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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】HARTモデムおよび診断システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/022 20220101AFI20240423BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H04L43/022
G05B23/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019205320
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021078067
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】古澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】籠浦 守
(72)【発明者】
【氏名】深尾 直之
(72)【発明者】
【氏名】津金 宏行
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-203447(JP,A)
【文献】特開平11-338789(JP,A)
【文献】特開2019-045320(JP,A)
【文献】特表2010-504597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/022
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器と上位のホスト装置との通信を中継するように構成された通信変換部と、
データを記憶するように構成された記憶部と、
前記フィールド機器との間で送受信されるHART通信の信号をサンプリングしたデータを前記記憶部に記録するように構成された波形検出部と、
前記通信変換部を通じて前記HART通信の内容を監視し、ユーザから指定された信号の取得タイミングに従って前記波形検出部に対してデータの記録開始と記録停止とを指示するように構成された通信内容監視部と、
前記記憶部に蓄積されたデータを診断装置に送信するように構成された波形取得管理部とを備え、
前記通信内容監視部は、前記波形検出部に対して通信波形取得停止を指示した後に、前記波形取得管理部に対してデータ送信を指示し、
記波形検出部は、前記通信内容監視部から通信波形取得停止の指示を受けたときに、前記データの記録を停止し、
前記波形取得管理部は、前記通信内容監視部からデータ送信の指示を受けたときに、前記記憶部に蓄積されたデータを前記診断装置に送信することを特徴とするHARTモデム。
【請求項2】
請求項1記載のHARTモデムと、
診断装置とを備え、
前記診断装置は、
ユーザからHART通信の信号の取得タイミングの指定を受けたときに、取得タイミングを指示する指示信号を前記HARTモデムに送信するように構成された取得タイミング指示部と、
前記HARTモデムの波形取得管理部によって送信されたデータを受信したときに、受信したデータが示す信号波形を表示するための画像を生成するように構成された波形生成部と、
前記波形生成部によって生成された画像を表示するように構成された表示部とを備えることを特徴とする診断システム。
【請求項3】
請求項1記載のHARTモデムにおいて、
時間を計測する時計部をさらに備え、
前記波形検出部は、前記通信内容監視部の指示に従って、前記HART通信の信号をサンプリングしたデータと前記時計部から取得した時刻情報を示すタイムスタンプとを前記記憶部に記録し、前記通信内容監視部から通信波形取得停止の指示を受けたときに、前記データと前記タイムスタンプの記録を停止し、
前記波形取得管理部は、前記通信内容監視部からデータ送信の指示を受けたときに、前記記憶部に蓄積されたデータとこのデータに添付されたタイムスタンプとを前記診断装置に送信することを特徴とするHARTモデム。
【請求項4】
請求項3記載のHARTモデムと、
診断装置とを備え、
前記診断装置は、
ユーザからHART通信の信号の取得タイミングの指定を受けたときに、取得タイミングを指示する指示信号を前記HARTモデムに送信するように構成された取得タイミング指示部と、
前記HARTモデムの波形取得管理部によって送信されたデータとタイムスタンプとを受信したときに、受信したデータが示す信号波形とこのデータに添付されたタイムスタンプとを表示するための画像を生成するように構成された波形生成部と、
前記波形生成部によって生成された画像を表示するように構成された表示部とを備えることを特徴とする診断システム。
【請求項5】
請求項2または4記載の診断システムにおいて、
ユーザから指定される前記取得タイミングは、HART通信のコマンドの送信開始時点を開始イベントとし、コマンドに対するレスポンスの受信終了時点を終了イベントとするタイミング、レスポンスの受信開始時点を開始イベントとし、次のコマンドの送信終了時点を終了イベントとするタイミング、レスポンスの受信終了時点を開始イベントとし、この開始イベントから一定時間経過後の時点を終了イベントとするタイミングのいずれかであることを特徴とする診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HART通信の信号を確認するためのHARTモデムおよび診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信は、制御システムで用いられている4~20mAの直流電流信号(アナログ信号)にデジタル信号を重畳する通信方式である。HART通信は、既存制御システムのフィールド機器(デバイス)をHART対応品に置き換えた上で、アナログ信号線にHART対応コンフィギュレータ(設定器)を接続することでデバイスの設定に用いられる。また、HART通信は、デバイスの計測データを送受信して監視や制御に用いたり、デバイスの自己診断結果を送受信して、制御システムと並列に接続される機器管理システムで計測値の健全性やデバイスの交換時期を判断したりすることに用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
制御システムの製品寿命は30年以上と長いが、既存制御システムをそのまま使いながら、デバイスをHART対応品に交換し、コンフィギュレータあるいは機器管理システム(まとめてHARTホストと呼ぶ)を制御システムに付加(並列に接続)するだけで、データをやり取りできることが、ユーザにとってのHART通信の利点となっている。
【0004】
ただし、アナログ信号線の配線状況によってはHART通信に必要な負荷抵抗が不足していたり、アナログ信号線がHART通信を妨害するノイズ下の環境に設置されていたりすることがあり、ユーザの望むHART通信ができなかったり、不安定だったりすることがあった。
【0005】
HARTデバイスとHARTホストの設置後、HART通信での読み書きがエラーになると、その原因を調査するため、マルチメータ(テスター)で電圧を測定し、オシロスコープでノイズレベルや、HARTホストから発行されるコマンドのデジタル通信波形、コマンドに対してHARTテバイスが発行するレスポンスのデジタル通信波形を調査する。また必要に応じて、プロトコルアナライザで通信データの内容を確認するなど、様々な機材を駆使して通信エラーの原因究明にあたることになる。しかしながら、オシロスコープによる調査では、デジタル通信波形を取得した後、チェックする箇所を画面上のスクロール等で探す必要があり、手間がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-64766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、HART通信の信号波形の確認を効率良く行うことができるHARTモデムおよび診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のHARTモデムは、フィールド機器と上位のホスト装置との通信を中継するように構成された通信変換部と、データを記憶するように構成された記憶部と、前記フィールド機器との間で送受信されるHART通信の信号をサンプリングしたデータを前記記憶部に記録するように構成された波形検出部と、前記通信変換部を通じて前記HART通信の内容を監視し、ユーザから指定された信号の取得タイミングに従って前記波形検出部に対してデータの記録開始と記録停止とを指示するように構成された通信内容監視部と、前記記憶部に蓄積されたデータを診断装置に送信するように構成された波形取得管理部とを備え、前記通信内容監視部は、前記波形検出部に対して通信波形取得停止を指示した後に、前記波形取得管理部に対してデータ送信を指示し、前記波形検出部は、前記通信内容監視部から通信波形取得停止の指示を受けたときに、前記データの記録を停止し、前記波形取得管理部は、前記通信内容監視部からデータ送信の指示を受けたときに、前記記憶部に蓄積されたデータを前記診断装置に送信することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の診断システムは、HARTモデムと、診断装置とを備え、前記診断装置は、ユーザからHART通信の信号の取得タイミングの指定を受けたときに、取得タイミングを指示する指示信号を前記HARTモデムに送信するように構成された取得タイミング指示部と、前記HARTモデムの波形取得管理部によって送信されたデータを受信したときに、受信したデータが示す信号波形を表示するための画像を生成するように構成された波形生成部と、前記波形生成部によって生成された画像を表示するように構成された表示部とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のHARTモデムの1構成例は、時間を計測する時計部をさらに備え、前記波形検出部は、前記通信内容監視部の指示に従って、前記HART通信の信号をサンプリングしたデータと前記時計部から取得した時刻情報を示すタイムスタンプとを前記記憶部に記録し、前記通信内容監視部から通信波形取得停止の指示を受けたときに、前記データと前記タイムスタンプの記録を停止し、前記波形取得管理部は、前記通信内容監視部からデータ送信の指示を受けたときに、前記記憶部に蓄積されたデータとこのデータに添付されたタイムスタンプとを前記診断装置に送信することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の診断システムは、HARTモデムと、診断装置とを備え、前記診断装置は、ユーザからHART通信の信号の取得タイミングの指定を受けたときに、取得タイミングを指示する指示信号を前記HARTモデムに送信するように構成された取得タイミング指示部と、前記HARTモデムの波形取得管理部によって送信されたデータとタイムスタンプとを受信したときに、受信したデータが示す信号波形とこのデータに添付されたタイムスタンプとを表示するための画像を生成するように構成された波形生成部と、前記波形生成部によって生成された画像を表示するように構成された表示部とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の診断システムの1構成例において、ユーザから指定される前記取得タイミングは、HART通信のコマンドの送信開始時点を開始イベントとし、コマンドに対するレスポンスの受信終了時点を終了イベントとするタイミング、レスポンスの受信開始時点を開始イベントとし、次のコマンドの送信終了時点を終了イベントとするタイミング、レスポンスの受信終了時点を開始イベントとし、この開始イベントから一定時間経過後の時点を終了イベントとするタイミングのいずれかである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザは、HART通信の信号波形の取得タイミングを指定することで、チェックしたい箇所の波形を見ることができ、波形の確認を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る診断システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るHARTモデムの一般的な通信機能を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係る診断装置の信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係るHARTモデムの信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の第2の実施例に係る診断システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の第2の実施例に係る診断装置の信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
図7図7は、本発明の第2の実施例に係るHARTモデムの信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第1~第4の実施例に係るHARTモデムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る診断システムの構成を示すブロック図である。診断システムは、例えば圧力発信機やポジショナ等のフィールド機器であるHARTデバイス1と、診断装置2と、HARTデバイス1と診断装置2またはホスト装置5との通信を中継する通信機器であるHARTモデム3とから構成される。
【0016】
診断装置2は、HARTモデム3との通信を制御する通信インタフェース部20と、ユーザからHART通信の信号の取得タイミングの指定を受けたときに、取得タイミングを指示する指示信号をHARTモデム3に送信する波形取得タイミング指示部21と、画像を表示する通信波形表示部22と、HARTモデム3から送信されたデータを受信したときに、受信したデータが示す信号波形を表示するための画像を生成する通信波形生成部23とを備えている。
【0017】
HARTモデム3は、HARTデバイス1との通信を制御するHART通信部30と、周波数信号(HART信号)とデジタル信号との変換処理を実行するHART/ホスト通信変換部31と、診断装置2またはホスト装置5との通信を制御する通信インタフェース部32と、後述する通信波形一時記憶部に蓄積されたデータを診断装置2に送信する波形取得管理部33と、HART通信の内容を監視し、ユーザから指定された信号の取得タイミングに従って後述する通信波形生成部に対してデータの記録開始と記録停止とを指示する通信内容監視部34と、HARTデバイス1との間で送受信される周波数信号をサンプリングしたデータを後述する通信波形一時記憶部に記録する通信波形検出部35と、通信波形一時記憶部36とを備えている。
【0018】
図1の4はアナログ信号線10,11を介してHARTデバイス1に電源電圧を供給す電源またはI/Oモジュールである。
【0019】
図2はHARTモデム3の一般的な通信機能を説明するフローチャートである。HARTモデム3の通信インタフェース部32は、機器管理システムを構成するホスト装置5から送信されたデジタル信号(コマンド)を受信する(図2ステップS100)。
HARTモデム3のHART/ホスト通信変換部31は、通信インタフェース部32によって受信されたコマンドを周波数信号に変換する(図2ステップS101)。
【0020】
HARTモデム3のHART通信部30は、HART/ホスト通信変換部31によって得られた周波数信号を4~20mA電流信号に重畳させ、アナログ信号線10,11に送り出す(図2ステップS102)。
こうして、HARTデバイス1にコマンドを送信することができる。
【0021】
次に、HART通信部30は、HARTデバイス1から送出された4~20mA電流信号に重畳されている周波数信号を取り出す(図2ステップS103)。
HART/ホスト通信変換部31は、HART通信部30によって取り出された周波数信号からデジタル信号(レスポンス)を再生する(図2ステップS104)。
【0022】
通信インタフェース部32は、HART/ホスト通信変換部31によって得られたレスポンスをホスト装置5に送信する(図2ステップS105)。
こうして、コマンドに対してHARTデバイス1から返されたレスポンスをホスト装置5に送信することができる。
【0023】
なお、図2では、HARTモデム3がホスト装置5とHARTデバイス1との通信を中継する動作について説明しているが、本実施例では、後述のように通信内容監視部34が診断用のコマンドを生成することも可能である。診断用のコマンドをHARTデバイス1に送信する場合には、ステップS101~S104の処理が実施される。
通信インタフェース部32は、診断装置2またはホスト装置5と有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。
図2で説明した動作は、HARTモデム3の一般的な動作である。次に、本実施例の特徴的な動作について説明する。
【0024】
図3は診断装置2の信号波形表示機能を説明するフローチャート、図4はHARTモデム3の信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
診断装置2の波形取得タイミング指示部21は、ユーザからHART通信の信号波形の取得タイミングの指定を受けると(図3ステップS200においてYES)、HARTモデム3に対して信号波形の取得タイミングを指示する指示信号を通信インタフェース部20に渡す。この指示信号は、通信インタフェース部20からHARTモデム3に送信される(図3ステップS201)。取得タイミングの具体的な例については後述する。
【0025】
HARTモデム3の波形取得管理部33は、通信インタフェース部32を介して診断装置2から指示信号を受信すると(図4ステップS300においてYES)、受信した指示信号が示す取得タイミング情報を通信内容監視部34に伝える(図4ステップS301)。
【0026】
通信内容監視部34は、HART/ホスト通信変換部31を通じてHART通信の内容(通信プロトコル)を監視する。そして、通信内容監視部34は、波形取得管理部33から通知された取得タイミング情報で指定された開始イベントを検出したときに(図4ステップS302においてYES)、通信波形検出部35に対して通信波形取得開始を指示する(図4ステップS303)。
【0027】
通信波形検出部35は、通信内容監視部34から通信波形取得開始の指示を受けると、アナログ信号線10,11上の4~20mA電流信号に重畳されている周波数信号を取り出して、周波数信号を一定のサンプリング周期でA/D変換したデジタルデータを通信波形一時記憶部36に記録する(図4ステップS304)。
こうして、周波数信号の波形が通信波形一時記憶部36に記録される。この波形の記録は終了イベントが検出されるまで継続する。
【0028】
次に、通信内容監視部34は、波形取得管理部33から通知された取得タイミング情報で指定された終了イベントを検出したときに(図4ステップS305においてYES)、通信波形検出部35に対して通信波形取得停止を指示した後に(図4ステップS306)、波形取得管理部33に対してデータ送信を指示する(図4ステップS307)。
【0029】
通信波形検出部35は、通信内容監視部34から通信波形取得停止の指示を受けたときに、周波数信号をA/D変換したデジタルデータの記録を停止する(図4ステップS308)。
【0030】
一方、波形取得管理部33は、通信内容監視部34からデータ送信の指示を受けたときに、通信波形一時記憶部36に蓄積されたデジタルデータを通信インタフェース部32に渡す。通信インタフェース部32は、波形取得管理部33から受け取ったデジタルデータを診断装置2に送信する(図4ステップS309)。送信終了後、波形取得管理部33は、通信波形一時記憶部36に蓄積されたデジタルデータを消去する(図4ステップS310)。
【0031】
診断装置2の通信波形生成部23は、通信インタフェース部20を介してHARTモデム3からデジタルデータを受信すると(図3ステップS202においてYES)、受信したデジタルデータが示す信号波形を表示するための画像を生成する(図3ステップS203)。
診断装置2の通信波形表示部22は、通信波形生成部23によって生成された画像を表示する(図3ステップS204)。こうして、HART通信の信号波形を診断装置2で表示することができる。
【0032】
次に、診断装置2のユーザが指定可能な3種類の信号波形の取得タイミングについて説明する。本実施例では、コンピュータやスマートフォンを診断装置2として用いることを想定しており、小画面でも効率良く信号波形を表示するために、以下のような取得タイミングをユーザが指定できるようにしている。
【0033】
(1)取得タイミングの第1の選択肢では、HARTコマンドの送信開始(通信開始)時点を開始イベントとし、コマンドに対するレスポンスの受信終了(通信終了)時点を終了イベントとする。このような取得タイミングを指定することで、通信前後の部分をカットした形で、コマンドとレスポンスの関係を効率良く確認することができる。
【0034】
(2)取得タイミングの第2の選択肢では、レスポンスの受信開始時点を開始イベントとし、次のコマンドの送信終了時点を終了イベントとする。このような取得タイミングを指定することで、レスポンスの終了から次のコマンドの開始までの通信タイミングが正しいか否かを効率良く確認することができる。
【0035】
(3)取得タイミングの第3の選択肢では、レスポンスの受信終了(通信終了)時点を開始イベントとし、この開始イベントから一定時間経過後の時点を終了イベントとする。このような取得タイミングを指定することで、HART通信が行われていないときの4~20mA電流信号に重畳しているノイズの波形を効率良く確認することができる。
【0036】
こうして、本実施例では、ユーザは、HART通信の信号波形の取得タイミングを指定することで、チェックしたい箇所の波形を見ることができ、波形の確認を効率良く行うことができる。
【0037】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図5は本発明の第2の実施例に係る診断システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例の診断装置2aは、通信インタフェース部20と、波形取得タイミング指示部21と、通信波形表示部22aと、通信波形生成部23aとを備えている。
【0038】
本実施例のHARTモデム3aは、HART通信部30と、HART/ホスト通信変換部31と、通信インタフェース部32と、波形取得管理部33aと、通信内容監視部34aと、通信波形検出部35aと、通信波形一時記憶部36と、時間を計測する時計部38とを備えている。
【0039】
図6は診断装置2aの信号波形表示機能を説明するフローチャート、図7はHARTモデム3aの信号波形表示機能を説明するフローチャートである。
診断装置2aのステップS200,S201の処理、およびHARTモデム3aのステップS300~S303の処理は、第2の実施例と同じである。
【0040】
HARTモデム3aの通信波形検出部35aは、通信内容監視部34aから通信波形取得開始の指示を受けると、アナログ信号線10,11上の4~20mA電流信号に重畳されている周波数信号を一定のサンプリング周期でA/D変換したデジタルデータと時計部38から取得した時刻情報を示すタイムスタンプとを通信波形一時記憶部36に記録する(図7ステップS304a)。
こうして、周波数信号の波形と波形の時刻を示すタイムスタンプとが通信波形一時記憶部36に記録される。この波形とタイムスタンプの記録は終了イベントが検出されるまで継続する。
【0041】
HARTモデム3aの通信内容監視部34aは、波形取得管理部33aから通知された取得タイミング情報で指定された終了イベントを検出したときに(図7ステップS305においてYES)、通信波形検出部35aに対して通信波形取得停止を指示した後に(図7ステップS306)、波形取得管理部33aに対してデータ送信を指示する(図7ステップS307)。
【0042】
通信波形検出部35aは、通信内容監視部34aから通信波形取得停止の指示を受けたときに、周波数信号をA/D変換したデジタルデータとタイムスタンプの記録を停止する(図7ステップS308a)。
【0043】
波形取得管理部33aは、通信内容監視部34aからデータ送信の指示を受けたときに、通信波形一時記憶部36に蓄積されたデジタルデータとタイムスタンプとを通信インタフェース部32に渡す。通信インタフェース部32は、波形取得管理部33aから受け取ったデジタルデータとタイムスタンプとを診断装置2aに送信する(図7ステップS309a)。送信終了後、波形取得管理部33aは、通信波形一時記憶部36に蓄積されたデジタルデータとタイムスタンプとを消去する(図7ステップS310a)。
【0044】
診断装置2aの通信波形生成部23aは、通信インタフェース部20を介してHARTモデム3aからデジタルデータとタイムスタンプとを受信すると(図6ステップS202aにおいてYES)、受信したデジタルデータが示す信号波形とデジタルデータに添付されたタイムスタンプとを表示するための画像を生成する(図6ステップS203a)。
診断装置2aの通信波形表示部22aは、通信波形生成部23aによって生成された画像を表示する(図6ステップS204a)。
こうして、本実施例では、HART通信の信号波形と波形の時刻とを診断装置2aで表示することができる。
【0045】
なお、図2では、HARTモデム3がホスト装置5とHARTデバイス1との通信を中継する動作について説明しているが、第1、第2の実施例の通信内容監視部34,34aは、診断用のコマンドを生成することも可能である。例えば通信内容監視部34,34aは、波形取得管理部33から取得タイミング情報を受信したときに診断用のコマンドを生成して、HART/ホスト通信変換部31に渡すようにすればよい。この診断用のコマンドは、ホスト装置5からのコマンドと同様にHARTデバイス1に送信される。
【0046】
第1、第2の実施例において、第1の実施例で説明した(1)~(3)の信号波形の取得を、ユーザが指定するプライマリ通信またはセカンダリ通信のいずれか一方のみに限定できるようにしてもよい。
【0047】
また、第1、第2の実施例において、第1の実施例で説明した(1)~(3)の信号波形の取得を、ユーザが指定するコマンドの通信のみに限定できるようにしてもよい。(2)の場合には、ユーザが指定したコマンドに対するレスポンスの受信開始時点を開始イベントとすればよい。また、(3)の場合には、ユーザが指定したコマンドに対するレスポンスの受信終了時点を開始イベントとすればよい。
【0048】
また、第1、第2の実施例において、通信波形検出部35,35aは、信号波形とタイムスタンプに加えて、HART/ホスト通信変換部31で得られた通信プロトコルデータ(通信の内容)を通信波形一時記憶部36に記録できるようにしてもよい。これにより、信号波形とタイムスタンプだけでなく、HART通信の内容を可視化して表示することが可能になる。
【0049】
第1、第2の実施例で説明したHARTモデム3,3aの構成のうちHART通信部30のソフトウェアの機能とHART/ホスト通信変換部31と通信インタフェース部32のソフトウェアの機能と波形取得管理部33,33aと通信内容監視部34,34aと通信波形検出部35,35aのソフトウェアの機能と通信波形一時記憶部36と時計部38とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図8に示す。
【0050】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、HART通信部30のハードウェアと通信インタフェース部32のハードウェア等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の診断方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【0051】
同様に、診断装置2,2aの構成のうち通信インタフェース部20のソフトウェアの機能と波形取得タイミング指示部21と通信波形表示部22,22aと通信波形生成部23,23aとは、コンピュータによって実現することができる。このコンピュータのI/F202には、通信インタフェース部20のハードウェアとディスプレイ等が接続される。診断装置2,2aのCPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、HART通信に加え、アナログ信号線にデジタル信号を重畳する、例えばベンダ固有の通信プロトコルなど、同様のデジタル通信にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…HARTデバイス、2,2a…診断装置、3,3a…HARTモデム、5…ホスト装置、10,11…アナログ信号線、20,32…通信インタフェース部、21…波形取得タイミング指示部、22,22a…通信波形表示部、23,23a…通信波形生成部、30…HART通信部、31…HART/ホスト通信変換部、33,33a…波形取得管理部、34,34a…通信内容監視部、35,35a…通信波形検出部、36…通信波形一時記憶部、38…時計部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8