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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シート計測装置及びロボット補正方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/04 20060101AFI20240423BHJP
   B62D 65/14 20060101ALI20240423BHJP
   B66F 9/18 20060101ALN20240423BHJP
   B25J 13/08 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B25J19/04
B62D65/14 A
B66F9/18 D
B25J13/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020037536
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021137913
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽大
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-032829(JP,U)
【文献】特開平04-250190(JP,A)
【文献】実開昭64-011888(JP,U)
【文献】特開2005-082312(JP,A)
【文献】特開2002-243430(JP,A)
【文献】特開平06-263069(JP,A)
【文献】特開平05-254466(JP,A)
【文献】特開平11-115839(JP,A)
【文献】特開平02-258486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00 - 65/18
B25J 1/00 - 21/02
B23P 19/00 - 21/00
B66F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を計測するための少なくとも1以上のレーザセンサと、
背もたれ部と座面部との合わせ部を有し、前記合わせ部にフォークロボットのフォークが挿入可能な側面視略L字状のシートに対向して配置され、前記レーザセンサを先端に所定の設置角で配設して前記レーザセンサを計測位置へ水平移動可能なスライド機構と、
演算及び制御を行う演算制御装置と、を備え、
前記スライド機構は、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測するための各計測位置へ、前記設置角を維持した状態で、前記レーザセンサを水平移動させるように制御され、
前記レーザセンサは、各計測位置で、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測し、これらの計測値から前記前端部及び前記合わせ部のプロファイルデータを得るように制御され、
前記演算制御装置は、前記プロファイルデータに基づき前記レーザセンサから前記前端部までの第1の最遠距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの第2の最遠距離を算出するとともに
前記算出された前記第1の最遠距離、前記第2の最遠距離及び前記設置角の値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入するための把持部高さを算出するシート計測装置。
【請求項2】
前記把持部高さをHとし、前記所定の設置角をθ、前記設置角θにおける前記レーザセンサから前記前端部までの前記第1の最遠距離をa、前記レーザセンサから前記合わせ部までの前記第2の最遠距離をc、前記第2の最遠距離cをなす位置に直交する直線であって、前記第2の最遠距離cをなす位置から前記レーザセンサの水平移動する直線の延長線との交点までの距離をbとすると、
H=a×sinθ-b×cosθの演算式によって前記演算制御装置が算出するよう構成した請求項1に記載のシート計測装置。
【請求項3】
距離を計測するための少なくとも1以上のレーザセンサと、
背もたれ部と座面部との合わせ部を有し、前記合わせ部にフォークロボットのフォークが挿入可能な側面視略L字状のシートに対向して配置され、前記レーザセンサを先端に所定の設置角で配設して前記レーザセンサを計測位置へ水平移動可能なスライド機構と、
演算及び制御を行う演算制御装置と、
前記演算制御装置の演算結果に基づき前記フォークロボットを制御するロボットコントローラと、により実行されるロボット補正方法であって
前記スライド機構は、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測するための各計測位置へ、前記設置角を維持した状態で、前記レーザセンサを水平移動させるように制御され、
前記レーザセンサは、各計測位置で、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測し、これらの計測値から前記前端部及び前記合わせ部のプロファイルデータを得るように制御され、
前記演算制御装置は、前記プロファイルデータに基づき前記レーザセンサから前記前端部までの第1の最遠距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの第2の最遠距離を算出するとともに
前記算出された前記第1の最遠距離、前記第2の最遠距離及び前記設置角の値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入するための把持部高さを算出し、
前記演算制御装置は、前記把持部高さの算出値をロボットコントローラに出力し、
前記把持部高さの算出値を受け取った前記ロボットコントローラは、前記把持部高さの算出値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入する高さの初期データを補正するロボット補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用シートをロボットが把持するためにシートの把持部高さを計測し、計測値に対応したシートの把持位置を補正するシート計測装置及びロボット補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などのシートあるいはパワーシート(電動により前後方向のスライドや背もたれ部の傾斜角度の調整等が可能となされたシート)は、表面が布地や皮革で形成されているために柔軟性を有し、その形状を特定しがたく、外形寸法にばらつきを有している。さらに、ロボットハンドなどで把持する場合に、シートの把持部高さ(把持位置)を計測する技術が確立されておらず、しかも、シートの把持部高さを誤ったがためにロボット等による把持に失敗するとシートに傷をつけて商品価値が失われてしまうという問題がある。このようなことから、自動車の製造工場における前記フロントシートあるいはパワーシート(以下「シート」という。)の車体への組み付け作業は、主として作業者の手作業により行っていた。
【0003】
しかし、シートはかなり重く(パワーシートは特に重い)、さらに近年各種装備が充実してきたためにその重量も増加している。また、シートの大きさに対して、組み付けられる自動車のドアの開口部が狭く、しかも作業者はかがんだ状態での作業を強いられるため、手作業によるシートの組み付けは、作業者に大きな負担を与えるとともに、作業効率も悪いものとなっていた。そこで、自動車の製造工場においては、車体にシートを自動的に組み付けるための技術開発が進められている。
【0004】
特許文献1には、車体の搬送ラインに沿って配置、固定された架台と、この架台上に配設されたシート搭載用等の種々のロボットとを備える車両用シート及びその自動組付装置が開示されている。
【0005】
具体的には、シートバックを支持するシートクッションの下部に一対のシートトラックを一体的に備え、前記各シートトラックの前・後端部に車両ボデーの取付座に着座してボルト止めされるブラケットを設けると共に、各シートトラックの前側のブラケットに前記取付座の位置決め用穴に係合可能な位置決めピンを設けて成るもので、これにさらに、前記各シートトラックの前端部側の各ブラケットの相互に対向する側面に把持穴を設けている。また本発明に係る車両用シートの自動組付装置は、上記シートを把持する把持具をアーム先端に持つ搭載用ロボットと、当該ロボットに受け渡すシートの位置決めを行い載置するシート位置決め装置とを備え、前記把持具は、ロボットのアーム先端に取付けられる把持本体と、当該把持本体に固定された固定アームと当該把持本体に少なくとも2軸を介して回動可能に支持された可動アームとから成り、前記固定アームには、当該シートを構成するシートトラックのブラケットの把持穴に係合可能な把持ピンを有する一対の把持部材が、当該把持ピンの突出方向に相互に接近・離間可能に設けられている。
【0006】
特許文献2には、基台、当該基台を移動自在とするキャスタ及び当該基台に立設された支柱を有する台車と、略水平に延在した状態を維持しつつ昇降自在となるように前記支柱に取り付けられたアームと、前記支柱に対して前記アームを昇降させる昇降手段と、前記アームの自由端側に装着され、シートを保持可能な保持手段と、を備えた車両用シートの脱着補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-310157号公報
【文献】特開2005-82312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された自動装着装置は、多数のロボットや各種装置を必要とするため構造が複雑で、また、高度なロボット制御を必要とすることから、高価になるという問題がある。
【0009】
具体的には、搬送ライン上の所定位置に位置決めされた車両ボデーに対してシートを搭載する搭載用ロボットと、車両ボデーに搭載したシートを、前記ボルトを用いて車両用ボデーの取付座に締付け固定する締付用ロボットと、この締付用ロボットに供給するボルトを貯留するボルト供給台と、ボルト供給台からボルトを受け取り、これを前記締付用ロボットへ受け渡すボルト供給用ロボットと、搬送ライン上に位置決めされた車両ボデーの位置を検出する搬送ラインの両側に設置された2台の位置検出用ロボットと、この位置検出用ロボットの検出結果にもとづいて前記搭載用ロボット及び締付用ロボットに補正をかける位置補正装置とが配設されている。また、この架台の側方には搭載用ロボットに受け渡すシートを位置決め載置するシート位置決め装置が配置されている。
このように、当該自動装着装置は、構造が複雑で、多数のロボットや各種装置を必要とし、また、高度なロボット制御も必要とすることから、高価なものとなっている。
【0010】
特許文献2に開示された着脱補助装置は、作業者が当該装置を使用することによってシートの持ち上げ作業の負担を軽減するものであり、作業負担の軽減、作業効率の向上及びシートをより確実に保持することができるという効果を奏する。すなわち、作業者は吊り下げ治具を手で持って吊り下げ治具の先端支持部をシートの座面部と背もたれ部との間の隙間に差し込む。そして、この吊り下げ治具がアームの被吊り下げ部に装着可能となる位置まで台車を移動させる。そして、アームの被吊り下げ部に吊り下げ治具を装着した後、昇降手段によりアームを上昇させるものである。しかし、特許文献2に開示された技術は、あくまでも作業者の作業を補助するものであり、シートの装着の主体は依然として作業者の人手によるものであるという問題点がある。
【0011】
本発明は、シートをロボットで把持するためのシートの把持部高さを非接触により計測する技術を実現することにより、自動車の製造工場において、シートの車体への組み付け作業の主体を人手による作業からロボットによる作業に置き換え可能とし、これにより作業者の負担を軽減するとともに、作業効率を向上することができるシート計測装置及びロボット補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシート計測装置は、
距離を計測するための少なくとも1以上のレーザセンサと、
背もたれ部と座面部との合わせ部を有し、前記合わせ部にフォークロボットのフォークが挿入可能な側面視略L字状のシートに対向して配置され、前記レーザセンサを先端に所定の設置角で配設して前記レーザセンサを計測位置へ水平移動可能なスライド機構と、
演算及び制御を行う演算制御装置と、を備え、
前記スライド機構は、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測するための各計測位置へ、前記設置角を維持した状態で、前記レーザセンサを水平移動させるように制御され、
前記レーザセンサは、各計測位置で、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測し、これらの計測値から前記前端部及び前記合わせ部のプロファイルデータを得るように制御され、
前記演算制御装置は、前記プロファイルデータに基づき前記レーザセンサから前記前端部までの第1の最遠距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの第2の最遠距離を算出するとともに
前記算出された前記第1の最遠距離、前記第2の最遠距離及び前記設置角の値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入するための把持部高さを算出するよう構成した。
【0013】
また、前記把持部高さは、前記把持部高さをHとし、前記所定の設置角をθ、前記設置角θにおける前記レーザセンサから前記前端部までの前記第1の最遠距離をa前記レーザセンサから前記合わせ部までの前記第2の最遠距離をc前記第2の最遠距離cをなす位置に直交する直線であって、前記第2の最遠距離cをなす位置から前記レーザセンサの水平移動する直線の延長線との交点までの距離をbとすると、
H=a×sinθ-b×cosθの演算式によって前記演算制御装置が算出するよう構成した。
【0014】
本発明に係るロボット補正方法は、距離を計測するための少なくとも1以上のレーザセンサと、
背もたれ部と座面部との合わせ部を有し、前記合わせ部にフォークロボットのフォークが挿入可能な側面視略L字状のシートに対向して配置され、前記レーザセンサを先端に所定の設置角で配設して前記レーザセンサを計測位置へ水平移動可能なスライド機構と、
演算及び制御を行う演算制御装置と、
前記演算制御装置の演算結果に基づき前記フォークロボットを制御するロボットコントローラと、により実行されるロボット補正方法であって
前記スライド機構は、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測するための各計測位置へ、前記設置角を維持した状態で、前記レーザセンサを水平移動させるように制御され、
前記レーザセンサは、各計測位置で、前記レーザセンサから前記シートの前記座面部の前端部までの距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの距離を計測し、これらの計測値から前記前端部及び前記合わせ部のプロファイルデータを得るように制御され、
前記演算制御装置は、前記プロファイルデータに基づき前記レーザセンサから前記前端部までの第1の最遠距離及び前記レーザセンサから前記合わせ部までの第2の最遠距離を算出するとともに
前記算出された前記第1の最遠距離、前記第2の最遠距離及び前記設置角の値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入するための把持部高さを算出し、
前記演算制御装置は、前記把持部高さの算出値をロボットコントローラに出力し、
前記把持部高さの算出値を受け取った前記ロボットコントローラは、前記把持部高さの算出値に基づき前記合わせ部に前記フォークロボットのフォークを挿入する高さの初期データを補正するものである。
以上
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、シートの把持部高さ、すなわちフォークロボットによる把持位置を簡単な構成で非接触により計測することができるため、自動車のシートのように表皮材の柔軟性等によりその形状を特定しがたく、外形寸法にばらつきを有している把持対象物についても、当該計測データに基づき算出された把持部高さの値に基づき、フォークロボットがシートの合わせ部にフォークを挿入する高さ位置を補正することができる。
【0016】
これにより、シートの組み付け作業において、シートの表皮材の柔軟性等による外形寸法のばらつきがあっても、シートごとにそのばらつきを補正することができるため、それぞれのシートの把持部高さに合わせて、シートの合わせ部にフォークロボットのフォークを確実に挿入することができる。さらに、フォークの挿入に失敗してシートに傷をつけて商品価値を失ってしまうという問題を解消することができる。
【0017】
また、前記把持部高さの計測データをデータベース化し、最大値、最小値、平均値、標準偏差などの統計データを取り、これらのデータの推移を見ながら作業改善や品質改善の推進に役立てることができる。
【0018】
この結果、自動車の製造工場におけるシートの組み付け作業の自動化を拡大することができ、作業者の負担を大幅に軽減するとともに、作業効率の改善を実現することができるという効果を奏する。
【0019】
また、前記把持部高さは、前記レーザセンサにより前記シートの座面部の前端部及び前記合わせ部を計測個所とし、又は前記計測個所における幅員方向の複数個所をさらに計測個所とし、前記計測個所を縦方向に一定の区間における距離の計測をして、当該計測データのプロファイルに基づき算出されるよう構成しているため、シートを傷つけることなく非接触で計測し、算出することができる。また、幅員方向の複数個所の距離の計測をするため、ばらつきの影響を軽減することができ、より正確なシートの把持部高さの値を得ることができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記把持部高さHの算出は、H=a×sinθ-b×cosθの演算式によって行うよう構成しているため、演算制御装置による演算処理プログラムが複雑とならず、しかも簡単な演算式であり、扱うデータ量も少ないために高速に演算処理をすることが可能となり、当該演算制御装置は小規模なもので済み、本発明に係るシート計測装置を安価にできる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るシート計測装置を使用するシート組み付けラインを示す平面図である。
図2】本発明に係るシート計測装置の平面図である。
図3】本発明に係るシート計測装置の側面図である。
図4】本発明に係るシート計測装置に使用するレーザセンサの一例を示す説明図である。
図5】本発明に係るシート計測装置の制御系統の構成図である。
図6】本発明に係るシート計測装置によるシートの把持部高さの計測原理の説明用側面図である。
図7】前記フォークロボットに使用するシートを把持するためのフォークの斜視図である。
図8】本発明に係るシート計測装置の第二の実施例の平面図である。
図9】本発明に係るシート計測装置の第二の実施例の制御系統の構成図である。
図10】本発明に係るシート計測装置の第三の実施例のレーザセンサの配置を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、自動車用のシートの座面部と背もたれ部との合わせ部にフォークロボットのフォークを挿入してシートを把持するために、当該合わせ部の把持部高さを非接触により計測する技術を実現することにより、自動車の製造工場において、車体へのシートの組み付け作業の主体を人手による作業からロボットによる作業に置き換え可能とし、これにより作業者の負担を軽減するとともに、作業効率を向上することができるシート計測装置及びロボット補正方法を提供するものである。
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。ただし、図面は模式的なものであり、細部の記載については省略している。また、各部の配置や寸法の比率等は必ずしも現実のものと一致するものではない。
【0024】
まず、自動車の製造工場におけるシート組み付けラインの概要について説明する。
図1は、本発明に係るシート計測装置10を使用するシート組み付けライン300を示す平面図である。前記シート組み付けライン300においては、シート1が組み付けられる自動車30は、1階に配設されている搬送ライン31上を図1の右手から左手方向に搬送されてくる。
また、シート組み付けライン300の2階には、本発明に係る2台のシート計測装置10、10が、搬送方向から見て左右に並設されている。2個のシート1、1は、2階に配設されているシート1、1の図示しない搬送ライン上をパレット33に載置されて、シート搬送架台32により搬送されてくる。
【0025】
搬送されてきたシート1、1は、図1に示すように、本発明に係るシート計測装置10、10の前にそれぞれ配置される。図1において、向かって上側のシート1は、自動車30の右側のドアの開口部側から組み付けられるシート1である。また、向かって下側のシート1は、自動車30の左側のドアの開口部側から組み付けられるシート1である。そして、それぞれのシート1、1の把持部高さの計測は、それぞれのシート1、1に対面するシート計測装置10、10が行うように構成されている。
【0026】
シート計測装置10、10は、図1の平面図に示すように、自動車30の右側の座席用と左側の座席用の2台が、それぞれ2個のシート1、1と対向する位置に配置されている。
また、シート計測装置10は、図2及び図3に示すように、後述する計測器スライド機構12を搭載している。
【0027】
シート計測装置10、10は、後述するレーザセンサ20により、前記シート1、1の座面部2の前端部5及び前記合わせ部4の縦方向の一定の区間を幅員方向に複数個所について距離の計測を行い、当該計測データに基づいて、それぞれに対面するシート1、1の前記把持部高さHを算出する。
【0028】
また、前記把持部高さHの算出は、図6に示すように、前記レーザセンサ20の設置角をθとすると、設置角θにおける前記座面部2の前端部5までの計測による距離をa、前記シート1の座面部2の合わせ部4の方向を計測するレーザセンサ20の位置から計測した最遠距離を結ぶ直線に当該最遠距離で直交する直線であって、前記最遠距離から前記直線が前記レーザセンサの位置を通る水平線と交差する位置までの距離をbとすると、把持部高さHはH=a×sinθ-b×cosθの演算式で算出されるよう構成されている。なお、詳細は後述する。
【0029】
以上のようにして、それぞれのシート1、1の把持部高さHを算出し、当該算出した把持部高さHのデータを、フォークロボット34、34のそれぞれに対応するロボットコントローラ39、39(図5参照)へ出力する。ロボットコントローラ39、39は、当該出力されてきた把持部高さHのデータを受け取ると、当該データに基づきそれぞれのシート1、1を把持するための初期値データを補正する。シート搬送架台32で搬送されてきたシート1及びシート1が載置されるパレット33にはばらつきがあるため、シート1を把持するための把持部高さHは搬送されてきたシート1ごとに異なり、この把持部高さHに合わせるために初期値データを補正してフォーク41(図7参照)の挿入高さを調整する必要がある。そして、ロボットコントローラ39、39は、補正後のデータに基づいて、フォークロボット34、34を駆動する。
【0030】
前記搬送ライン31の左右に配設されているフォークロボット34、34は、ロボットコントローラ39、39からの駆動信号に基づき、2階のパレット33に載置された計測が終了したシート1、1を把持して1階の搬送ライン31上を移送される自動車30の左右開口部から所定の座席位置に挿入する。
【0031】
このようにして、本発明に係るシート計測装置10、10は、計測対象物であるシート1、1の所定の個所の距離を計測し、当該計測データに基づきそれぞれのシート1、1の把持部高さHを前記演算式により算出し、当該算出したデータに基づきシート1、1の把持部高さHの値を補正する。そして、当該補正後の把持部高さHのデータに基づきフォークロボット34、34を制御する。このように、当該補正を行うことによりフォークロボット34、34は、シート1、1を傷つけることなく確実に保持して自動車30の所定の取付け位置に載置し組み付けることができる。
【0032】
具体的には、右側の座席用のフォークロボット34は、補正後の把持部高さHに基づき右側のシート1の合わせ部4にフォークを挿入してシート1を把持し、自動車30の右側の開口部から車内の所定の取付け位置に載置する。また、左側の座席用のフォークロボット34は、補正後の把持部高さHに基づき左側のシート1の合わせ部4にフォークを挿入してシート1を把持し、自動車30の左側の開口部から車内の所定の取付け位置に載置する。自動車30の製造工場におけるシート組み付けライン300の概要は以上のとおりである。
【0033】
次に、本発明に係るシート計測装置10について詳細に説明する。シート計測装置10の計測対象物であるシート1は、図3に示すように、乗員が着座する座面部2と乗員の背面を支持する背もたれ部3とから構成されている。そして、前記座面部2と背もたれ部3は、合わせ部4において接合されている。また、背もたれ部3は、当該合わせ部4を支点にして前後に傾けることができる。また、座面部2も当該合わせ部4を支点にして、座面部2の先端部を若干上下させることができる。また、背もたれ部3において乗員の背面が当接する部分が所定の操作により所定の高さだけ隆起するものもある。
【0034】
本発明に係るシート計測装置10の躯体部は、図3の側面図に示すように、略方形状の計測フレーム11により構成されている。すなわち、四隅に立設する垂直フレーム11aの下端を水平方向に配設されたベースフレーム11bで連結固定し、中間を中間フレーム11cで連結固定し、上端は略平板状で、当該略方形状よりも右方向に延設された略長方形状をなすテーブルフレーム11dで連結固定している。計測フレーム11は、アルミフレームやL型チャンネル材などを用いて構成することができる。そして、垂直フレーム11aの下端には、固定脚11eを備えることにより所定の場所に設置可能としている。
【0035】
テーブルフレーム11dは、その略平板状の上端面に、計測器スライド機構12を搭載する基台である。計測器スライド機構12は、シート1の所定の個所の距離を計測するためのレーザセンサ20を、その設置角θを維持したまま前後に水平移動させるための機構である。なお、設置角θとは、水平面に対するレーザセンサ20のレーザ光を照射する角度のことである。本実施例では水平面に対して下向きにとる。
【0036】
計測器スライド機構12は、図3の側面図に示すような構成となっている。すなわち、第1のスライドシリンダ13は、当該第1のスライドシリンダ13のスライダ13aが上向きになるようにテーブルフレーム11dの上面に配設されている。また、第2のスライドシリンダ14は、第1のスライドシリンダ13のスライダ13a上に重畳的に搭載されている。
【0037】
ここで、第1のスライドシリンダ13及び第2のスライドシリンダ14を構成するスライドシリンダとは、シリンダと、これに摺動可能なスライダとをコンパクトに一体化したシリンダのことである。スライダのシリンダに対向しない面はワークテーブルとして使用することができる。また、シリンダとスライダとの摺動機構には、リニアボールベアリングが採用されているため滑らかに、かつ直線性の良い摺動をすることができる。
【0038】
したがって、前記第1のスライドシリンダ13のピストンロッド13bが伸縮することにより前記スライダ13aが前進後退する。これによって前記第2のスライドシリンダ14は前記スライダ13aの進退作動に追従して前進後退する。また、第2のスライドシリンダ14のピストンロッド14bが伸縮することにより前記スライダ14aが前進後退し、これによって前記スライダ14aの先端に配設され下方に延設された先端プレート15が前進後退する。先端プレート15の下端には、逆L字状に延設された支持プレート16が配設され、支持プレート16の終端下面に連結されたセンサ支持プレート17には、距離を計測するためのレーザセンサ20が配設されている。
【0039】
レーザセンサ20は、シート1の所定の個所の距離を計測するものである。レーザセンサ20が距離を計測する方式には、大別して(1)位相差検出方式、(2)TOF方式(Time of Flight方式)及び(3)三角測距方式がある。
(1)位相差検出方式とは、基本周波数で振幅変調したレーザ光を物体に照射し、その物体から戻ってきた反射光との位相差を計測することにより照射から戻ってくるまでの時間tを求め、その時間tに光速をかける等により、物体までの距離を求める方式である。
(2)TOF方式とは、立ち上がり時間が数nsで、光ピークパワーが数10Wの超短パルスを物体に向けて照射し、その超短パルスが物体で反射して受光素子に戻ってくるまでの時間tを計測し、その時間tに光速をかける等により、物体までの距離を求める方式である。
(3)三角測距方式とは、三角測量法を使って距離や変位を計測することで高精度に計測できる方式である。
なお、本発明に係るシート計測装置10に用いるレーザセンサ20は、上記レーザセンサ計測方式のうちのいずれかに限定されるものではない。
【0040】
ここで、本発明の実施例に使用するレーザセンサ20の一例について、図4を参照して説明する。図4において、レーザセンサ20のケース20aの内部には、制御回路201及び半導体レーザ203等の電子部品がプリント基板202上に搭載されている。そして、制御回路201の信号により半導体レーザ203がレーザ光210を照射する。当該レーザ光210は発光レンズ204を通過し、2次元の平面をなす光束を形成してワーク205に照射される。ワーク205に照射されたレーザ光210の光束は、ワーク205で反射され、レーザ光211としてレーザセンサ20に戻ってくる。戻ってきたレーザ光211は、受光レンズ206を介してCMOSセンサ207で受光される。CMOSセンサ207は、レーザ光211を受光することによりワーク205のプロファイル208を得ることができる。レーザセンサ20は、ケーブル209により後述するセンサコントローラ36(図5参照)と接続され、制御信号を受けると共に、計測データを出力する。
【0041】
したがって、このような特性を有するレーザセンサ20を用いれば、所定の個所について縦方向又は横方向の一定の区間の距離を計測することができる。また、レーザセンサ20を用いることで当該所定の区間についてのワーク205のプロファイルを得ることもできる。よって、このようにして得られた当該所定の個所についての計測データを用いて形状が定まらない物体の所定の個所の非接触による距離の計測を行い、それに基づく計測対象の長さデータなどを得ることができる。
【0042】
<第一の実施例>
以下、本発明の第一の実施例について説明する。なお、先述のとおりシート組み付けライン300には2台のシート計測装置10が用いられるが、2台とも同様の作動をするものであるため、以下、シート計測装置10は1台について説明する。
【0043】
まず、計測器スライド機構12の作動について図3及び図6に基づいて説明する。計測器スライド機構12の初期状態は、図3の側面図の2点鎖線に示すように、前記第1のスライドシリンダ13のピストンロッド13b及び第2のスライドシリンダ14のピストンロッド14bは共に収縮状態にある。したがって、レーザセンサ20は、図3に示すように、テーブルフレーム11dの下部にシート1に対向した状態で待機しており、この位置100が機械的原点になる。
【0044】
計測器スライド機構12が、前記シート1の座面部2の前端部5及び前記合わせ部4の縦方向の一定区間における距離の計測をするには、まず最初に、図示しない設定装置により設置角θを設定する。すなわち、設置角θは、シート1が所定の位置に配置されたときに、レーザセンサ20が照射するレーザ光210が、前記座面部2の前端部5及びシート1の前記合わせ部4の双方に照射できるような位置に設定する必要がある。この設置角θは機械的な配置であるので、計測器スライド機構12の支持プレート16に取り付けられたレーザセンサ20の向きを機械的に設定すればよい。
【0045】
設置角θの設定が終わると、計測可能な状態となる。そして、計測器スライド機構12の第1のスライドシリンダ13を駆動してピストンロッド13bを徐々に伸張する。支持プレート16に取り付けられたレーザセンサ20が、機械的原点100から出発して、前記座面部2の前端部5に照射を行う所定の位置101に来ると、ピストンロッド13bの伸張を停止する。そして、前記座面部2の前端部5にレーザ光210を照射して、その距離を計測する。レーザセンサ20は前記のとおり、2次元の平面をなす光束のレーザ光210を照射する。レーザ光210が照射された個所5aを、図6の太線で示す。
【0046】
座面部2の前端部5の距離の計測が終わると、計測器スライド機構12の第1のスライドシリンダ13を駆動してピストンロッド13bを徐々に伸張する。途中で第1のスライドシリンダ13のピストンロッド13bが伸張しきってしまうと、引き続いて第2のスライドシリンダ14のピストンロッド14bを徐々に伸張させる。そして、合わせ部4の手前の照射を行う所定の位置102に来ると、第2のスライドシリンダ14のピストンロッド14bの伸張を停止する。そして、前記と同様に合わせ部4にレーザ光210を照射して、その距離を計測する。レーザ光210が照射された個所4aを、図6の太線で示す。
合わせ部4の距離の計測が終わると、そこで、計測は終了する。計測が終了した時点におけるシート計測装置10のピストンロッド13b、14b及びレーザセンサ20の位置関係は、図3の実線のようになる。
【0047】
シート計測装置10は、距離の計測が終了すると、図3に示すように、前記第1のスライドシリンダ13のピストンロッド13b及び第2のスライドシリンダ14のピストンロッド14bを収縮させ、レーザセンサ20を機械的原点の位置100に復帰させる。
【0048】
以上のようにして、シート計測装置10の計測器スライド機構12は、レーザセンサ20の設置角θを維持したまま第1のスライドシリンダ13及び第2のスライドシリンダ14を駆動して所定の計測の位置101及び102にレーザセンサ20を移動させ、座面部2の前端部5及び合わせ部4の距離を計測することによって、シート1の距離データ及び当該個所のプロファイルデータを取得することができる。
【0049】
次に、レーザセンサ20で計測した座面部2の前端部5及び合わせ部4の計測データの演算処理並びにフォークロボット34への補正データの受け渡しについて説明する。図5に示すように、シート1用のレーザセンサ20は、センサコントローラ36に接続されている。センサコントローラ36は、プログラマブルコントローラ(Programmable Logic Controller、)37(以下「PLC」という。)のPLCネットワーク38に接続されている。PLCネットワーク38は、PLC37の専用のネットワークであり、各種機器や各種入出力信号、センサ信号などの入力及び出力をするために使用される。このために、PLC37側には、PLCネットワーク38に接続するためのPLCネットワークインタフェースユニット37dが、PLC37のベースユニット37bのスロットに装着されている。
【0050】
PLC37は、各種の機械や装置などの制御を行う汎用的な制御装置であり、その作動制御を実現するための制御プログラムをユーザが作り込むことが可能に構成されていることから「プログラマブルコントローラ」と呼ばれている。PLC37の構成は、各メーカによって或いは機種によって異なる。本実施例では、図5に示すように、略横長平板状に形成された基台となるベースユニット37bに、電源ユニット37a、CPUユニット37cを装着したものを基本構成とし、その他用途に応じてデジタル信号や接点信号又はアナログ信号などの外部信号の入出力を行う入出力ユニット37eなどを装着可能に構成されたPLC37を例に説明する。なお、PLC37は、図示しない制御盤に収納され所定の位置に取り付けられる。
【0051】
PLC37は、本発明に係るシート計測装置10の全体を制御する演算制御装置であり、例えば、レーザセンサ20による計測、計測データに基づく演算処理、フォークロボット34の制御の他、計測器スライド機構12の第1、第2のスライドシリンダ13、14等の制御を行う。また、PLC37は、Ethernet21に接続されており、これに接続されているパーソナルコンピュータ22とのデータの受け渡しによる演算処理やデータ記憶、パーソナルコンピュータ22を利用しての設定・監視などを行うことができる。
【0052】
ベースユニット37bは、略横長平板状に形成された基台となるユニットであり、例えば外周は鉄板を加工して形成され、その内面に前記CPUユニット37c等のユニットを装着可能にすると共に、前記CPUユニット37cと電気的に接続して回路を構成するための各種信号線(「バス」と呼ばれる)及び当該各種信号線に接続可能とする接続用コネクタが所定の間隔で搭載されたプリント基板(図示しない)を収納している。したがって、前記接続用コネクタに、各種入出力ユニット、通信ユニット、デバイス対応のコントロールユニットなどをユニット単位で装着することによって用途に応じた制御装置を構成することができる。
【0053】
CPUユニット37cは、PLC37の頭脳となるユニットである。CPUユニット37cは、例えば、図示しない(1)CPU(Central Processing Unit)、(2)制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、バッテリーバックアップされたRAM(Random Access Memory)又は/及びフラッシュメモリ(Flash Memory)などの不揮発性メモリ、(3)データを格納するバッテリーバックアップされたRAM又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、(4)前記CPUへデジタル信号や接点信号又はアナログ信号などの外部信号の入出力を行う入出力ポート、(5)外部機器と接続する通信ポートやEthernetインタフェースなどから構成され、これらの回路はプリント基板上に搭載されて略方形状のケース内に収容されている。
【0054】
PLC37の制御プログラムは、一般的にはラダー論理が使用されているが、シーケンシャル・ファンクション・チャート(Sequential function chart)やSFC言語などを用いて作成することもできる。また、制御プログラムの設計・制作や保守業務を総合的にサポートするためのパーソナルコンピュータ上で稼働するエンジニアリングソフトウェアがメーカから提供されている。
【0055】
電源ユニット37aは、前記ベースユニット37bに装着された前記CPUユニット37cをはじめとする各ユニットに直流電源を供給するユニットであり、商用電源から例えばDC24V電圧を作り出して各部に供給する。
【0056】
センサコントローラ36は、レーザセンサ20を制御するコントローラであり、前記ケーブル209を介してレーザセンサ20を接続すると共に、前記PLCネットワーク38に接続されてCPUユニット37cと計測データの受け渡しを行う。センサコントローラ36は、前記CPUユニット37cと同様に、図示しないCPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ及び外部信号の入出力を行う入出力ポートなどから構成されている。
【0057】
センサコントローラ36は、レーザセンサ20に対し、計測のための制御信号を出力する。レーザセンサ20は、センサコントローラ36からの制御信号により、シート1の所定の個所に対しレーザ光210を照射する。そして反射されたレーザ光211をレーザセンサ20に内蔵された前記CMOSセンサ207が受けて電気信号に変換し、センサコントローラ36に伝達する。センサコントローラ36は、照射したレーザセンサ20からの信号により距離を計測すると共に前記計測した個所5a、4aのプロファイルデータを得る。センサコントローラ36は、計測した距離データ及びプロファイルデータなどを内蔵の前記RAM(図示しない)などに記憶する。
【0058】
CPUユニット37cは、センサコントローラ36が計測した距離データ及びプロファイルデータを、前記PLCネットワーク38を介して読み出し、当該距離データ及びプロファイルデータに基づき、次のようにして把持部高さHを算出する。
図6は、本発明に係るシート計測装置10によるシート1の把持部高さHを計測するための計測原理を説明するための側面図である。図6において、CPUユニット37cは、レーザセンサ20が計測位置101において、設置角θの設定がされた状態で、シート1の座面部2の前端部5にレーザ光210を縦方向に2次元照射して得た計測データに基づき、レーザセンサ20の位置101から計測データのうち最遠距離の位置111までの距離aを求める。
【0059】
次に、CPUユニット37cは、位置102において、レーザセンサ20が設置角θを維持した状態で、シート1の合わせ部4にレーザ光210を縦方向に2次元照射して得た計測データに基づき、レーザセンサ20の計測位置102から計測データのうち最遠距離の位置113までの距離cを求める。
【0060】
CPUユニット37cは、位置102と位置113を結ぶ直線上の位置113において、位置102と位置113を結ぶ直線と直交する直線と、レーザセンサ20が計測を行う計測位置101、102を結ぶ直線の延長線上との交点である位置103を求める。そして、位置113から位置103までの距離bを算出する。すなわち、距離bは、tanθ=b/cであるから、b=c×tanθの演算をすることにより求められる。また、b=c×tanθ=c×sinθ/cosθと表すこともできる。
【0061】
また、位置102と位置113を結ぶ直線は、そのまま延長すると位置111を通る水平方向の直線と位置112で交差する。そして位置102と位置112を結ぶ直線は、位置101と位置111を結ぶ直線と平行であるから、位置102から位置112までの距離は距離aとなる。
【0062】
そうすると、把持部高さHは、図6からわかるように、距離aに設置角θの正弦を乗じた値から距離bに設置角θの余弦を乗じた値を減じた値として求められる。したがって、把持部高さHは、H=a×sinθ-b×cosθという計算式で求めることができる。よって、CPUユニット37cは、前記計算式による演算を行うことにより把持部高さHを求めることができる。
【0063】
CPUユニット37cは、当該算出された把持部高さHのデータを、ベースユニット37bに装着されたPLCネットワークインタフェースユニット37dを介してロボットコントローラ39に出力する。
【0064】
ロボットコントローラ39は、図5に示すように、前記PLCネットワーク38に接続されており、CPUユニット37cから送信されてきた当該把持部高さHのデータに基づき、フォークロボット34がフォークを挿入する把持部高さの値を補正する。そして、ロボットコントローラ39は、それに接続されているフォークロボット34に駆動信号を出力する。フォークロボット34は、当該駆動信号に基づき作動する。
【0065】
フォークロボット34は、シート1を把持し持ち上げるために、例えば、図7に示すようなフォーク41を、フォークロボット34の先端部に位置するロボットハンド34aに装着する。
フォーク41は、図7に示すように、基端バー部411と、この基端バー部411の両端からそれぞれ図7の下方に延びる一対の縦棒部412、412と、各縦棒部412、412からそれぞれ斜め下方に延びる一対の斜棒部413、413と、各斜棒部413、413からそれぞれ略水平方向だがやや斜め上方に延びる水平棒部414、414と、各水平棒部414、414の先端を連結する先端バー部415とを有している。そして、両水平棒部414、414と、先端バー部415とにより、先端支持部416が構成されている。なお、各縦棒部412、412の略中央部同士が第1中間バー部417により連結されるとともに、各縦棒部412、412と各斜棒部413、413との境界部同士が第2中間バー部418により連結されている。なお、シート1に対して傷をつけることがないようにフォーク41の表面を樹脂等で覆うことも有効である。
【0066】
以上のように構成されたフォーク41は、フォークロボット34のロボットハンド34aに装着され、シート1の合わせ部4の隙間に挿入可能に構成されている。そして、フォークロボット34は、ロボットコントローラ39からの駆動信号により、フォーク41の先端支持部416を、シート1の座面部2と背もたれ部3との合わせ部4の隙間に差し込み、シート1を把持して持ち上げて、図1の搬送ライン31上にある自動車30の左右開口部から挿入し、自動車30内部の前席(運転席、助手席)の所定位置に載置する。
【0067】
なお、フォークロボット34が、前記シート1を前記自動車30の左右開口部から前席に挿入し、所定の位置に載置し、所定の位置に固定する一連の作業が終わると、次の作業を行う自動車30が搬送されてくると共に、パレット33に載置されたシート1がシート搬送架台32上を搬送されてくる。以下、同様の作動を繰り返し行うことによって、次々と自動車30にシート1を組み付けていくことができる。
【0068】
<第二の実施例>
次に、本発明に係るシート計測装置10の第二の実施例について説明する。本実施例は、計測の確実性を高めるために、幅員方向に複数個所の距離を計測するものである。ここでは、レーザセンサ20を幅員方向に所定の間隔を保って3個配設し、前記シート1の距離を3個所で計測する構成について説明する。具体的な計測を行う個所は、図8の平面図に示すように、シート1の中央線上の個所6C及び前記中央線の左右所定の幅員方向の個所6R、6Lとする。図8に示すように、計測器スライド機構12の支持プレート16には、それぞれの個所6C、6R、6Lの距離を計測するために、それぞれのレーザセンサ20C、20R、20Lを取り付けてある。
【0069】
また、この場合におけるPLC37の構成例は、図9に示すように、ベースユニット37bには、電源ユニット37a、CPUユニット37c、PLCネットワークインタフェースユニット37dの他に、接点信号などの入出力を行うための入出力ユニット37eが装着されている。そして、PLCネットワーク38には、3台のセンサコントローラ36、36、36が接続されており、各センサコントローラ36、36、36には、それぞれに対応してレーザセンサ20C、20R、20Lが接続されている。なお、本構成例では、1台のセンサコントローラ36に1個のレーザセンサ20を接続することができるユニットを想定しているが、1台のセンサコントローラ36に複数個のレーザセンサ20を接続することができるセンサコントローラ36を使用しても何ら差し支えない。
【0070】
そして、前記計測を行う個所6C、6R、6Lについて距離を計測する際は、計測器スライド機構12の第1のスライドシリンダ13及び第2のスライドシリンダ14を駆動して、レーザセンサ20C、20R、20Lを位置101及び位置102に移動し、そこで停止して、CPUユニット37cがPLCネットワーク38を介してセンサコントローラ36、36、36に計測信号を出力し、計測を行う。レーザセンサ20C、20R、20Lは、当該3個所の計測を同時に行ってもよいし、干渉を避けるために、一定の時間をずらせて順番に計測してもよい。計測データはCPUユニット37cがPLCネットワーク38を介してセンサコントローラ36、36、36から収集する。計測により得られた計測データの演算処理については、先述のレーザセンサ20が1個の例である第一の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
なお、演算の結果得られた3つの把持部高さHのうち、最遠の位置の値を採用してもよく、又は3つの値の平均としてもよい。要はシート1の形状に応じて、又は現物に合わせて決めていけばよい。また、レーザセンサ20をさらに増やすことにより3個所を超える計測をすることができることはいうまでもない。
【0072】
<第三の実施例>
次に、本発明に係るシート計測装置10の第三の実施例について説明する。図10(a)の平面図及び図10(b)の側面図に示すように、本実施例では複数個のレーザセンサ20を使用する代わりに、1個のレーザセンサ20を第3のスライドシリンダ18により幅員方向に所定の間隔で水平移動させて計測するように構成したものである。
【0073】
具体的には、前記支持プレート16の下方に延設されたシリンダ支持プレート16aに、第3のスライドシリンダ18を幅員方向に水平に取り付け、当該第3のスライドシリンダ18のスライダ18aにセンサ支持プレート17を介してレーザセンサ20を1個取り付けている。そして、当該第3のスライドシリンダ18のピストンロッド18bを伸張収縮させることによって、当該レーザセンサ20を水平方向に移動可能に構成したものである。なお、制御系統の構成図は図5と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
このように構成することにより、第3のスライドシリンダ18のピストンロッド18bを伸張させて、1個のレーザセンサ20を移動して計測を行うことができるため、安価に実現することができる。なお、第3のスライドシリンダ18のピストンロッド18bの伸張間隔を変更し、レーザセンサ20の数をさらに増やすことにより、3個所を超える計測をすることができることはいうまでもない。なお、上記以外は第一の実施例と同様であるので説明を省略する。また、演算の結果得られた3つの把持部高さHのうち、どの値を採用するかは、第二の実施例の場合と同様である。
【0075】
以上の第一の実施例乃至第三の実施例の説明では、PLC37は、1台のシート計測装置10及びフォークロボット34の計測制御をする場合について説明したが、1台のPLC37で、2台以上のシート計測装置10及びフォークロボット34の制御を行うことも可能である。この場合には、2組以上のシート計測装置10、フォークロボット34、ロボットコントローラ39、センサコントローラ36及びレーザセンサ20を準備し、これらの計測制御を行うために必要な入出力ユニット37e等をベースユニット37bに装着すると共に、シート計測装置10の台数に対応した制御プログラムを備えなければならないことはいうまでもない。
【0076】
本発明に係るシート計測装置10は以上のように構成されているために、シートの把持部高さH、すなわちフォークロボット34による把持位置を簡単な構成で非接触により計測することができるため、自動車30のシート1のように表皮材の柔軟性等によりその形状を特定しがたく、外形寸法にばらつきを有している把持対象物についても、当該計測データに基づき算出された把持部高さHの値に基づき、フォークロボット34がシート1の合わせ部4にフォーク41を挿入する高さ位置を補正することができる。
【0077】
これにより、シート1の組み付け作業において、シート1の表皮材の柔軟性等による外形寸法にばらつきがあっても、シート1ごとにそのばらつきを補正することができるため、それぞれのシート1の把持部高さHに合わせて、シート1の合わせ部4にフォークロボット34のフォーク41を確実に挿入することができる。さらに、フォーク41の挿入に失敗してシート1に傷をつけて商品価値を失ってしまうという問題を解消することができる。
【0078】
また、前記把持部高さHの計測データをデータベース化し、最大値、最小値、平均値、標準偏差などの統計データを取り、これらのデータの推移を見ながら作業改善や品質改善の推進に役立てることができる。
【0079】
この結果、自動車30の製造工場におけるシート1の組み付け作業の自動化を実現することができ、作業者の負担を大幅に軽減するとともに、作業効率の改善を実現することができるという効果を奏する。
【0080】
また、前記把持部高さHは、前記レーザセンサ20により前記シート1の座面部2の前端部5及び前記合わせ部4を計測個所とし、又は前記計測個所における幅員方向の複数個所をさらに計測個所とし、前記計測個所を縦方向に一定の区間における距離の計測をして、当該計測データのプロファイルに基づき算出されるよう構成しているため、シート1を傷つけることなく非接触で計測し、その値を算出することができる。また、幅員方向の複数個所について、距離の計測をするため、ばらつきの影響を軽減することができ、より正確なシート1の把持部高さHの値を得ることができる。
【0081】
また、前記把持部高さHの算出は、H=a×sinθ-b×cosθの演算式によって行うよう構成している。このため、演算制御装置であるCPUユニット37cによる演算処理プログラムが複雑とならず、しかも簡単な演算式であり、扱うデータ量も少ないために高速に演算処理をすることが可能となり、当該演算制御装置であるCPUユニット37cを含むPLC37は小規模なもので済み、本発明に係るシート計測装置10を安価にできる効果を奏する。
【0082】
本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、公知発明及び上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0083】
1 シート
2 座面部
3 背もたれ部
4 合わせ部
5 座面部の前端部
10 シート計測装置
11 計測フレーム
11b ベースフレーム
11c 中間フレーム
11d テーブルフレーム
11e 固定脚
12 計測器スライド機構
13 第1のスライドシリンダ
13a スライダ
13b ピストンロッド
14 第2のスライドシリンダ
14a スライダ
14b ピストンロッド
15 先端プレート
16 支持プレート
16a シリンダ支持プレート
17 センサ支持プレート
18 第3のスライドシリンダ
18a スライダ
18b ピストンロッド
20 レーザセンサ
20C、20R、20L レーザセンサ
21 Ethernet
22 パーソナルコンピュータ
30 自動車
31 搬送ライン
32 シート搬送架台
33 パレット
34 フォークロボット
34a ロボットハンド
36 センサコントローラ
37 PLC
37a 電源ユニット
37b ベースユニット
37c CPUユニット
37d PLCネットワークインタフェースユニット
37e 入出力ユニット
38 PLCネットワーク
39 ロボットコントローラ
41 フォーク
210、211 レーザ光
300 シート組み付けライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10