化水素との混合物が酸浸出に使用される他の実施形態では、銅イオン交換からの銅をストリッピングした液が蒸発晶析装置に送達されて、硫酸コバルト七水和物/CoSO
4・7H
2O、硫酸ニッケル六水和物/NiSO
4・6H
2O、および/または硫酸マンガン一水和物/MnSO
4・H
2Oの生成物が生成される。実施形態では、結果として得られる結晶化生成物(複数可)は、固液分離に送られ、分離された固体生成物(複数可)は、過剰な水を追い出し、硫酸コバルト水和物、硫酸ニッケル水和物、および/または硫酸マンガン水和物を生成するために乾燥機に送達される(例えば、
図1AのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離を達成する。
【0063】
最終生成物の調製の一実施形態では、リチウム生成物を沈殿させるステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物の生成から得られた液体流(例えば、
図1Aの第6の生成物流)は、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩と反応して、粗炭酸リチウムを沈殿させる。実施形態では、粗炭酸リチウム生成物は、例えば遠心分離機を使用して固液分離を経て、固体ケークが収集される(例えば、
図1Aのステップn)およびリチウム生成物を参照)。実施形態では、粗炭酸リチウムケークは、さらなる精製のために重炭酸塩化のための迂回路に送達され、二酸化炭素をタンクに通気して、炭酸リチウムをより可溶性の重炭酸リチウムに変換する(すなわち、炭酸リチウム「消化」)。いくつかの実施形態では、可溶性重炭酸リチウムを含む液体流は、カルシウムおよびマグネシウムなどの微量不純物を選択的に除去するためにイオン交換ユニットに送達される。実施形態では、可溶性重炭酸リチウムを含む溶液は、より高純度の炭酸リチウムを固体として結晶化するために蒸気が通気されているタンクに送達される。他の実施形態では、より高純度の炭酸リチウムを結晶化することは、電気分解、直接浸漬電気加熱、要素電気加熱、または間接電気加熱を含む。いくつかの実施形態では、炭酸リチウム結晶化から得られたものは、固体炭酸リチウム生成物を単離するために、例えば遠心分離機を使用して固液分離を経る。他の実施形態では、液体ろ液(例えば、遠心分離液)が、炭酸リチウム「消化」タンクにリサイクルされる。さらなる実施形態では、単離された高純度固体炭酸リチウム流は乾燥され、微粉化される。
【0064】
硫酸または硫酸と過酸化水素との混合物が酸浸出に使用される最終生成物の調製の一実施形態では、硫酸ナトリウムを結晶化させるステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、粗炭酸リチウム固液分離(例えば、遠心分離)からのろ液(例えば、遠心分離液)は、硫酸ナトリウム十水和物/Na2SO4・10H2Oを生成するために、蒸発晶析装置に送達される。いくつかの実施形態では、結晶化中に硫酸が添加されて、残留炭酸塩(例えば、Na2CO3(aq))が硫酸塩の形態に変換される。いくつかの実施形態では、結果として生じる結晶化スラリは、固液分離に送られ、分離された固体生成物は乾燥機に送達され、乾燥機により水を追い出され、無水硫酸ナトリウム/Na2SO4を生成する。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離が達成される。
【0065】
塩酸が酸浸出に使用される最終生成物の調製の一実施形態では、塩化ナトリウム溶液が副生成物として生成されるプロセスが提供される。実施形態では、塩化ナトリウム溶液は、(i)ブライン溶液として使用するための供給サイズ削減ステップ(複数可)にリサイクルされ、その一部は場合により水処理プラントに流されてその施設で再利用される、または(ii)固体の塩化ナトリウム生成物を生成するために結晶化され、場合により、その後固液分離および乾燥が行われる。
【0066】
硝酸または硝酸と過酸化水素との混合物が酸浸出に使用される最終生成物の調製の一実施形態では、硝酸ナトリウム溶液が副生成物として生成されるプロセスが提供される。実施形態では、硝酸ナトリウム溶液は、(i)固体の硝酸ナトリウム生成物を生成するために結晶化され、場合により、その後固液分離および乾燥が行われる。
【0067】
プロセス2
上記のように、充電式リチウムイオンバッテリは、炭酸アルキル(例えば、C1~C6炭酸アルキル)などの有機物、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック、グラファイト、コバルト、ニッケル、マンガン、そして当然のことながらリチウムを含むいくつかの異なる材料を含む。プロセス2の一実施形態では、充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセスが提供され、本プロセスは、
i)リチウムイオンバッテリを処理して、サイズ削減供給流を形成するステップと、
ii)サイズ削減供給流を磁性生成物流と非磁性供給流とに分離するステップと、
iii)場合により、磁性生成物流から鉄系生成物を単離するステップと、
iv)非磁性供給流をストリッピング溶媒でストリッピングして、ストリッピングされたスラリ流を形成するステップと、
v)ストリッピングされたスラリ流を篩上固形部分と篩下のストリッピングされたスラリ流とに分離するステップと、
vi)場合により、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分を、予備アルミニウム生成物流、予備銅生成物流、およびプラスチック生成物流に分離するステップと、
vii)篩下のストリッピングされたスラリ流を固液分離に供して、黒色塊固体流と回収されたストリッピング溶媒とを形成するステップと、
viii)黒色塊固体流を酸で浸出して、浸出貴液および残留固形物を形成するステップと、
ix)残留固形物から浸出貴液を分離して、残留固形物を含む第1の生成物流と浸出貴液を含む第2の生成物流とを形成するステップと、
x)場合により、第1の生成物流からグラファイト生成物を単離するステップと、
xi)第2の生成物流から銅生成物を単離して、第3の生成物流を形成するステップと、
xii)第3の生成物流からアルミニウム(Al)および/または鉄(Fe)生成物を単離して、第4の生成物流を形成するステップと、
xiii)第4の生成物流からコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および/またはマンガン(Mn)生成物を単離して、第5の生成物流を形成するステップと、
xiv)第5の生成物流から塩副生成物を単離して、第6の生成物流を形成するステップと、
xv)第6の生成物流からリチウム生成物を単離するステップと、
を含む。
【0068】
例えば、プロセス2の一実施形態のブロックフロー図を示す
図1Bを参照されたい。
【0069】
よって、本出願のプロセス2の一実施形態では、3つの主要なフェーズ、すなわち、(i)供給サイズ削減(例えば、
図1Bのステップ(i)および(i)(a)を参照)、(ii)浸出、および中間生成物の調製(例えば、
図1Bのステップ(ii)~(x)を参照)、ならびに(iii)最終生成物の調製(例えば、
図1Bのステップ(xi)~(xv)を参照)を含む充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するためのプロセスが提供される。
【0070】
図1Bを参照すると、ステップi)は、供給サイズ削減の結果としてサイズ削減供給流を提供する。プロセス2の一実施形態では、処理するステップi)が、場合により、リチウムイオンバッテリを約1~2Vまで、または約0Vまで放電するステップと、場合により、放出されたエネルギーを電力貯蔵部に貯蔵するステップと、水溶液浸漬下でリチウムイオンバッテリを粉砕、破砕、または粉砕するステップと、場合により、粉砕、破砕、または粉砕されたリチウムイオンバッテリを、第1の選択されたサイズの供給材料を含む第1のサイズ削減供給流と、第2サイズの供給材料を含む第2のサイズ削減供給流とに分離するステップと、場合により、第2のサイズ削減供給を粉砕、破砕、または粉砕して、第1の選択されたサイズの供給材料を得るステップと、を含む。
【0071】
プロセス2の別の実施形態では、水溶液浸漬が、水への浸漬、または(i)塩および/もしくは(ii)水酸化カルシウムを含む水溶液への浸漬を含む。別の実施形態では、塩が、アルカリ金属塩化物(例えば、塩化ナトリウム(NaCl))、アルカリ土類金属塩化物(例えば、塩化カルシウム(CaCl2))、またはそれらの混合物から選択される。さらに別の実施形態では、第1の選択されたサイズは約40mm以下であり、好ましくは10mm以下である。さらに別の実施形態では、処理するステップi)が、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の動作温度を有する。
【0072】
よって、供給サイズ削減の一実施形態では、場合により、小型リチウムイオンバッテリ(例えば、電話、ラップトップなどからのもの)および/または大型リチウムイオンバッテリ(例えば、電気自動車からのもの)を約1~2Vまで、または約0Vまで放電するステップを含むプロセスが提供される。別の実施形態では、場合により、放出されたエネルギーを中央電力貯蔵部に貯蔵するステップを含むプロセスが提供される(例えば、プラント施設全体の電力消費におけるピーク負荷を削減するため)。
【0073】
供給サイズ削減の別の実施形態では、場合により、放電されたリチウムイオンバッテリを粉砕、破砕、または粉砕して、サイズ削減バッテリ供給流を形成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、バッテリは40mm以下、好ましくは10mm以下のサイズに粉砕/破砕される。さらなる実施形態では、バッテリは水/水溶液浸漬下で、またはより具体的には水または塩水浸漬下で粉砕/破砕される(火花などから熱を吸収するため)。さらに他の実施形態では、バッテリは、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の温度で粉砕/破砕される。実施形態では、上記のように、水溶液浸漬が、水への浸漬、または(i)塩および/もしくは(ii)水酸化カルシウムを含む水溶液への浸漬を含む。
【0074】
供給サイズ削減の別の実施形態では、バッテリを2段階粉砕/破砕して、サイズ削減バッテリ供給流を形成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、2段階粉砕/破砕は、水/水溶液浸漬下で、またはより具体的には水または塩水浸漬下で行われて、(i)酸素の蓄積を制限し、(ii)粉砕により引き起こされる火花を抑制し、それを熱として吸収することにより、粉砕中の燃焼のリスクを最小化し、(iii)バッテリの電解質溶液を連行する。いくつかの実施形態では、ブライン溶液は塩化ナトリウム水溶液を含む。他の実施形態では、ブライン溶液は、水酸化カルシウム(消石灰または水和石灰としても知られる)の希釈水溶液を含んで、電解質塩からの潜在的なハロゲン化物の中和を助け、それにより材料/機器の腐食を増やし得る加水分解(例えば、含水フッ化水素酸/HFの形成)を最小化する、および/またはフッ化ナトリウム塩を形成する可能性を最小化する。実施形態では、2段階粉砕/破砕は、大型リチウムイオンバッテリを受け入れ、それらを400mm以下にサイズ削減させる第1の粉砕機/破砕機と、小型リチウムイオンバッテリおよびサイズ削減された大型リチウムイオンバッテリを受け入れ、その組み合わされバッテリ供給流を100mm以下にサイズ削減させる第2の粉砕機/破砕機と、を備える。実施形態では、2段階粉砕/破砕は、約2℃以上100℃未満、または約2℃以上69℃以下、または約60℃の温度で行われる。
【0075】
供給サイズ削減の別の実施形態では、(上記の2段階粉砕/破砕およびそれに続く追加の粉砕ステップに続いて)サイズ削減バッテリ供給流を篩過するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、サイズ削減バッテリ供給流は、10mm以下の篩下分と、10mm以上100mm以下の篩上分とに分離される。実施形態では、篩下分は固液分離を経て、10mm以下の粒子と液体ろ液流とを含むろ過ケークを形成する。いくつかの実施形態では、固液分離はベルト型ろ過器を介して行われる。実施形態では、篩上分は10mm以下に破砕される。いくつかの実施形態では、篩上分は、廃棄電子機器リサイクル施設および食品加工施設に見られる工業規模のシュレッダと同様のシュレッダを使用して破砕される。実施形態では、
図1Bのステップ(i)のように、10mm以下の篩下分と10mm以下に破砕された篩上分とが組み合わされて、サイズ削減供給流が形成される。
【0076】
特定の実施形態では、例えば、約5mm未満、または約1~2mm未満の粒子サイズを有する篩下材料を、供給サイズ削減の際に収集し、下流のプロセスステップに迂回させることができる。例えば、
図1Bによれば、例えば約5mm未満、または約1~2mm未満の粒子サイズを有する篩下材料を、(リチウムイオンバッテリが処理されてサイズ削減供給流を生成する)ステップ(i)から収集し、サイズ削減供給流の残りの部分から分離することができる。例えば、このような篩下材料は、粉砕機/シュレッダから得られたものを、約5mm未満または約1~2mm未満のサイズを有する粒子が通過できるサイズの開き目を有する金属メッシュに、これを通過させ収集するために接触させることにより、収集することができる。篩下材料は、例えば黒色塊固体流と組み合わされ得る篩下サイズ削減供給流を形成し(
図1Bのステップ(vii)を参照。以下でさらに詳細に説明する)、次いで、これらの組み合わされた材料は浸出するステップ(viii)(以下でさらに詳細に説明する)に供される。
【0077】
供給サイズ削減の別の実施形態では、水溶液への水溶液浸漬下でリチウムイオンバッテリを粉砕、破砕、または粉砕して、サイズ削減供給流および液体を生成するステップであって、液体が水溶液および有機物(1つまたは複数の炭酸アルキルなど)を含む任意のプロセスが提供され、プロセスが、固液分離を行って、液体の少なくとも一部をサイズ削減供給流から分離するステップと、分離された液体を分離するステップに供して、水溶液から有機物を分離するステップをさらに含む(例えば、
図1Bのステップ(i)(a)を参照)。実施形態では、有機物(1つまたは複数の炭酸アルキル)は、二重ろ過または真空蒸留により水性成分から分離される。いくつかの実施形態では、ろ過された有機物は、有機物リッチ流に分離される。いくつかの実施形態では、分離された水性成分は、2段階粉砕/破砕プロセスにリサイクルされる。
【0078】
別の実施形態では、上記の分離するステップii)が、湿式または乾式磁気分離を介して、サイズ削減供給流を磁性生成物流と非磁性供給流とに分離するステップを含む。よって、1つの実施形態では、非磁性/非鉄系材料および不活性材料(例えば、
図1Bの非磁性供給流)から磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可)、
図1Bの磁性生成物流)を分離するためのサイズ削減バッテリ供給の磁気分離(例えば、
図1Bのステップ(ii)を参照)を含むプロセスが提供される。実施形態では、磁気分離は湿式/乾式磁気分離である。いくつかの実施形態では、湿式/乾式磁気分離は、「粗選」および「精選」磁気分離ステップを含む。いくつかの実施形態では、湿式/乾式磁気分離は低強度磁気分離装置を使用する。
【0079】
別の実施形態では、プロセスは、非磁性供給流をストリッピング溶媒と混合して(
図1Bのステップ(iv)を参照)、ストリッピングされたスラリ流を形成するステップを含む。ストリッピングするステップを組み込むことにより、材料の回収率を向上させることができ、下流の処理を容易することができることがわかっている。ストリッピングするステップは、室温(約20℃)~約120℃、好ましくは約80℃~約100℃の範囲の温度で実施され得る。結果として得られたストリッピングされたスラリ流(すなわち、黒色塊/電極粉末流)は、例えば、約500μm~約5mm、好ましくは約500μm~約2mmの範囲の開き目を有する網篩に送達することにより、固液分離(
図1Bのステップ(v)を参照)を経て、アルミニウム、銅、およびプラスチックを含むストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分(すなわち、分離の大きい方の固形部分)と、篩下のストリッピングされたスラリ流(すなわち、混合状態で黒色塊を含む、上記のサイズ範囲を有する小さい方の固形物を含む分離の液体部分)と、を生成する。適切なストリッピング溶媒は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、イソプロパノール(IPA)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはジエチルホルムアミド(DEF)を含み得る。
【0080】
篩下のストリッピングされたスラリ流は、固液分離のためにフィルタープレスに送達され(
図1Bのステップ(vii)を参照)、ストリッピング溶媒(すなわち、回収されたストリッピング溶媒)および黒色塊固体流を含む液体を生成する。分離された溶媒は、場合によりタンクに収集され、メイクアップ溶媒として使用するために、場合によりストリッピングタンクに再利用のために戻される。
【0081】
ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分は、場合により、例えば脱水コンベヤに送達されることにより乾燥される。別の実施形態では、本プロセスは、場合により、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分の比重分離などによって、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分を分離するステップをさらに含む(
図1Bのステップ(vi)を参照)。よって、1つの実施形態では、分離するステップvi)が、篩上のストリッピングされたスラリ流を、比重分離により予備アルミニウム生成物流、予備銅生成物流、およびプラスチック生成物流に分離することを含む。比重分離器ユニットは、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分を、3つの別個の流れ、すなわち、予備アルミニウム生成物流、予備銅生成物流、およびプラスチック生成物流に分離し得る。例えば、比重(SG)が約2.5の液体を使用してプラスチックを分離し、その後、SGが約2.85の液体を使用して銅からアルミニウムを分離できる。分離流は、場合により洗浄され、脱水スクリーンに送達されて、分離され洗浄された予備アルミニウム生成物、予備銅生成物、およびプラスチック生成物流が収集される。
【0082】
黒色塊固体流は、電極(例えば、金属酸化物および/または金属リン酸塩正極粉末、グラファイト負極)、プラスチック、およびいくらかの残留非鉄系(例えば、破砕された銅および/またはアルミニウム)成分のうちの少なくとも1つを含む。この流は、上記のステップ(i)からの篩下サイズ削減供給流と共に、浸出のために浸出タンクに送達される。
【0083】
実施形態では、浸出するステップは、黒色塊固体流の酸浸出を含む(
図1Bのステップ(viii)を参照)。特定の実施形態では、浸出するステップで使用される酸は、硫酸、塩酸、または硝酸、好ましくは硫酸である。いくつかの実施形態では、過酸化水素は、貴金属の浸出を促進するために使用される。いくつかの実施形態では、浸出は、約60~95℃の動作温度で行われる。実施形態では、浸出は一連の3つのタンクで行われる。いくつかの実施形態では、浸出は、高せん断攪拌下の円錐底タンクで行われる。いくつかの実施形態では、浸出溶液をさらに酸化するために酸素ガスが吹き付けられる。
【0084】
浸出および中間生成物の調製の別の実施形態では、浸出されたスラリをろ過して(例えば、フィルタープレスまたはベルト型ろ過器による。
図1Bのステップ(ix)を参照)、水溶液(例えば、PLS水溶液)から残留固形物を第1の生成物流として分離し、これが混合タンクに送達され、残りの水溶液は第2の生成物流を形成するプロセスが提供される。残留固形物と共に水が混合タンクに追加され、pHが4~8に調整され得る。実施形態では、第1の生成物流からグラファイト生成物を単離するステップx)は、浮選によりグラファイト生成物を単離することを含み、浮選が場合により第1の浮選ステップおよび第2の浮選ステップを含む。よって、実施形態では、混合タンクからの溶液は浮選セルに送達されて、親水性相(例えば、混合タンクの水)から疎水性相(例えば、グラファイトおよび有機物、
図1Bのグラファイト生成物流)を選択的に分離する。実施形態では、浮選セルは、疎水性相と親水性相との予備分離を完了する「粗浮選セル」と、疎水性相と親水性相とをさらに分離するために「粗浮選セル」のフロスが送達される「精選浮選セル」と、を含む。実施形態では、「精選浮選セル」からのフロスは固液分離に送られて、場合により固相または「グラファイト濃縮物」相を単離する(例えば、
図1Bのステップ(x)を参照)。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離を達成する。
【0085】
浸出および中間生成物の調製の別の実施形態では、場合により、二重ろ過器および/またはベルト型ろ過器を通してPLS(第2の生成物流)をろ過して、連行有機物(すなわち、残留炭酸アルキル)および残留固形物(
図1Bには示さず)を分離するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、銅溶媒抽出で見られるろ過器と同様の二重ろ過器が使用される。いくつかの実施形態では、二重ろ過器は、アンスラサイト、ガーネット、および/または砂などのろ過媒体を含む。いくつかの実施形態では、二重ろ過器から得られた液体流は、場合により、活性炭ろ過器に送達されて、連行有機物(すなわち、残留炭酸アルキル)を分離する。
【0086】
一実施形態では、場合により、磁気分離からの磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))を脱水するステップと、上記の脱水された材料(例えば、
図1Bのステップiii)を参照)および鉄系生成物を収集および貯蔵するステップと、を含むプロセスが提供される。
【0087】
実施形態では、本プロセスは、場合により、比重分離からの予備アルミニウム生成物流を脱水するステップと、脱水されたアルミニウム生成物(例えば、
図1Bのステップ(vi)(a)およびアルミニウム生成物参照)を収集および貯蔵するステップと、を含む。実施形態では、本プロセスは、場合により、比重分離からの予備銅生成物流を脱水するステップと、脱水された予備銅生成物(例えば、
図1Bのステップ(vi)(b)を参照)を収集するステップと、を含む。実施形態では、本プロセスは、場合により、比重分離からのプラスチック生成物流を脱水するステップと、脱水されたプラスチック生成物(例えば、
図1Bのステップ(vi)(c)を参照)を収集するステップと、を含む。実施形態では、脱水スクリーンが使用され、スクリーンは、水/水溶液の排出を促進するために急勾配に傾斜している。
【0088】
最終生成物の調製の別の実施形態では、「精選浮選セル」からのフロスの固液分離からのグラファイト濃縮物を収集するステップを場合により含むプロセスが提供される。いくつかの実施形態では、グラファイト濃縮物は、「精選浮選セル」からのフロスの遠心分離から固形生成物として収集される。例えば、
図1Bのステップx)およびグラファイト生成物を参照されたい。
【0089】
1つの実施形態では、上記のステップxi)は、i.第2の生成物流から銅生成物流を単離するステップと、ii.電解採取により銅生成物流からCu0を堆積させるステップと、を含む。実施形態では、第2の生成物流から銅生成物流を単離するステップが、銅イオン交換または銅溶媒抽出を含む。よって、最終生成物の調製の別の実施形態では、第2の生成物流の銅イオン交換(使用される場合、任意の二重ろ過に続く)を含むプロセスが提供されて、第3の生成物流として銅をストリッピングした液が得られる。実施形態では、銅選択性樹脂、例えばLEWATIT(登録商標)M+TP 207またはDOWEX(商標)M4195が使用される。いくつかの実施形態では、本プロセスは、第2の生成物流の溶媒抽出(これも、使用される場合、任意の二重ろ過に続く)を含むプロセスが提供されて、第3の生成物流として銅をストリッピングした液が得られる。いくつかの実施形態では、溶媒抽出は、希釈剤(例えば、ケロシン)中の有機ケトキシム抽出剤(例えば、LIX(登録商標)984N)などの銅選択性抽出剤に銅カチオンを担持させるミキサセトラ抽出段階(複数可)を含む。他の実施形態では、溶媒抽出は、銅電解採取(以下)からの使用済み電解質を使用して銅担持有機物をストリッピングし、銅電解採取の前に水相に銅カチオンを移動させるミキサセトラストリッピング段階(複数可)を含む。
【0090】
最終生成物の調製の別の実施形態では、銅イオン交換からの銅リッチ液を銅電解採取して、元素銅(すなわち、Cu
0)を生成することを含むプロセスが提供される。いくつかの実施形態では、溶媒抽出からの銅リッチ液の銅電解採取を場合により含むプロセスが提供される。実施形態では、銅電解採取(例えば、従来の銅電解採取、emew(登録商標)電解採取など)が、銅板としての銅/Cu
0の堆積に使用される。例えば、
図1BのステップXl)および銅生成物を参照されたい。
【0091】
1つの実施形態では、上記のステップxii)は、 ステップxii)が、第3の生成物流に水酸化物源を添加してAlおよび/またはFe水酸化物生成物を沈殿させることにより、第3の生成物流からアルミニウム(Al)および/または鉄(Fe)生成物を単離することを含む。よって、最終生成物の調製の別の実施形態では、第3の生成物流からAlおよび/またはFe生成物を生成するステップを含むプロセスが提供され(例えば、
図1Bのステップ(xii))、Alおよび/またはFe生成物が水酸化物生成物である。実施形態では、銅イオン交換または溶媒抽出からの銅をストリッピングした液(例えば、
図1Bの第3の生成物流)は、場合により、酸素ガスを吹き付けられ、約3~約5のpHで水酸化物源(例えば、水酸化ナトリウム/NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など。NaOHが水酸化物の好ましい源である)と反応して、Alおよび/またはFe生成物を沈殿させ(例えば、
図1BのAlおよび/またはFe生成物を参照)、Alおよび/またはFeを失った溶液(Alおよび/またはFe生成物調製ろ液)が第4のプロセス流として残る。いくつかの実施形態では、固液分離を達成するためにフィルタープレスまたは遠心分離機が使用される。
【0092】
別の実施形態では、上記の単離するステップxiii)は、i.第4の生成物流に水酸化物源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させるステップ、ii.第4の生成物流に炭酸塩源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn炭酸塩生成物を沈殿させるステップ、iii.硫酸塩源の存在下で第4の生成物流を蒸発結晶化させて、Co、Ni、および/もしくはMn硫酸塩生成物を形成するステップ、またはiv.第4の生成物流に水酸化物源を添加して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させた後、加熱脱水してCo、Ni、および/もしくはMn酸化物生成物を生成するステップを含む。
【0093】
よって、最終生成物の調製の別実施形態では、第4のプロセス流からCo、Ni、および/またはMn生成物を生成するステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は水酸化物生成物である。実施形態では、Alおよび/またはFe生成物調製ろ液(例えば、
図1Bの第4の生成物流)は、水酸化物源(例えば、水酸化ナトリウム/NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など。NaOHが水酸化物の好ましい源である)と反応して、Co、Ni、および/またはMn水酸化物生成物を沈殿させる(例えば、
図1BのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。他の実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は炭酸塩生成物である。実施形態では、Alおよび/またはFe生成物調製ろ液(例えば、
図1Bの第4の生成物流)は、炭酸塩源(例えば、炭酸ナトリウム/Na
2CO
3などのアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩など。Na
2CO
3が炭酸塩の好ましい源である)と反応して、Co、Ni、および/またはMn炭酸塩生成物を沈殿させる(例えば、
図1BのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。他の実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は酸化物生成物である。実施形態では、Alおよび/またはFe生成物調製ろ液(例えば、
図1Bの第4の生成物流)は、pHが約8~約10である水酸化物源(例えば、水酸化ナトリウム/NaOHなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など)と反応して、Co、Ni、および/またはMn酸化物生成物(例えば、酸化コバルト(II、III)、Co
3O
4、酸化ニッケル(II)、NiO、二酸化マンガン(IV)、MnO
2)を生成するための加熱脱水に送られる、Co、Ni、および/またはMn水酸化物生成物を沈殿させる(例えば、
図1BのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物は、固形ろ過ケークを収集するために固液ろ過に送られる。いくつかの実施形態では、固液分離を達成するためにフィルタープレスが使用される。Co、Ni、および/またはMnが失われた液体は、第5の生成物流を形成する。
【0094】
他の実施形態では、硫酸または硫酸と過酸化水素との混合物が固体Co、Ni、および/またはMn生成物の酸浸出に使用され、その後、浸出液が蒸発晶析装置またはドラフトチューブバッフル晶析装置に送達されて、硫酸コバルト七水和物/CoSO
4・7H
2O、硫酸ニッケル六水和物/NiSO
4・6H
2O、および/または硫酸マンガン一水和物/MnSO
4・H
2Oの生成物が生成される。実施形態では、結果として得られる結晶化生成物(複数可)は、固液分離に送られ、分離された固体生成物(複数可)は、過剰な水を追い出し、硫酸コバルト水和物、硫酸ニッケル水和物、および/または硫酸マンガン水和物を生成するために乾燥機に送達される(例えば、
図1BのCo、Ni、および/またはMn生成物を参照)。いくつかの実施形態では、遠心分離機またはフィルタープレスを使用して固液分離を達成する。
【0095】
上記のように、ステップ(xiv)は、第5の生成物流から塩副生成物を単離して、第6の生成物流を形成するステップを含む。1つの実施形態では、単離するステップxiv)が、i.塩副生成物を単離するための蒸発結晶化、またはii.塩副生成物を単離するためのドラフトチューブバッフル晶析装置を使用した結晶化を含む。初期のプロセスステップによって生成される塩副生成物が、浸出するステップ(viii)のための酸の選択、ならびにステップ(xii)および(xiii)における水酸化物、炭酸塩などの供給源の選択に少なくとも部分的に依存することを当業者であれば認識するはずである。よって、浸出するステップviii)の酸が硫酸を含む場合、ステップxiv)の塩副生成物は硫酸塩を含む。浸出するステップviii)の酸が塩酸または硝酸を含む場合、ステップxiv)の塩副生成物はそれぞれ塩化物塩または硝酸塩を含む。
【0096】
浸出するステップviii)の酸が硫酸を含む場合、そしてステップxii)が、第3の生成物流に水酸化ナトリウムを添加してAlおよび/もしくはFe水酸化物生成物を沈殿させることにより、第3の生成物流からアルミニウム(Al)および/もしくは鉄(Fe)生成物を単離することを含む、ならびに/あるいはステップxiii)が、第4の生成物流に水酸化ナトリウムを添加して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させるステップ、または第4の生成物流に炭酸ナトリウムを添加して、Co、Ni、および/もしくはMn炭酸塩生成物を沈殿させるステップを含む場合、ステップxiv)の塩副生成物が硫酸ナトリウムを含む。よって、最終生成物の調製の一実施形態では、第5の生成物流から硫酸ナトリウムを結晶化して、硫酸ナトリウム固体生成物を形成し、また第6の生成物流を形成するナトリウムを失った液を形成するステップ含むプロセスが提供される。実施形態では、Co、Ni、および/またはMn生成物調製からのろ液は、蒸発晶析装置に送達されて、硫酸ナトリウム十水和物/Na2SO4・10H2Oを生成する。いくつかの実施形態では、結果として生じる結晶化スラリは、固液分離に送られ、分離された固体生成物は乾燥機に送達され、乾燥機により水を追い出され、無水硫酸ナトリウム/Na2SO4を生成する。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離が達成される。
【0097】
1つの実施形態では、第6の生成物流からリチウム生成物を単離することに関する、上記の単離するステップxv)は、i.第6の生成物流に炭酸塩を添加して、炭酸リチウムを沈殿させる、またはii.第6の生成物流に水酸化物を添加して、水酸化リチウム溶液を形成し、水酸化リチウム溶液を蒸発結晶化させて、水酸化リチウム一水和物を形成するステップを含む。1つの実施形態では、プロセスは、i.炭酸リチウムを重炭酸リチウムに変換するステップと、ii.重炭酸リチウムを蒸気処理して、炭酸リチウムを再形成するステップと、を介して炭酸リチウムを精製するステップをさらに含む。別の実施形態では、プロセスは、i.水酸化リチウム一水和物を水に溶解させるステップと、ii.機械式蒸気再圧縮晶析装置を使用して水酸化リチウム一水和物を再結晶させるステップと、を介して水酸化リチウム一水和物を精製するステップをさらに含む。
【0098】
よって、最終生成物の調製の一実施形態では、第6の生成物流からリチウム生成物を沈殿させるステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、硫酸ナトリウム生成物の生成から得られた液体流(例えば、
図1Bの第6の生成物流)は、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩と反応して、粗炭酸リチウムを沈殿させる。実施形態では、粗炭酸リチウム生成物は、例えば遠心分離機を使用して固液分離を経て、固体ケークが収集される(例えば、
図1Bのステップ(xv)およびリチウム生成物を参照)。実施形態では、粗炭酸リチウムケークは、さらなる精製のために重炭酸塩化のための迂回路に送達され、二酸化炭素をタンクに通気して、炭酸リチウムをより可溶性の重炭酸リチウムに変換する(すなわち、炭酸リチウム「消化」)。いくつかの実施形態では、可溶性重炭酸リチウムを含む液体流は、カルシウムおよびマグネシウムなどの微量不純物を選択的に除去するためにイオン交換ユニットに送達される。実施形態では、可溶性重炭酸リチウムを含む溶液は、より高純度の炭酸リチウムを固体として結晶化するために蒸気が通気されているタンクに送達される。他の実施形態では、より高純度の炭酸リチウムを結晶化することは、電気分解、直接浸漬電気加熱、要素電気加熱、または間接電気加熱を含む。いくつかの実施形態では、炭酸リチウム結晶化から得られたものは、固体炭酸リチウム生成物を単離するために、例えば遠心分離機を使用して固液分離を経る。他の実施形態では、液体ろ液(例えば、遠心分離液)が、炭酸リチウム「消化」タンクにリサイクルされる。さらなる実施形態では、単離された高純度固体炭酸リチウム流は乾燥され、微粉化される。
【0099】
硫酸または硫酸と過酸化水素/酸素との混合物が酸浸出に使用される最終生成物の調製の一実施形態では、硫酸ナトリウムを結晶化させるステップを含むプロセスが提供される。実施形態では、粗炭酸リチウム固液分離(例えば、遠心分離)からのろ液(例えば、遠心分離液)は、硫酸ナトリウム十水和物/Na2SO4・10H2Oを生成するために、蒸発晶析装置に送達される。いくつかの実施形態では、結晶化中に硫酸が添加されて、残留炭酸塩(例えば、Na2CO3(aq))が硫酸塩の形態に変換される。いくつかの実施形態では、結果として生じる結晶化スラリは、固液分離に送られ、分離された固体生成物は乾燥機に送達され、乾燥機により水を追い出され、無水硫酸ナトリウム/Na2SO4を生成する。いくつかの実施形態では、遠心分離機を使用して固液分離が達成される。
【0100】
塩酸が酸浸出に使用される最終生成物の調製の別の実施形態では、塩化ナトリウム溶液が副生成物として生成されるプロセスが提供される。実施形態では、塩化ナトリウム溶液は、(i)ブライン溶液として使用するための供給サイズ削減ステップ(複数可)にリサイクルされ、その一部は場合により水処理プラントに流されてその施設で再利用される、または(ii)固体の塩化ナトリウム生成物を生成するために結晶化され、場合により、その後固液分離および乾燥が行われる。
【0101】
硝酸または硝酸と過酸化水素との混合物が酸浸出に使用される最終生成物の調製の別の実施形態では、硝酸ナトリウム溶液が副生成物として生成されるプロセスが提供される。実施形態では、硝酸ナトリウム溶液は、(i)固体の硝酸ナトリウム生成物を生成するために結晶化され、場合により、その後固液分離および乾燥が行われる。
【0102】
装置およびシステム
1つの態様では、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置が提供される。1つの実施形態では、本装置は、浸漬液を保持するように構成されたハウジングと、ハウジング内に第1の種類のバッテリ材料を受け入れるための開口部を内部に画定する第1の供給シュート(例えば、ホッパ)と、第1の供給シュートから第1の種類のバッテリ材料を受け入れるようにハウジング内に配置された第1の浸漬型粉砕デバイスであって、第1の浸漬型粉砕デバイスが、第1の種類のバッテリ材料をサイズ削減させて第1のサイズ削減バッテリ材料を形成するように構成される、第1の浸漬型粉砕デバイスと、第1の浸漬型粉砕デバイスから第1のサイズ削減バッテリ材料を受け入れるようにハウジング内に配置された第2の浸漬型粉砕デバイスであって、第2の浸漬型粉砕デバイスが、第1のサイズ削減バッテリ材料をさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料を形成するように構成される、第2の浸漬型粉砕デバイスと、を備える。
【0103】
これらの実施形態では、ハウジングは、浸漬型部品が浸漬される浸漬液を収容するように、また外部環境への浸漬液の意図しない漏れを防ぐように本明細書で説明される装置およびシステムの浸漬型部品を収容する一体構造を形成する限り、単一部品として形成することも、複数部品の構成部品とすることもできる。ハウジングは、浸漬液(以下でさらに詳細に説明する)と両立し得る材料から、また上記のリチウムイオンバッテリの構成部品などのバッテリ材料の成分(例えば、リチウムイオンバッテリに一般的に見られる金属、金属酸化物、電解質、および有機物(すなわち、炭酸アルキル))と両立し得る材料から形成される。1つの実施形態では、ハウジングは、金属(鉄など)、合金(鋼鉄(例えば、炭素鋼、ステンレス鋼)など)、ガラス繊維(ポリエステル樹脂など)、またはプラスチック(ポリエチレンまたはポリプロピレンなど)から形成される。1つの実施形態では、ハウジングは、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)などのステンレス鋼から形成される。
【0104】
浸漬型粉砕デバイスは、デバイスの少なくとも粉砕部分が本明細書に記載の浸漬液などの液体に完全に浸漬され得るが、粉砕デバイスの残り部分は、電子機器などを収容する粉砕デバイスの部分に液体が侵入するのを防ぐために水密にされている/密閉されているデバイスを指すことを当業者であれば理解するはずである。駆動軸および/または粉砕デバイスの他の要素の周りに適切な水密シールを設けることにより、粉砕デバイスを浸漬可能にすることができる。
【0105】
本装置は、場合により、第1の種類のバッテリ材料を第1の供給シュートから第1の浸漬型粉砕デバイスに搬送するための手段を備え得る。あるいは、第1の供給シュートは、第1の種類のバッテリ材料を第1の浸漬型粉砕デバイスに直接送達することができ、介在する搬送手段は必要とされない。搬送手段が存在する一実施形態では、本装置は、第1の供給シュートから第1の浸漬型粉砕デバイスまで延びる搬送シュートを備えることができ、第1の供給シュートから搬送シュートを介して第1の浸漬型粉砕デバイスに第1の種類のバッテリ材料を搬送するために重力送りが用いられる。搬送手段が存在する別の実施形態では、本装置は、第1の供給シュートから第1の浸漬型粉砕デバイスに第1の種類のバッテリ材料を搬送するための浸漬型コンベヤを備えることができ、第1の種類のバッテリ材料を浸漬型コンベヤ上に直接供給することもできるし、搬送シュートを第1の供給シュートと浸漬型コンベヤとの間に配置して、第1の種類のバッテリ材料を浸漬型コンベヤに搬送することもできる。
【0106】
本装置はまた、第1のサイズ削減バッテリ材料を第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに搬送するための手段を備える。1つの実施形態では、本装置は、第1の浸漬型粉砕デバイスの出口から第2の浸漬型粉砕デバイスまで延びる搬送シュートを備え、重力送りを使用して、第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに第1のサイズ削減バッテリ材料を搬送する。別の実施形態では、本装置は、第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに第1のサイズ削減バッテリ材料を搬送するための浸漬型コンベヤをさらに備え、浸漬型コンベヤは、第1の浸漬型粉砕デバイスの出口から第1のサイズ削減バッテリ材料を受け取り、またさらなる粉砕のために、第1のサイズ削減バッテリ材料を第2の浸漬型粉砕デバイスに搬送する。
【0107】
別の実施形態では、浸漬型コンベヤ(複数可)は、チェーンコンベヤ、スクリューコンベヤ、またはベルトコンベヤから選択される。さらに別の実施形態では、浸漬型コンベヤ(複数可)はチェーンコンベヤ(複数可)である。
【0108】
当業者に知られているように、チェーンコンベヤは、2つの動力ローラの周りに輪にされたリンクにより形成された平らなメッシュから構成され得る。メッシュは、任意の所望のサイズの開き目を形成するリンクを備えるように選択することができ、チェーンコンベヤを作るために使用される標準的な材料、例えば金属メッシュで形成することができる。チェーンコンベヤを使用することにより、ベルトコンベヤまたはスクリューコンベヤなどの当技術分野で知られている他のコンベヤと比較して(体積や重量で)大量の材料を輸送する耐久性および/または能力がもたらされることを含み、他の種類のコンベヤを使用するよりも特別な利点がもたらされる。
【0109】
他の実施形態では、浸漬型コンベヤ(複数可)は自浄式であり得る。本明細書で言及される自浄式コンベヤとは、オペレータがコンベヤの働きを妨げることなく蓄積された材料を除去できるようにするコンベヤを指し、これは本明細書で説明されるシステムおよび装置で好都合に使用され得る。
【0110】
自浄式コンベヤを含む実施形態では、篩下材料は、例えばチェーンコンベヤを通過して、本開示の装置の他の構成要素とは別個であり得る、または一体であり得る収集要素に入ることができる。ハウジングと同様に、収集要素は、浸漬液(以下でさらに詳細に説明する)と両立し得る任意の材料から、また上記のリチウムイオンバッテリの構成部品などのバッテリ材料の成分(例えば、リチウムイオンバッテリに一般的に見られる金属、金属酸化物、電解質、および有機物(すなわち、炭酸アルキル))と両立し得る任意の材料から構築され得る。1つの実施形態では、収集要素は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)などのステンレス鋼から形成される。収集要素は、例えば、実質的に管状、長方形、または三角柱形状に、篩下材料を収集するために寸法決めされた任意の適切な形態を含み得る、または収集タンクであり得る。収集された篩下材料は、下流の装置/システム/プロセスに篩下材料を迂回させるために、当技術分野で知られている任意の適切な手段、例えば真空などの吸引手段によって、または代替的に圧力を加えることによって収集された篩下材料をオペレータが除去できるように構成された収集要素内に落下、排出、または輸送され得る。1つの実施形態では、収集要素は、除去を容易にするために、収集された篩下材料が自由に流れることができる滑らかな表面を有する。別の実施形態では、パイプの長軸が浸漬型コンベヤの長軸に略平行に(またはわずかにずらした角度、例えば5~10度で)走るパイプを使用でき、パイプは、浸漬型コンベヤの下側とは反対側に開放側面またはスロットを画定し、これにより、篩下材料を開口部/スロットを通して落下させ、パイプに集めることができる。収集要素からのサイズの篩下材料の除去の頻度は、本開示の装置の動作の頻度に依存するが、理想的には、本装置が頻繁に動作する場合、定期的な時間間隔で実行される。定期的な時間間隔は、例えば、本開示の装置および/またはシステムが毎日動作する場合、1日に1回の頻度を含み得る。
【0111】
自浄式コンベヤを含む実施形態では、篩下材料を収集要素に搬送するために、自浄式コンベヤと収集要素との間に搬送手段をさらに配置することができる。このような搬送手段は、例えば、篩下材料を収集タンクおよび/または他の下流の装置および/またはシステムに搬送するように構成されたバイパスラインであり得る。1つの実施形態では、収集要素を他の下流の装置および/またはシステムに直接または間接的に接続して、篩下材料を個別に処理したり、さらなる処理のために他の材料と一体化したりできる。別の実施形態では、収集要素は、第2の浸漬型粉砕デバイスからの第2のサイズ削減バッテリ材料と組み合わされるように篩下材料を迂回させることができる。
【0112】
1つの実施形態では、浸漬型コンベヤは自浄式チェーンコンベヤである。一実施形態では、自浄式チェーンコンベヤは、例えば約5mm未満、または約1~2mm未満のサイズを有する粒子が通過できる開き目を有する金属メッシュから形成される。自浄式チェーンコンベヤを使用することにより、ユーザが所望のメッシュサイズを選択できる柔軟性を提供することを含め、他の種類の自浄式コンベヤを使用するよりも特別な利点がもたらされる。
【0113】
自浄式スクリューコンベヤを含む実施形態では、スクリューコンベヤのハウジングの底部は、篩下材料が収集要素(例えば、パイプの長さに沿って走る開放側面/スロットを有するパイプ)まで通過し得るろ過要素(例えば、格子またはスクリーン)を備え得る。
【0114】
別の実施形態では、装置の第1の浸漬型粉砕デバイスは、多軸シュレッダ、ハンマーミル、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、もしくはロールクラッシャから選択される、および/または第2の浸漬型粉砕デバイスは多軸シュレッダまたは造粒機から選択され得る。別の実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイスおよび第2の浸漬型粉砕デバイスの両方が多軸シュレッダである。別の実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイスは4軸シュレッダである(例えば、UNTHA社製RS100を、適切な水密シールの追加などにより浸漬可能となるように修正することができる)。さらに別の実施形態では、第2の浸漬型粉砕デバイスが2軸シュレッダまたは4軸シュレッダである。例えば、第2の浸漬型粉砕デバイスは、UNTHA社製RS50などの4軸シュレッダとすることができる。
【0115】
多軸シュレッダを含む実施形態では、バッテリ材料は、バッテリ材料をサイズ削減させるように構成された数セットの半鋭利なブレードを通して上部から供給される。多軸シュレッダは、2軸シュレッダ(2軸シュレッダまたはツインシャフトシュレッダとも呼ばれる)などの1セットの半鋭利なブレードを有してもよいし、4軸シュレッダなどに典型的な2セットの半鋭利なブレードを有してもよい。
【0116】
当業者に知られているように、2軸シュレッダには上部から供給され、2セットの半鋭利なブレードが中央を通して材料を引き込むために互いに向かって回転する軸に配置されている。材料が中央を通過すると、ブレードによって切断される。4軸シュレッダに対する2軸シュレッダの主な利点は、必要なエネルギーとスペースが少ないことである。2軸シュレッダを有する実施形態は、4軸シュレッダを有する実施形態と比較して、動作するのに必要な電力がより少ないことを含む追加の利点をもたらす。
【0117】
これも当業者に知られているように、4軸シュレッダには上部から供給され、4セットの半鋭利なブレードが中央に向かって回転する軸に配置されている。外側の2つの軸は、材料を内側の軸に向かって押し出すのを助ける。内側の2つの軸は、材料を中央を通して引き込む。材料が中央を通過すると、ブレードによって切断される。これらのシュレッダに利用可能なスクリーンもあり、篩上材料はすべて、ブレードで一掃し、再破砕することができる。2軸シュレッダに対する4軸シュレッダの主な利点は、より均一な粒子サイズを生成する傾向があり、外側の軸が内側の軸のクリーニングに役立つことである。
【0118】
別の実施形態では、第1の種類のバッテリ材料は充電式リチウムイオンバッテリである。充電式リチウムイオンバッテリは、大型リチウムイオンバッテリまたは小型リチウムイオンバッテリであり得る。大型リチウムイオンバッテリは、例えば、サイズが約370mm×約130mm×約100mm~約5000mm×約2000mm×約1450mmであるリチウムイオンバッテリ(または同等の体積。形状を単純化するために底辺が長方形の角柱で表している)とすることができ、電気自動車のバッテリ、または定置型のエネルギー貯蔵システムで使用されるバッテリを含むことができる。小型リチウムイオンバッテリは、例えば、サイズが最大約370mm×約130mm×約100mm(または同等の体積。形状を単純化するために底辺が長方形の角柱で表している)のバッテリであり、携帯電話、ラップトップ、電動工具、電動自転車などの携帯用リチウムイオンバッテリを含むことができる。大型バッテリは、小型バッテリよりも大きいことが当技術分野で一般的に知られている。別の実施形態では、バッテリ材料は、バッテリ全体ではなくバッテリ部品を含むことができるが、本明細書で説明される装置、システム、およびプロセスは、バッテリ全体の処理に特に適している。1つの実施形態では、第1の種類のバッテリ材料は、大型充電式リチウムイオンバッテリである。
【0119】
別の実施形態では、装置は、第2の種類のバッテリ材料をハウジング内に受け入れるための開口部を内部に画定する第2の供給シュート(例えば、ホッパ)をさらに備え、装置が、第2の供給シュートから第2の種類のバッテリ材料を第2の浸漬型粉砕デバイスに直接搬送するための手段をさらに備え、第2の浸漬型粉砕デバイスが、第2の種類のバッテリ材料をサイズ削減させるように構成される。第2の種類のバッテリ材料は、上記の大型リチウムイオンバッテリまたは小型リチウムイオンバッテリから選択される充電式リチウムイオンバッテリであり得る。別の実施形態では、第1の種類のバッテリ材料および第2の種類のバッテリ材料が充電式リチウムイオンバッテリである。第1の種類および第2の種類のバッテリ材料は、充電式リチウムイオンバッテリとすることができ、上記の大型リチウムイオンバッテリまたは小型リチウムイオンバッテリから独立に選択され得る。別の実施形態では、第2の種類のバッテリ材料は、第1の種類のバッテリ材料に比べてサイズが小さい。例えば、上記のように、第2の種類のバッテリ材料は小型リチウムイオンバッテリであり得、第1の種類のバッテリは大型リチウムイオンバッテリであり得る。
【0120】
本装置は、第2の浸漬型粉砕デバイスによって生成された粉砕された材料を排出するための出口をさらに備え、排出された粉砕された材料は、1つまたは複数のさらなる場合により浸漬型の粉砕デバイス、ならびに/またはさらなる下流のシステムおよびプロセスに送達することができる。
【0121】
別の態様では、第1の種類のバッテリ材料を受け入れるための第1の浸漬型粉砕デバイスであって、第1の浸漬型粉砕デバイスが、第1の種類のバッテリ材料をサイズ削減させて第1のサイズ削減バッテリ材料を形成する、第1の浸漬型粉砕デバイスと、第1のサイズ削減バッテリ材料を受け入れるための第2の浸漬型粉砕デバイスであって、第2の浸漬型粉砕デバイスが、第1のサイズ削減バッテリ材料をさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料を形成する、第2の浸漬型粉砕デバイスと、第1の浸漬型粉砕デバイス、第2の浸漬型粉砕デバイス、第1のサイズ削減バッテリ材料、および第2のサイズ削減バッテリ材料のそれぞれが浸漬される浸漬液と、を備える、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するためのシステムが提供される。浸漬型粉砕デバイスは、装置に関して上述したとおりである。
【0122】
本システムは、第1のサイズ削減バッテリ材料を第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに搬送するための手段を備える。搬送手段は、例えば、第1の浸漬型粉砕デバイスの出口から第2の浸漬型粉砕デバイスまで延びる搬送シュートとすることができ、重力送りを使用して、第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに第1のサイズ削減バッテリ材料を搬送する。
【0123】
別の実施形態では、本システムは、上記のように、第1の浸漬型粉砕デバイスから第2の浸漬型粉砕デバイスに第1のサイズ削減バッテリ材料を搬送するための浸漬型コンベヤをさらに備え、浸漬型コンベヤは、第1の浸漬型粉砕デバイスの出口から第1のサイズ削減バッテリ材料を受け取り、またさらなる粉砕のために、第1のサイズ削減バッテリ材料を第2の浸漬型粉砕デバイスに搬送し、浸漬型コンベヤが浸漬液に浸漬される。浸漬型コンベヤを含む実施形態では、浸漬型コンベヤは、上記のチェーンコンベヤ、上記のスクリューコンベヤ、またはベルトコンベヤであり得る。チェーンコンベヤまたはスクリューコンベヤを含む実施形態では、上記チェーンコンベヤおよび/またはスクリューコンベヤは、上述の自浄式チェーンコンベヤまたは自浄式スクリューコンベヤであり得る。
【0124】
一実施形態では、本システムは、第1の種類のバッテリ材料を第1の浸漬型粉砕デバイスに搬送するための第1の搬送システムをさらに備える。第1の搬送システムは、上述のように、場合により搬送シュートならびに/または浸漬型コンベヤまたは浸漬型自浄式コンベヤと組み合わせた第1の供給シュートを備えることができる。あるいは、第1の供給シュートは、第1の種類のバッテリ材料を第1の浸漬型粉砕デバイスに直接送達することができる(介在する搬送シュートまたは浸漬型コンベヤは必要とされない)。
【0125】
一実施形態では、本システムは、第1の浸漬型粉砕デバイスおよび第2の浸漬型粉砕デバイスをさらに備え、それぞれが、圧縮またはせん断によりサイズ削減させる。
【0126】
一実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイスが、上記のような多軸シュレッダ、ハンマーミル、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、もしくはロールクラッシャから選択される、および/または第2の浸漬型粉砕デバイスが、上記のような多軸シュレッダまたは造粒機から選択される。
【0127】
一実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイスおよび第2の浸漬型粉砕デバイスのそれぞれが上記のような多軸シュレッダである。
【0128】
一実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイスは、上記のような4軸シュレッダである。
【0129】
一実施形態では、第2の浸漬型粉砕デバイスは、上記の2軸シュレッダまたは上記の4軸シュレッダである。
【0130】
一実施形態では、第1の種類のバッテリ材料は、上記の充電式リチウムイオンバッテリである。
【0131】
一実施形態では、本システムは、第2の種類のバッテリ材料を第2の浸漬型粉砕デバイスに搬送するための第2の搬送システムをさらに備え、第2の浸漬型粉砕デバイスが第2の種類のバッテリ材料をサイズ削減させて、浸漬液に浸漬され、第2のサイズ削減バッテリ材料と結合する粉砕された材料を形成する。第2の搬送システムは、上述のように、場合により搬送シュートならびに/または浸漬型コンベヤまたは浸漬型自浄式コンベヤと組み合わせた第2の供給シュートを備えることができる。
【0132】
一実施形態では、第1の種類のバッテリ材料および第2の種類のバッテリ材料が上記のような充電式リチウムイオンバッテリである。
【0133】
一実施形態では、第2の種類のバッテリ材料は、第1の種類のバッテリ材料に比べてサイズが小さい。これらの実施形態では、第2の種類のバッテリ材料は上記のような小型リチウムイオンバッテリであり得、第1の種類のバッテリは上記のような大型リチウムイオンバッテリであり得る。
【0134】
一実施形態では、浸漬液は水溶液である。
【0135】
浸漬液の使用によって得られる利点には、ユーザによる操作中に本質的に安全なシステムを提供するために、バッテリ材料の粉砕中に放出される熱を吸収するための手段を提供することが含まれる。水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を含む水溶液浸漬液を含む実施形態では、リチウムイオンバッテリ材料と共に使用される場合、LiPF6などのリチウムイオンバッテリ電解質塩の加水分解に起因して、例えば70°C超の反応速度でフッ化水素水溶液を生成するために水または水溶液にさらされると、さらなる利点が提供される(S.F.Lux,I.T.Lucas,E.Pollak,S.Passerini,M.Winter and R.Kostecki,「The mechanism of HF formation in LiPF6 based organic carbonate electrolytes,」Electrochemistry Communications,vol.14,pp.47-50,2012)。希薄な濃度の消石灰または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を水溶液浸漬液に加えると、フッ素水溶液が好都合にも不溶性フッ化カルシウムに補足され得るために、フッ化水素水溶液の腐食性が低減される(H.G.McCann,「The solubility of fluorapatite and its relationship to that of calcium fluoride,」Archives of Oral Biology,vol.13,no.8,pp.987-1001,1968)。
【0136】
一実施形態では、水溶液浸漬液は、代替的または追加的に、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、またはそれらの混合物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの混合物)などの塩を含む。塩化ナトリウム(NaCl)などを塩の水溶液浸漬液へ添加することにより、システムがリチウムイオンバッテリ材料と共に使用される場合にさらなる利点がもたらされ、塩は導電性媒体として作用し、これにより、リチウムイオンバッテリからの残留電荷が散逸でき、バッテリ材料の粉砕中に放出される熱を吸収できて、ユーザによる操作中に本質的に安全なシステムを提供できる。
【0137】
一実施形態では、本システムは、第2の浸漬型粉砕デバイスから粉砕されたバッテリ材料を受け入れるための第3の粉砕デバイスをさらに備え、第3の粉砕デバイスが場合により浸漬液に浸漬可能であり、第2の浸漬型粉砕デバイスから受け入れた粉砕されたバッテリ材料をサイズ削減させる。第3の粉砕デバイスは、さらなる粉砕されたバッテリ材料のさらなる処理のためのシステムに組み込まれてもよい。これらの実施形態では、第3の粉砕デバイスは、上記の多軸シュレッダ、単一軸シュレッダ、または造粒機から選択され得る。いくつかの実施形態では、第3の粉砕デバイスは、浸漬型2軸シュレッダまたは単一軸シュレッダである。粉砕されたバッテリ材料のさらなるサイズ削減が望まれる第3の粉砕デバイスを含む実施形態では、さらなる利点が提供され得る。例えば、ユーザは、本明細書に開示されるような第1の浸漬型および/または第2の浸漬型粉砕デバイスが100mmより小さい粒子サイズを有する粉砕された材料を生成できない場合にさらなるサイズ削減を望む場合がある。例えば、第3の粉砕デバイスを出る粉砕された材料は、約40mm~約100mmの粒子サイズを有することができる。
【0138】
さらなる実施形態では、本システムは、第3の場合により浸漬型の粉砕デバイスから粉砕されたバッテリ材料を受け入れるための第4の粉砕デバイスをさらに備え、第4の粉砕デバイスが場合により浸漬液に浸漬可能であり、第3の浸漬型粉砕デバイスから受け入れた粉砕されたバッテリ材料をサイズ削減させる。第4の粉砕デバイスは、さらなる粉砕されたバッテリ材料のさらなる処理のためのシステムに組み込まれてもよい。1つの実施形態では、第4の粉砕デバイスは、上記の多軸シュレッダまたは造粒機から選択され得る。いくつかの実施形態では、第4の粉砕デバイスは、浸漬液に浸漬されない造粒機である。1つの実施形態では、第4の粉砕デバイスを出る粉砕された材料は、約40mm未満の粒子サイズを有することができる。
【0139】
別の実施形態では、第3および/または第4の粉砕デバイスは、Franklin Miller社製TM2300などの2軸シュレッダとすることができる。
【0140】
例えば、第2の浸漬型粉砕デバイスを出る粉砕されたバッテリ材料は、場合により篩にかけることができ、第1の(すなわち、選択された)サイズ以下(例えば、10mm以下)の篩下固形物が篩を通過し、第2のサイズ(すなわち、篩上サイズ。第1の(すなわち、選択された)サイズよりも大きい。例えば、10mm以上100mm以下)の篩上固形物は、さらなるサイズ削減のために第3および/または第4の場合により浸漬型の粉砕デバイスに送達される。第1の(すなわち、選択された)サイズ以下(例えば、10mm以下)の固形物は、固液分離を経て、上記のプロセスに従ってさらに処理される。第3および/または第4の場合により浸漬型の粉砕デバイスによるさらなる粉砕は、篩上(すなわち、第2のサイズ)の固形物を第1の(選択された)サイズ以下(例えば、10mm以下)に減らして、さらなる処理を促進する。別の実施形態では、第1の(選択された)サイズは40mm以下に設定することができる。
【0141】
上述のように、本明細書で説明する装置およびシステムの浸漬型部品は、浸漬液を保持するように構成されたハウジング内に収容され得る。ハウジングは、本明細書で説明される装置およびシステムの浸漬型部品を収容し、浸漬型部品が浸漬される浸漬液を収容し、外部環境への浸漬液の意図しない漏れを防ぐ一体構造を形成する限り、単一部品として形成することも、複数部品の構成部品とすることもできる。
【0142】
本システムの実施形態では、浸漬液はさらなるシステムと流体連通していてもよいし(開ループシステム)、他のシステムから流体的に隔離された閉ループシステムに含まれてもよい(閉ループシステム)。例えば、粉砕デバイスから排出された浸漬液は、浸漬条件下でのバッテリ材料のサイズ削減に使用するために、ハウジングに再利用のために戻すことができる。代替的または追加的に、粉砕デバイスから排出された浸漬液は、上述の湿式磁気分離プロセスなどの下流プロセスで使用することができる。
【0143】
本明細書で説明される本開示の装置およびシステムは、当技術分野で知られている装置およびシステムに比べて利点を提供し、上述のように浸漬液中に浸漬されたバッテリ材料のサイズ削減中に放出されるエネルギーは、浸漬液によって熱として吸収され、これにより燃焼のリスクを最小化し、本開示の装置および/またはシステムを動作させるときの安全性を向上させる。従来技術の噴霧システムは、燃焼のリスクの一部を軽減し得るが、浸漬条件下でバッテリ材料をサイズ削減させる本明細書で説明されるシステムおよび装置は、バッテリ削減操作における安全性を向上させると考えられる。さらに、当業者であれば理解するように、バッテリ材料、浸漬型粉砕デバイス、および特定の実施形態では浸漬型コンベヤを浸漬液中に浸漬することにより、ユーザが有機物(すなわち、炭酸アルキル)などの貴重なバッテリ成分を捕捉できるようにするさらなる利点がもたらされ、これは、浸漬型粉砕デバイスによるサイズ削減中に浸漬液にそのようなバッテリ部品が放出されるためである。本明細書で開示される装置およびシステムは、バッテリ材料のサイズ削減中に本明細書で開示される装置および/またはシステムの構成要素を取り囲む空気中への有害な粉塵の放出を最小化することからさらなる利点を提供する。例えば、本明細書で説明される装置およびシステムの使用により、粉塵および排出ガスなどに対処するための特別な換気システムおよびバグハウスまたはフィルターの必要性を軽減することができる。
【0144】
当業者にはさらに理解されるように、第1および第2の種類のバッテリ材料を受け入れて処理できる本明細書で説明される装置およびシステムの実施形態は、ユーザが単一の装置/システムを使用して異なる種類およびサイズのバッテリ材料を処理できるようにするという点で特に有利である。
【実施例】
【0145】
本明細書で説明される本出願をより良く理解するために、以下に実施例を示す。これらの実施例は、例示のみを目的としていることを理解されたい。したがって、本出願の範囲を決して制限するものではない。
【0146】
実施例1-プロセス1の例示的な実施形態
以下の実施例では、充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するための上記プロセスのフェーズ、ステップ、設計基準、およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータ(IDEAS Bronze、鉱物処理パッケージ、v6.0.0.995)について説明する。
【0147】
フェーズ1:供給サイズ削減
受け入れることになる大型リチウムイオンバッテリ(例えば、自動車、エネルギー貯蔵システムのバッテリパック)と小型リチウムイオンバッテリ(例えば、ラップトップ、携帯電話、タブレットなどからのもの)は、場合により、あらゆる機械的処理の前に約1.0~2.0Vまで、または約0Vまで放電される。放出されたエネルギーは、場合により、中央電力貯蔵部に送達され、これにより、例えば、発電所全体の電力消費のピーク負荷が削減される。リチウムイオンバッテリを放電すると、バッテリの解体または多段階の粉砕/破砕ステップ中にバッテリの負極(複数可)と正極(複数可)とが接触する、可能な短絡イベント中に放出されるエネルギーの制御が容易になる。
【0148】
多段階の粉砕/破砕は、例えば、水または塩水浸漬などの水/水溶液浸漬下での粉砕機の使用により達成される。水/水溶液浸漬は、粉砕/破砕によって引き起こされる火花が抑制され、水/水溶液によって熱として吸収されることを確保するのに役立つ。さらに、水/水溶液の存在は酸素の蓄積を制限し、それにより粉砕中の燃焼リスクを最小化することができる。
【0149】
さらに、水/水溶液は、リチウムイオンバッテリの粉砕後に放出されるため、バッテリの電解質(例えば、有機溶媒(複数可)中のLiPF6)の連行を促進し、全体的なリチウム回収の増加を促進する。LiPF6塩などのバッテリ電解質は、水または水溶液にさらされると加水分解する可能性があるが、例えばLiPF6塩に関しては、これは通常70°C超で発生する。そのため、解体/粉砕ステップの目標水/水溶液温度は、例えば、感知できる程度の反応化学作用の防止を促進するためには約60℃である。
【0150】
粉砕/破砕のステップは、バッテリを機械的に分離するのに役立ち、下流のエネルギー消費を削減し、機器のサイジングの最適化を促進する。さらに、多段階のサイズ削減は、粒子サイズ分布の変動性の削減を促進し、これによりターゲット金属/材料の浸出を促進する。
【0151】
バッテリの解体/粉砕に多段階の粉砕/破砕が使用される場合、多段階の粉砕は、第1に、大型リチウムイオンバッテリを破砕して、サイズ(すなわち、供給サイズ)を約400mm以下に削減し、そして第2に、小型リチウムイオンバッテリ(存在する場合)とサイズ削減された大型リチウムイオンバッテリを粉砕し、その供給を約100mm以下のサイズに削減して、粉砕/破砕されたスラリを形成する。上記の多段階の粉砕/破砕に適した粉砕機の例示的な動作パラメータを表2に示す。
【0152】
粉砕/破砕されたスラリは、場合により篩にかけられ、10mm以下の篩下固形物が篩を通過し、10mm以上100mm以下の篩上固形物は、さらなるサイズ削減のに破砕に送られる。10mm以下の固形物は、ベルト型ろ過器などを介して固液分離を経る。上記分離に続いて、単離された固形物は、場合により磁気分離の前に貯蔵のために中間ホッパに送達され、固液分離ろ液は、場合により粉砕機に再利用のために戻され、再利用流の一部は、場合により下流浸出タンクに排出されて、全体的な材料回収の増加を促進し、バックグラウンドの不純物レベルを制御する。破砕により、篩上固形物が10mm以下にサイズ削減され、磁気分離が容易になる。次いで破砕流は場合により、自浄式コンベヤに送達され、コンベヤは場合により、磁気分離の前に、貯蔵のためにホッパに運ぶ。本明細書で使用される場合、「自浄式コンベヤ」という用語は、コンベヤの下の収集パイプを有するコンベヤを指し、コンベヤ内に蓄積する微粒子を収集するためのスロットまたは他の開口部を備えている。定期的に、真空または同様のメカニズムを使用して収集パイプをきれいに吸引するか、収集パイプに収集された微粒子を下流プロセスに迂回させることができる。
【0153】
一般に、組み合わされたサイズ削減固形物は、限定されないが、破砕された鋼鉄および/またはアルミニウムケーシング、電気部品、プラスチック、銅ケーブル、アルミニウム正極箔、銅負極箔、および場合により紙を含む粗い固形分(3mm以上)、ならびに負極粉末と正極粉末とを含む微細な固体分(0.5mm以下まで小さくなり得る)にほぼ分けられる。
【0154】
表2は、フェーズ1供給サイズ削減ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0155】
フェーズ2:浸出および中間生成物の調製
場合により篩選されたフェーズ1からの解体/粉砕されたスラリは、例えば磁気分離器に送達されることにより磁気的に分離され、例示的な動作パラメータを表3に示す。磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))は、湿式磁気分離により非磁性/非鉄系材料から分離される。磁気分離は、受け入れる供給および分離効率に応じて、粗選ステップと、場合により精選ステップとから構成される。磁気分離器から分離された磁気(「マグ」)流は、例えば脱水スクリーンに送達されることにより固液分離を経て、破砕された鋼鉄または鉄系生成物を生成する。分離された水/水溶液は、場合によりメイクアップ水/水溶液として使用するために磁気分離器に再利用のために戻され、再利用流の一部が場合により下流浸出タンクに排出される。再利用流の一部を浸出タンクに排出する/送ることにより、磁気分離器および脱水スクリーン迂回路での不純物制御が容易になり得、再利用流の一部が排出されない場合、微粒子および/または迂回路の配管内の副反応化学作用から形成された化学種(例えば、微量の沈殿物)が蓄積する可能性があり、詰まり、ダウンタイム、および生産損失につながる可能性がある。
【0156】
磁気分離からの非磁性/非鉄系(「非マグ」)流は、例えば渦電流分離器に送達されることにより渦電流分離を介してさらに分離されて、残留磁性/鉄系材料を分離し、浸出するステップの前にアルミニウム生成物流を分離する。一般に、不必要な試薬消費などを減らすために、浸出前にアルミニウム生成物(複数可)を分離する。渦電流分離中、分離された残留磁気/鉄系材料は、場合により、上流の固液分離(例えば、ベルト型ろ過器)から材料を収集する脱水固形物ホッパに送達される。
【0157】
一般に、分離された非磁性/非鉄系流は、アルミニウムといくらかの銅を含む。渦電流分離からの非磁性/非鉄系流の組成に応じて、オプションの比重表または類似の単位操作を使用して、アルミニウム流および銅流をさらに分離することができる。場合により、分離された銅は酸浸出に供される、または、生成物の量および品質に応じて、銅は場合により最終生成物として収集および保管のために脱水スクリーンに送達される。
【0158】
渦電流分離からのアルミニウム生成物流は、場合により脱水スクリーンに送達されて、アルミニウム生成物(例えば、破砕されたアルミニウム)を単離する。例えば、脱水スクリーンは直線振動スクリーンである(例えば、水/水溶液がスクリーン媒体から排出される間に固形物を下り坂に移動させる直線運動を作り出す逆回転モータを備えたスクリーン)。分離された水/水溶液は、場合によりメイクアップ水/水溶液として使用するために磁気分離器に再利用のために戻され、再利用流の一部が場合により浸出タンクに排出される。
【0159】
残りの渦電流分離された非磁性/非鉄系流は、電極(例えば、金属酸化物正極粉末、グラファイト負極)、紙、プラスチック、およびいくらかの残留非鉄系(例えば、破砕された銅および/またはアルミニウム)成分のうちの少なくとも1つを含む。この流れは、浸出のために浸出タンクに送達される。
【0160】
表3は、フェーズ2の磁気分離および渦電流分離の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0161】
浸出は、場合により、一連のタンク、例えば高せん断攪拌下の円錐底タンクまたは傾斜底もしくは平底タンクで行われる。円錐底、傾斜底、または平底のタンクは、高密度の粗い固体分の沈殿を促進する。攪拌により、高値の微細分が浮遊し、浸出速度が促進されることを確保するのを助ける。複数のタンクが浸出反応速度を最適化し、動作上の冗長性を提供する。流入スラリ中のターゲット金属/材料を浸出させるために、硫酸が場合により使用される。貴金属を還元および酸化するために、過酸化水素および酸素ガスが場合により添加されて抽出率を高め、さらに、例えば、過酸化水素の添加は、銅、コバルトなどの抽出を増加させるが、ニッケル抽出を減少させ得る。あるいは、塩酸が使用される、または過酸化水素と共に、もしくは過酸化水素なしで硝酸が使用される。
【0162】
いくつかの流入流、すなわち渦電流分離からの非磁性/非鉄系流(アルミニウム生成物(複数可)の大部分を除く)、酸、過酸化水素などの浸出試薬、および上流/下流のステップからの排出流および再利用流が、場合により浸出に送られる。
【0163】
浸出されたスラリは、場合により、向流式デカンテーションに送られる前に、大部分の粗選分を除去するために篩選される。篩選は、例えば、湿式スクリーンを使用してなされる。上記スクリーンは、細かい篩下粒子を篩選するために使用され、場合によっては、湿式スクリーンは、篩選を容易にするためのメイクアップ水/水溶液噴霧を含む。サイズが約5mm以下の篩下固形分は、スクリーンを通過し、向流式デカンテーション(CCD)に送達される。約5mm以上の篩上固形物は、場合により、さらなる処理のために磁気分離に再利用される。篩選により、CCDの前に粗い粒子を容易に分離できるため、機器の摩耗を最小化することができる。
【0164】
向流式デカンテーション(CCD)は、場合により洗浄媒体としてメイクアッププロセス水/水溶液を追加して、沈殿によって達成される固液分離プロセスである。CCDの目的は、浸出するステップにより水溶性浸出液、有機物(すなわち、残留炭酸アルキル)、および浮遊グラファイトから構成される液相からスライム/残留物(例えば、処理後に残留する湿った固体材料)を分離することである。
【0165】
場合により、CCDは、アンダーフロー流およびオーバーフロー流のための向流フローを備えた状態で、直列ないくつかの濃縮槽から構成される。濃縮槽は重力沈降の原理に基づいて機能する、すなわち、入口供給が供給ウェルを介してタンクの中央に供給され、そこでは一連の吊り下げられたブレードが中央の出口、すなわちアンダーフローに向かって沈降した固形物をかき集める。ブレードはまた、沈降した粒子の圧縮を助け、単純な重力沈降によって達成されるよりも濃縮されたアンダーフローを生成する。濃縮槽内の固形物は下方に移動し、次いで中央のアンダーフロー出口に向かって内側に移動する。液体は、上方向および半径方向外側に移動して、オーバーフローとして流出する洗浄/収集領域に移動する。CCDでの使用に適し得る濃縮槽の例としては、(1)高速タイプ、(2)レーキレス超高速タイプ、(3)トラクションタイプ、(4)高密度タイプ、および(5)ディープコーンタイプが挙げられる。
【0166】
向流式構成は、アンダーフロー流またはオーバーフロー流のいずれかの最も濃縮された部分が他方の流の最も濃縮されていない部分と確実に接触するのを助け、可溶性金属の損失を場合により減らす。CCDの最終的なオーバーフローは、場合により、その後のグラファイト生成物(例えば、グラファイト濃縮物)の分離のために凝集タンクに送達される。CCDの最終的なアンダーフローは、固液分離に送られ、例えば、スライムの固液分離および銅生成物(例えば、銅濃縮物)の生成のためのベルト型ろ過器に送達される。
【0167】
表4は、フェーズ2の浸出およびCCDステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。表5は、IDEASプロセスシミュレーションパラメータによるフェーズ2の浸出するステップの主要な反応化学作用を示している。
【0168】
負極/グラファイト粉末、電気部品、電解質の有機成分、プラスチック、および残留鋼鉄ケーシングは、浸出するステップ中に場合により比較的非反応性である。一般に、これらの流入成分は、CCDからのオーバーフローとアンダーフローの間で次のように分割される、すなわち、供給リチウムイオンバッテリの電解質からのほとんどの破断された銅、電気部品、残留鋼鉄、およびアルミニウム、ならびに一部のグラファイト、プラスチック、紙、および有機材料(すなわち、残留炭酸アルキル)がCCDアンダーフローに送られ、供給リチウムイオンバッテリの電解質からの表1の可溶性金属を含む水性浸出貴液(PLS)、ほとんどのグラファイト(例えば、グラファイトの90%以上)、プラスチック、紙、および有機材料(例えば、紙、プラスチックの70%以上、有機物の95%以上)が最終的なCCDオーバーフローで出る。
【0169】
最終的なCCDオーバーフローは、凝集タンクに送達される。グラファイトは、グラファイトの単離を促進するために、場合により追加された凝集剤(例えば、半疎水性または疎水性の高分子凝集剤、例えば、ポリエチレンオキシドベースの凝集剤)を介して凝集する。凝集タンクの溶液は、疎水性成分(例えば、凝集剤で凝集したグラファイト、有機物(すなわち、残留炭酸アルキル))を親水性成分(例えば、浸出貴液)から選択的に分離するために、浮選セル(複数可)に送達される。浮選セル(複数可)は、空気または他のガス(例えば、貴ガス、N2など)を使用して気泡を生成し、疎水性粒子が気泡に付着して表面に浮上し、フロスを形成する。グラファイトの単離の他のオプションとしては、スパイラルセパレータ(複数可)またはジグコンセントレータ(複数可)が挙げられる。
【0170】
浮選は、場合により、分離および回収を最大化するために、粗浮選と精選浮選との2段階で行われる。粗浮選では、浸出貴液(PLS)から最大量の疎水性成分が分離される。粗選フロスは、さらなる浮選のために洗浄段階に送られる。粗浮選の残渣/PLSは、場合により、下流の処理のために、精選浮選の残渣/PLSと混合されるように貯蔵タンクに送達される。精選浮選は、粗選フロスをさらに分離して、親水性の浸出貴液(PLS)から疎水性成分を単離する。単離されたフロスは、例えば、グラファイト生成物(例えば、グラファイト濃縮物)を単離するための下流の遠心分離に送ることにより、固液分離を経る。固液分離からのろ液は、場合により、貯蔵タンクに送達され、その後、場合により連行有機物(すなわち、炭酸アルキル)および微細および粗い浮遊固形物除去のための二重ろ過器またはベルト型ろ過器に送達される。精選浮選の残渣/PLSは、場合により貯蔵タンクに送達され、次いで粗浮選の残渣/PLSと混合されて、場合により連行有機物(すなわち、炭酸アルキル)および微細および粗い浮遊固形物除去のための二重ろ過器またはベルト型ろ過器に送達される。
【0171】
浮選ステップ(複数可)からのPLSおよび固液分離からのろ液は、場合により溶媒抽出用途で一般的に見られるのと同様のろ過器である二重ろ過器に送達される。第1の媒体層(例えば、砂、アンスラサイト)はPLSから連行有機物(例えば、エチレンカーボネート/ECおよび/またはエチルメチルカーボネート/EMCなどの炭酸アルキル)を除去し、第2の媒体ろ過器(例えば、ガーネット、砂、アンスラサイト)は微細な浮遊固形物を除去する。次いで、ろ過されたPLSは、場合により、銅イオン交換または溶媒抽出で処理される前に、貯蔵タンクに送達される(例えば、表7を参照)。二重ろ過から回収された有機物(すなわち、炭酸アルキル)は、場合により収集などすることができる。媒体逆洗出口流(例えば、プロセス水/水溶液および残留グラファイト、第2の媒体層に連行された微細プラスチック、および最小連行有機物などの残留微粒子)は、場合により、水/水溶液処理施設に再利用され、本明細書で説明されるプロセスのためのメイクアップ水/水溶液として再利用される。場合により、二重ろ過器からの液体流は、必要に応じて連行有機物の不純物除去のために活性炭ろ過器に送達される。あるいは、ベルト型ろ過器を使用して、上流および下流プロセスから残っている篩上固形物を除去することができる。ろ液は、場合により、銅イオン交換または溶媒抽出に送る前に貯蔵タンクに送達される。
【0172】
表6は、フェーズ2の中間生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0173】
フェーズ3:最終生成物の調製
グラファイト生成物(例えば、グラファイト濃縮物)は固液分離、例えば、フェーズ2の浮選の精選フロスの遠心分離を介して単離される。グラファイト生成物は、場合によりいくらかのプラスチックおよび紙と混合され、(i)より高純度のグラファイト濃縮物を生成するための、不純物/可溶性金属(例えば、リチウム、ニッケル、コバルト、銅、および/またはマンガンなどの残留可溶性金属)を除去するための多段階酸洗浄(例えば、硫酸または塩酸を使用)を伴う低温化学処理、ならびに/または(ii)より高純度のグラファイト生成物を生成するための、熱精製、例えば、特定の成分(例えば、残留有機物およびプラスチック)を揮発させるための乾式製錬による濃縮物の温度の上昇(例えば、炉を使用してグラファイトの温度を~1000℃から2000°Cまで上げる)を介してさらに精製することができる。
【0174】
CCD/スライムの最終的なアンダーフローは固液分離されて銅生成物を形成する(例えば、残留プラスチック、紙、グラファイト、最小限のアルミニウム、および鋼鉄含有物と混合され得る銅/Cu0濃縮物)。場合により二重ろ過されたPLSは、入口流から銅を選択的に分離するための銅イオン交換に送達される(例えば、表7を参照)。溶出液/銅リッチ液は、銅板としての銅/Cu0の堆積のために銅電解採取(例えば、従来の電解採取、emew(登録商標)電解採取など)に送られる。電解採取からの使用済み電解質は、場合により必要に応じて再生剤として使用するために、場合によりリサイクル流の一部が上流の浸出タンクに流れ出る状態で、銅イオン交換にリサイクルされる。
【0175】
あるいは、PLS銅濃度が例えば約5g/Lの場合、銅溶媒抽出および銅電解採取により銅/Cu0が堆積される。銅溶媒抽出は、場合により、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成される抽出段階(複数可)と、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成される潜在的な洗浄段階(複数可)と、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成されるストリッピング段階(複数可)と、から構成される。必要に応じて、流入酸PLSにメイクアップ酸を添加して、最適な銅抽出のためにpHを適切に調整する。抽出ミキサセトラ段階(複数可)では、有機抽出剤(ケトキシム[例えば、LIX(登録商標)84]、サリチルアルドキシム、またはケトキシム-サリチルアルドキシム有機抽出剤の混合物など)を希釈剤(例えば、ケロシン)で使用して、銅を選択的に有機相に抽出する。
抽出:CuSO4(aq)+2HR(org)→CuR2(org)+H2SO4(aq)
【0176】
次いで、銅担持有機相は、例えば、酸(例えば、硫酸/H2SO4)を含む銅電解採取からの使用済み電解質を使用して、抽出された銅イオンがストリッピングされて水相に戻されるストリッピング段階(複数可)に送られる。
ストリッピング:CuR2(org)+H2SO4(aq)→CuSO4(aq)+2HR(org)
【0177】
硫酸の代わりに塩酸をpH調整に使用する場合は、有機相に塩化物を含む連行水相のレベルを最小化するために、任意の洗浄段階(複数可)が含まれる。次いで、ストリッピング貴液(例えば、約50g/Lの可溶性銅の濃度)が、銅電解採取に送られて、銅/Cu0を銅板として正極シート上に堆積させる。板が所望の銅の厚さに達すると、板は取り外され、場合により空の正極シートと交換される。銅電解採取からの使用済み電解質は、場合により銅溶媒抽出のストリッピング段階(複数可)に再利用のために戻され、場合により、必要に応じて不純物除去を行い、有機相が抽出段階(複数可)に再利用のために戻される。
【0178】
銅電解採取から送られた銅をストリッピングした液は、次いで、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰または水酸化カルシウムなど)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させる、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn炭酸塩生成物を沈殿させる、蒸発結晶化して、Co、Ni、および/もしくはMn硫酸塩生成物を形成する、または水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させた後、加熱脱水してCo、Ni、および/もしくはMn酸化物生成物を生成する(例えば、酸化コバルト(II、III)、Co3O4、酸化ニッケル(II)、NiO、二酸化マンガン(IV)、MnO2)。次いで、Co、Ni、および/またはMn生成物は、固液分離に送られ、固形ろ過ケークが収集される。Co、Ni、および/またはMn硫酸塩生成物については、銅電解採取から銅をストリッピングした液が蒸発晶析装置に送達されると、結果として得られる生成物は、硫酸コバルト七水和物/CoSO4・7H2O、硫酸ニッケル六水和物/NiSO4・6H2O、および硫酸マンガン一水和物/MnSO4・H2Oの混合物から構成される。次いで、結晶化スラリが、例えば、固液分離(例えば、遠心分離機またはフィルタープレス)に送られ、その後、乾燥機が余分な水を追い出す。
【0179】
次いで、Co、Ni、および/またはMn固液分離ろ液を炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウムなど)と反応させて、炭酸リチウム/Li2CO3を沈殿させる。この炭酸リチウム生成物は、場合により固液分離(例えば、遠心分離)を受け、固体ケークが収集される。場合により炭酸リチウムをさらに精製するために、これをイオン交換カラムに送達して、カルシウムおよびマグネシウムなどの微量不純物を除去し(例えば、表7を参照)、次いで、例えば溶解/消化タンクに二酸化炭素が通気されている重炭酸塩化迂回路に送達して、より高い純度の炭酸リチウムスラリに再結晶される前に、炭酸リチウムをより可溶性の重炭酸リチウムに変換する。次いで、スラリを固液分離して高純度の炭酸リチウム/Li2CO3を生成し、場合により乾燥させる。
【0180】
あるいは、Co、Ni、および/またはMn固液分離ろ液は、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応して、水酸化リチウムおよび硫酸ナトリウム溶液を形成する。水酸化リチウムおよび硫酸ナトリウム溶液は、結晶化に送られて(例えば、ドラフトチューブバッフル晶析装置を使用)、溶液を冷却し、硫酸ナトリウム十水和物結晶および可溶性水酸化リチウムを含むスラリを生成する。結晶化からのスラリは、固液分離(例えば、遠心分離を使用)に送られて、溶液中の固体硫酸ナトリウム十水和物生成物と水酸化リチウムを含むろ液とを分離する。固液分離からの水酸化リチウム溶液は蒸発結晶化される、すなわち、水酸化リチウム一水和物が、例えば三重効用晶析装置を使用して結晶化され、次いで、例えば遠心分離により固液分離される。生成物は、場合により、水酸化リチウム一水和物結晶を純水(例えば、蒸留水または脱イオン水)に溶解し、再結晶(例えば、機械的蒸気再圧縮(MVR)晶析装置を使用)し、その後場合により固液分離(例えば、遠心分離機を使用)して、精製された水酸化リチウム一水和物生成物を収集することによりさらに精製される。水酸化リチウム一水和物結晶は、場合により乾燥される。
【0181】
硫酸ナトリウムは、場合により生成物として単離される。Co、Ni、および/またはMn固液分離ろ液を塩基(例えば、水酸化物)と反応させることにより形成された硫酸ナトリウム溶液を単離し、場合により結晶化させて硫酸ナトリウム十水和物を得る。この結晶化は、ドラフトチューブバッフル晶析装置などの晶析装置で硫酸ナトリウム溶液を冷却し、その後結晶を場合により乾燥させることで達成される。代替的または追加的に、Li2CO3固液分離(例えば、遠心分離)からの遠心分離液は、硫酸ナトリウム十水和物/Na2SO4・10H2Oを生成するために、蒸発晶析装置に送達される。場合により上記結晶化中に硫酸が添加されて、あらゆる残留炭酸塩(例えば、Na2CO3(aq))が硫酸塩の形態に変換される。結果として得られた結晶化スラリは固液分離され(例えば、遠心分離)、分離された固体生成物は乾燥機(例えば、気流乾燥機)に送達される。乾燥機は水を追い出し、無水硫酸ナトリウム/Na2SO4を生成する。
【0182】
表7は、例示的な設計パラメータの例を示しており、表8は、IDEASプロセスシミュレーションモード結果によるフェーズ3の最終生成物の調製ステップの主要な反応化学作用を示している。
【0183】
実施例2-プロセス2の例示的な実施形態
特に、以下の実施例では、充電式リチウムイオンバッテリから材料を回収するための上記プロセスのフェーズ、ステップ、設計基準、およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータ(IDEAS Bronze、鉱物処理パッケージ、v6.0.0.995)について説明する。
【0184】
フェーズ1:供給サイズ削減(例えば、
図1Bのステップ(i)および(i)(a))
上記のプロセス1と同様に、受け入れることになる大型リチウムイオンバッテリ(例えば、自動車、エネルギー貯蔵システムのバッテリパック)と小型リチウムイオンバッテリ(例えば、ラップトップ、携帯電話、タブレットなどからのもの)は、場合により、あらゆる機械的処理の前に約1.0~2.0Vまで、または約0Vまで放電される。放出されたエネルギーは、場合により、中央電力貯蔵部に送達され、これにより、例えば、発電所全体の電力消費のピーク負荷が削減される。リチウムイオンバッテリを放電すると、バッテリの解体または多段階の粉砕/破砕ステップ中にバッテリの負極(複数可)と正極(複数可)とが接触する、可能な短絡イベント中に放出されるエネルギーの制御が容易になる。
【0185】
多段階の粉砕/破砕は、例えば、水または塩水浸漬などの水/水溶液浸漬下での粉砕機の使用により達成される。水/水溶液浸漬は、粉砕/破砕によって引き起こされる火花が抑制され、水/水溶液によって熱として吸収されることを確保するのに役立つ。さらに、水/水溶液の存在は酸素の蓄積を制限し、それにより粉砕中の燃焼リスクを最小化することができる。
【0186】
さらに、水/水溶液は、リチウムイオンバッテリの粉砕後に放出されるため、バッテリの電解質(例えば、有機溶媒(複数可)中のLiPF6)の連行を促進し、全体的なリチウム回収の増加を促進する。LiPF6塩などのバッテリ電解質は、水または水溶液にさらされると加水分解する可能性があるが、例えばLiPF6塩に関しては、これは通常70°C超で発生する。そのため、解体/粉砕ステップの目標水/水溶液温度は、例えば、感知できる程度の反応化学作用の防止を促進するためには約60℃である。
【0187】
破砕/粉砕のステップは、バッテリを機械的に分離するのに役立ち、下流のエネルギー消費を削減し、機器のサイジングの最適化を促進する。さらに、多段階のサイズ削減は、粒子サイズ分布の変動性の削減を促進し、これによりターゲット金属/材料の浸出を促進する。
【0188】
バッテリの解体/粉砕に多段階の粉砕/破砕が使用される場合、多段階の粉砕は、第1に、大型リチウムイオンバッテリを破砕して、サイズ(すなわち、供給サイズ)を約400mm以下に削減し、そして第2に、小型リチウムイオンバッテリ(存在する場合)とサイズ削減された大型リチウムイオンバッテリを粉砕し、その供給を約100mm以下のサイズに削減して、破砕/粉砕されたスラリを形成する。上記の多段階の粉砕/破砕に適した粉砕機の例示的な動作パラメータを表2に示す。
【0189】
粉砕/破砕されたスラリは、場合により篩にかけられ、10mm以下の篩下固形物が篩を通過し、10mm以上100mm以下の篩上固形物は、さらなるサイズ削減のために破砕に送られる。10mm以下の固形物は、沈殿タンクなどを介して固液分離を経る。沈殿タンクの後、固体スラリは場合によりさらに固液分離するためにベルト型ろ過器に送達される。あるいは、単離された固体は、磁気分離の前の貯蔵のために中間ホッパに送達されてもよい。固液分離ろ液は、場合により粉砕機/シュレッダに再利用のために戻されて、メイクアップ水として再利用される、または場合により有機物(すなわち、炭酸アルキル)除去迂回路に送られる。(粉砕機/シュレッダまたは有機物除去迂回路から/粉砕機/シュレッダまたは有機物除去迂回路への)再利用流の一部は、場合により下流浸出タンクに流されて、材料全体の回収率を高め、バックグラウンドの不純物レベルを制御する。破砕により、篩上固形物が10mm以下にサイズ削減され、磁気分離が容易になる。次いで破砕流は場合により、自浄式コンベヤに送達され、コンベヤは場合により、磁気分離の前に、貯蔵のためにホッパに運ぶ。本明細書で使用される場合、「自浄式コンベヤ」という用語は、コンベヤの下の収集パイプを有するコンベヤを指し、コンベヤ内に蓄積する微粒子を収集するためのスロットまたは他の開口部を備えている。定期的に、真空または同様のメカニズムを使用して収集パイプをきれいに吸引するか、収集パイプに収集された微粒子を下流プロセスに迂回させることができる。
【0190】
ベルト型ろ過および沈殿タンクからのオプションの固液分離ろ液は、オプションの二重ろ過器または真空蒸留迂回路に送達されて、あらゆる有機物(すなわち、炭酸アルキル)を除去できる。二重ろ過器には、ろ液中の連行有機物(すなわち、炭酸アルキル)を除去するためにアンスラサイト、ガーネット、および/または砂などのろ過媒体が含まれている。あるいは、単段または多段階蒸留から構成される真空蒸留を使用することができ、水性含有物が真空で主に蒸発し、有機物(すなわち、炭酸アルキル)リッチ流が残る。次いで、気体の水性流が凝縮されて、液体の水性流を形成する。次いで、水性流は、場合により粉砕機/シュレッダまたは有機物除去迂回路に再利用される、または下流浸出タンクに流されて、材料全体の回収率を高め、バックグラウンドの不純物レベルを制御する。上流で有機物(すなわち、炭酸アルキル)を除去することにより、例えばフェーズ2およびフェーズ3での炭酸アルキル汚染に起因して下流で発生する化学的および機械的な複雑化を防ぐ。
【0191】
一般に、組み合わされたサイズ削減固形物は、限定されないが、破砕された鋼鉄および/またはアルミニウムケーシング、電気部品、プラスチック、銅ケーブル、アルミニウム正極箔、銅負極箔、および場合により紙を含む粗い固形分(3mm以上)、ならびに負極粉末と正極粉末とを含む微細な固体分(0.5mm以下まで小さくなり得る)にほぼ分けられる。上述のように、例えば、約5mm未満、または約1~2mm未満の粒子サイズを有する篩下材料を、供給サイズ削減の際に収集し、下流のプロセスステップに迂回させることができる。例えば、このような篩下材料は、粉砕機/シュレッダから得られたものを、約5mm未満または約1~2mm未満のサイズを有する粒子が通過できるサイズの開き目を有する金属メッシュ(上記の自浄式コンベヤなど)に、これを通過させ収集するために接触させることにより、収集することができる。篩下材料は、例えば黒色塊固体流と組み合わされ得、次いで、これらの組み合わされた材料は浸出(以下でさらに詳細に説明する)に供される。
【0192】
表2は、フェーズ1供給サイズ削減ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0193】
フェーズ2:中間生成物の調製および浸出(例えば、
図1Bのステップ(ii)~(x)
場合により篩選されたフェーズ1からの解体/粉砕/破砕されたスラリは、例えば磁気分離器に送達されることにより磁気的に分離され(
図1Bのステップ(ii)を参照)、例示的な動作パラメータを表9に示す。磁性/鉄系材料(例えば、鋼板、鉄系生成物(複数可))は、湿式/乾式磁気分離により非磁性/非鉄系材料から分離される。磁気分離は、受け入れる供給および分離効率に応じて、粗選ステップと、場合により精選ステップとから構成される。磁気分離器から分離された磁気(「マグ」)流は、場合により、(湿式磁気分離が利用される場合)例えば脱水スクリーンに送達されることにより固液分離を経て、破砕された鋼鉄または鉄系生成物を生成する(
図1Bのステップ(iii))。分離された水/水溶液は、場合によりメイクアップ水/水溶液として使用するために磁気分離器に再利用のために戻され、再利用流の一部が場合により下流浸出タンクに排出される。再利用流の一部を浸出タンクに排出する/送ることにより、磁気分離器および脱水スクリーン迂回路での不純物制御が容易になり得、再利用流の一部が排出されない場合、微粒子および/または迂回路の配管内の副反応化学作用から形成された化学種(例えば、微量の沈殿物)が蓄積する可能性があり、詰まり、ダウンタイム、および生産損失につながる可能性がある。
【0194】
磁気分離からの非磁性/非鉄系流は一連の混合タンクに送達され(
図1Bのストリッピングするステップ(iv)で表される)、そこでストリッピング溶媒が添加され、第1の非磁性流から結合された黒色塊/電極粉末材料をストリッピングする。ストリッピング溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドンを添加すると(他のオプションは以下の表9に提示)、バインダー材料、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)が溶解し、電極粉末材料が黒色塊へと凝固し得る。ストリッピングされたスラリ流(すなわち、黒色塊/電極粉末流)は、約500μmの開き目を有する網篩に送達することにより、固液分離(
図1Bのステップ(v)を参照)を経て、アルミニウム、銅、およびプラスチックを含むストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分(すなわち、分離の大きい方の固形部分)と、篩下のストリッピングされたスラリ流(すなわち、混合状態で黒色塊を含む、小さい方の浮遊固形物を含む分離の液体部分)と、を生成する。ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分は、場合により、例えば脱水コンベヤに送達されることにより乾燥される。篩下のストリッピングされたスラリ流は、固液分離のためにフィルタープレスに送達され(
図1Bのステップ(vii)を参照)、溶媒および黒色塊固体流を含む液体を生成する。分離された溶媒は、場合によりタンクに収集され、メイクアップ溶媒として使用するために、場合によりストリッピングタンクに再利用のために戻される。
【0195】
次いで、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分は、場合により、例えば比重分離ユニットに送達されることにより、さらなる分離を経ることができる(
図1Bのステップ(vi)による)。比重分離器ユニットは、場合により、ストリッピングされたスラリ流の篩上固形部分を、3つの別個の流れ、すなわち、予備アルミニウム生成物流、予備銅生成物流、およびプラスチック生成物流に分離する。分離流は、場合により洗浄され、脱水スクリーンに送達されて、分離され洗浄された予備アルミニウム生成物、予備銅生成物、およびプラスチック生成物流が収集される。
【0196】
黒色塊固体流は、電極(例えば、金属酸化物および/または金属リン酸塩正極粉末、グラファイト負極)、プラスチック、およびいくらかの残留非鉄系(例えば、破砕された銅および/またはアルミニウム)成分のうちの少なくとも1つを含む。この流れは、上述の供給サイズ削減フェーズからの、例えば、約5mm未満、または約1~2mm未満の粒子サイズを有する篩下材料と共に、浸出のための浸出タンクに送達される。
【0197】
表9は、フェーズ2の磁気分離、ストリッピング、および場合により比重分離の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0198】
浸出(
図1Bのステップ(viii)を参照)は、場合により、一連のタンク、例えば高せん断攪拌下の円錐底タンクまたは傾斜底もしくは平底タンクで行われる。円錐底、傾斜底、または平底のタンクは、高密度の粗い固体分の沈殿を促進する。攪拌により、高値の微細分が浮遊し、浸出速度が促進されることを確保するのを助ける。複数のタンクが浸出反応速度を最適化し、動作上の冗長性を提供する。流入スラリ中のターゲット金属/材料を浸出させるために、硫酸が場合により使用される。貴金属を還元および酸化するために、過酸化水素および酸素ガスが場合により添加されて抽出率を高め、さらに、例えば、過酸化水素の添加は、銅、コバルトなどの抽出を増加させるが、ニッケル抽出を減少させ得る。あるいは、塩酸が使用される、または過酸化水素と共に、もしくは過酸化水素なしで硝酸が使用される。
【0199】
いくつかの流入流、すなわち、ストリッピングするステップとその後の分離ステップからの黒色塊固体流、酸、過酸化水素などの浸出試薬、および上流/下流のステップからの排出および再利用流が、浸出に送られる。
【0200】
浸出するステップによって生成された浸出されたスラリは、ろ過などの固液分離(
図1Bのステップ(ix)を参照)に供されて、浸出するステップに続いて残留固形物を含む第1の生成物流と、浸出液(すなわち、浸出貴液(PLS))を含む第2の生成物流とを生成する。
【0201】
表10は、フェーズ2の浸出の例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。表5は、IDEASプロセスシミュレーションパラメータによるフェーズ2の浸出するステップの主要な反応化学作用を示している。
【0202】
浸出するステップ後の残留固形物を含む第1の生成物流は水と混合され、pHは4~8の範囲のpHに調整される。混合タンクの溶液は、疎水性成分(例えば、グラファイト、有機物(すなわち、炭酸アルキル)、および残留プラスチック)を親水性成分(例えば、プロセス混合水)から選択的に分離するために、浮選セル(複数可)に送達される。浮選セル(複数可)は、空気または他のガス(例えば、貴ガス、N2など)を使用して気泡を生成し、疎水性粒子が気泡に付着して表面に浮上し、フロスを形成する。グラファイトの単離の他のオプションとしては、スパイラルセパレータ(複数可)またはジグコンセントレータ(複数可)が挙げられる。
【0203】
浮選は、場合により、分離および回収を最大化するために、粗浮選と精選浮選との2段階で行われる。粗浮選では、プロセス混合水から最大量の疎水性成分が分離される。粗選フロスは、さらなる浮選のために洗浄段階に送られる。粗浮選の残渣/プロセス混合水は、場合により、下流の処理のために、精選浮選の残渣/プロセス混合水と混合されるように貯蔵タンクに送達される。精選浮選は、粗選フロスをさらに分離して、親水性のプロセス混合水から疎水性成分を単離する。単離されたフロスは、例えば、グラファイト生成物(例えば、グラファイト濃縮物)を単離するための下流の遠心分離に送ることにより、固液分離を経る。固液分離からのろ液は、場合により混合タンクに再利用のために戻される前に、貯蔵タンクに送達される。
【0204】
固液分離からのPLSは、場合により溶媒抽出用途で一般的に見られるのと同様のろ過器である二重ろ過器に送達される。第1の媒体層(例えば、砂、アンスラサイト)はPLSから連行有機物(すなわち、炭酸アルキル(複数可))(例えば、エチレンカーボネート/ECおよび/またはエチルメチルカーボネート/EMC)を除去し、第2の媒体ろ過器(例えば、ガーネット、砂、アンスラサイト)は微細な浮遊固形物を除去する。次いで、ろ過されたPLSは、場合により、銅イオン交換または溶媒抽出で処理される前に、貯蔵タンクに送達される(例えば、表12を参照)。二重ろ過から回収された有機物(すなわち、炭酸アルキル(複数可))は、場合により収集などすることができる。媒体逆洗出口流(例えば、プロセス水/水溶液および残留グラファイト、第2の媒体層に連行された微細プラスチック、および最小連行有機物(すなわち、炭酸アルキル(複数可))などの残留微粒子)は、場合により、水/水溶液処理施設に再利用され、本明細書で説明されるプロセスのためのメイクアップ水/水溶液として再利用される。場合により、二重ろ過器からの液体流は、必要に応じて連行有機物(すなわち、炭酸アルキル)の不純物除去のために活性炭ろ過器に送達される。あるいは、ベルト型ろ過器を使用して、上流および下流プロセスから残っている篩上固形物を除去することができる。ろ液は、場合により、銅イオン交換または溶媒抽出に送る前に貯蔵タンクに送達される。
【0205】
表11は、フェーズ2の中間生成物の調製ステップの例示的な設計およびIDEASプロセスシミュレーションパラメータを示している。
【0206】
フェーズ3:最終生成物の調製(例えば、
図1Bのステップ(xi)~(xv)
グラファイト生成物(例えば、グラファイト濃縮物)は固液分離、例えば、フェーズ2の浮選の精選フロスの遠心分離を介して単離される。グラファイト生成物は、場合によりいくらかのプラスチックおよび紙と混合され、(i)より高純度のグラファイト濃縮物を生成するための、不純物/可溶性金属(例えば、リチウム、ニッケル、コバルト、銅、および/またはマンガンなどの残留可溶性金属)を除去するための多段階酸洗浄(例えば、硫酸または塩酸を使用)を伴う低温化学処理、ならびに/または(ii)より高純度のグラファイト生成物を生成するための、熱精製、例えば、特定の成分(例えば、残留有機物/(すなわち、炭酸アルキル)およびプラスチック)を揮発させるための乾式製錬による濃縮物の温度の上昇(例えば、炉を使用してグラファイトの温度を1000℃未満から2000°Cまで上げる)を介してさらに精製することができる。
【0207】
場合により二重ろ過またはベルト型ろ過されたPLSは、入口流から銅を選択的に分離するための銅イオン交換に送達される(例えば、表12を参照)。溶出液/銅リッチ液は、銅板としての銅/Cu0の堆積のために銅電解採取(例えば、従来の電解採取、emew(登録商標)電解採取など)に送られる。電解採取からの使用済み電解質は、場合により必要に応じて再生剤として使用するために、場合によりリサイクル流の一部が上流の浸出タンクに流れ出る状態で、銅イオン交換にリサイクルされる。
【0208】
あるいは、PLS銅濃度が例えば約5g/Lの場合、銅溶媒抽出および銅電解採取により銅/Cu0が堆積される。銅溶媒抽出は、場合により、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成される抽出段階(複数可)と、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成される潜在的な洗浄段階(複数可)と、ミキサセトラ(例えば、各ミキサセトラは、1~2つの混合槽段(複数可)および1つの沈殿槽段から構成される)から構成されるストリッピング段階(複数可)と、から構成される。必要に応じて、流入酸PLSにメイクアップ酸または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を添加して、最適な銅抽出のためにpHを適切に調整する。抽出ミキサセトラ段階(複数可)では、有機抽出剤(ケトキシム[例えば、LIX(登録商標)984N]、サリチルアルドキシム、またはケトキシム-サリチルアルドキシム有機抽出剤の混合物など)を希釈剤(例えば、ケロシン)で使用して、銅を選択的に有機相に抽出する。
抽出:CuSO4(aq)+2HR(org)→CuR2(org)+H2SO4(aq)
【0209】
次いで、銅担持有機相は、例えば、酸(例えば、硫酸/H2SO4)を含む銅電解採取からの使用済み電解質を使用して、抽出された銅イオンがストリッピングされて水相に戻されるストリッピング段階(複数可)に送られる。
ストリッピング:CuR2(org)+H2SO4(aq)→CuSO4(aq)+2HR(org)
【0210】
硫酸の代わりに塩酸をpH調整に使用する場合は、有機相に塩化物を含む連行水相のレベルを最小化するために、任意の洗浄段階(複数可)が含まれる。次いで、ストリッピング貴液(例えば、約50g/Lの可溶性銅の濃度)が、銅電解採取に送られて、銅/Cu0を銅板として正極シート上に堆積させる。板が所望の銅の厚さに達すると、板は取り外され、場合により空の正極シートと交換される。銅電解採取からの使用済み電解質は、場合により銅溶媒抽出のストリッピング段階(複数可)に再利用のために戻され、場合により、必要に応じて不純物除去を行い、有機相が抽出段階(複数可)に再利用のために戻される。
【0211】
次いで、銅単離抽残液(すなわち、銅をストリッピングした液)は、場合により酸素ガスを吹き付けられて、第一鉄(Fe2+)を不溶性の第二鉄(Fe3+)に酸化され、その後、場合により水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応させて、Alおよび/またはFe水酸化物生成物を沈殿させる。次いで、Alおよび/またはFe生成物は、固液分離に送られ、固形ろ過ケークが収集される。
【0212】
次いで、Alおよび/またはFeを失った溶液(Alおよび/またはFe生成物調製ろ液)は、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰または水酸化カルシウムなど)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させる、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn炭酸塩生成物を沈殿させる、蒸発結晶化して、Co、Ni、および/もしくはMn硫酸塩生成物を形成する、または水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応して、Co、Ni、および/もしくはMn水酸化物生成物を沈殿させた後、加熱脱水してCo、Ni、および/もしくはMn酸化物生成物を生成する(例えば、酸化コバルト(II、III)、Co3O4、酸化ニッケル(II)、NiO、二酸化マンガン(IV)、MnO2)。次いで、Co、Ni、および/またはMn生成物は、固液分離に送られ、固形ろ過ケークが収集される。Co、Ni、および/またはMnを含むろ過ケークが硫酸で浸出された場合、浸出液は蒸発晶析装置に送達でき、結果として得られる生成物は、硫酸コバルト七水和物/CoSO4・7H2O、硫酸ニッケル六水和物/NiSO4・6H2O、および硫酸マンガン一水和物/MnSO4・H2Oの混合物から構成される。次いで、結晶化スラリが、例えば、固液分離(例えば、遠心分離機またはフィルタープレス)に送られ、その後、乾燥機が余分な水を追い出す。
【0213】
あるいは、Alおよび/またはFeを失った溶液(Alおよび/またはFe生成物調製ろ液)を酸化剤(例えば、過酸化水素)と反応させ、また塩基を加えてpHを5~7に維持して、固液分離(例えば、フィルタープレス)を使用して除去される二酸化マンガン沈殿物を生成してもよい。次いで、場合により、ろ液からコバルトをコバルトリッチへと選択的に抽出し、その後、ストリッピングして洗浄し、結晶化して、硫酸コバルト七水和物生成物を形成する。次いで、ろ液を追加の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応させて、ニッケル/ニッケル-コバルト水酸化物を沈殿させる。沈殿物は固液ろ過により除去される。
【0214】
例示的なプロセス2の条件に関する以下の添付の表に概説されているパラメータによれば、硫酸ナトリウムが、Co、Ni、および/またはMn固液分離ろ液を使用してリチウム回収の前に塩副生成物として単離される。ろ液を結晶化して、硫酸ナトリウム十水和物を生成する。この結晶化は、ドラフトチューブバッフル晶析装置などの晶析装置で硫酸ナトリウム溶液を冷却し、その後結晶を固液分離(例えば、遠心分離機またはフィルタープレス)を経て分離した固体結晶を場合により乾燥させることで達成される。その後、単離された結晶の固液分離からのろ液は、リチウム回収に送られる。
【0215】
次いで、硫酸ナトリウム固液分離ろ液を炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウムなど)と反応させて、炭酸リチウム/Li2CO3を沈殿させる。この炭酸リチウム生成物は、場合により固液分離(例えば、遠心分離)を受け、固体ケークが収集される。場合により炭酸リチウムをさらに精製するために、これをイオン交換カラムに送達して、カルシウムおよびマグネシウムなどの微量不純物を除去し(例えば、表12を参照)、次いで、例えば溶解/消化タンクに二酸化炭素が通気されている重炭酸塩化迂回路に送達して、より高い純度の炭酸リチウムスラリに再結晶される前に、炭酸リチウムをより可溶性の重炭酸リチウムに変換する。次いで、スラリを固液分離して高純度の炭酸リチウム/Li2CO3を生成し、場合により乾燥させる。
【0216】
あるいは、硫酸ナトリウム固液分離ろ液は、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、消石灰/水酸化カルシウムなど)と反応して、水酸化リチウムおよび硫酸ナトリウム溶液を形成する。水酸化リチウムおよび硫酸ナトリウム溶液は、結晶化に送られて(例えば、ドラフトチューブバッフル晶析装置を使用)、溶液を冷却し、硫酸ナトリウム十水和物結晶および可溶性水酸化リチウムを含むスラリを生成する。結晶化からのスラリは、固液分離(例えば、遠心分離を使用)に送られて、溶液中の固体硫酸ナトリウム十水和物生成物と水酸化リチウムを含むろ液とを分離する。固液分離からの水酸化リチウム溶液は蒸発結晶化される、すなわち、水酸化リチウム一水和物が、例えば三重効用晶析装置を使用して結晶化され、次いで、例えば遠心分離により固液分離される。生成物は、場合により、水酸化リチウム一水和物結晶を純水(例えば、蒸留水または脱イオン水)に溶解し、再結晶(例えば、機械的蒸気再圧縮(MVR)晶析装置を使用)し、その後場合により固液分離(例えば、遠心分離機を使用)して、精製された水酸化リチウム一水和物生成物を収集することによりさらに精製される。水酸化リチウム一水和物結晶は、場合により乾燥される。
【0217】
硫酸ナトリウムは、場合により生成物として単離される。1つの実施形態では、Li2CO3固液分離(例えば、遠心分離)からの遠心分離液は、場合により、硫酸ナトリウム十水和物/Na2SO4・10H2Oを生成するために、蒸発晶析装置に送達される。場合により上記結晶化中に硫酸が添加されて、あらゆる残留炭酸塩(例えば、Na2CO3(aq))が硫酸塩の形態に変換される。結果として得られた結晶化スラリは固液分離され(例えば、遠心分離)、分離された固体生成物は乾燥機(例えば、気流乾燥機)に送達される。乾燥機は水を追い出し、無水硫酸ナトリウム/Na2SO4を生成する。
【0218】
表12は、例示的な設計パラメータの例を示しており、表13は、IDEASプロセスシミュレーションモード結果によるフェーズ3の最終生成物の調製ステップの主要な反応化学を示している。
【0219】
実施例3-プロセス2の検証
以下の実施例5に概説されるようにリチウムイオンバッテリのサイズ削減を実施し、くず鉄(磁性生成物流)を材料の残り(非磁性供給流)から分離するために乾式磁気分離を実施した。次いで、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)をストリッピング溶媒として10重量%で80°Cで6時間混合することにより非磁性供給流をストリッピングし、アルミニウム(Al)箔および銅(Cu)箔から作られている基材から正極と負極を遊離させた。ストリッピングされたスラリ流を500μmの篩に通して、微細な正極および負極材料および液体有機溶媒(すなわち、ストリッピング溶媒)を含む篩下のストリッピングされたスラリ流を、基板のAl、Cu、およびプラスチック片を含む篩上固形部分から分離した。篩上固形部分に密度(比重)分離を施し、Al、Cu、およびプラスチックを互いに分離した。2.5の比重(SG)の液体を使用してプラスチックを分離した後、2.85のSGの液体を使用して銅からアルミニウムを分離した。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード541ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、微細な正極および負極材料を含む篩下のストリッピングされたスラリ流を液体有機(ストリッピング)溶媒から分離した。
【0220】
0.5M硫酸(H
2SO
4)中10%パルプ密度で80℃で6時間、微細な正極および負極材料の浸出(すなわち、黒色塊固体流)を行った。反応時間の経過にわたってH
2SO
4を添加することにより浸出溶液をpH2.5に維持した。コバルト(Co)の浸出を促進するために、浸出を通して過酸化水素(H
2O
2)を添加した。浸出により、生成物流で処理されたすべての金属の95%が回収された、すなわち、Cu、Al、Fe、Co、Ni、Mn、およびLiの95%が黒色塊から浸出貴液に浸出された。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード3ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、残留固形物から浸出貴液(PLS)を分離した。残留固形物(
図1Bの第1の生成物流に対応)を水と混合し、スラリをpH5に調整し、2段階浮選迂回路で処理してグラファイト生成物を生成した。第1の段階は粗浮選であり、オーバーフローを精選浮選で処理した。
【0221】
次いで、銅(Cu)除去のための調製において50重量%水酸化ナトリウム(NaOH)を使用してPLS(
図1Bの第2の生成物流に対応)をpH2に調整した。溶媒抽出を用いてCuを除去し、ケロシンで希釈した30体積%の有機抽出剤LIX 984NをPLSと混合した。水相である抽残液(
図1Bの第3の生成物流に対応)が次のプロセスステップに続く間に、Cuが有機相に負荷された。1MのH
2SO
4を使用して有機相からCuをストリッピングし、銅めっきの生成のために電解採取に送った。
【0222】
Cuの除去に続いて、50重量%NaOHを添加することにより抽残液を50°CでpH4.5に調整し、水酸化物Fe(OH)3およびAl(OH)3として鉄(Fe)およびAlを沈殿させた。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード3ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、沈殿物から溶液を分離した。次いで、ろ過した固形物を温水(50℃)で洗浄し、上述と同じ手順を用いて2回目のろ過を行った。固体を80℃のオーブンで乾燥させた。沈殿物の回収率は99%超で、純度が85%の混合水酸化物生成物が生成された。
【0223】
50重量%NaOHを添加することによりろ液(
図1Bの第4の生成物流に対応)を50°CでpH9.5に調整し、水酸化物Co(OH)
2、Ni(OH)
2、およびMn(OH)
2としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、およびマンガン(Mn)を沈殿させた。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード3ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、沈殿物から溶液を分離した。次いで、ろ過した固形物を温水(50℃)で洗浄し、上述と同じ手順を用いて2回目のろ過を行った。固体を80℃のオーブンで乾燥させた。
【0224】
ろ液(
図1Bの第5の生成物流に対応)を蒸発させて、ナトリウム(Na)濃度が70g/Lの濃度に達した時点まで体積を減らした。蒸発は95℃で行った。次いで、50重量%NaOHを使用して溶液をpH9.5に調整した。次いで、溶液を混合し、10℃に冷却すると、硫酸ナトリウム十水和物(Na
2SO
4・10H
2O)が溶液から沈殿した。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード3ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、沈殿物から溶液を分離した。次いで、ろ過した固形物を塩基性のpH9.5の溶液で洗浄し、上述と同じ手順を使用して2回目のろ過を行った。次いで、固形物を真空下で乾燥させて、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)を生成した。
【0225】
ろ液(
図1Bの第6の生成物流に対応)を蒸発させて、リチウム(Li)濃度が11g/Lの濃度に達した時点まで体積を減らした。飽和炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)溶液を430g/Lの濃度で調製し、90℃に加熱した。炭酸塩(CO
3
2-)がLiを沈殿させるための化学量論的要件の1.25倍になるように、Na
2CO
3溶液をろ液に加えた。ろ液とNa
2CO
3との混合物を95℃で6時間混合した。真空フラスコに取り付けられた、Whatman(登録商標)グレード3ろ紙を備えたブフナー漏斗を使用して、沈殿物から溶液を分離した。次いで、ろ過した固形物を熱水(70℃)で洗浄し、上述と同じ手順を用いて2回目のろ過を行った。固体を80℃のオーブンで乾燥させた。沈殿物の回収率は90%であり、純度89%の粗Li
2CO
3生成物を生成し、後で精製した。
【0226】
Na2SO4プロセスを繰り返して、ろ液から残っているNa2SO4を除去した。
【0227】
実施例4-例示的なシステム/装置
図2は、本出願の装置およびシステムの例示的な実施形態による概略図である。
図2は浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置1を示しており、本装置1は、浸漬液4を保持するように構成されたハウジング2と、ハウジング2内に第1の種類のバッテリ材料10を受け入れるために内部に配置された開口部8を有する第1の供給シュート6(ホッパ)と、第1の供給シュート6から第1の種類のバッテリ材料10を受け入れるようにハウジング2内に配置されて、第1の種類のバッテリ材料10をサイズ削減させ、第1のサイズ削減バッテリ材料14を形成するための第1の浸漬型粉砕デバイス12と、第1の浸漬型粉砕デバイス12から第1のサイズ削減バッテリ材料14を受け入れるようにハウジング2内に配置され、第1のサイズ削減バッテリ材料14をさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料18を形成するための第2の浸漬型粉砕デバイス16と、を備える。第2のサイズ削減バッテリ材料18は、例えば
図2の矢印で示される方向に材料の出口流として装置から出ることができる、ならびに/または追加の下流の装置および/もしくはシステムおよび/もしくはプロセスによってさらに受け取られ処理されてもよい。この例示的な実施形態では、第1の種類のバッテリ材料10は、上記の大型充電式リチウムイオンバッテリである(例えば、サイズが最大約5000mm×2000mm×1450mmまでのリチウムイオンバッテリまたは電気自動車バッテリ)。図示の例示的な実施形態における第1のサイズ削減バッテリ材料14は、約400mmより小さい粒子サイズを有する。この例示的な実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイス12および第2の浸漬型粉砕デバイス16は多軸シュレッダである。
【0228】
図2を参照すると、第1のサイズ削減バッテリ材料14を形成するための第1の浸漬型粉砕デバイス12に第1の種類のバッテリ材料10を搬送するための第1の供給シュート6が提供される。浸漬型コンベヤ22は、第2のサイズ削減バッテリ材料18を形成するために、第1のサイズ削減バッテリ材料14を受け取り、第2の浸漬型粉砕デバイス16に搬送するために提供される。図示の例示的な実施形態における第2のサイズ削減バッテリ材料18は、約100mmより小さい粒子サイズを有する。
図2に示す概略図では、浸漬型コンベヤ22はパイプである収集要素21を有する自浄式チェーンコンベヤであり、パイプは、浸漬型コンベヤの下側とは反対側に開放側面またはスロットを画定し、これにより、篩下材料が開口部/スロットを通って落下し、パイプに集まることができる。これらの篩下材料は、下流の装置/システム/プロセスに吸引またはポンプ輸送され得る。
【0229】
図2を参照すると、ハウジング2内に第2の種類のバッテリ材料28を受け入れるための開口部26が内部に配置された第2の供給シュート24(ホッパ)が提供される。
図2に示す概略図では、ハウジング2は、第2の種類のバッテリ材料28を第2の供給シュート24から第2の浸漬型粉砕デバイス16に直接搬送するための搬送シュート27を備える。第2の浸漬型粉砕デバイス16は、第2の種類のバッテリ材料28だけでなく、第1のサイズ削減バッテリ材料14もサイズ削減させるように構成される。この例示的な実施形態では、第2の種類のバッテリ材料28は、上記の小型充電式リチウムイオンバッテリである。この例示的な実施形態では、第2の種類のバッテリ材料28は、第1の種類のバッテリ材料10に比べてサイズが小さい。
【0230】
本装置は、第2の浸漬型粉砕デバイス16の出力の近くに、第2の浸漬型粉砕デバイス16によって生成された粉砕された材料を排出するための出口をさらに備え、排出された粉砕された材料18は、1つまたは複数のさらなる場合により浸漬型の粉砕デバイス、ならびに/またはさらなる下流のシステムおよびプロセスに送達することができる。
【0231】
図2はまた、上記で概説した装置1に関して説明した構成要素を含み、浸漬液4と組み合わせて、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための例示的なシステム100を示している。システム100は、第1の種類のバッテリ材料10を受け入れ、それをサイズ削減させて第1のサイズ削減バッテリ材料14を形成するための第1の浸漬型粉砕デバイス12と、第1のサイズ削減バッテリ14を受け入れ、それをさらにサイズ削減させて第2のサイズ削減バッテリ材料18を形成するための第2の浸漬型粉砕デバイス16と、第1の浸漬型粉砕デバイス12、第2の浸漬型粉砕デバイス16、第1のサイズ削減バッテリ材料14、および第2のサイズ削減バッテリ材料18のそれぞれを内部に浸漬する浸漬液4と、を備える。この例示的な実施形態では、第1の種類のバッテリ材料10は、上記の大型充電式リチウムイオンバッテリである。
図2に示す例示的な実施形態における第1のサイズ削減バッテリ材料14は、約400mmより小さい粒子サイズを有する。
【0232】
図2を参照すると、例示的なシステム100は、第1のサイズ削減バッテリ材料14を第1の浸漬型粉砕デバイス12から第2の浸漬型粉砕デバイス16に搬送するための浸漬型コンベヤ22を備え、第1の浸漬型粉砕デバイス12、第2の浸漬型粉砕デバイス16、第1のサイズ削減バッテリ材料14、および第2のサイズ削減バッテリ材料18、ならびに浸漬型コンベヤ22のそれぞれが浸漬液4に浸漬される。この例示的な実施形態では、浸漬型コンベヤ22は、上述の自浄式チェーンコンベヤであり、第2のサイズ削減バッテリ材料18は、約100mmより小さい粒子サイズを有する。
【0233】
例示的なシステム100の
図2に示す概略図では、第1の浸漬型粉砕デバイス12は、せん断により第1の種類のバッテリ材料10をサイズ削減させて、第1のサイズ削減バッテリ材料14を形成し、第2の浸漬型粉砕デバイス16は、せん断により第1のサイズ削減バッテリ材料14をさらにサイズ削減させ、浸漬液4に浸漬される第2のサイズ削減バッテリ材料18を形成する。この例示的な実施形態では、第1の浸漬型粉砕デバイス12および第2の浸漬型粉砕デバイス16のそれぞれが上記のような多軸シュレッダである。
【0234】
図2を参照すると、例示的なシステム100は、第1の種類のバッテリ材料10を第1の浸漬型粉砕デバイス12に搬送するための第1の搬送システム30を備える。
図2に示す概略図における第1の搬送システム30は、第1の種類のバッテリ材料10を第1の浸漬型粉砕デバイス12に送達するための第1の供給シュート6(ホッパ)を備える。
図2に示す概略図の例示的なシステム100は、第2の種類のバッテリ材料28を第2の浸漬型粉砕デバイス16に直接搬送して、浸漬液4に浸漬された粉砕された材料34を形成するように構成される第2の搬送システム32をさらに備える。粉砕された材料34は、第2のサイズ削減バッテリ材料18と組み合わされ、同様のサイズである。第2の搬送システム32は、第2の供給シュート24と搬送シュート27とを備える。この例示的な実施形態では、第2の種類のバッテリ材料28は、大型リチウムイオンバッテリである第1の種類のバッテリ材料10に比べてサイズが小さい小型リチウムイオンバッテリである。
【0235】
図2を参照すると、例示的なシステム100は、第2の浸漬型粉砕デバイス16から粉砕されたバッテリ材料(18/34)を受け入れるための第3の粉砕デバイス(図示せず)をさらに備えることができ、第3の粉砕デバイスが場合により浸漬液4に浸漬可能であり、第2の浸漬型粉砕デバイス16から受け入れた粉砕されたバッテリ材料(18/34)をサイズ削減させる。よって、第2の浸漬型粉砕デバイス16を出る粉砕された材料は、追加の下流システムおよび/またはプロセスを介してさらに処理されてもよい。例えば、第3の粉砕デバイスは、さらなる粉砕されたバッテリ材料のさらなる処理のための他のシステムに組み込まれてもよい。本システムは、装置に関して上で説明したように、第3の場合により浸漬型の粉砕デバイスから粉砕されたバッテリ材料を受け入れ第4の粉砕デバイスをさらに備えることができる。
【0236】
表14は、浸漬条件下でバッテリ材料のサイズ削減を実行するための装置/システムの一実施形態のための機械的設計基準を提示している。
【0237】
実施例5-システム/装置の物理的検証
図3(a)、
図3(b)、および
図3(c)に示す修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)を使用して、破砕/せん断により円筒形リチウムイオンバッテリをサイズ削減させるために、バッテリ材料サイズ削減のパイロットテストを実施した。
【0238】
図3(a)は、浸漬条件下で動作するように修正された2軸シュレッダである、修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の写真である。
図3(a)からわかるように、修正されたシュレッダは、システム/装置内にバッテリを供給するための供給シュート(ホッパ)と、バッテリを破砕するための粉砕部に動作可能に結合された駆動部(モータ)と、浸漬液を収容するためのハウジングをシュレッダの粉砕部と共に形成する、粉砕部の下方に配置された浸漬タンクと、を備える。供給シュート/ホッパは工場出荷時の仕様から修正され、いくらか短くなっている。加えて、駆動軸と粉砕部に供給シュート/ホッパが接続されている部分との周りに、水密シールが追加されて、シュレッダの駆動軸(モータ)部分への浸漬液の漏れを防ぎ、またシュレッダの外部への浸漬液の漏れを防いでいる。浸漬タンクは、粉砕後に浸漬液を排出するための排出部を備える。
図3(b)は、
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)のための制御および電気パネルの写真である。
図3(c)は、
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の粉砕部の写真である。
図3(d)は、浸漬液に浸漬された粉砕部を示す、
図3(a)に示した修正したFranklin-Miller社製Taskmaster TM8500 Shredder(商標)の粉砕部の写真である。
【0239】
パイロットテストでは、完全に充電されたリチウムイオンバッテリを最初に10%NaCl溶液に浸して放電させた。テストした電池は、約69.6mm×18.1mmの寸法、および約50gの質量を有する、小型の円筒形ニッケル-マンガン-コバルト(NMC)化学リチウムイオンバッテリおよびニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)化学リチウムイオンバッテリであった。溶液のpHが約12になるまでCa(OH)2を溶液に添加することにより浸漬液を調製した。次いで、液浸タンクに注がれてシュレッダの粉砕部を浸漬させた31Lの体積の浸漬液中で10個のリチウムイオンバッテリのバッチを破砕した。パイロットテスト中、バッテリサイズ削減に由来する感知できるほどの量の粉塵やガスは発生せず、本明細書で説明される本開示の装置およびシステムが、既知のサイズ削減装置およびシステムに対して特定の利点を提供することが確認された。
【0240】
イオンプローブを使用して
図4(a)に示す破砕された生成物のフッ化物濃度をテストした。分析の結果、破砕されたバッテリの種類に応じて、平均1.3~3.4ppmのフッ化物水溶液濃度が示された(ニッケル-マンガン-コバルト/NMCバッテリでは1.3、ニッケル-コバルト-アルミニウム/NCAでは3.4)。最初のバッチと同じ溶液体積中で20個のNCAバッテリの別個のバッチを破砕した。同様に破砕された生成物を分析し、フッ化物濃度は5.74ppmであった。この低フッ化物濃度は、フッ化物レベルが中和溶液へのCa(OH)
2の添加によって管理できることを示す良い指標である。
【0241】
図4(a)に示すように、浸漬型シュレッダを出るバッテリ材料は、シュレッダを1回通過することによる平均粒子サイズが約40mmであり、これは、本出願の一実施形態による第2の浸漬型粉砕デバイスから期待される出力を表している。バッテリ材料の一部は、鋼鉄ケーシングの外側に取り付けられた複数層の正極、正極箔、セパレータ、負極、および負極箔から構成される遊離していないリチウムイオンバッテリ内部を有する層状バッテリ材料としてシュレッダを出た。破砕されたバッテリ材料は、
図4(a)に示すように、層状のバッテリ材料を含む大きな粒子サイズ、小さな粒子サイズ、および細かい粒子サイズの粒子画分に分離された。次いで、
図4(a)に示すような層状のバッテリ材料をシュレッダでもう1度破砕し、これにより、層状のリチウムイオン電池内部が遊離して、
図4(b)に示すように、平均サイズが約8mm以下の粒子が得られた。
【0242】
組み合わされた(最初の分離から、および大きい粒子サイズ画分を破砕した結果からの)小さい粒子サイズ画分を乾式造粒機(Econogrindユニット)で造粒し、これにより、
図4(c)に示すように、平均粒子サイズがさらに小さくなったバッテリ材料が得られた。
図4(d)に示すように、500μmの開き目を備えた網篩を介して、大きい粒子画分および小さい粒子画分から上記の微粒子材料を篩選された。微粒子材料は、浸出前に黒色塊材料と組み合わされるように保たれた。
Ca(OH)
2の溶液でバッテリを粉砕する前に、まず10%NaCl溶液にバッテリを浸漬して放電したが、同じ浸漬液を放電および粉砕の両方に使用できることを当業者であれば理解するはずである。浸漬液の他のオプションについては、上記のセクションで概説している。
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【表12-1】
【表12-2】
【表12-3】
【表12-4】
【0255】
【0256】
【0257】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、本出願が関係する当業者のスキルのレベルを示しており、個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
このように本出願を説明してきたが、本出願は多くの方法で変形され得ることは明らかである。そのような変形は、本出願の趣旨および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかなそのような修正はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。