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特許7477345壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
E04G5/04 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020064038
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161739
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
(72)【発明者】
【氏名】斧出 雄太
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314881(JP,A)
【文献】特開2005-265318(JP,A)
【文献】特開2016-055420(JP,A)
【文献】特開2019-044482(JP,A)
【文献】特開2018-003380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G1/00-7/34
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外壁パネルが並べて配置される外壁に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具であって、
前記複数の外壁パネル間の間隙において前記外壁パネルに固定される基部と、
前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びるように前記基部に連続して設けられ、前記壁つなぎ部材と連結する連結部と、を備え、
前記基部には、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネルに固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され
前記基部と前記連結部とにまたがって延びる補強リブが形成されていることを特徴とする壁つなぎ用治具。
【請求項2】
前記連結部の自由端側の端部には、切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁つなぎ用治具。
【請求項3】
前記連結部は、前記壁つなぎ部材の先端に設けられた取付け部材が連結される連結孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁つなぎ用治具。
【請求項4】
複数の外壁パネルが並べて配置される外壁に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具であって、
前記複数の外壁パネル間の間隙において前記外壁パネルに固定される複数の基部と、
前記基部に連続して前記基部のそれぞれから垂直に延びる複数の延長部と、
複数の前記延長部に亘って配設され、前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びる少なくとも一つの連結部と、を備え、
前記基部には、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネルに固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され、
前記連結部は、前記複数の外壁パネルの間に形成された目地に沿って延びる長穴が形成され、前記長穴に沿ってスライドし前記壁つなぎ部材の先端と連結するスライド部材を保持することを特徴とする壁つなぎ用治具。
【請求項5】
複数並べて配置されることにより外壁を構成する外壁パネル部材であって、
前記外壁パネル部材は、
前記外壁パネル部材に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具が固定された外壁パネルを有し、
前記壁つなぎ用治具は、
複数の前記外壁パネル部材間の間隙において前記外壁パネルに固定される基部と、
前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びるように前記基部に連続して設けられ、前記壁つなぎ部材と連結する連結部とを備え、
前記基部は、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネル部材に固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され
前記基部と前記連結部とにまたがって延びる補強リブが形成されていることを特徴とする外壁パネル部材。
【請求項6】
前記外壁パネル部材の縁部に配設されるフレームには、対向するフレームの一方のフレームの面に沿って延びる長穴が形成されており、
前記長穴に沿ってスライド可能に設けられ、前記壁つなぎ用治具の前記基部と連結して前記壁つなぎ用治具を前記長穴に沿った所望の位置で固定可能なスライド部材を備えることを特徴とする請求項に記載の外壁パネル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁つなぎ用治具及び外壁パネル部材に係り、特に、足場から延びる壁つなぎ部材を建物の壁に接続するための壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建設中の建物の周囲に設けられた仮設足場の安定化を図るために、仮設足場と建物の躯体(壁等)とをつなぐ壁つなぎ部材が利用されている。例えば特許文献1には、図14に示すように、壁つなぎ部材の先端の取付け用ボルトBが、外壁パネル130の間に形成された横目地121を通して外壁パネル130のフレーム132の張り出し部132aに直接取り付けられる。取付け用ボルトBは横目地121を通って固定されるため、外壁の外観に影響を与えることなく壁つなぎ部材を外壁パネル130に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された取付け技術では、取付け用ボルトBが挿入されるボルト孔132bを形成するために、予め工場においてフレーム132にねじ加工及び穴加工をする必要があった。そのため、製造工程が増加し外壁パネル130の生産負荷が高いことが課題となっていた。
【0005】
また、仮設足場に対するさまざまな外力(例えば、足場板にかかる荷重など)が、壁つなぎ部材の先端の取付け用ボルトBを介して外壁パネル130との接続部分である張り出し部132aに加わることとなる。これによるフレーム132の変形等を防止し、仮設足場を堅固に固定するため、接続部分の強度の向上が望まれていた。
また、フレーム132の厚みを増すことよって強度の向上を図ることも考えられるが、上下に並設される外壁パネル130間の隙間内に納めなければならないため、寸法上の制約があった。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、外壁パネルの生産負荷を上げることなく、建造中に取付け可能な壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材を提供することにある。
併せて、壁つなぎ用治具の強度を高めることで仮設足場を堅固に固定し、隣接する外壁パネル間の隙間内に配設可能な壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の壁つなぎ用治具によれば、複数の外壁パネルが並べて配置される外壁に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具であって、前記複数の外壁パネル間の間隙において前記外壁パネルに固定される基部と、前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びるように前記基部に連続して設けられ、前記壁つなぎ部材と連結する連結部と、を備え、前記基部には、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネルに固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され、前記基部と前記連結部とにまたがって延びる補強リブが形成されていることにより解決される。
【0008】
外壁パネルのフレームとは別部材の壁つなぎ用治具を用いるため、外壁パネルを工場で作製する際、外壁パネルのフレームに壁つなぎ部材の先端(取付け用ボルト)を取り付けるための穴あけ加工及びねじ加工をする必要がない。
また、壁つなぎ用治具は、取付け用ボルトを介して連結部に加わる外力に対して十分な強度を確保するために必要な板厚及び幅寸法を有しているため仮設足場を堅固に固定することができる。そして基部には、締結部材が挿通孔に挿通されたときに締結部材の頭部が収容される凹部が形成されているため、壁つなぎ用治具を隣接するパネル間に配設することが可能である。
【0010】
また、前記連結部の自由端側の端部には、切欠きが形成されていると好適である。これにより、壁つなぎ用治具を外壁パネルに固定した際に壁つなぎ用治具が他部材と干渉することを回避することができる。
【0011】
また、前記連結部は、前記壁つなぎ部材の先端に設けられた取付け部材が連結される連結孔が形成されていると好適である。これにより、壁つなぎ部材と壁つなぎ用治具とを連結することができる。
【0012】
また、前記課題は、本発明の壁つなぎ用治具によれば、複数の外壁パネルが並べて配置される外壁に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具であって、前記複数の外壁パネル間の間隙において前記外壁パネルに固定される複数の基部と、前記基部に連続して前記基部のそれぞれから垂直に延びる複数の延長部と、複数の前記延長部に亘って配設され、前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びる少なくとも一つの連結部と、を備え、前記基部には、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネルに固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され、前記連結部は、前記複数の外壁パネルの間に形成された目地に沿って延びる長穴が形成され、前記長穴に沿ってスライドし前記壁つなぎ部材の先端と連結するスライド部材を保持することにより解決される。
【0013】
これにより、外壁パネルのフレームとは別部材の壁つなぎ用治具を用いるため、外壁パネルの生産負荷を上げることなく、建造中に取り付け可能な壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材を提供することができる。そして、壁つなぎ用治具は、その強度の向上により仮設足場を安定的に支えるとともに、隣接する外壁パネル間の隙間に配設可能となる。
また、連結部のスライド部材をスライドさせることにより、壁つなぎ部材を外壁パネルに固定することができるため、仮設足場の支柱を好適な位置に設置した後に、壁つなぎ部材を壁つなぎ用治具に連結することができる。
【0014】
前記課題は、本発明の外壁パネル部材によれば、複数並べて配置されることにより外壁を構成する外壁パネル部材であって、前記外壁パネル部材は、前記外壁パネル部材に、壁つなぎ部材を介して足場を固定するときに用いられる壁つなぎ用治具が固定された外壁パネルを有し、前記壁つなぎ用治具は、複数の前記外壁パネル部材間の間隙において前記外壁パネルに固定される基部と、前記外壁パネルのパネル面に対して平行に延びるように前記基部に連続して設けられ、前記壁つなぎ部材と連結する連結部とを備え、前記基部は、前記壁つなぎ用治具を前記外壁パネル部材に固定する締結部材が挿通される挿通孔と、前記締結部材が前記挿通孔に挿通されたときに前記締結部材の頭部が収容される凹部と、が形成され、前記基部と前記連結部とにまたがって延びる補強リブが形成されていることにより解決される。
【0015】
外壁パネル部材は、外壁パネルのフレームとは別部材の壁つなぎ用治具を用いるため、外壁パネルを工場で作製する際、壁つなぎ部材の先端(取付け用ボルトB)を取り付けるために、外壁パネルのフレームに穴あけ加工及びねじ加工をする必要がない。
また、壁つなぎ用治具は、取付け用ボルトを介して連結部に加わる外力に対して十分な強度を確保するために必要な板厚及び幅寸法を有しているため仮設足場を堅固に固定することができる。そして基部には、締結部材が挿通孔に挿通されたときに締結部材の頭部が収容される凹部が形成されているため、壁つなぎ用治具を隣接する外壁パネル部材間に配設することが可能である。
【0016】
また、前記外壁パネル部材の縁部に配設されるフレームには、対向するフレームの一方のフレームの面に沿って延びる長穴が形成されており、前記長穴に沿ってスライド可能に設けられ、前記壁つなぎ用治具の前記基部と連結して前記壁つなぎ用治具を長穴に沿った所望の位置で固定可能なスライド部材を備えると好適である。これにより、壁つなぎ部材を取り付ける仮設足場の支柱と、基部が取り付けられる位置がずれている場合であっても、壁つなぎ用治具をスライドして固定することで、支柱と外壁パネルとを接続することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材によれば、外壁パネルの生産負荷を上げることなく、建造中に取り付け可能な壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材を提供することができる。
また、壁つなぎ部材をより高い強度で保持することにより仮設足場を安定的に支え、隣接する外壁パネル間の隙間に配設可能な壁つなぎ用治具及び該治具を備えた外壁パネル部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】壁つなぎ部材の使用状態を説明する図である。
図2】外壁パネルに壁つなぎ用治具を取りつけ、仮設足場から延びる壁つなぎ部材と連結した状態を示す断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】壁つなぎ用治具の斜視図である。
図5】壁つなぎ用治具を外壁パネルのフレームに取り付ける状態を示す分解斜視図である。
図6】壁つなぎ用治具を外壁パネルのフレームに取り付けた状態を示す斜視図である。
図7】(a)~(e)は、壁つなぎ用治具を介して仮設足場を外壁パネルに固定する手順を示す図である。
図8】(a)~(d)は、壁つなぎ用治具を介して仮設足場を外壁パネルに固定する別の手順を示す図である。
図9】壁つなぎ用治具の別例を示す斜視図である。
図10】フレームの長手方向に移動可能なスライド部材を用いて仮設足場を外壁パネルに固定する壁つなぎ用治具を示す斜視図である。
図11】水平方向に設置した連結部を用いて仮設足場を外壁パネルに固定する壁つなぎ用治具を示す斜視図である。
図12】鉛直方向に設置した連結部を用いて仮設足場を外壁パネルに固定する壁つなぎ用治具を示す斜視図である。
図13】壁つなぎ用治具を移動可能に取り付けるためフレームに長穴が形成された外壁パネル部材の斜視図である。
図14】従来の仮設足場の取付け構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図1図8を用いて説明する。また、以降では、仮設足場Fと建物との接続を、住宅(具体的には戸建住宅、又はアパート・マンション等の集合住宅)を建物の一例に挙げて説明することとする。ただし、住宅は建物の一例であり、本発明は他の建物、例えば商業ビル、工場内の建屋、店舗等と仮設足場Fとの接続においても利用可能である。
【0020】
なお、以下の説明において「鉛直方向」は、建物である住宅の高さ方向に相当する方向であり、「水平方向」は、住宅の桁行方向又は梁間方向に相当する方向である。
【0021】
まず、仮設足場F及び壁つなぎ部材10について、図1を参照しながら説明する。仮設足場Fは、足場板Ftと、足場板Ftを支持する支柱Fbとを有し、建物の外壁20から所定の距離を隔てた位置に壁つなぎ部材10によって固定される。
壁つなぎ部材10は、基端部11と中間部12と、先端部13とを有する。基端部11はねじ孔が形成された筒状の部材であり後述する取付け用ボルトBが螺合される。中間部12は、長尺ねじとこれに螺合する長尺ナットとからなり、長尺ナットと長尺ねじの一方を他方に対して回転させることによって、伸縮可能に構成されている。これにより、支柱Fbを建物の外壁20に対して適切な距離に固定することができる。先端部13は、支柱Fbを構成する単管パイプに着脱可能な状態で固定されるものであり、例えばパイプクランプが用いられる。
【0022】
上述の壁つなぎ部材10を取り付けるためには、住宅の外壁20のうち、仮設足場Fが設置された際に、当該仮設足場Fと対向する側にある外壁20の所定箇所に取付け用ボルトB(壁つなぎ部材10の先端)が取り付けられる。この取付け用ボルトBは、壁つなぎ部材10を取り付けるためのものであり、本実施形態では両端にねじ部を有するスタッドボルトによって構成されている。
【0023】
住宅の外壁20は、鉛直方向において互いに隣り合う複数の外壁パネル30から構成され、外壁パネル30同士の間には、水平方向に沿って延びる隙間(横目地21)が形成される。
取付け用ボルトBは、その一方の端部(先端部分)が横目地21の奥側(屋内側)の位置において外壁パネル30に固定されるとともに、他方の端部(後端部分)が外壁パネル30のパネル面より屋外側に突出した状態で固定される。具体的には、取付け用ボルトBは、その先端部分が屋内側において後述する壁つなぎ用治具40と連結し、屋外側に突出した後端部分は、壁つなぎ部材10の基端部11が螺合する。これにより、壁つなぎ部材10が外壁パネル30に対して取り付けられ、仮設足場Fと外壁20との間の距離が固定されることで、仮設足場Fを外壁20に対して堅固に接続することが可能となる。
【0024】
次に、外壁パネル30の構造について図2を参照しながら説明する。外壁パネル30は、本体部31と、本体部31を保持するフレーム32とを有する。フレーム32は鋼材であり、厳密にはリップ溝型鋼(C形鋼)からなる枠体で、外壁パネル30の縁部に配置される。フレーム32は、C形鋼に設けられた一対の張り出し部32aの間に本体部31の一部(第二断熱層31d)を挟み込んだ状態で本体部31を保持している。
【0025】
本体部31は、外壁パネル30のうち、フレーム32以外の部分であり、通気性を備えた外張断熱用の構造となっている。本体部31は、屋外に面する面材31aと、通気層31bと、高密度グラスウールボードからなる第一断熱層31cと、高性能グラスウールからなる第二断熱層31dとを有する。後述するように、通気層31bには、面材31aと第一断熱層31cとの間に介在するスペーサ31eが配設されている(図5及び図6を参照)。
【0026】
面材31aは、正面視で略矩形状の板材で具体的にはサイディングボードから構成されている。外壁パネル30において、面材31aは、面材31aの上端がフレーム32の上端よりもやや下がっており、面材31aの下端が、フレーム32の下端よりもやや下がった状態で取り付けられている。このため、鉛直方向において互いに隣り合う二つの外壁パネル30の間に形成された横目地21の奥側には、下側の外壁パネル30のフレーム32の上端部分が位置することになる。
【0027】
フレーム32の一対の張り出し部32aのうち、屋内側に位置する張り出し部32aには、屋内側からパネル固定金物50がボルト止めされている。
【0028】
続いて、壁つなぎ用治具40について図2から図6を参照しながら説明する。本実施形態の壁つなぎ用治具40は、取付け用ボルトB(壁つなぎ部材10の先端)を、外壁パネル30に対して接続するための接続用金具である。具体的には、図2及び図3に示すように、壁つなぎ用治具40は、外壁パネル30の縁部に配置されたフレーム32の上面に重なるように固定されるともに、屋外側から挿入された取付け用ボルトBと連結される。
【0029】
図4に示すように、壁つなぎ用治具40は、基部41と連結部42とにより断面がL字状に形成されており、取付け用ボルトBを介して連結部42に印加される外力に対して十分な強度を確保するために必要な板厚及び幅寸法を有している。つまり、壁つなぎ用治具40は、フレーム32の上面に接合する接合面を有する基部41と、外壁パネル30のパネル面に対して平行に延びるように基部41に連続して設けられ、取付け用ボルトB(壁つなぎ部材10の先端)と連結する連結部42とを備える。
【0030】
基部41には挿通孔41aが形成されているとともに、フレーム32の上面には締結用ボルト孔33が形成されている。そして締結用ボルト43(締結部材)を挿通孔41a及び締結用ボルト孔33に挿通することによって基部41はフレーム32の上面と接合するように固定される(図5、及び図6参照)。
【0031】
また、図4に示すように、基部41の上面であって挿通孔41aの周囲には、締結用ボルト43の頭部43aを収容可能な座彫り部41bが形成されている。座彫り部41bは、円形の底面41cと、この底面41cに連続した円筒形状の側面41dとを有し、基部41の上面に対して下方に窪んだ凹部を形成している。
これにより、基部41がフレーム32に対して固定される際に、締結用ボルト43の頭部43aが座彫り部41bに収容された状態で締結されるため、基部41の上面に対する締結用ボルト43の頭部43aの突出量が抑制される(図3及び図6参照)。
本実施形態において、基部41が完全にフレーム32に対して締結されたときに、頭部43aは基部41の上面に対してわずかに突出した状態となるが、座彫り加工の深さを変更することによって頭部43aを基部41の上面から突出しないようにしてもよい。
【0032】
また本実施形態において、円形形状を有する底面41cの直径は、締結用ボルト43の頭部43aの頭径(例えば、締結用ボルト43が六角ボルトの場合、六角形の対角距離)の1.2倍以上の寸法を有している。これにより、締結用ボルト43の締め付け時に、締結用ボルト43の締め付け用工具と座彫り部41bの側面41dとの干渉が回避されるため、締結用ボルト43を座彫り部41bに収容した状態で容易に締め付けることが可能となる。
【0033】
連結部42には、取付け用ボルトB(取付け部材)が挿入される連結孔42aが形成されている。連結孔42aは、その内部においてねじきりされてもよい。また、連結孔42aにあわせて取付け用ボルトBと螺合するナットを用いることもできる。
図3に示すように、連結部42と、フレーム32の屋外側に位置する張り出し部32aとの間には、第一断熱層31cが挟まれる。フレーム32に対して直接、取付け用ボルトBを締結する場合には、第一断熱層31cにボルトを通す挿通穴をあける必要があるが、壁つなぎ用治具40を用いれば、第一断熱層31cに貫通孔をあけることなく壁つなぎ部材10を固定することができる。
【0034】
図4に示すように、連結部42の自由端である下端には、一対の切欠き42b、42bと、一対の切欠き42b、42bに挟まれた位置に舌片42cが形成されている。図6に示すように、切欠き42bは、壁つなぎ用治具40をフレーム32に対して固定した際に連結部42とスペーサ31eとの干渉を回避する位置及び形状に形成されている。ここでスペーサ31eは、図5及び図6に示すように、面材31aと第一断熱層31cとの間に介在し、壁つなぎ用治具40の取り付け位置の近傍に配設される。
【0035】
また、一対の切欠き42b、42bに挟まれる位置から舌片42cが連結部42の下方に延出している。これにより、壁つなぎ用治具40をフレーム32に対して固定した状態で壁つなぎ用治具40と外壁パネル30との間の接合面を広くすることができる。したがって壁つなぎ用治具40は、外壁パネル30に対してより堅実に固定され、仮設足場Fの安定化を図ることができる。
本実施形態において、連結部42の下端に一対の切欠き42b、42bを形成することとして説明したが、壁つなぎ用治具40をフレーム32に対して固定した際にスペーサ31eと干渉することがなければ、切欠き42bを形成しなくてもよい。また、切欠き42bを一つのみ形成してもよい。
【0036】
また、図3に示すように、壁つなぎ用治具40の連結部42は、基部41がフレーム32に固定されたときに、隣り合う外壁パネル30の間に形成された横目地21の奥側に配置される。これにより、外観を損ねることなく壁つなぎ部材10を外壁20に対して接続させることができる。
【0037】
次に、壁つなぎ用治具40を介して仮設足場Fを外壁20に固定する手順の一例について図7(a)~図7(e)を用いて説明する。まず、図7(a)及び図7(b)に示すように、壁つなぎ用治具40が下階の外壁パネル30のフレーム32の上面に締結用ボルト43を用いて固定される。上述したように、壁つなぎ用治具40の基部41には座彫り部41bが形成されており、締結用ボルト43の頭部43aは座彫り部41b内に収容される。
したがって、締結用ボルト43によって壁つなぎ用治具40をフレーム32の上面に固定した状態において、締結用ボルト43の頭部43aが基部41の上面から大きく突出することがない。これによって、図7(c)に示すように、上階の外壁パネル30が取り付けられたとき、上階の外壁パネル30の底面は、締結用ボルト43の頭部43aと干渉しない(図3を参照)。
【0038】
続いて、図7(d)に示すように、取付け用ボルトBが、壁つなぎ用治具40の連結孔42aに差し込まれ取り付けられる。取付け用ボルトBは壁つなぎ部材10を介して仮設足場Fの支柱Fbに接続される。これにより、壁つなぎ部材10及び壁つなぎ用治具40を介して、仮設足場Fは外壁20から所定の距離に固定される。このとき、仮設足場Fに対する外力が、取付け用ボルトBを介して壁つなぎ用治具40の連結部42に作用することとなるが、壁つなぎ用治具40は、外力に対して十分な強度を確保するために必要な板厚及び幅寸法を有しているため、変形等の損傷が発生することはない。
最後に建物が完成すると、図7(e)に示すように、仮設足場Fが撤去された後、壁つなぎ用治具40から取付け用ボルトBが外される。
【0039】
壁つなぎ用治具40の取り付け方法の別例を、図8(a)~図8(d)に示す。本例及び以降の変形例では、上述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図8(a)及び図8(b)に示すように壁つなぎ用治具40に予め取付け用ボルトBを取り付けた状態で、壁つなぎ用治具40が下階の外壁パネル30に取り付けられる。その後、上階の外壁パネル30が設置される。建物が完成して仮設足場Fが撤去された後、壁つなぎ用治具40から取付け用ボルトBが外される。
【0040】
図9に本発明の壁つなぎ用治具40の変形例を示す。上述した実施形態では、壁つなぎ用治具40は、連結部42に加わる外力に対して十分な強度を確保するために必要な板厚及び幅寸法を有していることとして説明した。これに対して、本変形例に係る壁つなぎ用治具40は、基部41及び連結部42にまたがって延びる一対の補強リブ44、44が形成されているとともに、幅広の寸法を有している。これにより、壁つなぎ用治具40は、連結部42に加わる外力に対して必要な強度を確保するように構成されている。
本変形例において、補強リブ44はライン状に延びる一対の屈曲部によって形成されている。しかし、必要な強度を確保することができれば、ライン状に屈曲部を形成することに限定されない。例えば、壁つなぎ用治具40の上面にライン状の厚肉部を形成することによって補強リブ44を形成してもよい。
【0041】
図10に本発明の壁つなぎ用治具40の第二の変形例を示す。本変形例に係る壁つなぎ用治具40は、フレーム32の両端部のそれぞれに基部41(図10の例では二つ)を固定し、それぞれの基部41から延びる延長部47と一体に構成される長尺の連結部42が配設されている。そして、長尺の連結部42には外壁パネル30の間に形成された横目地21に沿って延びる長穴45が形成される。さらに、外壁パネル30と連結部42の間には、長穴45に沿ってスライド可能なスライド部材46が設けられており、取付け用ボルトBは、スライド部材46に対して固定されるように構成されている。
【0042】
壁つなぎ用治具40は、仮設足場Fの支柱Fbから外壁20に向かって延びる壁つなぎ部材10と連結することから、仮設足場Fの支柱Fbは壁つなぎ用治具40と対向する位置に設置することが望ましい。しかしながら、壁つなぎ用治具40と対向する位置に支柱Fbを設置することが困難な場合がある。本変形例に係る壁つなぎ用治具40は、支柱Fbを設置可能な位置に対向する位置までスライド部材46をスライドさせることが可能なため、支柱Fbを好適な位置に設置した後に、壁つなぎ部材10を壁つなぎ用治具40に連結することができ、仮設足場Fをより確実に安定化させることができる。
【0043】
図11に本発明の壁つなぎ用治具40の第三の変形例を示す。本変形例に係る壁つなぎ用治具40は、二つの基部41がフレーム32の両端部のそれぞれに固定され、基部41とは別体として構成される細長の連結部42が基部41から延びる延長部47に亘って水平方向Hに配設される。連結部42には横目地21に沿って長穴45が形成される。さらに、外壁パネル30と連結部42の間には、長穴45に沿ってスライド可能なスライド部材46が設けられており、取付け用ボルトBは、スライド部材46に対して固定されるように構成されている。ここで連結部42は、延長部47に対して着脱可能に固定される。したがって、図12に示すように、連結部42を、上下に設けられた二つの基部41から延びる延長部47に亘って鉛直方向Eに配設してもよい。
また、図11では二つの延長部47に亘って連結部42が一つのみ配設されているが、三つ以上の延長部47に亘って二以上の連結部42を配設してもよい。仮設足場Fの支柱Fbの位置及び本数に合わせて適切な位置に配設することができる。
【0044】
このように、連結部42を水平方向H又は鉛直方向Eに設置することで、仮設足場Fの支柱Fbを好適な位置に設置した後に、壁つなぎ部材10を壁つなぎ用治具40に連結することができるため、予め仮設足場Fの位置を決めた後で、仮設足場Fを確実に固定させることができる。また、建物が完成して仮設足場Fを撤去する際に、連結部42を仮設足場Fの撤去と一緒に取り外すことができる。なお、この連結部42に、長穴45が形成されるのではなく、仮設足場Fの支柱Fbの位置に合わせてボルト孔が形成され、壁つなぎ部材10の先端が取り付けられてもよい。
【0045】
図13に本変形例に係る外壁パネル部材25を示す。本変形例に係る外壁パネル部材25は、複数並べて配置されることにより外壁20を構成する部材である。外壁パネル部材25は、縁部に配置されるフレーム32を備える外壁パネル30と、外壁パネル30に仮設足場Fを接続する壁つなぎ部材10を外壁パネル30に固定する壁つなぎ用治具40とを備える。壁つなぎ用治具40は、図2~6に示す壁つなぎ用治具40と同じであり、外壁パネル30の構造が異なる。外壁パネル30は、取り付けられるフレーム32の長手方向(図の矢印G方向)に沿って長穴45が形成される。フレーム32の下方に、長穴45に沿ってスライドし、壁つなぎ用治具40の基部41と連結されるスライド部材46を備える。スライド部材46に連結された壁つなぎ用治具40は、その長穴45に沿ってスライドし、壁つなぎ用治具40の位置を変更することができる。位置が変更された後、壁つなぎ用治具40はフレーム32に例えばボルト締結により固定され、仮設足場Fに接続する壁つなぎ部材10の先端が壁つなぎ用治具40の連結部42に連結される。
【0046】
また、上述した実施形態では、基部41に対して円形の底面41cと、この底面41cに連続した円筒形状の側面41dを有する座彫り部41bが形成されることとして説明した。しかし、締結用ボルト43の頭部43aを収容することができれば、座彫り部41bの形状はこれに限定されない。例えば円錐形状の底面41cを有する凹部であってもよいし、湾曲したすり鉢形状の底面41cを有する凹部であってもよい。すなわち、座彫り部41bの底面41cの形状は、締結用ボルト43の頭部43aの形状に合わせて、適宜に選択することができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、補強リブ44は、挿通孔41a及び連結孔42aを両側から挟む位置に一対のライン上の補強リブ44、44を形成することとして説明した。しかし、補強リブ44の本数は2本に限定されない。例えば、より幅広の壁つなぎ用治具40の場合には、挿通孔41a及び連結孔42aを両側から挟む位置に2本ずつ形成することとしてもよい。また、挿通孔41a及び連結孔42aの間に1本のライン状の補強リブ44を形成することとしてもよい。これにより、板厚を増すことなく壁つなぎ用治具40の強度を向上させることができる。
【0048】
上述した実施形態では、主として本発明に係る壁つなぎ用治具40及び該治具を備えた外壁パネル部材25に関して説明した。ただし、上述した形態は、本発明の理解を容易に理解するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
10 壁つなぎ部材
11 基端部
12 中間部
13 先端部
20 外壁
21 横目地
25 外壁パネル部材
30 外壁パネル
31 本体部
31a 面材
31b 通気層
31c 第一断熱層
31d 第二断熱層
31e スペーサ
32 フレーム
32a 張り出し部
33 締結用ボルト孔
40 壁つなぎ用治具
41 基部
41a 挿通孔
41b 座彫り部
41c 底面
41d 側面
42 連結部
42a 連結孔
42b 切欠き
42c 舌片
43 締結用ボルト(締結部材)
43a 頭部
44 補強リブ
45 長穴
46 スライド部材
47 延長部
121 横目地
130 外壁パネル
132 フレーム
132a 張り出し部
132b ボルト孔
F 仮設足場
Fb 支柱
Ft 足場板
B 取付け用ボルト(取付け部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14