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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】診断装置および電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/17 20160101AFI20240423BHJP
【FI】
H02P6/17
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019141110
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021027607
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】成田 浩昭
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143035(JP,A)
【文献】特表2006-515500(JP,A)
【文献】特開2006-162309(JP,A)
【文献】特開2003-255028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/331296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが有するN相(ただし、Nは2以上の整数)の巻線のうち前記N相よりも少ないM相(ただし、Mは整数)の巻線のみについて誘起電圧定数を測定する測定回路と、
前記測定回路によって測定された前記誘起電圧定数に基づいて前記モータの状態を診断する診断回路とを備える、
診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された診断装置において、
前記測定回路は、前記M相の巻線として1相の巻線のみについて前記誘起電圧定数を測定する、
診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された診断装置において、
前記診断回路は、前記誘起電圧定数が所定の範囲内にあるときは、前記モータは第1の状態にあると判断し、前記誘起電圧定数が所定の範囲内にないときは、前記モータは第2の状態にあると判断
前記測定回路は、前記モータとバルブの弁体に連結され前記モータにより回転する回転軸とを備える電動アクチュエータに設けられ、
前記診断回路は、前記電動アクチュエータが設置される現場の作業員が持ち運んで使用するように構成されたモバイル端末コンピュータに設けられ、前記モバイル端末コンピュータが前記電動アクチュエータとの近距離無線通信で受信した前記誘起電圧定数に基づいて前記モータの状態を診断する
診断装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された診断装置において、
前記測定回路は、前記モータに流れる電流と、前記モータの巻線に印加される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記誘起電圧定数を算出する演算装置を有する、
診断装置。
【請求項5】
請求項に記載された診断装置において、
前記モバイル端末コンピュータに設けられ、前記モバイル端末コンピュータが前記電動アクチュエータとの近距離無線通信で受信した前記誘起電圧定数を出力データとして前記モバイル端末コンピュータの表示装置に出力する出力回路をさらに備え、
前記出力回路は、前記誘起電圧定数の時系列データを出力データとして前記表示装置に出力する、
診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載された診断装置と、
前記モータと、
前記モータの回転に応じて変位する出力機構と、
前記モータの前記N相の巻線に電流を供給して前記モータを回転させる駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御回路と、
を備える電動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記診断装置の前記測定回路は、前記駆動回路を流れる電流と、前記駆動回路に入力される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記誘起電圧定数を算出する演算装置を有する、
電動アクチュエータ。
【請求項8】
請求項またはに記載された電動アクチュエータにおいて、
前記モータは、永久磁石を備えたロータと、前記ロータの磁極と対向する位置に配設された前記N相の巻線とを有するブラシレス直流モータである、
電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置および電動アクチュエータに関し、特に、電動アクチュエータのモータの診断を行う診断装置およびその診断装置を含む電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動アクチュエータは、駆動装置となるモータの回転に応じて、出力機構を機械的に変位させる装置であり、様々な分野で利用されている。例えば、特許文献1には、ボール弁等のロータリ式の調節弁の弁軸を操作する電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータでは、バルブの弁体に連結された回転軸にモータの回転をギアその他の伝達機構を介して伝達して、この回転軸を回動させるとともに、回転軸の回転方向の機械的変位、すなわち回転角を、可変抵抗器から成るポテンショメータなどの位置センサによって検出し、その検出結果に基づいて回転軸の操作量を決定している。
【0003】
また、特許文献2には、駆動装置となるモータとして、三相ブラシレス直流モータを用いた電動アクチュエータが開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、ブラシレス直流モータのホール素子の故障を検出する技術が開示されている。また、特許文献4には、多相モータの一部のコイルが断線し、その後他の相と短絡するような故障状態の変化を判定して、これに対応した制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-74935号公報
【文献】特開2005-65452号公報
【文献】特開2001-161089号公報
【文献】特許第4919096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電動アクチュエータは、定期的に点検および保守が行われるとしても、実際に不具合が生じたときには、作業員が現場に赴き、しばしばその不具合の原因を特定する作業から始めなければならず、その負担は小さくない。また、原因の特定や修理のために、電動アクチュエータのみならず、その電動アクチュエータを含むシステム全体の使用を臨時に中止しなければならないこともある。このようなシステムの使用中止を回避するとともに、点検・修理の負担を軽減することは、人手不足の問題を抱える中で、緊急の課題ともいえる。このような課題を解決する手段として、電動アクチュエータの故障診断を不具合が発生する前から適宜行うことが有効であると考えられる。
【0007】
しかしながら、従来の電動アクチュエータにおいて、モータ等の故障診断を行っているものはない。そのため、使用中の電動アクチュエータに実際に不具合が生じた場合には、その対応に手間がかかっていた。
【0008】
そこで、本発明は、モータの状態の診断を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る診断装置は、モータの誘起電圧定数を測定する測定回路(71)と、前記測定回路によって測定された前記誘起電圧定数に基づいて前記モータの状態を診断する診断回路(72)とを備える。
【0010】
本発明に係る診断装置の一実施の形態において、前記診断回路は、前記誘起電圧定数が所定の範囲内にあるときは、前記モータは第1の状態にあると判断し、前記誘起電圧定数が所定の範囲内にないときは、前記モータは第2の状態にあると判断するように構成することができる。
【0011】
また、本発明に係る診断装置の一実施の形態において、前記測定回路は、前記モータに流れる電流と、前記モータの巻線に印加される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記誘起電圧定数を算出する演算装置(701)を有する。
【0012】
また、本発明に係る診断装置の一実施の形態において、診断装置は、前記測定回路によって測定された前記誘起電圧定数を出力データとして外部に出力する出力回路(73)をさらに備えていてもよい。
【0013】
この場合、前記出力回路は、前記測定回路によって測定された前記誘起電圧定数の時系列データを出力データとして外部に出力するように構成してもよい。
【0014】
また、本発明に係る診断装置の一実施の形態において、診断装置は、無線通信により前記出力データを入出力することを可能にする無線通信インターフェース回路、および/または、前記出力データをネットワークを介して入出力するネットワーク・インターフェース回路をさらに含むように構成してもよい。
【0015】
また、本発明に係る電動アクチュエータは、複数の巻線(U,V,W)を備えたモータ(10)と、前記複数の巻線に電流を供給して前記モータを回転させる駆動回路(60)と、前記モータの回転に応じて変位する出力機構(30)と、前記駆動回路を制御する制御回路(50)と、前記モータの診断を行う診断装置(70)とを備え、前記診断装置は、上述した診断装置のいずれかである。
【0016】
本発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態において、前記診断装置の前記測定回路は、前記駆動回路を流れる電流と、前記駆動回路に入力される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記誘起電圧定数を算出する演算装置(701)を有する。
【0017】
本発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態において、前記モータは、永久磁石を備えたロータ(11)と、前記ロータの磁極と対向する位置に配設された前記複数の巻線(U,V,W)とを有するブラシレス直流モータとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モータの誘起電圧定数に基づいて、モータの状態を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータおよびその駆動回路の構成例を示す図である。
図3A図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータの動作とホールセンサの関係を示す図である。
図3B図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるホールセンサの出力の例を説明する図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータの動作とホールセンサの出力との関係を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの診断装置のハードウェア構成を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの診断の手順を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電動アクチュエータの診断の他の手順を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
図9図9は、端末装置のハードウェア構成を示す図である。
図10図10は、本発明の第3の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るモータの診断装置および電動アクチュエータの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータは、モータの誘起電圧定数KEをモニターして故障診断を行う機能を備えている。
【0022】
[電動アクチュエータの構成]
図1に示すように、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100は、モータ10と、モータ10の回転を伝達する伝達機構となる減速機20と、減速機20を介して伝達されるモータ10の回転に応じて軸線周りに回動する回転軸30と、モータ10の回転を制御する制御回路50と、制御回路50からの制御信号に基づいてモータ10を回転させる駆動回路60と、モータ10の診断を行う診断装置70とを備えている。このうち、モータ10と、減速機20と、回転軸30の一部と、角度センサ40と、制御回路50と、駆動回路60は、筐体80の中に収容されている。また、後述する診断の結果を含め、各種情報を表示する表示装置90が設けられている。表示装置90としては、例えば、液晶表示装置(LCD)等を用いることができる。
【0023】
上述した構成要素のうち、モータ10は、本実施の形態においては、三相のブラシレス直流モータである。図2に駆動回路60とモータ10との構成例を示し、図3Aにモータ10の構成例を示す。モータ10は、モータ軸に直交する方向に分極した永久磁石11mを有するロータ11と、このロータ11が軸線周りに回転する過程で永久磁石11mの磁極と対向するように配置され、スター結線された3つの巻線U、V、Wとからなる。なお、図3Aにおいてロータ11の軸受等の構成要素は省略されている。
【0024】
また、図3Aに示すように、モータ10には、3つのホールセンサHU、HV、HWが、モータ軸を中心に互いに120°間隔をあけて設けられている。例えば、図3Aは、ロータ11の永久磁石11mによる磁界がV相のホールセンサHVの方向を向いている。このときの各ホールセンサから出力される信号は、図3Bに示すように、V相のホールセンサHVの信号が「H」レベルを示すのに対し、他の2相、すなわちU相とW相のホールセンサHU、HWの信号は、いずれも「L」レベルとなる。これらホールセンサHU、HV、HWの信号はロータ11の回転にともなって変化することから、モータ10の回転を検出するセンサとして機能する。
【0025】
一方、駆動回路60は、図2に示すように、巻線U、V、Wの各相に対応して並列に設けられた3対のMOSFET Quu、Qul;Qvu、Qvl;Qwu、Qwlを備えている。各対のMOSFETは、互いに直列に接続され、制御回路50がこれらのMOSFETを適宜オン/オフすることによって、モータ10の3つの巻線U,V,Wのうち通電する相、すなわち巻線と、その電流の方向、すなわちその巻線によって生じる磁界の方向を切り替えることができる。
【0026】
制御回路50は、ホールセンサHU、HV、HWから出力される信号に応じて、駆動回路60の上記のMOSFETのオン/オフを切り替えて、図4に示すように、通電する相とその通電する方向を切り替え、6つの通電パターンを順次切り替えていくことによって回転磁界を生成して、モータ10を回転させることができる。
【0027】
また、制御回路50は、モータ10の巻線U,V,Wの通電状態を示す信号Sとモータ10の角速度ωを後述する診断装置70に出力する。
【0028】
ここで、モータ10の巻線U,V,Wの通電状態とは、3つの巻線U,V,Wのうち通電している2つの巻線の組み合わせを指し、例えば、図4に示すような「状態A」、「状態B」、「状態C」がここでいう「通電状態」に該当する。
なお、三相のブラシレス直流モータの場合、電流の方向も考慮すると、6通りの通電状態を特定することもできるが、誘起電圧定数KEを求める目的からすれば、電流の方向を考慮せずに、図4に示すような「状態A」、「状態B」、「状態C」の3通りを特定できれば必要かつ十分である。
また、本実施の形態においては、モータ10の角速度ωは、制御回路50が、ホールセンサHU、HV、HWから出力される信号に基づいて算出する。
【0029】
また、制御回路50は、目標角度θspと角度センサ40によって検出される回転軸30の回転角度θptとの偏差に応じて操作量を決定し、駆動回路60を動作させることによってモータ10の回転を制御する。より具体的には、制御回路50は、目標角度θspと角度センサ40によって検出される回転軸30の回転角度θptとの偏差に応じて操作量OAを決定し、駆動回路60にこの操作量OAに応じた駆動信号Dを与える。例えば、一般的な比例制御(P制御)の場合は、OA=α(θsp-θpt)(ただし、αは比例定数)よって算出される。制御回路50は、このようにして求められた操作量OAとモータ10の状態を表すホールセンサHU、HV、HWの信号とに基づいて、図2に示すような駆動回路60のMOSFETをオン/オフさせる駆動信号Dを生成して出力する。
【0030】
なお、上述した比例制御は、モータ10または回転軸30の回転角度の制御の一例にすぎず、本発明においては、例えば、PD制御、PID制御の他、ニューラルネットワークモデルその他のモデルを用いたモデル制御など、どのような制御手法を用いていてもよい。
【0031】
減速機20は、互いに組み合わされた複数のギアから構成されるが、チェーンやベルトを組み合わせた機構であってもよい。
【0032】
回転軸30は、剛性の高い金属等から形成された棒状の部材であり、一端が減速機20の出力端に連結されるとともに、筐体80にその軸線周りに回動可能に支持される。図示はしないが、回転軸30の他端は、バルブの弁体その他、操作対象要素に連結される。
【0033】
角度センサ40は、回転軸30の回転方向の機械的変位、すなわち回転角を検出するセンサである。このような角度センサ40は、回転軸30の、任意の基準位置からの絶対的な回転角を検出するアブソリュートセンサであることが望ましい。この角度センサ40として、例えば、可変抵抗器から成るポテンショメータを用いることができる。
【0034】
[診断装置の構成]
診断装置70は、図1に示すように、モータ10の各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEを測定する測定回路71と、測定回路71によって測定された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEに基づいて、モータ10の状態を診断する診断回路72とを備えている。また、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100の診断装置70においては、診断回路72による診断結果のほか、測定回路71によって測定された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEを出力データとして外部に出力する出力回路73をさらに備えている。
【0035】
モータ10においては、ロータ11が回転すると、電流を流している巻線に永久磁石11mとの電磁誘導作用により、誘起電圧が発生する。この誘起電圧は、モータの回転が速くなるほど大きくなる。誘起電圧は、モータの角速度に比例することから、この比例定数を誘起電圧定数KEという。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、診断装置70に一部を構成する測定回路71は、図1に示すように、制御回路50から出力される、モータの各巻線の通電状態を示す信号Sおよびモータの角速度ω、ならびに駆動回路60に印加される電圧Ea、および駆動回路60からモータ10に供給される電流Iから、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEを算出するように構成されている。
【0037】
なお、誘起電圧定数KE[V・s/rad]と、モータ10に流れる電流Iとそのときに得られるトルクとの比であるトルク定数KT[N・m/A]とは、SI単位系では同じ値になる。したがって、誘起電圧定数KEを診断することは、トルク定数KTも診断できる。
【0038】
上述した診断装置70のハードウェア構成の例を図5に示す。診断装置70は、バス704を介して互いに通信可能に接続された演算装置701、メモリ702、I/F回路703を含むコンピュータと、このコンピュータにインストールされたコンピュータプログラムとから構成することができる。この場合、コンピュータを構成する各種ハードウェア資源がコンピュータプログラムにしたがって協働することにより、このコンピュータが上述した測定回路71、診断回路72、出力回路73の機能を実現する。
【0039】
[測定回路による誘起電圧定数KEの測定と診断回路によるモータの診断]
次に、測定回路71による各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの測定と、それに続く診断回路72によるモータの診断について図2図4、および図6を参照して説明する。
【0040】
[測定回路による誘起電圧定数KEの測定]
上述したように、測定回路71は、制御回路50から出力される、モータの各巻線の通電状態を示す信号Sおよびモータの角速度ωと、駆動回路60に印加する電圧Eaおよび電流Iから、図6に示す手順に従って、次のようにして各巻線U,V,Wの誘起電圧定数を算出する。
【0041】
駆動回路60に電圧Eaを印加するとともに、駆動回路60を制御してモータ10を回転させた状態において、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QuuとQvlがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態A」)におけるモータ10の角速度ω1を取得し(ステップS01)、この状態における時間t0のときの電流I0、および、時間t1(>t0)のときの電流I1を測定する(ステップS02およびS03)。
【0042】
このとき、通電している巻線U,Vの誘起電圧定数KEuおよびKEvは、次の式(1)~(3)で表される。ただし、以下においてRu,Rv,RwおよびLu,Lv,Lwは、それぞれ各巻線U,V,Wの抵抗およびインダクタンスである。また、Rqは、駆動回路60を構成する各MOSFETのオン抵抗を表す。
【0043】
【数1】
【0044】
次に、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QvuとQwlとがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態B」)におけるモータ10の角速度ω2を取得し(ステップS04)、この状態における時間t2のときの電流I2と、時間t3(>t2)のときの電流I3を測定する(ステップS05およびS06)。
【0045】
このとき、通電している巻線V,Wの誘起電圧定数KEvおよびKEwは、次の式(4)~(6)で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
次に、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QuuとQwlとがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態C」)におけるモータ10の角速度ω3を取得し(ステップS07)、この状態における時間t4のときの電流I4と、時間t5(>t4)のときの電流I5を測定する(ステップS08およびS09)。
【0048】
このとき、通電している巻線U,Wの誘起電圧定数KEuおよびKEwは、次の式(7)~(9)で表される。
【0049】
【数3】
【0050】
上記の式(3)、式(6)、式(9)より、式(10)が得られる。
【0051】
【数4】
【0052】
すると、上記の式(10)と、式(6)、(9)および(3)より、各巻線の誘起電圧定数KEu,KEvおよびKEwはそれぞれ次の式(11)、(12)および(13)で表される。
【0053】
【数5】
【0054】
したがって、各巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,RwおよびインダクタンスLu,Lv,Lw、ならびに駆動回路60を構成する各MOSFETのオン抵抗Rqが既知であるので、測定回路71は上記の式(11)、(12)および(13)に基づいて各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwを算出する(ステップS10)。
【0055】
なお、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100の駆動回路60については、MOSFETより構成される例に基づいて説明したが、MOSFETの他にトランジスタを用いてもよい。ただし、トランジスタを用いた場合は、トランジスタの飽和電圧をVce、その時に回路に流れた電流をIとすれば、上記のオン抵抗Rqは、次の式に置き換える。
【0056】
Rq =Vce/I
【0057】
[診断回路によるモータの診断]
測定回路71によって測定された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwは、測定回路71から診断回路72に送られる。診断回路72は、測定回路71によって測定された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwがすべて所定の範囲内にあるときは、モータ10は第1の状態にあると判断し、誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのうち少なくともいずれか1つが所定の範囲内にないときは、モータ10は第1の状態とは異なる第2の状態にあると判断する。
【0058】
例えば、診断回路72は、測定回路71によって測定された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwがすべて正常な値の範囲内にあるとき(ステップS11:YES)は、誘起電圧定数KEu,KEv,KEwは正常であり(ステップS12)、よって、モータ10は正常であると判断する。一方、誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのうち少なくともいずれか1つが正常な値の範囲内にないときは(ステップS11:NO)、誘起電圧定数KEu,KEv,KEwは異常であり(ステップS13)、したがって、モータ10は故障している可能性があると判断する。
【0059】
より具体的な例を挙げると、診断回路72は、電動アクチュエータ100の工場出荷時における各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwをメモリ702に記憶しておき、この工場出荷時における誘起電圧定数KEu,KEv,KEwと測定回路71が測定した各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwとを比較するように構成する。診断回路72は、測定回路71による各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのすべてが、所定の範囲内、例えば、工場出荷時における誘起電圧定数KEu,KEv,KEwをそれぞれ基準として±10%の範囲内にあれば、正常な状態にあると診断する一方、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの少なくともいずれか1つが上記の±10%の範囲内にないときには、故障もしくは何らかの異常がある状態、または点検が必要となりつつある状態と診断する。
【0060】
この診断回路72による診断の結果は、出力回路73から外部に出力され、例えば、オペレータによる操作に応じて、表示装置90に表示される。特に、モータ10に故障もしくは何らかの異常がある状態と診断されたときには、メンテナンスを促すメッセージを表示装置90に表示するように構成してもよい。
【0061】
[変形例]
上述した誘起電圧定数KEの測定方法は、モータ10の角速度ωが変動する場合に対応したものであるが、仮に角速度ωが一定であるならば、誘起電圧定数KEの測定は、例えば図7に示すように簡略化することができる。
【0062】
まず、駆動回路60に電圧Eaを印加するとともに、駆動回路60を制御してモータ10を角速度ωで回転させる(ステップS21)。この状態において、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QuuとQvlがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態A」)における時間t0のときの電流I0、および、時間t1(>t0)のときの電流I1を測定する(ステップS22およびS23)。このとき、通電している巻線U,Vの誘起電圧定数KEuおよびKEvは、次の式(14)で表される。
【0063】
【数6】
【0064】
次に、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QvuとQwlとがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態B」)における時間t2のときの電流I2と、時間t3(>t2)のときの電流I3を測定する(ステップS24およびS25)。このとき、通電している巻線U,Wの誘起電圧定数KEuおよびKEwは、次の式(15)で表される。
【0065】
【数7】
【0066】
次に、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QuuとQwlとがオンし、他のMOSFETがオフの状態(図4に示す「状態C」)における時間t4のときの電流I4と、時間t5(>t4)のときの電流I5を測定する(ステップS26およびS27)。このとき、通電している巻線U,Wの誘起電圧定数KEuおよびKEwは、次の式(16)で表される。
【0067】
【数8】
【0068】
上記の式(14)、式(15)、式(16)より、式(17)が得られる。
【0069】
【数9】
【0070】
すると、上記の式(17)と、式(15)、(16)および(14)より、各巻線の誘起電圧定数KEu,KEv,およびKEwは、それぞれ次の式(18)、(19)および(20)で表される。
【0071】
【数10】
【0072】
したがって、各巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,RwおよびインダクタンスLu,Lv,Lw、ならびに駆動回路60を構成する各MOSFETのオン抵抗Rqが既知であるので、測定回路71は上記の式(18)、(19)および(20)に基づいて各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwを算出する(ステップS28)。
以上のようにして、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwを測定することができる。なお、図8に示すステップS09以降の診断に関わる手順は、図6に示すステップS10以降と同一であるので、説明は省略する。
【0073】
[第1の実施の形態の効果]
本実施の形態に係るモータの診断装置によれば、モータ10の各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwに基づいてモータ10の状態を診断するので、電動アクチュエータ100のモータの状態の診断が可能となる。
また、電動アクチュエータにおいてモータのみの状態について診断ができるので、電動アクチュエータを停止させなくても、故障箇所を特定することができる。したがて、メンテナンスの作業負担を軽減することができる。
さらに、モータの各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのトレンドをモニターすることにより、バルブの故障診断などの予防保全に適用できる。また、モータの各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの最新値を使用することにより非干渉制御の精度向上に貢献できる。
【0074】
また、本実施の形態に係る電動アクチュエータを弁の開閉に用いた場合には、次のような効果を得ることができる。
【0075】
本実施の形態に係る電動アクチュエータを弁の開閉に用いた場合には、誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTの測定値を容易に把握できるため、当初の設計値からの乖離幅に応じて、誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTの劣化状態を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。これにより、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、駆動回路や制御回路など、電動アクチュエータの既存構成を用いて劣化指標を容易に計算でき、回路規模さらには製品コストの増大を必要とすることなく、極めて簡素な構成であり、電動アクチュエータの信頼性を高めることが可能となる。
【0076】
この際、測定回路71が誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTを定期的に計算し、データ通信により上位装置へ順次通知してもよい。さらには、測定回路71が算出した誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTをメモリ702に時系列データとして順次保存しておき、この時系列データから生成した近似関数に基づき将来の誘起電圧定数KEの推定値KE’またはトルク定数KTの推定値KT’を推定し、この推定値KE’または推定値KT’が正常範囲Eから離脱する時期を注意点として予測するようにしてもよい。これにより、モータの劣化時期すなわち交換時期を予測することができる。
【0077】
また、誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTの経時変化を、診断回路72や上位装置でモニタすることにより、モータの劣化時期すなわち交換時期を予測でき、流量制御バルブや風量調整ダンパーなどの予知保全に極めて有用である。また、誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTの算出時には、極めて短い時間で済むため、アプリケーションによっては、通常の運転動作中であっても劣化指標計算を行うことができる。したがって、劣化指標処理動作を定期的に実行することにより、誘起電圧定数KEまたはトルク定数KTの劣化状態の変化をいち早く検出でき、迅速な対応をとることが可能となる。
【0078】
[第1の実施の形態の変形例]
なお、本実施の形態においては、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwを求める際にMOSFETのオン抵抗Rqを考慮しているが、このオン抵抗Rqが巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,Rwに比べて無視できるほど小さいのであれば、上記の各式においてRq=0としてもよい。このようにすることで計算時間を短縮することができる。
【0079】
また、各巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,Rwの値、および/または、インダクタンスLu,Lv,Lwの値がそれぞれ同値であるとすれば、上記の演算処理をより簡略化することができる。したがって、演算装置701の演算能力が限られていても、診断装置を実現しやすくなる。また、演算時間も短縮できる。
【0080】
また、本実施の形態においては、3つの巻線U,V,Wそれぞれの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwを求めるものとして説明したが、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwが互いに等しい(KEu=KEv=KEw)との前提のもとに、3つの巻線U,V,Wのうちの少なくともいずれか1つの誘起電圧定数KEを測定するようにしてもよい。このようにすることでQuuとQvl、QvuとQwl、QuuとQwlのうちいずれかのみをオンさせた状態における1回の測定で巻線抵抗を算出することができ、計算時間を短縮することができる。
【0081】
さらに、上述した三種類の簡略化手法を組み合わせることによって、計算時間の短縮を図ることができる。
【0082】
また、本実施の形態において、診断回路72は、測定回路71から入力される各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwに基づいて診断を行うものとして説明したが、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのトレンド、すなわち、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの時間的な変化に基づいて診断を行ってもよい。
また、本実施の形態においては、診断装置70が電動アクチュエータ100に内蔵されている例を示したが、診断装置70を電動アクチュエータ100とは別の装置として設けてもよいことはいうまでもない。
【0083】
[第2の実施の形態]
上述した第1の実施の形態においては、電動アクチュエータ100内に診断装置70が設けられた例を説明したが、診断装置70を構成する各種回路を複数の装置に分散させて構成することも可能である。本発明の第2の実施の形態に係る診断装置は、診断回路72を電動アクチュエータ100Bとは別の装置に設ける例である。
【0084】
図8に、本発明の第2の実施の形態に係る診断装置の構成例を示す。この例では、電動アクチュエータ100Bには、測定回路71と無線通信インターフェース回路(無線I/F)75とを含む測定装置70Bが設けられる。このうち測定装置70Bに設けられた無線通信インターフェース回路75は、無線通信により各種データを出力することを可能にする。
【0085】
一方、端末装置200には、無線通信インターフェース回路2003と診断回路72と出力回路73と表示装置90とが設けられている。この端末装置200は、図9に示すように、バス2004を介して互いに通信可能に接続された演算装置2001、メモリ2002、I/F回路2003、I/O装置2005を含むコンピュータと、このコンピュータにインストールされたコンピュータプログラムとから構成することができる。
【0086】
このうち、無線通信インターフェース回路2003は、例えば、測定装置70Bの無線通信インターフェース回路75と、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に則った通信方式に則って無線で接続する。また、I/O装置2005は、タッチパネル等の入力装置やLCD等の表示装置90を含む。このような端末装置200は、例えば、現場の担当者が使用する持ち運び可能なモバイル端末装置である。
【0087】
上述した構成を有することにより、端末装置200は、無線通信インターフェース回路2003を介して、電動アクチュエータ100B側の測定装置70Bの無線通信インターフェース回路75と無線通信を行い、測定回路71によって取得された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEw、および/または、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのトレンド、すなわち、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの時系列データ等の出力データを受信して、これを診断回路72に入力するように構成されている。そして、端末装置200に構成された診断回路72は、電動アクチュエータ100B側の測定装置70Bから出力された出力データに基づき、診断を行う。その診断の結果は、出力回路73を介して表示装置90に表示される。
【0088】
以上の機能は、端末装置200のコンピュータを構成する各種ハードウェア資源がコンピュータプログラムにしたがって協働することにより実現される。
【0089】
このように測定回路71と診断回路72とを、それぞれ電動アクチュエータ100Bと端末装置200とに分けて設けることによって、電動アクチュエータ100Bと端末装置200とは、一体となって診断装置を構成することとなる。その結果、電動アクチュエータ100Bの測定装置70Bを構成する演算装置の負荷を軽減することができる。
また、保守担当者等が使用する端末装置200において診断が行えるので、保守作業の効率が向上することが期待できる。
【0090】
なお、本実施の形態において、電動アクチュエータ100Bと端末装置200とは無線通信により互いに接続されるものとして説明したが、有線で接続されるように構成してもよい。
【0091】
[第3の実施の形態]
上述した第2の実施の形態においては、診断装置を構成する測定回路71と診断回路72をそれぞれ電動アクチュエータ100Bと端末装置200とに分離して設けたが、本発明の第3の実施の形態においては、図10に示すように、電動アクチュエータ100CがネットワークNWを介して上位装置300に接続されている場合において、診断装置を構成する測定回路71と診断回路72のうち、測定回路71を電動アクチュエータ100C側の測定装置70Cに設け、診断回路72を、上位装置300に設ける例である。
【0092】
電動アクチュエータ100C側の測定装置70Cには、ネットワーク・インターフェース回路(NW I/F)76が設けられ、測定装置70Cは、このネットワーク・インターフェース回路76を介して、Ethernet(登録商標)等のネットワークNWに接続可能に構成されている。
【0093】
一方、上位装置300も、ネットワーク・インターフェース回路3003を備えており、ネットワークNWを介して、電動アクチュエータ100Cの測定装置70Cと通信可能に構成されている。この上位装置300も、演算装置やメモリ、各種I/F回路やI/O装置から構成されたコンピュータであり、これらのハードウェア資源と上位装置300にインストールされたコンピュータプログラムとが協働することによって、診断回路72の機能を実現する。
【0094】
電動アクチュエータ100Cに設けられた測定装置70Cと上位装置300とは、それぞれネットワーク・インターフェース回路76、3003を介してネットワークNWに接続可能な構成をとることによって、測定回路71によって取得された各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEw、および/または、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwのトレンド、すなわち、各巻線U,V,Wの誘起電圧定数KEu,KEv,KEwの時系列データを、出力データとして、測定装置70Cから上位装置300にネットワークNWを介して送信することができる。
【0095】
一方、上位装置300は、測定装置70Cから出力される出力データを受信で、これを診断回路72に入力するように構成されており、診断回路72は、ネットワークNWを介して受信したデータに基づき、診断を行う。
【0096】
このように測定回路71と診断回路72とを、それぞれ電動アクチュエータ100Cと上位装置300とに分けて設けることによって、電動アクチュエータ100Bの測定装置70Bを構成する演算装置の負荷を軽減することができる。
また、中央監視装置を構成する上位装置300で診断を行うので、現場に行かなくても、電動アクチュエータ100Cの診断を行うことができる。
【0097】
上記の実施の形態においては、電動アクチュエータの診断装置を例に説明したが、本発明に係る診断装置は、電動アクチュエータのみならず、モータを使用したすべての製品に適用することができる。また、モータとしてブラシレス直流モータを例に説明したが、本発明は、ブラシレス直流モータのみならず、巻線構造を有するすべてのモータに適用することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、電動アクチュエータの維持管理に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100、100B、100C…電動アクチュエータ、10…モータ、20…減速機、30…回転軸、40…角度センサ、50…制御回路、56…温度センサ、60…駆動回路、70…診断装置、71…測定回路、72…診断回路、73…出力回路、75…無線通信インターフェース回路、76…ネットワーク・インターフェース回路、80…筐体、90…表示装置、200…端末装置、2003…無線通信インターフェース回路、300…上位装置、3003…ネットワーク・インターフェース回路、U、V、W…巻線。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10