(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】リンク機構制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B25J19/00 K
(21)【出願番号】P 2020052450
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ミリ波帯におけるロボット等のワイヤフリー化に向けた無線制御技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-142362(JP,A)
【文献】特開2013-230534(JP,A)
【文献】特開平02-243289(JP,A)
【文献】特開平06-114787(JP,A)
【文献】米国特許第09358684(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクにおける2以上のリンクにそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、
前記リンク機構の基端側の位置に設けられた複数の基端側アンテナと、
前記基端側アンテナから前記複数のリンク側アンテナのそれぞれに制御信号を送信するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、を備え、
前記リンク機構の各関節は、前記制御信号に基づいて駆動され、
前記リンク機構の各関節が任意の角度である状態において、前記2以上のリンク側アンテナのそれぞれが前記複数の基端側アンテナの少なくともいずれかと見通しで通信できるように前記複数の基端側アンテナが配置されている、リンク機構制御装置。
【請求項2】
駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクにおける2以上のリンクにそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、
前記リンク機構の各関節が任意の角度である状態において、前記2以上のリンク側アンテナのそれぞれと見通しで通信できる、前記リンク機構の基端側を囲むように円環状に配置された漏洩同軸ケーブルである基端側アンテナと、
前記基端側アンテナから前記複数のリンク側アンテナのそれぞれに制御信号を送信するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、を備え、
前記リンク機構の各関節は、前記制御信号に基づいて駆動される、リンク機構制御装置。
【請求項3】
駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクにおける2以上のリンクにそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、
前記リンク機構の基端側の位置に設けられた1以上の基端側アンテナと、
前記基端側アンテナから前記複数のリンク側アンテナのそれぞれに制御信号を送信するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、
前記基端側アンテナの指向性及び位置の少なくとも一方を変更できる変更部と、
前記リンク機構の各関節が任意の角度である状態において、前記基端側アンテナが前記2以上のリンク側アンテナのそれぞれと見通しで通信できるように前記変更部を制御するアンテナ制御部と、を備え、
前記リンク機構の各関節は、前記制御信号に基づいて駆動される、リンク機構制御装置。
【請求項4】
駆動手段によって駆動される関節によって連結され、電波を反射する筐体を有する複数のリンク、及び前記複数のリンクにおける2以上のリンクの前記筐体の内部にそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、
前記リンク機構の基端側の位置に設けられた基端側アンテナと、
前記基端側アンテナから前記複数のリンク側アンテナのそれぞれに、前記筐体内を伝搬する電波を用いて制御信号を送信するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、を備え、
前記リンク機構の各関節は、前記制御信号に基づいて駆動される、リンク機構制御装置。
【請求項5】
前記制御信号は、10mm以下の波長の電波を用いて前記基端側アンテナから送信される、請求項1から請求項
4のいずれか記載のリンク機構制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線を減らしたリンク機構を制御するリンク機構制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な工作作業において、省力化のためにロボットアームを使用することが多くなっている。ロボットアームはモータやセンサを内蔵しているため、モータに電力を供給するための配線、モータを制御するための配線、センサからの情報を伝送するための配線などが用いられており、配線が極めて多い。また、ロボットアームには可動する部分があるため、度重なる屈曲による断線事故や、線噛みによる断線事故が多くなる。
【0003】
また、配線は実装スペースを圧迫すると共に、可動範囲を限定する要因にもなる。さらに、ロボットアームを製造する際に、配線ミスが発生する可能性もある。このように、ロボットアームの設計、製造、保守の面で、配線は様々なトラブルの原因になりうる。このようなトラブルを解消するため、ロボットアームなどの可動部分を含むリンク機構において、配線を無線化することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1~3では、制御装置と、ロボットアームとの間で無線通信によって制御信号等を送受信することが行われている。そのようにして、制御装置と、ロボットアームとの間での制御信号等の送受信のための配線をなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-078325号公報
【文献】特開2013-129003号公報
【文献】特開2015-013330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3においても、ロボットアーム内での配線は残ることになり、配線に起因する問題が生じうることになる。
【0007】
一般的に言えば、複数のリンクが関節によって連結されたリンク機構において、配線を低減させたいという要望があった。
【0008】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、複数のリンクが関節によって連結されたリンク機構における配線を低減することができるリンク機構制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるリンク機構制御装置は、駆動手段によって駆動される関節によって連結された複数のリンク、及び複数のリンクにおける2以上のリンクにそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、リンク機構の各関節が任意の角度である状態において、2以上のリンク側アンテナのそれぞれと見通しで通信できる、リンク機構の基端側の位置に設けられた1以上の基端側アンテナと、基端側アンテナから複数のリンク側アンテナのそれぞれに制御信号を送信するアクセスポイントと、アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、を備え、リンク機構の各関節は、制御信号に基づいて駆動される、ものである。
【0010】
このような構成により、リンク機構が2以上のリンク側アンテナを有することによって、例えば、リンクごとに制御信号を受信することができ、リンク機構内での制御信号の伝送のための配線を減らすことができる。また、2以上のリンク側アンテナと、基端側アンテナとが見通しで通信できるため、例えば、ミリ波などの周波数の短い電波を用いて制御信号を送受信することもできるようになる。
【0011】
また、本発明の一態様によるリンク機構制御装置では、基端側アンテナは複数であり、リンク機構の各関節が任意の角度である状態において、2以上のリンク側アンテナのそれぞれが複数の基端側アンテナの少なくともいずれかと見通しで通信できるように複数の基端側アンテナが配置されていてもよい。
【0012】
このような構成により、複数の基端側アンテナを用いることによって、2以上のリンク側アンテナのそれぞれとの見通しで通信を、より容易に実現することができるようになる。また、基端側のアンテナとの見通し内通信を実現できている状態において、リンク機構の各リンクをより広範囲に動作させることも可能になる。
【0013】
また、本発明の一態様によるリンク機構制御装置では、基端側アンテナは、リンク機構の基端側を囲むように円環状に配置された漏洩同軸ケーブルであってもよい。
【0014】
このような構成により、漏洩同軸ケーブルである基端側アンテナを用いることによって、2以上のリンク側アンテナと基端側アンテナとの見通しでの通信を容易に実現することができるようになる。
【0015】
また、本発明の一態様によるリンク機構制御装置では、基端側アンテナの指向性及び位置の少なくとも一方を変更できる変更部と、基端側アンテナが2以上のリンク側アンテナのそれぞれと見通しで通信できるように変更部を制御するアンテナ制御部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
このような構成により、変更部によって基端側アンテナの指向性や位置を変更することによって、例えば、少ない個数の基端側アンテナを用いて、2以上のリンク側アンテナと基端側アンテナとの見通しでの通信を実現できるようになる。
【0017】
また、本発明の一態様によるリンク機構制御装置は、駆動手段によって駆動される関節によって連結され、電波を反射する筐体を有する複数のリンク、及び複数のリンクにおける2以上のリンクの筐体の内部にそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナを有するリンク機構と、リンク機構の基端側の位置に設けられた基端側アンテナと、基端側アンテナから複数のリンク側アンテナのそれぞれに、筐体内を伝搬する電波を用いて制御信号を送信するアクセスポイントと、アクセスポイントによる制御信号の送信を制御する制御部と、を備え、リンク機構の各関節は、制御信号に基づいて駆動される、ものである。
【0018】
このような構成により、リンク機構の筐体内において制御信号の電波を伝搬させることによって、例えば、リンクごとに制御信号を受信することができ、リンク機構内での制御信号の伝送のための配線を減らすことができる。
【0019】
また、本発明の一態様によるリンク機構制御装置では、制御信号は、10mm以下の波長の電波を用いて基端側アンテナから送信されてもよい。
【0020】
このような構成により、より長い波長の電波を用いた場合と比較して、より広い帯域での無線通信を行うことができ、より多くの信号を送受信することができる。また、例えば、複数のリンク機構制御装置が隣接して配置されている場合であっても、隣の装置と干渉しないように周波数を選択することができるようになる。
【0021】
また、本発明の一態様によるリンク機構は、関節によって連結された第1のリンク及び第2のリンクを備えたリンク機構であって、第1のリンクは、第2のリンクとの連結箇所に設けられた、非接触電力伝送で用いられる送電コイルを有し、第2のリンクは、送電コイルと対面するように設けられた、非接触電力伝送で用いられる受電コイルを有し、送電コイル及び受電コイルの中心には関節の回転軸である磁性体の軸部材が設けられている、ものである。
【0022】
このような構成により、関節部分における電力伝送用の配線をなくすことができる。そのため、度重なる屈曲による断線事故や、歯噛みによる断線事故が起こらないようにすることができる。また、関節部分での配線がなくなることによって、可動範囲が限定されないことにもなる。例えば、関節において、一方向に任意の回数だけ回転することも可能になる。また、送電コイル及び受電コイルの中心に、関節の回転軸である磁性体の軸部材が設けられていることにより、軸部材が両コイルの結合を促進するコアとなるため、そのような軸部材が存在しない場合と比較して、送電コイルから受電コイルへの非接触電力伝送の効率を向上させることができる。また、軸部材が、関節の回転軸を兼ねていることにより、送電効率の向上のために別途、コアを設ける必要がないというメリットもある。また、その軸部材が存在することにより、両コイルの位置関係がずれることなく関節が回転することになるため、回転に応じて電力の伝送効率が変化することもない。
【0023】
また、本発明の一態様によるリンクユニットは、関節によって連結される複数のリンクを有するリンク機構を構成するリンクユニットであって、基端側の関節に設けられた、非接触電力伝送で用いられる受電コイルと、先端側の関節に設けられた、非接触電力伝送で用いられる送電コイルと、基端側または先端側の関節を回転させる駆動手段と、受電コイルによって非接触で受電された電力を、駆動手段に供給すると共に、送電コイルから先端側のリンクユニットに送電する制御回路と、受電コイルの中心及び送電コイルの中心の少なくとも一方に設けられた、関節の回転軸である磁性体の軸部材と、を備えたものである。
【0024】
このような構成により、リンクユニットを連結することによって、容易にリンク機構を構成することができる。また、リンク機構の用途などに応じて、リンクの個数を容易に増減させることもできる。また、そのリンク機構の関節部分では、非接触電力伝送を行うことができ、また、両コイルの中心に磁性体の軸部材が存在するため、上記した効果と同様の効果も得られることになる。
【0025】
また、本発明の一態様によるリンクユニットでは、軸部材は、受電コイルの中心及び送電コイルの中心の一方に設けられていてもよい。
【0026】
このような構成により、ユーザが複数のリンクユニットを連結させる際に、リンクユニットの受電側(すなわち、基端側)の端部と、送電側(すなわち、先端側)の端部とを、軸部材の有無に応じて容易に判別することができる。
【0027】
また、本発明の一態様によるリンクユニットでは、基端側の関節及び先端側の関節の一方では、連結対象の関節部分の送電コイルまたは受電コイルを回転軸方向において両側から挟み込むように受電コイルまたは送電コイルが設けられており、基端側の関節及び先端側の関節の他方では、連結対象の関節部分の受電コイルまたは送電コイルによって回転軸方向において両側から挟み込まれるように送電コイルまたは受電コイルが設けられていてもよい。
【0028】
このような構成により、関節部分での効率的な電力伝送を実現することができるようになる。また、リンクユニットの基端側の形状と先端側の形状とが異なることになるため、リンクユニットの基端側の端部と、先端側の端部とを容易に判別することができる。
【0029】
また、本発明の一態様によるリンクユニットでは、基端側の関節の回転軸と、先端側の関節の回転軸とは平行であってもよい。
【0030】
このような構成により、そのリンクユニットを用いることによって、例えば、水平多関節ロボットを構成することができる。
【0031】
また、本発明の一態様によるリンクユニットでは、先端側の関節の回転軸は、基端側の関節の回転軸を含む直線と、リンクユニットの長手方向の直線とを含む平面に垂直な方向であってもよい。
【0032】
このような構成により、そのリンクユニットを用いることによって、より複雑な動作を行うためのリンク機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によるリンク機構制御装置によれば、複数のリンクが関節によって連結されたリンク機構における配線を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施の形態1によるリンク機構の構成を示す平面図
【
図2】同実施の形態によるリンクユニットの内部構造を示す図
【
図3】同実施の形態によるリンク機構の内部構造を示す図
【
図4】同実施の形態におけるロボットアーム装置の基端側の内部構造を示す図
【
図5】同実施の形態による他の構成のリンク機構の内部構造を示す図
【
図6】同実施の形態によるリンク機構の他の構成を示す平面図
【
図7A】本発明の実施の形態2によるリンク機構制御装置の構成を示す模式図
【
図7B】本実施の形態によるリンク機構制御装置の他の構成の一例を示す模式図
【
図8】同実施の形態によるリンク機構制御装置の他の構成の一例を示す模式図
【
図9】同実施の形態によるリンク機構制御装置の他の構成の一例を示す模式図
【
図10】同実施の形態における基端側アンテナの配置の一例を示す平面図
【
図11】同実施の形態における基端側アンテナの他の一例を示す平面図
【
図12】同実施の形態における変更部の一例を示す模式図
【
図13】同実施の形態によるリンク機構制御装置の他の構成の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明によるリンク機構、リンクユニット、及びリンク機構制御装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0036】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるリンク機構、及びリンクユニットについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるリンク機構は、複数のリンクユニットを連結したものであり、関節部分において、送電コイル、受電コイル、及び軸部材を用いて非接触電力伝送を行うものである。
【0037】
図1は、本実施の形態によるリンク機構1の構成を示す平面図である。
図2は、リンク機構1を構成する第1のリンクユニット10の内部構造を示す図である。
図3は、リンク機構1の内部構造を示す図である。
【0038】
本実施の形態によるリンク機構1は、第1のリンクユニット10、及び第2のリンクユニット20を備える。なお、
図1、
図3では、説明の便宜上、リンク機構1が連結された2個のリンクユニットを有する場合について説明するが、リンク機構1は、直列に連結された3個以上のリンクユニットを有するものであってもよい。また、リンク機構1は、例えば、ロボットアームであってもよく、ロボットアーム以外のものであってもよい。後者の場合には、リンク機構1は、例えば、4足歩行ロボットの脚であってもよく、ヒューマノイドロボットの腕や脚であってもよく、クレーンなどのリンク機構であってもよい。なお、本実施の形態では、第1のリンクユニット10が基端側のリンクであり、第2のリンクユニット20が、第1のリンクユニット10の先端側に連結されたリンクであるとする。
【0039】
第1のリンクユニット10は、受電コイル11と、送電コイル12と、駆動手段13と、制御回路14と、軸部材15と、プーリ16、17と、ベルト18とを備える。第2のリンクユニット20は、受電コイル21と、送電コイル22と、駆動手段23と、制御回路24と、軸部材25と、プーリ26、27と、ベルト28とを備える。なお、第2のリンクユニット20の受電コイル21、送電コイル22、駆動手段23、制御回路24、軸部材25、プーリ26、27、ベルト28は、それぞれ第1のリンクユニット10の受電コイル11、送電コイル12、駆動手段13、制御回路14、軸部材15、プーリ16、17、ベルト18と同様のものであり、それらの説明を省略する。第1及び第2のリンクユニット10,20は、例えば、直線状に延びた棒状のユニットであってもよい。本実施の形態では、その場合について主に説明する。また、各リンクユニットの長手方向の長さは、例えば、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。
【0040】
受電コイル11は、非接触電力伝送で用いられる受電用のコイルであり、第1のリンクユニット10の基端側の関節に設けられる。受電コイル11は、第1のリンクユニット10の基端側が、他のリンクユニットやベース側に連結された場合に、他のリンクユニットの先端側の関節に設けられた図示しない送電コイルや、ベース側の関節に設けられた図示しない送電コイルと対面するように設けられる。
【0041】
送電コイル12は非接触電力伝送で用いられる送電用のコイルであり、第1のリンクユニット10の先端側の関節に設けられる。すなわち、送電コイル12は、第2のリンクユニット20との連結箇所に設けられている。送電コイル12は、第1のリンクユニット10の先端側に連結された第2のリンクユニット20の基端側の関節に設けられた受電コイル21と対面するように設けられる。
【0042】
なお、送電コイル12と受電コイル21との間で行われる非接触電力伝送の方式は問わない。その非接触電力伝送の方式は、例えば、電磁誘導方式や磁界共振方式などの磁界結合方式であってもよく、非接触電力伝送のその他の方式であってもよい。
【0043】
駆動手段13は、基端側または先端側の関節を回転させる。本実施の形態では、駆動手段13が、先端側の関節を回転させる場合について主に説明する。駆動手段13は、例えば、モータ等であってもよい。
【0044】
制御回路14は、受電コイル11によって非接触で受電された電力を、駆動手段13に供給する。すなわち、駆動手段13は、受電コイル11によって受電された電力によって動作することになる。また、制御回路14は、受電コイル11によって非接触で受電された電力を、送電コイル12から、先端側の第2のリンクユニット20に送電する。具体的には、受電コイル11によって受電された電力が、送電コイル12から第2のリンクユニット20の受電コイル21に非接触で伝送される。制御回路14は、受電コイル11から出力された電力について、電圧や電流の調整を行って、駆動手段13や送電コイル12に供給してもよい。なお、制御回路14は、例えば、受電コイル11からの交流電力を一度、直流に変換してから、電圧や電流の調整を行ってもよい。また、例えば、駆動手段13が直流モータである場合には、直流電力が駆動手段13に送られてもよい。また、駆動手段13がパルスモータや交流モータである場合には、制御回路14は、直流電力を交流電力に変換して駆動手段13に送ってもよい。
【0045】
なお、送電コイル12の先に受電コイルが存在しない場合には、送電コイル12に流れる電流量が大きくなることによって、制御回路14は、そのことを検知することができる。そして、制御回路14は、送電コイル12への電力の供給を停止してもよい。なお、ユーザが、リンクユニットを連結する際に、先端側のリンクユニットが連結されないリンクユニット、すなわち、最先端のリンクユニットについては、送電を行わない設定を手動で行うようにしてもよい。また、最先端のリンクユニットにおいては、駆動手段13への電力の供給も行われなくてもよい。
【0046】
軸部材15は、関節の回転軸であり、磁性体の部材である。軸部材15は、送電コイル12の中心に設けられており、第1のリンクユニット10が第2のリンクユニット20と連結されることによって、送電コイル12及び受電コイル21の中心に位置することになる。軸部材15は、磁性体であるため、送電コイル12から受電コイル21に非接触電力伝送が行われる際に両コイルの結合を促進するコアとなる。なお、軸部材15は、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体であってもよく、それらの合金であってもよく、その他の磁性体であってもよい。コイルの結合を促進する観点からは、軸部材15としてフェライトを用いることが好適である。一方、フェライトは強度が低いため、フェライトを用いる場合には、フェライトを樹脂で覆った棒状の部材を、軸部材15として用いてもよい。フェライトを覆う樹脂は、高強度であることが好適である。強度の高い樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック等であってもよい。
【0047】
なお、本実施の形態では、第1のリンクユニット10の送電コイル12の中心に軸部材15が設けられている場合について説明するが、そうでなくてもよい。軸部材15は、第1のリンクユニット10の送電コイル12の中心、及び受電コイル11の中心の少なくとも一方に設けられていてもよい。例えば、駆動手段13が先端側の関節を回転させる場合であっても、軸部材15は、基端側の受電コイル11の中心に設けられていてもよい。なお、軸部材15を、受電コイル11の中心及び送電コイル12の中心の一方に設けた場合には、第1のリンクユニット10において、軸部材の有無によって、基端側の関節か、先端側の関節かを判別することができるようになる。そのような判別を可能にするためには、受電コイル11の中心及び送電コイル12の中心の一方にのみ軸部材15を設けることが好適である。
【0048】
次に、駆動手段13による関節の回転について説明する。駆動手段13の回転軸にはプーリ16が取り付けられており、軸部材15にはプーリ17が取り付けられており、両プーリ16,17に、ベルト18が掛け渡されている。したがって、駆動手段13の回転軸が回転することによって、プーリ16が回転し、その回転がベルト18によってプーリ17に伝わり、プーリ17の回転に応じて軸部材15が回転することになる。また、軸部材15の第2のリンクユニット20側の端部は、第2のリンクユニット20に固定されているものとする。その結果、軸部材15の回転に応じて、第1のリンクユニット10が、第2のリンクユニット20に対して関節部分において回転することになる。
【0049】
なお、プーリ16,17やベルト18に代えて、ギヤを用いて軸部材15を回転させてもよく、駆動手段13の回転軸を直接、軸部材15に接続してもよく、または、その他の方法によって駆動手段13の動力が軸部材15に伝達されてもよい。また、動力の伝達において、減速機を用いることによってトルクを増加させてもよい。
【0050】
次に、第1のリンクユニット10,20を用いてリンク機構1を構成する方法について簡単に説明する。第1のリンクユニット10の先端側を、第2のリンクユニット20の基端側に連結させることによって、
図1、
図3で示されるように、第1及び第2のリンクユニット10,20を有するリンク機構1を構成することができる。より具体的には、第1のリンクユニット10の先端側の軸部材15を、第2のリンクユニット20の基端側の関節の軸取り付け孔に挿入し、第2のリンクユニット20において軸部材15を固定する。そのようにして、両リンクユニット10,20を連結することができる。また、第2のリンクユニット20の先端側、または、リンクユニット10の基端側に他のリンクユニットを連結することにより、連結されるリンクユニットの個数を簡単に増やすことができる。
【0051】
なお、リンク機構1の基端側の第1のリンクユニット10は、例えば、
図4で示されるように、ベース3に固定された基端部30の関節に連結されてもよい。基端部30は、例えば、送電コイル32と、駆動手段33と、制御回路34と、軸部材35と、プーリ36,37と、ベルト38とを備えていてもよい。なお、送電コイル32、駆動手段33、制御回路34、軸部材35、プーリ36,37、ベルト38はそれぞれ、送電コイル12、駆動手段13、制御回路14、軸部材15、プーリ16,17、ベルト18と同様のものであり、それらの説明を省略する。また、基端部30は、商用電源から電力供給を受けることができるため、受電コイルを有していなくてもよい。したがって、制御回路34は、商用電源からの電力を、適宜調整して送電コイル32に出力してもよい。また、駆動手段33も、商用電源によって動作してもよい。なお、
図4では、第1のリンクユニット10の先端側に接続されているリンクユニットを省略しているが、第1のリンクユニット10の先端側には、第2のリンクユニット20が連結されていてもよく、第2のリンクユニット20の先端側にもさらに、別のリンクユニットが連結されていてもよい。また、リンク機構1の先端には、例えば、ロボットアームの用途に応じたハンド部などのエンドエフェクタが連結されてもよい。このようにして、ロボットアーム装置2が構成されることになる。
【0052】
次に、リンク機構1の動作について簡単に説明する。基端部30から送電コイル32を介して、非接触電力伝送によって受電コイル11に電力が伝送される。受電コイル11で受電された電力は制御回路14に出力され、適宜、電圧、電流等の調整が行われて駆動手段13と、送電コイル12に供給される。そして、送電コイル12から、第2のリンクユニット20の受電コイル21に、非接触電力伝送によって電力が伝送される。このように、リンクユニット間での非接触電力伝送が順次、行われることによって、リンク機構1の先端まで、電力が伝送されることになる。その結果、リンク機構1では、電力伝送のための配線を関節部分に設ける必要がなくなる。
【0053】
なお、駆動手段の制御信号や、リンクユニットにおける図示しないセンサによるセンシング結果は、例えば、リンクユニットと基端部30との間で無線通信によって授受されてもよい。その無線通信については、実施の形態2において説明する。また、制御信号やセンシング結果の通信は、リンク機構1の配線によって行われてもよい。この場合でも、本実施の形態によるリンク機構1では、電力に関する関節部分での配線をなくすことはできる。
【0054】
以上のように、本実施の形態によるリンク機構1によれば、関節部分において、非接触電力伝送によって電力を伝送できるため、関節部分における電力伝送のための配線が不要になる。そのため、配線に起因するトラブルを解消することができる。例えば、電力用の配線について、度重なる屈曲による断線事故や、歯噛みによる断線事故が起こらないようにすることができる。また、例えば、関節部分でのすべての配線がなくなった場合には、可動範囲が限定されないことになり、関節において、一方向に任意の回数だけ回転することも可能になる。また、配線が少なくなることに応じて、リンク機構1を軽量化することができ、少ないトルクで各関節を回転させることができるようになり、省エネルギーにも寄与することになる。
【0055】
また、送電コイル12及び受電コイル21の中心に存在する軸部材15が両コイル12,21の結合を促進するコアとなるため、非接触電力伝送の効率を向上させることができる。また、軸部材15が、関節の回転軸を兼ねていることにより、送電効率の向上のために別途、コアを設ける必要がないというメリットもある。また、その軸部材15が存在することにより、両コイル12,21の位置関係がずれることなく関節が回転することになり、回転に応じて電力の伝送効率が変化することもない。また、複数のリンクユニットを連結することによってリンク機構1を構成することができるため、リンク機構1を簡単に拡張することができるようになる。
【0056】
次に、本実施の形態によるリンク機構1及びリンクユニットの変形例について説明する。
【0057】
[受電コイルと送電コイルとの対応関係]
本実施の形態では、受電コイルと送電コイルとが一対一で対面される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図5で示されるように、第2のリンクユニット20の基端側の関節には、連結対象の関節部分の送電コイル12を回転軸方向において両側から挟み込むように受電コイル21が設けられており、第1のリンクユニット10の先端側の関節には、連結対象の関節部分の1対の受電コイル21によって回転軸方向において両側から挟み込まれるように送電コイル12が設けられていてもよい。なお、軸部材15は、3個のコイルを貫通することになる。
【0058】
このような構成により、受電コイル21が送電コイル12の両側から電力の供給を受けることができ、非接触電力伝送の効率が向上することになる。また、軸部材15の両端が第2のリンクユニット20によって支持される両持ち構造となるため、片持ち構造よりも関節部分において軸部材15がぶれにくくなり、関節の回転も安定したものとなる。また、リンクユニットの形状が基端側と先端側とで異なるため、リンクユニットにおいて、どちらが先端側であるのか(または、基端側であるのか)を容易に判別することができるようになる。
【0059】
なお、ここでは、受電コイルが2個の送電コイルで挟まれる場合について説明したが、逆であってもよい。すなわち、送電コイルが2個の受電コイルで挟まれてもよい。この場合であっても、非接触電力伝送の効率を向上させることができる。
【0060】
このように、基端側の関節及び先端側の関節の一方では、連結対象の関節部分の送電コイルまたは受電コイルを回転軸方向において両側から挟み込むように受電コイルまたは送電コイルが設けられ、基端側の関節及び先端側の関節の他方では、連結対象の関節部分の受電コイルまたは送電コイルによって回転軸方向において両側から挟み込まれるように送電コイルまたは受電コイルが設けられてもよい。
【0061】
また、
図5では、回転軸方向において、1個の送電コイル12が2個の受電コイル21で挟まれる場合について示しているが、回転軸方向において、N+1個の受電コイルのN個の隙間(すなわち、コイル間の隙間)に、N個の送電コイルが存在するように構成されてもよい。なお、Nは、1以上の整数である。また、送電コイルと受電コイルとを逆にして、回転軸方向において、N+1個の送電コイルの間に、N個の受電コイルが存在するように構成されてもよい。
【0062】
[基端側の回転軸と先端側の回転軸との関係]
本実施の形態では、第1及び第2のリンクユニット10,20において、基端側の関節の回転軸と、先端側の関節の回転軸とが平行である場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図6で示されるリンクユニット40のように、先端側の関節の回転軸63は、基端側の関節の回転軸62を含む直線と、リンクユニット40の長手方向の直線(回転軸62を通り、リンクユニット40の長手方向に延びる直線であり、例えば、
図6の両矢印を延長した直線)とを含む平面に垂直な方向となっていてもよい。なお、
図6で示されるリンク機構1に含まれるリンクユニット10,50では、基端側の関節の回転軸61,63と、先端側の関節の回転軸62,64とは平行になっている。このようなリンクユニット40を有するリンク機構1によって、より複雑な動きを実現することができるようになる。例えば、
図1~
図4で示されるリンク機構1では、各リンクユニットが同一平面内を動くことになるが、
図5で示されるリンク機構では、各リンクユニットが3次元空間内を動くようになり、複雑な動作を実現できる。また、基端側の関節の回転軸と、先端側の関節の回転軸との角度は、上記した以外の関係であってもよい。
【0063】
[駆動手段によって駆動される関節]
本実施の形態では、第1及び第2のリンクユニット10,20において、駆動手段13,23によって先端側の関節が回転される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。駆動手段13,23は、基端側の関節を回転させてもよい。その場合には、第1及び第2のリンクユニット10,20が有する軸部材15,25は、基端側の回転軸の軸部材であってもよい。
【0064】
[リンクユニット以外によって構成されたリンク機構]
本実施の形態では、リンク機構1が、第1及び第2のリンクユニット10,20などのリンクユニットを連結させることによって構成される場合について説明したが、そうでなくてもよい。リンク機構1は、リンクユニットを用いて構成されるのではなく、通常のロボットアームと同様に、リンクごとに個別に設計されて構成されてもよい。その場合であっても、関節において、非接触電力伝送を行う際に、送電コイル及び受電コイルの中心に、関節の回転軸である磁性体の軸部材が設けられるようにすることにより、非接触電力伝送の効率を向上させることができる。
【0065】
また、リンクユニットを用いないでリンク機構1が構成される場合には、例えば、1つのリンクにおいて、2個の駆動手段を用いて、基端側の関節、及び先端側の関節の両方が回転されてもよい。また、例えば、1つのリンクにおいて、基端側の関節の回転に応じて、先端側の関節を回転させるように、回転伝達機構のみが備えられていてもよい。回転伝達機構は、例えば、プーリとベルト、またはギヤなどによって構成されてもよい。
【0066】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2によるリンク機構制御装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるリンク機構制御装置は、基端側アンテナから、リンク機構に設けられた2以上のリンク側アンテナに制御信号を無線送信することによって、リンク機構の各関節を駆動するものである。
【0067】
図7Aは、本実施の形態によるリンク機構制御装置100の構成を示す模式図である。本実施の形態によるリンク機構制御装置100は、リンク機構101と、基端側アンテナ105と、アクセスポイント106と、制御部107とを備える。リンク機構101は、駆動手段によって駆動される関節131~133によって連結された複数のリンク111~114と、複数のリンク111~114における2以上のリンクにそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナ121~123とを備える。複数のリンク111~114のうち、基端側のリンク111は、ベース103に固定されている。また、リンク111とリンク112、リンク112とリンク113、リンク113とリンク114はそれぞれ、関節131~133によって回動可能に連結されている。
【0068】
なお、本実施の形態では、リンク機構101が、4個のリンク111~114を有する場合について主に説明するが、リンク機構101が有するリンクの個数は問わない。例えば、リンク機構101は、2個または3個のリンクを有してもよく、または、5個以上のリンクを有してもよい。複数のリンクは、通常、直列に連結される。また、本実施の形態では、リンク機構101の最先端に存在するハンド部(エンドエフェクタ)も、一つのリンクであるとして説明する。各リンク112~114に対する電力の供給は、例えば、配線を用いて行われてもよく、または、実施の形態1のように、関節部分での無線給電によって行われてもよい。後者の場合には、各リンク112~114として、例えば、リンクユニットが用いられてもよい。なお、リンク111は、ベース103に固定されているため、配線を用いて電力を供給することができる。
【0069】
ベース103に接続されているリンク111以外のリンク112~114には、それぞれリンク側アンテナが設けられていることが好適である。本実施の形態では、リンク112~114にそれぞれリンク側アンテナ121~123が設けられているものとする。なお、本実施の形態では、基端のリンク111以外のリンク112~114に、それぞれリンク側アンテナ121~123が設けられている場合について説明するが、そうでなくてもよい。基端のリンク111以外のリンク112~114の2以上のリンクに、2以上のリンク側アンテナがそれぞれ設けられていてもよい。その場合には、いくつかのリンク間においては、制御信号等の伝送のため、関節を介した配線が設けられてもよい。そのような場合であっても、2以上のリンク側アンテナを介して制御信号等が送受信されることによって、リンク機構101の全体としては、関節の箇所における配線を減らすことができるというメリットがある。また、例えば、基端側の関節の回転に応じて、先端側の関節を回転させる回転伝達機構のみを有するリンクが存在してもよい。この場合には、回転伝達機構のみを有するリンクは、信号を送受信する必要がないため、リンク側アンテナが備えられていなくてもよい。なお、回転伝達機構は、例えば、プーリとベルト、またはギヤなどによって構成されてもよい。
【0070】
なお、
図7Aでは、リンク側アンテナ121~123が関節の位置または関節の近傍に設けられている場合について示しているが、そうでなくてもよい。リンクの先端側の端部から基端側の端部までの任意の位置にリンク側アンテナが設けられていてもよい。例えば、
図7Bで示されるように、リンクの先端側の端部と基端側の端部との中間付近にリンク側アンテナ121,122が設けられていてもよい。例えば、実施の形態1におけるリンク機構1と同様に、関節部分において非接触電力伝送を行う場合には、関節部分にリンク側アンテナを設けることが困難であるため、
図7Bで示されるように、リンク112,113のそれぞれにおいて、両端の関節間にリンク側アンテナ121,122が設けられることが好適である。リンク側アンテナ121~123は、各リンク112~114の筐体の外部に設けられているものとする。電波の送受信を好適に行うことができるようにするためである。リンク側アンテナ121~123は、例えば、各リンク112~114の筐体表面に配設されたパッチアンテナ、または、その他の種類のアンテナであってもよい。
【0071】
また、
図7Aでは、関節133が回転することによって、リンク114に設けられたリンク側アンテナ123は、基端側アンテナ105と見通し内通信を行えなくなる場合があり得る。このように、関節133の回転に応じて基端側アンテナ105と見通し内通信を行うことができないリンク側アンテナ123が設けられたリンク114については、
図7Bで示されるように、関節133が任意の角度である場合に、基端側アンテナ105と見通し内通信を行うことができるように、複数のリンク側アンテナ123を設けてもよい。この場合には、関節133がどのような角度であったとしても、少なくとも1つのリンク側アンテナ123が、基端側アンテナ105と見通し内通信を行うことができるように、複数のリンク側アンテナ123が配置されていることが好適である。
【0072】
より一般的には、リンク機構101の各関節が任意の角度である状態において、所定のリンクに設けられたリンク側アンテナが、基端側アンテナ105と見通し内通信を行うことができない状況がある場合には、その所定のリンクには、複数のリンク側アンテナが設けられてもよい。その複数のリンク側アンテナは、リンク機構101の各関節が任意の角度である状態において、少なくともいずれかのリンク側アンテナが基端側アンテナ105と見通し内通信を行うことができるように設けられるものとする。
【0073】
また、ミリ波などの波長の短い電波を送受信する場合には、通信手段とアンテナとをつなぐケーブルのコストが大きくなる。そのため、通信手段とアンテナとは一体に設けられてもよい。この場合には、両者をつなぐケーブルを用いなくてもよいからである。例えば、リンク機構101に設けられるリンク側アンテナ121~123は、通信手段と一体に設けられてもよい。また、基端側アンテナ105についても同様であってもよい。
【0074】
リンク側アンテナ121~123や基端側アンテナ105には、アンテナを保護するためのアンテナカバー(レドーム)が設けられていてもよい。アンテナカバーには、通常、電波の透過率の高い材料が用いられる。
【0075】
また、本実施の形態では、リンク機構101がロボットアームである場合について主に説明するが、リンク機構101は、ロボットアーム以外のものであってもよい。ロボットアーム以外のリンク機構101としては、例えば、4足歩行ロボットの脚、ヒューマノイドロボットの腕や脚、クレーンなどのリンク機構などを挙げることができる。
【0076】
各リンク111~114は、例えば、基端側または先端側の関節を駆動する駆動手段や、駆動手段の回転軸の変位を取得するロータリエンコーダなどのセンサ、制御信号に基づいて駆動手段を駆動制御する制御回路、リンク側アンテナ121~123を介して制御部107との通信を行う通信手段などを有していてもよい。駆動手段やセンサ、制御回路、通信手段などは、例えば、リンク側アンテナの設けられたリンクに備えられていてもよい。なお、制御信号等の送受信以外のリンク機構101に関する構成は、従来のロボットアーム等のリンク機構と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0077】
基端側アンテナ105は、リンク機構101の各関節131~133が任意の角度である状態において、リンク側アンテナ121~123のそれぞれと見通しで通信できるように、リンク機構101の基端側の位置に設けられている。リンク機構101の各関節131~133が任意の角度である状態は、リンク機構101の動作可能範囲内における状態である。なお、
図7Aでは、基端側アンテナ105がベース103上に設けられている場合について示しているが、そうでなくてもよい。ベース103以外のリンク機構101の基端側の位置に、基端側アンテナ105が設けられていてもよい。ただし、基端側アンテナ105は、リンク機構101の基端の周囲に設けられていることが好適である。基端側アンテナ105の個数は問わない。基端側アンテナ105は、例えば、1個であってもよく、または、2個以上であってもよい。
【0078】
アクセスポイント106は、基端側アンテナ105から複数のリンク側アンテナ121~123のそれぞれに制御信号を無線で送信する。また、アクセスポイント106は、複数のリンク側アンテナ121~123から基端側アンテナ105に無線で送信された信号を、基端側アンテナ105を介して受信してもよい。アクセスポイント106は、例えば、無線LANの基地局に相当するものであると考えてもよい。したがって、アクセスポイント106は、リンク112~114に設けられた通信手段との通信を行うものであってもよい。
【0079】
基端側アンテナ105とリンク側アンテナ121~123との間での通信は、例えば、10mm以下の波長の電波を用いて行われてもよい。すなわち、制御信号は、例えば、10mm以下の波長の電波を用いて基端側アンテナ105からリンク側アンテナ121~123に送信されてもよく、リンク112~114から送信される信号は、例えば、10mm以下の波長の電波を用いてリンク側アンテナ121~123から基端側アンテナ105に送信されてもよい。その電波は、例えば、ミリ波であってもよく、サブミリ波であってもよく、テラヘルツ波であってもよく、その他の10mm以下の波長の電波であってもよい。本実施の形態では、制御信号等がミリ波によって送信される場合について主に説明する。
【0080】
なお、アクセスポイント106は、通信を行わない期間において、受信周波数を切り替えながら周囲の電波の使用状況を観測してもよい。そして、周囲のリンク機構制御装置と干渉しない電波を用いて、各リンク112~114と通信を行うようにしてもよい。また、アクセスポイント106は、電波の使用状況を、周囲のリンク機構制御装置のアクセスポイントと有線または無線で交換することによって取得してもよい。
【0081】
無線LANなどで使用される2.45GHzや5GHzなどのように、波長の長い電波を用いた無線通信では、見通し内通信でなくても通信を行うことができる。一方、そのような電波を用いた通信では、幅広い周波数帯域を確保することが難しくなる。リンク機構101には、通常、複数の駆動手段や複数のセンサが設けられており、それらがそれぞれ通信を行う必要があるため、広い周波数帯域が求められる。そのためには、より波長の短いミリ波や、サブミリ波、テラヘルツ波によって無線通信を行う必要がある。
【0082】
一方、ミリ波などの波長の短い電波を用いた無線通信は、送受信アンテナ間での見通しが確保できない場合に、伝達する電波が大きく減衰し、通信が成立しないことがある。そのような場合には、リンク機構101を適切に動作させることができなるという問題がある。そのような問題を解決するため、本実施の形態によるリンク機構制御装置100では、基端側アンテナ105とリンク側アンテナ121~123とが見通しで通信できるように、すなわち、両アンテナ間に障害物のない状態で通信できるようにしている。
【0083】
制御部107は、アクセスポイント106による制御信号の送信を制御する。制御部107は、アクセスポイント106に、各リンク112~114に対応する制御信号をそれぞれ送信させてもよい。制御部107は、制御信号に基づいて、リンク機構101における各関節131~133を駆動させることになる。したがって、制御部107は、制御信号によってリンク機構101の動作を制御することになる。なお、制御部107は、例えば、その送信の制御を、リンク機構101から送信される、センサによるセンシング結果(例えば、回転軸の変位)を用いたフィードバック制御によって行ってもよい。その場合には、制御部107は、各リンク112~114にから送信されたセンシング結果を、アクセスポイント106を介して受信し、それを用いて、アクセスポイント106を介した制御信号の送信を行ってもよい。なお、制御信号の伝達経路が有線から無線になった以外は、制御部107による制御の内容は従来のリンク機構の制御と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0084】
リンク側アンテナ121~123は、それぞれリンク112~114に設けられた通信手段と接続されており、リンク側アンテナ121~123で受信された信号は、その通信手段に渡されて、各リンク112~114における各関節131~133の駆動等の制御等に用いられることになる。各リンク112~114が有する制御回路は、センサによって取得されたセンシング結果を、通信手段やリンク側アンテナ121~123を介して、基端側アンテナ105に無線送信してもよい。また、各リンク112~114から送信される信号は、その通信手段及び各リンク側アンテナ121~123を介して送信され、基端側アンテナ105で受信されることになる。基端側アンテナ105で受信された信号は、アクセスポイント106を介して制御部107に渡され、その信号に応じた制御等が行われることになる。本実施の形態では、基端側アンテナ105からリンク側アンテナ121~123への信号の送信と、逆方向の信号の送信とがそれぞれ行われる場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。基端側アンテナ105からリンク側アンテナ121~123への信号の送信のみが行われてもよい。この場合には、例えば、基端側アンテナ105から各リンク側アンテナ121~123に、各関節131~133の回転軸の変位に関する指示が送信され、その指示に応じて、各リンク112~114において、駆動手段に関するフィードバック制御が行われてもよい。
【0085】
ここで、基端側アンテナ105の配置について簡単に説明する。リンク機構101における各リンク112~114の動作に応じた各リンク112~114や各リンク側アンテナ121~123の移動の範囲については知ることができる。したがって、各リンク側アンテナ121~123の移動の範囲に対して、すべてのリンク側アンテナ121~123と見通し内通信を行うことができる位置を、基端側アンテナ105の位置として選択すればよいことになる。そのため、例えば、シミュレーション等を行って、リンク機構101のすべての動作について、各リンク側アンテナ121~123と基端側アンテナ105とが見通し内通信を行うことができているかどうかを確認することによって、基端側アンテナ105の位置を決定してもよい。例えば、
図7Aで示されるようにリンク側アンテナ121~123が存在する場合には、リンク側アンテナ121~123によって形成される円弧形状の中心側に基端側アンテナ105が存在するようにしてもよい。なお、リンク機構101のすべての動作について、各リンク側アンテナ121~123と見通し内通信を行うことができる基端側アンテナ105の位置が存在しない場合には、例えば、リンク側アンテナ121~123の少なくとも一つの位置を変更することによって、リンク機構101のすべての動作について、各リンク側アンテナ121~123と見通し内通信を行うことができる基端側アンテナ105の位置を見つけるようにしてもよい。
【0086】
次に、リンク機構制御装置100の動作について簡単に説明する。制御部107は、リンク機構101の各関節131~133を制御する際に、各関節131~133の駆動を制御するための制御信号を、アクセスポイント106に渡す。すると、アクセスポイント106は、それらの制御信号を、基端側アンテナ105を介して送信する。送信された制御信号は、リンク側アンテナ121~123によって受信され、各リンク112~114の通信手段を介して制御回路に渡される。そして、制御回路は、その制御信号に応じて駆動手段を制御する。また、各リンク112~114の制御回路は、ロータリエンコーダなどのセンサによるセンシング結果を取得し、通信手段、リンク側アンテナ121~123を介して送信する。それらのセンシング結果は、基端側アンテナ105で受信され、アクセスポイント106を介して制御部107に渡される。制御部107は、受け取ったセンシング結果を用いて、新たな制御信号を生成して送信する。このようにして、制御部107によってリンク機構101の動作が制御されることになる。
【0087】
以上のように、本実施の形態によるリンク機構制御装置100によれば、基端側アンテナ105とリンク側アンテナ121~123との間で、見通しで通信を行うことができる。したがって、ミリ波などの周波数の高い電波を用いて無線通信を行った場合でも、安定した通信を行うことができ、その結果として、リンク機構101の安定した動作を実現することができる。また、ミリ波のような周波数の高い電波を用いた場合には、幅広い周波数帯域を確保できるため、リンク機構101における各リンク112~114について、異なる周波数を用いた無線通信を行うこともでき、複数のリンク112~114について同時に制御を行うことも可能になる。
【0088】
また、幅広い周波数帯域を確保することができるため、複数のリンク機構101が隣接して設置されるような状況においても、リンク機構101ごとに異なる周波数の電波を用いた制御を行うこともできる。したがって、電波の干渉を引き起こさない状況において、複数のリンク機構101を同時に制御することも可能になる。また、基端側アンテナ105をリンク機構101の基端側の位置に設けることにより、基端側アンテナ105までの配線の距離を短くすることができるというメリットもある。
【0089】
このように、制御信号を無線で送受信することにより、関節部分において、制御信号を伝達するための配線が不要になる。そのため、配線に起因するトラブルを解消することができる。例えば、制御信号用の配線について、度重なる屈曲による断線事故や、歯噛みによる断線事故が起こらないようにすることができる。また、例えば、実施の形態1のように関節部分での無線給電も行うことによって関節部分でのすべての配線がなくなった場合には、可動範囲が限定されないことになり、関節において、一方向に任意の回数だけ回転することも可能になる。また、配線が少なくなることに応じて、リンク機構101を軽量化することができ、少ないトルクで各関節を回転させることができるようになり、省エネルギーにも寄与することになる。
【0090】
次に、本実施の形態によるリンク機構制御装置100の変形例について説明する。
【0091】
[複数の基端側アンテナ]
図7Aでは、基端側アンテナ105が1個である場合について説明したが、そうでなくてもよい。リンク機構制御装置100は、複数の基端側アンテナ105を用いて通信を行ってもよい。その場合には、例えば、
図8で示されるように、リンク機構制御装置100は、2個の基端側アンテナ105a、105bを用いて通信を行ってもよい。なお、基端側アンテナ105a、105bを特に区別しない場合には、「基端側アンテナ105」と呼ぶこともある。後述する説明においても同様であるとする。また、リンク機構制御装置100は、3個以上の基端側アンテナ105を用いて通信を行ってもよいことは言うまでもない。
【0092】
複数の基端側アンテナ105は、リンク機構101の各関節131~133が任意の角度である状態において、複数のリンク側アンテナ121~123のそれぞれが、複数の基端側アンテナ105の少なくともいずれかと見通しで通信できるように配置されることが好適である。なお、リンク機構101の各関節131~133が任意の角度である状態において、すべてのリンク側アンテナ121~123と見通しで通信できる基端側アンテナ105が少なくとも1つ、存在してもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合であっても、各リンク側アンテナ121~123は、基端側アンテナ105a及び基端側アンテナ105bの少なくとも一方とは見通しで通信できるのとする。
【0093】
このように、複数の基端側アンテナ105を用いることによって、リンク機構101の動作範囲が広がった場合であっても、各リンク側アンテナ121~123が、それぞれ基端側アンテナ105と見通しで通信できるようになる。例えば、
図8で示されるように、リンク機構101の基端が、ベース103に対して回転する場合でも、リンク機構101によって電波が遮蔽されることなく、いずれかの基端側アンテナ105と通信を行うことができる。また、
図9で示されるリンク機構101のように、より多くの関節やリンク111,112-1,112-2,113、また、それに応じたより多くのリンク側アンテナ121,122-1,122-2,123を有する場合であっても、基端側アンテナ105a,105bとリンク側アンテナ121,122-1,122-2,123とが見通しで通信できるようにすることができる。
【0094】
なお、3個以上の基端側アンテナ105を用いる場合には、例えば、
図10で示されるように、リンク機構101の基端側の端部の周囲に、複数の基端側アンテナ105a~105dが配置されてもよい。
図10は、ベース103を上方から見た平面図であり、リンク機構101とベース103との接合部を破線の円形状で示しており、リンク機構101の各リンク111~114については省略している。なお、複数の基端側アンテナ105a~105dは、
図10で示されるように、リンク機構101の基端側の端部の周囲に均等に配置されてもよい。また、複数の基端側アンテナ105をリンク機構101の基端側の端部の周囲に均等に配置する場合には、例えば、リンク機構101の基端側の端部の位置を中心とする円環形状において、複数の基端側アンテナ105が均等に配置されてもよい。また、
図10では、複数の基端側アンテナ105a~105dがそれぞれベース103上に配置されている場合について示しているが、上記したように、基端側アンテナ105a~105dは、ベース103以外の箇所に配置されてもよい。
【0095】
また、複数の基端側アンテナ105と、複数のリンク側アンテナ121~123との間での通信は、すべての基端側アンテナ105のみを用いて行われてもよく、または、一部の基端側アンテナ105を用いて行われてもよい。前者の場合には、通信にすべての基端側アンテナ105が用いられるため、アクセスポイント106は、すべての基端側アンテナ105によって信号を送信すればよく、また、すべての基端側アンテナ105によって受信された信号を受け取ればよい。一方、後者の場合には、一部の基端側アンテナ105のみが無線通信に用いられることになる。その場合に、無線通信に用いる基端側アンテナ105を選択する方法について、簡単に説明する。
【0096】
制御部107は、各関節131~133を制御するものであるため、各リンク側アンテナ121~123の位置を知ることができる。したがって、制御部107は、現在の位置にあるリンク側アンテナ121~123と見通し通信を実現できる基端側アンテナ105を特定することができる。したがって、制御部107は、特定した基端側アンテナ105を用いて、リンク側アンテナ121~123との通信を行うようにしてもよい。また、例えば、リンク機構101の各関節131~133の各角度と、各関節131~133がその各角度であるリンク機構101の各リンク側アンテナ121~123と見通し通信できる基端側アンテナ105を識別する情報とを対応付ける情報が構成されている場合には、制御部107は、その情報を用いることによって、現在の各関節131~133の角度に対応する基端側アンテナ105を特定し、その特定した基端側アンテナ105を用いて、リンク側アンテナ121~123との通信を行うようにしてもよい。一部の基端側アンテナ105を用いた通信が行われる場合には、通信に用いる基端側アンテナ105を特定する情報が制御部107からアクセスポイント106に渡され、アクセスポイント106は、その受け取った情報に応じた基端側アンテナ105を用いて通信を行ってもよい。
【0097】
[漏洩同軸ケーブルである基端側アンテナ]
基端側アンテナ105は、
図11で示されるように、リンク機構101の基端側を囲むように円環状に配置された漏洩同軸ケーブルであってもよい。
図11も、
図10と同様に、ベース103を上方から見た平面図であり、リンク機構101とベース103との接合部を破線の円形状で示しており、リンク機構101の各リンク111~114については省略している。このようにすることで、リンク機構101の基端がベース103上において回転した場合であっても、その回転の程度に関わらず、各リンク側アンテナ121~123と、基端側アンテナ105との間で見通しの通信を行うことができるようになる。
【0098】
[基端側アンテナの位置等の変更]
リンク機構制御装置100は、変更部108、及びアンテナ制御部109をさらに備えてもよい。変更部108は、基端側アンテナ105の指向性及び位置の少なくとも一方を変更できるものである。なお、ここでは、基端側アンテナ105の位置を変更する場合について主に説明する。変更部108が基端側アンテナ105の位置を変更する方法は問わない。
図12は、変更部108の一例を示す図である。
図12は、
図10、
図11と同様に、リンク機構101を省略したベース103の平面図である。
図12において、リンク機構101の基端の周囲に、基端側アンテナ105の配置された環状部材108aが、図中の両矢印の方向に回転可能に設けられている。環状部材108aは、モータ等の駆動手段108bによって回転駆動されるローラ108cによって回転される。
【0099】
アンテナ制御部109は、基端側アンテナ105が2以上のリンク側アンテナ121~123のそれぞれと見通しで通信できるように変更部108を制御する。アンテナ制御部109は、リンク機構101の各関節131~133の角度や、基端のベース103に対する角度に応じて、基端側アンテナ105の位置を制御するものとする。例えば、それらの各角度と、その角度に応じたリンク機構101の各リンク側アンテナ121~123と見通し内通信を行うことができる基端側アンテナ105の位置とを対応付ける対応情報を用いて、アンテナ制御部109は、現在のリンク機構101の各関節131~133の角度や基端のベース103に対する角度に対応する基端側アンテナ105の位置を取得し、基端側アンテナ105がその位置となるように変更部108を制御してもよい。このようにすることで、基端側アンテナ105が、各リンク側アンテナ121~123と見通しで通信できる位置となるようにすることができ、基端側アンテナ105と、リンク側アンテナ121~123との間での見通し内通信を実現することができる。
【0100】
なお、
図12では、位置の変更対象となる基端側アンテナ105が1個である場合について示しているが、そうでなくてもよい。2個以上の基端側アンテナ105の位置が、それぞれ別々に、または一括して、変更部108によって変更されてもよい。
【0101】
また、
図12で示される以外の構成によって、基端側アンテナ105の位置が変更されてもよいことは言うまでもない。変更部108は、例えば、レールと、そのレール上に摺動可能に設けられ、基端側アンテナ105が配置されたスライダと、そのスライダを移動させる移動手段とを備えていてもよい。そして、移動手段によってスライダを移動させることによって、基端側アンテナ105の位置が変更されてもよい。移動手段は、例えば、エアシリンダやソレノイド、ラックアンドピニオンとピニオンを駆動させる回転駆動手段、または、ボールねじとねじ軸を回転させる回転駆動手段等であってもよい。
【0102】
また、上記のように、変更部108は、基端側アンテナ105の指向性を変更してもよく、また、指向性と位置との両方を変更してもよい。基端側アンテナ105の指向性が変更される場合には、リンク側アンテナ121~123の方向により強度の高い電波が出力されるように、基端側アンテナ105の指向性が変更されることが好適である。指向性の変更は、例えば、基端側アンテナ105の向きや角度を変更することによって行われてもよく、または、基端側アンテナ105がアレイアンテナである場合には、位相等を制御することによって、指向性を変更してもよい。
【0103】
[リンク機構の内部における電波の伝搬]
本実施の形態では、基端側アンテナ105とリンク側アンテナ121~123との間での電波の送受信が、リンク機構101の筐体の外部において行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。電波の送受信は、リンク機構101の筐体の内部において行われてもよい。その場合には、リンク機構101は、駆動手段によって駆動される関節によって連結され、電波を反射する筐体を有する複数のリンク111~114を有していてもよい。また、リンク機構101は、
図13で示されるように、複数のリンク111~114における2以上のリンクの筐体の内部にそれぞれ設けられた2以上のリンク側アンテナ121~123を有していてもよい。
【0104】
アクセスポイント106は、リンク機構101の基端側の位置に設けられた、基端側アンテナ105から複数のリンク側アンテナ121~123のそれぞれに、筐体内を伝搬する電波を用いて制御信号を送信する。また、アクセスポイント106は、リンク側アンテナ121~123から送信された信号を、基端側アンテナ105を介して受信してもよい。基端側アンテナ105も、リンク機構101の筐体の内部に設けられていることが好適である。なお、電波がリンク機構101の内部を伝搬する以外は、リンク機構制御装置100の各構成及び動作は、上記説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0105】
この場合には、リンク機構101の筐体は、電波を反射するものであることが好適である。そのため、筐体は、例えば、金属製であってもよく、または、表面に導電性塗料が塗布されたものであってもよい。そのような筐体では、電波を内部に閉じ込めることができ、基端側から先端側に電波が伝搬しやすくなる。また、この場合にも、基端側アンテナ105とリンク側アンテナ121~123との間で送受信される電波は、ミリ波やサブミリ波、テラヘルツ波などの波長の短い電波であることが好適である。波長の短い電波は、反射による電波伝搬が生じやすいからである。
【0106】
なお、反射によってリンク111~114の内部を電波が伝搬しやすくするため、各関節の内部には、関節によって連結されている2個のリンクの内部空間をつなぐ空間が設けられており、各関節において電波が伝搬するようになっていることが好適である。また、各関節の箇所に電波を中継する中継器を設けるようにしてもよい。その中継器を用いることによって、リンク機構101の筐体内部において、マルチホップで基端側と先端側との間で無線通信が行われるようにしてもよい。
【0107】
このように、リンク機構101の筐体内部において電波が伝搬する場合には、外部に電波が漏れにくくなるため、複数のリンク機構101が隣接しているような状況であっても、リンク機構101間での電波干渉が発生しにくくなるという特長もある。
【0108】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上より、本発明の一態様によるリンク機構制御装置によれば、複数のリンクが関節によって連結されたリンク機構における配線を低減することができるという効果が得られ、多関節のロボットアーム等のリンク機構を制御する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0110】
100 リンク機構制御装置
101 リンク機構
105、105a~105d 基端側アンテナ
106 アクセスポイント
107 制御部
108 変更部
109 アンテナ制御部
111、112、112-1、112-2、113、114 リンク
121、122、122-1、122-2、123 リンク側アンテナ