(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】食品処理装置および食品処理方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20240423BHJP
A23B 7/06 20060101ALI20240423BHJP
A23N 12/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A23L5/10 A
A23B7/06
A23N12/06
(21)【出願番号】P 2023222331
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518051927
【氏名又は名称】株式会社ティーフォース
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 康二
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252130(JP,A)
【文献】特開2021-010309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/10
A23B 7/06
A23N 12/02-12/06
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室と、
重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面を有し、前記食品処理室内において前記保持面上で前記含水食品を保持する食品保持部であって、前記保持面は蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔を含む、食品保持部と、
前記食品保持部に保持された前記含水食品を攪拌する攪拌部と、
前記食品保持部が前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記食品保持部が前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に熱風を供給する熱風供給部と
を備える食品処理装置。
【請求項2】
前記蒸気供給部に蒸気を供給させた後、蒸気の供給を停止してから、前記攪拌部に前記含水食品を攪拌させながら前記熱風供給部に熱風を供給させる制御部を更に備える、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項3】
前記攪拌部は、回転軸周りを回転する中心ボディと、前記中心ボディから半径方向に延出している複数の攪拌ブレードとを有し、
前記中心ボディは、重力方向下側に向かって外径が大きくなる円錐台状の外形を有する、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項4】
前記中心ボディは、水平に対して60度以上傾斜している、
請求項3に記載の食品処理装置。
【請求項5】
前記食品保持部の前記保持面および前記攪拌部の前記中心ボディは、互いの間にV字状の谷を成す、
請求項3に記載の食品処理装置。
【請求項6】
前記複数の攪拌ブレードは、前記V字状の谷に堆積する前記含水食品を、前記中心ボディの回転に伴って攪拌する、
請求項5に記載の食品処理装置。
【請求項7】
前記食品保持部は、熱風乾燥された前記含水食品を排出するための、開閉可能な排出口を下端側に有し、
前記複数の攪拌ブレードは、前記V字状の谷に堆積する前記熱風乾燥された含水食品を、前記中心ボディの回転に伴って前記排出口から排出可能な、最下段の攪拌ブレードを含む、
請求項5に記載の食品処理装置。
【請求項8】
前記食品保持部は、前記熱風供給部によって前記保持面の裏面の下端側に熱風が直接吹き付けられるように配置されている、
請求項5に記載の食品処理装置。
【請求項9】
前記複数の攪拌ブレードは、前記中心ボディの回転軸方向および回転方向に互いに位置をずらして配置されており、互いに前記回転軸方向に重ならない、
請求項3に記載の食品処理装置。
【請求項10】
前記複数の攪拌ブレードは、前記中心ボディに対して、前記中心ボディの回転軸方向の位置および回転方向の位置の少なくとも何れかを調整可能である、
請求項3に記載の食品処理装置。
【請求項11】
前記攪拌部は、前記食品処理室に対して相互に取り替え可能な第1構造体および第2構造体を有し、
前記第2構造体は、嵩密度が相対的に大きい含水食品用であって、前記第1構造体と比べて、前記食品保持部に保持された前記含水食品のより低い部分を攪拌可能である、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項12】
前記食品保持部は、全面に亘って前記複数の孔が形成されたパンチングプレートを有する、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項13】
前記蒸気供給部は、前記食品処理室内に90℃以上150℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給する、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項14】
前記蒸気供給部は、前記食品処理室内に110℃以上130℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給する、
請求項13に記載の食品処理装置。
【請求項15】
前記熱風供給部は、前記食品処理室内に130℃以下の熱風を供給する、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項16】
前記熱風供給部は、前記食品処理室内に110℃以上130℃以下の熱風を供給する、
請求項15に記載の食品処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、50%以上の熱効率で前記食品処理室内の前記含水食品を熱風乾燥させる、
請求項2に記載の食品処理装置。
【請求項18】
前記熱風供給部が外気を取り込むための吸気管と、
前記食品処理室から少なくとも熱風を排出するための排気管と、
前記吸気管および前記排気管の間に配置された開閉式の調整弁と
を更に備え、
前記制御部は、前記調整弁の開量を調整することにより、前記食品処理室から排出される熱風を前記熱風供給部へと循環させる量を調整する、
請求項17に記載の食品処理装置。
【請求項19】
前記熱風供給部および前記蒸気供給部は、前記食品保持部に保持された前記含水食品に対して、前記食品保持部の前記複数の孔を介して下方から上方へと蒸気または熱風が供給されるように、前記食品保持部の下側で前記食品処理室に接続された流路を有する、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項20】
前記蒸気供給部は、前記食品保持部の下側に配置された、前記食品処理室の内壁に沿う環状配管の複数の噴出口から、前記食品処理室内に蒸気を噴出させ、
前記複数の噴出口は、蒸気が前記食品保持部に直接吹き付けられないように配置されている、
請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項21】
含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室内において、重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面であって蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔を含む保持面上で前記含水食品を保持することと、
前記保持面上で前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に蒸気を供給することと、
前記食品処理室内に蒸気を供給した後、前記保持面上で前記含水食品を保持した状態で、前記含水食品を攪拌しながら前記食品処理室内に熱風を供給することと
を備える食品処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品処理装置および食品処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「オガ粉排出オーガ10の周囲の開口部16からは乾燥用空気が吹き上げるようになっている」(0022)と記載されている。特許文献2には、「処理物は、まず容器1底部に落下してアジテータ15の撹拌羽根14…(特に第2、第3の撹拌羽根14B…,14C…)により撹拌されるとともに、第2のチョッパー16の破砕羽根19…によって破砕されて細かく分断され、さらに供給管11から加圧室10を介して分散板9から噴出させられる熱風等の乾燥ガスにより乾燥される。」(0025)と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2008-145048
[特許文献2] 特許第3084026号
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、食品処理装置を提供する。食品処理装置は、含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室と、重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面を有し、前記食品処理室内において前記保持面上で前記含水食品を保持する食品保持部であって、前記保持面は蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔を含む、食品保持部と、前記食品保持部に保持された前記含水食品を攪拌する攪拌部と、前記食品保持部が前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、前記食品保持部が前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に熱風を供給する熱風供給部とを備える。
【0004】
上記の食品処理装置は、前記蒸気供給部に蒸気を供給させた後、蒸気の供給を停止してから、前記攪拌部に前記含水食品を攪拌させながら前記熱風供給部に熱風を供給させる制御部を更に備えてもよい。
【0005】
上記の何れかの食品処理装置において、前記攪拌部は、回転軸周りを回転する中心ボディと、前記中心ボディから半径方向に延出している複数の攪拌ブレードとを有してもよい。前記中心ボディは、重力方向下側に向かって外径が大きくなる円錐台状の外形を有してもよい。
【0006】
上記の何れかの食品処理装置において、前記中心ボディは、水平に対して60度以上傾斜していてもよい。
【0007】
上記の何れかの食品処理装置において、前記食品保持部の前記保持面および前記攪拌部の前記中心ボディは、互いの間にV字状の谷を成してもよい。
【0008】
上記の何れかの食品処理装置において、前記複数の攪拌ブレードは、前記V字状の谷に堆積する前記含水食品を、前記中心ボディの回転に伴って攪拌してもよい。
【0009】
上記の何れかの食品処理装置において、前記食品保持部は、熱風乾燥された前記含水食品を排出するための、開閉可能な排出口を下端側に有してもよい。前記複数の攪拌ブレードは、前記V字状の谷に堆積する前記熱風乾燥された含水食品を、前記中心ボディの回転に伴って前記排出口から排出可能な、最下段の攪拌ブレードを含んでもよい。
【0010】
上記の何れかの食品処理装置において、前記食品保持部は、前記熱風供給部によって前記保持面の裏面の下端側に熱風が直接吹き付けられるように配置されていてもよい。
【0011】
上記の何れかの食品処理装置において、前記複数の攪拌ブレードは、前記中心ボディの回転軸方向および回転方向に互いに位置をずらして配置されており、互いに前記回転軸方向に重ならなくてもよい。
【0012】
上記の何れかの食品処理装置において、前記複数の攪拌ブレードは、前記中心ボディに対して、前記中心ボディの回転軸方向の位置および回転方向の位置の少なくとも何れかを調整可能であってもよい。
【0013】
上記の何れかの食品処理装置において、前記攪拌部は、前記食品処理室に対して相互に取り替え可能な第1構造体および第2構造体を有してもよい。前記第2構造体は、嵩密度が相対的に大きい含水食品用であって、前記第1構造体と比べて、前記食品保持部に保持された前記含水食品のより低い部分を攪拌可能であってもよい。
【0014】
上記の何れかの食品処理装置において、前記食品保持部は、全面に亘って前記複数の孔が形成されたパンチングプレートを有してもよい。
【0015】
上記の何れかの食品処理装置において、前記蒸気供給部は、前記食品処理室内に90℃以上150℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給してもよい。
【0016】
上記の何れかの食品処理装置において、前記蒸気供給部は、前記食品処理室内に110℃以上130℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給してもよい。
【0017】
上記の何れかの食品処理装置において、前記熱風供給部は、前記食品処理室内に130℃以下の熱風を供給してもよい。
【0018】
上記の何れかの食品処理装置において、前記熱風供給部は、前記食品処理室内に110℃以上130℃以下の熱風を供給してもよい。
【0019】
上記の何れかの食品処理装置において、前記制御部は、50%以上の熱効率で前記食品処理室内の前記含水食品を熱風乾燥させてもよい。
【0020】
上記の何れかの食品処理装置は、前記熱風供給部が外気を取り込むための吸気管を更に備えてもよい。上記の何れかの食品処理装置は、前記食品処理室から少なくとも熱風を排出するための排気管を更に備えてもよい。上記の何れかの食品処理装置は、前記吸気管および前記排気管の間に配置された開閉式の調整弁を更に備えてもよい。上記の何れかの食品処理装置において、前記制御部は、前記調整弁の開量を調整することにより、前記食品処理室から排出される熱風を前記熱風供給部へと循環させる量を調整してもよい。
【0021】
上記の何れかの食品処理装置において、前記熱風供給部および前記蒸気供給部は、前記食品保持部に保持された前記含水食品に対して、前記食品保持部の前記複数の孔を介して下方から上方へと蒸気または熱風が供給されるように、前記食品保持部の下側で前記食品処理室に接続された流路を有してもよい。
【0022】
上記の何れかの食品処理装置において、前記蒸気供給部は、前記食品保持部の下側に配置された、前記食品処理室の内壁に沿う環状配管の複数の噴出口から、前記食品処理室内に蒸気を噴出させてもよい。前記複数の噴出口は、蒸気が前記食品保持部に直接吹き付けられないように配置されていてもよい。
【0023】
本発明の第2の態様においては、食品処理方法を提供する。食品処理方法は、含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室内において、重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面であって蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔を含む保持面上で前記含水食品を保持することと、前記保持面上で前記含水食品を保持した状態で、前記食品処理室内に蒸気を供給することと、前記食品処理室内に蒸気を供給した後、前記保持面上で前記含水食品を保持した状態で、前記含水食品を攪拌しながら前記食品処理室内に熱風を供給することとを備える。
【0024】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態による食品処理装置10の模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に示す食品処理装置10を反対側から見た模式的な斜視図である。
【
図3】一実施形態による食品処理装置10の本体100の内部構造を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図3に示す本体100の内部構造を異なる視点から斜めに見た模式的な断面図である。
【
図5】
図4に示す本体100の内部構造を正面から見た模式的な断面図である。
【
図6】
図3に示す本体100における食品処理室110の下室116に設けられた複数の攪拌ブレード132の詳細を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、一実施形態による食品処理装置10の模式的な斜視図である。
図2は、
図1に示す食品処理装置10を反対側から見た模式的な斜視図である。
図1において、紙面に向かって右方向をX軸正方向と定義し、紙面に向かって奥行き方向をY軸正方向と定義し、紙面に向かって上方向をZ軸正方向と定義する。
図2以降の各図においても、
図1のXYZ軸に対応するXYZ軸を示し、これと重複する説明を省略する。なお、以降の説明において、Z軸正側を単に上、上側、上方または重力方向上側と称し、Z軸負側を単に下、下側、下方または重力方向下側と称する場合がある。
【0028】
食品処理装置10は、主には野菜類、果物類、魚類、肉類などの含水食品を水蒸気でブランチングし、その後に連続して熱風によって乾燥する複合機能を有する。以降の説明において、含水食品を水蒸気でブランチングすることを、含水食品の蒸煮またはスチーミング、と称する場合がある。なお、含水食品のブランチングとは、含水食品を短時間、例えば数十分間から数分間程度、煮沸または蒸煮することによって、含水食品に熱処理、殺菌および酵素失活処理を施すことを指してもよい。
【0029】
食品処理装置10が処理対象とする含水食品は、一例として、重量含水率が90%前後の固体または半固体の食品である。食品処理装置10に投入される含水食品は、一例として、予備処理、洗浄・殺菌処理、および、カッティング処理が施されている。予備処理は、例えば、根菜類の天地部分、葉物の根、欠けや割れなどを手作業でトリミングすることを含んでもよい。洗浄・殺菌処理は、例えば、次亜塩素酸水、電解水等の薬剤で殺菌し、薬剤を洗い落とすことを含んでもよい。カッティング処理は、例えば、根菜類を数mm~数10mm程度にダイスカットすること、葉物を長さ例えば20mm程度以下にカットすること、などを含んでもよい。
【0030】
食品処理装置10は、バッチ式の運転形態であって、一例として、1バッチ当たり25kg程度の葉物や50kg程度の根菜類などを処理可能であってもよい。食品処理装置10は、例えば、重量含水率が90%である50kgの野菜を、1時間で、ブランチングして重量含水率50%まで乾燥させる処理能力を有してもよい。
【0031】
食品処理装置10は、一例として、日本特許第6544672号に開示される「乾燥粉砕機」の前処理用の装置として利用されてもよい。食品処理装置10は、一例として、含水食品の乾燥チップを製造する装置として利用されてもよい。この場合、食品処理装置10は、例えば、重量含水率が10%以下の乾燥野菜チップを製造可能であってもよい。
【0032】
図1および
図2に示すように、本実施形態による食品処理装置10は、本体100、蒸気供給部140、熱風供給部150、吸気管161、排気管163、調整弁170-1、調整弁170-2、および、制御部180を備える。
【0033】
本体100は、キャスターおよびフレーム付きの台車51上に載置されて、搬送可能であってもよい。本体100は、台車51上に取り外し可能に固定されてもよい。熱風供給部150、吸気管161、排気管163、調整弁170、および、制御部180は、キャスターおよびフレーム付きの台車52上に載置されて、搬送可能であってもよい。これら熱風供給部150等は、台車52上に取り外し可能に固定されてもよい。
【0034】
図1および
図2に示すように、本体100は食品処理室110を有する。本体100は更に、
図1および
図2に示されていない構成として、
図3以降の各図に示される食品保持部120および攪拌部130を食品処理室110内部に有する。換言すると、食品処理装置10は更に、食品保持部120および攪拌部130を備える。食品保持部120および攪拌部130の詳細については、
図3以降を参照して後述する。
【0035】
食品処理室110は、内部空間を有する処理室であって、含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の処理室である。食品処理室110は、
図1および
図2に示すように一部が円筒状の処理室であってもよい。
【0036】
本実施形態による食品処理室110は、上室111および下室116を有する。上室111および下室116は、それぞれ一方の側が外部空間に開放されている円筒状の筐体であって、上室111が下室116のZ軸正側に位置するように互いの開放されている側を向かい合わせに連結されて、上述の内部空間を形成している。より具体的には、上室111および下室116は、
図1および
図2に示すように、それぞれの開放されている側に設けられたフランジに形成されている、それぞれの対応する貫通孔を通じてボルトで締結されることによって互いに連結されている。
【0037】
上室111の上側、すなわち下室116側の反対側の面には、ユーザが含水食品を食品処理室110内に投入するための原料投入口112が設けられている。各図において、適宜、含水食品の投入方向を白抜きの矢印で示す。
【0038】
上室111の側面には、ユーザが食品処理室110内部の食品保持部120や攪拌部130などを清掃したりメンテナンスしたりするための、開閉式の回転ドア113が設けられていてもよい。回転ドア113は、食品処理室110の側面において上下端を固定されたヒンジ付き棒114によって回転可能に保持されていてもよい。回転ドア113は、食品処理室110の側面に設けられた複数の留め具115に係合されることによって閉状態を維持されてもよい。
【0039】
下室116の側面には、ユーザが下室116内部を洗浄したりメンテナンスしたりするためのメンテナンス用窓118が設けられていてもよい。メンテナンス用窓118は、ユーザによって蓋を取り外しされることによって開閉されてもよい。
【0040】
蒸気供給部140は、食品処理室110内に蒸気を供給する。本実施形態による蒸気供給部140は、食品処理室110に接続された蒸気流路143と、制御部180から受信する指示信号に従って、蒸気を生成し、蒸気流路143を介して食品処理室110内に蒸気を供給するボイラ141とを有する。ボイラ141は、不図示の電気配線によって制御部180に接続されている。
【0041】
蒸気供給部140は、食品処理室110内に90℃以上150℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給してもよい。蒸気供給部140はまた、食品処理室110内に110℃以上130℃以下の飽和水蒸気または過熱水蒸気を供給してもよい。なお、120℃以上の飽和水蒸気または過熱水蒸気によって、土壌菌などの耐熱性菌も殺菌可能である。なお、蒸気供給部140は、蒸気流路143において、ボイラ141から供給される飽和水蒸気を100℃~150℃まで加熱して過熱水蒸気としてもよく、例えばスーパーヒーターを有してもよい。
【0042】
なお、各図において、単に説明を明確にする目的で、蒸気供給部140を簡略化して示し、蒸気の概略的な流れ方向を、適宜「蒸気」との文字を付して、白抜きの矢印で示す。また同様の目的で、以降の一部の図において熱風供給部150を簡略化して示したり、外気または熱風の概略的な流れ方向を、適宜「外気」や「熱風」との文字を付して、黒塗りの矢印で示したりする場合がある。また同様の目的で、食品処理装置10の説明済の構成の参照番号を省略したり、食品処理装置10の一部の構成の図示を省略したりする場合がある。以降の各図においては、これらと重複する説明を省略する。
【0043】
熱風供給部150は、食品処理室110内に熱風を供給する。本実施形態による熱風供給部150は、食品処理室110に接続された熱風流路153と、制御部180から受信する指示信号に従って、外気を吸い込んで加熱するバーナユニット151および熱風発生器152とを有する。熱風供給部150は更に、バーナユニット151および熱風発生器152で加熱された熱風を、制御部180から受信する指示信号に従って、熱風流路153を介して食品処理室110内に押し込むファン154を有する。なお、バーナユニット151および熱風発生器152とファン154との間の流路も熱風流路153と称する場合がある。バーナユニット151、熱風発生器152およびファン154は、不図示の電気配線によって制御部180に接続されている。
【0044】
バーナユニット151は、一例として、比較的安価なLPG(液化石油ガス)やLNG(液化天然ガス)などを熱源としてもよい。バーナユニット151は、これに代えて伝熱ヒータを熱源としてもよい。なお、バーナユニット151および熱風発生器152で加熱された熱風の湿度は予め定められた閾値以下となるように調整されてもよい。
【0045】
熱風供給部150は、食品処理室110内に130℃以下の熱風を供給してもよい。熱風供給部150はまた、食品処理室110内に110℃以上130℃以下の熱風を供給してもよい。なお、130℃以上の熱風で含水食品を乾燥させると、含水食品の変色、例えばメイラード反応による褐変が起きる場合がある。
【0046】
吸気管161は、熱風供給部150が外気を取り込むための管路である。吸気管161は、一端が外部空間に開放されており、他端が熱風供給部150の熱風発生器152に接続されている。吸気管161の内部には、一例として、外気に含まれる粉塵などをフィルタリングするためのエアフィルタが設けられていてもよい。
【0047】
排気管163は、食品処理室110から熱風および蒸気を排出するための管路である。排気管163は、一端が外部空間に開放されており、他端が食品処理室110の上室111に接続されている。
【0048】
調整弁170-1は、吸気管161および排気管163の間に配置された開閉式のシャッター弁である。調整弁170-2は、吸気管161に配置された開閉式のシャッター弁である。調整弁170-1、170-2は、制御部180から受信する指示信号に従って、開量を調整する。なお、調整弁170-1、170-2は、これに代えて又は加えて、ユーザが手動で開量を調整可能であってもよい。
【0049】
制御部180は、例えば
図1に示すように、制御盤に組み込まれたコントローラであって、制御盤のメモリに記憶されている予め定められたシーケンスプログラムに従って、食品処理装置10の各構成を順に制御する。制御部180は、食品処理装置10の各構成をシーケンスプログラムに従って順に制御することに代えて、食品処理装置10の各構成をフィードバック制御してもよい。制御部180は、ユーザによって制御盤の電源がオフからオンに切り替えられたことに応じて、食品処理装置10の各構成を制御することを開始してもよい。
【0050】
制御部180は、不図示の電気配線によって、攪拌部130、蒸気供給部140、熱風供給部150および調整弁170に有線接続され、これらの各構成と通信する。制御部180は、これらの構成の少なくとも何れかと無線接続されていてもよい。
【0051】
制御部180は、攪拌部130等に指示信号を送信して、蒸気供給部140に蒸気を供給させた後、蒸気の供給を停止してから、攪拌部130に含水食品を攪拌させながら熱風供給部150に熱風を供給させる。制御部180は、一例として、50%以上の熱効率で食品処理室110内の含水食品を熱風乾燥させてもよい。例えば、制御部180は、食品処理室110内の含水食品を乾燥させるべく120~130℃の熱風を供給して、含水食品の重量含水率が予め定められた値まで低下させた結果として、食品処理室110から排出される熱風の温度が50~60℃となるように、食品処理装置10の各構成を制御してもよい。例えば、制御部180は、調整弁170-1の開量を調整することにより、食品処理室110から排出される熱風を熱風供給部150へと循環させる量を調整してもよく、これによって50%以上の熱効率を達成してもよい。この場合、より具体的には、制御部180は、調整弁170-2を半開程度にすることによって、熱風供給部150が取り込む外気の量を減らしてもよい。これと共に、制御部180は、調整弁170-2を半開程度にすることによって、
図1、2において破線の矢印で示すように、食品処理室110から排出される熱風を熱風供給部150へと循環させてもよい。なお、制御部180は、熱風を循環させずに、すなわち調整弁170-1、170-2の開量を調整せずに、50%以上の熱効率を達成してもよく、この場合には、食品処理装置10は調整弁170-1、170-2を備えずに調整弁170-1部分を壁で閉ざしてもよく、すなわち、食品処理装置10において熱風は1つの流路を1回のみ通過するようにしてもよい。
【0052】
なお、食品処理装置10における主たる構成の寸法は、例えば円筒状の食品処理室110の直径が700mm、制御盤の横幅が900mm、床面から吸気管161上端までの最大高さが2000mmであってもよい。
【0053】
図3は、一実施形態による食品処理装置10の本体100の内部構造を示す模式的な断面図である。
図4は、
図3に示す本体100の内部構造を異なる視点から斜めに見た模式的な断面図である。
図5は、
図4に示す本体100の内部構造を正面から見た模式的な断面図である。
図6は、
図3に示す本体100における食品処理室110の下室116に設けられた複数の攪拌ブレード132の詳細を示す模式的な斜視図である。
【0054】
食品保持部120は、食品処理室110内で含水食品を保持する。食品保持部120は、
図3から
図5に示すように、重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面122を有し、保持面122上で含水食品を保持する。逆円錐台状の保持面122は、含水食品が保持面122上に留まらずに落下するように、例えば水平に対して45度以上の傾斜角、例えば50度の傾斜角を有してもよい。なお、各図において含水食品の図示は省略する。
【0055】
食品保持部120の保持面122は、
図3に示すように、蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔121を含む。なお、以降の図においては、複数の孔121の図示を省略する。食品保持部120において、複数の孔121が形成された部分は、パンチングプレートであってもよい。換言すると、食品保持部120は、全面に亘って複数の孔121が形成されたパンチングプレートを有してもよい。なお、食品保持部120の複数の孔121の大きさは、食品保持部120に保持された含水食品が通過しない程度の大きさである。また、パンチングプレートは、通気抵抗を低くするために開口率40%程度以上であってもよい。
【0056】
食品保持部120は、食品処理室110内部で固定されている。食品保持部120は例えば、
図3から
図6に示すように、複数の孔121が形成された部分から外側に延出しているフランジを有してもよく、当該フランジを食品処理室110の上室111および下室116の各フランジによって挟持されることによって、食品処理室110内部で固定されていてもよい。より具体的には、食品保持部120は、当該フランジを食品処理室110の上室111および下室116の各フランジと共に、それぞれの対応する貫通孔を通じてボルトで締結されることによって、食品処理室110内部で固定されている。食品保持部120は、食品処理室110の内部空間を上室111側と下室116側に区分けしている、とも言える。
【0057】
食品保持部120は例えば、
図4から
図6に示すように、熱風乾燥された含水食品を排出するための、開閉可能な排出口124を下端側に有してもよい。食品保持部120の排出口124は、食品処理室110の下室116に設けられたプラグ挿入口117との間に、熱風乾燥された含水食品を食品処理室110の内部から外部へと排出するための通路を有する。排出口124は、例えば
図5に示すように、ユーザによってプラグ挿入口117から当該通路内へとプラグ101を挿入されることで閉状態となってもよく、プラグ101を抜去されることで開状態となってもよい。
【0058】
攪拌部130は、食品保持部120に保持された含水食品を攪拌する。攪拌部130は、例えば、食品保持部120に保持された含水食品を混合する。攪拌部130は、
図3から
図6に示すように、回転軸周りを回転する中心ボディ131と、中心ボディ131から半径方向に延出している複数の攪拌ブレード132とを有してもよい。攪拌部130は更に、制御部180から受信する指示信号に従って、中心ボディ131および複数の攪拌ブレード132を回転駆動する回転駆動部136を有してもよい。なお、
図3から
図6において、回転駆動部136によって回転駆動される中心ボディ131および複数の攪拌ブレード132の回転方向Rを矢印で示す。
【0059】
中心ボディ131は例えば、
図3から
図6に示すように、重力方向下側に向かって外径が大きくなる円錐台状の外形を有してもよい。円錐台状の中心ボディ131は、例えば水平に対して60度以上傾斜していてもよい。円錐台状の中心ボディ131は、食品保持部120の逆円錐台状の保持面122の下底部分を成す開口の縁に沿って、保持面122に接触しない状態のまま当該開口内で回転する。よって、食品保持部120の保持面122および攪拌部130の中心ボディ131は、互いの間にV字状の谷を成す。
【0060】
中心ボディ131は例えば、
図3から
図6に示すように、円錐台の上底および下底の各中心をZ軸方向に貫通する孔が形成されており、上の孔から下の穴にボルト135が挿入されてもよい。中心ボディ131は、ボルト135を回転軸として回転駆動部136に軸支されてもよい。
【0061】
複数の攪拌ブレード132は、上述のV字状の谷に堆積する含水食品を、中心ボディ131の回転に伴って攪拌する。複数の攪拌ブレード132はそれぞれ、回転方向Rに回転した場合に含水食品を押し上げながら攪拌できるよう、仰角の攪拌面を有する。複数の攪拌ブレード132は例えば、
図6に示すように、上段にある第1攪拌ブレード132-1、中段にある第2攪拌ブレード132-2、および、下段にある第3攪拌ブレード132-3から成る3段構造であってもよい。複数の攪拌ブレード132は例えば、
図6に示すように、中心ボディ131の回転軸方向および回転方向Rに互いに位置をずらして配置されており、互いに回転軸方向に重ならなくてもよい。第3攪拌ブレード132-3は、最下段の攪拌ブレードの一例であって、
図6に示すように、V字状の谷に堆積する熱風乾燥された含水食品を、中心ボディ131の回転に伴って食品保持部120の排出口124から排出可能であってもよい。なお、複数の攪拌ブレード132は、当該3段構造の他に、上段および下段の2段構造や、上段および中段の2段構造などであってもよい。なお、複数の攪拌ブレード132は、中心ボディ131と一体的に形成されていてもよく、別個に形成されて中心ボディ131に固定されていてもよい。
【0062】
回転駆動部136は、中心ボディ131および複数の攪拌ブレード132の回転中心を成す回転軸137と、中心ボディ131が固定されるターンテーブル138と、食品処理室110の下室116の底面に固定された筒状の仕切板139とを有してもよい。
【0063】
回転駆動部136は、例えば最大で1秒に1回転、すなわち最大1rpsの回転性能を有するギアードモータ136-1を含んでもよい。回転駆動部136は、ギアードモータ136-1の回転力によって回転軸137を回転させ、これによって中心ボディ131および複数の攪拌ブレード132を回転駆動させてもよい。
【0064】
回転駆動部136は、制御部180から受信する指示信号に従って、例えば食品処理装置10が処理対象とする含水食品の重量に応じてギアードモータ136-1の回転数を変えてもよい。具体的には、回転駆動部136は、重い含水食品ほどギアードモータ136-1を速く回転させてもよく、相対的に空気が抜け易い軽い含水食品はギアードモータ136-1を相対的に遅く回転させてもよい。
【0065】
本実施形態において、回転軸137はZ軸に平行であり、すなわち、攪拌部130はZ軸に平行な回転軸137周りに中心ボディ131を回転させ、これによって複数の攪拌ブレード132を回転軸137周りに回転させる。回転軸137は例えば、
図3から
図6に示すように、Z軸方向正側の端部にネジ溝が形成されていてもよく、当該ネジ溝には上述のボルト135が螺合され、これによって中心ボディ131が回転軸137に固定されてもよい。回転軸137は、下室116の底面に設けられたベアリング137-1によって回転可能に保持されていてもよい。なお、ベアリング137-1等は、
図3に示すように、筒状の仕切板139によって、熱風、蒸気、洗浄水等から隔離されている。
【0066】
ターンテーブル138には、回転中心に回転軸137が挿通される孔が形成されている。ターンテーブル138は、中心ボディ131と共に、回転軸137と一体的に回転する。ターンテーブル138には、任意の固定手段によって中心ボディ131が固定されていてもよい。ターンテーブル138は例えば、中心ボディ131の円錐台の下底からZ軸方向負側に延出している少なくとも3本のピンがターンテーブル138の対応する孔に挿通された状態で、ボルト135が回転軸137に締結されることによって、中心ボディ131と共に、回転軸137に固定されていてもよい。換言すると、ターンテーブル138および中心ボディ131は、ボルト135が回転軸137に締結されることによって、回転軸137と一体的に回転可能となってもよい。なお、ターンテーブル138は、ターンテーブル138の下にある仕切板139には接触しない状態のまま、回転軸137と一体的に回転する。
【0067】
図1および
図2を参照して説明した蒸気供給部140および熱風供給部150は、より具体的には、食品保持部120に保持された含水食品に対して、食品保持部120の複数の孔121を介して下方から上方へと蒸気または熱風が供給されるように、食品保持部120の下側で食品処理室110に接続された流路を有してもよい。すなわち、上述した蒸気流路143および熱風流路153は、食品処理室110の下室116の側壁に接続され、それぞれを介して下室116に吹き込まれる蒸気および熱風は、
図3に白抜きの矢印および黒塗りの矢印で例示するように、食品保持部120の複数の孔121を下から上へと通過してもよい。すなわち、蒸気および熱風は、食品保持部120の保持面122上に保持された含水食品の下方から上方へと供給されてもよい。
【0068】
蒸気供給部140は、
図3から
図5に示すように、食品保持部120の下側に配置された、食品処理室110の内壁に沿う環状配管144を有してもよい。蒸気供給部140は、環状配管144の複数の噴出口145から、食品処理室110内に蒸気を噴出させてもよい。複数の噴出口145は、蒸気が食品保持部120に直接吹き付けられないように配置されていてもよい。複数の噴出口145は、例えば、環状配管144において、食品保持部120の裏面123に正対する位置ではなく、上側および下側のそれぞれに配置されていてもよい。これにより、蒸気が食品保持部120に直接吹き付けられるように配置されている場合に比べて、食品保持部120の蒸気を直接吹き付けられる箇所が局所的に高温になって当該箇所に隣接する含水食品が褐色したり変質したりすることを抑止できる。複数の噴出口145はまた、蒸気が食品処理室110の下室116全体に拡散して食品保持部120の各孔121を下方から上方へと均等に通過するように、環状配管144の周方向全体に亘って一様に配置されていてもよい。なお、
図3においては、一部の噴出口145のみを代表的に図示し、以降の図においては図示を省略する。
【0069】
熱風供給部150の熱風流路153は、
図3に示すように、食品処理室110の下室116内に供給する熱風が、逆円錐台状の食品保持部120の裏面123における、逆円錐台の最小径部分に最初に吹き付けられるように、下室116の側面において位置決めされていてもよい。換言すると、食品保持部120は、熱風供給部150によって保持面122の裏面123の下端側に熱風が直接吹き付けられるように配置されていてもよい。この場合、熱風流路153から食品保持部120の裏面123までの距離が最大となり、下室116内で熱風が効率的に行き渡るようになる。熱風供給部150の熱風流路153はまた、環状配管144よりも下側に配置されていてもよい。
【0070】
なお、食品処理室110の下室116には、
図1および
図2を参照して説明したメンテナンス用窓118の他、
図3に示すような洗浄水の排水口119が底面に設けられていてもよい。排水口119は、ユーザが栓を抜き差しすることで開閉されてもよい。例えばユーザは、メンテナンス用窓118の蓋を外してメンテナンス用窓118から下室116内部の各部材に洗浄水を吹き付けることで各部材を清掃すると共に、排水口119の栓を抜いて洗浄水を排出してもよい。
【0071】
以上で説明した実施形態による食品処理装置10によれば、食品保持部120が逆円錐台状の保持面122上で含水食品を保持した状態で、攪拌部130が保持面122上の含水食品を攪拌しながら、蒸気や熱風を保持面122の複数の孔121を介して含水食品の下方から上方へと供給することができる。すなわち、食品処理装置10によれば、同一の装置内で、含水食品のブランチングと熱風乾燥とを行うことが可能である。食品処理装置10によればまた、食品保持部120の逆円錐台状に傾斜した保持面122と攪拌部130の円錐台状に傾斜した中心ボディ131との間のV字状の谷に含水食品を堆積させ、仰角の攪拌面を有する複数の攪拌ブレード132を回転方向Rに回転させることにより、堆積された含水食品を押し上げながら攪拌することができる。これにより、食品処理装置10は、V字状の谷の中で含水食品を押し上げては落下させることを繰り返すことができ、含水食品を効率的に処理することができる。
【0072】
このような食品保持部120の保持面122の傾斜角は、大きいほど、含水食品と蒸気および熱風との接触面積が大きくなるので処理効率が上がり且つ含水食品が落下し易くなるので撹拌効率が良くなる一方で、装置の高さが大きくなって、機械の製造コストが上がり、メンテナンス性が悪化する可能性がある。保持面122の傾斜角は、例えば、含水食品の種類、大きさ、水分などで決まる安息角に応じて設計されてもよい。なお、攪拌部130の中心ボディ131の傾斜角は、中心ボディ131周りでは特に上側で含水食品を十分に攪拌できないため、垂直に近くてもよい。この場合、中心ボディ131の水平に対する傾斜角は、保持面122の水平に対する傾斜角よりも大きいと言える。
【0073】
また例えば、本実施形態の食品処理装置10によれば、棚式の食品乾燥機と比較して、処理時間を非常に短縮することができ、熱履歴による機能性成分の劣化を防止でき、例えば、ポリフェノールに代表される、抗酸化作用のあるファイトケミカルの熱劣化を十分に抑止できる。また例えば、本実施形態による食品処理装置10によれば、数十メートル程の規模となるバンド乾燥機等の連続式の食品乾燥機と比較して、装置を大幅に小型化でき、設置スペースを節約することができる。
【0074】
また例えば、農業生産者や食品製造業者が、上述した「乾燥粉砕機」の設備を有する加工業者に、未利用農産物の野菜から野菜パウダーを製造することを外部委託する場合、90%程度の水分を含む野菜を冷蔵または冷凍して輸送する輸送コストが非常に大きな問題となるため、当該外部委託を断念するケースが考えられる。この場合、未利用農産物の活用が発展せず、多くの食品ロスが発生する可能性がある。これに対して、本実施形態による食品処理装置10によれば、上述の通り小型化が実現されているため、農業生産者等や、農業生産者等の近隣に位置するローカルな加工センターが、食品処理装置10を所有できる。これにより、農業生産者等は、食品処理装置10の利用によって、未利用農産物の野菜を例えば重量含水率50%以下の予備乾燥状態まで乾燥させてから、すなわち野菜の重量を5分の1以下に減らしてから加工業者へと輸送できるため、輸送コストを大幅に低減できる。従って、本実施形態による食品処理装置10によれば、未利用農産物の活用を発展させ、食品ロスを大幅に少なくすることができる。
【0075】
なお、上述した「乾燥粉砕機」は、例えば、重量含水率が95%である20kgの野菜から、1時間で、ほぼ0%の重量含水率まで乾燥させて1kgの野菜パウダーを製造する処理能力を有してもよい。この場合において、例えば重量含水率が95%である100kgの野菜を前処理せずに「乾燥粉砕機」が直接処理して5kgの野菜パウダーを製造しようとすると5時間かかることになるが、例えば上述した処理能力を有する本実施形態の食品処理装置10で当該野菜を前処理すれば、2時間で重量含水率が50%である10kgの乾燥野菜とすることができ、「乾燥粉砕機」における処理時間を僅か15分程度に短縮することができる。
【0076】
ここで、以上で説明した実施形態の食品処理装置10による食品処理方法の一例を説明する。当該食品処理方法は、含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室110内において、蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔121を含む逆円錐台状の保持面122上で含水食品を保持する段階(ステップS1)を備える。当該食品処理方法は更に、保持面122上で含水食品を保持した状態で、蒸気供給部140によって食品処理室110内に蒸気を供給する段階(ステップS2)を備える。当該食品処理方法は更に、食品処理室110内に蒸気を供給した後、保持面122上で含水食品を保持した状態で、攪拌部130によって含水食品を攪拌しながら、熱風供給部150によって食品処理室110内に熱風を供給する段階(ステップS3)を備える。
【0077】
上記のステップS2のより具体的な一例として、食品処理装置10は、食品処理室110の下室116内に、150℃程度の低圧蒸気を5~6分程度流入する。食品処理室110内の温度は、低圧蒸気の流入開始から2分程度で、常温から100℃を超えるまで上昇し、更に3~4分程度で、含水食品の十分なブランチングが完了する。なお、ステップS2では、食品処理装置10は攪拌部130によって含水食品を攪拌させても攪拌させなくてもよい。なお、ステップS2において、食品処理装置10は、処理対象となる含水食品の量に応じて、食品処理室110内への蒸気の供給量を調整してもよい。
【0078】
上記のステップS3のより具体的な一例として、食品処理装置10は、食品処理室110の下室116内への蒸気の流入を停止し、攪拌部130によって含水食品を攪拌させながら、下室116内に、吸気管161および熱風流路153を介して外気のみを1分程度流入した後、バーナユニット151を起動して70~120℃程度の熱風の流入を開始する。食品処理装置10は、上述した「乾燥粉砕機」の前処理装置として機能する場合、すなわち乾燥させた含水食品を後工程で瞬間乾燥粉砕してパウダー化する場合には、含水食品の熱履歴が多くならないよう、1~1.5時間程度熱風乾燥する。これにより、90%の水分を含む含水食品は、重量含水率50%程度まで乾燥する。食品処理装置10は、このように前処理装置として使用されずに自ら乾燥チップを製造する場合には、より長い時間、含水食品を熱風乾燥してもよい。これにより、90%の水分を含む含水食品は、重量含水率10%以下まで乾燥する。なお、ステップS3が終了した後、ユーザは、攪拌部130によって含水食品の攪拌が継続されている状態で、プラグ挿入口117からプラグ101を抜くことにより、プラグ挿入口117から乾燥された含水食品を徐々に排出させる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
例えば、攪拌部において、複数の攪拌ブレードは、中心ボディに対して、中心ボディの回転軸方向の位置および回転方向の位置の少なくとも何れかを調整可能であってもよい。例えば、中心ボディおよび攪拌ブレードが互いに別個に形成されており、中心ボディの外側面上には攪拌ブレードを固定するための複数の固定部材が離散的に設けられており、複数の固定部材の中から攪拌ブレードを固定する固定部材を選択することによって、攪拌ブレードの固定位置が決められてもよい。この場合において、乾燥された原料を排出口に流し込む役目を担っている下段の攪拌ブレードのみ、中心ボディと一体的に形成され、他の攪拌ブレードの少なくとも何れかが固定部材によって中心ボディに着脱可能であってもよい。
【0081】
また例えば、攪拌部は、食品処理室に対して相互に取り替え可能な第1構造体および第2構造体を有してもよく、第2構造体は、嵩密度が相対的に大きい含水食品用であって、第1構造体と比べて、食品保持部に保持された含水食品のより低い部分を攪拌可能であってもよい。例えば、嵩密度が高い、すなわちニンジンなどの根菜類のような重い含水食品ほど、下方に溜まり易く、下方部分だけ乾燥してしまうので、攪拌ブレードは下方に取り付ける必要がある。一方で、嵩密度が低い含水食品ほど、勝手に上方に行くので、攪拌ブレードは上方に取り付けていてもよい。例えば、ユーザが、中心ボディに対する攪拌ブレードの固定位置が互いに異なる、中心ボディおよび攪拌ブレードが一体的に形成された複数の構造体の中から特定の構造体を選択してもよい。この場合、当該構造体はターンテーブル上に着脱可能である。
【0082】
また例えば、拡散性の高い蒸気は、食品保持部120の複数の孔121を逆方向に通過するように構成されてもよい。
【0083】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0084】
10 食品処理装置
51、52 台車
100 本体
101 プラグ
110 食品処理室
111 上室
112 原料投入口
113 回転ドア
114 ヒンジ付き棒
115 留め具
116 下室
117 プラグ挿入口
118 メンテナンス用窓
119 排水口
120 食品保持部
121 孔
122 保持面
123 裏面
124 排出口
130 攪拌部
131 中心ボディ
132 攪拌ブレード
132-1 第1攪拌ブレード
132-2 第2攪拌ブレード
132-3 第3攪拌ブレード
135 ボルト
136 回転駆動部
136-1 ギアードモータ
137 回転軸
137-1 ベアリング
138 ターンテーブル
139 仕切板
140 蒸気供給部
141 ボイラ
143 蒸気流路
144 環状配管
145 噴出口
150 熱風供給部
151 バーナユニット
152 熱風発生器
153 熱風流路
154 ファン
161 吸気管
163 排気管
170-1、170-2 調整弁
180 制御部
【要約】
【解決手段】含水食品を蒸気でブランチングしてから熱風乾燥させるためのバッチ式の食品処理室と、重力方向下側に向かって内径が小さくなる逆円錐台状の保持面を有し、食品処理室内において保持面上で含水食品を保持する食品保持部であって、保持面は蒸気および熱風の通過を許容する複数の孔を含む、食品保持部と、食品保持部に保持された含水食品を攪拌する攪拌部と、食品保持部が含水食品を保持した状態で、食品処理室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、食品保持部が含水食品を保持した状態で、食品処理室内に熱風を供給する熱風供給部とを備える食品処理装置を提供する。
【選択図】
図1