(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】映像処理装置、プログラム及び映像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/854 20110101AFI20240423BHJP
【FI】
H04N21/854
(21)【出願番号】P 2020027403
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】313000601
【氏名又は名称】日本テレビ放送網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 康博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿晃
(72)【発明者】
【氏名】須加 知也
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】細田 順一
(72)【発明者】
【氏名】穗坂 怜
【審査官】富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-163437(JP,A)
【文献】特開平04-315377(JP,A)
【文献】特開平09-102910(JP,A)
【文献】特開2011-109347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成する反転キー信号生成部と、
前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する合成部と
を備える映像処理装置。
【請求項2】
前記原映像に合成する複数のフィル信号に対応する複数のキー信号を合成し、合成キー信号を生成する合成キー信号生成部を備え、
前記反転キー信号生成部は、前記合成キー信号の値を反転させて前記反転キー信号を生成する
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記合成キー信号生成部に入力するキー信号を選択するキー信号選択部を備える
請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記キー信号の透過率が0又は100パーセントでない領域の透過率を、0又は100パーセントに変更する透過率変更部を備える
請求項1から請求項3のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記透過率変更部は、所定値を基準に、前記キー信号の透過率が0又は100パーセントでない領域の透過率を、0又は100パーセントに変更する
請求項4に記載の映像処理装置。
【請求項6】
前記透過率変更部は、前記キー信号の透過率が0又は100パーセントでない領域の透過率を、0又は100パーセントに変更する膨張フィルタ又は収縮フィルタを備える
請求項4に記載の映像処理装置。
【請求項7】
所定画像を合成するために縮小された放送映像と同じサイズまで、前記反転キー信号を縮小し、空き領域の透過率が100パーセントとなる縮小反転キー信号を生成する縮小反転キー信号生成部を備え、
前記合成部は、前記縮小反転キー信号を用いて、前記所定画像及び前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する
請求項1から請求項6のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項8】
所定画像を合成するために縮小された放送映像と同じサイズまで、前記反転キー信号を縮小し、空き領域の透過率が0パーセントとなる縮小反転キー信号を生成する縮小反転キー信号生成部を備え、
前記合成部は、前記縮小反転キー信号を用いて、前記所定画像及び前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像及び前記所定画像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する
請求項1から請求項6のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項9】
前記所定画像は、L字型画像、U字型画像又はロ字型画像である
請求項7又は請求項8に記載の映像処理装置。
【請求項10】
原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成する反転キー信号生成処理と、
前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する合成処理と
を、コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成し、
前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する
映像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像処理装置、プログラム及び映像処理方法に関し、特に、放送映像の全部又は一部をマスクした映像を生成する映像処理装置、プログラム及び映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テレビ放送において、原映像とCG(computer graphics)画像等とを合成(スーパー)し、ひとつの放送映像とする合成技術が行われている(例えば、特許文献1)。このような合成処理を行う装置には、原映像信号、キー(Key)信号k1及びフィル(Fill)信号f1(以下、CG画像と記載する場合がある)の3種類の映像信号が必要となる。
【0003】
図1は従来の合成処理を説明するための図である。合成処理は、原映像SVの全領域のうち、キー信号k1に基づいて指定される領域(白領域)に、フィル信号f1のCG画像をはめ込むことによって、合成後の放送映像OVを生成する。ここでは、理解を容易にするために、キー信号の透過率を0パーセント(不透明)又は100パーセント(透明)とした場合を説明する。
図1から明らかなように、合成処理によって得られる放送映像OVの全領域のうち、キー信号k1の透過率が100パーセント(透明)の領域(黒領域)には原映像SVが用いられ、キー信号k1の透過率が0パーセント(不透明)の領域(白領域)にはフィル(Fill)信号f1(CG画像)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、放送とほぼ同時刻に、放送映像をインターネット等の通信網を使用して配信する同時配信が検討されている。しかし、同時配信の配信映像は、著作権などの権利関係の都合上、放送映像の全部又は一部をマスクして配信しなければならない場合がある。一方、配信映像であっても、放送映像中の緊急性の高い情報などはマスクせずに配信する必要がある。
【0006】
このような場合における放送側及び同時配信側の合成処理を説明する。
図2は放送側及び同時配信側の合成処理を説明するための図である。
【0007】
図2において、放送側の処理は、上述した
図1の処理と同様である。一方、同時配信側の処理は、原映像SVの全領域のうち、原映像をマスクするために用いられるマスク用キー信号Mkに基づいて指定される領域(白領域)に、原映像をマスクするフィル信号Mfのマスク画像をはめ込む。尚、はめ込み処理を行わず、単純にマスク用キー信号にスイッチングするケースも考えらえるが、結果出力される映像信号は同様である。1。次に、放送映像と同様に緊急性の高い情報を合成するために、マスク後原映像MVの全領域のうち、キー信号k1に基づいて指定される領域(白領域)に、フィル信号f1のCG画像をはめ込むことによって、合成後の配信映像DVを生成する。
図2中の配信映像DVは、原映像SVをマスクした映像MVに、放送映像と同様に緊急性の高い「緊急地震速報です。」がスーパーされて視認可能になっている。
【0008】
ここで、
図2の処理に対応する模式的なブロック図を
図3に示す。
【0009】
図3中、1は放送映像処理装置であり、2は配信映像処理装置である。そして、放送映像処理装置1は、フィル信号f1のCG画像と原映像SVとを合成する画像合成部11を備えている。配信映像処理装置2は、マスク用キー信号Mkを用いて、フィル信号Mfのマスク画像と原映像SVとを合成するマスク合成部21と、マスクされた原映像とフィル信号f1のCG画像とを合成する画像合成部22とを備えている。
【0010】
図3に示されるように、放送映像処理装置1と配信映像処理装置2とは並列的な処理が行われており、また、放送映像処理装置1と配信映像処理装置2とは同様な構成である。すなわち、同時配信のために、放送映像処理装置1と同様な設備である配信映像処理装置2を備えなければならないということである。
【0011】
これは設備のコストの増大を招き、事業者にとって大きな負担となる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、映像処理にかかる設備のコストを抑制する映像処理装置、プログラム及び映像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成する反転キー信号生成部と、前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する合成部とを備える映像処理装置である。
【0014】
本発明の一態様は、原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成する反転キー信号生成処理と、前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する合成処理とを、コンピュータに実行させるプログラムである。
【0015】
本発明の一態様は、原映像と、前記原映像に合成する画像のフィル信号とを合成するために用いられたキー信号の値を反転させ、反転キー信号を生成し、前記反転キー信号を用いて、前記フィル信号が合成された放送映像と、前記原映像をマスクするためのマスク用画像のフィル信号とを合成する映像処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、映像処理にかかる設備のコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は従来の合成処理を説明するための図である。
【
図2】
図2は放送側及び同時配信側の合成処理を説明するための図である。
【
図3】
図3は
図2の処理に対応する模式的なブロック図を示した図である。
【
図4】
図4は第1の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。
【
図5】
図5は第1の実施の形態の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は原映像に複数の画像を合成し、合成後の放送映像と合成後の配信映像を生成する例を説明するための図である。
【
図7】
図7は
図6の処理に対応する模式的なブロック図を示した図である。
【
図8】
図8は第2の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。
【
図9】
図9は第2の実施の形態の動作を説明する図である。
【
図10】
図10は第2の実施の形態の他の映像処理システムのブロック図である。
【
図11】
図11は第3の実施の形態の他の映像処理システムのブロック図である。
【
図12】
図12は第4の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。
【
図13】
図13はL字型画面の生成を説明するための図である。
【
図14】
図14は第5の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。
【
図15】
図15は反転キー信号縮小部35を説明するための図である。
【
図16】
図16は第5の実施の形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0019】
図4は第1の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。尚、
図4中、放送映像処理装置1は、
図3のものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0020】
図4中、3は本発明の実施の形態における配信映像処理装置である。配信映像処理装置3は、キー信号反転部30と、マスク合成部31とを備える。
【0021】
キー信号反転部30は、放送側で使用されたキー信号k1を入力し、キー信号k1の信号レベルを反転させ、反転キー信号Rk1を生成する。すなわち、キー信号k1の透過率が0パーセント(不透明)の領域を100パーセント(透明)に反転させ、キー信号k1の透過率が100パーセント(透明)の領域を0パーセント(不透明)に反転させた反転キー信号Rk1を生成するのである。別の言い方をすると、生成された反転キー信号Rk1は、合成後の放送映像OVの全領域のうちフィル信号f1の画像が合成された領域が100パーセント(透明)となっている信号である。
【0022】
マスク合成部31は、反転キー信号Rk1を用いて、放送映像処理装置1から出力される合成後の放送映像OVとフィル信号Mfのマスク画像とを合成する。マスク合成部31から出力される合成後の配信映像DVは、放送映像OVにマスク画像が重畳された画像となるが、フィル信号f1を用いて合成された画像の領域は、反転キー信号Rk1により切り抜かれて視認可能になる。
【0023】
上記の配信映像処理装置3の動作を、
図5を用いて説明する。
図5は第1の実施の形態の動作を説明する図である。
【0024】
図5中、放送側の動作は同じである。配信映像処理装置3のキー信号反転部30は、放送側で使用されたキー信号k1を入力し、キー信号k1の信号レベルを反転させる。
図5では、「緊急地震速報です。」の領域が0パーセント(不透明)の領域(白領域)であるキー信号k1のレベルが反転され、「緊急地震速報です。」の領域が100パーセント(透明)の領域(黒領域)となった反転キー信号Rk1が生成されている。
【0025】
配信映像処理装置3のマスク合成部31は、反転キー信号Rk1を用いて、合成後の放送映像OVとフィル信号Mfのマスク画像とを合成する。
図5では、放送映像OVの全領域のうち、反転キー信号Rk1により100パーセント(透明)の「緊急地震速報です。」の領域を除く領域がマスク画像にマスクされ、マスクされない「緊急地震速報です。」の領域が視認可能なマスク画像合成後の配信映像DVが生成されている。
【0026】
このように、放送側で用いられたキー信号を反転させた反転キー信号を用いて、CG画像等が合成された放送映像とマスク用の画像を構成することによって、原映像がマスクされた配信映像DVを得ることか出来る。
【0027】
従来のシステムを示す
図3と第1の実施の形態のシステムを示す
図4とを比較すると理解できるように、第1の実施の形態のシステムは、マスク合成部を除いた画像合成部が不要となり、従来のシステムと比較して明らかに構成が簡易なものとなり、設備のコストを抑制することができる。
【0028】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を説明する。本発明の第2の実施の形態は、複数の画像を原映像に合成する場合を説明する。
【0029】
まず、本発明の第2の実施の形態の説明を始める前に、原映像に複数の画像を合成し、合成後の放送映像と合成後の配信映像を生成する例を説明する。
【0030】
図6は原映像に複数の画像を合成し、合成後の放送映像と合成後の配信映像を生成する例を説明するための図である。
図6の例では、「緊急地震速報です。」のフィル信号f1と、日本地図のCG画像のフィル信号f2とを原映像SVに合成する場合の例である。
【0031】
まず、放送側の処理は、キー信号k1に基づいて、原映像SVに「緊急地震速報です。」のフィル信号f1を合成する。続いて、キー信号k2に基づいて、フィル信号f1が合成された映像に、日本地図のCG画像のフィル信号f2を合成する。そして、合成後の放送映像OVを生成する。
【0032】
一方、同時配信側の処理は、原映像SVの全領域のうち、原映像をマスクするために用いられるマスク用キー信号Mkに基づいて指定される領域(白領域)に、原映像をマスクするフィル信号Mfのマスク画像をはめ込む。次に、放送映像と同様に緊急性の高い情報を合成するために、マスク後原映像MVの全領域のうち、キー信号k1に基づいて指定される領域(白領域)に、フィル信号f1のCG画像を合成する。更に、キー信号k2に基づいて、フィル信号f1が合成された映像に、日本地図のCG画像のフィル信号f2を合成する。そして、原映像SVがマスクされ、「緊急地震速報です。」及び日本地図のCG画像がスーパーされて視認可能な合成後の配信映像DVを生成する。
【0033】
ここで、
図6の処理に対応する模式的なブロック図を
図7に示す。
【0034】
図7中、1は放送映像処理装置であり、2は配信映像処理装置である。そして、放送映像処理装置1は、キー信号k1を用いてフィル信号f1のCG画像と原映像SVとを合成する画像合成部11aと、キー信号k2を用いてフィル信号f1のCG画像が合成された原映像とフィル信号f2のCG画像とを合成する画像合成部11bとを備えている。配信映像処理装置2は、マスク用フィル信号Mfのマスク画像と原映像SVとを合成するマスク合成部21と、キー信号k1を用いてマスクされた原映像MVとフィル信号f1のCG画像とを合成する画像合成部22aと、キー信号k2を用いてフィル信号f1のCG画像が合成された画像とフィル信号f2のCG画像とを合成する画像合成部22bとを備えている。
【0035】
図7に示されるように、放送映像処理装置1と配信映像処理装置2とは並列的な処理が行われており、原映像SVに合成する画像の数に比例して、配信映像処理装置2の画像合成部22が増加することがわかる。これでは、設備コストが増加し、事業者にとって負担が大きい。
【0036】
そこで、本発明の第2の実施の形態では、原映像SVに合成する画像の数が増加しても、画像合成部が増加しない例を説明する。
図8は第2の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。尚、
図8中、放送映像処理装置1の合成部11a,bの動作は
図7のものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
第2の実施の形態の映像処理システム3は、第1の実施の形態の配信映像処理システム3の構成に加えて、キー信号合成部32を備えている。
【0038】
キー信号合成部32は、放送映像処理装置1において、画像合成に使用されるキー信号k1とキー信号k2とを合成(論理和)し、合成キー信号Skを生成する。合成キー信号Skは、キー信号k1の0パーセント(不透明)の領域(白領域)と、キー信号k2の0パーセント(不透明)の領域(白領域)と、キー信号k1の100パーセント(透明)の領域(黒領域)と、キー信号k2の100パーセント(透明)の領域(黒領域)と、を持つ信号である。
【0039】
キー信号反転部30は、キー信号合成部32から合成キー信号Skを入力し、合成キー信号Skの信号レベルを反転させ、反転合成キー信号RSkを生成する。すなわち、反転合成キー信号RSkは、キー信号k1及びキー信号k2の透過率が0パーセント(不透明)の領域を100パーセント(透明)に反転させ、キー信号k1及びキー信号k2の透過率が100パーセント(透明)の領域を0パーセント(不透明)に反転させた信号である。別の言い方をすると、生成された反転合成キー信号RSkは、合成後の放送映像OVの全領域のうちフィル信号f1及びフィル信号f2の画像が合成された領域が100パーセント(透明)となっている信号である。
【0040】
マスク合成部31は、反転合成キー信号RSkを用いて、合成後の放送映像OVとフィル信号Mfのマスク画像とを合成する。マスク合成部31から出力される合成後の配信映像DVは、放送映像OVにマスク画像が重畳された画像となるが、フィル信号f1及びフィル信号f2の画像の領域は、反転合成キー信号RSkにより切り抜かれて視認可能になる。
【0041】
第2の実施の形態の配信映像処理装置3の動作を、
図9を用いて説明する。
図9は第2の実施の形態の動作を説明する図である。
【0042】
【0043】
配信映像処理装置3のキー信号合成部32は、放送映像処理装置1に使用されるキー信号k1とキー信号k2とを合成(論理和)し、合成キー信号Skを生成する。
図9では、合成キー信号Skは、「緊急地震速報です。」の領域が0パーセント(不透明)の領域(白領域)と、日本地図の画像の領域が0パーセント(不透明)の領域(白領域)とを持つ信号である。
【0044】
続いて、キー信号反転部30は、合成キー信号Skを入力し、合成キー信号Skの信号レベルを反転させる。
図9では、0パーセント(不透明)の領域(白領域)の「緊急地震速報です。」の領域のレベルが反転されて100パーセント(透明)の領域(黒領域)となり、0パーセント(不透明)の領域(白領域)の日本地図の画像の領域のレベルが反転されて100パーセント(透明)の領域(黒領域)となった反転合成キー信号RSkが生成されている。
【0045】
配信映像処理装置3のマスク合成部31は、反転合成キー信号RSkを用いて、合成後の放送映像OVとフィル信号Mfのマスク画像とを合成する。
図9では、放送映像OVの全領域のうち、反転合成キー信号RSkにより100パーセント(透明)の「緊急地震速報です。」及び日本地図の画像の領域を除く領域がマスク画像にマスクされ、マスクされない「緊急地震速報です。」及び日本地図の画像の領域が視認可能な配信映像DVが生成されている。
【0046】
このように、放送側で用いられた複数のキー信号を合成するキー信号合成部32を設けることにより、原映像に合成する画像が増加しても配信映像処理装置3の合成部の数を増加させることなく、原映像がマスクされ、かつ、原映像に合成された画像が視認可能な配信映像DVを得ることか出来る。
【0047】
上述した第2の実施の形態では、合成する画像が二つの例を示したが、合成する画像が多くなればなるほど、その効果は顕著である。例えば、
図10に示すように、合成する画像がn個(キー信号及びフィル信号がn個)である場合、放送側の放送映像処理装置1は、n個の画像合成部11a-11nを必要とするが、配信側の配信映像処理装置3は合成する画像がn個であっても、画像合成部が増加することがない。
【0048】
<第3の実施の形態>
第2の実施の形態では、複数の画像を原映像に合成する場合を説明した。しかし、複数の画像のうち、全ての画像を配信側の映像で視認可能にする必要がない場合もある。そこで、第3の実施の形態では、視認可能にする必要がある画像のみを配信側の映像に表示することができる例を説明する。
【0049】
図11は第3の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。第3の実施の形態の映像処理システム3は、第2の実施の形態の映像処理システム3の構成に加えて、キー信号選択部33を備えている。
【0050】
キー信号選択部33は、合成に用いられるキー信号k1からキー信号knを入力し、配信側の映像で視認可能にする必要がある画像に対応するキー信号のみを選択する。キー信号選択部33に選択されたキー信号は、キー信号合成部32に出力される。
【0051】
キー信号合成部32は、選択されたキー信号のみを合成することにより、配信側の映像で視認可能にしたい画像のみに対応した合成キー信号Skを生成することができる。
【0052】
第3の実施の形態の映像処理システムは、装置の構成を複雑にすることなく、配信側の映像で視認可能にしたい画像のみが表示された配信映像を生成することができる。
【0053】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態を説明する。
【0054】
原映像に画像を合成する場合、かならずしもエッジが立った画像ばかりではなく、エッジをわざとぼやかす演出を行う場合がある。このような場合、キー信号の透過率の一部は0又は100パーセントではなく、例えば、30や60パーセントといった数値になる。このような場合、単純にキー信号のレベルを反転するだけでは、反転したキー信号の透過率の一部も0又は100パーセンにならず、この反転したキー信号をそのまま用いると、本来マスクしたい画像の一部が視認可能になってしまう場合がある。
【0055】
そこで、第4の実施の形態では、透過率の一部が0又は100パーセントではないキー信号の透過率を変更し、マスクしたい画像がぼけて視認可能になってしまうことを防止する例を説明する。
【0056】
図12は第4の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。第4の実施の形態の映像処理システム3は、第3の実施の形態の映像処理システム3の構成に加えて、キー信号透過率変更部34を備えている。
【0057】
キー信号透過率変更部34は、キー信号の透過率が0又は100パーセントではない領域について、その透過率を0又は100パーセントにする。透過率の変更の方法は、色々あるが、例えば、以下の方法がある。
(1)キー信号透過率変更部34に、透過率について所定の閾値(例えば、40パーセント)を設定する。そして、キー信号透過率変更部34は、入力されたキー信号の透過率が所定の閾値を下回る(又は未満)場合、透過率を0パーセントにする。一方、キー信号透過率変更部34は、入力されたキー信号の透過率が所定の閾値を上回る(又は以上)場合、透過率を100パーセントにする。
(2)キー信号透過率変更部34が膨張フィルタ又は収縮フィルタを備え、膨張フィルタ又は収縮フィルタを用いて、入力されたキー信号の透過率が0又は100パーセントにする方法である。尚、膨張フィルタ又は収縮フィルタは一例であり、膨張フィルタ又は収縮フィルタ以外のフィルタであっても、同様な機能を持つフィルタであれば、種類は問わない。
【0058】
上述した(1)及び(2)の方法は一例であって、これに限定するものではない。
【0059】
キー信号透過率変更部34によって、透過率が0又は100パーセントになったキー信号は、キー信号合成部32に入力され、キー信号が合成される。これ以降の動作は上述した実施の形態と同様である。
【0060】
第4の実施の形態は、透過率の一部が0又は100パーセントではないキー信号であっても、その透過率を変更することにより、マスクしたい映像がぼやけて視認可能になってしまうことを防ぐことができる。
【0061】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態を説明する。
【0062】
放送映像の中には、テレビの通常放送の左側(又は右側)及び下側(又は上側)にL字型のスペースをつくって情報を付記するL字型画面という手法がある。このL字型画面は、放送映像を縮小又は圧縮して空いた空き領域(L字領域)にL字画像を合成することにより生成される。L字画像には、選挙や、自然災害(台風、地震、水害など)、あるいは国内外の重要ニュース(戦争や大規模紛争など)などの公共性の高い情報が表示される場合が多い。特に、自然災害の場合は、注警報、被害状況、ライフライン情報、交通情報、気象情報など速報性の高い重要な情報が提供され、放送ではない配信であっても、そのまま表示することが望まれることが多い領域である。
【0063】
図13はL字型画面の生成を説明するための図である。
図13中において、合成後の放送映像OVを生成するまでは同じである。L字型画面を生成するために、L字画像を合成することが出来るサイズまで放送映像OVを縮小又は圧縮する。そして、空き領域(L字領域)にL字画像を合成することにより、L字放送映像OLVを生成する。
【0064】
第5の実施の形態は、上記のようなL字型画面の手法に、本発明を適用した場合である。
【0065】
図14は第5の実施の形態の映像処理システムのブロック図である。第5の実施の形態の映像処理システム3は、第2の実施の形態の映像処理システム3の構成に加えて、反転キー信号縮小部35を備えている。
【0066】
反転キー信号縮小部35は、
図15に示すように、縮小された放送映像OVに対応する領域のサイズまで、反転合成キー信号RSkを縮小し、空き領域(L字領域)の透過率が100パーセントとなるL字反転合成キー信号LRSkを生成する。別の言い方をするならば、縮小された放送映像OVに対応する領域のサイズまで、反転合成キー信号RSkを縮小する。一方、その縮小した放送映像の空き領域(L字領域)の透過率が100パーセントの信号を生成する。そして、縮小された反転合成キー信号RSkと、空き領域(L字領域)の透過率が100パーセントの信号とを合成することにより、L字反転合成キー信号LRSkを生成する。
【0067】
第5の実施の形態の配信映像処理装置3の動作を説明する。
図16は第5の実施の形態の動作を説明する図である。
【0068】
【0069】
配信映像処理装置3のキー信号合成部32は、放送映像処理装置1に使用されるキー信号k1とキー信号k2とを合成(論理和)し、合成キー信号Skを生成する。
図16では、合成キー信号Skは、「緊急地震速報です。」の領域が0パーセント(不透明)の領域(白領域)と、日本地図の画像の領域が0パーセント(不透明)の領域(白領域)とを持つ信号である。
【0070】
続いて、キー信号反転部30は、合成キー信号Skを入力し、合成キー信号Skの信号レベルを反転させる。
図16では、0パーセント(不透明)の領域(白領域)の「緊急地震速報です。」の領域のレベルが反転されて100パーセント(透明)の領域(黒領域)となり、0パーセント(不透明)の領域(白領域)の日本地図の画像の領域のレベルが反転されて100パーセント(透明)の領域(黒領域)となった反転合成キー信号RSkが生成されている。
【0071】
次に、反転キー信号縮小部35は、縮小された放送映像OVに対応する領域のサイズまで、反転合成キー信号RSkを縮小し、空き領域(L字領域)の透過率が100パーセントとなるL字反転合成キー信号LRSkを生成する。
図16では、100パーセント(透明)の「緊急地震速報です。」の領域(黒領域)と、100パーセント(透明)の日本地図の画像の領域(黒領域)とを含む反転キー信号の部分が縮小され、その空いたL字領域の透過率が100パーセントのL字反転合成キー信号LRSkが生成されている。
【0072】
配信映像処理装置3のマスク合成部31は、L字反転合成キー信号LRSkを用いて、L字合成後の放送映像OLVとフィル信号Mfのマスク画像とを合成する。
図16では、放送映像OLVの全領域のうち、L字反転合成キー信号LRSkにより100パーセント(透明)の「緊急地震速報です。」及び日本地図の画像の領域を除く領域がマスク画像にマスクされ、マスクされない「緊急地震速報です。」、日本地図の画像の領域及びL領域が視認可能なL字配信映像DLVが生成されている。
【0073】
このように、反転キー信号縮小部35を設けることにより、放送映像がL字型画面であっても、原映像がマスクされ、かつ、原映像に合成されたフィル信号の画像及びL字画像が視認可能な配信映像を得ることか出来る。
【0074】
第5の実施の形態の変形例1を説明する。
【0075】
第5の実施の形態では放送映像がL字型画面の例を説明した。しかし、縮小した放送映像の空いた領域に合成する画像の形は、L字画像に限られない。例えば、縮小した放送映像の空いた領域に合成する画像は、U字型画像又はロ字型画像であっても良い。
【0076】
これらの場合、縮小された放送映像に対応する域のサイズまで、反転合成キー信号RSkを縮小し、空き領域(U字領域又はロ字領域)の透過率が100パーセントとなる反転合成キー信号を生成する。別の言い方をするならば、縮小された放送映像に対応する領域のサイズまで、反転合成キー信号を縮小する。一方、その縮小した放送映像の空き領域(U字領域又はロ字領域)の透過率が100パーセントの信号を生成する。そして、縮小された反転合成キー信号と、空き領域(U字領域又はロ字領域)の透過率が100パーセントの信号とを合成することにより、U字型画面又はロ字型画面の場合の反転合成キー信号を生成する。他の動作は第5の実施の形態と同様である。
【0077】
第5の実施の形態の変形例2を説明する。
【0078】
第5の実施の形態及び変形例1では、縮小した放送映像の空いた領域に合成された画像(L字型画像、U字型画像又はロ字型画像)が視認できるように、その領域に対応する透過率が100パーセントの反転合成キー信号を生成した。しかし、縮小した放送映像の空いた領域に合成された画像(L字型画像、U字型画像又はロ字型画像)もマスクしたい場合もある。その場合は、その領域に対応する透過率が0パーセントの反転合成キー信号を生成すれば良い。他の動作は第5の実施の形態と同様である。
【0079】
上述した配信映像処理装置3は、各種の演算処理等を行うプロセッサを有するコンピュータシステムによって実現することもできる。そして、プロセッサは、上述した各部に対応する処理を行わせるプログラムにより、配信映像処理装置3と同じ処理を実行する。
【0080】
尚、上述した実施の形態では、本映像処理装置が適用される例として、放送映像を同時配信する例を説明したが、同時配信に限られるものではない。例えば、放送映像を国内と国外に放送又は配信する場合など、放送映像に相当するオリジナルの映像をマスクした映像が必要な場合等の様々なケースに適用することができる。
【0081】
また、マスク用の画像は、静止画、動画の種類は問わない。
【0082】
以上、好ましい実施の形態をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態を適時組み合せて実施することが可能であり、更に、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することが出来る。
【符号の説明】
【0083】
1 放送映像処理装置
2 配信映像処理装置
3 配信映像処理装置
11 画像合成部
21 マスク合成部
22 画像合成部
30 キー信号反転部
31 マスク合成部
32 キー信号合成部
33 キー信号選択部
34 キー信号透過率変更部
35 反転キー信号縮小部