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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019131088
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015761
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝裕
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192134(JP,A)
【文献】特開平5-190214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00 - 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の複数の素線からなる芯線と圧着端子との接続構造であって、
前記圧着端子は、
基底部と前記基底部の両側端から延設された一対の加締め片部を有し、前記芯線を圧着する芯線圧着部と、
一対の前記加締め片部の先端部にそれぞれ設けられたテーパ面とを備え、
一対の前記加締め片部がそれぞれ内側に向かって湾曲状に加締められた状態において、前記各テーパ面は前記各加締め片部における前記素線と直接対向する面に形成され、前記各加締め片部における前記テーパ面が形成された面と反対側の面は互いに密着していることを特徴とする、芯線と圧着端子との接続構造
【請求項2】
請求項1記載の芯線と圧着端子との接続構造であって、
前記テーパ面は、前記先端部の先端に向かって傾斜するストレート面であることを特徴とする、芯線と圧着端子との接続構造
【請求項3】
請求項1記載の芯線と圧着端子との接続構造であって、
前記テーパ面は、前記先端部の先端に向かって湾曲しているアール面であることを特徴とする、芯線と圧着端子との接続構造
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の芯線と圧着端子との接続構造であって、
一対の前記加締め片部がそれぞれ内側に向かって湾曲状に加締められた状態において、一対の前記加締め片部は、各加締め片部における前記テーパ面が形成された面と反対側の面が互いに密着した状態で、前記芯線に入り込むことを特徴とする、芯線と圧着端子との接続構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に接続する圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に圧着する圧着端子の従来例が図6図9に示されている(特許文献1、2参照)。図6及び図7において、圧着端子110を接続する電線Wは、複数の素線101aからなる芯線101と芯線101の外周を覆う絶縁外皮102とから構成されている。電線Wの先端側は、絶縁外皮102が除去されて芯線101が露出されている。
【0003】
圧着端子110は、相手端子接続部111と電線接続部115を有する。電線接続部115は、芯線圧着部116と外皮圧着部117を有する。芯線圧着部116は、基底部116aとこの基底部116aの両側から延設された一対の加締め片部116bを有する。外皮圧着部117は、基底部117aとこの基底部117aの両側から延設された一対の加締め片部117bを有する。
【0004】
圧着端子110は、芯線圧着部116によって露出された芯線101を加締め圧着し、外皮圧着部117によって絶縁外皮102を加締め圧着している。
【0005】
芯線圧着部116の加締め圧着は、加締め治具140によって行われる。加締め治具140は、図8(a)~(c)に示すように、アンビル141と、加締め先端側に最終的な加締め外周形状の加締め溝142aを有するクリンパ142とを有する。図8(a)に示すように、アンビル141の上面に芯線圧着部116を載置し、上方よりクリンパ142を降下させる。すると、図8(b)に示すように、アンビル141及びクリンパ142が基底部116a及び一対の加締め片部116bを押圧して芯線101の外周を包み込むように塑性変形すると共に、一対の加締め片部116bの先端部120が芯線1内に食い込む。
【0006】
ここで、一対の加締め片部116bの先端部120には、テーパ面120aが形成されているため、一対の加締め片部116bの先端部120が芯線101内に食い込み易い。そして、アンビル141とクリンパ142による最終加締め位置において、図8(c)に示すように、一対の加締め片部116bの先端部120が芯線1内に十分に食い込んだ状態で加締め圧着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-123623号公報
【文献】特開2003-59612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図9に示すように、加締め圧着過程にあって、一対の加締め片部116bの先端部120のテーパ面120aには芯線101からの反力R2がそれぞれ作用し、この反力R2が一対の加締め片部116bの先端部120を互いに離間する方向に作用する。これにより、一対の加締め片部116bの先端部は、互いに異なる方向に向かって入り込む。そのため、一対の加締め片部116bの芯線101への入り込み寸法が長いと、図7(b)にて仮想線で示すように、芯線101が三分割、若しくは三分割に近い状態となる。このような状態になると、各分割領域には圧縮差が発生し、安定した導通抵抗が得られない。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、一対の加締め片部の先端が確実に芯線に食い込み、且つ、電線との間で安定した導通抵抗が得られる圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基底部と前記基底部の両側端から延設された一対の加締め片部を有し、電線の複数の素線からなる芯線を圧着する芯線圧着部と、前記各加締め片部がそれぞれ内側に向かって湾曲状に加締められた状態で互いに対向する面にそれぞれ設けられたテーパ面とを備えたことを特徴とする圧着端子である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、芯線圧着部の加締め圧着過程で、一対の加締め片部の先端部にはテーパ面が設けられているため、芯線に容易に入り込む。そして、一対の加締め片部が芯線に入り込む過程で各テーパ面が芯線より互いに密着する方向の反力を受けるため、一対の加締め片部が直線方向に芯線に入り込む。以上より、各加締め片部の先端が確実に芯線内に入り込み、且つ、電線との間の導通抵抗が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は圧着端子に電線を圧着する前の斜視図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は電線を圧着した圧着端子の側面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、(a)~(c)はそれぞれ加締め過程を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、一対の加締め片部が芯線より受ける反力を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態の変形例を示し、(a)は芯線を圧着する前の芯線圧着部の断面図(図1(b)に相当する図)、(b)は一対の加締め片部が芯線より受ける反力を説明する図(図4に相当する図)である。
図6】従来例を示し、(a)は圧着端子に電線を圧着する前の斜視図、(b)は(a)のC-C線断面図である。
図7】従来例を示し、(a)は電線を圧着した圧着端子の側面図、(b)は(a)のD-D線断面図である。
図8】従来例を示し、(a)~(c)はそれぞれ加締め過程を示す断面図である。
図9】従来例を示し、一対の加締め片部が芯線より受ける反力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図4は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、電線Wは、複数の素線1aからなる芯線1と芯線1の外周を覆う絶縁外皮2とから構成されている。電線Wの先端側は、絶縁外皮2が除去されて芯線1が露出されている。芯線1は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製(以下、アルミ製)の多数の素線1aからなり、多数の素線1aが互いに撚られている。つまり、電線Wは、アルミ電線である。
【0015】
圧着端子10は、例えば銅合金製であり、所定形状に裁断したプレートを折り曲げ加工することによって形成されている。圧着端子10は、相手端子接続部11と電線接続部15を有する。電線接続部15は、芯線圧着部16と外皮圧着部17を有する。芯線圧着部16は、基底部16aとこの基底部16aの両側端から延設された一対の加締め片部16bを有する。一対の加締め片部16bは、図1等に示すように、電線Wを圧着する前の状態にあって、それぞれ先端に向かうに従って互いの間隔が徐々に離間する外斜めに延びるストレート形状である。
【0016】
一対の加締め片部16bの先端部18には、テーパ面18aが設けられている。テーパ面18aは、図1(b)等に示すように、芯線1の圧着前の状態にあって、それぞれの外面に配置されるが、一対の加締め片部16bがそれぞれ内側に向かって湾曲状に加締められた状態(図2(b)参照)にあって、互いに対向する内面にそれぞれ配置される。一対の加締め片部16bの先端部18は、テーパ面18aによって先端に向かって徐々に肉厚が薄くなっている。テーパ面18aは、先端部18の先端に向かって傾斜するストレート面である。
【0017】
外皮圧着部17は、基底部17aとこの基底部17aの両側から延設された一対の加締め片部17bを有する。
【0018】
圧着端子10は、芯線圧着部16によって露出された芯線1を加締め圧着し、外皮圧着部17によって絶縁外皮2を加締め圧着している。
【0019】
圧着端子10は、加締め治具20によって圧着される。図3に示すように、加締め治具20は、アンビル21と、アンビル21に対して昇降するクリンパ22とを有する。アンビル21の上面21aは、芯線圧着部16の主に基底部16aの最終的な加締め外周形状に形成されている。クリンパ22の下方側には、加締め溝22aが形成されている。加締め溝22aは、芯線圧着部16の一対の加締め片部16bの最終的な加締め外周形状を有する。
【0020】
次に、加締め治具20を用いた芯線圧着部16の圧着過程を説明する。図3(a)に示すように、アンビル21の上面21aに芯線圧着部16を載置する。次に、上方よりクリンパ22を降下させる。すると、クリンパ22が一対の加締め片部16bを押圧し、先端に向かって外方に開く形状の一対の加締め片部16bが互いの間隔を狭める方向に塑性変形される。クリンパ22が更に降下されると、図3(b)に示すように、アンビル21及びクリンパ22が基底部16a及び一対の加締め片部16bを押圧して芯線1の外周を包み込むように塑性変形すると共に一対の加締め片部16bの先端部18が芯線1に入り込む。一対の加締め片部16bの先端部18は、芯線1に対してほぼ垂直方向(芯線1のほぼ中心に向かう方向)を入り込む。
【0021】
ここで、一対の加締め片部16bの先端部18にはテーパ面18aに設けられているため、芯線1に容易に入り込む。そして、図4にて示すように、一対の加締め片部16bが芯線1に入り込む過程で各テーパ面18aが芯線1より反力R1(図4の破線は、反力R1の分力を示す)を受けるが、この反力R1は一対の加締め片部16bを互いに密着する方向に作用するため、一対の加締め片部16bが一体となって直線方向に沿って芯線1に入り込む。そして、アンビル21とクリンパ22による最終加締め位置において、図3(c)に示すように、一対の加締め片部16bの先端部18が芯線1内に直線方向に十分に食い込んだ状態で加締め圧着される。
【0022】
以上説明したように、圧着端子10は、基底部16aと基底部16aの両側端から延設された一対の加締め片部16bを有し、電線Wの複数の素線1aからなる芯線1を圧着する芯線圧着部16と、一対の加締め片部16bの先端部に設けられ、各加締め片部16bがそれぞれ内側に向かって湾曲状に加締められた状態で互いに対向する面にそれぞれ設けられたテーパ面18aとを備えている。
【0023】
従って、上記したように、芯線圧着部16の加締め圧着過程で、一対の加締め片部16bの先端部18にはテーパ面18aが設けられているため、芯線1に容易に入り込む。そして、一対の加締め片部16bが芯線1に入り込む過程で各テーパ面18aが芯線1より互いに密着する方向の反力R1を受けるため、一対の加締め片部16bが直線方向に沿って芯線1に入り込む。これにより、一対の加締め片部16bが芯線1を三分割せず、芯線1内に圧縮差が発生しない。以上より、各加締め片部16bの先端部18が確実に芯線1内に入り込み、且つ、電線Wとの間の導通抵抗が安定する。
【0024】
図5には、テーパ面18aの変形例が示されている。前記実施形態では、テーパ面18aがストレート面であったが、この変形例ではテーパ面18aはアール面である。一対の加締め片部16bの先端部18は、テーパ面18aによって先端に向かって徐々に肉厚が薄くなっている。
【0025】
この変形例のテーパ面18aでも前記実施形態と同様な作用、効果がある。
【0026】
実施形態では、芯線1がアルミ製であるが、本発明はアルミ製以外の芯線1(例えば銅合金製)であっても適用できる。
【符号の説明】
【0027】
W 電線
1 芯線
1a 素線
10 圧着端子
16 芯線圧着部
16a 基底部
16b 加締め片部
18 先端部
18a テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9