(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】蒸気弁駆動装置及び蒸気タービンシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 47/14 20060101AFI20240423BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20240423BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20240423BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F16K47/14
F01D17/00 U
F01D17/10 C
F01D17/10 G
F16L55/00 H
(21)【出願番号】P 2020022610
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正
(72)【発明者】
【氏名】鍬取 航平
(72)【発明者】
【氏名】尾場瀬 康裕
(72)【発明者】
【氏名】志岐 慎介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 領士
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-008305(JP,A)
【文献】特開2008-217278(JP,A)
【文献】特開平04-050590(JP,A)
【文献】実開昭55-040206(JP,U)
【文献】特開平04-307191(JP,A)
【文献】実開平01-165396(JP,U)
【文献】特開昭59-134303(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010453(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0083262(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110107763(CN,A)
【文献】特開平05-164257(JP,A)
【文献】特開昭51-077922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00 - 21/20
F15B 11/00 - 11/22
F15B 13/00 - 13/16
F16K 47/08 - 47/16
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気加減弁を開閉動させるための蒸気弁駆動装置であって、
作動油の給排によって駆動し、前記蒸気加減弁を開閉動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータに前記作動油を供給するための作動油供給回路と、
前記作動油供給回路に設けられ、前記作動油の給排によって開閉駆動する開閉機構であって、前記アクチュエータへの前記作動油の供給および前記アクチュエータからの前記作動油の排出を行うための開閉機構と、
前記作動油供給回路に
おける前記開閉機構の上流側に設けられ、前記作動油供給回路の流路面積を調節可能な絞り装置と、を備え
、
前記絞り装置は、
第一の貫通孔を有する第一の絞り板と、前記第一の絞り板に軸線を中心として相対回転可能に積層される第二の絞り板であって、第二の貫通孔を有する第二の絞り板と、を含み、
前記第一の絞り板と前記第二の絞り板は、前記相対回転によって互いの前記貫通孔を連通可能に設けられている、
蒸気弁駆動装置。
【請求項2】
前記第一の貫通孔および前記第二の貫通孔のそれぞれの中心は、前記軸線上に位置し、
前記第一の貫通孔および前記第二の貫通孔は、それぞれ非円形状を有する、
請求項
1に記載の蒸気弁駆動装置。
【請求項3】
前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔は、正面視形状が同形同大で、前記軸線を中心とした点対称形状で形成されている、
請求項
2に記載の蒸気弁駆動装置。
【請求項4】
前記作動油供給回路は、一端にフランジ部を有する入口配管と、前記入口配管と前記アクチュエータ又は前記流路を有する他の部材である静止部材とを締結するボルトと、を含み、
前記第一の絞り板は、前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔を有するとともに、前記ボルト挿通孔に前記ボルトが挿通されることで、前記フランジ部と前記静止部材との間で回転不能に固定され、
前記第二の絞り板は、前記フランジ部と前記静止部材との間で回転可能に挟持される、
請求項
1乃至
3の何れか1項に記載の蒸気弁駆動装置。
【請求項5】
前記第二の絞り板には前記軸線周りに回転させるための操作部が設けられている、
請求項
4に記載の蒸気弁駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の蒸気弁駆動装置を備える、
蒸気タービンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気弁駆動装置及び蒸気タービンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、蒸気タービン(蒸気タービンシステム)は、蒸気の流れを遮断、蒸気の流量を調整するための止め弁、加減弁などの蒸気弁や、蒸気弁の開閉駆動を制御するための油圧駆動装置(蒸気弁駆動装置)を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、油圧駆動装置は、例えば、蒸気加減弁の弁体を開閉駆動するためのパワーピストン(アクチュエータ)と、高圧油配管及び制御油配管が接続され、制御油の給排によって開閉駆動し、高圧油配管からパワーピストンへの作動油の供給、パワーピストンから作動油の排出を行うための開閉機構と、開閉機構の開閉駆動と蒸気加減弁の弁体の開閉駆動をリンクさせるためのリンク機構と、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気加減弁などの蒸気弁は蒸気タービンの回転数及び負荷を制御するために設置され、高温・高圧の蒸気を微小流量から大流量まで制御することが要求される極めて重要な弁装置である。
【0006】
一方、このような蒸気弁、特に蒸気加減弁を開閉駆動する従来の油圧駆動装置においては、急激な弁体の開閉動作時など、非常に高圧の作動油がパワーピストンに急激に供給され、パワーピストンと油圧回路の高圧油配管などで大きな油圧変動が発生する。そして、この油圧変動によって励振力が発生してパワーピストンのシリンダが振動し、この振動が高圧油配管やリンク機構に伝播して、騒音、各装置や部材の耐久性の低下などの不都合を招くおそれがあった。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑み、例えば、急激な弁体の開閉動作時であっても、振動の発生を抑制可能な蒸気弁駆動装置及び蒸気タービンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の蒸気弁駆動装置の一態様は、蒸気加減弁を開閉動させるための蒸気弁駆動装置であって、作動油の給排によって駆動し、前記蒸気加減弁を開閉動させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータに前記作動油を供給するための作動油供給回路と、前記作動油供給回路に設けられ、前記作動油供給回路の流路面積を調節可能な絞り装置と、を備える。
【0009】
本開示の蒸気タービンシステムの一態様は、蒸気弁駆動装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の蒸気弁駆動装置及びこれを備えた蒸気タービンシステムの一態様によれば、蒸気弁駆動装置が流路面積を調節可能な絞り装置を備えていることにより、作動油が流通する作動油供給回路の流路面積を任意に調節することができる。
【0011】
これにより、例えば、蒸気弁駆動装置を蒸気タービンシステムに適用した場合に、予め、急激な弁体の開閉動作などによって振動の発生を抑制するように流路面積を調節することができる。
よって、急激な弁体の開閉動作などに伴う従来の振動の発生を抑え、騒音、各装置の耐久性の低下などを解消することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一態様の蒸気タービンシステムを示す図である。
【
図2】一態様の蒸気加減弁及び蒸気弁駆動装置を示す断面図である。
【
図3】一態様の蒸気弁駆動装置を示す断面図である。
【
図4】一態様の蒸気弁駆動装置を示す正面図である。
【
図5】一態様の蒸気弁駆動装置の第一絞り板を示す正面図である。
【
図6】一態様の蒸気弁駆動装置の第二絞り板を示す正面図である。
【
図7】一態様の蒸気弁駆動装置の変更例を示す正面図である。
【
図8】
図7の蒸気弁駆動装置の第二絞り板を示す正面図である。
【
図9】一態様の蒸気弁駆動装置の変更例を示す正面図である。
【
図10】
図9の蒸気弁駆動装置の第一絞り板を示す正面図である。
【
図11】
図9の蒸気弁駆動装置の第二絞り板を示す正面図である。
【
図12】一態様の蒸気弁駆動装置の第一絞り板(第二絞り板)の貫通孔の形状の変更例を示す正面図である。
【
図13】一態様の蒸気弁駆動装置の変更例を示す上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1から
図13を参照し、一実施形態に係る蒸気弁駆動装置及び蒸気タービンシステムについて説明する。
【0014】
ここで、本実施形態では、蒸気弁駆動装置が蒸気弁用の油圧駆動装置であり、さらに、蒸気タービンシステム(蒸気タービン)に具備されて、蒸気の流れを遮断、蒸気の流量を調整するための蒸気加減弁の開閉駆動を制御するための油圧駆動装置であるものとして説明を行う。
【0015】
本実施形態の蒸気タービンシステム1は、例えば、発電システムであり、
図1に示すように、蒸気Sを生成するためのボイラ2と、ボイラ2からの蒸気Sの圧力を回転エネルギーに変換する蒸気タービン3、4、5と、蒸気タービン3、4、5の回転によって駆動する発電機6と、を備えている。
【0016】
ここで、本実施形態では、蒸気タービンが高圧タービン(高圧蒸気タービン)3と中圧タービン(中圧蒸気タービン)4と低圧タービン(低圧蒸気タービン)5とを備えている。また、ボイラ2の内部には、再熱器6が設けられている。そして、ボイラ2から高圧タービン3に向かって高温高圧の蒸気Sが供給される。高圧タービン3から排出された蒸気Sは再熱器6で再加熱され、中圧タービン4に供給される。中圧タービン4から排出された蒸気Sは低圧タービン5に供給される。
【0017】
ボイラ2と高圧タービン3は、蒸気供給配管を介して接続され、蒸気供給配管に止め弁7と加減弁(蒸気加減弁)8が設けられている。
そして、止め弁7を閉じることにより、ボイラ2から高圧タービン3に供給される蒸気Sの流れを遮断することができ、加減弁8の開度を調節することにより、ボイラ2から高圧タービン3に供給される蒸気Sの流量を調節できる。
【0018】
一方、本実施形態の蒸気タービンシステム1は、
図2に示すように、加減弁8の開閉駆動を制御するための蒸気弁駆動装置10を備えている。
【0019】
蒸気弁駆動装置10は、油圧駆動装置であり、加減弁8の弁体8aを開閉駆動するためのパワーピストン(アクチュエータ)11と、高圧油配管12a及び制御油配管12bを有する油圧回路(作動油供給回路)12と、油圧回路12に設けられるとともに、制御油Uの給排によって開閉駆動し、高圧油配管12aからパワーピストン11への作動油Rの供給、パワーピストン11から作動油Rの排出を行うための開閉機構13と、開閉機構13の開閉駆動と加減弁8の弁体8aの開閉駆動をリンクさせるためのリンク機構14と、を備えて構成されている。
【0020】
さらに、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、
図2及び
図3に示すように、作動油Rが流通する高圧油配管12aに接続する入口配管12cに、高圧油配管12aから流入する作動油Rが流通する流路Mの面積を調節可能な絞り装置30が接続している。なお、絞り装置30は、開閉機構13と高圧油配管12aの接続部に設けられている。
【0021】
絞り装置30は、
図3から
図6に示すように、第一の貫通孔15を有する第一の絞り板16と、第二の貫通孔17を有し、第一の絞り板16に軸線O1を中心として相対回転可能に積層される第二の絞り板18と、を備え、第一の絞り板16と第二の絞り板18が相対回転によって互いの貫通孔15、17を連通可能に設けられている。
【0022】
第一の絞り板16は、
図3、
図4、
図5に示すように、円板状に形成され、一面から他面に貫通して軸線O1を中心に第一の貫通孔15が設けられている。第一の絞り板16は、外周縁側に、一面から他面に貫通し、軸線O1を中心として周方向に等間隔で複数のボルト挿通孔19が設けられている。
【0023】
第二の絞り板18は、
図3、
図4、
図6に示すように、円板状に形成されるとともに、第一の絞り板16に互いの中心軸線O1を同軸上に配して積層した状態で、外周縁よりも径方向外側に第一の絞り板16の複数のボルト挿通孔19が配されるように、第一の絞り板16よりも小径で形成されている。第二の絞り板18は、第一の絞り板16と同様、一面から他面に貫通して軸線O1を中心に第二の貫通孔17が設けられている。
【0024】
第二の絞り板18には、外周縁に一端を接続し、径方向外側に突出する操作ハンドル(操作部)20が一体に具備されている。操作ハンドル20は、第一の絞り板16に積層した状態で、第一の絞り板16の外周縁よりも径方向外側に突出するように形成されている。
【0025】
さらに、本実施形態の絞り装置30においては、
図3から
図6に示すように、第一の絞り板16の第一の貫通孔15と第二の絞り板18の第二の貫通孔17とがそれぞれ、中心を軸線O1上に配した非円形状に形成されている。
【0026】
本実施形態では、第一の貫通孔15と第二の貫通孔17とがそれぞれ、正面視で円形の外周から径方向外側に突出するとともに漸次その幅が小となる略二等辺三角形状の複数の突出部15a、17aを周方向に間隔をあけずに複数整列配置して、非円形状に形成されている。
【0027】
本実施形態の第一の貫通孔15と第二の貫通孔17は、正面視形状が同形同大で、軸線O1を中心とした点対称形状で形成されている。
【0028】
そして、本実施形態の絞り装置30は、
図3に示すように、一端にフランジ部12dを有する入口配管12cと、入口配管12cとパワーピストン11及び/又は開閉機構13(あるいは流路Mを有する他の部材である静止部材21:以下、静止部材21という。)との間に、第一の絞り板16と第二の絞り板18を重ねて同軸上に配し、第一の絞り板16のボルト挿通孔19、フランジ部13аにボルト22を挿通しつつ静止部材21に締結される。
【0029】
ボルト22を緊締すると、第一の絞り板16と第二の絞り板18は、入口配管12cのフランジ部12dと静止部材21との間で強固に挟持され、回転不能に固定される。
【0030】
一方、ボルト22を緩めると(緩締)すると、第一の絞り板16は、入口配管12cのフランジ部12dと静止部材21との間で回転不能に固定して挟持され、第二の絞り板18は、入口配管12cのフランジ部12dと静止部材21との間で軸線O1周りに回転可能に挟持される。
【0031】
次に、上記構成からなる本実施形態の蒸気弁駆動装置10の作用効果について説明する。
【0032】
まず、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、流路面積を調節可能な絞り装置30を備えているため、作動油Rが流通する流路面積を任意に調節することができる。
【0033】
したがって、本実施形態の蒸気弁駆動装置10(及びこれを備えた蒸気タービンシステム1)によれば、急激な弁体8aの開閉動作時など、非常に高圧の作動油Rがパワーピストン11や開閉機構13に急激に供給されることを、予め抑止することができ、結果、急激な弁体8aの開閉動作などに伴う振動の発生を抑止することが可能になる。よって、急激な弁体8aの開閉動作などに伴う振動の発生を抑え、騒音、各装置や部材の耐久性の低下などの従来の不都合を解消することが可能になる。
【0034】
また、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、絞り装置30の第一の絞り板16と第二の絞り板18とが相対回転によって互いの貫通孔15を連通可能に設けられている。具体的に、本実施形態では、ボルト22を緩めることによって、第二の絞り板18が軸線O1周りに回転可能に設けられ、この回転によって連通する第一の絞り板16と第二の絞り板18の互いの貫通孔15、17の連通面積が大小変化する。
これにより、作動油Rが流通する流路面積を任意に調節することができる。
【0035】
さらに、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、絞り装置30の第一の絞り板16と第二の絞り板18のそれぞれの貫通孔15、17が、非円形状で形成されるとともに、中心が軸線O1上に配されるように設けられている。
これにより、本実施形態では、
図4に示すように、ボルト22を緩め、第二の絞り板18を軸線O1周りに回転させると、回転量に応じて第一の絞り板16と第二の絞り板18の互いの貫通孔15、17の連通面積を大小変化させることができ、作動油Rが流通する流路面積を任意に調節することができる。
【0036】
さらに、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、絞り装置30の第一の絞り板16の第
一の貫通孔15と第二の絞り板18の第二の貫通孔17が、正面視形状が同形同大で、軸線O1を中心とした点対称形状で形成されている。
これにより、本実施形態では、
図4に示すように、ボルト22を緩め、第二の絞り板18を軸線O1周りに回転させると、回転量に応じて第一の絞り板16と第二の絞り板18の互いの貫通孔15、17の連通面積を大小変化させることができる。また、このとき、ある一定の回転量の範囲(本実施形態では、周方向に隣り合うボルト挿通孔19の間の距離範囲)で第二の絞り板18を正逆回転させることにより、第一の貫通孔15と第二の貫通孔17の連通面積を最大から最小にすることができる。
【0037】
また、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、ボルト22を締結することで、静止部材21と高圧油入口管13のフランジ部13аとの間に絞り装置30が挟持して設けられ、ボルト22を緩めると、第一の絞り板16を回転不能に固定した状態で保持しつつ、第二の絞り板18を回転可能な状態にすることができる。
これにより、本実施形態では、
図4に示すように、ボルト22を緩め、第二の絞り板18を軸線O1周りに回転させるだけで、容易に絞り装置30で流路Mの面積を調節することができ、ボルト22を緊締するだけで、所望の流路Mの面積を保持した状態にすることができる。
【0038】
さらに、本実施形態の蒸気弁駆動装置10では、第二の絞り板17に操作ハンドル(操作部)20が設けられていることにより、この操作ハンドル20を操作して第二の絞り板17を軸線O1周りに正逆回転させることができ、容易に絞り装置30で流路Mの面積を調節することができる。
【0039】
そして、本実施形態の蒸気タービンシステム1は、蒸気弁駆動装置10を備えることで、上記のような蒸気弁駆動装置10による作用効果を奏功するシステムにすることができる。
【0040】
以上、本開示の蒸気弁駆動装置及び蒸気タービンシステムの一実施形態について説明したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
本実施形態では、第一の絞り板16を第二の絞り板18よりも大径で形成し、第一の絞り板16の外周縁側にボルト挿通孔19を設け、ボルト22によって第一の絞り板16を回転不能に固定し、第二の絞り板18を回転可能に挟持するものとした。
これに対し、例えば、
図7、
図8に示すように、第二の絞り板18を第一の絞り板16と同等の大きさとするとともに、第一の絞り板16に積層した状態で、各ボルト挿通孔19に連通する長孔状のボルト挿通孔23を第二の絞り板18に設けてもよい。
また、例えば、
図9、
図10、
図11に示すように、長孔状のボルト挿通孔19、23を形成してもよい。
これらのように構成した場合には、第一の絞り板16と第二の絞り板18の互いのボルト挿通孔19、23にボルト22を挿通しても、第二の絞り板18のボルト挿通孔23、あるいは両絞り板16、18のボルト挿通孔19、23が長孔であるため、第二の絞り板18を軸線O1周りに回転させ、流路Mの面積を大小調節することができる。
【0042】
また、本実施形態では、第一の絞り板16と第二の絞り板18の貫通孔15、17が軸線O1を中心とした非円形状に形成されているものとしたが、相対回転して連通可能(流路面積を大小可変)であればよく、例えば
図12などのように形成するなど、貫通孔15、17の形状、配置を必ずしも本実施形態のように限定する必要はない。
【0043】
さらに、静止部材21、第一の絞り板26、第二の絞り板18の互いに相対移動する一方の部材に目盛24(あるいは指標25)を、他方の部材に指標25(あるいは目盛24)を設けるなどし、相対移動量ひいては絞りの状態を定量化、視覚化して正確にとらえることができるように構成してもよい。例えば、絞りが最大の状態の「100%」、絞りが最小の状態の「0%」などの数値、目盛線を備えた目盛24、目盛線の位置を指し示す指標25を見ることによって、絞りの状態を認識することができ、また、所望の絞りの状態に容易に精度よく設定することができる。
【0044】
ここで、上記実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0045】
(1)一の態様に係る蒸気弁駆動装置(実施形態の蒸気弁駆動装置10)は、蒸気加減弁(実施形態の加減弁8)を開閉動させるための蒸気弁駆動装置であって、作動油(実施形態の作動油R)の給排によって駆動し、蒸気加減弁を開閉動させるためのアクチュエータ(実施形態のパワーピストン11)と、アクチュエータに作動油を供給するための作動油供給回路(実施形態の作動油供給回路12)と、作動油供給回路に設けられ、作動油供給回路の流路面積を調節可能な絞り装置(実施形態の絞り装置30)と、を備える。
【0046】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、絞り装置を備えていることにより、作動油が流通する作動油供給回路の流路面積を任意に調節することができる。これにより、例えば蒸気タービンシステムに適用した場合に、予め、急激な弁体の開閉動作などによって振動の発生を抑制、抑止するように流路面積を調節することができる。
よって、急激な弁体の開閉動作などに伴う振動の発生を抑え、騒音、各装置や部材の耐久性の低下などの従来の不都合を解消することが可能になる。
【0047】
(2)別の態様に係る蒸気弁駆動装置は、上記(1)に記載の蒸気弁駆動装置であって、絞り装置は、第一の貫通孔(実施形態の第一の貫通孔15)を有する第一の絞り板(実施形態の第一の絞り板16)と、第一の絞り板に軸線(実施形態の軸線O1)を中心として相対回転可能に積層される第二の絞り板(実施形態の第二の絞り板18)であって、第二の貫通孔(実施形態の第二の貫通孔17)を有する第二の絞り板と、を含み、第一の絞り板と第二の絞り板は、相対回転によって互いの貫通孔を連通可能に設けられている。
【0048】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、(1)の作用効果に加え、第一の絞り板と第二の絞り板は、相対回転によって互いの貫通孔を連通可能に設けられているので、相対回転によって互いの貫通孔の連通状態を変化させることができ、これにより、作動油が流通する作動油供給回路の流路面積を任意に調節することができる。
【0049】
(3)別の態様に係る蒸気弁駆動装置は、上記(2)に記載の蒸気弁駆動装置であって、第一の貫通孔および第二の貫通孔のそれぞれの中心は、軸線上に位置し、第一の貫通孔および第二の貫通孔は、それぞれ非円形状を有する。
【0050】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、(2)の作用効果に加え、第一の貫通孔および第二の貫通孔のそれぞれの中心が軸線上に位置し、第一の貫通孔および第二の貫通孔がそれぞれ、非円形状を有するので、第一の絞り板と第二の絞り板を軸線周りに相対回転させると、回転量に応じて第一の絞り板と第二の絞り板の互いの貫通孔の連通面積を大小変化させることができ、作動油が流通する作動油供給回路の流路面積を任意に調節することができる。
【0051】
(4)別の態様に係る蒸気弁駆動装置は、上記(2)に記載の蒸気弁駆動装置であって、第一の貫通孔と第二の貫通孔は、正面視形状が同形同大で、軸線を中心とした点対称形状で形成されている。
【0052】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、(3)の作用効果に加え、第一の貫通孔と第二の貫通孔が正面視形状が同形同大で、軸線を中心とした点対称形状で形成されているので、相対回転量に応じて第一の絞り板と第二の絞り板の互いの貫通孔の連通面積を大小変化させることができる。また、このとき、ある一定の回転量の範囲で、第一の絞り板16と第二の絞り板18を正逆相対回転させることにより、第一の貫通孔と第二の貫通孔の連通面積を最大から最小にすることができる。
【0053】
(5)別の態様に係る蒸気弁駆動装置は、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の蒸気弁駆動装置であって、前記作動油供給回路は、一端にフランジ部(実施形態のフランジ部8а)を有する入口配管(実施形態の高圧油入口管13)と、入口配管とアクチュエータ又は流路を有する他の部材である静止部材とを締結するボルト(実施形態のボルト21)と、を含み、第一の絞り板は、ボルトが挿通されるボルト挿通孔(実施形態のボルト挿通孔19)を有するとともに、ボルト挿通孔にボルトが挿通されることで、フランジ部と静止部材との間で回転不能に固定され、第二の絞り板は、フランジ部と静止部材との間で回転可能に挟持される。
【0054】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、(2)乃至(4)の作用効果に加え、ボルトを締結することで、静止部材と入口配管のフランジ部との間に絞り装置が挟持して設けられ、ボルトを緩めると、第一の絞り板を回転不能に固定した状態で保持しつつ、第二の絞り板を回転可能な状態にすることができる。
これにより、ボルトを緩め、第二の絞り板を軸線周りに回転させるだけで、容易に絞り装置で流路の面積を調節することができ、ボルトを緊締するだけで、所望の流路の面積を保持した状態にすることができる。
【0055】
(6)別の態様に係る蒸気弁駆動装置は、上記(5)に記載の蒸気弁駆動装置であって、第二の絞り板には軸線周りに回転させるための操作部(実施形態の操作ハンドル20)が設けられている。
【0056】
本開示の蒸気弁駆動装置によれば、(5)の作用効果に加え、操作部を操作して第二の絞り板を軸線周りに正逆回転させることができ、容易に絞り装置で流路の面積を調節することができる。
【0057】
(7)一の態様に係る蒸気タービンシステムは、(1)から(6)のいずれかに記載の蒸気弁駆動装置を備える。
【0058】
本開示の蒸気タービンシステムによれば、(1)から(6)のいずれかに記載の蒸気弁駆動装置を備えることで、上記の作用効果を奏功することが可能になる。これにより、性能、信頼性の高い蒸気タービンシステムを実現することが可能になる。
【符号の説明】
【0059】
1 蒸気タービンシステム
8 蒸気加減弁
8а 弁体
10 蒸気弁駆動装置
11 パワーピストン(アクチュエータ)
12 油圧回路(作動油供給回路)
12a 高圧油配管(作動油供給回路)
12b 制御油配管
12c 入口配管(作動油供給回路)
12d フランジ部
13 開閉機構
14 リンク機構
15 第一の貫通孔
16 第一の絞り板
17 第二の貫通孔
18 第二の絞り板
19 ボルト挿通孔
20 操作ハンドル(操作部)
21 静止部材
22 ボルト
23 ボルト挿通孔
24 目盛(指標)
25 指針
30 絞り装置
M 流路
O1 軸線
R 作動油
S 蒸気