(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】タービン翼及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F01D5/18
(21)【出願番号】P 2019205907
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0284939(US,A1)
【文献】特開2000-291405(JP,A)
【文献】特開2000-297604(JP,A)
【文献】特開平10-317904(JP,A)
【文献】特開2017-044092(JP,A)
【文献】特開2017-044093(JP,A)
【文献】特開2008-169845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼高さ方向に延在し、前縁と後縁との間において延在する圧力面及び負圧面を有する翼形部と、
前記翼形部よりも翼先端側に位置するシュラウド部と、
湾曲面により形成され、前記シュラウド部の前記翼形部側の端部に接続されるフィレット部と、
前記翼形部の内部において翼高さ方向に沿って延在する少なくとも1つの第1冷却孔と、
前記シュラウド部の内部に少なくとも部分的に設けられ、前記少なくとも1つの第1冷却孔と連通する少なくとも1つの冷却キャビティと、
前記少なくとも1つの冷却キャビティに接続されるとともに前記シュラウド部の表面に開口する第2冷却孔と、
を備えるタービン翼であって、
前記翼形部は、前記翼高さ方向における基準位置において最大翼厚が最小となる基準翼形を有し、
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、前記翼高さ方向において前記フィレット部と重なるように延在するキャビティを含み、
前記キャビティは、該キャビティを含む前記翼高さ方向に直交する断面において、前記基準翼形の輪郭を前記断面に前記翼高さ方向に投影した領域の内側及び外側に亘って延在し、
前記キャビティの少なくとも一部は、前記フィレット部の前記翼高さ方向の延在領域内に位置
し、
前記キャビティは、
前記翼高さ方向に直交する平面に沿って延在する底面と、
前記フィレット部の前記翼高さ方向の前記延在領域内を前記翼高さ方向に沿って延びるとともに、翼高さ方向視において、前記基準翼形の輪郭を前記断面に前記翼高さ方向に投影した前記領域の外側の領域において前記底面に接続される内壁面と、
を有する
タービン翼。
【請求項2】
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、
前記キャビティとしての前縁側キャビティと、
前記基準位置における前記翼形部のコード方向において前記前縁側キャビティよりも後縁側に位置する後縁側キャビティと、を含み、
前記断面において、前記前縁側キャビティは、前記領域から前記翼形部の負圧面側にはみ出ている
請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、
前縁側キャビティと、
前記基準位置における前記翼形部のコード方向において前記前縁側キャビティよりも後縁側に位置する、前記キャビティとしての後縁側キャビティと、を含み、
前記断面において、前記後縁側キャビティは、前記領域から前記翼形部の圧力面側にはみ出ている
請求項1又は2に記載のタービン翼。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1冷却孔は、前記翼形部のキャンバラインに沿って配列され、前記キャビティの底面に開口する複数の前記第1冷却孔を含み、
前記キャビティは、翼高さ方向視において、前記複数の第1冷却孔のうち前記キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する2つの第1冷却孔の開口の中心同士を結ぶ直線上において、前記2つの第1冷却孔の少なくとも一方の開口の中心と、前記キャビティの内壁面との間の距離は、前記2つの第1冷却孔の中心間距離の0.8倍以上である
請求項1乃至3の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1冷却孔は、前記翼形部のキャンバラインに沿って配列され、前記キャビティの底面に開口する複数の第1冷却孔を含み、
前記キャビティは、翼高さ方向視において、前記複数の第1冷却孔のうち、前記基準位置における前記前縁又は前記後縁に最も近い2つの第1冷却孔の開口の中心同士を結ぶ直線上において、前記複数の第1冷却孔のうち、前記基準位置における前記前縁又は前記後縁に最も近い第1冷却孔の開口の中心と、前記キャビティの内壁面との間の距離は、前記2つの第1冷却孔の開口の中心間距離の1.5倍以上である
請求項1乃至4の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項6】
前記キャビティの前記翼高さ方向における深さは、前記基準位置における前記翼形部のコード方向において前記前縁から前記後縁に向かうに従い大きくなる
請求項1乃至5の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項7】
前記シュラウド部は、前記翼高さ方向に沿って延在し、前記タービン翼に隣接するタービン翼のシュラウド部に対向するコンタクト面を有し、
翼高さ方向視において、前記コンタクト面の延長線が前記キャビティを通過する
請求項1乃至6の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項8】
前記第2冷却孔は、前記キャビティのうち、翼高さ方向視において前記領域の外側に位置する部分に接続された
請求項1乃至7の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項9】
前記シュラウド部から前記翼先端側に突出し、周方向に沿って延在するフィンをさらに備え、
前記第2冷却孔は、翼高さ方向視において、前記フィンを跨いで前記フィンの両側に延在する
請求項1乃至8の何れか一項記載のタービン翼。
【請求項10】
前記第2冷却孔は、前記翼高さ方向において、前記フィレット部と少なくとも部分的に重なるように延びる
請求項1乃至9の何れか一項に記載のタービン翼。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のタービン翼と、
前記タービン翼が設けられる燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスを生成するための燃焼器と、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン翼及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等のタービン翼として、翼先端部に冷却キャビティを設けたタービン翼が用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、翼形部とチップシュラウドとを有し、翼形部に複数の半径方向冷却孔が設けられるとともに、チップシュラウド内に、前述の半径方向冷却孔と連通する内部拡大部(キャビティ)が設けられた、ガスタービンのタービン翼が開示されている。半径方向冷却孔に供給された冷却媒体は、該半径方向冷却孔を通過した後、チップシュラウド内の内部拡大部に導入され、その後、タービン翼の外部に放出される。このようにして、タービン翼の翼形部及びチップシュラウドが冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスタービン等の回転翼(動翼)には、タービンロータの回転に伴い遠心荷重が作用する。タービン翼に大きな遠心荷重がかかるとタービン翼の寿命が短くなり得るため、タービン翼に作用する遠心荷重を低減することが望まれる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、タービン翼に作用する遠心荷重を低減可能なタービン翼及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係るタービン翼は、
翼高さ方向に延在し、前縁と後縁との間において延在する圧力面及び負圧面を有する翼形部と、
前記翼形部よりも翼先端側に位置するシュラウド部と、
湾曲面により形成され、前記シュラウド部の前記翼形部側の端部に接続されるフィレット部と、
前記翼形部の内部において翼高さ方向に延在する少なくとも1つの第1冷却孔と、
前記シュラウド部の内部に少なくとも部分的に設けられ、前記少なくとも1つの第1冷却孔と連通する少なくとも1つの冷却キャビティと、
前記少なくとも1つの冷却キャビティに接続されるとともに前記シュラウド部の表面に開口する第2冷却孔と、
を備えるタービン翼であって、
前記翼形部は、前記翼高さ方向における基準位置において最大翼厚が最小となる基準翼形を有し、
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、前記翼高さ方向において前記フィレット部と重なるように延在するキャビティを含み、
前記キャビティは、該キャビティを含む前記翼高さ方向に直交する断面において、前記基準翼形の輪郭を前記断面に前記翼高さ方向に投影した領域の内側及び外側に亘って延在する。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上述のタービン翼と、
前記タービン翼が設けられる燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスを生成するための燃焼器と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、タービン翼に作用する遠心荷重を低減可能なタービン翼及びガスタービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るタービン翼が適用されるガスタービンの概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係るタービン翼(動翼)を、負圧面から圧力面に向かう方向に見た概略図である。
【
図3】
図2に示すタービン翼を翼高さ方向から視た図であり、
図2のA-A矢視図である。
【
図5】一実施形態にかかるキャビティを翼高さ方向から視た模式図である。
【
図6】一実施形態に係るキャビティを含むタービン翼の断面模式図である。
【
図7】一実施形態に係るキャビティを含むタービン翼の断面模式図である。
【
図8】一実施形態に係るキャビティを含むタービン翼の断面模式図である。
【
図9】一実施形態に係るキャビティを含むタービン翼の断面模式図である。
【
図10】一実施形態に係るキャビティを含むタービン翼を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
(ガスタービンの構成)
まず、幾つかの実施形態に係るタービン翼が適用されるガスタービンについて説明する。
図1は、一実施形態に係るタービン翼が適用されるガスタービンの概略構成図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結される。
【0013】
圧縮機2は、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼18と、を含む。圧縮機2には、空気取入口12から取り込まれた空気が送られるようになっており、この空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気となる。
【0014】
燃焼器4には、燃料と、圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給されるようになっており、該燃焼器4において燃料と圧縮空気が混合され、燃焼され、タービン6の作動流体である燃焼ガスが生成される。
図1に示すように、ケーシング20内にロータを中心として周方向に沿って複数の燃焼器4が配置されていてもよい。
【0015】
タービン6は、タービン車室22内に形成される燃焼ガス流路28を有し、該燃焼ガス流路28に設けられる複数の静翼24及び動翼26を含む。静翼24はタービン車室22側に固定されており、ロータ8の周方向に沿って配列される複数の静翼24が静翼列を構成している。また、動翼26はロータ8に植設されており、ロータ8の周方向に沿って配列される複数の動翼26が動翼列を構成している。静翼列と動翼列とは、ロータ8の軸方向において交互に配列されている。
【0016】
タービン6では、燃焼ガス流路28に流れ込んだ燃焼器4からの燃焼ガスが複数の静翼24及び複数の動翼26を通過することでロータ8が回転駆動され、これにより、ロータ8に連結された発電機が駆動されて電力が生成されるようになっている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気室29を介して外部へ排出される。
【0017】
幾つかの実施形態において、タービン6の動翼26又は静翼24の少なくとも一方は、以下に説明するタービン翼30である。
【0018】
(タービン翼の構成)
以下、幾つかの実施形態に係るタービン翼30についてより詳細に説明する。
図2は、一実施形態に係るタービン翼30(動翼26)を、負圧面から圧力面に向かう方向(ロータ周方向に沿った方向)に見た概略図である。
図3は、
図2に示すタービン翼30を翼高さ方向から視た図であり、
図2のA-A矢視図である。
図4は、
図3のB-B矢視概略断面図である。また、
図10は、
図4とは別の実施形態に係るタービン翼30を示す図であり、
図3のB-B矢視概略断面に相当する図である。なお、
図2において、キャビティの開口を塞ぐためのプラグ(後述;
図4参照)の図示を省略している。
【0019】
図2~
図4に示すように、一実施形態にかかるタービン翼30(動翼26)は、プラットフォーム32と、プラットフォーム32に接続される翼形部34及び翼根部36と、翼形部34よりも翼先端側に位置するシュラウド部52と、シュラウド部52に接続されるフィレット部40と、を備えている。また、タービン翼30は、タービン翼30の翼先端部における流体漏れを低減するためのフィン54を備えている。
【0020】
翼形部34は、翼高さ方向(スパン方向)に延在しており、翼高さ方向における両端部である基端部38及び先端部39を有し、基端部38側にてプラットフォーム32に接続されている。また、翼形部34は、翼高さ方向に沿って延びる前縁42及び後縁44を有するとともに、前縁42と後縁44との間において延在する圧力面46及び負圧面48を有する。なお、翼形部34は、翼高さ方向にて基端部38から先端部39に向かうに従い捩れた形状を有していてもよい。
【0021】
翼根部36は、翼高さ方向においてプラットフォーム32を挟んで翼形部34とは反対側に位置している。翼根部36は、凹凸形状を有する係合部を含み、該係合部がロータ8とともに回転するロータディスク(不図示)に設けられた翼溝に係合されることにより、タービン翼30がタービン6のロータ8に取り付けられる。
【0022】
なお、タービン翼30がロータ8に取り付けられた状態では、翼高さ方向は、タービン6の径方向に沿った方向となる。すなわち、タービン翼30の翼高さ方向とタービン6の径方向とが略一致する。
【0023】
フィレット部40は、
図2又は
図4に示すように、湾曲面に40aより形成され、シュラウド部52の翼形部34側の端部に接続される。フィレット部40は、シュラウド部52のうち、翼高さ直交方向に沿って延在する平坦面52aに接続されていてもよい。湾曲面40aにより形成されるフィレット部40により、シュラウド部52の翼形部34への接続部における応力集中を緩和することができる。
【0024】
ここで、翼高さ方向において翼形部34の最大翼厚が最小となる位置を基準位置PAと定義し、基準位置における翼形部34の翼形を基準翼形34Aと定義する。すなわち、翼形部34は、翼高さ方向における基準位置PAにおいて最大翼厚が最小となる基準翼形34Aを有する。なお、基準位置PAは、翼高さ方向にて基端部38側から先端部39側に向かう方向におけるフィレット部の開始位置に略一致する。
【0025】
なお、
図3には、翼高さ方向に直交する面に翼高さ方向に投影した上述の基準翼形34Aが破線で示されている。基準翼形34Aは、前縁42A及び後縁44Aと、圧力面46A及び負圧面48Aを有する。基準翼形34Aの前縁42Aと後縁44Aとを結ぶ方向が、基準翼形34Aのコード方向である。また、
図3において、基準翼形34AのキャンバラインLc
Aが示されている。以下において、基準翼形34Aの前縁42A、後縁44A、圧力面46A又は負圧面48A等を、単純に前縁42A、後縁44A、圧力面46A又は負圧面48A等ともいう。
【0026】
シュラウド部52は、フィレット部40を介して、翼形部34の先端部39に固定されている。
図3に示すように、シュラウド部52は、タービン6の燃焼ガス流路28(
図1参照)を流れる流体(燃焼ガス)の上流側に位置する上流側端面66と、下流側に位置する下流側端面67と、を有する。また、シュラウド部52は、基準翼形34Aの前縁42A側に位置する第1当接面68(コンタクト面)と、基準翼形34Aの後縁44A側に位置する第2当接面69(コンタクト面)と、を有する。第1当接面68及び第2当接面69は、翼高さ方向に沿って延在するとともに、翼高さ方向視においてロータ8の周方向及び/又は軸方向(以下、単に周方向又は軸方向ともいう。)に交差する方向に延在している。
【0027】
シュラウド部52のコンタクト面(第1当接面68及び第2当接面69)は、隣接するタービン翼30のシュラウド部52に対向するように設けられる。すなわち、あるタービン翼30のシュラウド部52の第1当接面68は、該タービン翼30に隣接するタービン翼30のシュラウド部52の第2当接面69に対向し、該第2当接面69に当接可能である。また、あるタービン翼30のシュラウド部52の第2当接面69は、該タービン翼30に隣接するタービン翼30のシュラウド部52の第1当接面68に対向し、該第1当接面68に当接可能である。これにより、タービン翼30の周方向及び/又は軸方向における移動が規制されるようになっている。
【0028】
フィン54は、シュラウド部52から翼先端側に突出し、周方向に沿って延在するように設けられている。周方向に配列される複数のタービン翼30のフィン54により、環状のシール部が形成される。
【0029】
タービン翼30は、さらに、複数の第1冷却孔60(60a~60i)と、少なくとも1つの冷却キャビティ70(70A,70B)と、複数の第2冷却孔62と、を備えている。
【0030】
複数の第1冷却孔60の各々は、翼形部34の内部において、翼高さ方向に沿って延在している。典型的には、複数の第1冷却孔60は、翼形部34のキャンバラインに沿って配列されている。冷却キャビティ70は、シュラウド部52の内部に少なくとも部分的に設けられ、少なくとも1つの第1冷却孔60と連通している。複数の第2冷却孔62の各々は、冷却キャビティ70に接続されるとともにシュラウド部52の表面に開口している。第2冷却孔62は、シュラウド部52の翼先端側端面52b(
図4参照)に開口していてもよく、あるいは、シュラウド部52の上流側端面66又は下流側端面67に開口していてもよい。
【0031】
なお、冷却キャビティ70の翼高さ方向における翼先端側の端部開口には、該端部開口を塞ぐためのプラグ74が設けられている。これにより冷却キャビティ70内の流体の端部開口からの漏出が抑制されるようになっている。
【0032】
プラグ74は平板形状を有していてもよい。プラグ74は、例えば
図4に示すように、シュラウド部52の翼先端側端面52bに冷却キャビティ70の輪郭に沿って設けられた切欠きに嵌め込まれていてもよい。プラグ74の面とシュラウド部52の翼先端側端面52bとが面一になっていてもよい。あるいは、プラグ74は、例えば
図10に示すように、翼先端側端面52b上に冷却キャビティ70の輪郭に沿って設けられた肉盛り部75に設けられた溝に嵌め込まれていてもよい。あるいは、特に図示しないが、プラグ74は、冷却キャビティ70の内壁面(側壁面)78に設けられた溝に嵌め込まれていてもよい。
【0033】
図2~
図4に示す例示的な実施形態では、少なくとも1つの冷却キャビティ70は、前縁側キャビティ70Aと、基準位置P
Aにおける翼形部34(即ち基準翼形34A)のコード方向(
図3参照)において前縁側キャビティ70Aよりも後縁(44A)側に位置する後縁側キャビティ70Bと、を含む。
【0034】
前縁側キャビティ70Aには、複数の第1冷却孔60a~60eが接続されている。第1冷却孔60a,60b,60c,60d,60eは、キャンバラインLcAに沿って前縁42A側から後縁44A側に向かってこの順に配列されている。後縁側キャビティ70Bには、複数の第1冷却孔60f~60iが接続されている。第1冷却孔60f,60g,60h,60iは、キャンバラインLcAに沿って前縁42A側から後縁44A側に向かってこの順に配列されている。
【0035】
図2~
図4に示す例示的な実施形態では、第1冷却孔60は、冷却キャビティ70の底面76に開口している。また、第2冷却孔62は、冷却キャビティ70の内壁面(側壁面)78に開口している。
【0036】
複数の第1冷却孔60には、タービン翼30の翼根部36の端部に開口する入口開口58を介して冷却流体(例えば空気)が供給されるようになっている。第1冷却孔60に供給された冷却流体は、第1冷却孔60を翼先端側に向かって流れ、第1冷却孔60を通過後、冷却キャビティ70内に滞留される。冷却キャビティ70内の冷却流体は、第2冷却孔62を流れ、シュラウド部52の表面に位置する開口63を介してタービン翼30の外部に放出される。このように、タービン翼30の内部に冷却流体を流すことにより、翼形部34及びシュラウド部52を含むタービン翼30が冷却されるようになっている。
【0037】
幾つかの実施形態では、冷却キャビティ70のうち少なくとも1つは、以下に述べるキャビティ72である。すなわち、キャビティ72は、翼高さ方向においてフィレット部40と重なるように延在するとともに、該キャビティ72を含む翼高さ方向に直交する断面において、基準翼形34Aの輪郭を前記断面に翼高さ方向に投影した領域(
図3の基準翼形34Aとして示す領域)の内側及び外側に亘って延在する。
【0038】
なお、タービン翼30は、キャビティ72の翼高さ方向の延在領域内における少なくとも1つの位置にて上述の断面(キャビティ72が、基準翼形34Aの輪郭の投影領域の内側及び外側に亘って延在するような断面)を有していればよい。例えば、タービン翼30は、翼高さ方向におけるキャビティ72の延在領域の30%以上又は50%以上の範囲にわたり、上述の断面を有していてもよい。
【0039】
図2~
図4に示す例示的な実施形態では、前縁側キャビティ70A及び後縁側キャビティ70Bは、上述のキャビティ72である。
【0040】
例えば、
図4に示すように、フィレット部40は、圧力面46側にて、翼高さ方向における領域Ra1内に延在し、翼厚さ方向における領域Ra2内に延在している。また、フィレット部40は、負圧面48側にて、翼高さ方向における領域Rb1内に延在し、翼厚さ方向における領域Rb2内に延在している。そして、キャビティ72は、翼高さ方向において、圧力面46側におけるフィレット部40の延在領域Ra1又は負圧面48側におけるフィレット部40の延在領域Rb1と少なくとも部分的に重なるように設けられている。
【0041】
また、
図3に示すように、翼高さ方向から視たとき、キャビティ72は、基準翼形34Aの輪郭の内側に延在する内側部分(
図3において、キャビティ72のうちドットで塗りつぶされた部分)と、基準翼形の34の外側に延在する外側部分(
図3において、キャビティ72のうちドットで塗りつぶされていない部分)と、を含む。
【0042】
上述の実施形態によれば、タービン翼30のうち、シュラウド部52を含む翼先端部にキャビティ72(前縁側キャビティ70A及び後縁側キャビティ70B)を設け、該キャビティ72の深さが翼高さ方向においてフィレット部40まで及んでいるとともに、翼高さ方向に直交する断面において、キャビティ72が基準翼形34Aの輪郭の投影領域の内側及び外側に亘って(即ち、基準翼形34Aの輪郭の内側からはみ出すように)延在している。すなわち、翼高さ方向のサイズ、及び、翼高さ方向視におけるサイズが大きなキャビティ72を設けたので、シュラウド部52を含むタービン翼30の翼先端部を効果的に軽量化することができる。これにより、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減して、タービン翼30の寿命短縮を抑制することができる。
【0043】
また、上述の実施形態によれば、該キャビティ72の深さが翼高さ方向においてフィレット部40まで及んでいるので、フィレット部40を効果的に冷却することができる。よって、タービン翼30の寿命短縮を効果的に抑制することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、複数の冷却キャビティ70のうち基準翼形34Aのコード方向(
図3参照)にて前縁42側に位置するキャビティ72は、翼高さ方向に直交する断面上にて、基準翼形34Aの輪郭の投影領域から翼形部34の負圧面48側にはみ出ている。例えば
図3に示すように、翼高さ方向視において、前縁側キャビティ70Aのうち外側部分(基準翼形の34の外側に延在する部分)は、翼形部34(基準翼形)の負圧面48側にはみ出す負圧面側外側部分102を含む。
【0045】
シュラウド部52のうち前縁42側では、通常、負圧面48側の質量が比較的大きいため、シュラウド部52の重心が負圧面48側に偏る要因となり得る。この点、上述の実施形態によれば、翼高さ方向に直交する断面上にて、前縁側キャビティ70Aの輪郭が基準翼形34Aの投影領域の負圧面48側にはみ出ているので、シュラウド部52の前縁42側にて、タービン軸方向におけるシュラウド部52の中央部に重心を近づけることができる。よって、このようにして重心位置を調節することで、タービン翼30における圧力面46側と負圧面48側との応力バランスを調整しながら、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、複数の冷却キャビティ70のうち基準翼形34Aのコード方向(
図3参照)にて後縁44側に位置するキャビティ72は、翼高さ方向に直交する断面上にて、基準翼形34Aの輪郭の投影領域から翼形部34の圧力面46側にはみ出ている。例えば
図3に示すように、翼高さ方向視において、後縁側キャビティ70Bのうち外側部分(基準翼形の34の外側に延在する部分)は、翼形部34(基準翼形)の圧力面46側にはみ出す圧力面側外側部分104を含む。
【0047】
シュラウド部52のうち後縁44側では、通常、圧力面46側の質量が比較的大きいため、シュラウド部52の重心が圧力面46側に偏る要因となり得る。この点、上述の実施形態によれば、翼高さ方向に直交する断面上にて、後縁側キャビティ70Bの輪郭が基準翼形34Aの投影領域の圧力面46側にはみ出ているので、シュラウド部52の後縁44側にて、タービン軸方向におけるシュラウド部52の中央部に重心を近づけることができる。よって、このようにして重心位置を調節することで、タービン翼30における圧力面46側と負圧面48側との応力バランスを調整しながら、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0048】
図5は、一実施形態にかかるキャビティ72(ここでは後縁側キャビティ70B)を翼高さ方向から視た模式図である。
図6~
図8は、それぞれ、一実施形態に係るキャビティ72を含むタービン翼30の断面模式図であり、翼高さ方向と、後述する第1方向又は第2方向を含む平面における断面模式図である。
【0049】
なお、以下において、幾つかの実施形態にかかるタービン翼30の特徴について、キャビティ72の一例として後縁側キャビティ70Bの図(
図5~
図8)を用いて説明するが、例えば上述の前縁側キャビティ70Aの場合についても同様の説明が適用できる。
【0050】
図3~
図8に示すように、後縁側キャビティ70Bに接続される複数の第1冷却孔60f~60iは、翼形部34のキャンバライン(
図3参照)に沿って配列され、後縁側キャビティ70Bの底面76に開口している。
【0051】
幾つかの実施形態では、翼高さ方向視において、キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する2つの第1冷却孔60(
図5においては第1冷却孔60f,60i)の開口の中心(Pf,Pi)同士を結ぶ直線L1上において、上述の2つの第1冷却孔60f,60iの少なくとも一方の開口の中心(Pf,Pi)と、キャビティ72の内壁面78との間の距離(W
L又はW
T)は、2つの第1冷却孔60f,60iの中心間距離W1の0.8倍以上である。なお、この場合、キャビティ72の底面76に開口する第1冷却孔60は、3本以上であってもよい。
【0052】
ここで、翼高さ方向視において、複数の第1冷却孔60f~60iのうち、キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する2つの第1冷却孔60f,60iの開口中心(Pf,Pi)同士を結ぶ直線L1の方向を第1方向と定義する。また、第1方向の直線L1と、キャビティ72の内壁面78との2つの交点は、前縁42側の交点PLと、後縁44側の交点PTと、を含む。
【0053】
上述の距離WLは、直線L1上における、2つの第1冷却孔60f,60iのうち、前縁42側に位置する第1冷却孔60fと、上述の前縁42側の交点PLとの距離WLである。また、上述の距離WTは、直線L1上における、2つの第1冷却孔60f,60iのうち、後縁44側に位置する第1冷却孔60iと、上述の後縁44側の交点PTとの距離である。
【0054】
第1冷却孔60が設けられる位置や第1冷却孔60の大きさ(直径等)は翼形部34によって制限されるため、翼高さ方向視において第1冷却孔60の開口が存在する領域の大きさ(両端の第1冷却孔60f,60iの中心間距離W1)は、翼先端部の翼形(例えば基準翼形34A)に応じて概ね決まる。この点、上述の実施形態では、翼高さ方向視において、キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する第1冷却孔60f,60iの開口の中心同士の距離W1に対し、これらの第1冷却孔60f,60iの一方の開口とキャビティ72の内壁面78との距離WL又はWTが0.8倍以上となる大きなキャビティ72が設けられている。したがって、シュラウド部52を含むタービン翼30の先端部を効果的に軽量化することができ、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、翼高さ方向視において、複数の第1冷却孔60のうち、基準位置PAにおける前縁42A又は後縁44Aに最も近い2つの第1冷却孔の開口の中心同士を結ぶ直線上において、複数の第1冷却孔60のうち、基準位置PAにおける前縁42A又は後縁44Aに最も近い第1冷却孔60の開口の中心と、キャビティ72の内壁面78との間の距離(WL又はWT)は、上述の2つの第1冷却孔60の開口の中心間距離(W2又はW3)の1.5倍以上である。
【0056】
一実施形態では、例えば
図5に示すように、後縁側キャビティ70B(キャビティ72)では、翼高さ方向視において、複数の第1冷却孔60のうち、後縁44Aに最も近い2つの第1冷却孔60h,60iの開口の中心(Ph,Pi)結ぶ直線L2上において、後縁44Aに最も近い第1冷却孔60iとキャビティ72の内壁面78との間の距離W
Tは、上述の2つの第1冷却孔60h,60iの開口の中心間距離W2の1.5倍以上であってもよい。
【0057】
あるいは、一実施形態では、前縁側キャビティ70A(キャビティ72)では、翼高さ方向視において、複数の第1冷却孔60のうち、後縁44Aに最も近い2つの第1冷却孔60f,60gの開口の中心(Pf,Pg)結ぶ直線上(
図5においては直線L2と同一直線)において、前縁42Aに最も近い第1冷却孔60fとキャビティ72の内壁面78との間の距離W
Lは、上述の2つの第1冷却孔60f,60gの開口の中心間距離W3(
図5参照)の1.5倍以上であってもよい。
【0058】
ここで、翼高さ方向視において、複数の第1冷却孔60f~60iのうち、前縁42A又は後縁44Aに最も近い2つの第1冷却孔(第1冷却孔60f,60g、又は、第1冷却孔60h,60i)の開口の中心同士を結ぶ直線(即ち上述の直線L2)の方向を第2方向と定義する。また、第2方向の直線L2と、キャビティ72の内壁面78との2つの交点は、前縁42側の交点P
Lと、後縁44側の交点P
Tと、を含む。なお、
図5に示す実施形態において、第1方向と第2方向は同一の方向である。
【0059】
第1冷却孔60が設けられる位置や第1冷却孔60の大きさ(直径等)は翼形部34によって制限されるため、翼高さ方向視において前縁42A側又は後縁44A側に位置する2つの第1冷却孔60(第1冷却孔60f,60g、又は、第1冷却孔60h,60i)の中心間距離W2又はW3は、翼先端部の翼形に応じて概ね決まる。この点、上述の実施形態では、翼高さ方向視において、キャンバラインに沿った方向にて前縁42A側又は後縁44A側に位置する2つの第1冷却孔60(第1冷却孔60f,60g、又は、第1冷却孔60h,60i)の開口の中心同士の距離W2又はW3に対し、これらの第1冷却孔60の一方の開口とキャビティ72の内壁面78との距離WL又はWTが1.5倍以上となる大きなキャビティ72が設けられている。したがって、シュラウド部52を含むタービン翼30の先端部を効果的に軽量化することができ、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0060】
図6~
図8に示すように、翼高さ方向及び第1方向又は第2方向を含む断面にて、キャビティ72の底面76は、翼高さ方向に直交する方向に沿って延びているとともに、キャビティ72の内壁面78は、翼高さ方向に沿って延びている。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図7又は
図8に示すように、キャビティ72の底面76は、翼高さ方向に直交する方向に対して傾斜していてもよく、あるいは、少なくとも部分的に湾曲面で形成されていてもよい。
【0062】
また、幾つかの実施形態では、
図7又は
図8に示すように、キャビティ72の内壁面78は、翼高さ方向に対して傾斜していてもよく、あるいは、少なくとも部分的に湾曲面で形成されていてもよい。例えば、翼高さ方向及び第1方向又は第2方向を含む断面において、キャビティ72を形成する表面のうち、該表面と翼高さ方向との間に形成される角度θ(
図7参照)、又は、該表面の接線L3と翼高さ方向との間に形成される角度θ(
図8参照)が45度以下である部分を内壁面78と見做してもよい。上述のように、キャビティ72の内壁面78が、翼高さ方向に対して傾斜しているか、又は、少なくとも部分的に湾曲面で形成されている場合、第1冷却孔60の開口中心と内壁面78との距離とは、第1冷却孔60の開口中心と、内壁面78のうち第1冷却孔60に最も近い位置との距離である。
【0063】
図9は、一実施形態に係るキャビティ72を含むタービン翼30の断面模式図であり、翼高さ方向と、基準位置P
Aにおけるコード方向を含む断面における断面模式図である。
【0064】
幾つかの実施形態では、翼高さ方向と、基準位置P
Aにおけるコード方向を含む断面上にて、キャビティ72の翼高さ方向における深さD(
図9参照)は、基準位置P
Aにおける翼形部34のコード方向(基準翼形34Aのコード方向)において前縁42Aから後縁44Aに向かうに従い大きくなる。あるいは、幾つかの実施形態では、翼高さ方向と、基準位置P
Aにおけるコード方向を含む断面上にて、キャビティ72の翼高さ方向における深さD(
図9参照)は、タービン6のロータ8の軸方向において上流側から下流側に向かうに従い大きくなる。
【0065】
なお、基準位置PAでのコード方向における前縁側の点から後縁側の点に向かって移動するとき、軸方向においては上流側から下流側に向かうように移動するから、上述の「コード方向において前縁42Aから後縁44Aに向かうに従い(深さが)大きくなる」と「軸方向において上流側から下流側に向かうに従い(深さが)大きくなる」は、実質的には同義である。
【0066】
図9に示す例示的な実施形態では、前縁側キャビティ70A及び後縁側キャビティ70Bの両方において、キャビティ72の翼高さ方向における深さDが、基準位置P
Aにおける翼形部34のコード方向(基準翼形34Aのコード方向)において前縁42Aから後縁44Aに向かうに従い大きくなっている。
【0067】
上述の実施形態によれば、キャビティ72の翼高さ方向における深さDが、後縁44A(あるいは下流側)に近づくに従い大きくなるようにしたので、シュラウド部52を含むタービン翼30の先端部を効果的に軽量化することができる。例えば、前縁42側から後縁44側に向かうにつれて翼高さ方向の寸法が大きくなるタービン翼30において、後縁44側の部位の翼高さを利用して、後縁44側にてキャビティ72をより深く形成することで、タービン翼30の先端部を効果的に軽量化することができる。よって、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、翼高さ方向視において、シュラウド部52のコンタクト面(第1当接面68又は第2当接面69)の延長線が、キャビティ72を通過する。
図3に示す例示的な実施形態では、翼高さ方向視において、第1当接面68の延長線L4は、前縁側キャビティ70Aを通過している。また、
図3に示す例示的な実施形態では、翼高さ方向視において、第2当接面69の延長線L5は、後縁側キャビティ70Bを通過している。
【0069】
コンタクト面(第1当接面68又は第2当接面69)はシュラウド部52の周方向端部に位置しており、翼高さ方向から視たとき、コンタクト面の延長線(L4又はL5)は、通常、該シュラウド部52の周方向端部を通過する。この点、上述の実施形態では、翼高さ方向視において、コンタクト面の延長線(L4又はL5)がキャビティ72を通過するようにしたので、翼高さ方向視においてキャビティ72がシュラウド部52の周方向端部まで延在している。よって、上述の実施形態によれば、このように周方向端部まで延在する大きなキャビティ72を設けたので、シュラウド部52を含むタービン翼30の先端部を効果的に軽量化することができる。これにより、タービン翼30にかかる遠心荷重を効果的に軽減して、タービン翼30の寿命短縮を抑制することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、第2冷却孔62は、キャビティ72のうち、翼高さ方向視において、翼高さ方向に直交する断面に基準翼形34Aの輪郭を翼高さ方向に投影した領域の外側に位置する部分(即ち、上述の外側部分)に接続される。
【0071】
例えば、
図3及び
図4に示す例示的な実施形態では、前縁側キャビティ70Aに接続される第2冷却孔62は、前縁側キャビティ70Aのうち、翼高さ方向視において、翼形部34(基準翼形)の負圧面48側にはみ出す負圧面側外側部分102に接続される。また、例えば、
図3及び
図4に示す例示的な実施形態では、後縁側キャビティ70Bに接続される第2冷却孔62は、後縁側キャビティ70Bのうち、翼高さ方向視において、翼形部34(基準翼形)の圧力面46側にはみ出す圧力面側外側部分104に接続される。
【0072】
翼高さ方向視において上述の断面上における基準翼形34Aの投影領域からキャビティ72がはみ出す側(圧力面46側又は負圧面48側)では、通常、フィレット部40が比較的大きく、あるいは、シュラウド部52の幅(例えば基準翼形34Aのコード方向に直交する方向の幅)が比較的大きい。この点、上述の実施形態によれば、キャビティ72のうち、翼高さ方向視において上述の断面上における基準翼形34Aの投影領域からはみ出した部位に第2冷却孔62を接続したので、シュラウド部52及びフィレット部40を効果的に冷却することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、例えば
図3及び
図4に示すように、第2冷却孔62は、翼高さ方向視において、フィン54を跨いで該フィン54の両側に延在する。
【0074】
上述の実施形態では、翼高さ方向視においてフィン54を跨いてフィン54の両側に延在するように、比較的長い第2冷却孔62を設けたので、シュラウド部52及びフィレット部40を効果的に冷却することができる。
【0075】
幾つかの実施形態では、例えば
図4に示すように、第2冷却孔62は、翼高さ方向において、フィレット部40と少なくとも部分的に重なるように延びる。
図4に示す例示的な実施形態では、第2冷却孔62は、翼高さ方向において、圧力面46側におけるフィレット部40の延在領域Ra1と部分的に重なるように延びている。また、第2冷却孔62は、負圧面48側におけるフィレット部40の延在領域Rb1と少なくとも部分的に重なるように延びている。
【0076】
上述の実施形態では、翼高さ方向において、フィレット部40と少なくとも部分的に重なるように延びる第2冷却孔62を設けたので、第2冷却孔62に冷却流体を供給することにより、フィレット部40を効果的に冷却することができる。
【0077】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0078】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービン翼(30)は、
翼高さ方向に延在し、前縁(42)と後縁(44)との間において延在する圧力面(46)及び負圧面(48)を有する翼形部(34)と、
前記翼形部よりも翼先端側に位置するシュラウド部(52)と、
湾曲面(40a)により形成され、前記シュラウド部の前記翼形部側の端部に接続されるフィレット部(40)と、
前記翼形部の内部において翼高さ方向に沿って延在する少なくとも1つの第1冷却孔(60)と、
前記シュラウド部の内部に少なくとも部分的に設けられ、前記少なくとも1つの第1冷却孔と連通する少なくとも1つの冷却キャビティ(70)と、
前記少なくとも1つの冷却キャビティに接続されるとともに前記シュラウド部の表面に開口する第2冷却孔(62)と、
を備えるタービン翼であって、
前記翼形部は、前記翼高さ方向における基準位置(PA)において最大翼厚が最小となる基準翼形(34A)を有し、
前記少なくとも1つの冷却キャビティ(70)は、前記翼高さ方向において前記フィレット部と重なるように延在するキャビティ(72)を含み、
前記キャビティ(72)は、該キャビティを含む前記翼高さ方向に直交する断面において、前記基準翼形の輪郭を前記断面に前記翼高さ方向に投影した領域の内側及び外側に亘って延在する。
【0079】
上記(1)の構成によれば、タービン翼のうち、シュラウド部を含む翼先端部にキャビティを設け、該キャビティの深さが翼高さ方向においてフィレットまで及んでいるとともに、翼高さ方向に直交する断面において、キャビティが基準翼形の輪郭の投影領域の内側及び外側に亘って(即ち、基準翼形の輪郭の内側からはみ出すように)延在している。すなわち、翼高さ方向のサイズ、及び、翼高さ方向視におけるサイズが大きなキャビティを設けたので、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができる。これにより、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減して、タービン翼の寿命短縮を抑制することができる。
【0080】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、
前記キャビティ(72)としての前縁側キャビティ(70A)と、
前記基準位置(PA)における前記翼形部のコード方向において前記前縁側キャビティよりも後縁側に位置する後縁側キャビティ(70B)と、を含み、
前記断面において、前記前縁側キャビティは、前記領域から前記翼形部の負圧面側にはみ出ている。
【0081】
シュラウド部のうち前縁側では、通常、負圧面側の質量が比較的大きいため、シュラウド部の重心が負圧面側に偏る要因となり得る。この点、上記(2)の構成によれば、上述の断面上にて、前縁側キャビティの輪郭が基準翼形の投影領域の負圧面側にはみ出ているので、シュラウド部の前縁側にて、タービン軸方向におけるシュラウド部の中央部に重心を近づけることができる。よって、このようにして重心位置を調節することで、タービン翼における圧力面側と負圧面側との応力バランスを調整しながら、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0082】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも1つの冷却キャビティは、
前縁側キャビティ(70A)と、
前記基準位置における前記翼形部のコード方向において前記前縁側キャビティよりも後縁側に位置する、前記キャビティ(72)としての後縁側キャビティ(70B)と、を含み、
前記断面において、前記後縁側キャビティは、前記領域から前記翼形部の圧力面側にはみ出ている。
【0083】
シュラウド部のうち後縁側では、通常、圧力面側の質量が比較的大きいため、シュラウド部の重心が圧力面側に偏る要因となり得る。この点、上記(3)の構成によれば、上述の断面上にて、後縁側キャビティの輪郭が基準翼形の投影領域の圧力面側にはみ出ているので、シュラウド部の後縁側にて、タービン軸方向におけるシュラウド部の中央部に重心を近づけることができる。よって、このようにして重心位置を調節することで、タービン翼における圧力面側と負圧面側との応力バランスを調整しながら、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0084】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記少なくとも1つの第1冷却孔(60)は、前記翼形部(34)のキャンバラインに沿って配列され、前記キャビティの底面(76)に開口する前記複数の第1冷却孔を含み、
前記キャビティは、翼高さ方向視において、前記複数の第1冷却孔のうち前記キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する2つの第1冷却孔(例えば第1冷却孔60f,60i)の開口の中心同士を結ぶ直線(L1)上において、前記2つの第1冷却孔の少なくとも一方の開口と、前記キャビティの内壁面(78)との間の距離(WL又はWT)は、前記2つの第1冷却孔の中心間距離(W1)の0.8倍以上である。
【0085】
第1冷却孔が設けられる位置や第1冷却孔の大きさ(直径等)は翼形によって制限されるため、翼高さ方向視において第1冷却孔の開口が存在する領域の大きさ(両端の第1冷却孔の中心間距離)は、翼先端部の翼形に応じて概ね決まる。上記(4)の構成では、翼高さ方向視において、キャンバラインに沿った方向にて両端に位置する第1冷却孔の開口の中心同士の距離に対し、これらの第1冷却孔の一方の開口の中心とキャビティの内壁面との距離が0.8倍以上となる大きなキャビティが設けられている。したがって、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができ、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0086】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記少なくとも1つの第1冷却孔(60)は、前記翼形部(34)のキャンバラインに沿って配列され、前記キャビティの底面(76)に開口する複数の第1冷却孔を含み、
前記キャビティは、翼高さ方向視において、前記複数の第1冷却孔のうち、前記基準位置における前記前縁又は前記後縁(例えば後縁44)に最も近い2つの第1冷却孔(例えば第1冷却孔60h,60i)の開口の中心同士を結ぶ直線(L2)上において、前記複数の第1冷却孔のうち、前記基準位置における前記前縁又は前記後縁に最も近い第1冷却孔(例えば第1冷却孔60i)の開口の中心と、前記キャビティの内壁面との間の距離(WL又はWT)は、前記2つの第1冷却孔の開口の中心間距離(例えばW3)の1.5倍以上である。
【0087】
第1冷却孔が設けられる位置や第1冷却孔の大きさ(直径等)は翼形によって制限されるため、翼高さ方向視において前縁側又は後縁側に位置する2つの第1冷却孔の中心間距離は、翼先端部の翼形に応じて概ね決まる。上記(5)の構成では、翼高さ方向視において、キャンバラインに沿った方向にて前縁側又は後縁側に位置する2つの第1冷却孔の開口の中心同士の距離に対し、これらの第1冷却孔の一方の開口とキャビティの内壁面との距離が1.5倍以上となる大きなキャビティが設けられている。したがって、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができ、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0088】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記キャビティの前記翼高さ方向における深さ(D)は、前記基準位置における前記翼形部のコード方向において前記前縁(42)から前記後縁(44)に向かうに従い大きくなる。
【0089】
上記(6)の構成によれば、キャビティの翼高さ方向における深さが、後縁に近づくに従い大きくなるようにしたので、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができる。例えば、前縁側から後縁側に向かうにつれて翼高さ方向の寸法が大きくなるタービン翼において、後縁側の部位の翼高さを利用して、後縁側にてキャビティをより深く形成することで、タービン翼の先端部を効果的に軽量化することができる。よって、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減することができる。
【0090】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記シュラウド部(52)は、前記翼高さ方向に沿って延在し、前記タービン翼に隣接するタービン翼のシュラウド部に対向するコンタクト面(例えば第1当接面68又は第2当接面69)を有し、
翼高さ方向視において、前記コンタクト面の延長線(L4又はL5)が前記キャビティを通過する。
【0091】
コンタクト面はシュラウド部の周方向端部に位置しており、翼高さ方向から視たとき、コンタクト面の延長線は、通常、該シュラウドの周方向端部を通過する。この点、上記(7)の構成では、翼高さ方向視において、コンタクト面の延長線がキャビティを通過するようにしたので、翼高さ方向視においてキャビティがシュラウド部の周方向端部まで延在している。よって、上記(7)の構成によれば、このように周方向端部まで延在する大きなキャビティを設けたので、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができる。これにより、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減して、タービン翼の寿命短縮を抑制することができる。
【0092】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記第2冷却孔(62)は、前記キャビティ(72)のうち、翼高さ方向視において前記領域の外側に位置する部分(例えば負圧面側外側部分102又は圧力面側外側部分104)に接続される。
【0093】
翼高さ方向視において上述の断面上における基準翼形の投影領域からキャビティがはみ出す側(前縁側又は負圧面側)では、通常、フィレット部が比較的大きく、あるいは、シュラウド部の幅が比較的大きい。この点、上記(8)の構成によれば、キャビティのうち、翼高さ方向視において上述の断面上における基準翼形の投影領域からはみ出した部位に第2冷却孔を接続したので、シュラウド部及びフィレット部を効果的に冷却することができる。
【0094】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記シュラウド部から前記翼先端側に突出し、周方向に沿って延在するフィン(54)をさらに備え、
前記第2冷却孔(62)は、翼高さ方向視において、前記フィンを跨いで前記フィンの両側に延在する。
【0095】
上記(9)の構成によれば、翼高さ方向視においてフィンを跨いてフィンの両側に延在するように、比較的長い第2冷却孔を設けたので、シュラウド部及びフィレット部を効果的に冷却することができる。
【0096】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、
前記第2冷却孔(62)は、前記翼高さ方向において、前記フィレット部(40)と少なくとも部分的に重なるように延びる。
【0097】
上記(10)の構成によれば、翼高さ方向において、フィレット部と少なくとも部分的に重なるように延びる第2冷却孔を設けたので、フィレット部を効果的に冷却することができる。
【0098】
(11)本発明の少なくとも一実施形態にかかるガスタービン(1)は、
上記(1)乃至(10)の何れか一項に記載のタービン翼(24,26,30)と、
前記タービン翼が設けられる燃焼ガス流路(28)を流れる燃焼ガスを生成するための燃焼器(4)と、
を備える。
【0099】
上記(11)の構成によれば、タービン翼のうち、シュラウド部を含む翼先端部にキャビティを設け、該キャビティの深さが翼高さ方向においてフィレットまで及んでいるとともに、翼高さ方向に直交する断面において、キャビティが基準翼形の輪郭の投影領域の内側及び外側に亘って(即ち、基準翼形の輪郭の内側からはみ出すように)延在している。すなわち、翼高さ方向のサイズ、及び、翼高さ方向視におけるサイズが大きなキャビティを設けたので、シュラウド部を含むタービン翼の先端部を効果的に軽量化することができる。これにより、タービン翼にかかる遠心荷重を効果的に軽減して、タービン翼の寿命短縮を抑制することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0101】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0102】
1 ガスタービン
2 圧縮機
4 燃焼器
6 タービン
8 ロータ
10 圧縮機車室
12 空気取入口
16 静翼
18 動翼
20 ケーシング
22 タービン車室
24 静翼
26 動翼
28 燃焼ガス流路
29 排気室
30 タービン翼
32 プラットフォーム
34 翼形部
34A 基準翼形
36 翼根部
38 基端部
39 先端部
40 フィレット部
40a 湾曲面
42 前縁
42A 前縁
44 後縁
44A 後縁
46 圧力面
46A 圧力面
48 負圧面
48A 負圧面
52 シュラウド部
52a 平坦面
52b 翼先端側端面
54 フィン
58 入口開口
60,60a~60i 第1冷却孔
62 第2冷却孔
63 開口
66 上流側端面
67 下流側端面
68 第1当接面
69 第2当接面
70 冷却キャビティ
70A 前縁側キャビティ
70B 後縁側キャビティ
72 キャビティ
74 プラグ
76 底面
78 内壁面
102 負圧面側外側部分
104 圧力面側外側部分
LcA キャンバライン
PA 基準位置
Ra1 延在領域
Rb1 延在領域