(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ボールトラックフライス盤用のフライスヘッド、そのフライスヘッドを有するボールトラックフライス盤、ボールトラックフライス盤用の刃先を製造するための方法、その方法を実行するためのコンピュータプログラム製品、そのコンピュータプログラム製品を有するデータキャリア、及びその方法を実行するための研磨機
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20240423BHJP
B23P 15/34 20060101ALI20240423BHJP
B24B 3/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B23C5/10 B
B23P15/34
B24B3/06 Z
(21)【出願番号】P 2019550604
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2018056588
(87)【国際公開番号】W WO2018167234
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】102017204369.5
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017206144.8
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597099025
【氏名又は名称】マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレス,ディーター
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-118960(JP,A)
【文献】実開平07-037514(JP,U)
【文献】特開2005-262434(JP,A)
【文献】特開2008-012610(JP,A)
【文献】特開平10-113809(JP,A)
【文献】特開平09-262713(JP,A)
【文献】実開平04-102715(JP,U)
【文献】実開昭59-156720(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0183363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0180104(US,A1)
【文献】国際公開第2014/069453(WO,A1)
【文献】特開2010-105093(JP,A)
【文献】特表2002-529261(JP,A)
【文献】特表2013-511394(JP,A)
【文献】特表2017-511208(JP,A)
【文献】実公昭62-012503(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00-9/00
B23P 5/00-17/06
B24B 3/00-3/60
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールトラックフライス盤(3)用のフライスヘッド(1)であって、
仮想中心軸(M)と、
第1の加工側端部(5)と、前記中心軸(M)に沿って見た場合に前記第1の加工側端部(5)と反対側の第2のクランプ側端部(7)と、
少なくとも1つの幾何学的に画定され、前記フライスヘッド(1)の前記第1の加工側端部(5)に面する第1の刃先端部(11)から、前記フライスヘッド(1)の前記第2のクランプ側端部(7)の方向に、前記フライスヘッド(1)の前記第2のクランプ側端部(7)に面する第2の刃先端部(13)まで、その刃先形状に沿って延びている刃先(9)と、
を備え、
前記少なくとも1つの刃先(9)は、前記少なくとも1つの刃先(9)に関連付けられているすくい面(15)と前記少なくとも1つの刃先(9)に関連付けられている第1の逃げ面(17)との間で交わる線として設計され、
前記少なくとも1つの刃先(9)には、負のすくい角(α)と、第1の逃げ角(β)と、刃物角(γ)とが割り当てられ、
前記負のすくい角(α)の値は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、前記第2の刃先端部(13)の領域とは異なる値を有し、
前記第1の逃げ角(β)は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、前記第2の刃先端部(13)の領域とは異なる値を有し、
前記刃物角(γ)は、前記刃先形状に沿って一定であるフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい角(α)及び前記第1の逃げ角(β)の値は、少なくとも1つの刃先(9)の前記刃先形状に沿って直線的に変化するフライスヘッド(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記刃先形状に沿って、前記刃先(9)が前記負のすくい角(α)及び/又は同一の第1の逃げ角(β)に対して同一の値を有する2つの異なる点が、前記刃先(9)上にないフライスヘッド(1)。
【請求項3】
請求項1又は2項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい角(α)の値は、前記第2の刃先端部(13)の領域よりも前記第1の刃先端部(11)の領域で小さい、及び/又は、前記第1の逃げ角(β)は、前記第2の刃先端部(13)の領域よりも前記第1の刃先端部(11)の領域で小さいフライスヘッド(1)。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい角(α)の値は、前記少なくとも1つの刃先(9)の前記刃先形状に沿って、前記第1の逃げ角(β)も増大する程度に増大するフライスヘッド(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい面(15)の幅は、前記第2の刃先端部(13)の領域よりも前記第1の刃先端部(11)の領域で大きいフライスヘッド(1)。
【請求項6】
請求項5に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい面(15)の幅は、前記第1の刃先端部(11)から前記第2の刃先端部(13)まで、連続的に減少するフライスヘッド(1)。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記負のすくい面(15)の幅は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、最大で0.4mmであり、及び/又は、前記負のすくい面(15)の幅は、前記第2の刃先端部(13)の領域において、少なくとも0.1mmであるフライスヘッド(1)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記少なくとも1つの刃先(9)の前記刃先形状は、直線状、曲線状及び/又はらせん状に形成されているフライスヘッド(1)。
【請求項9】
請求項8に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記刃先形状は、前記仮想中心軸(M)と平行に延び、あるいは前記仮想中心軸(M)と有限の角度を有するフライスヘッド(1)
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
a)前記負のすくい角(α)の値は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、少なくとも10度から最大で19度までであり、及び/又は、前記第2の刃先端部(13)の領域では、少なくとも20度から最大で30度までであり、及び/又は、
b)前記第1の逃げ角(β)は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、少なくとも5度から最大で10度までであり、及び/又は、前記第2の刃先端部(13)の領域では、少なくとも15度から最大で20度までであるフライスヘッド(1)。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
第2の逃げ面は、周縁で前記第1の逃げ面(17)と隣接し、第2の逃げ角が割り当てられるフライスヘッド(1)。
【請求項12】
請求項11に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記第2の逃げ角は、前記刃先形状に沿ったいずれの場所においても前記第1の逃げ角(β)より大きいフライスヘッド(1)。
【請求項13】
請求項11に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記第2の逃げ角は、前記刃先形状に沿って一定であるフライスヘッド(1)。
【請求項14】
請求項13に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記第2の逃げ角は、少なくとも16度から最大で21度までであるフライスヘッド(1)。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)であって、
前記フライスヘッド(1)は本体(19)を備え、
前記少なくとも1つの刃先(9)は、
a)前記本体(19)上に直接形成され、又は、
b)前記本体(19)に接続される切削インサート(21)上に形成されるフライスヘッド(1)。
【請求項16】
ボールトラックフライス盤(3)であって、
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のフライスヘッド(1)を備えるボールトラックフライス盤(3)。
【請求項17】
仮想中心軸(M)と、
第1の加工側端部(5)と、前記中心軸(M)に沿って見た場合に前記第1の加工側端部(5)と反対側の第2のクランプ側端部(7)と、
少なくとも1つの幾何学的に画定され
、フライスヘッド(1)の前記第1の加工側端部(5)に面する第1の刃先端部(11)から、前記フライスヘッド(1)の前記第2のクランプ側端部(7)の方向に、前記フライスヘッド(1)の前記第2のクランプ側端部(7)に面する第2の刃先端部(13)まで、その刃先形状に沿って延びている刃先(9)と、を備えるボールトラックフライス盤(3)用のフライスヘッド(1)の刃先(9)を製造するための方法であって、
前記刃先(9)は、フライスヘッド(1)の本体(19)又はフライスヘッド(1)用の切削インサート(21)を直接研磨することによって製造され、
前記刃先(9)は、すくい面(15)と逃げ面(17)とが交わる線として製造され、 前記刃先(9)は、刃先端部(11)に面する、前記フライスヘッド(1)の第1の加工側端部(5)の領域における値が、刃先端部(13)に面する、前記フライスヘッド(1)の第2のクランプ側端部(7)の領域とは異なる値である負のすくい角(α)を有して形成され、
前記刃先(9)は、前記第1の刃先端部(11)の領域において、前記第2の刃先端部(13)の領域とは異なる値を有する逃げ角(β)を有して製造され、
前記刃先(9)は、前記第1の刃先端部(11)と前記第2の刃先端部(13)の間の前記刃先(9)の刃先形状に沿って一定である刃物角(γ)を有して製造され、
前記刃先(9)は、少なくとも1つの刃先(9)の前記刃先形状に沿って直線的に変化する前記負のすくい角(α)及び/又は前記第1の逃げ角(β)により形成される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
請求項1乃至15の1つに記載の
前記フライスヘッド(1)は、前記刃先(9)を製造することによって得られる方法。
【請求項19】
コンピュータプログラム製品であって、
機械読み取り可能な命令を含み、
研磨機を制御するために設定されるコンピュータ上で実行される場合、前記機械読み取り可能な命令に基づいて請求項17又は18の1つに記載の方法が実行されるコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
データキャリアであって、
請求項19に記載の
前記コンピュータプログラム製品を格納しているデータキャリア。
【請求項21】
研磨機であって、
請求項17又は18に記載の方法の実行に適合する研磨機。
【請求項22】
請求項21に記載の研磨機であって、
請求項19に記載の
前記コンピュータプログラム製品が実行されるコンピューティング・デバイスを備え、及び/又は請求項20に記載の
前記データキャリアを有する研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールトラックフライス盤用のフライスヘッドと、この種類のフライスヘッドを有するボールトラックフライス盤と、ボールトラックフライス盤用の刃先を製造するための方法と、その方法を実行するためのコンピュータプログラム製品と、そのコンピュータプログラム製品を有するデータキャリアと、その方法を実行するための研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで言及する種類のボールトラックフライス盤は、例えば、独国特許出願公開第102014208125A1号明細書により公知である。そのようなボールトラックフライス盤用のフライスヘッドは、仮想中心軸と、第1の加工側端部と、その中心軸に沿って見た場合その第1の端部と反対側の第2のクランプ側端部を有する。フライスヘッドは、そのフライスヘッドの第1の端部に面する第1の刃先端部から始まって、フライスヘッドの第2の端部の方向に刃先形状に沿って、フライスヘッドの第2の端部に面する第2の刃先端部にまで延びている、少なくとも1つの幾何学的に画定される刃先も有する。少なくとも1つの刃先は、すくい面と逃げ面が交わる線として形成され、それぞれ刃先と関連付けられ、また刃先に沿って交わる。少なくとも1つの刃先には、負のすくい角と、第1の逃げ角と、刃物角とが割り当てられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
公知のフライスヘッドの耐用年数は限られており、少なくとも1つの刃先の領域において、特に、長期の使用で鋭い刃が生じ、次にそれが刃先形状に沿ったチッピングの原因となる。摩耗はその刃先形状に沿って一様に分布しないで、代わりに顕著な摩耗プロファイルを有する。少なくとも1つの刃先は、第1の刃先端部の領域におけるよりも第2の刃先端部の領域において、ずっと早くかつより多く摩耗する。
【0004】
本発明の目的は、前述の不利益が生じない、ボールトラックフライス盤用のフライスヘッドと、そのフライスヘッドを有するボールトラックフライス盤と、ボールトラックフライス盤用の刃先を製造するための方法と、その方法を実行するためのコンピュータプログラム製品と、そのコンピュータプログラム製品を有するデータキャリアと、及びその方法を実行するための研磨機を提供することである。
【0005】
その目的は、独立請求項における対象を提供することにより達成される。有利な実施形態は従属請求項に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的は、具体的には、上述した種類のボールトラックフライス盤用のフライスヘッドを提供することによって達成され、負のすくい角が、第2の刃先端部の領域、特に第2の刃先端部とは異なる値を第1の刃先端部の領域、特に第1の刃先端部で有することを特徴とする。第1の逃げ角もまた、前記第1の刃先端部の領域において、特に前記第1の刃先端部において、前記第2の刃先端部の領域とは、特に前記第2の刃先端部とは異なる値を有する。刃物角は刃先形状に沿って一定である。こうして、前記刃物角は、前記刃先形状に沿って、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部まで変化しないが、一方の前記負のすくい角と他方の前記逃げ角は、前記第2の刃先端部の領域で与えられる値とは異なる値を前記第1の刃先端部において有する。このようにして、少なくとも1つの刃先の幾何学的形状が、ワークの機械加工中に、その刃先形状に沿った異なる領域において、それぞれの現在の係合状態に適合することによって、前記刃先の摩耗が低減され、また前記ワークの機械加工中の振動が有利に低減される。このことは、前記フライスヘッドの耐用年数を長くすることにも寄与する。
【0007】
ここで言及する種類のフライスヘッドとボールトラックフライス盤は、特にユニバーサルシャフトのジョイントの製造、特に等速ジョイントのボール走行面の製造のために使用される。それらは、特に、そのようなジョイントの外側部分とその内側部分の両方における、ボールトラックとも呼ばれるボールトレッドを製造するのに役立つ。そのようなフライスヘッドは、機械加工されるワークに対して特定のリード角でボール走行面を機械加工するために使用される。前記リード角は、前記フライスヘッドの仮想中心軸が、前記フライスヘッドの刃先の前記ワーク面との瞬間的な接触点に適用される接線に対してとる角度である。少なくとも1つの刃先は、前記刃先での前記ワークの機械加工中に一定ではなく、前記刃先形状に沿って移動する前記接触点の領域において、前記機械加工されるワークに点状に又は少なくともほぼ点状に接触する。これは、具体的には、一方で前記フライスヘッドの最終リード角、及び他方で前記フライスヘッドと、前記ワークにボール走行面を形成するために与えられる、前記機械加工されるワークとの間の特定の相対運動に起因する。これが生じた場合、一方で、仮想円周に沿って前記ボール走行面を形成するために前記仮想中心軸の周りに相対的回転が生じ、他方で、前記ワークの長さに沿って前記ボール走行面を製造するために、前記ワークと前記フライスヘッドとの間に適切な(前記仮想円周に対して垂直な)相対移動が生じる。前記フライスヘッドが前記仮想中心軸の周りに回転し、一方それと同時に、前記ボール走行面が前記ワーク全体の長さに沿って形成されるように、前記ワークが、前記フライスヘッドの前記仮想中心軸の周りに、好適には楕円運動で、案内されることが特に好ましい。前記ボール走行面が加工されている間、少なくとも1つの刃先が、前記第1の刃先端部から前記加工されるワークの中に入り、それによって、機械加工が進むにつれて、前記刃先上の接触点が前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部に向かって移動する。前記刃先が、前記特に半円形に設計されたボールトレッドの材料に入る場所及び当該材料から再び出てくる場所において、加えられる切削力にスキップ(切削力の中断とも呼ばれる)が発生し、前記フライスヘッドにおける望ましくない振動の一因となる。これは、チップ形成と耐用年数の両方に悪影響を及ぼす。少なくとも1つの刃先について、ここで提案される適合幾何学的形状により、ワークの機械加工中の前記接触点の移動への適合と、それと同時に、上述の振動の低減が可能になり、その結果、全体として前記フライスヘッドの耐用年数が改善される。
【0008】
前記フライスヘッドがただ1つのみの幾何学的に画定される刃先を有することは可能である。しかしながら、別の実施形態において、前記フライスヘッドが、多数の幾何学的に画定される刃先、具体的には、2つの幾何学的に画定される刃先、3つの幾何学的に画定される刃先、4つの幾何学的に画定される刃先、又は5つの幾何学的に画定される刃先を有することも可能である。もちろん、より多くの数の幾何学的に画定される刃先も可能である。しかしながら、前記フライスヘッドは、4つの幾何学的に画定される刃先を有することが最も好ましい。前記フライスヘッドの全ての幾何学的に画定される刃先は同一で、また少なくとも1つの幾何学的に画定される刃先に関して、ここで下記に説明されるように形成されることが特に好ましい。
【0009】
前記フライスヘッドは、ボールトラックフライス盤の他の構成要素、特にボールトラックフライス盤の本体と一体で形成することができ、そのため、この場合は、特にボールトラックフライス盤用のフライスヘッドとなる。しかしながら、前記フライスヘッドは、ボールトラックフライス盤の残りの部品と共にいくつかの部品で形成することも可能であり、例えば、後続のセンタリングコーンと、円周方向に前記センタリングコーンを囲む、前記フライスヘッドを前記ボールトラックフライス盤の本体上に位置的に正確に固定するための平面とを有するねじによる等のインターフェースを介して、前記ボールトラックフライス盤の本体に接続することができる。そのようなワンピース設計及びマルチピース設計、並びに対応するインターフェースは特に公知であるので、詳細には説明しない。
【0010】
前記フライスヘッドの加工側端部は、具体的には、前記仮想中心軸に沿って見て、前記フライスヘッドによるワークの機械加工中、前記ワークに面するように意図される端部であると解釈される。それに対して、前記フライスヘッドのクランプ側端部は、前記中心軸に沿って見て、ワークの機械加工中、前記ワークから離れる方向を向く端部を意味すると解釈され、当該端部は、前記フライスヘッド又は前記ボールトラックフライス盤のクランプ部に関連付けられる。上記で説明したように、前記フライスヘッドは、前記ボールトラックフライス盤の本体と併せて前記クランプ部に接続されるようになっている。前記ボールトラックフライス盤は、次に、アダプター、スペーサ、エクステンション等のその他の工具要素により適切に設計されたクランプ部に、又は直接機械主軸に接続されるようになっていてもよい。この目的のために、前記ボールトラックフライス盤は、具体的には、別の工具パーツ及び/又は機械主軸の中にクランプするために適切なクランプシャフトを有してもよい。そのようなクランプシャフトは、例えば、円筒状、例えば、モールステーパー又は中空軸テーパー(HST)のような円錐状に設計されてよい。
【0011】
前記すくい面がすくなくとも1つの刃先に関連付けられるという事実は、具体的には、前記すくい面がすくなくとも1つの刃先に直接隣接することを意味する。従って、前記第1の逃げ面は前記刃先に直接接続する。これは、具体的には、前記刃先が、前記すくい面が前記第1の逃げ面と交わる線として形成されるという事実に起因する。
【0012】
すくなくとも1つの刃先に負のすくい角が割り当てられるという事実は、具体的には、前記すくい面が負のすくい角を有することを意味する。そのような負のすくい角は、高硬度と耐熱性を有する切削材料で機械加工される硬質材料の機械加工に特に有利である。通常、ここで説明される種類のワークは、すでに硬化した形で前記フライヘッドにより機械加工される。負のすくい角によって、より大きい切削力とより短いチップを実現することができる。適切な硬質切削材料は、その内部の結晶構造により、負のすくい角において生じる圧縮応力に耐える特性を有すると共に、高硬度と耐熱性も有する。それに対して、正のすくい角の場合、チップ破損が発生した場合に引張応力が生じ、対応する硬質切削材料が非常に早く破損する恐れがある。特に、そのような硬質切削材料は、引張応力を受けて好ましくない挙動、具体的には、応力に対する材料の低い内部抵抗を示す。そのため、すくい角が正の場合、前記刃先で欠けやすい傾向がある。
【0013】
さらに、硬質でもろい材料を機械加工するための前記刃物角は、高強度で高硬度を有する材料の機械加工において必要な堅牢性を保証するために、できる限り大きくすべきであることに留意されたい。
【0014】
前記すくい角は、前記すくい面が、前記刃先が延び、また前記刃先によって機械加工されるワーク面に対して局所的に垂直な仮想面と形成する角度である。前記すくい角は、前記すくい面が前記仮想面に対してリセットされる、すなわち、前記機械加工方向に対抗して見た場合、正の値を取り、一方、前記機械加工方向に見た場合、前記すくい面が、前記刃先の前に来る、すなわち、前記機械加工方向において前記仮想面の前に位置する場合、前記すくい角は負の符号に関連付けられる。
【0015】
前記逃げ角は、前記逃げ面が、機械加工されるワーク面又は前記刃先の領域において機械加工されるワークに適用される接平面と形成する角度であり、前記刃先も、当該ワーク面又は接平面の中に位置する。一方で前記逃げ角を決定するために用いられる前記ワーク面又は接平面と、前記すくい角を決定するために用いられる前記仮想面は互いに垂直で、前記刃先で交わる。特に、前記逃げ角により、前記フライスヘッドが前記機械加工されるワーク面から確実に解放されて、前記刃先と前記機械加工される材料との間の摩擦と加熱を最小限にする。
【0016】
前記刃物角は、前記すくい面と前記第1の逃げ面の両方が一緒に形成する角度である。
【0017】
割り当てられた符号を考慮した前記すくい角と、前記第1の逃げ角と、前記刃物角とが、360度の完全な円に基づいて、合計して常に90度になることは一般的な原則である。
【0018】
前記刃物角は、従って、符号を考慮に入れた前記すくい角と前記第1の逃げ角から計算することができる。逆に、前記第1の逃げ角は、前記刃物角と前記すくい角から得られる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記刃先に沿って、前記すくい角に対して同一の値及び/又は同一の第1の逃げ角を有する少なくとも1つの刃先上に、2つの異なる点は存在しないと定められる。これは、具体的には、前記負のすくい角及び/又は前記第1の逃げ角の値は、前記刃先の刃先形状に沿ったいかなる2つの異なる点でも同じではないことを意味する。従って、前記負のすくい角の値は、前記刃先形状に沿った全ての点で異なる。代わりに又は付加的に、前記逃げ角は、前記刃先形状に沿った全ての点で異なる。これにより、ワークの機械加工中に発生する振動を低減し、前記フライスヘッドの耐用年数を増大させるために特に好ましい幾何学的切削形状をもたらす。
【0020】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記負のすくい角及び/又は前記第1の逃げ角の値は、前記刃先形状に沿って連続的に変化すると定められる。これに関連して、連続的な変化とは、特に、前記すくい角及び/又は前記第1の逃げ角の値についての連続的な変化、具体的には、連続的で微分可能な変化で、特に、前記対応する値に跳びが発生しないことを意味するものと解釈される。特に好適には、少なくとも1つの刃先の前記刃先形状に沿った前記負のすくい角及び/又は前記第1の逃げ角の値は、直線的に変化する。こうして、前記切削形状における急激な変化が防止され、振動の防止と前記フライスヘッドの耐用年数の増加に対して好ましい効果が得られる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記負のすくい角の値は、前記第2の刃先端部の領域、特に、第2の刃先端部よりも前記第1の刃先端部の領域、特に、前記第1の刃先端部で小さいと定められる。代わりに又は付加的に、好適には、前記第1の逃げ角は、前記第2の刃先端部の領域、特に、第2の刃先端部よりも前記第1の刃先端部の領域、特に、前記第1の刃先端部で小さいと定められる。このようにして、少なくとも1つの刃先が、そうでなければ摩耗が増大する場所でその刃先形状に沿ってより高い堅牢性を有し、同時に、通常摩耗が少ない場所でより容易な切削を求めて設計できるように前記切削形状の耐久性と堅牢性とが調整される。こうして、特に、前記刃先の形状全体にわたる摩耗を一様にすることができ、これにより、フリーヘッドの全体的な耐用年数が増加する。前記刃先の形状に沿った一定の刃物角により、前記刃先形状のどの場所でも、刃物角の減少により前記切削形状の堅牢性と安定性が低下しないよう確保される。
【0022】
一方で前記刃先形状に沿って前記負のすくい角と前記逃げ角とを変化させることにより、他方で一定の刃物角により、前記切削形状は、断面で見て、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部までの前記刃先の形状において、言わば回転する。特に、前記すくい面は、前記すくい角と前記逃げ角の進行のため、前記刃先に沿ってねじれた形状を有し、前記すくい面の法線ベクトルは、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部までの前記刃先の形状において、前記フライスヘッドの外周に向けて言わばねじれる。これにより、前記切削形状において、特に、前記第2の刃先端部の領域、換言すれば、従来のフライスヘッドにおいて大きな摩耗が発生する領域において、より高い堅牢性が得られる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記刃先形状に沿った、具体的には、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部までに沿った前記負のすくい角の値は、前記第1の逃げ角が同様に増大する程度と同じ程度に増大すると定められる。従って、前記すくい角の値は、具体的には、前記第1の逃げ角の値と同じ割合で増大する。
【0024】
明確化のために、前記負のすくい角は、前記刃先形状のどの場所でも、ますます小さくなる、すなわち、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部に向けてその値が増大するにつれてより負の値に変化することを付け加えなければならない。
【0025】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記すくい面の幅は、前記第2の刃先端部の領域、特に前記第2の刃先端部よりも前記第1の刃先端部の領域、特に前記第1の刃先端部で大きいと定められる。この場合、前記すくい面の幅は、好適には、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部まで、前記刃先端部形状に沿って連続的に、好適には、特に前記刃先形状に対して直線的に変化する。特に、前記すくい面の幅は、前記第1の刃先端部から前記第2の刃先端部まで、好適には連続的に、とりわけ直線的に減少する。これは、前記刃先の所定の輪郭に伴う、すなわち、前記刃先形状に沿った、一方で前記すくい角及び他方で前記第1の逃げ角の開発により予め定められた刃先形状に伴う結果である
【0026】
ここで提案される前記すくい面は、その幅に関して可変でその形状に沿ってねじれており、負の追跡面取りとも呼ばれ、特に、前記第2の刃先端部の領域において、前記切削形状の堅牢性を増大し、従って、振動を低減すると同時に前記フライスヘッドの耐用年数を向上することを可能にする。
【0027】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記すくい面の幅は、前記第1の刃先端部の領域において最大で0.4mm、好適には最大で0.3mmであり、前記すくい面の幅は、前記第2の刃先端部の領域において少なくとも0.1mm、好適には少なくとも0.15mmであると定められる。これらの値により、すでに説明された利点は特定の方法で実現される。
【0028】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記刃先形状は、直線状、湾曲状及び/又はらせん状に形成されると定められる。前記刃先形状は、特に、前記仮想中心軸と平行に配列され、又は前記仮想中心軸と有限の角度を形成してもよい。当該角度は、前記刃先形状に沿って変化し、又は一定である可能性がある。ここで説明する前記刃先形状の実施形態は、特に、間隙を介した、前記中心軸の周りに同心円状に延びている仮想円筒周面上への、前記実際の刃先形状の仮想投影に関する。実際、前記刃先形状は、前記フライスヘッドが、少なくとも1つの刃先の領域で少なくとも半球状に又はほぼ半球状に形成されるので、常に湾曲している。しかしながら、前記中心軸を中心とする仮想の円筒周面上に投影される場合、前記湾曲はなくなるので、前記刃先が前記中心軸に並列に配列しているか、前記中心軸に対してある角度で配列しているか、あるいは前記中心軸のまわりにらせん状に形成されているかを前記投影法で判断するのは特に容易である。
【0029】
全体として、こうして、前記フライスヘッドは、少なくともその加工側端部の領域において、半球状又は少なくともほぼ半球状の形状を有し、少なくとも1つの刃先はその湾曲をたどる。そこで、特に、このようにして、ボールトラックを、特に、前記仮想半球の直径に対応する直径で製造することができる。
【0030】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記負のすくい角の量は、前記第1の刃先端部の領域、特に前記第1の刃先端部において、少なくとも10度から最大で19度まで、好適には少なくとも12度から最大で17度まで、好適には少なくとも14度から最大で16度まで、好適には15度であると定められる。代わりに又は付加的に、前記負のすくい角の値は、前記第2の刃先端部の領域、特に前記第2の刃先端部において、好適には少なくとも20度から最大で30度まで、好適には少なくとも22度から最大で28度まで、好適には少なくとも24度から最大で26度まで、好適には25度であると定められる。
【0031】
代わりに又は付加的に、前記第1の逃げ角は、前記第1の刃先端部の領域、特に前記第1の刃先端部において、少なくとも5度から最大で10度まで、好適には少なくとも6度から最大で8度まで、好適には7度である。代わりに又は付加的に、前記第1の逃げ角は、好適には前記第2の刃先端部の領域、好適には前記第2の刃先端部において、少なくとも15度から最大で20度まで、好適には少なくとも16度から最大で18度まで、好適には17度である。
【0032】
前記負のすくい角及び/又は前記第1の逃げ角の値に対して、ここで特定される値において、すでに上記で説明した前記フライスヘッドの利点は特定の方法で実現される。
【0033】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記第1の逃げ面は、第2の逃げ角に関連付けられる第2の逃げ面に周縁で隣接すると定められる。この場合、「周縁で(peripherally)」の語は、具体的には、前記仮想中心軸を同心円状に囲む円周線を指す。前記第2の逃げ面は、特に、前記第1の逃げ面に直接隣接する。ここで前記第1の逃げ面は、前記刃先と前記第2の逃げ面との間に位置する。
【0034】
好適には、前記第2の逃げ角は、前記刃先形状に沿ったどの場所でも前記第1の逃げ角よりも大きい。
【0035】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記第2の逃げ角は、前記刃先形状に沿って一定であると定められる。特に、好適には少なくとも16度から最大で21度まで、好適には少なくとも17度から最大で19度まで、好適には18度である。
【0036】
前記第2の逃げ面は、前記機械加工方向で見た場合、前記第1の逃げ面と比較してより急激に減少するが、堅牢な切削形状を維持しながら、前記刃先と前記機械加工される材料との間で、クリアランスの改善と摩擦及び熱の低減を可能にする。
【0037】
本発明のさらなる実施形態に従い、前記フライスヘッドは本体を有すると定められる。すくなくとも1つの刃先が前記本体に直接形成される、具体的には、前記本体から機械加工されることは可能である。代わりに、すくなくとも1つの刃先を、前記本体に接続された切削インサートに形成することが可能である。
【0038】
前記本体は、好適には、固体カーバイドを有するかあるいは固体カーバイドから成る。前記刃先が前記本体に直接形成される場合には、前記本体は、好適には立方晶窒化ホウ素(CBN)、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)、又は多結晶ダイヤモンド(BKD)から作られ、少なくとも部分的に適用され、具体的には前記固体カーバイド上にプレスされる、硬質材料層を有することが好ましい。ここで、前記硬質材料層上に形成されるすくなくとも1つの刃先は、特に、前記硬質材料層から機械加工される。それに対して、すくなくとも1つの刃先が前記本体に接続された切削インサートに形成される場合、前記本体は、特に固体カーバイドから成ってもよい。ここで、前記切削インサートは、好適には、硬質材料を含むかあるいは硬質材料から形成され、前記切削インサートは、特に、立方晶窒化ホウ素(CBN)と、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)と、多結晶ダイヤモンド(PKD)とからなる群から選択される材料を含むかあるいは選択される材料から成る。
【0039】
前記切削インサートは、好適には、前記本体に、具体的にははんだ付けにより、好適にはろう付けにより接続される。特に、前記切削インサートを前記本体にはんだ付けすることは可能である。
【0040】
前記切削インサートは、異なる方法で、例えば、ねじ締により前記本体に取り付けることも原則として可能であり、それによって、耐用年数の終わりに到達した後、新しい切削インサートに特に簡単に交換することができる。この場合、しかしながら、はんだ付けと比較して前記切削インサートの不安定な配置と交換時の結果として生じる精度不良のため、耐用年数がより短くなる。これに加えて、交換可能な切削インサートの場合、機械加工における精度不良の増大と機械加工されるワークの最終的な交差逸脱の増大を引き起こす恐れがある。比較すると、しっかりはんだ付けされた切削インサートの場合、耐用年数の大幅な増加をもたらし、交換時の精度不良を防止するので、機械加工精度が上がり、前記機械加工されるワークに対する達成可能な公差を向上することができる。
【0041】
前記目的は、上述の実施形態のうちの1つに従うフライスヘッドを有するボールトラックフライス盤を提供することによっても達成される。特に、前記フライスヘッドに関連してすでに説明した利点は、前記ボールトラックフライス盤に関連して実現される。また、すでに説明したように、前記フライスヘッドは、前記ボールトラックフライス盤の残りの部品、具体的には、ボールトラックフライス盤の本体と一体で形成されてもよい。しかし、前記フライスヘッドが、前記ボールトラックフライス盤のベースボディと併せていくつかの部品で形成され、適切なインターフェースによって前記ボールトラックフライス盤のベースボディに取り付け可能にすることも可能である。本実施形態は、前記ボールトラックフライス盤の本体を廃棄又は同時に交換する必要なく、前記フライスヘッドを耐用年数の終わりに簡単な方法で交換することができるという利点を有する。
【0042】
前記目的は、ボールトラックフライス盤用の刃先を製造するための方法を提供することによっても達成され、前記刃先は、フライスヘッドの本体又はフライスヘッド用の切削インサートを直接研磨することにより製造される。そこで、前記刃先は、すくい面と逃げ面とが交わる線として製造され、そこで、前記刃先は負のすくい角を有して形成され、その値は、前記フライスヘッドの対象とする加工側端部に面する第1の刃先端部の領域において、前記フライスヘッドの対象とするクランプ側端部に面する第2の刃先端部の領域とは異なり、そこで、前記刃先は、前記第1の刃先端部の領域において前記第2の刃先端部の領域とは異なる値を有する逃げ角を有して形成され、またそこで、前記刃先は、前記第1の刃先端部と前記第2の刃先端部との間の前記刃先の刃先形状に沿って一定である刃物角を有して形成される。前記方法に関連して、一方で前記フライスヘッド及び他方で前記ボールトラックフライス盤に関連してすでに説明した利点は具体的に実現される。
【0043】
特に、前記本体又は前記切削インサートは研磨され、前記刃先は、前記本体又は前記切削インサートを研磨することにより、前記すくい面と前記逃げ面とが交わる線として製造される。
【0044】
特に、前記刃先は、前記すくい面と前記逃げ面から選択されたすくなくとも1つの面を研磨することにより、好適には、前記すくい面と前記逃げ面を研磨することにより、前記逃げ面と前記すくい面とが交わる線として製造される。
【0045】
前記刃先がフライスヘッド用の切削インサートに製造される場合、これは、好適には、前記切削インサートをフライスヘッドに固定した後、具体的には、前記切削インサートを前記フライスヘッド上にはんだ付け又は前記フライスヘッドの中にはんだ付けした後、前記方法の第1実施形態に従って行われる。前記切削インサートは、好適には、前記フライスヘッドにろう付けされる。代わりに、前記方法の別の実施形態に従い、前記フライスヘッドへの取り付けに先立ち前記切削インサートを研磨し、それによって前記刃先を製造することは可能である。しかしながら、この場合、前記切削インサートを前記フライスヘッドに取り付けた後、特に、前記刃先の寸法精度を確保するために、前記刃先を引き続き加工することは可能である。
【0046】
前記方法を用いることによって、特に、前記フライスヘッドの本体又は前記切削インサートに前記刃先を直接製造することによって、本発明に係るフライスヘッド又は上述の実施形態のうちの1つに係るフライスヘッドが好適に得られる。前記切削インサート、必要に応じて研磨後に、具体的にははんだ付けによって、好適にはろう付けによって、前記フライスヘッドに固定することができる。
【0047】
前記目的は、本発明に係る方法又は前述の実施形態のうちの1つに係る方法を実行するための機械読み取り可能な命令を有するコンピュータプログラム製品を提供することによっても達成される。その場合、前記コンピュータプログラム製品は、研磨機を制御するために設定されたコンピューティング・デバイスで実行され、好適には、前記研磨機を制御するために前記研磨機に動作可能に接続される。機械読み取り可能な命令により、前記コンピューティング・デバイスは、次に、具体的に、前記刃先を製造するように前記研磨機を制御する。前記コンピュータプログラム製品に関連して、特に、前記フライスヘッド及び/又は前記ボールトラックフライス盤に関連してすでに説明した利点が結果として得られる。
【0048】
前記コンピュータプログラム製品は、特に、機械読み取り可能な命令を備え、それに基づいて、前記研磨機の上又は中に配置され、フライスヘッドの本体又はそのようなフライスヘッド用の切削インサートが研磨される。そこで、前記刃先は、前記研磨機を用いて、すくい面と逃げ面の間の交わる線を研磨することにより、特に、前記逃げ面と前記すくい面から選択された少なくとも1つの面を研磨することにより製造される。好適には、前記逃げ面と前記すくい面が前記研磨機で研磨される。
【0049】
前記目的は、本発明に係るコンピュータプログラム製品又は上述の実施形態のうちの1つに係るコンピュータプログラム製品が記憶されるデータキャリアを提供することによっても達成される。前記データキャリアは、好適には、揮発性又は不揮発性のデータキャリアとして設計される。前記データキャリアは、具体的には、コンピューティング・デバイスの主記憶装置、読み取り専用メモリ、特に、前記コンピューティング・デバイスのハードディスク又はハードディスク装置、又は、例えば、テープ記憶装置、フロッピーディスク、CD‐ROM、DVD、USBスティック、メモリカード等のモバイルデータキャリアであってもよい。前記データキャリアは、データクラウドとして、すなわち、具体的に、多数のコンピューティング・デバイスのネットワークメモリとして、特にクラウドとして設計されてもよい。
【0050】
特に、前記データキャリアに関連して、前記フライスヘッド又は前記ボールトラックフライス盤に関連してすでに説明した利点が実現される。
【0051】
最終的に、前記目的は、本発明に係る方法又は前述の実施形態のうちの1つに係る方法を実行するために設定された研磨機を提供することによっても達成される。特に、前記研磨機に関連して、前記フライスヘッド又は前記ボールトラックフライス盤に関連してすでに説明した利点が実現される。
【0052】
前記研磨機は、好適には、本発明に係るコンピュータプログラム製品又は上述の実施形態のうちの1つに係るコンピュータプログラム製品を実行するコンピューティング・デバイスを有する。代わりに又は付加的に、前記研磨機は、好適には、本発明に係るデータキャリア又は前述の実施形態のうちの1つに係るデータキャリアを有する。
【0053】
前記方法は、具体的には、本発明に係るフライスヘッド又は上述の実施形態のうちの1つに係るフライスヘッドを製造するために考案される。この点において、前記方法は、好適には、本発明に係る前記フライスヘッド又は上述の実施形態のうちの1つに係るフライスヘッドの少なくとも1つの特徴又は特徴の組み合わせに基づく少なくとも1つの方法ステップを有する。特に、前記フライスヘッドに関連して明示的又は暗示的に説明した方法ステップは、好適には、個別に又は互いに組み合わせて、前記方法の好適な実施形態のためのステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面を参照して本発明を以下に詳細に説明する。
【
図1】ボールトラックフライス盤用のフライスヘッドの実施形態の詳細な描写を示す。
【
図2】
図1に示される第1の切断線A‐Aに沿った第1の詳細断面図を示す。
【
図3】
図1に示される第2の切断線B‐Bに沿った第2の詳細断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、ボールトラックフライス盤3用のフライスヘッド1の第1実施形態の詳細な描写を示す(フライスヘッド1を超えては図示せず)。フライスヘッド1は、図示しないワークの所望の機械加工中、フライスヘッド1の回転軸とボールトラックフライス盤3の回転軸にも相当する仮想中心軸Mを有する。従って、フライスヘッド1及び特にボールトラックフライス盤3も、ワークの機械加工中、好適には、中心軸Mの周りに回転する。
【0056】
フライスヘッド1は、第1の加工側端部5と、中心軸Mに沿って第1の端部5と反対側の第2のクランプ側端部7を有し、クランプ側端部7は、ここにおいて、
図1の詳細図には示されない。ここで、第1の端部5は、ワークの機械加工中、意図されるようにワークに面し、第2の端部7は、ボールトラックフライス盤3のクランブ部に面するか又はフライスヘッド1のクランプ部を有する。
【0057】
フライスヘッドは、少なくとも1つの幾何学的に画定された刃先も有し、ここでは、全部で4つの幾何学的に画定された刃先を有するが、より明確にするために、そのうちの1つのみを参照符号9により示す。
【0058】
ここで明確に示される、幾何学的に画定された刃先9に関して以下で説明されるすべては、フライスヘッド1の、他の3つの幾何学的に画定される刃先に対して全く同様に当てはまるが、より明確にするために、具体的には示されない。4つの幾何学的に画定される刃先9は、従って、すべて同一に設計される。従って、簡潔にするために、1つの幾何学的に画定される刃先9のみを以下に詳細に説明する。
【0059】
幾何学的に画定された刃先9は、第1の端部5に面する第1の刃先端部11から始まって、第2の端部7の方向に、刃先形状に沿って第2の刃先端部13まで延びている。ここで、「刃先形状(cutting edge profile)」の語は、第1の刃先端部11から始まり、第2の刃先端部13までの幾何学的に画定された刃先9の形状を言う。
【0060】
刃先9は、それぞれ刃先9に関連付けられているすくい面15と第1の逃げ面17とが交わる線として形成される。すくい面15は負のすくい角を有する。負のすくい角に加えて、刃先9には第1の逃げ角と刃物角とが割り当てられ、これらについては
図2及び
図3と関連して詳細に説明する。
【0061】
フライスヘッド1において、第1の刃先端部11の領域における負のすくい角の値は、第2の刃先端部13の領域とは異なる値を有し、第1の刃先端部11の領域における第1の逃げ角は、第2の刃先端部13の領域とは異なる値を有すると特に定められる。刃物角は、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13まで刃先形状に沿って一定である。
【0062】
特に、刃先形状に沿った刃先9は、負のすくい角及び/又は第1の逃げ角に対する値が同じになる2つの互いに異なる点を有しない。特に好適には、すくい角及び/又は第1の逃げ角の値は、刃先9の刃先形状に沿って、連続的に、具体的には直線的に変化する。
【0063】
負のすくい角の値は、第2の刃先端部13の領域、特に第1の刃先端部13よりも第1の刃先端部11の領域、特に第1の刃先端部11で小さいことが好ましい。代わりに又は付加的に、第1の逃げ角は、第2の刃先端部13の領域、特に第2の刃先端部13よりも第1の刃先端部11の領域、特に第1の刃先端部11で小さいことが好ましい。
【0064】
負のすくい角の値は、刃先形状に沿って、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13に向けて、特に第1の逃げ角も増加する程度で増加する。このように、負のすくい角と第1の逃げ角の値は、とりわけ同じ割合で増加する。
【0065】
すくい面15の幅は、第2の刃先端部13の領域、特に第2の刃先端部13よりも第1の刃先端部11の領域、特に第1の刃先端部11で大きいということも
図1よりすでに明らかである。すくい面15の幅も刃先形状に沿って連続的に変化する、具体的には、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13まで直線的に減少する。すくい面15は、負の追跡面取りと呼ぶこともできる。
【0066】
好適には、第2の刃先端部13の領域におけるすくい面15の幅は、少なくとも0.1mm、好適には少なくとも0.15mmであり、第1の刃先端部11の領域におけるすくい面15の幅は、最大で0.4mm、好適には最大で0.3mmである。
【0067】
すくい面15は、第1の刃先端部11から始まって第2の刃先端部13まで、実質的にねじれた形状を呈し、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13まで延びているすくい面15の仮想法線ベクトルは、フライスヘッド1の外側近傍の方向に外向きに回転するということも
図1より明らかである。
【0068】
刃先9は、特に中心軸Mを含む円筒状の外周面への投影において、直線、湾曲及び/又はスパイラルの経路を有することが可能である。特に、刃先9は、仮想中心軸と平行に並んでもよいしあるいはそれと有限の角度を有してもよい。
【0069】
ここに示される実施形態において、フライスヘッド1は、好適には個体カーバイドを含むあるいは固体カーバイドから成る本体19を有する。この刃先9は、本体19に接続され、特に、本体19上に、好適にはろう付けによってはんだ付けされた切削インサート21上に形成される。具体的には、別個の切削インサート21が4つの刃先9のそれぞれに設けられる。これは、フライスヘッド1が実際にいくつの刃先9を有しているかに係わらず好適に当てはまる。従って、各刃先9は、常に、それ独自の切削インサート21に関連付けられる。
【0070】
切削インサート21は、好適には、立方晶窒化ホウ素(CBN)と、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)と、多結晶ダイヤモンド(PKD)とからなる群から選択される材料を含むか又は選択される材料で製造される。
【0071】
代わりに、刃先9は、本体19に直接形成される、具体的には本体から機械加工されることも可能である。この場合、本体19は、好適には、個体カーバイドの本体と、刃先9が機械加工される個体カーバイドの本体上にプレスされる硬質材料層を有する。本硬質材料層は、好適には、立方晶窒化ホウ素(CBN)と、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)と、多結晶ダイヤモンド(PKD)とからなる群から選択される材料を含むかあるいはその選択される材料から成る。
【0072】
図2は、
図1に示される第1の切断線A‐Aに係る詳細な断面図を示す。
図2に示される第1の切断面は、
図1において第2の切断線B‐Bより示される、
図3に示される第2の切断面よりも第1の刃先端部11に対してより近くに位置し、
図3の詳細な断面図は、第2の刃先端部13に対してより近くに位置する。
【0073】
同一及び機能的に同一の要素には同じ参照符号が付けられているため、この点については、前述の説明を参照されたい。
【0074】
図2において、特に、機械加工されるワークの接平面として考えることもできる仮想ワーク面23と、仮想面25が示されており、仮想面25は仮想ワーク面23に対して垂直であり、また仮想ワーク面23と仮想面25は刃先9で交わる。ワークの機械加工中、刃先9は、ワークに、具体的には、仮想ワーク面23内と仮想面25内の両方に位置する接触点で接触する。ここで、仮想ワーク面23は、特に、接触点におけるワークに対する接平面として考えられる。
【0075】
すくい角15は、すくい面15が仮想面25と形成する角度として生じ、簡潔にするために、ここでは、すくい角が同一の角度αで数値的に表される。ここで、図示された角度αとすくい角との間の同一性は、簡単な幾何学的考察から生じる。従って、以下において、簡潔にするために、すくい角はすくい角αとも呼ばれる。
【0076】
矢印P1は、ここにおいて、フライスヘッド1の機械加工方向を示し、それに沿って刃先9はワークに対して移動する。仮想面25からのすくい面15と刃先9が機械加工方向に進むことは明白である。従って、すくい角αには負の符号が割り当てられる。
【0077】
第1の逃げ角βは、逃げ面17が仮想ワーク面23と形成する角度である。
【0078】
最後に、刃物角γは、すくい面15が逃げ面17と形成する角度である。
【0079】
ここで、符号を考慮に入れたすくい角αと、刃物角γと、第1逃げ角βは合計で90度になるという計算式が当てはまる。ここで、角度は、360度の完全な円を基準とする。
【0080】
例えば、ここで、刃物角γと第1の逃げ角βとの総和は、負のすくい角αのちょうどその値だけ、90度より大きい。そのため、すくい角に関連付けられる負の符号のために、すくい角の値を、刃物角γと第1の逃げ角βとの総和から差し引くと正確に90度という結果になる。
【0081】
【0082】
すでに述べたように、
図3は、
図1に示される第2の切断線B‐Bに沿った第2の詳細な断面図を示す。
【0083】
図2と
図3を比較すると、負のすくい角αと第1の逃げ角βの両方の値は、第2の刃先端部13の領域よりも第1の刃先端部11の領域で小さいことが分かる。具体的には、それらは、
図2に係る断面において、
図3に係る断面の第2の値α2、β2より小さい第1の値α1、β1を有する。しかしながら、一方ですくい角α及び他方で逃げ角βは、刃物角γが一定であるように変化する。
【0084】
全体として、
図2と
図3を比較すると、切削形状は、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13まで、ここでは、時計回りに、言わばねじれていることも分かる。
【0085】
それと共に、刃先9の予め定められた刃先形状により、すくい面15の幅bは、第1の刃先端部11から第2の刃先端部13まで減少する。それに関連し、すくい面15は、
図2において、第1のより大きい幅b1を、そして
図3において、第2のより小さい幅b2を有する。
【0086】
ここで述べる負のすくい角αの値は、第1の刃先端部11の領域、特に第1の刃先端部11において、好適には、少なくとも10度から最大で19度まで、好適には、少なくとも12度から最大で17度まで、好適には、少なくとも14度から最大で16度まで、好適には、15度である。第2の刃先端部13の領域において、特に第2の刃先端部13においては、好適には少なくとも20度から最大で30度まで、好適には少なくとも22度から最大で28度まで、好適には少なくとも24度から最大で26度まで、好適には25度である。
【0087】
第1の刃先端部11の領域において、特に第1の刃先端部11において、第1の逃げ角βは、好適には少なくとも5度から最大で10度まで、好適には少なくとも6度から最大で8度まで、好適には7度である。第2の刃先端部13の領域において、特に第2の刃先端部13においては、好適には少なくとも15度から最大で20度まで、好適には少なくとも16度から最大で18度まで、好適には17度である。
【0088】
図示されていない方法で、第2の逃げ面は、周縁で第1の逃げ面17に隣接し、第2の逃げ角が割り当てられる。この第2の逃げ角は、好適には、刃先9の刃先形状に沿って第1の逃げ角βより大きく、特に、刃先形状に沿って一定であり、好適には少なくとも16度から最大で21度まで、好適には少なくとも17度から最大で19度まで、好適には18度の値を有する。
【0089】
ここで示されるフライスヘッド1の切削形状は、特に堅牢であることが示されており、それにより、具体的には、刃先9の形状全体にわたって一様な摩耗が形成されるので、フライスヘッド1の耐用年数は長くなる。これに加えて、ワークの機械加工中の振動が低減されることも、フライスヘッド1の耐用年数に対して有利な効果を有する。
【0090】
刃先9は、好適には、本体19又は切削インサート21を直接研磨することによって、具体的には、すくい面15と第1の逃げ面17とから選択された少なくとも1つ面を研磨することによって製造される。好適には、すくい面15と第1の逃げ面17の両方を研磨して、すくい面15と第1の逃げ面17とが交わる線として刃先9を製造する。
【0091】
切削インサート21を研磨する場合は、切削インサート21が本体19にすでに固定された上で行われることが好ましい。代わりに、本体19への取り付けに先立ち切削インサートを研磨してもよい。
【0092】
フライスヘッド1は、好適には、刃先9を製造することによって得られる。必要に応じて、切削インサート21を本体19への取り付けに先立ち研磨する場合は、切削インサート21の本体19への固定、具体的にははんだ付けが付加的に必要とされるのみである。
【0093】
研磨は、好適には、自動的、特にプログラム可能な研磨機を用いて行われる。具体的には、研磨機を制御するために、機械読み取り可能な命令を有するコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品が研磨機を駆動するために設定されたコンピュータ上で実行される場合、機械読み取り可能な命令に基づいて、研磨機で刃先9を製造するための前述の方法が実行される。
【0094】
それに関連し、本発明は、研磨機だけでなく、方法を実行するために設定され、そのようなコンピュータプログラム製品を有するデータキャリアも含む。