IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハイファ研究所の特許一覧

特許7477273コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法
<>
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図1
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図2
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図3
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図4
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図5
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図6
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図7
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図8
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図9
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図10
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図11
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図12
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図13
  • 特許-コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】コーヒー滓を用いたシイタケ栽培方法および機能性成分の増収化方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 18/20 20180101AFI20240423BHJP
【FI】
A01G18/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019156722
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021029219
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】508023813
【氏名又は名称】株式会社ハイファ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100086829
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 將夫
(74)【代理人】
【識別番号】100181515
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 弓子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智美
(72)【発明者】
【氏名】中村 友幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 繁佳
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-060297(JP,A)
【文献】特開昭51-145747(JP,A)
【文献】特開平09-103193(JP,A)
【文献】特開平02-156828(JP,A)
【文献】特開平06-153691(JP,A)
【文献】特開2002-247966(JP,A)
【文献】特開昭55-034062(JP,A)
【文献】特開2012-060974(JP,A)
【文献】特開昭59-044396(JP,A)
【文献】特開平01-187030(JP,A)
【文献】特開平05-176629(JP,A)
【文献】特開2003-047338(JP,A)
【文献】特開2019-118278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えた培養基を用いるシイタケ(Lentinula edodes)の栽培方法において、コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉の重量比を1:3~1:1とするシイタケの栽培方法。
【請求項2】
シイタケのアミノ酸含有量を増加させる目的で、針葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えた培養基を用いる請求項1に記載するシイタケの栽培方法。
【請求項3】
アミノ酸が、標準アミノ酸である請求項2に記載するシイタケの栽培方法。
【請求項4】
アミノ酸が、GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンである請求項2に記載するシイタケの栽培方法。
【請求項5】
GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンの生成部位がシイタケの柄部である請求項4に記載するシイタケの栽培方法。
【請求項6】
請求項5記載のシイタケの栽培方法により得られるシイタケの柄部、又はシイタケの柄部に含まれるアミノ酸を利用する機能性食品の製造方法。
【請求項7】
培養基として、コーヒーの抽出滓発生後、速やかに針葉樹オガ粉を添加した培養基を使用する請求項1又は2のいずれかに記載するシイタケの栽培方法。
【請求項8】
主原料として、コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉の重量比を1:3~1:1とした混合物を使用することを特徴とするシイタケの菌床用培養基の製造方法。
【請求項9】
シイタケがマツタケ様シイタケである請求項6に記載する機能性食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、培養基(菌床)の主原料として、コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉を使用するシイタケ(Lentinula edodes)の栽培方法に関する。
また本願発明は、機能性成分として、健康効果が期待されるアミノ酸含有量を増加させる目的で、培養基(菌床)の主原料として、コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉、又はコーヒーの抽出滓と広葉樹オガ粉を使用するシイタケの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シイタケはハラタケ目キシメジ科シイタケ属の食用キノコである。シイタケは日本、中国、韓国などで食用に栽培されるほか、東南アジアの高山帯やニュージーランドにも分布する。日本においては食卓に上る機会も多く、数あるキノコの中でも知名度、人気ともに高いもののひとつである。子実体の発生時期は初夏と秋で、適温は10~25℃と幅があり菌株によって異なる。旨み成分として、5´-グアニル酸やグルタミン酸を豊富に含むので、食材としてだけでなく、出汁をとるのにも使われる。グアニル酸は生のシイタケでは総重量に占める割合が少ないが、乾燥して温度が上昇する過程で、リボヌクレアーゼやホスホモノエステラーゼなどの酵素の働きにより増加する。また栄養価としては炭水化物、食物繊維、ミネラルが主で、低カロリー食である。中国医学では生薬と称され、益気、健脾、健胃、化痰の作用があり、貧血や高血圧に効くとされる。近年は、β-グルカンの免疫強化、抗癌作用の研究が行われている。
【0003】
シイタケの栽培は、昭和初期では原木栽培が行われたが、その後20~30年前から菌床栽培が活発に行われ生産量が拡大している。
従来、シイタケ栽培用のオガ粉は広葉樹系がメインであり、安価に入手できる針葉樹系は活用が困難であると考えられていた。
ところが、2011年の震災以降、放射性物質のセシウムを吸収しやすい(移行係数が高い)キノコ類は、培地原料としてのセシウム含有量の低減化が重要な課題となった。
そのため、最近では広葉樹オガ粉の供給が逼迫していること、及び森林資源保護の観点から、広葉樹オガ粉の代替原料として、針葉樹オガ粉、及び現在産業廃棄物として大量に発生するコーヒーの抽出滓が脚光を浴び、種々のキノコの栽培に利用する試みがなされている。
しかしながら、シイタケの栽培に関しては、広葉樹オガ粉とコーヒー滓を用いたシイタケの栽培方法は知られているものの、安価に入手できる針葉樹オガ粉とコーヒー滓を組み合わせて使用した実際の栽培例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-155218
【文献】特開平01-187030
【文献】特開平02-156828
【文献】特開平05-176629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者等は、従来から、キノコの菌床栽培には不向きとされていた針葉樹オガ粉と、産業廃棄物として環境に多大の負荷をかけているコーヒーの抽出滓を組み合わせて使用すれば、良質なシイタケを栽培することができること、又、針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉を問わずコーヒーの抽出滓を組合わせて使用すれば、機能性成分として健康効果が期待されるシイタケのアミノ酸含有量を増加させることができることを知り本発明を完成した。
【0006】
前記針葉樹オガ粉は、従来からキノコの菌床栽培には不向きとされているものである。
又、コーヒーの抽出滓は、焙煎したコーヒー豆を粉砕し、熱水又は水を加えてコーヒーを抽出した後の残渣を言うが、近年パック入りコーヒー飲料(缶コーヒー、ペットボットル入りコーヒー、紙容器入りコーヒー等)の生産量の増加に伴い、莫大な量が発生し、産業廃棄物として環境に多大の負荷をかけているものである。
そして、前記コーヒー滓は、元々は食品であるため、これを使用してキノコを栽培するのは、安全・安心の両面から非常に好ましい。
更に、コーヒー滓を使用して、キノコ中の機能成分を増加させる試みは、マンネンタケ(特開2012-60974)、及びハナビラタケ以外には見つからない(特開2019-118278)。
本願発明は、以上の状況を踏まえて、コーヒーの抽出滓の有効利用を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本願発明は、下記の請求項1~請求項25により構成されている。
<請求項1> 針葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えた培養基を用いることを特徴とするシイタケ(Lentinula edodes)の栽培方法。
<請求項2> コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉の重量比が1:9~9:1である請求項1に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項3> コーヒーの抽出滓と針葉樹オ粉の重量比が1:3~1:1である請求項1、に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項4> シイタケのアミノ酸含有量を増加させる目的で、針葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えた培養基を用いることを特徴とするシイタケの栽培方法。
<請求項5> アミノ酸が、標準アミノ酸である請求項4に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項6> アミノ酸が、GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンである請求項4に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項7> GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンの生成部位がシイタケの柄部である請求項6に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項8> シイタケのアミノ酸含有量を増加させる目的で広葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えた培養基を用いるシイタケの栽培方法。
<請求項9> コーヒーの抽出滓と広葉樹オガ粉の重量比が1:9~9:1である請求項8に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項10> コーヒーの抽出滓と広葉樹オガ粉の重量比が1:3~1:1である請求項8に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項11> アミノ酸が、標準アミノ酸である請求項8に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項12> アミノ酸が、GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンである請求項8に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項13> GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニンの生成部位がシイタケの柄部である請求項12に記載するシイタケの栽培方法。
<請求項14> 請求項7記載のシイタケの柄部、又はシイタケの柄部に含まれるアミノ酸を利用する機能性食品の製造方法。
<請求項15> 請求項13記載のシイタケの柄部、又はシイタケの柄部に含まれるアミノ酸を利用する機能性食品の製造方法。
<請求項16>培養基として、コーヒーの抽出滓発生後、速やかに針葉樹オガ粉を添加した培養基を使用する請求項1~請求項4のいずれかに記載するシイタケの栽培方法。
<請求項17>培養基として、コーヒーの抽出滓発生後、速やかに広葉樹オガ粉を添加した培養基を使用する請求項8~請求項10のいずれかに記載するシイタケの栽培方法。
<請求項18> 主原料として、針葉樹オガ粉とコーヒー抽出滓の混合物を使用することを特徴とするシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項19> コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉の重量比が1:9~9:1である請求項18に記載するシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項20> コーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉の重量比が1:3~1:1である請求項18に記載するシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項21> 主原料として、広葉樹オガ粉とコーヒー抽出滓の混合物を使用することを特徴とするシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項22> コーヒーの抽出滓と広葉樹オガ粉の重量比が1:9~9:1である請求項21に記載するシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項23> コーヒーの抽出滓と広葉樹オガ粉の重量比が1:3~1:1である請求項21に記載するシイタケの菌床用培養基の製造方法。
<請求項24> シイタケがマツタケ様シイタケである請求項14に記載する機能性食品の製造方法。
<請求項25> シイタケがマツタケ様シイタケである請求項15に記載する機能性食品の製造方法。
【0008】
本願発明を以上のように構成する理由は、下記のとおりである。
(1)大量に発生するコーヒー抽出滓を、有効に利用できること。
(2)コーヒー抽出滓を使用することにより、従来キノコの菌床栽培には不向きとされていた、針葉樹オガ粉から良質なシイタケを栽培できること。
(3)コーヒー抽出滓を使用することにより、針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉を問わず、機能性成分として健康効果が期待されるシイタケのアミノ酸含有量(特にGABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニン等)を増加させることができること。
(4)機能性成分として健康効果が期待されるシイタケのアミノ酸は、通常食用とはされ難いシイタケの柄部にも、傘部に比較して、勝るとも劣らず生成されるので、ともすれば廃棄されがちな柄部から特有の機能性食品が製造できること。
(5)マツタケ様シイタケは、柄部が比較的多いので、機能性食品の製造に適していること。
(6)オガ粉(針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉)にコーヒー滓を添加したシイタケ栽培用培養基には、シイタケにアミノ酸(標準アミノ酸、非標準アミノ酸)を増量させる効果があるので、シイタケ菌株を接種前の培養基そのものに商品価値があること。
(7)コーヒー抽出滓は、そのまま放置すると、微生物(カビやバクテリア)が増殖し、非常に腐敗しやすい。これを防止するには、コーヒー抽出滓が発生後、速やかにオガ粉(針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉)を混合すると、微生物の増殖が抑制できるからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、産業廃棄物であるコーヒーの抽出滓と針葉樹オガ粉(広葉樹オガ粉に比較して安価)から、良質なシイタケを栽培することができる。
又、産業廃棄物であるコーヒーの抽出滓をオガ粉に添加して栽培すれば、針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉を問わず、健康効果が期待されるアミノ酸を多量に含むシイタケを栽培することができる。
従来、廃棄されがちなシイタケの柄部から、アミノ酸を豊富に含む機能性食品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】シイタケの一般的な子実体形状を表す画像である。
図2】コーヒー滓、広葉樹オガ粉、針葉樹オガ粉、フスマ、及び米糠を表す画像である。
図3】各試験区におけるシイタケの収量を示すグラフである。
図4】針葉樹オガ粉の各試験区におけるシイタケの発生状況と、菌床表面の褐変状況を示す画像である。
図5】広葉樹オガ粉の各試験区におけるシイタケの発生状況と、菌床表面の褐変状況を示す画像である。
図6】針葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの傘部の標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図7】針葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの柄部の標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図8】針葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの傘部の非標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図9】針葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの柄部の非標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図10】広葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの傘部の標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図11】広葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの柄部の標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図12】広葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの傘部の非標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図13】広葉樹へのコーヒー滓の添加量別培地によるシイタケの柄部の非標準アミノ酸類含有量の変化を示すグラフである。
図14】段落[0012](3)(c)の培養基により栽培されたマツタケ様シイタケの子実体形状を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記に記載する実施例により詳細に説明する。
本願発明において、キノコの発生試験は、株式会社ハイファ研究所保有の下記の菌株を使用した。
シイタケ(Lentinula edodes) :LEN-56株(略名:LE)
又、コーヒ滓は、味の素AGF株式会社製を使用した。
【実施例1】
【0012】
(1)シイタケ菌株の準備
低温保管中のシイタケ菌株LEをPDA培地シャーレに接種し、培養温度23℃にて培養した。
(2)コーヒー滓を添加した菌床培地の調製~培養
広葉樹オガ粉および針葉樹オガ粉の二種を用い、栄養源として米糠、フスマを任意の比率で添加した試験区をコントロールとした。また、対照区は各種オガクズの25%および50%を除き代替えとしてコーヒー滓を添加した試験区を設けて行った。それぞれの試験区の混合培地を撹拌し含水率65%に調製した培地1kgをフィルター付P.P.菌床袋へ充填した。各試験区培地を充填した培地は121℃で90分間の殺菌を行い、放冷後にシイタケ菌株LEを接種した。接種後はインキュベータ内21℃で培養を行った。
(3)発生操作~収穫~サンプル保管
菌糸が蔓延・熟成した菌床状態を確認した後、発生操作を行った。発生環境は温度15~18℃で十分な加湿状況で菌床を展開した。各試験区で発生した菌床状況の写真撮影および子実体の収量、さらに菌床表面の褐変状況を調査した。
収穫後のシイタケ子実体は今後の調査を進める分析用サンプルとして凍結保管した。
シイタケ子実体の発生試験は、針葉樹と広葉樹について、それぞれ下記の試験区で行った。
▲針葉樹
(a)Cont :針葉樹オガ粉添加区+栄養源
(b)コーヒー滓25%:針葉樹オガ粉75%+コーヒー滓25%添加区+栄養源
(c)コーヒー滓50%:針葉樹オガ粉50%+コーヒー滓50%添加区+栄養源
▲広葉樹
(d)Cont :広葉樹オガ粉添加区+栄養源
(e)コーヒー滓25%:広葉樹オガ粉75%+コーヒー滓25%添加区+栄養源
(f)コーヒー滓50%:広葉樹オガ粉50%+コーヒー滓50%添加区+栄養源
(4)各試験区において、得られた子実体の重量を表1、及び図3に、コーヒー滓添加における各試験区の菌床表面の褐変状況(菌糸の発生状況)を表2に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
各試験区におけるシイタケ発生試験の発生状況(写真)を図4、及び図5に示す。
【0016】
表1、表2、図3図5の結果は、針葉樹オガ粉にコーヒー滓を加えて菌床を作製すれば、広葉樹オガ粉の菌床と同様に、シイタケの栽培が十分に可能となることを示している。これは、針葉樹オガ粉はシイタケの菌床栽培用には不向きとされていた従来の知見を覆すものと言える。
【実施例2】
【0017】
(1)子実体サンプルの遊離アミノ酸の分析
(A)シイタケ子実体のサンプル(子実体)調製
[0016]の表1に示したシイタケ(図4図5に示す6種)を傘部と柄部に分け、それぞれをアルミ袋に入れ凍結保管した(12試験区)。
(B)遊離アミノ酸分析用の簡易的なサンプル調製および分析試験
各種シイタケの子実体サンプル(表1に示す(a)~(e))を傘部と柄部に分けて事前に調製されたもの(12試験区)をそのままフードプロセッサーで粉砕した後、10.0gをサンプリングした。これに75%のエタノールを加えてホモジナイザーでホモジナイズした後、80℃で2回還流抽出した。抽出液を回収後減圧濃縮し、最終的に水でメスアップして100mlに定容した。
この溶液をフィルター濾過した後、クエン酸リチウム緩衝液で10倍希釈し、アミノ酸分析機に50μl注入し、全自動アミノ酸分析装置にて分析した。
(C)測定対象アミノ酸類
(イ)標準アミノ酸類:
アスパラギン酸、スレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アラニン、バリン、シスチン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、アルギニン、プロリン
(ロ)非標準アミノ酸類:
ホスホセリン、タウリン、ホスホエタノールアミン、尿素、サルコシン、a-アミノアジピン酸、シトルリン、a-アミノ酪酸、シスタチオニン、b-アラニン、b-アミノ酪酸、g-アミノ酪酸(GABA)、モノエタノールアミン、アンモニア、ヒドロキシリジン、オルニチン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、アンセリン、カルノシン、ヒドロキシプロリン
【0018】
(2)アミノ酸の分析結果
前記の各試験区により得られたシイタケの標準アミノ酸類、及び非標準アミノ酸類の分析結果を表3~表10、及び図6図13に示す。
*表3は、針葉樹オガ粉培地でのシイタケ傘部の標準アミノ酸類の分析結果を示す(図6参照)。
*表4は、針葉樹オガ粉培地でのシイタケ柄部の標準アミノ酸類の分析結果を示す(図7参照)。
*表5は、針葉樹オガ粉培地でのシイタケ傘部の非標準アミノ酸類の分析結果を示す(図8参照)。
*表6は、針葉樹オガ粉培地でのシイタケ柄部の非標準アミノ酸類の分析結果を示す(図9参照)。
*表7は、広葉樹オガ粉培地でのシイタケ傘部の標準アミノ酸類の分析結果を示す(図10参照)。
*表8は、広葉樹オガ粉培地でのシイタケ柄部の標準アミノ酸類の分析結果を示す(図11参照)。
*表9は、広葉樹オガ粉培地でのシイタケ傘部の非標準アミノ酸類の分析結果を示す(図12参照)。
*表10は、広葉樹オガ粉培地でのシイタケ柄部の非標準アミノ酸類の分析結果を示す(図13参照)。
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
【表7】
【0024】
【表8】
【0025】
【表9】
【0026】
【表10】
【0027】
前記標準アミノ酸、及び非標準アミノ酸の分析結果は、下記の好ましい結論が得られることを示している。
(1)オガ粉が針葉樹由来か、又は広葉樹由来かを問わず、これらにコーヒー滓を添加した培養基でシイタケを栽培すれば、標準アミノ酸及び非標準アミノ酸を豊富に含有したシイタケが栽培できる。
(2)利用価値が少ないシイタケの柄部には、通常摂取しにくい非標準アミノ酸(GABA、グルタミン、オルニチン、又はアルギニン等)が豊富に蓄積されることが判明したので、これを利用した機能性食品の製造が可能となる。
【実施例3】
【0028】
アミノ酸を豊富に含む機能性食品の製造
(1)段落[0012]の(3)、(c)、及び(3)、(f)で得られたシイタケの子実体の柄部を乾燥し、微粉末状の機能性食品を得た。
(2)前記微粉末の熱水、又はエタノール抽出物を凍結乾燥して、微粉末状の機能性食品を得た。
(3)本機能性食品の製造には、マツタケ様シイタケ(図14参照)の柄部を用いたものについても製造した。
【実施例4】
【0029】
(1)針葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えたシイタケの菌床用培地の製造
(イ)段落[0012]の(3)、(c)の配合物(混合物)を、含水率65%に調製した。
(ロ)前記調整物をフィルター付P.P.菌床袋へ1kgずつ充填した。
(ハ)前記袋入り充填物を、オートクレーブで121℃、90分間殺菌後放冷しシイタケの菌床用培地を製造した。
(2)広葉樹オガ粉にコーヒーの抽出滓を加えたシイタケの菌床用培養基の製造
(イ)段落[0012]の(3)、(f)の配合物(混合物)を、含水率65%に調製した。
(ロ)前記調整物をフィルター付P.P.菌床袋へ1kgずつ充填した。
(ハ)前記袋入り充填物を、オートクレーブで121℃、90分間殺菌後放冷しシイタケの菌床用培養基を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、産業廃棄物であるコーヒーの抽出滓と、使用価値の低い針葉樹オガ粉(広葉樹オガ粉に比較して安価)から、良質なシイタケを栽培することができ、又産業廃棄物であるコーヒーの抽出滓をオガ粉に添加して栽培すれば、針葉樹オガ粉、広葉樹オガ粉を問わず、健康効果が期待されるアミノ酸を多量に含むシイタケを栽培することができるので、産業上の利用可能性が大きい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14