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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20240423BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20240423BHJP
   B30B 1/18 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B30B15/14 K
B30B15/28 A
B30B1/18 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033688
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133418
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-304800(JP,A)
【文献】特開2018-147390(JP,A)
【文献】特開2015-75821(JP,A)
【文献】特開2020-23024(JP,A)
【文献】特開2013-120128(JP,A)
【文献】特開平7-164199(JP,A)
【文献】特開平2-59200(JP,A)
【文献】特開2016-209885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/10 - 15/28
B30B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムの位置又は前記ラムの動作時間を示す第1情報と、前記第1情報に対応した前記ラムの荷重を示す第2情報と、により構成された、実測された荷重データである複数の実測データと、前記荷重データの基準となる複数の基準データと、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の前記実測データに基づく実測データパターンと、複数の前記基準データに基づく基準データパターンが対応するように、前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する調整部と、
前記調整部により調整された前記実測データパターンと前記基準データパターンとの類似性に基づき、プレス動作における前記ラムにかかる荷重の適否を判断する判断部と、
を備えるプレス装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記実測データパターンにおける前記実測データと、前記基準データパターンにおける前記実測データに対応した基準データとの距離の二乗に基づき、前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する、
請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記実測データパターンは、前記実測データにおける第1の基準点と複数の前記実測データとの距離を示す数値により構成され、
前記基準データパターンは、前記基準データにおける第2の基準点と複数の前記基準データとの距離を示す数値により構成される、
請求項1または2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記判断部は、ユーザーにより選択された複数の前記実測データの所望の部分に基づき、前記実測データパターン前記基準データパターンの類似性の判断を行う、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記調整部は、動的計画法により前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、対象物をプレスするプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータ等の駆動装置により、ラムを上下動させ対象物をプレスするプレス装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-66798号公報
【文献】特開2008-119737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス装置は、高圧で対象物のプレスを行うため、モータ等の駆動装置や、対象物をプレスするラムおよびラムを駆動するボールねじ等の駆動機構が頻繁に破損または劣化する。破損または劣化した駆動装置または駆動機構は、作業者による修理作業により交換される。プレスの加圧対象となる製品が、駆動装置または駆動機構の破損または劣化により基準値通りにプレスされない場合、製品の品質を確保することができないとの問題点があった。
【0005】
したがって、製品ごとに基準値通り正しく加圧が行われたかを確認しながらプレス作業を行うことが望ましい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プレス装置の加圧対象となる製品に対し、基準値通り正しく加圧が行われたかを確認することができるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプレス装置は、以下を備えたことを特徴とする。
(1)ラムの位置又は前記ラムの動作時間を示す第1情報と、前記第1情報に対応した前記ラムの荷重を示す第2情報により構成された、実測された荷重データである複数の実測データと、前記荷重データの基準となる複数の基準データと、を記憶する記憶部。
(2)前記記憶部に記憶された複数の前記実測データに基づく実測データパターンと、複数の前記基準データに基づく基準データパターンが対応するように、前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する調整部。
(3)前記調整部により調整された前記実測データパターンと前記基準データパターンの類似性に基づき、プレス動作における前記ラムにかかる荷重の適否を判断する判断部。
【0008】
本発明のプレス装置において、以下の構成を採用しても良い。
(1)前記調整部は、前記実測データパターンにおける前記実測データと、前記基準データパターンにおける前記実測データに対応した基準データとの距離の二乗に基づき、前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する。
(2)前記実測データパターンは、前記実測データにおける第1の基準点と複数の前記実測データとの距離を示す数値により構成され、前記基準データパターンは、前記基準データにおける第2の基準点と複数の前記基準データとの距離を示す数値により構成される。
(3)前記判断部は、ユーザーにより選択された複数の前記実測データの所望の部分に基づき、前記実測データパターン前記基準データパターンの類似性の判断を行う。
(4)前記調整部は、動的計画法により前記実測データパターン、前記基準データパターンの少なくとも一方の前記第1情報を伸縮させて調整する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実測された荷重データである複数の実測データにより構成された実測データパターンと、荷重データの基準となる複数の基準データにより構成された基準データパターンとの類似性を評価してプレス装置の劣化状態を精度よく判断するのでプレス装置の加圧対象となる製品に対し、基準値通り正しく加圧が行われたか確認することができるプレス装置を提供することができる。
【0010】
本発明によれば、ラムにかかる荷重の実測波形または実測データパターンと、基準となる基準波形または基準データパターンとの類似性を評価するので、実測された数値の範囲によりラムにかかる荷重の異常を判断する場合に比べ、より精度よくラムにかかる荷重の異常を判断することができる。また、本発明によれば、ラムの加圧位置、ラムの加圧動作開始時刻、ラムの動作速度によらず、精度よくラムにかかる荷重の異常を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかるプレス装置の構成を示すブロック図
図2】第1実施形態にかかるプレス装置の外観を示す斜視図
図3】第1実施形態にかかるプレス装置の演算部のプログラムフローを示す図
図4】第1実施形態にかかるプレス装置の画像作成部の動作を説明する図
図5】第1実施形態にかかるプレス装置のユーザーによる実測波形Sの選択を説明する図
図6】第1実施形態にかかるプレス装置の数値化部の動作を説明する図
図7】第1実施形態にかかるプレス装置の判断部の動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
[1-1.概略構成]
以下では、図1図2を参照しつつ、本実施形態のプレス装置1の構成を説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、プレス装置1は、鉄材等のブロックにより構成されたラム9と、雄ねじにより構成されたボールねじ8と、ボールねじを回転させる駆動力を伝達する伝達部6と、サーボモータ等により構成された駆動部5と、マイクロコンピュータ等により構成された異常検知部2と、スイッチ回路により構成された操作部7を有する。
【0014】
ラム9は、内部にボールねじ8と螺合する雌ねじ部91を有し、ボールねじ8が回転することにより上下動し、対象物Oをプレスする。ボールねじ8は、軸66を介し伝達部6に接続される。軸66が回転することにより、ボールねじ8は回転させられる。
【0015】
駆動部5は、駆動力を有するモータ51、モータ51に電流を供給する駆動アンプ52を有する。駆動アンプ52は、操作部7に接続され、モータ51への電流の供給または停止を指示される。操作部7は、作業者により操作される。モータ51と駆動アンプ52は、サーボモータを形成する。モータ51は、それぞれ軸62を介し伝達部6に接続される。モータ51は、軸62を回転させる。
【0016】
伝達部6は、軸66に固定されたプーリ65、軸62に固定されたプーリ61を有する。プーリ65は、リング状に形成されたベルト63を介しプーリ61に接続され駆動される。駆動部5の回転による駆動力は、軸62、プーリ61、ベルト63、プーリ65、軸66の順に伝達され、ボールねじ8を回転させる。
【0017】
異常検知部2は、マイクロコンピュータにより形成された演算部20、荷重センサ等により形成された荷重検出部26、半導体メモリ等により形成された記憶部27、表示装置、プリンタ、通信インタフェース等により構成された出力部28を有する。
【0018】
荷重検出部26は、駆動部5に接続され、ボールねじ8を駆動する駆動力を検出する。ボールねじ8を駆動する駆動力は、ラム9にかかる荷重に換算されて演算部20に送信される。
【0019】
記憶部27には、基準データDRおよび基準波形Rが記憶される。基準データDRは、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報と、第1情報に対応した正常時におけるラム9の荷重を示す第2情報により構成される。基準波形Rは、基準データDRが二次元化された波形である。基準データDRおよび基準波形Rは、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる正常時の荷重との関係を示す。基準データDRおよび基準波形Rは、ラムにかかる荷重の劣化状態を判断する基準となる。
【0020】
また、記憶部27には、実測データDSおよび実測波形Sが記憶される。実測データDSは、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報と、第1情報に対応したラム9の荷重を示す第2情報により構成される。実測波形Sは、実測データDSが二次元化された波形である。
【0021】
演算部20は、後述する演算処理により、荷重検出部26から送信されたラム9にかかる荷重に基づき、駆動部5、ボールねじ8の異常を検知する。演算部20は、画像作成部21、数値化部22、調整部23、判断部24を有する。画像作成部21、数値化部22、調整部23、判断部24は、演算部20を形成するマイクロコンピュータ内のソフトウェアモジュールまたはハードウェアにより形成される。
【0022】
画像作成部21は、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間とラム9にかかる実測された荷重との関係を示す荷重データの実測波形S、およびラム9の位置またはラム9の動作時間とラム9にかかる基準となる荷重との関係を示す基準波形Rを作成する。
【0023】
数値化部22は、実測波形Sの複数の点sと基準点qとの距離を算出し、数値化する。また、数値化部22は、基準波形Rの複数の点rと基準点pとの距離を算出し、数値化する。また数値化部22は、記憶部27に記憶された実測データDSに基づき複数の点sと基準点qとの距離を算出し、数値化するようにしてもよい。数値化部22は、記憶部27に記憶された基準データDRに基づき複数の点rと基準点pとの距離を算出し、数値化するようにしてもよい。
【0024】
調整部23は、実測波形Sと基準波形Rが対応するように、実測波形Sと基準波形Rの少なくとも一方の、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報を伸縮させて調整する。実測波形Sは、記憶部27に記憶された実測データDSのパターンである実測データパターンPSを示す。基準波形Rは、記憶部27に記憶された基準データDRのパターンである基準データパターンPRを示す。
【0025】
調整部23は、実測波形Sを構成する点sを数値化した要素yと、基準波形Rを構成する点rを数値化した要素xとの関係を示す関数Gを作成する。後述する(式1)にかかるg(i,j)、(式2)にかかるld(i,j)、(式3)にかかるe(i,j)、(式4)にかかるG(i,j)が関数Gとして、調整部23により作成される。調整部23は、作成した関数Gに基づき実測波形Sまたは基準波形Rを伸縮させる。
【0026】
調整部23は、記憶部27に記憶された実測データDS、基準データDRにより、実測データパターンPSと基準データパターンPRが対応するように、実測データパターンPS、基準データパターンPRの少なくとも一方の、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報を伸縮させて調整するようにしてもよい。
【0027】
判断部24は、調整部23により関数Gに基づき伸縮された実測波形Sと基準波形Rとの類似性を評価し、プレス動作におけるラム9にかかる荷重の異常を判断する。
【0028】
出力部28は、演算部20の判断部23により判断された異常を、表示、印字、通信電文等により作業者に対し出力する。
【0029】
[1-2.作用]
次に、本実施形態のプレス装置1の作用を、図1~7に基づき説明する。演算部20は、マイクロコンピュータ-により構成され、演算部20に内蔵された図3に示すプログラムに従って動作を行う。
【0030】
駆動部5は、作業者により操作部7が操作され、異なる対象物Oをプレスするごとに動作する。駆動部5の出力トルクは、モータ51が劣化した場合、またはボールねじ8が劣化した場合、正常時に比べ過大となる。
【0031】
異常検知部2の荷重検出部26は、駆動部5によりプレス動作が行われている時間において逐次、ボールねじ8を駆動する駆動力である出力トルクを検出する。荷重検出部26は、例えば100ミリ秒ごとにボールねじ8を駆動する駆動力を検出し、ラム9にかかる荷重に換算し、演算部20に送信する。
【0032】
異常検知部2の記憶部27には、ラム9にかかる荷重の基準となる基準データDRおよび基準波形Rが記憶される。基準波形Rは、基準データDRに基づき作成された、ラム9にかかる荷重の劣化状態を判断する基準となる二次元の波形である。基準データDRおよび基準波形Rは、プレス装置1の設置時等に、作業者により、異常検知部2の記憶部27に設定記憶される。例えば、基準データDR、基準波形Rは、図4(a)に示すような、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる正常時の荷重との関係を示す。
【0033】
演算部20は、駆動部5によりプレス動作が行われている時間において、荷重検出部26からラム9にかかる荷重を逐次受信する。最初に演算部20は、画像作成部21により、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる実測された荷重との関係を示す荷重データの実測波形Sを作成する(ステップS01)。作成された実測波形Sの一例を図4(b)に示す。
【0034】
図4(a)および図4(b)において、グラフの横軸は、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間を示す。グラフの縦軸は、ラム9にかかる荷重を示す。ラム9はプレス動作開始とともに下降し、対象物Oに接触しラム9にかかる荷重が上昇する。少しして、ラム9にかかる荷重は極大値となる。
【0035】
その後、ラム9にかかる荷重は一旦下降する。さらにラム9は、プレス動作を継続して、再びラム9にかかる荷重は上昇し始め、ラム9にかかる荷重は、再び極大値となる。
【0036】
上記のように、実測波形Sは、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる実測された荷重との関係を二次元の波形により示す。
【0037】
次に、ユーザーにより、画像作成部21により作成した実測波形Sのうち、所望の部分Qが選択される(ステップS02)。ユーザーは、マウス等の入力装置により、画像作成部21により作成された実測波形Sの所望の部分Qを選択する。図5に、ユーザーにより選択された実測波形Sの所望の部分Qを示す。
【0038】
次に、演算部20は、数値化部22により、画像作成部21により作成された実測波形Sを構成する点sを数値化し、要素yを作成する。要素yは、実測波形Sにおける点sと、実測波形Sにおける基準点qとの距離に基づき作成される。点sとして、実測波形Sにかかるグラフを構成する連続的な点、または実測波形Sにかかるグラフ構成する特徴的な数点が選択される。
【0039】
具体的には、要素yは、ステップS02でユーザーにより選択された実測波形Sの所望の部分Qにおける点sと、実測波形Sにおける基準点qとの距離に基づき作成される。一例として実測波形Sの始点が、基準点qとして選択される。
【0040】
演算部20は、数値化部22により、図6(a1)に示すようにユーザーにより選択された実測波形Sの所望の部分Qにおける複数の点s1、s2、s3・・・と基準点qとの距離n1、n2、n3・・・を算出する。演算部20は、数値化部22により、図6(a2)に示すように複数の点s1、s2、s3・・・と基準点qとの距離n1、n2、n3・・・に基づき、要素y1、y2、y3・・・を有する対象波形Yを作成する(ステップS03)。図6(a2)において、横軸はプレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間であり、縦軸は基準点qと複数の点s1、s2、s3・・・との距離n1、n2、n3・・・である。
【0041】
対象波形Yが、請求項における複数の実測データDSに基づく実測データパターンPSに相当する。実測データDSは、実測波形Sにおける点sに相当する。実測波形Sにおける基準点qが、請求項における第1の基準点に相当する。
【0042】
一方、記憶部27に、ラム9にかかる荷重の基準となる基準波形Rが記憶されている。演算部20は、数値化部22により、図6(b1)に示す基準波形Rにおける複数の点r1、r2、r3・・・と基準点pとの距離m1、m2、m3・・・を算出する。演算部20は、数値化部22により、図6(b2)に示すように複数の点r1、r2、r3・・・と基準点pとの距離m1、m2、m3・・・に基づき、要素x1、x2、x3・・・を有する基準波形Xを作成する(ステップS04)。図6(b2)において、横軸はプレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間であり、縦軸は基準点pと複数の点r1、r2、r3・・・との距離m1、m2、m3・・・である。
【0043】
基準波形Xが、請求項における複数の基準データDRに基づく基準データパターンPRに相当する。基準データDRは、基準波形Rにおける点rに相当する。基準波形Rにおける基準点pが、請求項における第2の基準点に相当する。
【0044】
次に、演算部20は、調整部23により、画像作成部21により作成された実測波形Sにかかる対象波形Yの要素yと、基準波形Rにかかる基準波形Xの要素xとの距離に基づき関数Gを作成する(ステップS05)。
【0045】
演算部20は、調整部23により(式1)にて、開始点から基準波形Xと対象波形Yの最小累計距離の2次元配列の算出を行う。(式1)において、iは基準波形Xのi番目(i=1、2、・・・i)の要素xであることを示す。基準波形Xは要素x1、x2・・・xiにより構成される。(式1)において、jは対象波形Yのj番目(j=1、2、・・・j)の要素yであることを示す。対象波形Yは要素y1、y2・・・yjにより構成される。最小累積距離gは、下記の(式1)により算出される。(式1)にかかるg(i,j)、(式2)にかかるld(i,j)が、関数Gとして演算部20の数値化部22により作成される。
【数1】
・・・・・(式1)
【0046】
(式1)における ローカル距離ldは、画像作成部21により作成された実測波形Sにかかる対象波形Yの要素yjと、基準波形Rにかかる基準波形Xの要素xiの距離の二乗に基づき、下記の(式2)により算出される。ローカル距離ldは、記憶部27に記憶された実測データ、基準データに基づき算出されてもよい。
【数2】
・・・・・(式2)
【0047】
ローカル距離ldは、要素xiと要素yjの距離の二乗に正比例し、両者の距離を鋭敏に評価することができる。ローカル距離ldにより、実測波形Sにかかる対象波形Yと、基準波形Rにかかる基準波形Xとの類似性を評価する精度が決定される。
【0048】
実測波形Sにかかる対象波形Yの要素yjと、基準波形Rにかかる基準波形Xの要素xiとの離間距離の累積値eは、以下の(式3)により算出される。離間距離の累積値e(i,j)は、基準点pまたはqから点g(i,j)までの累積距離である。
【数3】
・・・・・(式3)
【数4】
・・・・・(式4)
また、局所的最小値Gが、(式4)により算出される。(式3)にかかる要素xiとの離間距離の累積値e(i,j)、および(式3)にかかる局所的最小値G(i)が、関数Gとして演算部20の数値化部22により作成される。
【0049】
調整部23は、(式1)にかかる関数Gに基づき実測波形Sまたは基準波形Rを伸縮させる。調整部23は、記憶部27に記憶された実測データDS、基準データDRにより、実測データパターンPSと基準データパターンPRが対応するように、実測データパターンPS、基準データパターンPRの少なくとも一方の、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報を伸縮させて調整するようにしてもよい。
【0050】
演算部20は、調整部23により動的計画法にて実測波形Sにかかる実測データパターンPSと基準波形Rにかかる基準データパターPRンの少なくとも一方の、ラム9の位置又はラム9の動作時間を示す第1情報を伸縮させて調整する。
【0051】
実測波形Sにかかる対象波形Yの要素yjと、基準波形Rにかかる基準波形Xの要素xiとの離間距離の累積値e(i,j)に基づき、対象波形Yの要素yjと基準波形Xの要素yjとの対応付けがある下記の(式5)にかかる目的関数Fが最小となるJ=uiとなる組合せを見つける(ステップS06)。
【数5】
・・・・・(式5)
【0052】
次に、演算部20は、判断部24により、(式4)における局所的最小値Gが、(式3)におけるa、b、cいずれであるかを横軸、縦軸をi、jとするグラフを用い、実測波形Sと、基準波形Rとの類似性の評価を行う(ステップS07)。
【0053】
演算部20は、判断部24により、画像作成部21により作成された実測波形Sと、ラム9かかる荷重の基準となる基準データに基づく基準波形Rとの類似性を、数値化部22により作成された関数Gに基づき評価し、プレス動作におけるラム9にかかる荷重の異常の有無を判断する。実測波形Sと基準波形Rとの類似性は、実測波形Sにかかる対象波形Yの要素yjと、基準波形Rにかかる基準波形Xの要素xiとの離間距離の累積値e(i,j)に基づき評価される。
【0054】
演算部20は、判断部24により動的計画法にて実測波形Sと基準波形Rとの類似性を評価する。実測波形Sまたは基準波形Rの横軸に相当する、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間を伸縮させて、類似性を有すると判断される対象波形Yと基準波形Rとの位置関係、および伸縮度合いが存在するかの判断を行う。
【0055】
具体的には図7に示す工程マップにおいて、(式4)における局所的最小値Gが最小である点を開始点とし、開始点からj=0まで最短となるルートを算出し、このルート距離の数値により類似性が評価される。あらかじめ設定された閾値に基づき、実測波形Sにかかる対象波形Yと基準波形Rにかかる基準波形Xとの類似性が、判断される。ルート距離が設定された閾値以上である場合、実測波形Sと基準波形Rは、類似すると判断される。
【0056】
実測波形Sにかかる対象波形Y、または基準波形Rにかかる基準波形Xの、横軸に相当するプレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間を伸縮させて、対象波形Yと基準波形Rが類似性を有すると判断される対象波形Yと基準波形Rとの位置関係および伸縮度合いがある場合、実測波形Sと基準波形Rは、類似性を有すると判断される。
【0057】
実測波形Sと基準波形Rが類似性を有すると判断された場合、演算部20は、ラム9にかかる荷重に異常がないものと判断する。実測波形Sと基準波形Rが類似性を有すると判断されない場合、演算部20は、ラムにかかる荷重に異常があるものと判断する。
【0058】
演算部20は、ラム9にかかる荷重の異常の有無を、表示、印字、通信電文等により出力部28から出力させる(ステップS08)。
【0059】
以上が、プレス装置1の作用である。
【0060】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、プレス装置1は、調整部23により第1情報を伸縮させて複数の実測データに基づく実測データパターンと、複数の基準データに基づく基準データパターンが対応するように調整し、判断部24により調整された実測データパターンと基準データパターンの類似性に基づき、プレス動作におけるラム9にかかる荷重の適否を判断するので、より精度よくラム9にかかる荷重の異常を判断することができる。本実施形態によれば、ラム9の加圧位置、ラム9の加圧動作開始時刻、ラム9の動作速度によらず、精度よくラム9にかかる荷重の異常を判断することができる。
【0061】
本実施形態によれば、数値化部22は、実測波形Sを構成する点sを数値化した要素yと、基準波形Rを構成する点rを数値化したの要素xとの関係を示す関数Gを作成し、調整部23は、数値化部22により作成された関数Gに基づき実測波形S、基準波形Rの少なくとも一方、または実測データパターンPS、基準データパターンPRの少なくとも一方を伸縮させ調整し、判断部24は調整された実測波形Sと基準波形R、または実測データパターンPSと基準データパターンPRとの類似性を評価し、プレス動作におけるラム9にかかる荷重の異常を判断するので、プレス装置1に対し異なる位置にプレスの対象となる対象物Oが配置された場合であっても、荷重の基準となる基準データまたは基準波形Rに関するデータを再設定することが不要となる。
【0062】
(2)本実施形態によれば、調整部23は、実測データパターンPSにおける実測データDSと、基準データパターンPRにおける実測データDSに対応した基準データDRとの距離の二乗に基づき、実測データパターンPS、基準データパターンPRの少なくとも一方の第1情報を伸縮させて調整するので、実測データパターンPS、基準データパターンPRとの誤差を鋭敏に評価することができる。
【0063】
数値化部22は、実測波形Sに基づく要素yと、要素yに対応する基準波形Rに基づく要素xとの距離の二乗に基づき関数Gを作成し、判断部23は、実測波形Sと基準波形Rの類似性を、数値化部22により作成された関数Gに基づき評価するので、より精度よくラム9にかかる荷重の異常を判断することができる。要素yと要素xとの距離の二乗により関数Gが作成されるので、実測波形Sと基準波形Rとの誤差を鋭敏に評価することができる。
【0064】
(3)本実施形態によれば、実測データパターンPSは、実測データDSにおける第1の基準点と複数の実測データDSとの距離を示す、数値化部22により算出された数値により構成され、基準データパターンPRは、基準データPRにおける第2の基準点と複数の基準データDRとの距離を示す、数値化部22により算出された数値により構成されるので、実測データパターンPSと基準データパターンPRとの類似性を、精度よく評価することができる。
【0065】
本実施形態によれば、要素yは、実測波形Sにおける点sと、実測波形Sにおける基準点qとの距離を示す数値により構成され、要素xは、基準波形Rにおける点rと、基準波形Rにおける基準点pとの距離を示す数値により構成されるので、実測波形Sと基準波形Rとの類似性を、数値を用いた関数Gにより、精度よく評価することができる。また、実測波形Sまたは基準波形Rに、ラム9の位置またはラム9の動作時間に対し、ラム9にかかる荷重として複数の数値が存在する場合であっても、精度よく実測波形Sと基準波形Rとの類似性を評価することができる。
【0066】
(4)本実施形態によれば、画像作成部21により作成された実測波形Sのうち、ユーザーにより所望の部分Qが選択され、数値化部22は、実測波形Sのうち、ユーザーにより選択された所望の部分Qにおける関数Gを作成するので、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる実測された荷重との関係を示す実測波形Sにおいてユーザーが所望する特徴的な部分Qが抽出され、より精度よくラム9にかかる荷重の異常を判断することができる。
【0067】
(5)本実施形態によれば、判断部23は、動的計画法により実測波形Sと基準波形Rとの類似性、または、実測データパターンPSと基準データパターンPRとの類似性を評価するので、実測された数値によりラム9にかかる荷重の異常を判断する場合に比べ、より精度よくラム9にかかる荷重の異常を判断することができる。
【0068】
[2.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0069】
(1)上記実施形態では、プレス動作におけるラム9の位置またはラム9の動作時間と、ラム9にかかる実測された荷重との関係を示す荷重データの実測波形Sは、画像作成部21により作成されるものとしたが、実測波形Sは、外部から演算部20に入力されるものであってもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、ラム9にかかる荷重の基準となる基準データに基づく基準波形Rは、あらかじめ記憶部27に設定されるものとしたが、基準波形Rは、外部の記憶装置に記憶され、通信等により演算部20に入力されるようにしてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、基準波形Rが記憶部27にあらかじめ記憶され、基準波形Xは基準波形Rに基づき作成されるものとしたが、基準波形Xが記憶部27にあらかじめ記憶されるようにしてもよい。
【0072】
(4)上記実施形態では、数値化部22により作成される関数Gは、実測波形Sにおける点sと実測波形Sにおける基準点qとの距離を示す対象波形Y、および基準波形Rにおける点rと基準波形Rにおける基準点qとの距離を示す基準波形Xに基づき作成されるものとしたが、数値化部22により作成される関数Gは、実測波形Sおよび基準波形Xに基づき作成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1・・・プレス装置
2・・・異常検知部
20・・・演算部
21・・・画像作成部
22・・・数値化部
23・・・調整部
24・・・判断部
26・・・荷重検出部
27・・・記憶部
28・・・出力部
5・・・駆動部
51・・・モータ
52・・・駆動アンプ
6・・・伝達部
61・・・プーリ
62・・・軸
63・・・ベルト
65・・・プーリ
66・・・軸
7・・・操作部
8・・・ボールねじ
9・・・ラム
91・・・雌ねじ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7