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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】面状吸引グリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240423BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20240423BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B25J15/06 A
H05F3/02 F
B65G47/91 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020136816
(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公開番号】P2021030437
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】10 2019 123 238.4
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517273548
【氏名又は名称】イョット.シュマルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ストイサー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ミュラー
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-29676(JP,A)
【文献】実開平6-74290(JP,U)
【文献】特開平5-275513(JP,A)
【文献】欧州特許第1916206(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
H05F 3/02
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧によって物品を吸着及び固定するための面状吸引グリッパ(10)であって、物品のための取扱側(14)を有するベース部材(12)を備え、前記取扱側(14)が、前記物品を吸着するために負圧を印加可能な複数の吸引部(24)を有し、前記取扱側(14)は、弾性変形可能な被覆材(22)と、前記弾性変形可能な被覆材(22)の前記ベース部材(12)から離反した側に配置されているカバーシート層(28)とを有する、面状吸引グリッパにおいて、
前記カバーシート層(28)は、多層であるとともに、導電性コンタクト層(30)と、前記コンタクト層(30)を前記弾性変形可能な被覆材(22)に取り付けるための接着層(32)とを有し、前記導電性コンタクト層(30)は、前記物品を固定した場合に前記物品に当接するように配置されており、前記導電性コンタクト層(30)が少なくとも1つの突出部(42)を有し、前記突出部は、前記取扱側(14)を越えて延び、前記突出部は、前記弾性変形可能な被覆材(22)の周り、及び/又は前記ベース部材(12)の一部分(52)の周りに案内され、かつベース部材側の放電コンタクト(44)と電気的に接続されていることを特徴とする、面状吸引グリッパ。
【請求項2】
前記弾性変形可能な被覆材(22)が複数の通路穴(26)を有し、前記カバーシート層(28)が複数の規則的に配置された貫通部(40)を有し、前記カバーシート層(28)に設けられている前記貫通部(40)の単位面積当たりの数が、前記弾性変形可能な被覆材(22)における通路穴(26)より多いことを特徴とする、請求項1に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項3】
前記カバーシート層(28)は、複数の規則的に配置された貫通部(40)を備えて網状に形成されている、請求項1に記載の面状吸引グリッパ。
【請求項4】
前記接着層(32)は、接着可能及び再び取外し可能に形成されており、それにより前記カバーシート層(28)は、前記弾性変形可能な被覆材(22)から非破壊で引き剥がされ得る、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項5】
前記接着層(32)は、両面接着フィルムとして形成されており、両面に接着コーティングを有する基材フィルム(36)を備え、前記弾性変形可能な被覆材(22)の方を向いた前記接着コーティングが、接着状態にあるとき、前記コンタクト層(30)の方を向いた接着コーティングより小さい付着力を有する、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項6】
前記導電性コンタクト層(30)は、導電性を得るための添加材を有する繊維含有材料を含む、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項7】
前記弾性変形可能な被覆材(22)及び/又は前記接着層(32)は、電気的絶縁性に形成されている、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項8】
前記導電性コンタクト層(30)、及び/又は前記コンタクト層(30)と前記放電コンタクト(44)との電気的接続は、放出抵抗が10~10Ohmとなるように形成されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項9】
前記ベース部材(12)は、導電性に形成されており、前記コンタクト層(30)は、前記ベース部材(12)と電気的に接続されている、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項10】
前記ベース部材(12)は、少なくとも部分的に非導電材料からなり、かつ前記コンタクト層(30)と電気的に接続されている接続コンタクト(48)を有する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項11】
前記ベース部材(12)は、ハウジング底部(18)を有するハウジング(16)を具備し、前記ハウジング底部には前記弾性変形可能な被覆材(22)が配置されており、前記導電性コンタクト層(30)の前記突出部(42)は、前記ハウジング底部(18)に当接する、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項12】
前記ベース部材(12)は、前記弾性変形可能な被覆材(22)が配置されているハウジング底部(18)を有するハウジング(16)を具備し、前記導電性コンタクト層(30)の前記突出部(42)が前記ハウジング(16)の、前記被覆材(22)から離反した上側(54)へ導かれ、そこで前記放電コンタクト(44)と接続されている、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項13】
前記カバーシート層(28)は、前記弾性変形可能な被覆材(22)の、前記取扱側(14)の方を向いた表面全体に被さる、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【請求項14】
前記カバーシート層(28)は、前記弾性変形可能な被覆材(22)の、前記取扱側(14)の方を向いた表面の一部分のみに被さる、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の面状吸引グリッパ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の物品を吸着及び固定するための面状吸引グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
このような面状吸引グリッパは、殊に大面積の物品を取り扱うために、又は並置された複数の物品を収容及び固定するために(使用)される。面状吸引グリッパは、複数の吸引部を有していて面状に延在する、大抵は平坦な吸引面を具備する。被作用物品の非平坦性を補償するため、及び確実な固定を保証するために、吸引面が弾性被覆材(elastischen Belag)、特に発泡体被覆材(Schaumstoffbelag)で被覆されていてもよい。吸引特性を向上させるために、発泡体被覆材の、把持されるべき物品の方を向いた側が、別の材料からなるカバーシート層を備えていてもよい。特許文献1には、例えばカバーシート層が、発泡体被覆材と比べて空気透過性の低い材料からなり、それによって吸引部の領域により良い吸着作用を得ることができる面状吸引グリッパが記載されている。
【0003】
静電気放電に対して敏感な物品(ESD敏感性物品)の取り扱いには特別な要求が課せられる。例えば、面状吸引グリッパのベース部材が密封フォームによって物品から電気的に絶縁されており、例えば静電気帯電などにより、火花放電につながり得る電位差が生じる可能性があることから問題が生じ得る。タッチセンシティブな(beruehrungsempfindlich)表面を有する物品の取り扱い、及び/又は清浄度要求の高い取扱い過程ではさらなる難題が生じる。このような問題は、例えば回路基板又はディスプレイなどの電子機能素子を有する、例えば薄いガラス板又は回路基板を取り扱う場合に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP1916206B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、面状吸引グリッパの上述のような敏感な物品への使用可能性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1に記載の面状吸引グリッパにより解決される。面状吸引グリッパは、物品を吸着するために、この物品の方を向いた特に平坦な取扱側を有するベース部材を具備している。取扱側は複数の吸引部を有し、物品を吸着するために、これらの吸引部を通して周囲空気が吸い込まれる。取扱側は、弾性変形可能な被覆材、特に発泡体被覆材で被覆されている。弾性変形可能な被覆材の、物品の方を向いた側はカバーシート層を備え、物品を吸着する場合にこのカバーシート層が物品に当接する。
【0007】
この場合、カバーシート層は、多層に、すなわち特に2層に形成されており、導電性コンタクト層と、導電性コンタクト層を弾性変形可能な被覆材(特に発泡体被覆材)に取り付けるために用いられる接着層とを備えている。その際、カバーシート層は、導電性コンタクト層が物品の方を向くように弾性変形可能な被覆材に取り付けられており、すなわち物品を吸着する場合にコンタクト層が物品に触れ、殊に物品に当接する。その意味で導電性コンタクト層は、面状吸引グリッパの実際の取扱面をなす。
【0008】
弾性変形可能な被覆材は、殊にベース部材のハウジング底部に取着されている。ハウジング底部自体は硬質(hart)であってもよく、弾性変形可能な被覆材は、物品に押し付けられる場合に、物品の表面にあるかもしれない非平坦性を補償することができ、例えば弾性変形可能な被覆材が押付力によって局所的に圧縮される。カバーシート層も殊に同様に弾性変形可能に形成されており、それにより被覆材とカバーシート層とからなる複合体も、吸着された物品の表面の非平坦性を補償することができる。
【0009】
カバーシート層は、弾性変形可能な被覆材(特に発泡体状の被覆材)の材料において、把持過程で望ましくない圧痕を付ける可能性のある汚れ物質の蓄積を阻止する。その一方で、コンタクト層の導電性の形態が電荷のコントロールされた放出(Ableiten)を可能にし、それにより静電気放電事象による破損を回避することができる。
【0010】
さらに、以下に詳しく説明するように、カバーシート層の多層構造は、必要な場合にカバーシート層を交換することを可能にする。このことは、特に、保守の目的で、及び/又は様々な用途に合わせた設備変更のためにカバーシート層を交換することを可能にする。カバーシート層の交換は、特に高い清浄要求を満たすためにも有利であり得る。全体として面状吸引グリッパの組立及び運用における構造上の無駄が低減される。
【0011】
殊に、弾性変形可能な被覆材が複数の通路穴を有し、カバーシート層が、特に規則的に配置された複数の貫通部を有している。その際、殊にカバーシート層における貫通部の面密度は、弾性変形可能な被覆材における通路穴の面密度より高い。換言すると、殊にカバーシート層における単位面積当たりの貫通部の平均数が被覆材における通路穴の単位面積当たりの平均数より大きく、それによりカバーシート層における貫通部は、被覆材における通路穴よりも平均して互いにより近くにある。その意味でカバーシート層における貫通部のほうがより密集して配置されているので、カバーシート層が被覆材の通路穴に対して正確に位置決めされる必要はない。以下に詳しく説明するように、このことは、特にカバーシート層が交換可能に形成されている場合に面状吸引グリッパの組立を容易にする。
【0012】
殊に、被覆材における通路穴を各吸引部に対して、又は少なくともそれぞれ1つの吸引部群に対して割り当てることが予定されている。特にベース部材は、ハウジング底部と複数の吸引開口とを有するハウジングを具備し、それぞれ1つの通路穴が1つの吸引開口又は1つの吸引開口群と一直線に並ぶ。
【0013】
殊に、カバーシート層は、特に規則的でマトリクス状の配置の貫通部を有する有孔フィルムの形式で形成されている。例えばカバーシート層が網状に、又は穴格子の形式で形成されていてもよい。
【0014】
さらに別の実施形態では、カバーシート層は交換フィルムとして形成されている。このことは、例えば、接着層が貼付可能及び再び剥離可能(殊に再び貼付可能)に形成されている繰り返し接着可能な接着フィルム(Mehrfachklebefolie)であることによって実現することができる。特に、接着特性は、カバーシート層を弾性変形可能な被覆材から非破壊で引き剥がせるように形成されている。その意味で、カバーシート層の下に位置する被覆材を破壊することなくカバーシート層を交換できるので、面状吸引グリッパを様々な使用目的に適合させること、並びに面状吸引グリッパの洗浄及び保守が簡易化される。
【0015】
接着層は、殊に両面接着フィルムとして形成され、接着フィルムの両面における接着コーティングは、貼り合わせた状態にあるとき発泡体への接着力がコンタクト層への接着力より弱くなるように選択されている。このことは、コンタクト層と接着層とからなる複合体の全体を発泡体から引き剥がすことを可能にする。
【0016】
さらに別の実施形態では、導電性コンタクト層は、繊維含有材料の形式で形成されている。導電性を生成するために、繊維及び/又は繊維間隙に相応の添加材が供給されてもよい。適当な添加材は、例えばイオン化合物又は導電性粒子である。例えば、材料の繊維が相応にコーティング又は含浸されてもよい。さらに、コンタクト層の繊維質の構造は、平滑な表面を取り扱う場合に妨げとなる圧痕を低減することができる。
【0017】
繊維含有材料は、例えば編物又は織物の形式の構造であってもよい。材料として、例えば、特に織られた形のポリエチレンが考えられる。
【0018】
電気的に(elektrisch)変形可能な被覆材及び/又は接着層は、殊に電気的絶縁性に形成されている。電荷の放出は、殊にコントロールされてコンタクト層を通じて行われる。
【0019】
上述のように、コンタクト層は電荷の放出を可能にする。放出抵抗(Ableitungswiderstand)は、構造上の制約から、殊に、わずかな放電電流しか流れないように高く設定されている。殊に、導電性コンタクト層及び/又はコンタクト層と割り当てられた放電コンタクト(Ableitungskontakt)との電気的接続は、放出抵抗が10~10Ohmとなるように形成されている。この高い放出抵抗は、殊に、取扱側でアクセス可能であるコンタクト層との接触点から測定され放電コンタクトに向かって存在する。特にコンタクト層の導電性の形態によって放出抵抗に影響が及ぼされる。
【0020】
しかし、放出抵抗を接触の仕方によって定めることも考えられる。このような放電コンタクトは、ベース部材との接触点という意味で接続コンタクトであり得る。しかし放電コンタクトは、ベース部材自体によって、若しくはベース部材の一部分によってなってもよい。
【0021】
面状吸引グリッパの作動中、放電コンタクトは殊に電気的に接地されている。
【0022】
放電コンタクトは、様々な仕方で提供され得る。例えば、ベース部材自体が導電性に形成されていてもよいし、コンタクト層が、殊に(特に絶縁作用をする)被覆材を通り抜けてベース部材と電気的に接続されていてもよい。しかし、ベース部材が少なくとも部分的に(殊に全体が)電気的に非伝導性の絶縁性の材料からなり、かつコンタクト層と電気的に接続される接続コンタクトを有することも考えられる。殊に、ベース部材における接続コンタクトは電気的絶縁性の材料で取り囲まれている。例えば、接続コンタクトは、ベース部材を通り抜けてコンタクト層に接触するねじによって提供されてもよい。
【0023】
コンタクト層又は特にカバーシート層全体が少なくとも1つの突出部(Ueberstand)を有し、この突出部が取扱側を越えて延出し、かつ電気的に(elektrisch)変形可能な被覆材の周り、若しくはベース部材の一部分の周りに折り曲げられることによっても電気的コンタクト接続を得ることができる。その場合、突出部がベース部材側の放電コンタクトと電気的に接続されてもよい。殊に、突出部は、被覆材及び/又はベース部材の一部分の周りに折り返された舌片の形式で形成されている。
【0024】
ベース部材は、殊にハウジング底部を有するハウジングを備え、ハウジング底部には弾性変形可能な被覆材が配置され、ハウジング底部には特に吸引部も設けられている。
【0025】
このような突出部は、例えば、この突出部がハウジング底部に直接当接するように、弾性変形可能な被覆材の周りに案内される。特に、その場合、ベース部材側の接続コンタクトは、この接続コンタクトがハウジング底部に沿って折り曲げられたコンタクト層の突出部と接触するように形成されている。
【0026】
ハウジング底部は、それ自身が導電性(selbstleitfaehig)に形成されていてもよいし、コンタクト層の突出部と接触することによって上述の放電コンタクトを提供してもよい。
【0027】
しかし、導電性コンタクト層(若しくはカバーシート層)の突出部がハウジングの上側に導かれ、そこで放電コンタクトと電気的に接続されることも考えられる。
【0028】
簡単な一実施形態では、カバーシート層が取扱側全体に広がる(すなわちあるかもしれない貫通部を除いた全部を覆う)。この実施形態は、弾性変形可能な被覆材への簡単な貼付を可能にする。なぜなら弾性変形可能な被覆材の表面に正確に裁断したカバーシート層が貼付されさえすればよいからである。
【0029】
しかし、取扱側の、静電気放電のために重要な領域にのみカバーシート層を設け、それによりカバーシート層が取扱側の部分領域のみに被さる(ueberspannt)ことも有利であり得る。
【0030】
以下、図をもとにして本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による面状吸引グリッパの構造を説明するための分解図である。
図2図1による面状吸引グリッパの取扱側を示す斜視図である。
図3】カバーシート層の構造を説明するための概略図である。
図4】導電性コンタクト層の放電コンタクトの可能な実現形態を説明するための分解図である。
図5図4による面状吸引グリッパを示す斜視図である。
図6】カバーシート層の放電コンタクトの別の実現形態を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の記載及び図において、同じ又は相互に相当する特徴にはそれぞれ同じ参照符号が使用される。
【0033】
図1及び図2に図示されるように、面状吸引グリッパ10は、ベース部材12と、図示されない物品を吸着するために物品の表面に当接される、特に平坦に形成された取扱側14とを有する。
【0034】
本発明の一般的な態様では、ベース部材12は、殊にハウジング16を有し、ハウジングは、内側の負圧室を包囲し、かつ取扱側14の方を向いたハウジング底部18を有している。
【0035】
ベース部材は、例えばアルミニウムなどの適当な押出材料からなる、例えば押出形材のように、例えば中空形材として形成されていてもよい。中空形材は内側の吸引室を形成するために、殊に端面が終端蓋20で閉鎖されている。
【0036】
ハウジング底部18には弾性変形可能な被覆材22が配置されている。弾性変形可能な被覆材22は、殊に、ハウジング底部18全体に被さるように量定される。弾性変形可能な被覆材は、例えば発泡体被覆材である。
【0037】
取扱側14は、複数の吸引部24を有している。図示された例では(図1及び図2を参照)、これらの吸引部は、ハウジング底部18における詳しく図示されない吸引開口に対応する複数の通路穴26を弾性変形可能な被覆材22が有することによって画定されている。明瞭性の理由から、図2では取扱側14にわずかな吸引部24しか図示されていない。吸引部は、全体としては、ハウジング底部18全体にわたって殊にマトリクス状に配分して配置されている。
【0038】
弾性変形可能な被覆材22の、ベース部材12から離反した表面はカバーシート層28を備えている。カバーシート層28は、例えば、弾性変形可能な被覆材22の、ベース部材12から離反した側に完全に覆い被さってもよい(図1及び図2を参照)。
【0039】
カバーシート層28は、殊に多層に形成されている。図3は、カバーシート層28の構造及び弾性変形可能な被覆材22への取着を説明するための概略図を示す。
【0040】
殊に、カバーシート層28は、導電性コンタクト層30と、弾性変形可能な被覆材22に導電性コンタクト層30を取り付けるために用いられる接着層32とを有する2層構造である。カバーシート層28は、吸着された物品に導電性コンタクト層30が接触し、及びこれに伴って面状吸引グリッパ10の実際の取扱面34をなすように、弾性変形可能な被覆材22に貼付される。
【0041】
接着層32は、両側に接着コーティングを備えている基材フィルム36とともに、殊に2面接着フィルムとして形成されている。殊に、導電性コンタクト層30の方向の接着コーティングは、向かい側の接着層より高い付着力が得られるように形成されている。
【0042】
2層のカバーシート層28が弾性変形可能な被覆材22に貼付される前に、このカバーシート層が3層の出発材料として提供されてもよい(図3を参照)。このことは貯蔵及び輸送を容易にする。このために、特に基材フィルム36の、導電性コンタクト層から離反した側は保護フィルム38を備えている。保護フィルム38は、特に、基材フィルム36から容易に引き剥がすことができるとともに、基材フィルム36の接着コーティングを露出させて残すように形成されている。特に、保護フィルム38の、基材フィルム36の方を向いた側が剥離を容易にするためのシリコーンコーティングを備えていてもよい。保護フィルム38を剥離した後に、導電性コンタクト層30と接着層32とからなる複合体を、弾性変形可能な被覆材22の、ベース部材12から離反した表面に貼付することができる。
【0043】
図3に図示されるように、導電性コンタクト層30、及び殊に接着層32も複数の貫通部40を有している(図3の拡大図を参照)。貫通部40は、弾性変形可能な被覆材22における通路穴26の面密度よりはるかに大きい単位面積当たりの密度で、特にマトリクス状に規則的に配置されている。このことはとりわけ、弾性変形可能な被覆材22へのカバーシート層28の正確な位置決めが必要でないという利点を提供する。
【0044】
導電性コンタクト層30の電気的接触のいくつかの可能性について図4図6をもとにして説明する。
【0045】
カバーシート層28と、特に導電性コンタクト層30とは、取扱面34を越えて延出する突出部42を有している。その場合、突出部42は、弾性変形可能な被覆材22とハウジング底部18との間に位置するように、殊に導電性コンタクト層30がハウジング底部18に触れるように、弾性変形可能な被覆材22の周りに折り曲げられていてもよい。
【0046】
ベース部材側の放電コンタクト44(図5)を提供するために、ハウジング16の上側からベース部材12を通り抜けて突出部42へと、例えばコンタクトピン46(例えば、ねじ)が挿通されていてもよい。
【0047】
ハウジング16自体が非導電性材料からなる場合、コンタクトピン46は、導電性コンタクト層30によって取り込まれる電荷を放出するように定められた接続コンタクト48をなす。しかしコンタクトピン46によって、それ自体導電性に形成されたハウジング16の一部分への、例えば、ハウジングの表面側の溝50への接続が作成されることも考えられ、その場合、この溝に相応の接地コンタクトを係着させることができる。
【0048】
図6は、カバーシート層28若しくは導電性コンタクト層30の相応の突出部42が弾性変形可能な被覆材22の周り、及びハウジング16の側面52の周りに折り曲げられ、ハウジング16の上側54で放電コンタクト44と接続されている実現可能性を示す。このために、例えばコンタクトピン46が突出部42を通り抜けて上側54における相応の溝50に係合してもよい。
【0049】
例えば、カバーシート層28が取扱面34全体ではなく、そのうちの一部分のみ、例えば突出部42の領域のみを覆うことが考えられる。しかし、取扱側14全体がカバーシート層28で覆われていても有利であり得る。
【符号の説明】
【0050】
10 面状吸引グリッパ
12 ベース部材
14 取扱側
16 ハウジング
18 ハウジング底部
20 終端蓋
22 被覆材
24 吸引部
26 通路穴
28 カバーシート層
30 導電性コンタクト層
32 接着層
34 取扱面
36 基材フィルム
38 保護フィルム
40 貫通部
42 突出部
44 放電コンタクト
46 コンタクトピン
48 接続コンタクト
50 溝
52 側面
54 上側

図1
図2
図3
図4
図5
図6