IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特許7477303関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法
<>
  • 特許-関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法 図1
  • 特許-関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法 図2
  • 特許-関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法 図3
  • 特許-関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法 図4
  • 特許-関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】関節運動アームによって移動された印刷ヘッド内のインク浸出及び空気摂取を減衰させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 109
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020004027
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2020124912
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】16/268,777
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ディー・ダニエルズ
(72)【発明者】
【氏名】フセイン・ナセル・ラシェド
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ジー・レイトン
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ジェイ・バートン
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0044292(US,A1)
【文献】特開2016-175358(JP,A)
【文献】特開2017-202622(JP,A)
【文献】特開2017-144618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056670(US,A1)
【文献】特開2014-220867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
三次元空間における垂直移動のために構成された印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに動作可能に接続された真空部であって、前記印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように構成されている、真空部と、
前記真空部に動作可能に接続されたコントローラであって、前記印刷ヘッドの垂直変位から生じる前記印刷ヘッドのインク圧力変化を相殺するために前記印刷ヘッド内の前記インク圧力を調整するように前記真空部を動作させるように構成されている、コントローラと、
前記印刷ヘッドが取り付けられている関節運動アームであって、前記印刷ヘッドを前記インクジェットプリンタ内で少なくとも垂直に移動させるように構成された少なくとも1つのサーボを有する、関節運動アームと、を備え、
前記コントローラが、前記関節運動アームの前記サーボを動作させて、前記三次元空間内で前記印刷ヘッドを移動させ
前記コントローラが、
前記印刷ヘッドの垂直位置を特定し、
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置を、前記印刷ヘッドの複数の以前に特定された垂直位置と比較し、
前記印刷ヘッドの前記以前に特定された垂直位置のうちの1つを、前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置に最も近いものとして特定し、
前記印刷ヘッドが前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置にある間に、前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置に最も近い前記以前に特定された垂直位置に関連付けられた真空値を使用して、前記真空部を動作させるように構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記コントローラが、
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置から等距離にある2つの以前に特定された垂直位置に関連付けられた2つの真空値から、前記真空部を動作させるための真空値を外挿するように更に構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
圧力変換器であって、前記印刷ヘッド内の前記インク圧力を示す信号を生成するように構成されている、圧力変換器を、更に備え、
前記コントローラが、前記圧力変換器に動作可能に接続され、前記コントローラが、圧力変換器によって生成された前記信号を、前記印刷ヘッド内の複数のノズル内のインクメニスカスの最適位置に対応する圧力と比較することによって、前記真空部を動作させるように更に構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記コントローラに入力された基準電圧であって、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、基準電圧、を更に備える、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記基準電圧と比較して、前記信号と前記基準電圧との間の差を特定し、
前記圧力変換器からの前記信号と前記基準電圧との間の前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空部の動作を調整する、ように更に構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラに動作可能に接続されたメモリに格納された設定点値であって、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、設定点値を更に含む、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記コントローラが、
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記設定点値と比較して、前記信号と前記設定点値との間の差を特定し、
前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空部の動作を調整する、ように更に構成されている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記所定の範囲が、ゼロを含む請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
インクジェットプリンタを動作させる方法であって、
印刷ヘッドを三次元空間内で垂直に移動させることと、
前記三次元空間内の前記印刷ヘッドの垂直変位から生じる前記印刷ヘッドのインク圧力変化を相殺するために、前記印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように、前記印刷ヘッドに動作可能に接続された真空源をコントローラで動作させることと、
前記三次元空間内で前記印刷ヘッドを垂直に移動させるために、前記印刷ヘッドが取り付けられた関節運動アームの少なくとも1つのサーボを前記コントローラで動作させること、
前記印刷ヘッドの垂直位置を前記コントローラで特定することと、
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置を前記印刷ヘッドの複数の以前に特定された垂直位置と前記コントローラで比較することと、
前記特定された垂直位置に最も近い前記印刷ヘッドの前記以前に特定された垂直位置のうちの1つを前記コントローラで特定することと、
前記印刷ヘッドが前記特定された垂直位置にある間に、前記真空源を動作させるために、前記特定された垂直位置に最も近いものとして特定された前記以前に特定された垂直位置に関連付けられた真空値を使用して前記真空源を前記コントローラで動作させることと、を含む、方法。
【請求項10】
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置から等距離にある2つの以前に特定された垂直位置に関連付けられた2つの真空値から、前記真空源を動作させるための真空値を、前記コントローラで外挿することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記真空源の前記動作が、
前記印刷ヘッド内の前記インク圧力に対応する圧力変換器によって生成された信号を、前記印刷ヘッド内の複数のノズル内のインクメニスカスの最適位置に対応する圧力と、前記コントローラで比較することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記コントローラに基準電圧を提供することであって、前記基準電圧が、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記基準電圧と比較して、前記信号と前記基準電圧との間の差を特定することと、
前記圧力変換器からの前記信号と前記基準電圧との間の前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空源の動作を調整することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コントローラに動作可能に接続されたメモリに設定点値を格納することであって、前記設定点値が、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記設定点値と比較して、前記信号と前記設定点値との差を特定することと、
前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空源の動作を調整することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の範囲が、ゼロを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インクジェットプリンタであって、
印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドが取り付けられた関節運動アームであって、前記印刷ヘッドを少なくとも垂直に移動させるように構成された少なくとも1つのサーボを有する、関節運動アームと、
前記印刷ヘッドに動作可能に接続された真空部であって、前記印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように構成されている、真空部と、
前記真空部及び前記関節運動アームにおける前記少なくとも1つのサーボに動作可能に接続されたコントローラであって、前記サーボを動作させて前記印刷ヘッドを三次元空間内で移動させ、かつ前記真空部を動作させて、前記関節運動アームによる前記印刷ヘッドの垂直変位から生じるインク圧力変化を相殺するように前記印刷ヘッド内の前記インク圧力を調整するように構成されている、コントローラと、を備え
前記コントローラが、
前記コントローラが前記関節運動アームの前記少なくとも1つのサーボを動作させて到達させる前記印刷ヘッドの垂直位置を特定し、
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置を、前記印刷ヘッドの複数の以前に特定された垂直位置と比較し、
前記コントローラが前記少なくとも1つのサーボを動作させて到達させる前記特定された垂直位置に最も近い、前記印刷ヘッドの以前に特定された垂直位置を特定し、
前記コントローラが前記少なくとも1つのサーボを動作させて到達させる前記特定された垂直位置に最も近いとして特定された、前記以前に特定された垂直位置に関連付けられた真空値を使用して前記真空部を動作させる、ように更に構成されている、
インクジェットプリンタ。
【請求項18】
前記関節運動アームが、
前記印刷ヘッドに動作可能に接続された別のサーボであって、他のサーボが、前記印刷ヘッドを3つの独立した方向に移動させるように構成されている、別のサーボを更に備え、
前記コントローラが、前記関節運動アームの前記他のサーボを動作させて、前記三次元空間内で前記印刷ヘッドをヨー、ロール、及びピッチさせるように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項19】
前記コントローラが、
前記コントローラが前記少なくとも1つのサーボを動作させて前記印刷ヘッドを移動させている間に、前記真空値を使用して前記真空部を動作させるように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項20】
前記コントローラが、
前記少なくとも1つのサーボを動作させて前記印刷ヘッドを移動させる前に、前記真空値を使用して前記真空部の動作を開始するように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項21】
前記コントローラが、
前記関節運動アームを動作させて前記印刷ヘッドを移動させる経路に沿って複数の位置を選択し、
前記複数の位置における各位置の真空値を特定し、
前記経路に沿った第1の選択された位置に関連付けられた真空値を使用して、前記印刷ヘッドが前記第1の選択された位置に到達するまで、前記真空部を動作させ、
前記経路に沿った次の選択された位置に関連付けられた真空値を使用して、前記印刷ヘッドが前記次の選択された位置に到達するまで、前記真空部を動作させる、ように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項22】
前記コントローラが、
前記複数の位置における各選択された位置に到達すると、真空動作のために、前記経路に沿った次の選択された位置に関連付けられた真空値に移行し続け、
別の経路が前記印刷ヘッドの移動のために選択されるまで、前記複数の位置における最後の選択された位置に関連付けられた真空値で前記真空部を動作させる、ように更に構成されている、請求項21に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項23】
前記コントローラが、
前記印刷ヘッドの前記特定された垂直位置から等距離にある2つの最も近い以前に特定された垂直位置に関連付けられた2つの真空値から、前記真空部を動作させるための真空値を外挿するように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項24】
圧力変換器であって、前記印刷ヘッドのマニホールド内の前記インク圧力を示す信号を生成するように構成されている、圧力変換器を更に備え、
前記コントローラが、前記圧力変換器に動作可能に接続され、前記コントローラが、圧力変換器によって生成された前記信号を、前記印刷ヘッド内の複数のノズル内のインクメニスカスの最適位置に対応する圧力と比較することによって、前記真空部を動作させるように更に構成されている、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項25】
前記コントローラに入力された基準電圧であって、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、基準電圧を更に備える、請求項24に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項26】
前記コントローラが、
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記基準電圧と比較して、前記信号と前記基準電圧との間の差を特定し、
前記圧力変換器からの前記信号と前記基準電圧との間の前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空部の動作を調整する、ように更に構成されている、請求項25に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項27】
前記コントローラに動作可能に接続されたメモリに格納された設定点値であって、前記インクメニスカスの前記最適位置の前記圧力に対応する、設定点値を更に含む、請求項24に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項28】
前記コントローラが、
前記圧力変換器によって生成された前記信号を前記設定点値と比較して、前記信号と前記設定点値との差を特定し、
前記差が所定の範囲外であるときに、前記真空部の動作を調整する、ように更に構成されている、請求項27に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項29】
前記所定の範囲が、ゼロを含む請求項28に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、印刷ヘッドからインク滴を噴射することによってインク画像を作り出すデバイスに関し、より具体的には、三次元空間を通って操作される印刷ヘッドからインク滴を噴射するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット撮像デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受信表面上に形成する。印刷ヘッドは、いくつかのタイプのアレイ内に配置された複数のインクジェットを含む。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合される熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、画像に関するデジタルデータに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、インクチャンバに膨張させることによって発射信号に応答して、画像受信部材上にインク滴を噴射し、かつ発射信号を生成するために使用されたデジタル画像に対応するインク画像を形成する。
【0003】
品質印刷のために、印刷ヘッド内のインクの圧力は、印刷ヘッド内のインクジェットのノズル内のインクメニスカスを適切に設定するように調整されなければならない。静的な印刷ヘッド構成の場合、この調整は、典型的には、印刷ヘッドがフレーム又は他の安定した構造体に固定的に取り付けられ、インク送達システムが比較的一定の圧力で印刷ヘッドにインクを送達するために頻繁には行われない。送達圧力は、1つ以上の印刷ヘッドを供給するインク供給部内の圧力を監視するコントローラによって調節され、圧力が調整されるとき、コントローラは、インク供給部を周囲圧力に通気するか、又は正圧源から圧力を加える。印刷ヘッド内の圧力は、印刷ヘッドのマニホールドに向かってインクの自由表面を引き込むために真空圧力弁を手動で操作することによって、プリンタメンテナンス中の時間から時間に調整される。
【0004】
垂直部材に沿って印刷ヘッドを移動させて、垂直部材の反対側に位置付けられた物体のアレイ上に印刷ヘッドがインク画像を形成することを可能にするプリンタが開発されてきた。このシステム構成は、空間を節約し、プリンタが小売環境内に配置されることを可能にし、そのため、それらが購入されるように物体をカスタム印刷することができる。印刷ヘッドの可動域は、印刷ヘッドと固定位置に位置するインク供給部との間の高さの変化が、印刷ヘッドの静水圧変化を引き起こすため、問題となり得る。印刷ヘッドのこれらの静水圧変化を補うことを失敗すると、印刷ヘッドが下向きに移動されるときに、印刷ヘッドノズルからインクが浸出し、印刷ヘッドが上向きに移動されるときに印刷ヘッドが空気を摂取し得る程度まで、印刷ヘッドにインクが吸い込まれる。垂直方向に移動する印刷ヘッドにおける静水圧変化によって引き起こされる効果に対処することが有用であろう。
【0005】
インクジェットプリンタの動作の方法により、印刷ヘッドのノズルにおけるインクメニスカスが、インクの浸出及び空気の摂取を抑制する位置に留まることを可能にする。この方法は、三次元空間内で印刷ヘッドを垂直に移動させることと、三次元空間内の印刷ヘッドの垂直変位から生じる印刷ヘッドのインク圧力変化を相殺するために、印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように動作可能に接続された真空源をコントローラで動作させることと、を含む。
【0006】
インクジェットプリンタは、印刷ヘッドのノズルにおけるインクメニスカスが、インクの浸出及び空気の摂取を抑制する位置に留まることを可能にする方法を実装する。インクジェットプリンタは、三次元空間内で垂直方向の移動のために構成された印刷ヘッドと、印刷ヘッドに動作可能に接続された真空部であって、印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように構成されている、真空部と、真空に動作可能に接続されたコントローラであって、印刷ヘッド内のインク圧力を調整して、印刷ヘッドの垂直方向の変位から生じる印刷ヘッドのインク圧力変化を相殺するように構成されている、コントローラと、を含む。
【0007】
インクジェットプリンタは、関節運動アームに取り付けられた印刷ヘッドを含み、印刷ヘッドが物体の周囲の三次元空間内で操作されることを可能にする。このようなプリンタは、印刷ヘッドのノズルにおけるインクメニスカスが、印刷ヘッドが三次元空間内で操作される際に、インクの浸出及び空気の摂取を抑制する位置に留まることを可能にする方法を実装する。インクジェットプリンタは、印刷ヘッドと、印刷ヘッドが取り付けられる関節運動アームであって、印刷ヘッドを少なくとも垂直に移動させるように構成された少なくとも1つのサーボを有する、関節運動アームと、印刷ヘッドに動作可能に接続された真空部であって、印刷ヘッド内のインク圧力を調整するように構成されている、真空部と、真空部及び関節運動アームにおける少なくとも1つのサーボに動作可能に接続されたコントローラであって、サーボを動作させて印刷ヘッドを三次元空間内で移動させ、かつ真空部を動作させて、印刷ヘッド内のインク圧力を調整して、関節運動アームによる印刷ヘッドの垂直変位から生じるインク圧力変化を相殺するように真空部を動作させるように構成されている、コントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
インクの浸出及び空気の摂取を抑制する位置に留まることを可能にするシステム及び方法の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と関連して以下の説明で説明される。
【0009】
図1】印刷ヘッドの静水的変化に悪影響を及ぼすことなく、印刷ヘッドを三次元空間に移動させて物体上にインク画像を印刷する関節運動アームを有するインクジェット印刷システムの概略図である。
図2図1に示されるプリンタに使用される真空システム調節器のブロック図であり、関節運動アームに取り付けられた印刷ヘッド内の圧力を監視し、印刷ヘッド内の圧力を維持する真空システムを調整する。
図3図1の印刷システムを動作させるためのプロセスのフロー図であり、図2の真空システム調節器を使用することにより、関節運動アームに取り付けられた印刷ヘッド内の圧力を監視し、印刷ヘッド内の圧力を維持する真空システムを調整する。
図4図1に示されるプリンタに使用される真空システム調節器のブロック図であり、関節運動アームを移動させるために使用されるサーボ信号を監視し、印刷ヘッド内の圧力を維持する真空システムを調整する。
図5図1の印刷機のインク送達システムを操作するためのプロセスのフロー図であり、図4の真空システム調節器を使用することにより、関節運動アームを移動させるために使用されるサーボ信号を監視し、印刷ヘッド内の圧力を維持する真空システムを調整する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、プリンタの近傍に位置する物体46などの物体の表面上にインク画像を形成するために印刷ヘッド26を備えて構成された関節運動アーム14を有するインクジェットプリンタ10を示す。関節運動アーム14は、例えば、Long Beach,CAのEpson America,Inc.から入手可能なEpson C4ロボットアームなどの、6軸ロボットアームであり得る。関節運動アーム14は、印刷ヘッドが物体46の側部、頂部、及び後方の全ての反対側に移動することを可能にする移動のために構成されているが、図面を単純化するために、作図スケールは、この範囲を順守しない。関節運動アーム14は、アームセグメントを互いに接合するサーボ18、22、50及び54を含み、これらのサーボは、アームセグメントを垂直方向、水平方向、及びこれらの方向の組み合わせに移動させるように構成されている。付加的に、サーボ54は、印刷ヘッド26を傾斜させて回転させて、印刷ヘッドのヨー、ロール、及びピッチの変化を作り出す。本明細書で使用するとき、用語「垂直」は、移動される構成要素又は構成要素の部分の重力ポテンシャルを変化させる移動方向を意味する。本明細書で使用するとき、用語「水平」とは、運動の前に保有される重力ポテンシャルにおける構成要素又は構成要素の部分の重力ポテンシャルを維持する移動方向を意味する。印刷ヘッドが水平位置に保持されるとき、印刷ヘッド面の長手方向軸は、印刷ヘッドを通る同じ重力ポテンシャルにある。印刷ヘッドの中心に配置された3つの直交軸は、長手方向軸に対応するX軸、X軸の同じ重力ポテンシャルにあり、X軸と水平面を形成するY軸、及びX軸及びY軸の両方に対して垂直であり、印刷ヘッドの重力ポテンシャル又は印刷ヘッドの一部の変化に対応するZ軸を画定する。したがって、「ヨー」は、X-Y平面内のZ軸を中心とした印刷ヘッドの回転として定義され、「ピッチ」は、Y-Z平面内でX軸を中心とした回転として定義され、「ロール」は、X-Z平面内のY軸として定義される。コントローラ42は、サーボを動作させて関節運動アーム14のアームセグメントを移動させ、印刷ヘッドを傾斜及びロールして、印刷ヘッド26を物体46とは反対の様々な位置及び向きに位置付ける。
【0011】
印刷ヘッドがインクの自由表面の上方の所定の距離で、固定的に取り付けられたインクリザーバ内に水平の向きで留まるシステムでは、印刷ヘッド内の静水圧は比較的一定のままであるため、印刷ヘッドのインクジェット内の適切なメニスカスを維持するために真空制御は必要ではない。印刷ヘッドが、ロボットアームの基部を参照して固定的に取り付けられたインク送達システム30のインクリザーバ内のインクのレベルに対して移動する場合、メニスカスのより堅牢な制御が必要とされる。
【0012】
図1及び印刷ヘッド26がインク送達システム30のインクリザーバ内のインクレベルに対して移動するシステム10を更に参照すると、真空源38は、印刷ヘッドが関節運動ロボットアーム14によって三次元空間を通って操作されている間に、印刷ヘッド26のノズル内の負インクメニスカスを維持するために、印刷ヘッド26の内部のマニホールド、又はインク送達システム30のリザーバ内のヘッド空間に動作可能に接続される。コントローラ42は、圧力変換器34によって生成された信号を使用することによって、印刷ヘッド26のマニホールド内の圧力を所定の値に維持するように、真空システム38を動作させる。圧力変換器34は、印刷ヘッド26のマニホールド内のインク圧力を示す信号を生成するように構成されている。圧力変換器は、印刷ヘッド26に取り付けられてもよく、又は空気圧チューブなどによってマニホールドに動作可能に接続されてもよい。
【0013】
印刷ヘッドが移動すると、印刷ヘッドの加速及び印刷ヘッド内で生じる水圧ウオーターハンマーを作り出す任意の方向の供給チューブ内のインクのために、及び上昇変化が生じたときにメニスカスを維持するために、真空レベルが調整される。コントローラが、ロボットアームの制御データを使用してロボットアームを動作させているため、コントローラは、経路データを使用し、供給チューブと印刷ヘッド内のインクに作用する動的な力を特定できるので、コントローラは、印刷ヘッドの移動が生じる前に真空制御を開始することで圧力変化を先制するフィードフォワード制御ループを実装するように構成され、そのため、真空源38を動作させて、真空制御のオーバーシュート及び遅延時間を減らすことができる。例えば、コントローラは、垂直変位の所定の増分で経路に沿った複数の位置を選択し、第1の選択された位置に関連付けられた真空値を使用して真空部を動作させることができ、次に、印刷ヘッドがその位置に近づくと、経路に沿って次に選択された位置に関連付けられた別の真空値で真空部の動作を開始する。この真空部の動作は、経路内の最後の位置に到達するまで継続する。
【0014】
コントローラ42は、プログラムされた命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装することができる。プログラムされた機能を実行するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される動作を実行するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよく、又は特定用途向け集積回路(ASIC)内の回路として提供されることもある。各々の回路は、別個のプロセッサで実装することができ、又は複数の回路が、同じプロセッサ上に実装されることもある。代替的に、回路は、超大規模集積回路(VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、別個の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。印刷中、作り出される画像に関する画像データは、印刷ヘッド26に出力された印刷ヘッド制御信号の処理及び生成のための、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ42に送信される。印刷ヘッドにおいて負インクメニスカスを維持するためにコントローラ42によって実行される他の機能を以下に説明する。
【0015】
真空システム38を動作させ、印刷ヘッド26のマニホールド内の圧力を調節するために使用されるフィードバックループを示すブロック図2が示されている。同様の構成要素のための同様の参照番号を使用して、コントローラ42は、設定点又は基準電圧と圧力変換器34から受信した信号との間の差を特定する。この差は、設定点又は基準電圧からの印刷ヘッドのマニホールド内の圧力の変化を示す。コントローラは、この特定された差を使用して、真空システム38を動作させて、印刷ヘッド26のマニホールド内の圧力を調節する。圧力変換器34は、印刷ヘッドのマニホールド内の圧力を示す信号を生成し、制御ループは継続する。
【0016】
設定点又は基準値は、経験的な形態で得られる。具体的には、印刷ヘッドのノズル内の最適位置又はその近くにインクメニスカスを位置付けるのに必要な真空値は、印刷ヘッドの移動範囲の1つの位置で顕微鏡カメラを使用してインクメニスカスを視覚的に検査することによって静的に決定される。次いで、圧力変換器によって作り出された信号は、目標制御設定点値(SP)又は基準電圧として使用される。基準電圧は、コントローラに有線入力としてコントローラ42に供給されてもよく、又は設定点は、コントローラに動作可能に接続されたメモリに格納されてもよく、その結果、コントローラは、圧力変換器によって生成された信号に対応するデータ値を格納値と比較することができる。インク送達システム30のリザーバ内のインク表面を参照して印刷ヘッドの高さを変化させ、静水圧変化をもたらす印刷ヘッドの垂直可動域は、図2に示すように、制御されたプロセス値(PV)として変換器によって生成された信号によって反映される。コントローラは、比例弁を動作させて、SP-PV差を、約0の所定範囲内の値に低減するように、真空圧力を修正する。具体的には、印刷ヘッドが降下するので、印刷ヘッド内の圧力が増加すると、コントローラは、付随する差の増加を決定し、印刷ヘッドに適用される真空を増加させて、印刷ヘッドの内部圧力を低下させる。印刷ヘッドが上昇するので、印刷ヘッド内の圧力が低下すると、コントローラは、付随する差の低下を検知し、印刷ヘッドに適用される真空を低下させて、印刷ヘッドの内部圧力を上昇させる。真空は、ポンプ、真空ベンチュリ、又は正の空気圧源で作り出すことができる。
【0017】
垂直方向に移動する部材に取り付けられた印刷ヘッドのマニホールド内の圧力を調節するためのプロセスを図3に示す。下記の考察において、機能又はアクションを実行するプロセス300への参照は、プリンタ内の他の構成要素に関連して機能又はアクションを実行するように、格納されたプログラム命令を実行するための、コントローラ42などのコントローラの動作を指す。プロセス300は、例示目的のため、図1のプリンタ10によって実行されるものとして説明される。
【0018】
印刷ヘッドを垂直に移動させるプリンタに使用される印刷ヘッドのノズル内のインクメニスカスの最適位置の圧力を特定するために試験セットアップが使用される(ブロック304)。次いで、この特定された圧力を使用して、プリンタに設置されたとき、印刷ヘッド内の圧力を調節する基準電圧をコントローラに提供するか、又はコントローラに動作可能に接続されたメモリに格納されたデータ値を生成する(ブロック308)。印刷ヘッド26が関節運動アーム14に取り付けられ、真空システム38、インク送達システム30及び圧力変換器34が印刷ヘッドに動作可能に接続された後、圧力変換器34からの信号は、コントローラ42によって監視され(ブロック312)、基準電圧又は格納された設定点値と比較される(ブロック316)。2つの値の間の差が、約0の所定の範囲より大きくなるとき(ブロック320)、コントローラ42は、真空システム38の動作を調整して、印刷ヘッドのマニホールド内の圧力をこの所定の範囲内にする(ブロック324)。この制御ループは、プリンタがオフラインになるまで継続する(ブロック328)。
【0019】
一実施形態では、約-0.5~-2.5インチの範囲の水圧は、印刷ヘッド内の負インクメニスカスを維持するのに十分であるが、印刷ヘッドの構成及びサイズに応じて他の範囲が使用される。印刷ヘッドのパラメータはまた、印刷ヘッドがヨーされ、ピッチされ、又はロールされ得る程度を制限することができる。例えば、いくつかのインクジェット印刷ヘッドは、印刷ヘッドの長手方向軸に沿って9.5インチの長さを有する。一方の端部が印刷ヘッドの他方の端部の真上になるように印刷ヘッドがロールされると、真空が他方の端部でインクメニスカスを維持するのに十分であっても、下方の重力ポテンシャルでの印刷ヘッドの端部は、インクを漏出する。典型的には、ほとんどの印刷ヘッドは、広いものではなく、すなわち、長手方向軸に垂直でz軸に平行な軸に沿った印刷ヘッド面を横切る距離であり、印刷ヘッドのピッチは、より低いインクジェットを漏れさせるのに十分に極端であり得る。当然ながら、ヨーは、印刷ヘッド内のインクジェットを垂直に変位させないため、印刷ヘッドのヨーの移動中に真空レベルは比較的一定である。
【0020】
代替的な制御スキームは、図4に示す制御ループを使用することにより、図1のプリンタ10に実装することができる。同様の構成要素のための同様の参照番号を使用して、コントローラ42は、コントローラが関節運動アーム14のサーボに発行するコマンドから、1つの印刷ヘッド位置からその次の位置への印刷ヘッドの垂直変位を特定する。この変位は、インクメニスカスが最適に位置する印刷ヘッドのマニホールド内に圧力を提供する真空設定と相関する。垂直変位と真空設定との間の相関は、ルックアップテーブル(LUT)404に格納される。コントローラは、LUT404によって戻された真空設定を使用して真空システム38を動作させ、印刷ヘッド26のマニホールド内の圧力を調節する。したがって、この実施形態では、圧力変換器34は必須ではない。
【0021】
圧力と位置との相関は、経験的な形態で得られる。特に、関節運動アームによる印刷ヘッドの垂直変位範囲にわたる複数の印刷ヘッド位置で、印刷ヘッドのノズルの最適位置又はその近くにインクメニスカスを位置付けするために必要な真空値は、複数の位置で顕微鏡カメラを使用してインクメニスカスを目視検査し、各位置における真空値を記録することによって静的に決定される。コントローラがサーボを動作させて印刷ヘッドを位置付けすると、サーボコマンドは、印刷ヘッドの垂直変位を決定するように処理される。印刷ヘッドの得られた位置は、以前に観察された位置のうちの1つに相関し、対応する真空値が特定される。この真空値は、真空システムを動作させて印刷ヘッド内の圧力を調整するために、コントローラによって使用される。したがって、静水圧変化を引き起こす印刷ヘッドの垂直な可動域は、印刷ヘッドがその位置にあるか又はその近くにあるときに真空システムを動作させるための真空値を特定するために、以前に観察された位置に相関する。コントローラは、印刷ヘッドが移動する位置が以前に観察された2つの位置の間にあるとき、真空値を外挿することができる。
【0022】
印刷ヘッドの位置データを使用して垂直移動部材に取り付けられた印刷ヘッドのマニホールド内の圧力を調節するためのプロセスが、図5に示されている。下記の考察において、機能又はアクションを実行するプロセス500への参照は、印刷機内の他の構成要素に関連して機能又は動作を実行するように格納されたプログラム命令を実行するための、コントローラ42などのコントローラの動作を指す。プロセス500は、例示目的のため、図1のプリンタ10によって実行されるものとして説明される。
【0023】
試験セットアップを使用して、印刷ヘッドの垂直変位範囲上の複数の位置でインクメニスカスを観察し、インクメニスカスが印刷ヘッドのノズルの最適位置又はその近くになり得るようにする各位置での真空値を記録する(ブロック504)。次いで、垂直位置と真空値とのこの相関は、コントローラに動作可能に接続されたメモリにルックアップテーブルとして格納されるか、又は対応する量の垂直変位のための真空値を特定するための式を決定する(ブロック508)。プリンタ10が動作した後、コントローラ42は、印刷位置における印刷ヘッドの垂直位置の変化を特定するためにサーボコマンドを監視する(ブロック512)。特定された位置変化は、LUTに格納された真空設定にアクセスするために使用され、最も近い位置の真空設定が戻される(ブロック516)。特定された位置が、LUTを含むメモリに格納された2つの位置からほぼ等しく離れているので、複数の真空設定が戻される場合(ブロック520)、次いで、真空設定は、2つの戻し真空値から補間される(ブロック524)。次いで、特定された真空値を使用して、真空システム38の動作を調整する(ブロック528)。この制御ループは、プリンタがオフラインになるまで、各垂直位置で継続する。
図1
図2
図3
図4
図5