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  • 特許-燃料電池用セパレータの処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータの処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0206 20160101AFI20240423BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M8/0206
C23C14/58 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020057381
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157963
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守谷 彰人
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】淺 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 利規
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063903(JP,A)
【文献】特開2006-012455(JP,A)
【文献】特開2007-073432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
C23C 14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータの処理装置であって、
収容されているコイル状に巻かれた長尺帯状のチタン基材を搬送ローラによって巻きだし、予め定められた閾値以下の低酸素分圧の環境下において、予め定められた範囲内の温度で前記チタン基材に熱処理を行い、前記チタン基材を巻き取る軽酸化処理手段を備え、
前記軽酸化処理手段は、前記軽酸化処理手段において真空排気を行う排気口を備え、
前記排気口は、前記軽酸化処理手段内に配置された前記チタン基材よりも下方となる前記処理装置の下面であり、前記コイル状に巻かれた前記チタン基材と巻き取られた前記チタン基材との間に配置されている、処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池用セパレータの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用セパレータの処理装置として、金属からなる基材の表面に導電性の膜を形成する表面処理を行うものが知られている。特許文献1には、以下のようにして導電性の膜を形成する技術が記載されている。カーボンブラックと、500度以下の加熱により残渣なく分解する樹脂と、を基材に塗布する。炉内で、低酸素分圧下で熱処理を行う軽酸化処理工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-63903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軽酸化処理工程において、樹脂が揮発して汚染物質であるガスが発生する。このガスを除去するために真空排気が行われる。真空排気を行う排気口が炉の上部にある場合、汚染物質が炉の上部に堆積する場合がある。この場合、汚染物質が落下して、炉内に配置されている基材に付着するおそれがある。そのため、基材が汚染されることを抑制できる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態によれば、燃料電池用セパレータの処理装置が提供される。この処理装置は、収容されているコイル状に巻かれた長尺帯状のチタン基材を搬送ローラによって巻きだし、予め定められた閾値以下の低酸素分圧の環境下において、予め定められた範囲内の温度で前記チタン基材に熱処理を行い、前記チタン基材を巻き取る軽酸化処理手段を備え、前記軽酸化処理手段は、前記軽酸化処理手段において真空排気を行う排気口を備え、前記排気口は、前記軽酸化処理手段内に配置された前記チタン基材よりも下方となる前記処理装置の下面であり、前記コイル状に巻かれた前記チタン基材と巻き取られた前記チタン基材との間に配置されている。
【0006】
本開示の一形態によれば、燃料電池用セパレータの処理装置が提供される。この処理装置は、チタン基材を収容し、予め定められた閾値以下の低酸素分圧の環境下において、予め定められた範囲内の温度で前記チタン基材に熱処理を行う軽酸化処理手段を備える。前記軽酸化処理手段は、前記軽酸化処理手段において真空排気を行う排気口を備え、前記排気口は、前記軽酸化処理手段内に配置された前記チタン基材よりも下方となる前記処理装置の下面に配置されている。この形態の処理装置によれば、軽酸化処理手段における真空排気を行う排気口はチタン基材よりも下方となる処理装置の下面に配置されているため、汚染物質が軽酸化処理手段内の上部に堆積することを抑制でき、基材が汚染されることを抑制できる。
【0007】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、処理装置を用いて処理した燃料電池セパレータや、軽酸化処理装置等の態様で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】表面処理の一例を示す工程図である。
図2】軽酸化処理工程を行う処理装置の概略図である。
図3】処理装置の比較例の概略図である。
図4】本実施形態と比較例の不良率を比較したグラフである。
図5】他の実施形態における処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
図1は、本実施形態における燃料電池用セパレータの処理装置を用いた表面処理の一例を示す工程図である。表面処理とは、燃料電池用セパレータとして用いられるチタン基材の表面に導電性の膜を形成する処理である。本実施形態において、「チタン基材」とは、純チタンまたはチタン合金からなる基材である。
【0010】
まず、ステップS100において、圧延工程が行われる。「圧延工程」とは、チタン基材を圧延(プレス)する工程である。圧延工程によって、チタン基材は、例えば、0.05~1mm程度の厚さになる。本実施形態において、圧延工程前後におけるチタン基材は、コイル状に巻かれた長尺帯状である。チタン基材はこれに限らず、所定の大きさに裁断した板状であってもよい。
【0011】
次に、ステップS110において、焼鈍工程が行われる。「焼鈍工程」とは、ステップS100で圧延したチタン基材を焼き鈍して、洗浄する工程である。焼鈍工程によって、チタン基材は軟化する。
【0012】
続いて、ステップS120において、塗工工程が行われる。「塗工工程」とは、ステップS110で焼鈍したチタン基材の表面にカーボンブラックとバインダー樹脂とを塗布する工程である。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、プリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等を単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0013】
最後に、ステップS130において、軽酸化処理工程が行われる。「軽酸化処理工程」とは、ステップS120においてカーボンブラックとバインダー樹脂とを塗工したチタン基材に、予め定められた閾値以下の低酸素分圧の環境下において、予め定められた範囲内の温度で熱処理を行う工程である。この処理において、チタン基材の表面に酸化チタン層が形成される。「予め定められた閾値」とは、カーボンブラックの酸化分解が過度にならない分圧値であり、予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。「予め定められた範囲」とは、バインダー樹脂が分解される温度の範囲であり、予めシミュレーションや実験を行うことにより定めることができる。つまり、軽酸化処理工程においては、カーボンブラックの燃焼が起こりにくく、かつ、酸化チタンの形成が起こる条件となる酸素分圧値と温度が採用される。
【0014】
図2は、軽酸化処理工程を行う処理装置100の概略図である。処理装置100は、軽酸化処理工程を行う軽酸化処理手段101を備える。図示の便宜上省略されているが、軽酸化処理手段101は、軽酸化処理手段101以外に、電源や排気装置等を備える。軽酸化処理手段101は、チタン基材Tfを収容し、処理する炉であり、複数の搬送ローラ10と、ヒータ20と、排気口30とを備える。
【0015】
搬送ローラ10は、コイル状のチタン基材Tsからチタン基材Tfを巻きだし、図2に示す白抜き矢印A方向に搬送する。ヒータ20は、チタン基材Tfに予め定められた範囲内で熱処理を行う。本実施形態において、ヒータ20は、搬送ローラ10と、巻き取られたチタン基材Teとの間に配置されている。排気口30は、軽酸化処理手段101の炉内から真空排気を行う。真空排気により、軽酸化処理手段101の炉内が、所定の酸素分圧の環境となる。排気口30は、軽酸化処理手段101内に配置されたチタン基材Ts、Tf、Teよりも下方となる処理装置100の下面に配置されている。本実施形態において、排気口30は、軽酸化処理手段101の下面に配置されている。各装置図において、黒矢印Bで上方向を示している。軽酸化処理手段101においては、予め定められた閾値以下の低酸素分圧の環境下において、予め定められた範囲内の温度で、チタン基材Tfに熱処理が行われる。
【0016】
図3は、処理装置の比較例の概略図である。比較例における処理装置100Aは、排気口30を軽酸化処理手段101内に配置されたチタン基材Tfよりも上方に備える点が、本実施形態と異なる。比較例において、バインダー樹脂が揮発して発生する汚染物質が炉の上部に堆積する場合がある。この場合、汚染物質が落下して、炉内に配置されているチタン基材Tfに付着するおそれがある。
【0017】
図4は、本実施形態と比較例の不良率を比較したグラフである。「不良率」とは、軽酸化処理工程(図1、ステップS130)を行った後のチタン基材Tfを1m単位の区画に分割し、チタン基材Tfの全長における、直径0.7mm以上の汚染(以下、「不良」とも言う)が含まれていた区画の長さの割合である。不良の検出は画像解析によって行われる。図4に示すように、本実施形態における不良率は比較例における不良率よりも小さい。つまり、本実施形態では、チタン基材Tfの汚染が抑制されている。
【0018】
以上で説明した本実施形態の燃料電池用セパレータの処理装置100によれば、軽酸化処理手段101における真空排気を行う排気口はチタン基材Tfよりも下方となる処理装置100の下面に配置されている。このため、汚染物質が軽酸化処理手段101内の上部に堆積することを抑制でき、チタン基材Tfが汚染されることを抑制できる。
【0019】
B.他の実施形態:
(B1)図5は、他の実施形態における処理装置100Bの説明図である。上記実施形態において、ヒータ20は、搬送ローラ10と、巻き取られたチタン基材Tfとの間に配置されている。この代わりに、ヒータ20は、図5に示すように、搬送ローラ10同士の間に設けられていてもよい。つまり、ヒータ20は、軽酸化処理手段101内の上部に水平方向に沿って設けられていてもよい。これにより、軽酸化処理手段101の炉における上下方向の長さを短くすることができる。そのため、軽酸化処理手段101を小型化することができる。また、軽酸化処理手段101を小型化できるため、軽酸化処理手段101の炉内の排気効率を向上することができる。
【0020】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
10…搬送ローラ、20…ヒータ、30…排気口、100、100A、100B…処理装置、101…軽酸化処理手段、Ts、Te、Tf…チタン基材
図1
図2
図3
図4
図5