(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】デザインおよびデザインを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A41H 3/00 20060101AFI20240423BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A41H3/00 B
A41H43/00 A
A41H43/00 D
(21)【出願番号】P 2021516824
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 IB2019059012
(87)【国際公開番号】W WO2020084486
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】102018000009722
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521118433
【氏名又は名称】クリスタルディ、テレサ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスタルディ、テレサ
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/30187(WO,A1)
【文献】特開2012-31564(JP,A)
【文献】米国特許第2417473(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0302686(US,A1)
【文献】特許第3049058(JP,B1)
【文献】米国特許第2333155(US,A)
【文献】国際公開第2009/022883(WO,A2)
【文献】実開昭52-129501(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/02-1/08、1/14、3/00-3/08、13/00-13/12、27/00-29/00
A41H3/00-3/08、43/00-43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
専ら天然タイプの繊維から製作されるユーザのための衣料品を定義
するための、前記衣料品のための型紙または前記型紙に対応する前記衣料品であるデザインであって、
前記ユーザの身体に対し地の目で配置された生地を含む少なくとも1つの主要部分と、前記ユーザの前記身体に対しバイアス方向に配置された生地を含む少なくとも1つの第2の部分とを備え、
前記第2の部分は、前記身体の残部よりも、大きな牽引力を受ける前記身体の領域に配置され、前記第2の部分は、前記身体の前記領域の少なくとも一部に似た形状
に形状付けら
れ、
前記第2の部分および前記主要部分の前記繊維が連続的に共に接合されるように曲線軌跡を描くソーイングラインにより、前記第2の部分および前記主要部分は共に接合され、
前記主要部分および前記第2の部分の間の前記ソーイングラインの少なくとも一部が、前記ソーイングラインに向けられたキャビティを有する反対の曲率を画定するカウンタ形状である、
デザイン。
【請求項2】
前記ソーイングラインは、前記第2の部分が配置される前記身体の前記領域によって識別される周囲の少なくとも一部をたどる、請求項
1に記載
のデザイン。
【請求項3】
前
記デザインは複数の前記第2の部分を備え、制御されない変形を回避すべく、前記複数の第2の部分のうちのいずれもが、前記衣料品の同一面沿いで、前記ソーイングラインによって、前記複数の第2の部分のうち別の第2の部分に取り付けられない、請求項
1または2に記載
のデザイン。
【請求項4】
前
記デザイン
が、前記身体の2つの脇の下および2つの背面側の各々の箇所に配置されるように適合された複数の第2の部分を備え
る任意の衣類のアッパーバス
トであり
、前記主要部分が前記身体の前記残部
に配置されるように適合される、請求項1から
3のいずれか一項に記載
のデザイン。
【請求項5】
前
記デザイン
が、スカート
であり、前記第2の部分は、前記身体の背面に配置され
るように適合され、前記主要部分は前記身体の前面に配置される
ように適合される、請求項1から
3のいずれか一項に記載
のデザイン。
【請求項6】
前
記デザイン
がズボ
ンであり、前記第2の部分は、前記身体の臀部とひざとの間の足領域に配置され
るように適合され、前記主要部分は前記身体の前記残部に配置される
ように適合される、請求項1から
3のいずれか一項に記載
のデザイン。
【請求項7】
前
記デザイン
が、ジャケッ
トであり、前記第2の部分は、前記身体の背中の上部に配置される
ように適合される、請求項1から
3のいずれか一項に記載
のデザイン。
【請求項8】
衣料品のための型紙または前記型紙に対応する衣料品であるデザインを製造するための方法であって、
前
記デザインは、1つ
の主要部分を専ら有するよう
に製作され、前記主要部分の周囲が、
前記衣料品の形状と、部分的に、前記衣料品の以降の製作を可能にするソーイング領域とを画定
する、少なくとも1つの段階と、
少なくとも1つ
の第2の部分が、より大きな変形と関連付けられ
る身体の
領域に配置されるように適合された前記デザインの前記領域において
、前記身体の前記領域の少なくとも一部に似た形状に描かれる、フラグメンテーション段階
と
を備
え、
前記第2の部分は、前記主要部分および前記第2の部分間の境界が曲線となり、且つ、前記主要部分および前記第2の部分の繊維の位置合わせを可能にするように、ソーイングラインによって前記主要部分に対し区切られ、
前記ソーイングラインは、前記第2の部分が配置される前記身体の前記領域により識別される前記周囲の少なくとも一部をたどり、
前記衣料品が専ら天然タイプの繊維から製作され、
前記主要部分および前記第2の部分の間の前記ソーイングラインの少なくとも一部が、互いに向けられたキャビティを有する反対の曲率を画定するカウンタ形状である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服デザインおよび/または産業デザイン、並びに、請求項1のプリアンブルに記載されたタイプの上記衣服デザインおよび/または産業デザインを製造するための方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば、ジャケット、シャツ、ズボン、ジーンズ、ドレスおよびブラ等といった、男性、女性および子供用の衣料品を構成し得る、人体に合致するために好適な衣服デザインおよび/または産業デザインをその目的として有する。
【0003】
周知のように、一般に衣服および/または産業ファッションデザインの分野においては、複数の衣料品が製作されており、各衣料品はそれぞれ通常標準化された形状を有する。
【0004】
何世紀にもわたって、正確には1700年以来、テイラーにとっては、マネキンが衣料品のデザインおよび形状を構築するための基礎であった。実際、各衣類は、マネキンの形状および姿勢に適合されていた。特に、ジャケットは、手足が取り得る現実の動きを考慮することなく、デザインされていた。今日でさえも、ジャケットおよび他の多くの衣料品がマネキンの体形を用いて作成されることが一般的であり、人体の動力学の現実からは非常にかけ離れたものとなっている。18世紀より前は、顧客の身体上で直接衣服を製作することが一般的であったが、実用性および快適性の面においては大きな欠点があった。
【0005】
特に、実際、テイラーはかつて、専ら地の目に配置された繊維、すなわち、布地の横縁に対し垂直に裁断された繊維を用いて衣料品を製作しており、ユーザの動きやすさに制約がかかる結果となっていた。幸運なことに、1917年から1939年の間にかけて、フランス人のドレスメーカであるマドレーヌヴィオネが、ドレス全体にバイアスカットを適用し、女性に実用性という比類のない贈り物を与えた。おそらくファッションの歴史において初めて、女性の体形は、その動きにおいて自由となり、人間の自然な外形を推測することが可能となった。
【0006】
この発見は、大量の生地の無駄およびサイドにおける非常に不規則な縫い目を含む多くの制約および欠点を伴うとはいえ、革新的であった。
【0007】
後日、フランスおよびアメリカにおいて、ドレーピングスクールが誕生し、ドレーピングスクールは、完全にマネキン上での衣料品のデザインおよび作成をもたらした。
【0008】
従って、衣服デザインおよび産業デザインのスクールが確立され、その結果、数学的計算および幾何学計算は平坦な紙の表面で行われるようになった。従って、ドレスは、すべて地の目、または、すべてバイアス方向のいずれかで裁断され、その結果、自然な動きを「封じ込める」および束縛する、硬直な快適でない衣類をもたらした。
【0009】
今日まで、問題としているこれらのスクールが産業分野に一般に採択され、衣服デザインおよび/または産業デザインのいわゆるスクールを定義する。
【0010】
これらのスクールは、型紙等の平坦な表面上での計算の使用、数学スキルおよび幾何学スキルの使用を必要とする。
【0011】
通常、ドレスは、すべて地の目か、または、すべてバイアス方向かのいずれかで裁断される。従って、地の目で裁断された衣類は非常に硬直で、しばしば快適さを欠く。
【0012】
要するに、実際、各衣類は、一方向の生地の部分、すなわち、すべて地の目で、または、すべてバイアス方向で裁断された繊維の部分を用いてマネキンの形状および姿勢に適合されているが、ドレスの十分な弾性を保証すべく、しばしば天然以外の繊維を用いている。
【0013】
説明した先行技術は、いくつかの大きな欠点を有している。
【0014】
特に、現在把握されている衣服デザインおよび産業デザインは、臀部および肩等の特定の予め定められた領域において、十分な弾性および強度を可能としない。弾性は、主に非天然の繊維の適合によって部分的に保証されている。この選択の理由は、主に石油由来の弾性繊維が、生地のより大きな変形を可能とするからである。
【0015】
しかしながら、後者は、人間にとって非常に有害であり、環境を汚染する。
【0016】
また、一方向繊維で生地を製作することが必要である。というのは、生地の一部が異なって方向付けられた繊維方向を有する箇所においては、デザイン時点において、縫い目を作成することが不可能であるからである。
【0017】
さらに、現行先行技術は、衣服のデザインを、ユーザの身体に適合できるようにはしておらず、生地が、明らかに完全に静的なマネキンにかろうじて適合できるようにしているに過ぎない。
【0018】
実際、別の重要な欠点は、現在の先端技術により製作された衣類は、ユーザがドレスの中で自由に動けるようにはできず、ユーザのダイナミズムを制約しがちだということに起因するものである。
【0019】
上記の特性の結果、追加の欠点は、現在の従来技術で把握される衣類は、しばしば、生地の低弾性により、および、身体の絶え間ない動きが繊維に残存するという応力により、容易に破損しがちである。
【0020】
この状況において、本発明の基礎にある技術的取り組みは、上記の欠点の少なくとも一部を実質的に克服可能な衣服デザインおよび/または産業デザイン並びに上記衣服デザインおよび/または産業デザインを製造するための関連する方法を創出することである。
【0021】
上記技術的取り組みの範囲において、本発明の重要な目的は、衣服デザインおよび/または産業デザイン、並びに、対象とするユーザの身体上で最終的衣類を容易にモデル化でき、快適さをなくすことなく、下にある筋肉の自然な形状および着用者の形状に適合可能な関連する製造方法を得ることである。
【0022】
本発明の別の重要な目的は、ユーザのダイナミズムを制約せず、例えば筋肉の動きによる動きおよび変形を容易化できる一方、同時に衣類それ自体に三次元性を付与できるデザインを作成することである。
【0023】
最後に、本発明の別の重要な取り組みは、衣類を着用するユーザの広範な動きにすら非常によく耐えるデザインを作成することである。
【0024】
技術的取り組みおよび指定した目的は、衣服デザインおよび/または産業デザイン並びに請求項1に特許請求した上記衣服デザインおよび/または産業デザインを製造するための方法により達成される。
【0025】
従属項に、好ましい実施形態が記載されている。
【0026】
本発明の特徴および利点は、本発明のいくつかの好ましい実施形態についての以下の詳細な説明において、添付図面と照らし合わせて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一組のズボンを製作するために好適な本発明による衣服デザインまたは産業デザインの例を示す。
【
図2a】本発明による衣服デザインまたは産業デザインで製作されたノースリーブ胴着の、ユーザによって着用された例を示す。
【
図2b】
図2aのユーザが着用する、本発明による衣服デザインまたは産業デザインの型紙である。
【
図3a】本発明による衣服デザインまたは産業デザインを用いて製作されたノースリーブ胴着の、ユーザによって着用された第2の例である。
【
図3b】
図3aのユーザが着用する、本発明による衣服デザインまたは産業デザインの型紙を示す。
【
図4】スカートを製作するために好適な本発明による衣服デザインまたは産業デザインの例を示す。
【
図5】ジャケットを製作するために好適な本発明による衣服デザインまたは産業デザインの例であり、ここでは、ユーザの身体の領域に適合する第2のバイアス方向の部分の特定の配置がいっそう明確になっている。
【
図6】人体モデルに重ね合わせられた
図1の衣服デザインまたは産業デザインを表わし、ここでは、ソーイングラインと、特に左臀部および大腿二頭筋における筋肉群の周囲との間の、および、第2の部分と上記筋肉群により区切られた身体の領域との間の、実質的な重なりが明確に見て取れる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この文書において、寸法、値、形状および幾何学的言及(垂直および平行等)が、「約」等の文言または「およそ」若しくは「実質的」等の他の同様の語句と関連付けられる場合、生産誤差および/または製造誤差による測定誤差または不正確さを除外するものとして理解するものとする。とりわけ、当該用語に関連付けられた値、寸法、形状または幾何学的言及からのわずかな逸脱を除外するものとして理解するものとする。例えば、これらの用語がある値と関連付けられている場合、好ましくは、その値の10%を超えない逸脱を示す。
【0029】
さらに、「第1」、「第2」、「より高い」、「より低い」、「主要」および「第2」等の用語が用いられる場合、それらは必ずしも、順序、優先関係または相対位置を識別しておらず、異なるコンポーネント間をより明確に区別するために単に用いられてよい。
【0030】
この文章に含まれる寸法およびデータは、別途の記載がない限り、ICAO International Standard Atmosphere(ISO 2533:1975)で行われたと解釈されるものとする。
【0031】
図面については、本発明による衣服デザインおよび/または産業デザインは、全体として参照符号1で示される。
【0032】
衣服デザインおよび/または産業デザイン1は、本物の衣料品に後から変換されるために好適であることが好ましい。従って、衣服デザインおよび/または産業デザイン1という用語は専ら型紙を指すとは限らなくてよく、直接にドレスを指してよく、型紙の各部分は実質的に、マネキンまたはユーザに着せたドレスの部分に対応する型紙上のコーディングである。
【0033】
従って、衣服デザインおよび/または産業デザイン1は、衣料品の紙上での均等物として理解されたい。
【0034】
従って、デザイン1は、任意のタイプおよび性別のものであってよい。デザイン1は、例えば、最新ファッションのスポーツ衣類またはイブニングドレスであってよく、または当該スポーツ衣類またはイブニングドレスの製作を可能にしてよく、デザイン1は、複数の異なるタイプの裁断を含んでよい。
【0035】
デザイン1は、一組のズボン、ジャケット、スカート、シャツまたは他のタイプの衣類を指してよく、限定はされない。
【0036】
特に、デザイン1は、ユーザ向けであり、上記ユーザの身体の少なくとも一部を覆うのに好適であることが好ましい。衣料品またはデザイン1は、身体の下部分および/または身体の上部分の少なくとも大半を覆うことが好ましい。
【0037】
身体の下部分とは、股間領域および下肢を意味する一方、上領域とは、胴体および上肢を意味する。
【0038】
デザイン1は、好ましくは、少なくとも1つの主要部分2を含む。主要部分は、1若しくは複数のピースまたは1若しくは複数の生地を含んでよく、主要部分において、繊維は地の目に配置される。「地の目」という用語は、仕立て用語であり、デザインを作る生地は、生地の変形をもたらす応力の方向に対し実質的に平行に、または、垂直に向けられた単一方向に配置された繊維を含むことを実質的に示す。
【0039】
また、デザイン1は、好ましくは、1または複数の第2の部分3を含む必要がある。
【0040】
好ましくは、第2の部分3の各々は、それ自身の周囲で特定の領域を区切る生地のピースを画定する。さらに、好ましくは、第2の部分3は、予め定められたデザインから取得されるので、第2の部分は主要部分2と共に、デザイン1が対象とする身体の領域を覆うのに好適である。第2の部分3は、地の目の生地の他の部分に重ね合わせられるべき生地の部分ではなく、対応する領域における地の目の部分を置き換える生地の部分である。従って、デザイン1は、実質的に、主要部分2と第2の部分3とで構成されるパズルで画定される。
【0041】
好ましくは、それぞれの第2の部分3の領域は、対象とするユーザの身体領域と適合性がある。適合性という用語は、特に、第2の部分3が実質的に、第2の部分が配置される身体の領域の少なくとも一部に似た形状に形状付けられることを意味する。
【0042】
例えば、第2の部分3は臀部に配置されてよく、ズボンの後部全体には延在しないが、好ましくは、
図5に示されるように、より大きな変形を行うことができ、変形可能な筋肉の箇所にのみ配置される。基本的に、第2の部分3は、特定のグループの筋束を基に配置され、適合される。第2の部分3は、最も大きな変形を受ける身体の領域に配置されることが好ましく、当該領域は当業者に知られており、当該領域は、生地がより大きな牽引力に晒される領域に対応する。すなわち、その領域において、生地は、ユーザが歩く、座るおよび腕を上げる等の一般的な動きを行ったときに、より「引張」られる。これらの領域は、好ましくは、臀部領域、前腕領域、横バスト領域、脇の下領域および背中の上部である。
【0043】
第2の部分3は、バイアス繊維を含むことが適切である。
【0044】
「バイアス方向」という用語は、仕立て用語であり、繊維が張力の方向に対し実質的に45°で配置される生地の部分を示し、すなわち、その力は生地の当該部分の変形をもたらす。
【0045】
従って、デザイン1は、最も異なる領域に配置される第2の部分3を含んでよい。ジャケットを例にとると、好ましくは主要部分2が中央、前および上袖に配置され、好ましくは横スワッチおよび脇の下スワッチが第2の部分3を含むというこのタイプの構成をデザイン1が有するように、第2の部分3および主要部分2は配置されてよい。一方で、デザイン1がスカートを指す場合、後ろは1または複数の第2の部分3で形成される一方、前は1または複数の主要部分2で形成される。好ましくは、一組のズボンは、フロントウエストおよびバックウエストに主要部分2を含み、臀部はひざまで第2の部分3を含み、残部は主要部分2で製作される。
【0046】
フロントストラップは、第2の部分3を含んでよく、バックストラップは主要部分2を含んでよい。袖に関しては、袖は、下方に第2の部分3を、および上方に主要部分2を含んでよい。
【0047】
概念を一般化させると、既に上記した通り、デザイン1は、衣料品の形状を形成するために好適な少なくとも1つの主要部分2と、より大きな変形を受ける人体の領域において少なくとも1つの第2の部分3を適切に含む。
【0048】
最大の変形を受ける身体の領域は自明であり、生地がより大きな牽引力に晒される領域に対応し、すなわち、当該領域において、ユーザが歩く、座る、腕を上げる等の一般的な動きを行う際に、生地がより「引張」られる。
【0049】
これらの領域は、好ましくは、臀部領域、前腕領域、横バスト領域、脇の下領域、および背中の上部である。
【0050】
デザイン1を製作可能にするには、先行技術の説明において既に上記した通り、従来のステッチを用いることは不可能である。
【0051】
デザイン1は、特定のソーイングライン4を適切に含む。
【0052】
ソーイングライン4は真っ直ぐではなく、好ましくは曲線軌跡を描く。特に、
図3に示されるように、ソーイングラインは、各主要部分2および各第2の部分3の繊維が連続的に一体化されるように、主要部分2および第2の部分3の接合を可能にするのに適した軌跡を描く。
【0053】
もしストレートの縫い目が用いられると、繊維はジグザグになり、衣料品は、運動中に不規則な変形を受け、それにより、審美的に満足するものではない、ユーザにとって心地よくないステッチをもたらすであろう。
【0054】
さらに、ソーイングライン4は、好ましくは、第2の部分3が配置される身体の領域によって識別される周囲の少なくとも一部をたどる。
図5に明確に示されるように、実際、例えば、一組のズボンの後ろ上部にあるソーイングライン4は、臀部によって画定される周囲をたどる。
【0055】
主要部分2と第2の部分3との間のソーイングライン4は、実質的にカウンタ形状であってよく、または、少なくとも部分的に反対の曲率若しくは二重曲率を生成するよう構成されてよい。好ましくは、上記ソーイングライン4の少なくとも一部は、ソーイングライン4に向けられたキャビティを有する反対の曲率を画定するソーイングライン4と面する主要部分2と第2の部分3とを一体化する。
【0056】
好ましくは、この二重曲率は、特に大きな突然の変形、特に圧縮に晒される身体10の領域、例えば、
図1に明示されるズボンの後ろ領域、例えば、
図2bおよび
図5に示される任意の衣類およびジャケットのアッパーバストのサイド領域、および、
図5に示されるようなジャケットの後ろの下領域において画定される。
【0057】
従って、デザイン1は、衣料品を製作するために好適であり、衣料品の繊維は全体が天然である。これらの繊維は、非弾性であることで悪名高いが、第2の部分3の構成が、これらのタイプの繊維を使用できるようにする。このような繊維には、それらが天然であり非弾性である限りにおいて、ウール、綿、シルク、カシミヤ、リネン、レーヨン、ビスコースおよび他の繊維等の材料が含まれてよい。
【0058】
さらに、好ましくは、衣服デザインおよび/または産業デザイン1で製作された衣料品が、複数の第2の部分3を含む場合、上記衣料品の同一面沿いにソーイングライン4により、別の第2の部分3に取り付けられる第2の部分は1つもなく、その結果、制御されない変形を回避する。
【0059】
従って、実質的に、同一面に配置された各第2の部分3は、主要部分のみに囲まれることが好ましく、その結果、生地が望ましくない態様で隆起を画定することが不可能になる。
【0060】
本発明は、具体的に、衣料品のための衣服デザインおよび/または産業デザイン1を製造するための新規な方法を備える。
【0061】
方法は、具体的に、衣服デザインおよび/または産業デザイン1が型紙上で行われる少なくとも1つの定義段階を備える。この段階の間、好ましくは、デザイン1は、1つの主要部分2のみを含み、主要部分2の周囲が衣料品の形状と、部分的に、その後に衣類の製作を可能にするソーイング領域とを画定する。
【0062】
また、方法は、少なくとも1つのフラグメンテーション段階を備え、当該段階において、上記少なくとも1つの第2の部分3が、より大きな変形と関連付けられる身体の領域において、実質的に上記身体の上記領域の少なくとも一部に似た形状に描かれる。
【0063】
これら2つの間の境界が湾曲され、繊維の正しい位置合わせを可能にするように、第2の部分3は主要部分2に対してソーイングライン4によって適切に区切られる。
【0064】
さらに、既に上記したように、2つ以上の第2の部分3が存在する場合、それらのうちのいずれもが、ソーイングライン4により、別の第2の部分3に接続されることがないように、衣料品の同一面が形成されることが好ましい。実際、常に第2の部分3同士は、制御されない変形を回避すべく、分離されていることがより良い。
【0065】
特に、上記の方法を用いて作成された衣服デザインおよび/または産業デザイン1は、衣料品により、これより前の頁で説明した特性と同一の特性を有する。
【0066】
本発明による衣服デザインおよび/または産業デザイン並びに上記デザインを製造するための方法は、大きな利点を達成する。
【0067】
実際、デザイン1の構成は、デザイン1それ自体から得られる衣料品が、当該衣料品の対象ユーザの身体上で容易にモデル化されることを可能にする。
【0068】
特に、身体の筋肉組織に応じて、肩および二頭筋等の筋肉領域の動きが生地によって制約を受けることがないように、第2の部分3を配置することが可能である。
【0069】
実際、一般的な正方形の布を手に取ると、布が引張応力を受けて変形する態様は、布が引っ張られる方向に大きく依存することが容易にわかる。特定の精度で、縦糸および横糸に沿って、すなわち、地の目方向に引っ張ると、布はほとんど伸縮せず、換言すると、布は牽引に対し剛性である。これに対し、繊維にバイアス方向に牽引力をかけると、変形ははるかにより大きなものとなる。
【0070】
この意味において、デザイン1および方法の重要な利点は、衣料品を用いるユーザのダイナミズムを制約せず、且つ、衣類が耐え得る限定的な変形による容易な破損を受けない衣料品を製作することである。
【0071】
最後に、本発明の重要な利点は、天然繊維のみを用いて弾性的デザイン1を製作できるということである。天然繊維で弾性的な衣類を製作できることにより、人間および環境に有害な汚染を大きく低減する。
【0072】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される発明概念の範囲に属する変形を受けやすい。
【0073】
この文脈において、すべての細部は均等な部材で置換可能であり、材料、形状および寸法は、任意の材料、形状および寸法であってよい。