(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】負極樹脂組成物、負極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240423BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240423BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240423BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240423BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240423BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
C08L29/04 A
C08K3/04
C08L9/06
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2019234949
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永井 達也
(72)【発明者】
【氏名】北江 佑守
(72)【発明者】
【氏名】與田 晃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲哉
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/062232(WO,A1)
【文献】特開2015-229716(JP,A)
【文献】特開2017-143027(JP,A)
【文献】特開2009-220526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
10/05-10/0587
10/36-10/39
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材、結着材及び分散剤を含有する負極樹脂組成物であって、前記分散剤が少なくともポリビニルアルコールを含み、前記導電材が少なくともカーボンブラックを含み、前記ポリビニルアルコールの鹸化度が85.5~96.5モル%であり、平均重合度が600~
1700であり、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が16nm~50nmである負極樹脂組成物(但し、結着材として、カルボキシル基を有するアニオン性ビニル系ポリマーと多官能アミンの両方を含むものを除く)。
【請求項2】
前記結着材がスチレン-ブタジエン共重合体である請求項1に記載の負極樹脂組成物。
【請求項3】
導電材、結着材及び分散剤を含有する負極樹脂組成物であって、前記分散剤が少なくともポリビニルアルコールを含み、前記導電材が少なくともカーボンブラックを含み、前記ポリビニルアルコールの鹸化度が85.5~96.5モル%であり、平均重合度が600~1800であり、前記結着材がスチレン-ブタジエン共重合体であり、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が16nm~50nmである負極樹脂組成物(但し、結着材として、カルボキシル基を有するアニオン性ビニル系ポリマーと多官能アミンの両方を含むものを除く)。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールの平均重合度が600~1300である請求項1
~3のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックの比表面積が35m
2/g~400m
2/gである請求項1
~4のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物。
【請求項6】
前記分散剤と導電材の固形分で比べたときの質量比{分散剤の質量/導電材の質量}が0.03~0.15である請求項1~
5のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物を含む負極。
【請求項8】
請求項
7に記載の負極を備えた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極樹脂組成物、負極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
環境・エネルギー問題の高まりから、化石燃料への依存度を減らす低炭素社会の実現に向けた技術の開発が盛んに行われている。このような技術開発の例としては、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の低公害車の開発、太陽光発電や風力発電等の自然エネルギー発電・蓄電システムの開発、電力を効率よく供給し、送電ロスを減らす次世代送電網の開発等があり、多岐に渡っている。
これらの技術に共通して必要となるキーデバイスの一つが電池であり、このような電池に対しては、システムを小型化するための高いエネルギー密度が求められる。また、使用環境温度に左右されずに安定した電力の供給を可能にするための高い出力特性が求められる。さらに、長期間の使用に耐えうる良好なサイクル特性等も求められている。そのため、従来の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池から、より高いエネルギー密度、出力特性およびサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池への置き換えが急速に進んでいる。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の負極は、負極活物質及び結着材(バインダー)を含有する電極ペーストを、集電体に塗工することにより製造されている。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、ケイ素化合物、チタン酸リチウム等が用いられてきた。最近では、リチウムイオンの受入れ性を向上させて、充放電時間を短縮するためや、充放電時に負極活物質が繰り返し膨張収縮して導電性が損なわれるのを防止するために、アグリゲート(一次粒子が複数融着した構造:一次凝集体)が発達したカーボンブラックや、円筒状で結晶が発達したカーボンナノチューブ等の導電材を添加することが検討されている。
【0004】
負極での導電材の基本的な役割は二つある。一つ目は、負極活物質間に均一な導電経路を形成することであり、充放電時に負極活物質が繰り返し膨張収縮して導電性が損なわれるのを防止する。二つ目は、リチウムイオンが溶解した電解液を保液して、全ての負極活物質に十分なリチウムイオンを供給することであり、充放電時にリチウムイオンの供給が不足して、電池性能が損なわれるのを防止する。そのため、負極作製において、導電材として使用されるカーボンブラックは、平均一次粒子径と比表面積の大きさがある範囲内に制御されていることが重要である。制御が十分でない場合や負極活物質間での分散が悪い場合には、負極活物質とカーボンブラックの接触が十分得られず、導電経路が確保できなくなると共に、一部の活物質にしか十分なリチウムイオンの供給ができなくなる。結果として、電極内に導電性や電解液の保液性が劣る部分が局所的に現れ、負極活物質が有効に利用されずに放電容量が低下したり、電池の寿命が短くなったりする原因となっている。
【0005】
そこで、特許文献1には、負極活物質、導電材、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体からなる結着材、及び分散助剤を用いたリチウムイオン二次電池電極用合剤についての技術が開示されている。特許文献1によれば、このような構成とすることで、リチウムイオン二次電池電極用合剤の保存安定性が増し、その合剤により作製した負極を用いた電池は、50サイクル後の保持率が良好になることが記されている。
【0006】
また特許文献2には、負極活物質、導電材及び鹸化度が87~99.9モル%のポリビニルアルコール樹脂である結着材を電極合剤層に用いた非水電解質二次電池用負極についての技術が開示されている。特許文献2によれば、この負極を用いた電池は、100サイクル後の容量維持率が良好になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-201267号公報
【文献】特開2016-181414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、リチウムイオン二次電池の負極の結着材として、ポリビニルアルコールやその共重合体を用いる技術が従来提案されてきたが、未だ実用上十分な分散性と電池性能を両立する技術はなかった。例えば特許文献1に開示された技術によれば、導電材の分散性が向上するものの、この技術を用いた負極をリチウムイオン二次電池に用いると、高い電流負荷での放電時に放電容量が低下してしまう問題があった。しかし、現在のリチウムイオン二次電池市場では、高い電流負荷での充電・放電でも容量が低下しない性能が望まれており、分散性と電池性能を両立した負極樹脂組成物が必要不可欠である。
【0009】
本発明は、上記問題と実情に鑑み、分散性と電池性能に優れた負極樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。加えて、本発明は、この負極樹脂組成物を用いて製造される極板抵抗が低い負極、更にこの負極を用いて製造される放電レート特性及びサイクル特性に優れた二次電池を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の鹸化度を有するポリビニルアルコールを分散剤として含有し、且つ、特定の平均一次粒子径を有するカーボンブラックを導電材として含有する負極樹脂組成物を用いることにより、上記課題が解決できることを見出した。
具体的には、本発明者は、導電材としてカーボンブラック、結着材、及び分散剤として特定の鹸化度を有するポリビニルアルコールを含有する負極樹脂組成物を用いて製造した負極は、極板抵抗が低く、加えて、この負極を用いて製造した二次電池は、放電レート特性及びサイクル特性に優れることを見出した。本発明は当該知見に基づき、完成されたものである。
【0011】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記に例示される。
[1]
導電材、結着材及び分散剤を含有する負極樹脂組成物であって、前記分散剤が少なくともポリビニルアルコールを含み、前記導電材が少なくともカーボンブラックを含み、前記ポリビニルアルコールの鹸化度が85.5~96.5モル%であり、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が16~50nmである負極樹脂組成物。
[2]
前記ポリビニルアルコールの平均重合度が250~1800である[1]に記載の負極樹脂組成物。
[3]
前記カーボンブラックの比表面積が35~400m2/gである[1]又は[2]に記載の負極樹脂組成物。
[4]
前記分散剤と導電材の固形分で比べたときの質量比{分散剤の質量/導電材の質量}が0.03~0.15である[1]~[3]のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物。
[5]
前記結着材がスチレン-ブタジエン共重合体である[1]~[4]のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の負極樹脂組成物を含む負極。
[7]
[6]に記載の負極を備えた二次電池。
なお、本明細書において、特にことわりがない限り、「~」という記号は両端の値「以上」および「以下」の範囲を意味する。例えば、「A~B」というのは、A以上、B以下であるという意味である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、分散性及び電池性能に優れた負極樹脂組成物を提供することができる。
本発明の一実施形態によれば、極板抵抗が低い負極を提供することができる。
本発明の一実施形態によれば、放電レート特性及びサイクル特性に優れた二次電池を提供することができる。
また、本発明の好適な実施態様によれば、エネルギー密度が高く、放電レート特性、サイクル特性に優れた二次電池を簡便に得ることができる負極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に用いられるリチウムイオン二次電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
以下、本発明の構成材料について詳細に説明する。
【0016】
<導電材>
本発明における導電材は、少なくともカーボンブラックを含有する。導電材中のカーボンブラックの含有濃度は例えば50質量%以上とすることができ、好ましくは70質量%以上とすることができ、より好ましくは90質量%以上とすることができる。導電材としてカーボンブラックのみを使用することもできる。カーボンブラックは、一般の電池用導電材としてのカーボンブラック同様、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどの中から選ばれるものである。中でも、結晶性及び純度に優れるアセチレンブラックが好ましい。
【0017】
本発明におけるカーボンブラックの平均一次粒子径は16~50nmであることが好ましい。平均一次粒子径を好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下とすることで、負極活物質及び集電体との接点が多くなり、良好な導電性付与効果と保液性が得られる。平均一次粒子径を16nm以上、より好ましくは18nm以上とすることで、粒子間の相互作用が抑制されるため、負極活物質の間に均一に分散され、良好な導電経路と保液性が得られる。この観点から、カーボンブラックの平均一次粒子径は18~40nmであることがより好ましい。なお、本発明において、カーボンブラックの平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡などで撮影した写真をもとに測定した粒子径を平均した値である。具体的には、透過電子顕微鏡JEM-2000FX(日本電子社製)を用いて10万倍の画像5枚を撮影し、無作為に抽出した200個以上の1次粒子について画像解析により粒子径を求め、それらの個数平均を算出することによって測定した。なお、粒子径とは、一次粒子の円相当径のことである。
【0018】
本発明におけるカーボンブラックの比表面積は35~400m2/gであることが好ましい。比表面積を400m2/g以下とすることで、粒子間の相互作用が抑制されるため、負極活物質の間に均一に分散され、良好な導電経路と保液性が得られ易くなる。また、35m2/g以上、より好ましくは40m2/g以上とすることで、負極活物質及び集電体との接点が多くなり、良好な導電性付与効果と保液性が得られ易くなる。なお、本発明において、比表面積は、JIS K6217-2:2017に準拠して測定した単点法窒素吸着比表面積を指す。
【0019】
本発明におけるカーボンブラックの体積抵抗率はとくに限定されるものではないが、導電性の観点から低いほど好ましい。具体的には、7.5MPa圧縮下で測定した体積抵抗率は0.30Ω・cm以下が好ましく、0.25Ω・cm以下がより好ましい。
【0020】
本発明におけるカーボンブラックの灰分及び水分は特に限定されるものではないが、副反応の抑制の観点から、どちらも少ないほど好ましい。具体的には、灰分は0.04質量%以下が好ましく、水分は0.10質量%以下が好ましい。
【0021】
<結着材>
本発明で用いる結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。結着材としてのポリマーの構造には制約がなく、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらの中では、電池性能の点でスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。
【0022】
<分散剤>
本発明で用いる分散剤は、少なくともポリビニルアルコール(以下、PVAと略すことがある。)を含有する。分散剤中のPVAの含有濃度は例えば50質量%以上とすることができ、好ましくは70質量%以上とすることができ、より好ましくは90質量%以上とすることができる。分散剤としてPVAのみを使用することもできる。PVAはそれ自体既知の重合方法、例えば、酢酸ビニルに代表される脂肪酸ビニルエステルを重合し、加水分解することにより得ることができる。
【0023】
上記脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルおよびその他の直鎖または分岐状の飽和脂肪酸ビニルエステルが挙げられる。なかでも酢酸ビニルが好ましい。
【0024】
上記ポリビニルアルコールは、脂肪酸ビニルエステル以外の重合性不飽和モノマーと共重合して得ることもできる。脂肪酸ビニルエステルと共重合可能な重合性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;アルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有モノマー;アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル系化合物;アルキルビニルエーテル、4-ヒドロキシビニルエーテルなどのビニルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0025】
ポリビニルアルコールの重合方法は、それ自体既知の重合方法、例えば、酢酸ビニルをアルコール系有機溶媒中で溶液重合してポリ酢酸ビニルを製造し、これを鹸化する等の方法により製造することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0026】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0027】
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30~150℃程度の範囲で設定することができる。
【0028】
ポリビニルアルコールを製造する際の鹸化条件は特に限定されず、公知の方法で鹸化することができる。一般的には、メタノール等のアルコール溶液中において、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で、分子中のエステル部を加水分解することで行うことができる。アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物や、アルコラート等を用いることができる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p-トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができるが、水酸化ナトリウムを用いることが望ましい。鹸化反応の温度は、特に限定されないが、好ましくは10~70℃、より好ましくは30~40℃の範囲であることが望ましい。反応時間は、特に限定されないが、30分~3時間の範囲で行なうことが望ましい。
【0029】
本発明におけるポリビニルアルコールの鹸化度は85.5~96.5モル%であることが好ましい。鹸化度を96.5モル%以下とすることで、N-メチル-2-ピロリドン等の溶媒への溶解性が高まるため、導電材の分散性が向上し、均一で低粘度の負極樹脂組成物を含むスラリーが得られ易くなる。鹸化度を85.5モル%以上とすることで、高い耐電圧性を得られ易くなる。尚、ここでいうポリビニルアルコールの鹸化度は、JIS K 6726:1994に準ずる方法で測定される値である。
【0030】
本発明におけるポリビニルアルコールの平均重合度は250~1800であることが好ましい。平均重合度を好ましくは1800以下、より好ましくは1300以下とすることで、N-メチル-2-ピロリドン等の溶媒への溶解性が高まるため、導電材の分散性が向上し、均一で低粘度の負極樹脂組成物を含むスラリーが得られ易くなる。平均重合度を250以上、より好ましくは500以上とすることで、負極活物質及び導電材の分散性が高まり、良好な導電経路が得られ易くなる。尚、ここでいう平均重合度は、JIS K 6726:1994に準ずる方法で測定される値である。
【0031】
<負極活物質>
負極活物質としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛や難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素ポリアセン等の炭素材料、ケイ素原子含有物質、スズ原子含有物質及びチタン酸リチウム等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中では、炭素材料、及びケイ素原子含有物質から選択される少なくとも1種以上が好ましく、黒鉛、及びケイ素原子含有物質から選択される少なくとも1種以上がより好ましい。
【0032】
ケイ素原子含有物質としては、例えば、(i)シリコン微粒子、(ii)マグネシウム、カルシウム、リチウム、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、モリブデン、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、タンタル、ビスマス、バナジウム、タングステン、ニオブ、アンチモン又はクロムと、珪素との合金又は化合物、(iii)ホウ素、窒素、酸素又は炭素と珪素との化合物等が挙げられる。珪素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOx(0<x≦2)あるいはLiSiO等が挙げられる。
スズ原子含有物質としては、例えば、(i)珪素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン又はクロムと、スズとの合金又は化合物、(ii)酸素又は炭素とスズとの化合物等が挙げられる。
【0033】
<増粘剤>
負極樹脂組成物の粘度調整のために増粘剤を適宜添加することが可能である。後述する分散媒が水である場合、増粘剤は、ポリエチレングリコール、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリ(N-ビニルアミド)、ポリ(N-ビニルピロリドン)及びこれらの誘導体等が挙げられる。それらの中でも、増粘剤は、ポリエチレングリコール、セルロース及びこれらの誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロース(CMC)がさらに好ましい。
【0034】
<負極樹脂組成物>
本発明に用いる負極樹脂組成物の製造には公知の方法を用いることができる。例えば、負極活物質、導電材、結着材及び分散剤の溶媒分散溶液をボールミル、サンドミル、二軸混練機、自転公転式攪拌機、プラネタリーミキサー、ディスパーミキサー等により混合することで得られ、一般的には、スラリーにして用いられる。負極樹脂組成物には増粘剤等の慣用成分を添加することも可能である。前記の負極活物質、導電材、結着材及び分散剤としては、既述したものを用いれば良い。負極樹脂組成物を含むスラリーの分散媒としては、水、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。高分子結着材としてスチレン-ブタジエン共重合体を使用する際は水が好ましく、ポリフッ化ビニリデンを使用する際は、溶解性の点でN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
【0035】
本発明に用いる負極樹脂組成物中の分散剤と導電材の固形分で比べたときの質量比{分散剤の質量/導電材の質量}は0.03~0.15であることが好ましく、0.04~0.12がより好ましく、0.05~0.1が最も好ましい。負極樹脂組成物中の分散剤と導電材の質量比を0.03~0.15にすることで分散剤が導電材に吸着し、より高い分散効果が得られ易くなり、0.05~0.1にすることでより高い分散効果に加えて、過剰な分散剤が導電材表面を被覆し電荷移動反応を妨害する効果を抑えるので、電池の高抵抗化を抑制できる。
【0036】
<負極>
本発明に用いる負極は以下の手順で作製可能である。まず、上記の負極樹脂組成物を含むスラリーを銅箔等の集電体上に塗布した後、加熱によりスラリーに含まれる溶媒を除去し、負極活物質が結着材を介して集電体表面に結着された多孔質体である負極合材層を形成する。次いで、集電体と負極合材層をロールプレス等により加圧して密着させることにより、目的とする負極を得ることができる。
【0037】
<リチウムイオン二次電池>
本発明に用いられるリチウムイオン二次電池の作製方法には、特に制限は無く、従来公知の電池の作製方法を用いて行えば良いが、例えば、
図1に模式的に示した構成で、以下の方法により作製することもできる。すなわち、正極1にアルミ製タブ5を溶接し、前記の負極を用いた負極2にニッケル製タブ6を溶接した後、正極1と負極2の間に絶縁層となるポリオレフィン製微多孔膜3を配し、正極1、負極2およびポリオレフィン製微多孔膜3の空隙部分に非水電解液が十分に染込むまで注液し、外装4で封止することで作製することができる。
【0038】
本発明のリチウムイオン二次電池の用途は、特に限定されないが、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤー、携帯液晶テレビ等の携帯AV機器、ノート型パソコン、スマートフォン、モバイルPC等の携帯情報端末、その他、携帯ゲーム機器、電動工具、電動式自転車、ハイブリッド自動車、電気自動車、電力貯蔵システム等の幅広い分野において使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その趣旨を損なわない限り、以下に示す実施例に限定されるものではない。また、実施例および比較例ともに使用した負極は、吸着した水分を揮発させるために100℃で4時間真空乾燥を行った。
【0040】
<実施例1>
(負極樹脂組成物を含むスラリーの調製)
溶媒として純水(関東化学社製)、導電材としてカーボンブラック(デンカ社製、「Li-435」、以下、Li-435と記載)、分散剤としてポリビニルアルコール(ポリビニルアルコールAと記載)、結着材としてスチレン-ブタジエン共重合体(以下、SBRと記載)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記載)、活物質として人造黒鉛(Shenzhen BTR社製、「AGP-2A」)をそれぞれ用意した。Li-435が固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.1質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.1)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%となるように秤量して混合し、この混合物に純水を添加し、自転公転式混合機(シンキー社製、「あわとり練太郎ARV-310」)を用いて、均一になるまで混合した。さらに、SBRが固形分で1.9質量%となるように秤量し、上記混合物に添加し、自転公転式混合機(シンキー社製、「あわとり練太郎ARV-310」)を用いて、均一になるまで混合し、固形分濃度50質量%の負極樹脂組成物を含むスラリーを得た。
【0041】
[分散性の評価(負極樹脂組成物を含むスラリーの粘度)]
負極樹脂組成物を含むスラリーの分散性をJIS K7244-10に記載される回転型レオメータを用いた方法で粘度を評価した。具体的には、回転型レオメータ(アントンパール社製、「MCR300」)を用いて、固形分含有量が50質量%の負極樹脂組成物を含むスラリー1gをディスク上に塗布し、せん断速度を100s-1から0.01s-1まで変化させて測定を行い、せん断速度1s-1の粘度を評価した。粘度の数値が低い程、良好な分散性を意味する。本実施例の粘度は、3.5Pa・sであった。
【0042】
(負極の作製)
負極樹脂組成物を含むスラリーを、厚さ10μmの銅箔(UACJ社製)上にアプリケータにて成膜し、乾燥機内に静置して60℃、一時間で予備乾燥させた。次に、ロールプレス機にて100kg/cmの線圧でプレスし、厚さ10μmの銅箔を含んだ塗膜の厚さが50μmになるように調製した。残留水分を完全に除去するため、120℃で3時間真空乾燥して負極を得た。
【0043】
[負極の極板抵抗評価]
作製した負極を直径14mmの円盤状に切り抜き、表裏をSUS304製平板電極によって挟んだ状態で、電気化学測定システム(ソーラトロン社製、「ファンクションジェネレーター1260」および「ポテンショガルバノスタット1287」)を用いて、振幅電圧10mV、周波数範囲1Hz~100kHzにて交流インピーダンスを測定した。得られた抵抗成分値に、切り抜いた円盤状の面積を掛けた抵抗値を極板抵抗とした。本実施例の負極の極板抵抗は1.2Ω・cm2であった。
【0044】
(正極の作製)
溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(関東化学株式会社製、以下、NMPと記載)、結着材としてポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、「HSV900」、以下、PVdFと記載)、導電材としてカーボンブラック(デンカ社製、「Li-435」、以下、Li-435と記載)、分散剤としてポリビニルアルコール(ポリビニルアルコールAと記載)、活物質としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(ユミコア社製、「TX10」平均一次粒子径(D50)10μm、以下、「NMC532」と記載)をそれぞれ用意した。PVdFが固形分で1.9質量%、Li-435が固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.1質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.1)、NMC532が固形分で97質量%となるように秤量して混合し、この混合物に固形分含有量が68質量%になるようにNMPを添加し、自転公転式混合機(シンキー社製、「あわとり練太郎ARV-310」)を用いて、均一になるまで混合し正極樹脂組成物を含むスラリーを得た。調製した正極樹脂組成物を含むスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔(UACJ社製)の片面上に、アプリケータにて成膜し、乾燥機内に静置して105℃、一時間で予備乾燥させ、NMP溶媒を完全に除去した。次に、ロールプレス機にて200kg/cmの線圧でプレスし、厚さ15μmのアルミニウム箔を含んだ塗膜の厚さが80μmになるように調製した。次いで、残留水分を完全に除去するため、170℃で3時間真空乾燥して正極を得た。
【0045】
(リチウムイオン二次電池の作製)
露点-50℃以下に制御したドライルーム内で、上記正極を40mm×40mmに加工し、負極を44mm×44mmに加工した後、正極にアルミ製タブ、負極にニッケル製タブを溶接した。正極と負極それぞれの合材塗工面が中央で対向するようにし、さらに正極と負極間に45mm×45mmに加工したポリオレフィン製微多孔質膜を配置した。次に70mm×140mm角に切断・加工したシート状の外装を長辺の中央部で二つ折りにした。次いで、正極用アルミ製タブと負極用ニッケル製タブが外装の外部に露出するように外装を配置しながら、二つ折りにした外装によって正極-ポリオレフィン製微多孔質膜-負極の積層体を挟んだ。次にヒートシーラーを用いて、外装の正極用アルミ製タブと負極用ニッケル製タブが露出した辺を含む2辺を加熱融着した後、加熱融着していない一辺から、2gの電解液(キシダ化学製、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比)+1M LiPF6溶液、以下、電解液と記載)を注液し、正極、負極およびポリオレフィン製微多孔膜に十分に染み込ませてから、真空ヒートシーラーにより、電池の内部を減圧しながら、外装の残り1辺を加熱融着してリチウムイオン二次電池を得た。
【0046】
作製したリチウムイオン二次電池について、以下の方法により電池性能を評価した。
【0047】
(リチウムイオン二次電池の評価)
[放電レート特性(3C放電時の放電容量維持率)]
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃において、4.3V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、再度4.3V、0.2C制限の定電流定電圧で回復充電した後、放電電流を0.2Cとして3.0Vまで放電させ、このときの放電容量を測定した。引き続き、前記の回復充電の条件は毎回保って充電し、一方で放電電流は0.5C、1C、2C、3Cと段階的に変化させながら、回復充電と放電とを繰り返し、各放電電流に対する放電容量を測定した。電池の放電レート特性の指標として、0.2C放電時に対する3C放電時の放電容量維持率を算出した。本実施例のリチウムイオン二次電池の3C放電時の放電容量維持率は83.5%であった。
【0048】
[サイクル特性(サイクル後の放電容量維持率)]
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃において、4.3V、1C制限の定電流定電圧充電をした後、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。上記充放電を500サイクル繰り返し、各サイクルにおける放電容量を測定した。電池のサイクル特性の指標として、特に1サイクル後に対する500サイクル後の放電容量維持率を算出した。本実施例のリチウムイオン二次電池のサイクル後の放電容量維持率は91%であった。
【0049】
実施例1~9、比較例1~4で使用したポリビニルアルコールの鹸化度及び平均重合度を表1に示す。また、実施例1~9、比較例1~6で使用したカーボンブラックの平均一次粒子径及び比表面積を表2に示す。
【0050】
<実施例2>
実施例1の負極用分散剤を、ポリビニルアルコールBへ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0051】
<実施例3>
実施例1の負極用分散剤を、ポリビニルアルコールCへ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0052】
<実施例4>
実施例1の負極用分散剤を、ポリビニルアルコールDへ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0053】
<実施例5>
実施例1の負極用導電材を、SAB(デンカ社製)へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0054】
<実施例6>
実施例1の負極用導電材を、Li-250(デンカ社製)へ変更し、負極樹脂組成物の固形分組成を、Li-250が固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.05質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.05)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で1.95質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0055】
<実施例7>
実施例1の負極用導電材を、Li-400(デンカ社製)へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0056】
<実施例8>
実施例1の導電材を、ECP(ライオン社製)へ変更し、負極樹脂組成物の固形分組成を、ECPが固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.16質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.16)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で1.84質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0057】
<実施例9>
実施例1の負極用導電材を、Li-250(デンカ社製)へ変更し、負極樹脂組成物の固形分組成を、Li-250が固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.02質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.02)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で1.98質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0058】
<比較例1>
実施例1の分散剤を、ポリビニルアルコールEへ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0059】
<比較例2>
実施例1の分散剤を、ポリビニルアルコールFへ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0060】
<比較例3>
実施例1の導電材を、#3030B(三菱化学社製)へ変更し、負極樹脂組成物の固形分組成を、#3030Bが固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.03質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.03)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で1.97質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0061】
<比較例4>
実施例1の導電材を、BlackPearls2000(キャボット社製)へ変更し、負極樹脂組成物の固形分組成を、BlackPearls2000が固形分で1質量%、ポリビニルアルコールAが固形分で0.15質量%(分散剤の質量/導電材の質量=0.15)、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で1.85質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0062】
<比較例5>
実施例1の導電材を、ポリビニルピロリドン(日本触媒社製、「K-90」)へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0063】
<比較例6>
実施例1の分散剤を添加せずに、負極樹脂組成物の固形分組成を、Li-435が固形分で1質量%、CMCが固形分で1質量%、人造黒鉛が固形分で96質量%、SBRが固形分で2質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様な方法で負極、正極及びリチウムイオン電池を作製し、各評価を実施した。結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
実施例1~9の負極樹脂組成物は、比較例1~6の負極樹脂組成物に比べて分散性が高いことが明らかになった。これにより本発明の実施例の負極は極板抵抗が低くなり、放電時の電圧降下を抑えられることが分かった。
【0068】
さらに、実施例1~9のリチウムイオン二次電池は、比較例1~6のリチウムイオン二次電池に比べて放電レート特性が高く、サイクル特性も高いことが明らかになった。これにより本発明の負極樹脂組成物を用いたリチウムイオン二次電池は放電電流の増加に伴う放電レート特性の低下を抑えられ、高い寿命も兼ね備えていることが分かった。
【符号の説明】
【0069】
1 リチウムイオン二次電池正極
2 リチウムイオン二次電池負極
3 ポリオレフィン製微多孔膜
4 外装
5 アルミ製タブ
6 ニッケル製タブ