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特許7477280ロック偏移測定装置、ロック偏移測定システムおよびロック偏移測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ロック偏移測定装置、ロック偏移測定システムおよびロック偏移測定方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/10 20060101AFI20240423BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20240423BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B61L5/10 Z
H04N23/66
G01B11/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019194461
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021066382
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】小林 和弘
(72)【発明者】
【氏名】齋木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
(72)【発明者】
【氏名】松川 英司
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄一郎
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155929(JP,A)
【文献】特開2018-014572(JP,A)
【文献】特開2015-204021(JP,A)
【文献】特開2013-095333(JP,A)
【文献】特開2019-121337(JP,A)
【文献】特開2019-036030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/10
H04N 23/66
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転てつ機の鎖錠かんに設けられた切り欠きとロックピースとの嵌合箇所を点検するための点検孔から撮影手段によって撮影された撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行う歪み補正処理手段と、
前記歪み補正処理が施された後の画像に対して、前記ロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って透視投影画像を生成する透視投影処理手段と、
前記鎖錠かんの前記切り欠きの部分に欠損が生じていない原状状態のときに前記透視投影画像に写る前記切り欠きの原状形状に基づいて、前記透視投影画像に写っている前記切り欠きから、原状状態のときの当該透視投影画像中の推定原状形状を推定する推定手段と、
前記透視投影画像に基づいて、前記切り欠きに対する前記ロックピースの偏移を算出する算出手段であって、前記推定原状形状に基づいて前記切り欠きの原状状態に対する前記ロックピースの偏移を算出する算出手段と、
を備えたロック偏移測定装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記鎖錠かんの長手方向において、前記ロックピースと前記切り欠きとの左右の隙間の比率を前記偏移として算出する、
請求項1に記載のロック偏移測定装置。
【請求項3】
前記撮影手段と、
請求項1又は2に記載のロック偏移測定装置と、
前記転てつ機の制御部、或いは、鎖錠完了時を検知するために前記転てつ機に設けられたセンサ、から入力される鎖錠完了を示す信号に基づいて、前記撮影手段の撮影を制御する撮影制御手段と、
を具備したロック偏移測定システム。
【請求項4】
転てつ機の鎖錠かんに設けられた切り欠きとロックピースとの嵌合箇所を点検するための点検孔から撮影手段によって撮影された撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行うことと、
前記歪み補正処理が施された後の画像に対して、前記ロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って透視投影画像を生成することと、
前記鎖錠かんの前記切り欠きの部分に欠損が生じていない原状状態のときに前記透視投影画像に写る前記切り欠きの原状形状に基づいて、前記透視投影画像に写っている前記切り欠きから、原状状態のときの当該透視投影画像中の推定原状形状を推定することと、
前記透視投影画像に基づいて、前記切り欠きに対する前記ロックピースの偏移を算出することであって、前記推定原状形状に基づいて前記切り欠きの原状状態に対する前記ロックピースの偏移を算出することと、
を含むロック偏移測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転てつ機のロック偏移を測定するロック偏移測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路の分岐器を転換する転てつ機に関する保守点検項目の1つに、鎖錠かんのロック調整がある。転てつ機は、分岐器を定位/反位に転換させた後にトングレールの位置を保持する鎖錠機構として、トングレールに連結された鎖錠かんと、鎖錠かんに設けられた切り欠きに嵌合するロックピースとを有している。鎖錠かんの切り欠きにロックピースを嵌合(ロック)させて鎖錠かんの移動を阻止することで、トングレールの位置を保持(鎖錠)している。繰り返しの移動や環境温度等によって鎖錠かんとロックピースの相対位置がずれて、ロックピースが鎖錠かんに引っかかって嵌合できなくなるロック狂いと呼ばれる状態があり、このロック狂いは、転てつ機が転換不能となる主原因となっている。ロック調整とは、ロック狂いを事前に防ぐため、嵌合状態(ロック状態)での鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの左右の隙間の間隔が適正範囲となるように鎖錠かんを調整することである。
【0003】
転てつ機には、内部の鎖錠かんとロックピースとの嵌合箇所を外部から目視するための点検孔が設けられている。この点検孔は、点検時以外は開閉可能な蓋で塞がれる。保守点検員は、点検孔の蓋を開けて鎖錠かんとロックピースとの嵌合箇所を目視し、ロック狂いが生じていないか、鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの左右の隙間は適正範囲であるかといったことを確認し、必要に応じてロック調整を行う。
【0004】
しかし、線路には多数の転てつ機が設置されており、その1台1台について、保守点検員が点検孔から鎖錠かんとロックピースとの嵌合箇所を目視で確認してロック調整を行うといった保守点検作業は、非常に煩わしく時間を要する作業であった。また、目視による判断であるから、保守点検員による判断のばらつきも避けられなかった。そこで、転てつ機のロック調整に係る点検保守作業の煩わしさを軽減するために、鎖錠かんを撮影するカメラを転てつ機に設置し、このカメラによる撮像画像を監視室等の遠隔地のモニタに伝送して表示するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-154936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1は、鎖錠かんを監視するシステムであり、転てつ機内部の鎖錠かんとロックピースとの嵌合箇所を直接に監視することはできない。そこで、カメラを点検孔に設置して内部の嵌合箇所を撮影する方策が考えられるが、この場合、次のような問題が生じる。通常、転てつ機は、分岐器の転換方向(定位/反位)それぞれに対応する2個のロックピースを有している。カメラを点検孔に設置する場合、撮影対象のロックピースとは近接することになるから、2個のロックピースを同時に撮影するには、カメラレンズとして広角レンズを用いる必要がある。すると、広角レンズによる撮影画像の歪みが避けられない。このため、撮影画像からは、鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの左右の隙間の間隔が適正範囲となっているかどうか、といったことを直ちに判断することが難しい。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転てつ機の鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの嵌合箇所の撮影画像から、ロック偏移を適切に測定できるようにする技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
転てつ機の鎖錠かんに設けられた切り欠きとロックピースとの嵌合箇所を点検するための点検孔から撮影手段によって撮影された撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行う歪み補正処理手段(例えば、図15の歪み補正部204)と、
前記歪み補正処理が施された後の画像に対して、前記ロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って透視投影画像を生成する透視投影処理手段(例えば、図15の透視投影部208)と、
前記透視投影画像に基づいて、前記切り欠きに対する前記ロックピースの偏移を算出する算出手段(例えば、図15の偏移算出部212)と、
を備えたロック偏移測定装置である。
【0009】
他の発明として、
転てつ機の鎖錠かんに設けられた切り欠きとロックピースとの嵌合箇所を点検するための点検孔から撮影手段によって撮影された撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行うこと(図7のステップS7)と、
前記歪み補正処理が施された後の画像に対して、前記ロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って透視投影画像を生成すること(例えば、図7のステップS11)と、
前記透視投影画像に基づいて、前記切り欠きに対する前記ロックピースの偏移を算出すること(例えば、図7のステップS15)と、
を含むロック偏移測定方法を構成してもよい。
【0010】
第1の発明等によれば、転てつ機の鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの嵌合箇所の撮影画像から、切り欠きに対するロックピースの偏移であるロック偏移を測定することができる。すなわち、撮影画像に対して歪み補正処理を施すことで、例えば広角レンズを用いることによる撮影画像の歪みを補正することができる。そして、歪み補正処理を施した後の画像に対して、透視投影処理を行って透視投影画像を生成するが、透視投影処理を行うことにより、点検蓋の開け閉めや列車通過時の振動等によるカメラ光軸のずれを常に補正することができる。よって、カメラ光軸のずれによる影響が無く、ロックピースの隙間を精度良く測定することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記算出手段は、前記鎖錠かんの長手方向において、前記ロックピースと前記切り欠きとの左右の隙間の比率を前記偏移として算出する、
ロック偏移測定装置である。
【0012】
第2の発明によれば、鎖錠かんの長手方向のロックピースと切り欠きとの左右の隙間の比率が偏移として算出される。転てつ機においては、嵌合状態での鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの左右の隙間の間隔が適正範囲であることが正常な状態であるから、実際の転てつ機のロック調整に係る保守点検作業に沿った形式の測定結果とすることができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記鎖錠かんの前記切り欠きの部分に欠損が生じていない原状状態のときに前記透視投影画像に写る前記切り欠きの原状形状に基づいて、前記透視投影画像に写っている前記切り欠きから、原状状態のときの当該透視投影画像中の推定原状形状を推定する推定手段(例えば、図15の形状推定部210、図7のステップS13)、
を更に備え、
前記算出手段は、前記推定原状形状に基づいて前記切り欠きの原状状態に対する前記ロックピースの偏移を算出する、
ロック偏移測定装置である。
【0014】
第3の発明によれば、鎖錠かんの切り欠きの部分に欠損が生じている場合であっても、透視投影画像に写っている切り欠きから、欠損が生じていないときの原状形状を推定し、その切り欠きの推定原状形状に対するロックピースの偏移(ロック偏移)を算出することができる。これにより、ロック偏移をより正確に測定することができる。
【0015】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記鎖錠かんには、第1の切り欠きと第2の切り欠きとがあり、
前記ロックピースには、前記第1の切り欠きに嵌合する第1のロックピースと、前記第2の切り欠きに嵌合する第2のロックピースとがあり、
前記撮影手段は、前記第1の切り欠きと前記第1のロックピースとによる第1の嵌合、および、前記第2の切り欠きと前記第2のロックピースとによる第2の嵌合、の両方を同一画角内に収めて撮影し、
前記撮影画像、或いは、前記歪み補正処理が施された後の画像、に基づいて、当該画像が、前記第1の嵌合のときの第1の嵌合時画像か、前記第2の嵌合のときの第2の嵌合時画像かを判断する嵌合判断手段(例えば、図15の嵌合判断部206、図7のステップS9)、
を更に備え、
前記透視投影処理手段は、前記嵌合判断手段により第1の嵌合時画像と判断された場合には、前記第1のロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行い、前記嵌合判断手段により第2の嵌合時画像と判断された場合には、前記第2のロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って、前記透視投影画像を生成し、
前記算出手段は、前記嵌合判断手段により第1の嵌合時画像と判断された場合には、前記第1の切り欠きに対する前記第1のロックピースの偏移を算出し、前記嵌合判断手段により第2の嵌合時画像と判断された場合には、前記第2の切り欠きに対する前記第2のロックピースの偏移を算出する、
ロック偏移測定装置である。
【0016】
第4の発明によれば、撮影画像は、第1のロックピースおよび第2のロックピースそれぞれが鎖錠かんの切り欠きと嵌合する両方のケースに対応して、どちらのケースであっても同一画角内に収まるように撮影された画像である。そして、撮影画像、或いは、歪み補正後の画像に基づいて、2個のロックピースのどちらが嵌合したときの画像かが判断され、嵌合しているほうのロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向として視投影撮影画像が生成される。これにより、鎖錠かんと嵌合しているほうのロックピースと切り欠きとの左右の隙間の間隔を正確に測定することができる。
【0017】
第5の発明は、
前記撮影手段と、
第1~第4の何れかの発明のロック偏移測定装置と、
前記転てつ機の制御部、或いは、鎖錠完了時を検知するために前記転てつ機に設けられたセンサ、から入力される鎖錠完了を示す信号に基づいて、前記撮影手段の撮影を制御する撮影制御手段(例えば、図15の撮影制御部202、図7のステップS1~S3)と、
を具備したロック偏移測定システムである。
【0018】
第5の発明によれば、転てつ機の鎖錠完了時に、撮影手段に撮影させるように制御することができる。鎖錠完了時とは、転てつ機の鎖錠かんとロックピースとが嵌合しているときであるから、ロック偏移の測定に適切なタイミングで、鎖錠かんとロックピースとの嵌合箇所の撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ロック偏移測定システムの適用例。
図2】転てつ機の一例を示す図。
図3】転てつ機の一例を示す図。
図4】鎖錠かんおよびロックピース周辺の拡大図。
図5】鎖錠かんの側面図。
図6】点検孔から目視される嵌合箇所の概要図。
図7】ロック偏移の測定手順を説明するフローチャート。
図8】撮影画像の一例。
図9】歪み補正処理後の画像の一例。
図10】透視投影画像の一例。
図11】切り欠きの原状形状推定の説明図。
図12】撮影画像の一例。
図13】歪み補正処理後の画像の一例。
図14】透視投影画像の一例。
図15】ロック偏移測定システムの機能構成図。
図16】ロック偏移測定システムの他の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0021】
[適用例]
図1は、本実施形態のロック偏移測定システムの概略を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のロック偏移測定システム1は、転てつ機7に対する付属的なシステムとして構成されており、転てつ機7の鎖錠かんに設けられた切り欠きに対するロックピースの偏移であるロック偏移を測定するシステムである。ロック偏移測定システム1は、撮影手段である撮影装置3と、ロック偏移測定装置5とを有する。撮影装置3は、転てつ機7の鎖錠かんに設けられた切り欠きとロックピースとの嵌合箇所を撮影する。ロック偏移測定装置5は、撮影装置3による撮影画像に基づいて、転てつ機7の鎖錠かんに設けられた切り欠きに対するロックピースの偏移(ロック偏移)を算出する。また、ロック偏移測定装置5は、通信ネットワークNを介して中央管理装置9と通信が可能であり、算出した転てつ機7のロック偏移を中央管理装置9へ送信する。
【0022】
[転てつ機の構成]
図2図3は、ロック偏移測定システム1が設置された転てつ機7の一例である。図2は、転てつ機7の内部機構の構成例を示す上面図であって、ケース10の上蓋を外して内部が見える状態とした上面図である。図3は、転てつ機7の長手方向中心軸Lに沿った断面図である。なお、ロック偏移測定システム1の理解を容易にするために、転てつ機7内の制御回路や制御リレー、外部端子板等の電気系部品の図示は省略している。
【0023】
図2図3に示すように、転てつ機7は、開閉式のケース10の外側部にモータ12を備えている。また、転てつ機7は、ケース10を貫通してスライド自在に設けられた動作かん16および鎖錠かん18を備えるとともに、ケース10の内部に、鎖錠かん18に貫通して鎖錠かん18との交差方向にスライド自在に設けられたロックピース24(24a,24b)を備えている。
【0024】
モータ12により発生された回転動力は、ケース10の側部を貫通する駆動軸14に接続された減速機構部20で適切なトルクに変換されて転換鎖錠機構部22に伝達される。減速機構部20は、モータ12の駆動力を受ける歯車群であり、モータ12の駆動軸14に取り付けられたピニオンギア20a、これに噛み合うベベルギア20b、その回転軸に取り付けられた第1減速ギア20c、これに噛み合う中間ギア20d、その回転軸に設けられた第2減速ギア20e、これに噛み合う最終歯車である転換ギア20f、を有する。
【0025】
転換鎖錠機構部22は、減速機構部20で減速された回転動力を動作かん16の直動運動に変換するとともに、鎖錠かん18の鎖錠/解錠を行う機構部である。転換鎖錠機構部22による転換は、転換ギア20fの下面に突設された転換ローラ22aと、動作かん16の移動方向と交差方向に動作かん16に刻設された転換カム溝22bとの係合により実現される。すなわち、モータ12の回転方向によって転換ローラ22aの動作方向が時計回り/反時計回りに移動し、転換ローラ22aに係合する転換カム溝22bによって、動作かん16を図2中の左方向/右方向へスライド移動させることができる。動作かん16は、転てつ棒を介して分岐器のスイッチアジャスタに連結されているので、動作かん16を図2中の左方向/右方向へスライド移動させることで、分岐器を定位/反位に転換動作させることができる。動作かん16のスライド移動によってトングレールが移動されると、そのトングレールにフロントロッド及び接続かんを介して連結されている鎖錠かん18がその長手方向のトングレールの定位と反位に対応する位置に移動される。
【0026】
また、鎖錠は、転換ローラ22aと、転換ローラ22aに係合する鎖錠カム溝が上面に刻設された第1鎖錠プレート22cおよび第2鎖錠プレート22dとによって実現される。第1鎖錠プレート22cには、鎖錠かん18に向けてロックピース24aが延設され、第2鎖錠プレート22dには、鎖錠かん18に向けてロックピース24bが延設されている。転換ローラ22aが時計回り/反時計回りに移動することで、第1鎖錠プレート22cおよび第2鎖錠プレート22dの一方が、鎖錠かん18から離れる方向にスライド移動され、他方が鎖錠かん18に近づく方向にスライド移動される。これにより、ロックピース24a,24bの一方が鎖錠かん18から抜けるようにスライド移動され、他方が鎖錠かん18に接近して嵌合するようにスライド移動される。
【0027】
鎖錠かん18は、接続かんを介して分岐器のトングレールの先端部に連結されている。従って、分岐器の定位/反位の転換に応じて、鎖錠かん18は図2中の左方向/右方向へスライド移動されることになる。そして、ロックピース24a,24bのどちらかが鎖錠かん18と嵌合することで、転換後のトングレールが鎖錠されることになる。
【0028】
図4は、転てつ機7における鎖錠かん18およびロックピース24周辺の一部拡大上面図であり、図5は、鎖錠かん18の長手方向に沿った側面図である。図4図5に示すように、鎖錠かん18は、2本の鎖錠かん18a,18bが所定の間隔をおいて連結されて構成されている。2つの鎖錠かん18a,18bは、対向面において、所定の距離をおいて、下側の鎖錠かん18aには上向きに開口する切り欠き19aが形成され、上側の鎖錠かん18bには下向きに開口する切り欠き19bが形成されている。
【0029】
ロックピース24a,24bは、対向する2本の鎖錠かん18a,18bの間を貫通するように配置されており、鎖錠の際に、鎖錠かん18の長手方向に対する交差方向にスライド移動される。ロックピース24aの先端部には、下方に向けて突出して鎖錠かん18aの切り欠き19aに嵌合する突起部25aが形成され、ロックピース24bの先端部には、上方に向けて突出して鎖錠かん18bの切り欠き19bに嵌合する突起部25bが形成されている。転換が開始されるとモータ12の回転力によって切り欠きに嵌合しているロックピース24a,24bの一方が、その先端部が鎖錠かん18から離れるように図4中の右方向にスライド移動されることで解錠される。そして、モータ12の回転力によって動作かん16がスライド移動し始めてトングレールが移動される。するとそのトングレールに連結されている鎖錠かん18が移動する。その後、転換の末期において、動作かん16のスライド移動が完了した後もモータ12は鎖錠のための回転を継続し、ロックピース24a,24bの他方が、その先端部が鎖錠かん18に接近して切り欠きに嵌合するように図4中の左方向にスライド移動される。これにより鎖錠が完了してモータ12の回転が終了する。
【0030】
すなわち、解錠した後、動作かん16のスライド移動によって分岐器のトングレールが定位/反位のどちらかの一方向に転換すると、鎖錠かん18が図4中の下方向にスライド移動するとともに、ロックピース24bが鎖錠かん18に接近するようにスライド移動し、鎖錠かん18bの切り欠き19bにロックピース24bの突起部25bが嵌合することで、一方向に転換された分岐器のトングレールが鎖錠される。同様に、解錠した後、分岐器のトングレールが定位/反位の他方向に転換すると、鎖錠かん18が図4中の上方向にスライド移動するとともに、ロックピース24aが鎖錠かん18に接近するようにスライド移動し、鎖錠かん18aの切り欠き19aにロックピース24aの突起部25aが嵌合することで、他方向に転換された分岐器のトングレールが鎖錠される。ロック偏移測定装置5は、一方向へ転換した場合の鎖錠および他方向に転換した場合の鎖錠の両方の鎖錠時について、鎖錠かん18の切り欠き19とロックピース24の突起部25との嵌合箇所のロック偏移を測定する。
【0031】
図3に示すように、転てつ機7には、モータ12とは反対側のケース10の外側部に、鎖錠かん18の切り欠き19とロックピース24との嵌合箇所を目視点検するための開口である点検孔32が設けられている。この点検孔32を開閉可能に塞ぐ蓋30の内側(蓋30の裏側の凹部)に、本実施形態のロック偏移測定システム1が取り付けられている。ロック偏移測定システム1は、撮影装置3およびロック偏移測定装置5を基板に実装した形態で実現される。
【0032】
撮影装置3は、例えば、静止画を撮影するカメラが用いられる。点検孔32から見て横並びに配置されている2個のロックピース24a,24bを同時に撮影するために、カメラレンズとして広角レンズが用いられる。また、撮影装置3は、点検孔32を通して、切り欠きに嵌合したロックピースの先端部を撮影可能な位置に配設される。具体的には、ロックピース24aの先端部が切り欠き19aに嵌合して鎖錠している状態、および、ロックピース24bの先端部が切り欠き19bに嵌合して鎖錠している状態、の両方を撮影可能な位置および向きに撮影装置3が設置されている。広角レンズで撮像した場合、レンズ歪みが生じる。レンズ歪みの補正は、チェスボード等で取り除いておく。
【0033】
ロック偏移測定装置5は、CPUやDSP等の各種マイクロプロセッサ、ROMやRAM等の各種ICメモリといった電子部品、無線通信モジュールなどにより実現される。
【0034】
また、ロック偏移測定システム1の基板には、点検孔32から見た転てつ機7内部を撮影用に明るく照らすためのLED素子(発光ダイオード素子)や、当該基板に実装されている部品や回路の動作電源を給電するための端子、なども実装されている。動作電源は、転てつ機7の内部に予め設けられている、動作かん16や鎖錠かん18の位置を検出するためのセンサや、転てつ機7に外付けされる各種センサの電源系の配線から分岐して給電することができる。
【0035】
図6は、点検孔32から目視される鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの嵌合箇所の概要図であり、蓋30を開けて矢印方向(図2図3参照)から目視したときの様子を示している。図6(1)は、分岐器のトングレールが定位/反位のどちらかの一方向に転換・鎖錠されているときの状態を示している。つまり、鎖錠かん18が図6中の左方向(図4の下方向に相当)にスライド移動しており、下側の鎖錠かん18bの切り欠き19bにロックピース24bの突起部25bが嵌合している。ロックピース24aは、その先端部が手前側に突出している。また、図6(2)は、分岐器のトングレールが、図6(1)とは異なる他方向に転換・鎖錠されているときである。つまり、鎖錠かん18が図6中の右方向(図4の上方向に相当)にスライド移動しており、上側の鎖錠かん18aの切り欠き19aにロックピース24aの突起部25aが嵌合している。ロックピース24bは、その先端部が手前側に突出している。
【0036】
[ロック偏移の測定]
ロック偏移測定システム1による転てつ機7のロック偏移の測定方法について説明する。図7は、ロック偏移測定システム1による転てつ機7のロック偏移の測定手順を示すフローチャートである。先ず、ロック偏移測定装置5は、転てつ機7の鎖錠が完了すると(ステップS1:YES)、撮影装置3に対して撮影を指示する(ステップS3)。撮影装置3は、撮影の指示に従って撮影を行う。撮影装置3による撮影画像は、ロック偏移測定装置5へ出力される(ステップS5)。
【0037】
ロック偏移測定装置5は、転てつ機7の鎖錠完了を、例えば、連動装置からの転換指示に従ってモータ12を駆動制御する制御回路や制御リレーといった転てつ機7の制御部、或いは、鎖錠完了を検知するために転てつ機7に設けられたセンサ、から入力される鎖錠完了を示す信号によって判定する。鎖錠完了を検知するためのセンサとは、鎖錠かん18の位置を検知する光学センサや、動作かん16の移動完了を検知するセンサ、モータ12の駆動電流を検出する電流センサ、などである。
【0038】
図8は、撮影画像の一例である。この撮影画像は、図6(1)に示した状態の撮影画像に相当し、横並びに写っている2個のロックピース24a,24bのうち、右側のロックピース24bが鎖錠かん18bの切り欠き19bに嵌合しており、左側のロックピース24aが手前方に突出して写っている。
【0039】
ロック偏移測定装置5は、取得した撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行う(ステップS7)。撮影装置3はカメラレンズとして広角レンズを用いているため、その撮影画像には、中心から周縁部に向けて膨らんだような歪みが生じる。つまり、直線形状である鎖錠かん18の切り欠き19やロックピース24の形状が歪んで写ることになる。この歪みを補正するのが歪み補正処理である。
【0040】
図9は、歪み補正処理を施した後の画像の一例である。この画像は、図8の撮影画像に対して歪み補正処理を施した後の画像であり、両者の画像を比較すると、画像周縁部の歪みがもとの直線形状に補正されていることがわかる。
【0041】
次いで、ロック偏移測定装置5は、2個のロックピース24a,24bのうちのどちらが鎖錠かん18の切り欠き19に嵌合している状態であるかを画像から判断する(ステップS9)。この嵌合判断は、撮影画像に基づいて判断してもよいし、或いは、歪み補正処理を施した後の画像に基づいて判断してもよい。
【0042】
具体的には、撮影画像に基づく場合には、撮影画像に写るロックピース24を横断する嵌合判定線L1の位置を予め定めておく。ロックピース24aであれば嵌合判定線L1aを、ロックピース24bであれば嵌合判定線L1bを、画像中の所定位置に設定しておく。そして、撮影画像中の嵌合判定線L1に沿った各画素の受光レベルから、2個のロックピース24a,24bのどちらが鎖錠かん18の切り欠き19に嵌合しているかを判断する。撮影画像には、鎖錠かん18に形成されている2つの切り欠き19a,19bのうち、ロックピース24と嵌合しているほうの切り欠き19が写っているが、撮影装置3は位置および向きが固定して設置されているので、撮影画像中の切り欠き19a,19bそれぞれの位置は殆ど変化しない。このことから、予め撮影した画像から、画像中の切り欠き19a,19bそれぞれを横断するような嵌合判定線L1a,L1bを定めることができる。例えば、図8に示した撮影画像には、図8のように嵌合判定線L1(L1a,L1b)が定められている。
【0043】
撮影画像では、鎖錠かん18の切り欠き19の嵌合していないほうのロックピース24は手前に延出して写るので、延出しているロックピース24と重ならずに写っている切り欠き19を横断するように嵌合判定線L1を定める。図8の撮影画像では、切り欠き19bが写っており、この切り欠き19bの上部を横断するような位置に嵌合判定線L1bが定められている。また、切り欠き19aは写っていないが、写っている撮影画像において切り欠き19aの下部を横断するような位置に嵌合判定線L1aが定められている。
【0044】
撮影画像では、切り欠き19とロックピース24との隙間は他の部分に比較して暗く写る。また、撮影画像に写る切り欠き19やロックピース24の左右方向の長さはほぼ固定である。従って、撮影画像中の2本の嵌合判定線L1a,L1bそれぞれに沿った各画素の受光レベルを所定の閾値と比較するといったことで、2本の嵌合判定線L1a,L1bのどちらが、切り欠き19とロックピース24との隙間が写っている判定線であるか、つまり、2個のロックピース24a,24bのうちのどちらが鎖錠かん18の切り欠き19に嵌合しているときの画像であるかを判断することができる。
【0045】
また、歪み補正処理を施した後の画像に基づく場合も同様である。撮影画像に対して歪み補正処理を施すことで画像中の切り欠き19やロックピース24の位置が異なり得るが、その差はさほど大きくはない。このため、嵌合判定線L2(L2a,L2b)として、撮影画像について定めた嵌合判定線L1(L1a,L1b)を用いるとしてもよいし、撮影画像および撮影画像に対して歪み補正処理を施した画像の両方の画像中の切り欠き19およびロックピース24の位置に基づいて定めた嵌合判定線を用いるとしてもよいし、歪み処理を施した後の画像中の切り欠き19およびロックピース24の位置に基づいて定めた嵌合判定線を用いるようにしてもよい。
【0046】
続いて、ロック偏移測定装置5は、歪み補正処理を施した後の画像に対して、ロックピース24の移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って、透視投影画像を生成する(ステップS11)。撮影画像は、2つのロックピース24a,24bのどちらか一方が、鎖錠かん18の切り欠き19a,19bに嵌合しているときの画像である。従って、切り欠き19と嵌合しているほうのロックピース24の移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影画像を生成する。より好適には、ロックピース24の長手方向の中心軸を投影方向とするとよい。これは、嵌合している切り欠き19とロックピース24との左右の隙間をロック偏移として算出するためである。
【0047】
図10は、透視投影画像の一例であり、図9の画像に対して透視投影処理を行って生成した部分拡大画像である。図9の画像は右側のロックピース24bが切り欠き19aと嵌合しているときの画像であるから、嵌合しているロックピース24bの移動方向に沿った方向を投影方向として透視投影処理して生成した透視投影画像が生成される。また、切り欠き19とロックピース24との隙間をロック偏移として算出する。透視投影画像は、切り欠き19とロックピース24との嵌合箇所が写っている画像部分を拡大するように生成される。この画像に基づいて、切り欠き19とロックピース24との隙間をロック偏移として算出する。なお、透視投影画像は、嵌合箇所の画像部分を拡大しない画像としてもよい。
【0048】
更に、ロック偏移測定装置5は、透視投影画像に写っている切り欠きについて、その推定原状形状を推定する(ステップS13)。図11は、切り欠きの原状形状の推定を説明する図である。転てつ機7の転換動作に伴ってロックピース24がスライド移動するが、そのスライド移動の際に、ロックピース24の先端部が接触した衝撃で、鎖錠かん18の切り欠き19の一部が欠損することがある。切り欠き19の原状形状の推定は、その欠損を補正するものである。
【0049】
図11(1)は、鎖錠かん18の切り欠き19の部分に欠損が生じていない原状状態を示している。原状状態では、透視投影画像中の切り欠き19の形状は長方形形状であり、切り欠き19とロックピース24との左右の隙間はほぼ同じ間隔となっている。
【0050】
そして、図11(2)は、切り欠き19に欠損が生じている状態を示しており、切り欠き19の左側が部分的に欠損している。転てつ機7において、ロックピース24は、鎖錠かん18の切り欠き19と、数ミリ程度の隙間を設けた状態でスライド移動するように構成されている。従って、長方形形状の開口である切り欠き19のうち、角の部分34はロックピース24と接触する可能性は低い。このため、透視投影画像中に写っている切り欠き19の角の部分34を特定し、この角の部分34を基準として、長方形形状である切り欠き19の原状形状を推定する。なお、透視投影画像に写っている切り欠きの形状は、例えば、画素の受光レベルに基づくエッジ検出によって検出することができる。このように、ロック偏移測定装置5は、切り欠きの部分に欠損が生じていない原状状態のときに透視投影画像に写る切り欠きの原状形状に基づいて、透視投影画像に写っている切り欠きから、原状状態のときの当該透視投影画像中の推定原状形状を推定する。
【0051】
図12図14は、切り欠きに欠損が生じている場合の画像例である。図12は、撮影画像であり、図13は、図12の撮影画像に対して歪み補正処理を施した後の画像であり、図14は、図13の画像に対して透視投影処理を行って生成した透視投影画像である。画像に写っている切り欠き19の左側の部分に、欠損が生じている。推定原状形状の推定(図7のステップS13)では、この透視投影画像に写っている切り欠きに対して、図11を参照して説明した推定原状形状の推定が行われ、欠損前の推定原状形状が判断される(ステップS13)。
【0052】
推定原状形状の推定が行われた後、ロック偏移測定装置5は、透視投影画像に基づいて、鎖錠かんの切り欠きに対するロックピースの偏移を算出する(ステップS15)。透視投影画像では、上述のように、切り欠き19とロックピース24との隙間は他の部分に比較して暗く写る。従って、透視投影画像に写る切り欠き19およびロックピース24を横断する隙間判定線L3(L3a,L3b)を予め定めておき、その隙間判定線L3(L3a,L3b)に沿った各画素の受光レベルを所定の閾値を比較するといったことで、隙間判定線L3(L3a,L3b)に沿った方向、つまり、鎖錠かん18の長手方向の切り欠き19とロックピース24との左右の隙間の間隔を算出する。ここで、切り欠き19とロックピース24との隙間は、透視投影画像に写っている切り欠き19の形状から推定した原状形状(推定原状形状)と、ロックピース24との隙間として算出する。そして、算出した左右の隙間の長さの比率をロック偏移とする。隙間の左右の比率は、例えば、5:5、3:7、といったように、10分割の比率として算出する。
【0053】
[機能構成]
図15は、ロック偏移測定システム1の機能構成例である。図15に示すように、ロック偏移測定システム1は、撮影装置3と、ロック偏移測定装置5とを備えて構成される。ロック偏移測定装置5は、機能部として、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータ或いはCPUボードとして構成することができる。
【0054】
通信部108は、例えば、無線通信モジュールで実現され、通信ネットワークNを介して、中央管理装置9といった外部装置と無線通信を行う。
【0055】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、ロック偏移測定装置5を構成する各部への指示やデータ転送を行い、ロック偏移測定装置5の全体制御を行う。また、処理部200は、記憶部300に記憶されたロック偏移測定プログラム302を実行することで、撮影制御部202、歪み補正部204、嵌合判断部206、透視投影部208、形状推定部210、偏移算出部212、の各機能ブロックとして機能する。但し、これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0056】
撮影制御部202は、転てつ機7の制御部、或いは、鎖錠完了時を検知するために転てつ機7に設けられたセンサ、から入力される鎖錠完了を示す信号に基づいて、撮影装置3の撮影を制御する。撮影装置3による撮影画像は、識別番号である画像IDや撮影日時等の付加情報と対応付けて、撮影画像データ310として蓄積記憶される。
【0057】
歪み補正部204は、転てつ機7の鎖錠かん18に設けられた切り欠き19とロックピース24との嵌合箇所を点検するための点検孔32から撮影装置3によって撮影された撮影画像に対して、画像の歪みを補正する歪み補正処理を行う。
【0058】
嵌合判断部206は、撮影装置3による撮影画像、或いは、歪み補正部204により歪み補正処理が施された後の画像、に基づいて、当該画像が、第1の嵌合のときの第1の嵌合時画像か、第2の嵌合のときの第2の嵌合時画像かを判断する。すなわち、転てつ機7が有する2個のロックピース24a,24bの一方である第1のロックピースが、鎖錠かん18に形成された2つの切り欠き19a,19bのうち、第1のロックピースに嵌合する第1の切り欠きに嵌合している第1の嵌合のときの第1の嵌合時画像であるか、2個のロックピース24a,24bの他方である第2のロックピースが、鎖錠かん18に形成された2つの切り欠き19a,19bのうち、第2のロックピースに嵌合する第2の切り欠きに嵌合している第2の嵌合のときの第2の嵌合時画像であるのか、を判断する。判断方法としては、画像に写る切り欠き19およびロックピース24を横断する嵌合判定線L1,L2の位置を予め定めておき、画像中の嵌合判定線L1,L2に沿った各画素の受光レベルから、2個のロックピース24a,24bのどちらが鎖錠かん18の切り欠き19に嵌合しているかを判断する(図8図9図12図13参照)。
【0059】
透視投影部208は、歪み補正部204により歪み補正処理が施された後の画像に対して、ロックピース24の移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って透視投影画像を生成する。また、嵌合判断部206により第1の嵌合時画像と判断された場合には、第1のロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行い、嵌合判断部206により第2の嵌合時画像と判断された場合には、第2のロックピースの移動方向に沿った方向を投影方向とした透視投影処理を行って、透視投影画像を生成する(図10図14参照)。
【0060】
形状推定部210は、鎖錠かん18の切り欠き19の部分に欠損が生じていない原状状態のときに透視投影画像に写る切り欠き19の原状形状に基づいて、透視投影画像に写っている切り欠き19から、原状状態のときの当該透視投影画像中の推定原状形状を推定する(図11参照)。
【0061】
偏移算出部212は、透視投影画像に基づいて、切り欠き19に対するロックピース24の偏移を算出する。具体的には、偏移として、鎖錠かん18の長手方向において、ロックピース24と切り欠き19との左右の隙間の比率を算出する。また、形状推定部210により推定された切り欠き19の推定原状形状に基づいて、切り欠き19の原状状態に対するロックピース24の偏移を算出する。また、嵌合判断部206により第1の嵌合時画像と判断された場合には、第1の切り欠きに対する第1のロックピースの偏移を算出し、嵌合判断部206により第2の嵌合時画像と判断された場合には、第2の切り欠きに対する第2のロックピースの偏移を算出する。算出した偏移は、対象とした撮影画像の画像ID等の付加情報と対応付けて、ロック偏移算出データ320として蓄積記憶される。
【0062】
記憶部300は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現され、処理部200がロック偏移測定装置5を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、通信部108を介した入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、ロック偏移測定プログラム302と、撮影画像データ310と、ロック偏移算出データ320とが記憶される。また、透視投影部208によって透視投影が行われる際の画像処理のパラメータが投影方向別に記憶され、このパラメータを用いた画像処理(画像変換処理)を透視投影部208が行うことで透視投影が実行される。
【0063】
[作用効果]
このように、本実施形態のロック偏移測定システム1によれば、転てつ機7の鎖錠かん18の切り欠き19とロックピース24との嵌合箇所の撮影画像から、切り欠き19に対するロックピース24の偏移であるロック偏移を測定することができる。すなわち、撮影画像に対して歪み補正処理を施すことで、例えば広角レンズを用いることによる撮影画像の歪みを補正することができる。そして、歪み補正処理を施した後の画像に対して、透視投影処理を行って透視投影画像を生成するが、透視投影処理を行うことにより、点検蓋の開け閉めや列車通過時の振動等によるカメラ光軸のずれを常に補正することができる。よって、カメラ光軸のずれによる影響が無くロックピースの隙間を精度良く測定することができる。
【0064】
また、撮影画像は、2個のロックピース24a,24bそれぞれが鎖錠かん18の切り欠き19a,19bと嵌合する両方のケースに対応して、どちらのケースであっても同一画角内に収まるように撮影された画像である。そして、撮影画像、或いは、歪み補正後の画像に基づいて、2個のロックピース24a,24bのどちらが嵌合したときの画像であるのかを判断し、嵌合しているほうのロックピース24の移動方向に沿った方向を投影方向として視投影撮影画像が生成される。これにより、鎖錠かん18と嵌合しているほうのロックピース24と切り欠き19との左右の隙間の間隔を正確に測定することができる。
【0065】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0066】
(A)ロック偏移測定システムの構成
ロック偏移測定システムを、図16に示すように構成しても良い。すなわち、図16(1)に示すように、ロック偏移測定装置5を、例えば駅構内の機器室や中央指令室といった、転てつ機7から離れた場所に設置するようにしても良い。転てつ機7には撮影装置3のみを付属的に設置し、撮影装置3とロック偏移測定装置5とを、無線或いは有線の通信ネットワークで接続する。或いは、図16(2)に示すように、ロック偏移測定装置5が有する撮影制御部202の機能を、ロック偏移測定装置5とは別装置である撮影制御装置6として構成するようにしてもよい。
【0067】
(B)撮影タイミング
また、上述の実施形態では、撮影装置3による転てつ機7の鎖錠かんの切り欠きとロックピースとの嵌合箇所の撮影を、転てつ機7が転換して鎖錠が完了した後に行うことにしたが、撮影タイミングはこれに限らず、例えば、所定時間間隔で行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1…ロック偏移測定システム
3…撮影装置
5…ロック偏移測定装置
200…処理部
202…撮影制御部
204…歪み補正部
206…嵌合判断部
208…透視投影部
210…形状推定部
212…偏移算出部
300…記憶部
302…ロック偏移測定プログラム
310…撮影画像データ
320…ロック偏移算出データ
7…転てつ機
18…鎖錠かん、19…切り欠き
24…ロックピース、25…突起部
9…中央管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16