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特許7477311補助ブロワを備えた大型エンジン及び運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】補助ブロワを備えた大型エンジン及び運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 33/44 20060101AFI20240423BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20240423BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240423BHJP
   F02B 37/013 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F02B33/44 A
F02D19/06 B
F02D9/02 C
F02D9/02 321A
F02B37/013
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020012308
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2020128746
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】19156243.8
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラース ハンセン
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-152032(JP,U)
【文献】特開平09-280069(JP,A)
【文献】米国特許第02924069(US,A)
【文献】特開2013-230814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/44
F02D 19/06
F02D 9/02
F02B 37/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ(2)を有する長手方向掃気式大型エンジンであって、前記シリンダ(2)は、空気-燃料混合物を燃焼するための燃焼室(20)と、前記シリンダ(2)内に給気(42)を供給するための掃気開口部(21)と、前記シリンダ(2)から燃焼ガスを排出するための出口弁とを有し、前記大型エンジン(1)は、前記給気(42)のためのインテーク・レシーバ(3)であって、前記掃気開口部(21)に流れ接続されたインテーク・レシーバ(3)と、前記インテーク・レシーバ(3)内に前記給気(42)を供給するための、前記燃焼ガスによって駆動可能なターボチャージャ(4)と、追加の掃気(52)を前記インテーク・レシーバ(3)内に導入可能な少なくとも1台の補助ブロワ(5)とを更に有する、大型エンジンにおいて、
前記追加の掃気(52)の質量流量を変化させることが可能な絞り装置(51、510)が前記補助ブロワ(5)の上流に配置されることを特徴とする、長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項2】
前記絞り装置(51)は、絞り弁(510)と、前記絞り弁(510)により閉じることが可能な開口部とを有する、請求項1に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項3】
前記絞り弁(510)の開き角度(α)が調整可能である、請求項2に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項4】
前記補助ブロワ(5)は、単一の回転速度でのみ作動可能である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項5】
前記給気(42)が前記インテーク・レシーバ(3)の方向にのみ流れることが可能なようにノンリターン装置が前記補助ブロワ(5)の下流に配置される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項6】
ガス・モードで運転可能である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項7】
前記長手方向掃気式大型エンジン(1)が二元燃料エンジンである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項8】
前記長手方向掃気式大型エンジン(1)が長手方向掃気式2ストローク大型エンジンである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項9】
前記絞り装置(51、510)による前記追加の掃気(52)の前記質量流量を負荷に依存して制御するための制御装置を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン。
【請求項10】
a)前記長手方向掃気式大型エンジン(1)に前記補助ブロワ(5)及び前記絞り装置(51,510)を設けるステップと、
b)前記絞り装置(51、510)によって前記補助ブロワ(5)の上流の流れ断面を変更することによって前記追加の掃気(52)の前記質量流量を調整するステップと
を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の長手方向掃気式大型エンジン(1)を運転するための方法。
【請求項11】
前記補助ブロワ(5)の上流の前記流れ断面が、前記大型エンジンの負荷に応じて、前記絞り装置(51、510)を用いて制御される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記大型エンジン(1)の負荷が増加することに伴い、前記絞り装置(51、510)により、前記補助ブロワ(5)の上流の前記流れ断面が連続的に減らされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記補助ブロワ(5)の上流の前記流れ断面が、前記大型エンジン(1)の負荷に応じて、前記絞り装置(51、510)を用いて調節される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記補助ブロワ(5)の上流の前記流れ断面が、前記大型エンジン(1)の負荷に応じて、予め決定可能な空燃比により、前記絞り装置(51、510)を用いて調節される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向掃気式(longitudinally scavenged)大型エンジン及び前記長手方向掃気式大型エンジンを運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型エンジンは、2ストローク・エンジン又は4ストローク・エンジンとして設計可能であるが、例えば長手方向掃気式2ストローク大型ディーゼル・エンジンは、船舶用の駆動ユニットとして、又は更に、例えば発電用の大型発電機を駆動するための定置運転にしばしば使用される。このエンジンは通常、相当の期間にわたり連続運転で動作し、このため運転の安全性及び稼働率に対する要求が高度となる。結果として、特に保守間隔が長いこと、低摩耗であること、及び運転資材(operating material)の取り扱いが経済的であることが、運転者にとっての主な満たすべき条件となる。
【0003】
数年来、排気ガスの品質、特に排気ガス中の窒素酸化物の濃度が、重要性を増しつつあるもう1つの重要課題である。この点で、関係する排出閾値に対する法的な要求及び限界値がますます厳しくなっている。結果として、特に2ストローク大型ディーゼル・エンジンでは、汚染物質で高度に汚染された古典的な重質燃料油の燃焼に加え、ディーゼル油又は他の燃料の燃焼も、より問題となってきている。何故なら排出閾値の順守がますます困難で、技術的により複雑で、従ってより費用がかかるようになってきており、すなわち最終的には、順守することはもはや有意には不可能である。
【0004】
その結果、実際には、いわゆる「二元燃料エンジン」、すなわち2種類の異なる燃料で運転可能なエンジンのニーズが長期にわたり存在している。ガス・モードでは、ガス、例えばLNG(液化天然ガス)等の天然ガス若しくは液化鉱油ガスの形態を持つガス、又は内燃機関を駆動するのに適した別のガスが燃やされ、一方液体モードでは、適切な液体燃料、例えばガソリン、ディーゼル油、重質燃料油、アルコール、派生油(oil derivative)及びそれらの水混合物、バイオ燃料、又は他の適切な液体燃料が同じエンジン内で燃焼可能である。この場合、エンジンは、2ストローク・エンジンと4ストローク・エンジンの両方、また特に、長手方向掃気式2ストローク大型ディーゼル・エンジンであって良い。
【0005】
従って、二元燃料大型ディーゼル・エンジンは、燃料の自己点火を特徴とするディーゼル運転のみならず、燃料の積極点火を特徴とするオットー運転でも運転可能である。特に、燃料の自己点火は、別の燃料の積極点火に使用することも可能である。
【0006】
液体モードでは通常、燃料はシリンダの燃焼室内に直接導入され、自己点火の原理により、又は拡散燃焼の原理によりそこで燃焼する。ガス・モードでは、シリンダの燃焼室内に点火可能な混合気を生成するために、オットー原理により気体の状態のガスを掃気と混合することが知られている。この低圧法では、通常、シリンダ内の混合気の点火は、シリンダの燃焼室の中へ、又は予燃焼室の中へ適切な瞬間に少量の液体燃料を噴射することにより行われ、次いでこの噴射により空気-ガス混合気が点火する。もちろん、空気-ガス混合気は、電気的に点火、又はそれ自体知られている別の方法を用いて積極的に点火することも可能である。二元燃料エンジンは、運転中にガス・モードから液体モードへ、且つその逆へ切り換えることが可能である。
【0007】
特にガス・モードでは、掃気のガスに対する比率、いわゆる空気-ガス比率、又は空気-燃料比率を適切に調整することが極めて重要である。この空気の燃料に対する比率は、液体モード又はディーゼル・モードでも重要であるが、通常は、ガス・モードにおいて空気-燃料比率(空燃比)が最適ではないことの影響の方が、液体モードにおいてよりも顕著である。
【0008】
大型エンジンのシリンダに対する掃気又は給気(charge air)は、通常、ターボチャージャにより供給され、ターボチャージャは掃気圧力又は充填圧力下ですぐにシリンダ内に導入可能な掃気の質量流量を発生させる。排気ガス・ターボチャージャとしても知られるターボチャージャは、典型的にタービン及びタービンにより駆動される圧縮機を有し、タービンは大型エンジンからの排気ガスにより駆動される。圧縮機は大気を吸い込み、それを圧縮して掃気を供給する。通常、掃気をシリンダに供給する前に冷却するために、給気冷却器がターボチャージャの更に下流にある。
【0009】
ターボチャージャにより供給される掃気の量、又は発生する充填圧力は、大型エンジンの負荷に、従って大型エンジンの出力若しくはトルク、又は回転速度に依存する。更にターボチャージャの出力は、ウェイスト・ゲート弁としても知られる排気弁によって調整するのが通例である。タービンへ供給される排気ガスの質量流量は、この排気弁によって調整可能である。排気弁が完全に又は部分的に開いている場合、排気ガスの一部がターボチャージャのタービンを通って導かれ、その結果ターボチャージャはその最大可能出力を供給しない。排気弁が完全に閉じている場合、排気ガスの全ての質量流量がターボチャージャのタービンへ供給され、その結果ターボチャージャは、次いでその最大可能出力を供給し、すなわちターボチャージャは掃気の最大可能質量流量を発生する。
【0010】
大型エンジンがその時運転している負荷に応じて、排気弁の調整を、従ってターボチャージャへ駆動用に供給される排気ガスの質量流量の調整を変更することが知られている。それぞれの負荷状態に対して、ターボチャージャにより発生した、本質的に圧縮機出口での空気圧力である充填圧力を一定に保つことが意図される。典型的に、所要の充填圧力は大型エンジンの負荷を増加させると共に増加する。例えば、より低い負荷範囲では中間又はより上の負荷範囲よりも低い充填圧力が必要となる。従って、大型エンジン用のエンジン制御ユニット又は確認装置(checking device)へは、大型エンジンのそれぞれの負荷又は負荷範囲に合った充填圧力を与えるデータが入れられる。排気ガス弁は次いで、その時の負荷に応じて、掃気にとって所要の充填圧力をターボチャージャが供給するように調整される。
【0011】
特にガス・モードがオットー原理によって運転される場合、空気・ガス比率を適切に調整することが、大型エンジンの好ましくは低排出、効率的且つ経済的な運転のために極めて重要となる。ガス含有率が高すぎる場合、空気・ガス混合気は濃くなりすぎる。混合気の燃焼が急速すぎるか、又は早期となりすぎ、このことによって機械的負荷が高くなり、大型エンジンがノッキングし、排気ガス中の汚染物が大幅に増加する恐れがある。この時、燃焼プロセスはもはやシリンダ内のピストンの動きに正しく整合しないため、これによってとりわけ、燃焼が部分的にピストンの動きに反して作用する事実ももたらされる。
【0012】
たとえ現代の大型エンジンでは、通常の運転状態下で空気-ガス比率を適切に調整することがもはや重要な問題ではないとしても、かなりの問題をもたらす恐れのある特定の運転状態がある。
【0013】
一実例として、ターボチャージャ内の給気の質量流量が減少する、大型エンジンの急速な負荷変動及び低負荷範囲をここに挙げることができる。この給気の質量流量の減少によって、特に空気対ガス比率に非常に敏感なガス運転において、ガス燃焼が空気欠乏域に陥る、すなわちシリンダ内の空気-ガス比率が減少する恐れがあり、これによって空気-ガス混合気が濃くなりすぎ、その結果大型エンジンが過度に速く且つ不安定な燃焼の領域に陥り、このことによって機械的負荷が高くなるか、汚染物の放出が非常に高まる事実がもたらされ得る。
【0014】
これらの問題を解決するため、最新技術では、インテーク・レシーバを介してシリンダへ供給可能な給気を十分に提供できるように、単一回転速度を持つ補助ブロワが使用される。しかし、これらの単一回転速度を持つ補助ブロワは、大型エンジンの低負荷範囲にとっては過剰な質量流量を発生する恐れがあり、それによって空気-燃料混合物に過度に多い空気が含まれ、このことにより不安定な燃焼又は点火不良が起こり得る。
【0015】
このため欧州特許第3109444号は、低負荷範囲で安定燃焼を可能にする大型エンジンの運転のための方法、いわゆる「eEVO法」(早期排気弁開(early exhaust valve opening))を開示している。この目的のため、低負荷範囲で空気-燃料比率を調整するために、大型エンジンのシリンダにある出口弁がクランク角度15度と80度の間で開かれる(排気弁の「早期開」)。この方法は、実際に低負荷範囲でさえも空気-燃料比率を所要の限界内に保つために非常に奏功していることが証明されてきてはいるが、早期開によって燃焼プロセスの間に発生したエネルギーの一部が排気システムの中へ消散され、従ってもはやピストンを下方へ動かす膨張作用に役立たないため、エネルギーの観点からは有利ではない。従って、この方法により低負荷範囲でガス消費量が増加し、それ故に大型エンジンのエネルギー効率が低下する。
【0016】
出口弁を早期に開くことの代替として、最新技術では、回転速度が調整可能な補助ブロワの使用が知られている。一方、これらの回転速度が調整可能な補助ブロワは非常に高価であり、更に一方、これらは速い負荷変動に対してしばしば反応が遅すぎ、すなわち非常にゆっくりとしか反応しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第3109444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、最新技術から知られている不利な点を回避する大型エンジンを提案することが本発明の目的である。更に、最新技術から知られている不利な点を回避する大型エンジンを運転するための、改善された方法を提案することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的を達成する本発明の対象物は、独立請求項1及び10の構成によって特徴付けられる。
【0020】
本発明は、空気-燃料混合物を燃焼するための燃焼室と、シリンダ内へ給気を供給するための掃気開口部と、シリンダから燃焼ガスを排出するための出口弁とを持つ少なくとも1つのシリンダを備えた、長手方向掃気式大型エンジンに関する。更に大型エンジンは、掃気開口部に流れ接続された(flow-connected)給気用のインテーク・レシーバ、及び燃焼ガスにより駆動可能な、インテーク・レシーバ内に給気を供給するためのターボチャージャを有する。更に大型エンジンは、追加の掃気をインテーク・レシーバ内に導入可能な、少なくとも1台の補助ブロワを有する。ここで、追加の掃気の質量流量を変更可能な絞り装置(throttling device)が、補助ブロワの上流に配置される。
【0021】
本発明により、大型エンジンの負荷及び運転状態に適合した給気の質量流量が可能となり、その結果、燃焼室内で空気と燃料の比率を正しく調整可能となり、従って不安定な燃焼及び点火不良を防止する。本発明では、給気の質量流量を、絞り装置の流れ断面を介して適合させる。
【0022】
本発明による絞り装置を備えた補助ブロワによって、大型エンジンの低負荷範囲で、空気の割合が高すぎることによる大型エンジン内の不安定な燃焼を防止するように、追加の掃気の質量流量を調整することも可能となる。具体的には全負荷の35%以下の負荷が大型エンジンの低負荷又は小負荷範囲とみなされる。ことのほか0%に近い負荷、特に0.5%から15%、とりわけ5%から35%が大型エンジンの低負荷又は小負荷範囲であるとみなすことができる。加えて低負荷又は小負荷範囲は、ターボチャージャが単独では、すなわち補助ブロワ無しでは十分な給気の質量流量を供給できない運転範囲である。
【0023】
特に好ましい一実施例では、絞り装置は絞り弁及び絞り弁により閉じることが可能な開口部を有する。ここで、絞り弁の開き角度を調整することによって、追加の掃気の質量流量を調整可能である。開き角度とは、絞り装置の開口部と絞り弁の間の角度である。開き角度が90度である場合、絞り弁は完全に開き、補助ブロワからインテーク・レシーバへの追加の掃気の最大質量流量が可能となる。開き角度が0度の場合、絞り弁は完全に閉じ、補助ブロワからインテーク・レシーバへの追加の掃気の質量流量は無くなる。
【0024】
絞り弁は、絞り装置の開口部の一方の側に蝶番で取り付けられても良く、又はバタフライ弁の形式で絞り装置の開口部の中央に回転可能に取り付けられても良い。
【0025】
大型エンジンの低負荷範囲では、開き角度は好ましくは45度と90度の間に、特に50度と90度の間に、とりわけ60度と90度の間に調整される。運転状態により、開き角度はもちろん0度と90度の間の任意の値に調整可能である。
【0026】
通常、追加の掃気の質量流量は開き角度を減らすことにより減少し、開き角度を増すことにより増加する。開き角度を減らすことにより絞り装置の流れ断面は減少し、開き角度を増すことにより絞り装置の流れ断面は増加する。
【0027】
もちろん絞り装置は、流れ断面が調整できる適切な弁として仕切弁、ボール弁又は別の遮断装置として設計することも可能である。
【0028】
特に好ましいことに、本発明による補助ブロワは単一の回転速度でのみ作動することが可能である。この目的のため、補助ブロワは例えば固定の周波数で作動する電動機により、例えば幹線周波数(mains frequency)が供給される同期電動機により駆動される。更に、給気がインテーク・レシーバの方向にのみ流れることが可能なように、補助ブロワの下流にノンリターン装置を配置して良い。そうすることで、ターボチャージャの大出力運転の(インテーク・レシーバ内の給気圧力が高い)間に、インテーク・レシーバから例えば補助ブロワへの給気の逆流が防止される。
【0029】
更に大型エンジンは、絞り装置によって追加の掃気の質量流量を負荷に依存した制御のための制御装置を有することができる。その場合、絞り装置の流れ断面、具体的には絞り弁の開き角度又はスライドの位置が制御装置により調整され、それぞれの運転状態に適合する。例えば、ターボチャージャが非常に多くの給気を供給して、過剰に高い空気-燃料比率となるリスクがある場合、制御装置は補助ブロワによりインテーク・レシーバへ供給される掃気の質量流量が減るように、絞り装置を少なくとも部分的に閉じ、それによりシリンダ内の空気-燃料比率がより低い値に変わる。ターボチャージャ及び補助ブロワにより供給される給気の合計流量が高すぎることになる低負荷範囲では、制御装置はシリンダ内の正しい空気-燃料比率が達成されるように、絞り装置を、従って補助ブロワから供給される追加の給気の質量流量を制御又は調節する。
【0030】
多くの適用例に対して、絞り装置を備えた補助ブロワはeEVO(早期排気弁開)方法の代替として使用可能であり、それにより大型エンジンの低負荷範囲で、極めてよりエネルギー効率が良い運転が可能となり、同時に不利なねじり振動が回避できる。しかし本発明による解決法をeEVO方法と組み合わせることも、例えば出口弁を開けるクランク角度を通常のeEVO方法ほどにより低い値まで変化させず、出口弁の早期開と本発明による補助ブロワの絞りを組み合わせることでシリンダ内の空気-燃料比率を正しい値に調整することによって、可能であることが理解される。
【0031】
好ましい一実施例では、長手方向掃気式大型エンジンは、長手方向掃気式2ストローク大型ディーゼル・エンジンとして設計される。
【0032】
特に大型エンジンは、液体燃料が燃焼のために燃焼室内に導入される液体モードで運転可能で、且つガスが燃料として燃焼室に導入されるガス・モードでも運転可能な二元燃料大型ディーゼル・エンジンとしても設計可能である。
【0033】
本発明は更に、本発明による長手方向掃気式大型エンジンを運転するための方法に関する。本明細書では、本発明による大型エンジンには補助ブロワ及び絞り装置が設けられ、追加の掃気の質量流量が、補助ブロワ上流の流れ断面を変更することにより調整される。補助ブロワ上流の流れ断面は絞り装置によって変更する。絞り装置が絞り弁を有する場合、絞り弁の開き角度を介して流れ断面を上述のように変更可能である。
【0034】
補助ブロワ上流の流れ断面は、大型エンジンの負荷に応じて絞り装置により制御されることが好ましい。この目的のため、具体的には、流れ断面は大型エンジンの負荷の増加と共に、絞り装置によって連続的に増加可能である。このことは、例えば大型エンジンのそれぞれの負荷に対する固有の流れ断面を与える、予め決定可能な方法によって行うことができる。
【0035】
非常に単純な一実施例では、絞り装置は、2つ又は数個の位置のみを持つことも可能である。2つの位置の場合、例えば、一方の位置は流れ断面が完全に開いた(絞られていない状態の)位置であり、他方の位置(絞られた状態)は、流れ断面が絞り装置により減らされた位置である。次いで、絞られていない状態から絞られた状態への切換えは、例えば予め決定可能な負荷値において行うことができる。
【0036】
別法として、補助ブロワ上流の流れ断面は、大型エンジンの負荷に応じて絞り装置により調節することが可能である。この目的のためには、補助ブロワ上流の流れ断面は、具体的には大型エンジンの負荷に応じて、予め決定可能な空気-燃料比率に応じて絞り装置により調節される。
【0037】
以下に、本発明についてより詳細に、装置とプロセス工学の両方の面で、実施例に基づき図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による長手方向掃気式大型エンジンの一実施例の略図である。
図2】本発明による長手方向掃気式大型エンジンのさらなる一実施例の略図である。
図3】本発明による長手方向掃気式大型エンジンの冷却器の断面の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
「大型エンジン」の用語は、船舶用の主駆動ユニットとして、又は例えば発電用の大型発電機を駆動するための定置運転にも使用されるエンジンを指す。典型的には、大型エンジンのシリンダはそれぞれ少なくとも約200mmの内径(ボア)を持つ。
【0040】
二元燃料大型エンジンは、2種類の異なる燃料で運転可能なエンジンである。詳細には、大型エンジンは、シリンダの燃焼室内に液体燃料のみが噴射される液体モードで運転可能である。通常、液体燃料、例えば重質燃料油又はディーゼル油が燃焼室内へ適切な時間に直接噴射され、自己点火のディーゼル原理により、そこで点火する。しかし、大型エンジンは、燃料の役割を果たすガス、例えば天然ガスが燃焼室内に空気-ガス混合気の形態で点火のために導入されるガス・モードでも運転可能である。特に、本明細書に記述された大型エンジンの実施例は、低圧プロセス、すなわちガスがシリンダ内に気体の状態で導入されるプロセスによって、ガス・モードで作動する。低圧プロセスとは、気体の状態の燃料がそれぞれのシリンダの燃焼室内に噴射される噴射圧力が、最大で100bar(10MPa)であることを意味する。好ましくは、噴射圧力は最大で50bar(5MPa)、特に最大で20bar(2MPa)が好ましい。しかし、気体の状態の燃料に対する最大噴射圧力は、更により低く、例えばほんの15bar、又はより低くさえできる。ガスの空気との混合は、シリンダ自身の中又はシリンダの前でも行うことができる。空気-ガス混合気は、オットー原理によって燃焼室内で積極的に点火される。この積極点火は通常、燃焼室又は予燃焼室の中に、適切な瞬間に少量の液体燃料を導入することにより実行され、これにより次いで液体燃料自身が点火し、そして空気-ガス混合気が積極点火する。もちろん積極点火を電気的に又は他の手段によって実現することも可能である。
【0041】
大型エンジンは、4ストローク・エンジンとして及び2ストローク・エンジンとしての両方で設計可能である。
【0042】
大型エンジンの設計及び個々の構成部品、例えば大型ディーゼル・エンジンのための液体モード用の噴射システム、ガス・モード用のガス供給システム、シリンダ当たり少なくとも1個の出口弁を有するガス交換システム、排気ガスシステム又は掃気若しくは給気を供給するためのターボチャージャ・システム、及び制御及び調節システムは、2ストローク・エンジンとしての設計に対してと、4ストローク・エンジンとしての設計に対しての両方が当業者に十分に良く知られており、従って本明細書ではさらなる説明は必要ない。大型エンジンは、電子制御されたエンジンとして設計され、詳細にはガス交換システム及びそれぞれの燃料の導入が電子制御され、すなわち出口弁及び噴射システム又はガス供給システムの操作が、エンジンの制御装置及び調節装置からの電気的又は電子的信号によって行われる。この電子制御は、可能な自由度が最大限となる利点を持つ。何故なら個々のシリンダ内への燃料供給の開始若しくは終了等の運転パラメータ、又は出口弁を開く時間、若しくは出口弁を閉じる時間が自由に選定可能であり、例えば機械的な連結を介して作動サイクル中の特定のクランク角に関連付けられてはいない。
【0043】
本明細書に記述した実施例では、大型エンジンは、長手方向掃気式2ストローク二元燃料大型ディーゼル・エンジンとして設計されることが好ましい。
【0044】
図1は、本発明による長手方向掃気式大型エンジン1の第1の実施例の略図を示す。長手方向掃気式大型エンジン1は複数のシリンダ2を有し、そのそれぞれが空気-燃料混合物を燃焼するための燃焼室20を持つ。シリンダ2は更に、シリンダ2内に給気を供給するための掃気開口部、及びシリンダ2から燃焼ガスを排出するための出口弁を有する。
【0045】
各シリンダ内には、運転状態において上死点と下死点の間を往復動するピストン(図示せず)がある。ピストンはビストン・ロッド(図示せず)を介してクロスヘッド(図示せず)に連結され、クロスヘッドはプッシュ・ロッド(図示せず)を介してクランクシャフトに連結されている。これは、大型エンジン1がクロスヘッド駆動で設計されていることを意味する。
【0046】
大型エンジン1は給気のためのインテーク・レシーバ3を備え、このインテーク・レシーバは掃気開口部へ、並びに給気をインテーク・レシーバ3に供給するため燃焼ガスで駆動可能なターボチャージャ4へ流れ接続されている。加えて、インテーク・レシーバ3には、追加の掃気をインテーク・レシーバ3に導入可能な補助ブロワ5が配置されている。
【0047】
図1でわかる通り、インテーク・レシーバは大型エンジン1の全長にわたって、すなわち縦に一列に並んで配置された大型エンジンの全てのシリンダ2に沿って延在する。インテーク・レシーバはシリンダ2の側面且つより低い領域に配置されるのが好ましい。インテーク・レシーバ3は最初のシリンダに始まり、それから最後のシリンダ2まで、具体的にはクランクシャフトに平行に延在する。
【0048】
本発明による補助ブロワ5の上流には絞り装置51が配置され、この絞り装置51によって追加の掃気の質量流量が変更可能、且つ大型エンジン1の負荷に適合可能となる。ここで、補助ブロワ5からインテーク・レシーバ3へ導かれる追加の掃気は、給気冷却器6とも呼ばれる大型エンジン1の冷却器6から来る。絞り装置51は冷却器6と補助ブロワ5の間の適切な箇所に配置される。
【0049】
従って本発明の構造の中では、上流又は下流の用語は追加の掃気の流れ方向を示す。
【0050】
補助ブロワ5は直接的にも間接的にも大型エンジン1の燃焼ガスによっては駆動されず、大型エンジン1の燃焼ガス又は排気ガスとは無関係な駆動源を有することが、本発明の本質的な特徴である。特に大型エンジン1の低負荷範囲では、ターボチャージャ4が十分な給気を供給可能とするに足りる有効な燃焼ガスが存在しない。実際、補助ブロワ5はまさに、十分な掃気が供給可能なようにターボチャージャを駆動するに足りる燃焼ガス又は排気ガスの質量流量が存在しない運転状態のためのものである。この理由から、補助ブロワ5は、ターボチャージャ4とは対照的に燃焼ガスとは無関係な駆動源によって、例えば電動機によって駆動される。
【0051】
図2は、本発明による長手方向掃気式大型エンジン1の更なる実施例を示す。ここでは、大型エンジン1は冷却器6に横から配置された2台の補助ブロワ5を有する。追加の掃気52は冷却器6から絞り装置51を通り、補助ブロワ5を経てインテーク・レシーバ3へ流れる。
【0052】
ここで、絞り装置51は絞り弁510を有し、絞り弁の開き角度αは大型エンジン1の負荷に適合可能である。
【0053】
開き角度αが90度の場合、絞り弁510は完全に開き、補助ブロワ5からインテーク・レシーバ3への追加の掃気52の質量流量を最大とすることが可能となる。開き角度が0度の場合、絞り弁510は完全に閉じ、補助ブロワ5からインテーク・レシーバ3への追加の掃気52の質量流量は無くなる。
【0054】
本実施例では、絞り弁510は絞り装置51の開口部520の一方の側に蝶番で取り付けられている。
【0055】
大型エンジン1のより高い負荷範囲では、補助ブロワ5への供給が全く或いはほとんど絞られないように、開き角度αは好ましくは45度から90度の間に、特に50度と90度の間に、とりわけ60度と90度の間に調整される。もちろん負荷範囲によって、開き角度αは0度と90度の間の任意の値に調整可能である。
【0056】
本発明による方法によれば、長手方向掃気式大型エンジンは、絞り装置51を用いて補助ブロワ5上流の流れ断面を変更することで、追加の掃気52の質量流量を調整することにより運転される。流れ断面の調整は絞り装置51を介して、詳細には絞り弁510を介して行われる。流れ断面は、追加の掃気52の質量流量に直接的な影響を及ぼす。
【0057】
絞り弁510の開き角度αを小さくした場合、流れ断面も小さくなり、インテーク・レシーバ3への追加の掃気52の質量流量が減少する。絞り弁510の開き角度αを増加させた場合、流れ断面も増加し、インテーク・レシーバ3への追加の掃気52の質量流量が増加する。
【0058】
流れ断面は絞り装置51によって制御され、大型エンジン1の負荷の増加に伴って、連続的又は徐々に増加することが好ましい。絞り装置51が2つ以上の不連続な位置を持つ実施例も可能である。その時の負荷に応じて補助ブロワへの質量流量を所要の値に調整するために、これらの不連続な位置の1つを選択可能である。
【0059】
もちろん絞り装置51は、補助ブロワ5により吸入される質量流量を変更するための他の調整装置を有しても良い。具体的には、絞り装置51は空気流れを絞るための引き蓋又はスライド弁を有しても良い。
【0060】
別法として、大型エンジン1の負荷に応じて、予め決定可能な空気-燃料比率により、絞り装置51で補助ブロワ上流の流れ断面を調節することも可能である。
【0061】
主として本発明による方法は、補助ブロワ5と共にターボチャージャ4が過剰に大きな給気の質量流量を発生することになる低負荷範囲でさえも、特に、上述したシリンダ内の空気含有率が過剰に高い不都合な状態、及び、従って、点火不良(過剰に希薄な混合気)を避けるために、シリンダ2内の最適な空気-燃料比率を確保するように働く。通常大型エンジン1は、ガス運転において、空気-燃料比率の調整が正しくないことに極めてより敏感に反応し、このことが、以下に例示的な性質と共に二元燃料大型ディーゼル・エンジンのガス運転について言及する理由である。しかし本発明による方法は、液体モードに対しても、類似的同様に有利に使用可能であることが理解される。
【0062】
排気ガス値に関する法的規制のために、今日大型エンジンは、海岸近くではしばしばガス・モードで運転しなければならない。何故なら、さもないと排気ガス排出物質、特に窒素酸化物NOx及び硫黄酸化物の所定の制限値に、もはや適合できないからである。
【0063】
ガス・モードでは、効率、及び可能な限り少ない汚染物で空気-ガス混合気を燃焼することは、ガス量に対する空気量の比率に敏感に依存する。この比率は一般的にλ値と呼ばれ、この値は、燃焼に利用可能な空気の質量と、燃料として使用されるガスの質量の比率である。
【0064】
最適な空気-ガス比率は、大型エンジンが発生する駆動トルクに依存し、従って大型エンジンの運転における所要の速度又は負荷に依存する。
【0065】
船舶を駆動するのに好ましい大型エンジンの発生トルクは、しばしばBMEP(正味平均有効圧力(Break Mean Effective Pressure))トルクと呼ばれ、これは本質的に1動作サイクル(2ストローク・エンジンでは1周期のピストンの動き、4ストローク・エンジンでは2周期のピストンの動き)にわたって平均化されたトルクである。
【0066】
効率的且つ特に低排出な運転のためには、各負荷での2つの限界曲線の間で、すなわちノッキング限界と点火不良限界の間で大型エンジンを運転することが望ましい。ノッキング限界を超えた運転状態では、空気-ガス混合気、より一般的には空気-燃料混合物が濃すぎる、すなわち混合気内の空気が少なすぎる。混合気が濃すぎると、種々の問題、すなわち燃焼があまりに速く行われる(急速燃焼)こと、又は過剰なガス含有率に起因する自己着火によって、大型エンジンがノッキングを始めるか、若しくは次に通常シリンダ内の混合気が(動作サイクルに関して)あまりに早く燃焼し始める(予着火)ことにつながる恐れがある。点火不良限界を超えた運転状態では、空気-ガス混合気が薄すぎる、すなわち燃焼室内に最適な燃焼のための十分なガスが無い。
【0067】
従って、大型エンジンを、特にガス・モードで(液体モードでも)常に空気-燃料比率の最適な範囲、すなわちノッキング限界と点火不良限界の間の範囲で運転するための努力がなされる。大型エンジンは、例えばガス・モードではλ値が2と3の間の値で、例えば2.5の範囲で運転される。
【0068】
実際にはこの目的のために、絞り装置51の絞り弁510、又は別の形で設計された構成部品の開き角度αを、大型エンジン1の負荷に応じて調整可能である。例えば、大型エンジン1を点火不良限界より下に保持するために、追加の掃気52をシリンダ2へ十分にしかし多すぎずに確実に供給するであろう開き角度αの値が、大型エンジン1のそれぞれの負荷又はそれぞれの負荷範囲に対する参照表の中に保存される。典型的には、開き角度αは大型エンジン1の負荷に伴い増加する。
【0069】
図3は、本発明による長手方向掃気式大型エンジン1の一実施例の冷却器6の断面を示す。ターボチャージャ4は冷却器6に流れ接続されている。給気42は、冷却器6からインテーク・レシーバ3の中へ、そしてインテーク・レシーバ3から掃気開口部21を経由して、シリンダ2へ流れることができる。給気42をシリンダ2に供給する前に乾燥させる水分離機63を冷却器6内に配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0070】
1 大型エンジン
2 シリンダ
3 インテーク・レシーバ
4 ターボチャージャ
5 補助ブロワ
6 冷却器
20 燃焼室
21 掃気開口部
42 給気
51 絞り装置
52 追加の掃気
63 水分離機
510 絞り弁
520 開口部
α 開き角度
λ 空気-ガス比率
図1
図2
図3