(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240423BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240423BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240423BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240423BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240423BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20240423BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240423BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20240423BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240423BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G03F7/027 515
C08F2/44 Z
C08F2/50
C08F290/06
C08F299/02
C08G59/14
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/029
G03F7/031
H05K3/28 D
(21)【出願番号】P 2019159654
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】宮澤 浩
【審判官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G03F7/004-7/06 7/075-7/115 7/16-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルムであって、
感光性樹脂組成物が、
(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)エポキシ樹脂、及び
(D)揮発成分、を含有する感光性樹脂組成物であり、
(D)揮発成分が、エチルジグリコールアセテート及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1つであり、
感光性樹脂組成物が、以下の式(1)、及び式(2)の関係を満たす、感光性フィルム:
V=a
2
+b
2
但しV≦30 (1)
a/b≦0.6 (2)
ただし、PETフィルム上の
、(D)揮発成分の含有量が5質量%以
下、乾燥後の厚みが25μ
m、10cm×10cmの感光性樹脂組成物層を
、
130℃のオーブンで15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をaとし
、
180℃のオーブンで15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をbと
する。
【請求項2】
さらに、(F)無機充填材を含む、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項3】
(A)成分が、酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を含む、請求項1又は2に記載の感光性フィルム。
【請求項4】
(A)成分が、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性フィルム。
【請求項5】
(A)成分が、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、及び酸変性ビスフェノール骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートのいずれかを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性フィルム。
【請求項6】
(B)成分が、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤のいずれかを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性フィルム。
【請求項7】
(D)成分が、エチルジグリコールアセテート、及びメチルエチルケトンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性フィルム。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性フィルムと、を有する支持体付き感光性フィルム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性フィルムの硬化物である絶縁層を含むプリント配線板。
【請求項10】
絶縁層が、ソルダーレジストである、請求項9に記載のプリント配線板。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。さらには、当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板では、はんだが不要な部分へはんだが付着するのを抑制するとともに、回路基板が腐食するのを抑制するための永久保護膜として、ソルダーレジストを設けることがある。ソルダーレジストとしては、例えば特許文献1に記載されているような感光性樹脂組成物を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物は、一般的に解像性、絶縁性等が要求されている。近年、ソルダーレジストは、基板間をはんだ付けして接続するため、配線パターンを有する導体層の一部が露出するような微細な開口パターンを有することが求められており、密着性の観点から、この開口部の開口形状は逆テーパ状にならないことが求められている。ここで、逆テーパ状の開口形状とは、開口の奥の方ほど広い形状をいう。本願では、このように開口形状が逆テーパ状になりにくい性質を「アンダーカット耐性」に優れるということがある。
【0005】
本発明の課題は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができ、解像性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、感光性フィルムの重量減少率が所定の関係を満たすように樹脂組成物の各成分を調整することにより、アンダーカット耐性及び解像性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)エポキシ樹脂、及び
(D)揮発成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、
感光性樹脂組成物を130℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をaとし、感光性樹脂組成物を180℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をbとしたとき、以下の式(1)、及び式(2)の関係を満たす、感光性樹脂組成物。
V=a2+b2 但しV≦30 (1)
a/b≦0.6 (2)
[2] さらに、(F)無機充填材を含む、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] (A)成分が、酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] (A)成分が、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] (A)成分が、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、及び酸変性ビスフェノール骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートのいずれかを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6] (B)成分が、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤のいずれかを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] (D)成分が、ケトン類、及びグリコールエーテル類のいずれかを有する、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
[9] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
[10] [1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
[11] 絶縁層が、ソルダーレジストである、[10]に記載のプリント配線板。
[12] [10]又は[11]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができ、解像性に優れる感光性樹脂組成物;当該感光性樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0010】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ樹脂、及び(D)揮発成分、を含有する感光性樹脂組成物であって、感光性樹脂組成物を130℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をaとし、感光性樹脂組成物を180℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をbとしたとき、以下の式(1)、及び式(2)の関係を満たす。
V=a2+b2 但しV≦30 (1)
a/b≦0.6 (2)
【0011】
本発明では、重量減少率が所定の関係を満たすように感光性樹脂組成物の各成分を調整することにより、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができ、解像性に優れる感光性樹脂組成物を提供できるようになる。また、通常は、埋め込み性にも優れる硬化物を得ることもできる。本発明者らは、加熱した際の感光性樹脂組成物に含まれる揮発成分の揮発量に着目した。その結果、加熱温度が130℃の場合の揮発量と、180℃の場合の揮発量とが上記式(1)及び式(2)を満たすと、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることが可能になることを見いだした。揮発成分の揮発量に着目し、揮発量が所定の関係を満たすように揮発成分を調整するという技術的思想は、本発明者らが知る限り、従来なんら提案されていなかったといえる。
【0012】
感光性樹脂組成物は、(A)~(D)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(E)反応性希釈剤、(F)無機充填材、及び(G)その他の添加剤等が挙げられる。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0013】
<(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂>
感光性樹脂組成物は、(A)成分として、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂を含有する。(A)成分を感光性樹脂組成物に含有させることにより現像性を向上させることができる。
【0014】
エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を指す。
【0015】
(A)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有し、光ラジカル重合を可能とするとともにアルカリ現像を可能とする任意の化合物を用いることができ、例えば、1分子中にカルボキシル基と2個以上のエチレン性不飽和基とを併せ持つ樹脂が好ましい。
【0016】
エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂の一態様としては、エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させた、酸変性不飽和エポキシエステル樹脂等が挙げられる。詳細は、エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ不飽和エポキシエステル樹脂を得、不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させることで酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を得ることができる。
【0017】
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を有する化合物であれば使用可能であり、例えば、エポキシ基含有共重合体、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて3官能以上に変性した変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型等のビフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂);ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
エポキシ化合物は、平均線熱膨張率を低下させる観点から、エポキシ基含有共重合体、芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族骨格とは、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む概念である。エポキシ化合物は、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
エポキシ基含有共重合体は、エポキシ基含有モノマー及び必要に応じて任意のモノマーを重合させることによって得ることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。エポキシ基含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
任意のモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3-(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。任意のモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を指す。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを指す。
【0021】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,3-ジグリシジルオキシナフタレン、1,4-ジグリシジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,3-ジグリシジルオキシナフタレン、2,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビ-(2-グリシジルオキシ)ナフチル、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチル等が挙げられる。ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2-グリシジルオキシナフチル)メタンが挙げられる。
【0022】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させる観点から好ましい。なお、本明細書において、上記のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシエステル樹脂を「エポキシ(メタ)アクリレート」と記載する場合があり、ここでエポキシ化合物のエポキシ基は、(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。
【0023】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の解像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
【0024】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を得るにあたって、必要に応じて、触媒、溶剤、及び重合阻害剤等を用いてもよい。
【0025】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂としては、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、及び酸変性ビスフェノール骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートのいずれかを含むことがより好ましい。酸変性不飽和エポキシエステル樹脂における「エポキシ」とは、上記したエポキシ化合物由来の構造を表す。例えば、「酸変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物としてビスフェノール型エポキシ樹脂を使用し、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸を使用して得られる酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を指す。
【0026】
酸変性不飽和エポキシエステル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下の(メタ)アクリルポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリルポリマーとは、(メタ)アクリルモノマーを重合して形成される構造を有する構造単位を含むポリマーである。このような(メタ)アクリルポリマーとしては、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるポリマー、又は(メタ)アクリルモノマー及び該(メタ)アクリルモノマーと共重合しうるモノマーを共重合してなるポリマーが挙げられる。
【0027】
ガラス転移温度が-20℃以下の(メタ)アクリルポリマーとしては、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらに酸無水物を反応させた、酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。詳細は、エポキシ基含有共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させ不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得、不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体と酸無水物とを反応させることで酸変性不飽和エポキシ(メタ)アクリル共重合体を得ることができる。
【0028】
ガラス転移温度が-20℃以下の(メタ)アクリルポリマーの好ましい態様としては、エポキシ基含有モノマー及び任意のモノマーを重合させることによって得たエポキシ基含有共重合体、(メタ)アクリル酸並びに酸無水物を反応させた化合物であって、エポキシ含有モノマーがグリシジルメタクリレートであり、任意のモノマーがブチルアクリレートであり、酸無水物が無水テトラヒドロフタル酸である化合物である。
【0029】
このような酸変性不飽和エポキシエステル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、日本化薬社製の「ZAR-2000」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、「ZFR-1491H」、「ZFR-1533H」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物(ビスフェノールF型骨格含有酸変性エポキシアクリレート))、昭和電工社製の「PR-300CP」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物は、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基に酸無水物を反応させることも可能である。酸無水物としては上記した酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0031】
このような不飽和変性(メタ)アクリル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、昭和電工社製の「SPC-1000」、「SPC-3000」、ダイセル・オルネクス社製「サイクロマーP(ACA)Z-250」、「サイクロマーP(ACA)Z-251」、「サイクロマーP(ACA)Z-254」、「サイクロマーP(ACA)Z-300」、「サイクロマーP(ACA)Z-320」等が挙げられる。
【0032】
(A)成分の重量平均分子量としては、製膜性の観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、7500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0033】
(A)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンが現像により溶け出す事を抑制し、絶縁信頼性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式により酸価を算出する。
式:A(b)=10×Vf×56.1/(Wp×I)
【0034】
なお、上記式中、A(b)は酸価(mgKOH/g)を表し、VfはKOHの滴定量(mL)を表し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を表す。
【0035】
(A)成分の製造では、保存安定性の向上という観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数と、不飽和カルボン酸と酸無水物との合計のカルボキシル基のモル数との比が、1:0.8~1.3の範囲であることが好ましく、1:0.9~1.2の範囲であることがより好ましい。
【0036】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、柔軟性を向上させる観点から、好ましくは-300℃以上、より好ましくは-200℃以上、さらに好ましくは-80℃以上であり、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-23℃以下、さらに好ましくは-25℃以下である。ここで、(A)成分のガラス転移温度とは、(A)成分の主鎖の理論上のガラス転移温度であり、この理論上のガラス転移温度は、以下に示すFOXの式により算出することができる。FOXの式により求められるガラス転移温度は、示差走査熱量測定(TMA、DSC、DTA)により測定したガラス転移温度とほぼ一致するので、示差走査熱量測定により(A)成分の主鎖のガラス転移温度を測定してもよい。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wm/Tgm)
W1+W2+・・・+Wm=1
Wmは(A)成分を構成する各モノマーの含有量(質量%)を表し、Tgmは、(A)成分を構成する各モノマーのガラス転移温度(K)を表す。
【0037】
(A)成分は、アルカリ現像性の向上という観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。上限は、耐熱性や平均線膨張率の向上という観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下である。なお、本発明において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0038】
<(B)光重合開始剤>
感光性樹脂組成物は、(B)成分として、光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤を感光性樹脂組成物に含有させることにより、感光性樹脂組成物を効率的に光硬化させることができる。
【0039】
(B)光重合開始剤は、任意の化合物を使用でき、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン、1-4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサンド;スルホニウム塩系光重合開始剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より効率的に感光性樹脂組成物を光硬化させる観点から、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤のいずれかが好ましく、オキシムエステル系光重合開始剤がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(B)光重合開始剤の具体例としては、IGM社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」、BASF社製の「IrgacureOXE-01」、「IrgacureOXE-02」、「IrgacureTPO」、「Irgacure819」、ADEKA社製の「N-1919」等が挙げられる。
【0041】
さらに、感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤と組み合わせて、光重合開始助剤として、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン類を含んでいてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を含んでいてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0042】
(B)光重合開始剤の含有量としては、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。一方、感度過多による解像性の低下を抑制するという観点から、上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、感光性樹脂組成物が光重合開始助剤を含む場合は、(B)光重合開始剤と光重合開始助剤との合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0043】
<(C)エポキシ樹脂>
感光性樹脂組成物は、(C)成分としてエポキシ樹脂を含有する。(C)成分を含有させることにより、絶縁信頼性を向上させることができる。但し、ここでいう(C)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有するエポキシ樹脂は含めない。
【0044】
(C)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(C)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
感光性樹脂組成物は、(C)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(C)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0046】
(C)成分には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(C)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0047】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0048】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0049】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0052】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(C)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0054】
(C)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0055】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0056】
(C)成分の含有量は、良好な引張機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。
【0057】
<(D)揮発成分>
感光性樹脂組成物は、(D)成分として揮発成分を含有する。式(1)及び式(2)を満たすように(D)成分を感光性樹脂組成物に含有させることにより、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。また、(D)成分を感光性樹脂組成物に含有させることにより、感光性樹脂組成物のワニス粘度を調整可能となる。
【0058】
(D)揮発成分としては、有機溶剤などの溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、感光性樹脂組成物の作製にあたって、(A)~(C)成分、(E)成分又は(G)成分が含まれている有機溶剤溶液中の有機溶剤も含まれる。
【0059】
このような溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;等が挙げられる。これらは、1種類単独で含んでいてよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。中でも、溶剤としては、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、ケトン類、及びグリコールエーテル類のいずれかを有することが好ましい。
【0060】
(D)揮発成分は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、高沸点の有機溶剤と、低沸点の有機溶剤とを混合して用いることが好ましい。高沸点の有機溶剤としては、沸点が好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、上限は特に限定されないが300℃以下等とし得る。低沸点の有機溶剤としては、沸点が好ましくは100℃未満、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下であり、下限は特に限定されないが、30℃以上等とし得る。
【0061】
(D)揮発成分の含有量としては、式(1)及び式(2)を満たすように調整することができる。
【0062】
<(E)反応性希釈剤>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(E)成分として反応性希釈剤を含有してもよい。但し、(E)成分には(A)成分は含めない。(E)反応性希釈剤を感光性樹脂組成物に含有させることにより、光反応性を向上させることができる。(E)成分としては、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。室温とは、25℃程度を表す。
【0063】
感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε-カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、変性エポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N',N'-テトラキス(β-ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。「EO」とはエチレンオキシドを指す。
【0064】
(E)反応希釈剤は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば日本化薬社製の「DPHA」、ダイセルオルネクス社製の「EBECRYL3708」等が挙げられる。
【0065】
(E)反応希釈剤の含有量としては、光硬化を促進させる観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0066】
<(F)無機充填材>
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(F)成分として無機充填材を含有してもよい。
【0067】
(F)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、水酸化マグネシウムが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(F)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(F)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-20」、「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「SC2050」、「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;神島化学社製の「EP4-A」などが挙げられる。
【0069】
(F)成分の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0070】
(F)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0071】
(F)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(F)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0072】
(F)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0073】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0074】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0075】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0076】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0077】
(F)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下である。
【0078】
<(G)その他の添加剤>
感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(G)その他の添加剤を更に含有してもよい。(G)その他の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、有機充填材、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0079】
感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A)~(D)成分を混合し、任意成分として上記(E)~(G)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより製造することができる。
【0080】
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
感光性樹脂組成物を130℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をaとする。また、この感光性樹脂組成物を180℃で15分間乾燥させた際の重量減少率(%)をbとする。このとき、式(1)及び式(2)の関係を満たすことで、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることが可能となり、解像性を向上させる。感光性樹脂組成物は、層状態である感光性樹脂組成物層として、露光工程の際に式(1)及び式(2)の関係を満たすようになっていればよい。例えば、支持体上に形成される感光性樹脂組成物層、また、回路基板上に感光性樹脂組成物を直接塗布および乾燥した後に形成される、感光性樹脂組成物層などが挙げられる。
V=a2+b2 但しV≦30 (1)
a/b≦0.6 (2)
【0081】
ここでいう重量減少率a(%)とは、樹脂ワニスを支持体上に塗布乾燥させた後の支持体付き感光性フィルムを10cm×10cmに裁断し、30分間デシケーターで放置した後、該支持体付き感光性フィルムの質量(g)を(a1)とし、その後に支持体付き感光性フィルムを130℃のオーブンで15分加熱した後の支持体付き感光性フィルムの質量(g)を(a2)とし、下記式(A)から算出された値である。また、ここでいう重量減少率b(%)とは、樹脂ワニスを支持体上に塗布乾燥させた後の支持体付き感光性フィルムを10cm×10cmに裁断し、30分間デシケーターで放置した後、該支持体付き感光性フィルムの質量(g)を(b1)とし、その後に支持体付き感光性フィルムを180℃のオーブンで15分加熱した後の支持体付き感光性フィルムの質量(g)を(b2)とし、下記式(B)から算出された値である。なお、式(A)及び式(B)中の「支持体の質量(g)」とは、支持体を10cm×10cmに裁断し、30分間デシケーターで放置した後の支持体の質量(g)を表す。
【数1】
【0082】
式(1)中のVは、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得るとともに解像性を向上させる観点から、30以下であり、好ましくは28以下、より好ましくは27以下、さらに好ましくは26以下である。式(1)中のVの下限は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上である。
【0083】
式(2)中のa/bは、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得るとともに解像性を向上させる観点から、0.6以下であり、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.48以下である。式(2)中のa/bの下限は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は解像性に優れるという特性を示す。このため、開口径が100μmの丸穴(ビア)の底部に残渣がない。ビア底残渣の評価は、後述する<ビア底の残渣、アンダーカット耐性の評価>に記載の方法に従って評価することができる。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は、アンダーカット耐性に優れるという特性を示す。即ちアンダーカット耐性に優れる絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。アンダーカットは、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上等とし得る。アンダーカットは、後述する<ビア底の残渣、アンダーカット耐性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物は、埋め込み性に優れるという特性を示す。埋め込み性の測定の具体例は、感光性フィルムを、内層回路基板(導体厚18μm、0.8mm厚)にラミネートする。感光性フィルムをラミネートした内層回路基板の外観を目視にてボイドの有無を観察する。このときボイドの数は通常0個である。埋め込み性の評価の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶融粘度が低いという特性を示す。溶融粘度としては、好ましくは100poise以上、より好ましくは500poise以上、さらに好ましくは1000poise以上であり、好ましくは20000poise以下、より好ましくは15000poise以下、さらに好ましくは10000poise以下である。溶融粘度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、感光性樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)として好適に使用することができる。
【0089】
[感光性フィルム]
本発明の感光性樹脂組成物は、当該感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを支持基板上に塗布し乾燥させることで感光性樹脂組成物層を形成して、感光性フィルムとすることができる。また、支持体上に該樹脂ワニスを塗布し乾燥させることで感光性フィルムとすることもできる。つまり、本発明の感光性フィルムは、本発明の感光性樹脂組成物を含有する。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0090】
樹脂ワニスの塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0091】
樹脂ワニスは、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0092】
感光性フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、感光性樹脂組成物を支持基板上または支持体上に塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により(D)成分を乾燥させることにより製造することができる。感光性樹脂組成物は、例えば、感光性樹脂組成物の不揮発成分と過剰量の(D)成分とを含む樹脂ワニスを用いて製造してもよい。具体的には、まず、真空脱泡法等で樹脂ワニス中の泡を完全に除去した後、樹脂ワニスを支持基板上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉での乾燥によって、(D)成分の量を調整して感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂組成物層を含む感光性フィルムを製造することができる。感光性フィルムの製造方法の一実施形態として、樹脂ワニスを、最高温度を105℃以上135℃以下、乾燥時間を6分間以上20分以下として乾燥させることによって得られる。
【0093】
乾燥温度は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(D)成分の量によっても異なるが、80℃~120℃で行うことができる。但し、乾燥の最高温度は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上である。最高温度の下限は特に限定されないが、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0094】
乾燥時間は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(D)成分の量によっても異なるが、好ましくは6分間以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。ここで、乾燥時間とは、乾燥温度が80℃に達した時からの時間を指す。
【0095】
感光性樹脂組成物層中の(D)成分の残存量は、感光性樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0096】
本発明において、感光性樹脂組成物層として、露光工程の際に式(1)および式(2)を満たしていればよく、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得るとともに解像性を向上させることが出来るため、感光性樹脂組成物層の厚さは特に限定されないが、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0097】
[支持体付き感光性フィルム]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き感光性フィルムの形態で好適に使用することができる。つまり、支持体付き感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂組成物層を含む。
【0098】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0099】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0100】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに感光性樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0101】
支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、感光性樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0102】
感光性樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは28μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
【0103】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、ソルダーレジストとして使用することが好ましい。
【0104】
詳細には、本発明のプリント配線板は、上述の感光性フィルム、又は支持体付き感光性フィルムを用いて製造することができる。以下、絶縁層がソルダーレジストである場合の一例について説明する。
【0105】
<塗布及び乾燥工程>
感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを直接的に回路基板上に塗布する場合、(D)成分を乾燥、揮発させることにより、回路基板上に感光性フィルムを形成する。
【0106】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような支持基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0107】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0108】
<ラミネート工程>
一方、支持体付き感光性フィルムを用いる場合には、感光性樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、支持体付き感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて支持体付き感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、感光性樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。支持体付き感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0109】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0110】
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0111】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、解像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
【0112】
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、アンダーカット耐性に優れる。このため、ビア径としては、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下とすることが可能となる。下限は特に限定されないが、1μm以上、10μm以上等とし得る。
【0113】
<現像工程>
露光工程後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0114】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0115】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
【0116】
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液に添加することができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8~12の範囲であることが好ましく、9~11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃~50℃とすることが好ましい。
【0117】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0118】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0119】
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0120】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm2~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0121】
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0122】
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0123】
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0124】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0125】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0126】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0127】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0128】
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
【0129】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0130】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0131】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0132】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0133】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0135】
(合成例1:樹脂(A-1)の合成)
エポキシ当量が162g/eq.の1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン(「EXA-4700」、大日本インキ化学工業社製)162部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、EDGAc(エチルジグリコールアセテート、ダイセル社製)340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価が90mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%、以下、(A-1)と略称する)を得た。
【0136】
<製造例1、2>
下記の配合表に示すように樹脂材料を配合し、高速回転ミキサーを使用して樹脂ワニス1及び2を得た。
【表1】
【0137】
表中の略語等は以下のとおりである。
・(A-1)成分:合成例1で作製した樹脂(A-1)、固形分70%のエチルジグリコールアセテート溶液
・ZFR-1491H:bis-F骨格含有酸変性エポキシアクリレート、日本化薬社製、EDGAcカット、固形分70%
・IrgacureTPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製
・IrgacureOXE-02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、BASF社製
・NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬社製、エポキシ当量約272g/eq.
・ZX1059:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合エポキシ樹脂、新日鉄住金化学社製、エポキシ当量約165g/eq.
・1031S:テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、三菱化学社製、エポキシ当量約200g/eq.
・EDGAc:エチルジグリコールアセテート(カルビトールアセテート)、ダイセル社製、沸点217.4℃
・MEK:メチルエチルケトン、純正化学社製、沸点79.6℃
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬社製
・EBECRYL3708:変性エポキシアクリレート、ダイセルオルネクス社製
・SC2050:溶融シリカ、アドマテックス社製、平均粒径0.5μmを100質量部に対して、アミノシラン(信越化学社製、KBM573)0.5質量部で表面処理したもの
・EP4-A:平均粒径0.8μmの水酸化マグネシウムにアミノシラン(信越化学社製、KBM573)1質量部で表面処理をしたもの、神島化学社製
【0138】
<実施例1>
支持体としてアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。調製した樹脂ワニスをかかる離型PETに乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが25μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で6分間乾燥した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、MA-411、王子エフテックス社製)を感光性樹脂組成物層表面に合わせ、80℃でラミネートすることにより、離型PET、感光性樹脂組成物層、カバーフィルムの三層構成の支持体付き感光性フィルムを得た。ラミネートは、ニッコーマテリアル社製の真空加圧式ラミネーターMVLP-500を用い、温度80℃にて30秒間真空吸引後、温度80℃、圧力7.0kg/cm2の条件で、離型PET上から、耐熱ゴムを介して60秒間プレスすることによりラミネートした。次に、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、温度80℃、圧力5.5kg/cm2の条件で90秒間プレスを行った。
【0139】
<実施例2~5、比較例1~3>
実施例1において、支持体付き感光性フィルムを得るにあたっての乾燥時間及び乾燥時の最高温度を下記表に示す値に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして支持体付き感光性フィルムを得た。
【0140】
<実施例6、比較例4>
実施例1において、感光性樹脂組成物1を感光性樹脂組成物2に変え、支持体付き感光性フィルムを得るにあたっての乾燥時間及び乾燥時の最高温度を下記表に示す値に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして支持体付き感光性フィルムを得た。
【0141】
<重量減少率の測定>
実施例、比較例にて得た支持体付き感光性フィルムを10cm×10cmに裁断した。これらと十分に乾燥したシリカゲルをデシケータに入れ、30分放置した。その後、カバーフィルムを剥離した状態で支持体付き感光性フィルムの質量を測定し、その値を(a1)とした(単位はg)。次に、支持体付き感光性フィルムを130℃のオーブンで15分加熱して、再度支持体付き感光性フィルムの質量を測定し、その値を(a2)とした(単位はg)。上記式(A)からa(支持体付き感光性フィルムを130℃で15分乾燥した時の重量減少率)の値を算出した。また、b(支持体付き感光性フィルムを180℃で15分乾燥した時の重量減少率)についてはオーブンの温度を180℃にすること以外はaと同様にして上記式(B)から算出した。a及びbを算出後、V及びa/bを算出した。
【0142】
<溶融粘度の測定>
支持体付き感光性フィルムの離型PETから感光性樹脂組成物層のみを剥離し、金型で圧縮することにより測定用ペレット(直径18mm、1.2~1.3g)を作製した。測定用ペレットを使用し、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を用い、試料の感光性樹脂組成物層1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を算出した。
【0143】
<埋め込み性の評価>
内層回路基板(IPC MULTI-PURPOSE TESTBOARD No.IPC-B-25、導体厚18μm、0.8mm厚)を用意した。支持体付き感光性フィルムのカバーフィルムを剥離後、かかる基板にバッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて、感光性樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面に支持体付き感光性フィルムをラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、90℃、圧力0.7MPaにて30秒間圧着することにより実施した。次いで、90℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0144】
ラミネート後の内層回路基板の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:銅配線の間にボイドがなく、支持体の外縁から外への樹脂の染み出しが1cm以下である。
△:ボイドがわずかに散見される。
×:樹脂の染み出しが1cm以上である。
【0145】
<ビア底の残渣、アンダーカット耐性の評価>
(評価用積層体の作製)
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次に実施例、比較例により得られた支持体付き感光性フィルムの感光性樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記感光性樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度90℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用いパターン形成装置を用いて、紫外線で露光を行った。露光パターンは開口:100μmの丸穴(ビア)を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに180℃、30分間の加熱処理を行い、開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体とした。
【0146】
(ビア底残渣の評価)
評価用積層体で形成した100μmの丸穴において、以下の基準で評価した。
○:残渣がない。
×:残渣が観察された。
【0147】
(アンダーカット耐性の評価)
評価用積層体で形成した100μmの丸穴において、SEMによる断面観察を行い、断面の最上部の半径(μm)と底部の半径(μm)とを測定し、その差(最上部の半径-底部の半径)を求めた。
【0148】
【0149】
各実施例において、(E)成分及び(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。