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特許7477366磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/08 20060101AFI20240423BHJP
   H01F 1/20 20060101ALI20240423BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20240423BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
H01F1/20
B41M1/12
B41M3/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020090624
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021186967
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、環境省、平成31年度省CO2型リサイクル等設備技術実証事業(軟磁性合金薄帯の粉体化によるリサイクル技術の実証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 博之
(72)【発明者】
【氏名】大仲 博
(72)【発明者】
【氏名】本多 耕治
(72)【発明者】
【氏名】前出 正人
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251784(JP,A)
【文献】特表2012-511448(JP,A)
【文献】特開2017-71072(JP,A)
【文献】独国特許発明第102017202747(DE,B3)
【文献】特開昭50-161307(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0026452(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00-15/46
H01F 1/20
B41M 1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体が配置されるステージ部材と、
前記ステージ部材を介して前記磁性粉体を引きつける磁石部材と、
前記ステージ部材の表面における前記磁性粉体の配置領域を広げる均し部材と、
を備え
前記ステージ部材は、前記磁性粉体が配置される搬送治具と、前記搬送治具と前記磁石部材との間に配置され、前記搬送治具から分離可能なベース部とを備えている磁性粉体の印刷装置。
【請求項2】
前記ステージ部材に配置されており、前記ステージ部材側の面から前記ステージ部材とは反対側の面にかけて貫通する貫通穴が形成されているマスク部材をさらに備える、
請求項1に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項3】
前記均し部材は、前記均し部材の少なくとも一部が前記表面から所定距離離れた位置を移動するように構成されている、請求項1または2に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項4】
前記所定距離は、3mm以下である、請求項3に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項5】
前記ベース部は、前記搬送治具よりも厚い、
請求項に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項6】
前記マスク部材上に配置されている前記磁性粉体の重量を取得し、取得した前記重量に基づいて、前記マスク部材上に供給する前記磁性粉体の供給量を決定する制御装置をさらに備える、
請求項2に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項7】
前記ステージ部材に配置されている前記磁性粉体の重量を取得し、取得した前記重量に基づいて、前記マスク部材上に供給する前記磁性粉体の供給量を決定する制御装置をさらに備える、
請求項2に記載の磁性粉体の印刷装置。
【請求項8】
磁性粉体が配置される搬送治具と、前記搬送治具から分離可能なベース部とを備えているステージ部材の前記ベース部の裏面側に磁石部材を配置して、前記ベース部を前記搬送治具と前記磁石部材との間に配置する工程と、
前記ステージ部材の表面の前記搬送治具に向けて前記磁性粉体を供給する工程と、
前記磁石部材に前記磁性粉体を引きつけさせながら、前記表面における前記磁性粉体の配置領域を広げる工程と、
を備える磁性粉体の印刷方法。
【請求項9】
貫通穴が形成されているマスク部材を前記表面に配置する工程をさらに備え、
前記磁性粉体は、前記貫通穴の内部に供給される、請求項に記載の磁性粉体の印刷方法。
【請求項10】
前記マスク部材を前記表面から離す工程をさらに備える、請求項に記載の磁性粉体の印刷方法。
【請求項11】
前記磁石部材を前記ステージ部材から離す工程をさらに備える、請求項から10のいずれか一項に記載の磁性粉体の印刷方法。
【請求項12】
前記ベース部を前記搬送治具から離す工程をさらに備える、請求項8から11のいずれか一項に記載の磁性粉体の印刷方法。
【請求項13】
前記配置領域を広げられることで生成された前記磁性粉体の集合体の厚さは、3mm以下である、請求項から12のいずれか一項に記載の磁性粉体の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両の電動化市場の急速な拡大に伴い、電子部品の省エネルギー化および小型化の要求がますます高まっている。
【0003】
このような電子部品としては、チョークコイル、リアクトル、トランス等が挙げられる。そして、省エネルギー化および小型化を実現するために、電子部品および電子部品を構成する軟磁性合金粉体(磁性粉体の一例)のエネルギー損失を小さくすることが要求されている。
【0004】
軟磁性合金粉体は、鉄を主成分としている。軟磁性合金粉体におけるエネルギー損失としては、渦電流損とヒステリシス損がある。渦電流損を低減させる対策として、軟磁性合金粉体を小粒化すること等が有効である。ヒステリシス損を低減させる対策として、軟磁性合金粉体の鉄成分のナノ結晶化すること等が有効である。例えば、特許文献1には、軟磁性合金粉体をナノ結晶化することで、エネルギー損失が小さい圧粉鉄心が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-14960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軟磁性合金粉体等の磁性粉体をナノ結晶化するとき、アモルファス状態の磁性粉体を加熱することで、磁性粉体の結晶化が促進される。磁性粉体をナノ結晶化するプロセスにおいて、磁性粉体の自己発熱により磁性粉体の温度が過剰に高くなると、生成される結晶が肥大化してしまう。この場合、その磁性粉体を用いて製造される電子部品のヒステリシス損、すなわち、エネルギー損失が大きくなる。
【0007】
本開示の目的は、電子部品のエネルギー損失を小さくすることができる磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る磁性粉体の印刷装置は、磁性粉体が配置されるステージ部材と、前記ステージ部材を介して前記磁性粉体を引きつける磁石部材と、前記ステージ部材の表面における前記磁性粉体の配置領域を広げる均し部材と、を備え、前記ステージ部材は、前記磁性粉体が配置される搬送治具と、前記搬送治具と前記磁石部材との間に配置され、前記搬送治具から分離可能なベース部とを備えている。
【0009】
本開示の一態様に係る磁性粉体の印刷方法は、磁性粉体が配置される搬送治具と、前記搬送治具から分離可能なベース部とを備えているステージ部材の前記ベース部の裏面側に磁石部材を配置して、前記ベース部材を前記搬送治具と前記磁石部材との間に配置する工程と、前記ステージ部材の表面の前記搬送治具に向けて前記磁性粉体を供給する工程と、前記磁石部材に前記磁性粉体を引きつけさせながら、前記表面における前記磁性粉体の配置領域を広げる工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電子部品のエネルギー損失を小さくすることができる磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の比較例に係る磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法を説明する図
図2】本開示の比較例に係る印刷プロセスにおいて磁性粉体に作用する力を説明する図
図3】本開示の比較例に係る印刷装置により印刷処理が施された後の磁性粉体の配置領域について説明する図
図4】本開示の第1実施形態に係る磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法を説明する図
図5】本開示の第1実施形態に係る印刷プロセスにおいて磁性粉体に作用する力を説明する図
図6】本開示の第2実施形態に係る磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法を説明する図
図7】本開示の変形例に係る磁性粉体の印刷装置のブロック図
図8】本開示の変形例に係る磁性粉体の印刷装置が実行する磁性粉体の供給に関する動作の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の比較例および各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0013】
本開示の比較例および各実施形態について説明する前に磁性粉体を材料とする電子部品の製造プロセスについて簡単に説明する。電子部品は、以下の工程を経て製造される。
(工程S1)電子部品に必要な材料が含まれる磁性粉体を作製する。
(工程S2)磁性粉体を所望の形状となるように印刷する。すなわち、磁性粉体の集合体(以下、単に集合体と称することもある。)を生成する。
(工程S3)磁性粉体の集合体に熱処理を行う。
【0014】
なお、工程S3において、熱プレス装置が用いられてもよい。熱プレス装置は、ヒータブロックを有している。工程S3において、熱プレス装置は、磁性粉体の集合体がヒータブロックで挟まれた状態で加熱する。工程S3が行われている間、磁性粉体は自己発熱する。ヒータブロックは、磁性粉体からの熱を吸収するので、磁性粉体の温度が一定に保たれる。これにより、生成される磁性粉体の結晶の大きさが一定の大きさに制御される。その結果、磁性粉体がナノ結晶化される。よって、磁性粉体を用いて製造される電子部品のエネルギー損失が小さくなる。
【0015】
しかし、ヒータブロックに挟まれる磁性粉体の集合体の厚さが比較的厚い場合、磁性粉体の自己発熱量が大きくなり、ヒータブロックで吸熱しきれなくなる。ヒータブロックが磁性粉体の熱を十分に吸熱しきれない場合、磁性粉体の温度が一定に保たれなくなり、磁性粉体が適切にナノ結晶化することができなくなる。
【0016】
ヒータブロックが、磁性粉体の熱を吸熱しきるためには、工程S2において、磁性粉体の集合体を適切な厚さ以下にする必要がある。以下、工程S2において適用可能であり、磁性粉体の集合体を適切な厚さ以下にすることができる磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法について説明する。
【0017】
(比較例)
以下、本開示の比較例に係る磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法について、図1から図3を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本開示の比較例に係る磁性粉体110の印刷装置1および磁性粉体110の印刷方法を説明する図である。
【0019】
<印刷装置1>
印刷装置1は、ステージ部材120、均し部材130、供給装置(不図示)、および、制御装置(不図示)を備えている。ステージ部材120は、磁性粉体110が配置される部材である。均し部材130は、ステージ部材120から所定距離X離れた位置を移動することで、ステージ部材120上の磁性粉体110を均すとともに、磁性粉体110のステージ部材120の表面121における配置領域を広げる。図1の太矢印は、均し部材130の移動方向を示す。磁性粉体110、ステージ部材120、および、均し部材130については、後述する実施形態において詳細に説明する。
【0020】
供給装置は、磁性粉体110をステージ部材120の表面121に向けて供給する。制御装置は、均し部材130の動作を制御する。制御装置は、均し部材130の動作及び、磁性粉体110の供給量を制御する。
【0021】
<印刷方法>
磁性粉体110の印刷方法は、以下の工程を備える。
(工程S11)供給装置が磁性粉体110をステージ部材120の表面121に向けて供給する。
(工程S12)均し部材130が、磁性粉体110の表面121における配置領域を広げる。ここで、制御装置が均し部材130を表面121から所定距離X離れた位置を移動させて、ステージ部材120の表面121の磁性粉体110を均す。これにより、磁性粉体110の集合体が形成される。磁性粉体110が均されると、磁性粉体110の印刷が完了する。
【0022】
よって、比較例によれば、所定距離Xを適切な長さに調整することで、磁性粉体110の集合体の厚さを適切な厚さ以下にすることができる。
【0023】
しかし、比較例は、ステージ部材120の表面121において磁性粉体110を配置すべき領域に磁性粉体110が配置されないという課題がある。以下、その課題について図2および図3を参照しながら説明する。
【0024】
<比較例の課題>
図2は、本開示の比較例に係る印刷プロセスにおいて磁性粉体110に作用する力を説明する図である。図3は、比較例に係る印刷装置1により印刷処理が施された後の磁性粉体110の配置領域について説明する図である。なお、比較例の説明における印刷処理は、上述した工程S11および工程S12である。図2の200は、ステージ部材120の表面121上の領域である。
【0025】
図2のF1、F2、およびF3は、それぞれ、均し部材130が磁性粉体110を押す力、磁性粉体110同士の凝集力、ステージ部材120から磁性粉体110に作用する摩擦力である。なお、F1は、主にステージ部材120の表面121から所定距離X以上離れた位置に位置する磁性粉体110に作用する。
【0026】
工程S12において、均し部材130から力F1を受けて、表面121から所定距離X以上離れた位置に位置する磁性粉体110(以下、遠距離粉体と称す。)が移動する。ここで、表面121から所定距離X未満の位置に位置する磁性粉体110(以下、近距離粉体と称す。)が、凝集力F2により遠距離粉体に引き付けられる。凝集力F2が摩擦力F3に対して比較的強い場合、近距離粉体は、磁性粉体110がステージ部材120上を滑り、遠距離粉体とともに移動してしまう。具体的には、工程S12が完了する前において領域200に配置されていた近距離粉体が凝集力F2を受けて移動し、工程S12が完了した後、領域200に磁性粉体110が存在しなくなる(図3参照)。すなわち、比較例では、磁性粉体110を配置すべき領域において、磁性粉体110が配置されない領域が発生してしまうという課題がある。
【0027】
以下、比較例の課題を解決する各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図4は、本開示の第1実施形態に係る磁性粉体110の印刷装置1および磁性粉体110の印刷方法を説明する図である。
【0029】
<磁性粉体110>
磁性粉体110は、純鉄粉、Fe-Si合金、センダスト、パーマロイ、パーメンジュール等の他、非晶質(アモルファス)粒子、ナノ結晶粒子等の軟磁性合金粉体である。ここで、非晶質粒子やナノ結晶粒子には、FeとSiに加えてB、C、P、Cu、Co、Ni等の元素のいずれか1つ以上が含まれていてもよい。磁性粉体110の粒子径が小さすぎるとヒステリシス損が大きくなり、粒子径が大きすぎると渦電流損が大きくなる。このため、磁性粉体110の粒子径は、1μmから300μmが望ましい。
【0030】
<印刷装置1>
印刷装置1は、ステージ部材120、均し部材130、磁石部材140、マスク部材150、供給装置(不図示)、および、制御装置(不図示)を備えている。
【0031】
<ステージ部材120>
ステージ部材120は、その表面121に磁性粉体110が配置される部材である。ステージ部材120の材料は、例えば、チタンおよびオーステナイト系ステンレス等の金属、セラミックス、および、樹脂等である。
【0032】
ステージ部材120の材料は、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることが望ましい。ステージ部材120の材料が磁石である場合、磁性粉体110は、印刷処理後の熱処理以降においてもステージ部材120から磁力を受け続ける。この場合、磁性粉体110は、継続的にステージ部材120の表面121に保持されてしまうので、電子部品の形成に使用されず、清掃時に廃棄されてしまう。その結果、電子部品の歩留の低下を招く。言い換えると、ステージ部材120の材料が、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることで、電子部品の歩留まりを維持することができる。なお、第1実施形態における印刷処理は、後述する工程S21~S25のことである。
【0033】
また、ステージ部材120が磁石である場合、ステージ部材120から電子部品が取り外された後、ステージ部材120の表面121に磁性粉体110が残ってしまうので、ステージ部材120を清掃する労力が増加してしまう。すなわち、ステージ部材120の材料が、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることで、ステージ部材120の清掃時の負担を軽減することができる。
【0034】
ステージ部材120の形状は、例えば、板状である。ステージ部材120の表面121の寸法は、最も短い寸法が磁性粉体110を配置するべき領域(以下、印刷領域と称す。)の最も長い寸法よりも10mm以上長いことが望ましい。これにより、印刷処理後に磁性粉体110が搬送されている間に振動等が発生したとしても、磁性粉体110がステージ部材120から落下することを防ぐことができる。
【0035】
<均し部材130>
均し部材130は、ステージ部材120の表面121に配置された磁性粉体110の配置領域300を広げる。均し部材130は、ステージ部材120から所定距離X離れた位置を移動する。図4の太矢印は、均し部材130の移動方向を示している。均し部材130が移動することで、ステージ部材120上の磁性粉体110が均されるとともに、磁性粉体110の表面121における配置領域300が広がる。所定距離Xは、3mm以下が望ましい。
【0036】
均し部材130の材料は、チタンおよびオーステナイト系ステンレス等の金属、セラミックス、樹脂等である。
【0037】
均し部材130の材料は、ステージ部材120と同様、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることが望ましい。均し部材130の材料が、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることで、電子部品の歩留まりを維持し、かつ、均し部材130の清掃時の負担を軽減することができる。
【0038】
均し部材130の形状は、例えば、板状である。均し部材130は、電子部品の生産性を考慮すると、磁性粉体110と接触する面の幅の寸法が50mm以上であることが望ましい。磁性粉体110と接触する面の幅とは、水平面内において均し部材130の移動方向(つまり、図4の太矢印に沿った方向)に対して垂直方向の長さのことである。
【0039】
<磁石部材140>
磁石部材140は、その表面がステージ部材120の裏面122(図5参照)に接するように配置される部材であり、ステージ部材120を介して磁性粉体110を引きつける部材である。
【0040】
磁石部材140は、磁石を引き付ける材料から構成される部材である。磁石部材140の材料は、例えば、フェライトやネオジウムなどの磁石である。磁石部材140の材料は、フェライトやネオジウムなどの磁石と樹脂材料との混合物であってもよい。磁石部材140の形状は、板状である。なお、磁石部材140の形状は、シート状であってもよい。
【0041】
磁石部材140の寸法は、磁性粉体110を引き付けることから、磁石部材140の表面の最も短い寸法が印刷領域の最も長い寸法よりも5mm以上大きければよい。磁性粉体110の下側に磁石部材140がなければ、磁性粉体110がステージ部材120に引き付けられないので、印刷装置1の各構成の位置のばらつきを考慮して、印刷領域よりもステージ部材120に対する正射影領域の面積が大きい磁石部材140を使用する必要があるからである。
【0042】
<マスク部材150>
マスク部材150は、磁性粉体110を印刷処理する際にステージ部材120の表面121に配置される部材である。マスク部材150は、ステージ部材120の表面121側の面からステージ部材120とは反対側の面にかけて貫通する貫通穴151が形成されている。貫通穴151のステージ部材120に対する正射影は、上述した印刷領域と一致する。
【0043】
マスク部材150の材料は、チタンおよびオーステナイト系ステンレス等の金属、セラミックス、樹脂等である。
【0044】
マスク部材150の材料は、ステージ部材120と同様、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることが望ましい。マスク部材150の材料が、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることで、電子部品の歩留まりを維持し、かつ、均し部材130の清掃時の負担を軽減することができる。
【0045】
マスク部材150の水平方向における最も短い寸法は、マスク部材150の強度を確保するために、水平方向における貫通穴151の最も長い寸法よりも40mm以上大きいことが望ましい。また、マスク部材150の厚さは、上述した所定距離X以下の厚さである。
【0046】
供給装置、および、制御装置は、それぞれ上述した比較例に係る供給装置、および、制御装置と機能および構成が同じであるため、それらの詳細な説明を省略する。
【0047】
<印刷方法>
本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法は、以下の工程を備える。
(工程S21)マスク部材150をステージ部材120の表面121に配置するとともに、磁石部材140をその表面がステージ部材120の裏面122に接するようにステージ部材120に配置する。なお、マスク部材150の配置と磁石部材140の配置は必ずしも同時に行われなくてもよく、いずれが先に行われてもよい。
(工程S22)供給装置が、ステージ部材120の表面121に向けて磁性粉体110を供給する。工程S22において、供給装置は、磁性粉体110をマスク部材150の貫通穴151の内部に供給する。
(工程S23)磁石部材140に磁性粉体110を引きつけさせながら、均し部材130が、磁性粉体110の配置領域300を印刷領域と一致するように広げる。ここで、制御装置からの指示に従って、均し部材130が表面121から所定距離Xの位置を水平方向に移動する。工程S23が完了することで、磁性粉体110の集合体が生成される。
(工程S24)磁石部材140をステージ部材120の裏面122から引き離す。
(工程S25)マスク部材150をステージ部材120の表面121から引き離す。なお、工程S25は、工程S24と同じタイミングで実行されてもよい。
【0048】
工程S25が完了すると、磁性粉体110の集合体が配置されているステージ部材120が、工程S3(つまり、熱処理工程)を実行するための配置位置まで搬送される。
【0049】
図5は、工程S25において磁性粉体110に作用する力を説明する図である。なお、図5において、マスク部材150の図示が省略されている。図5のF4は、磁石部材140から磁性粉体110に作用する磁力である。
【0050】
図5に示されているように、ステージ部材120の表面121上の磁性粉体110は、磁石部材140によって引き付けられる。これにより、近距離粉体に作用する力F4およびF3の総和が、遠距離粉体から近距離粉体に作用する凝集力F2を上回る。このため、均し部材130に押されて遠距離粉体が移動したとしても、近距離粉体は遠距離粉体とともに表面121上を移動しにくくなる。よって、均し部材130が移動することで、磁性粉体110が配置されていた表面121上の領域に近距離粉体がとどまりつつ、配置領域300が広がる。
【0051】
工程S23において、配置領域300が広げられることで厚さZ(図4参照)の磁性粉体110の集合体が生成される。厚さZは、3mm以下が望ましい。磁性粉体110の集合体の厚さが厚すぎる場合、集合体を熱処理する工程で、磁性粉体110からの熱をヒータブロックで吸収しきれなくなり、磁性粉体110を適切にナノ結晶化することができなくなるからである。
【0052】
以上、説明した通り、本実施形態に係る磁性粉体110の印刷装置1は、ステージ部材120上に供給された磁性粉体110を均す均し部材130を備えるので、生成される磁性粉体110の集合体の厚さを一定の適切な厚さ以下にすることができる。よって、本実施形態の印刷装置1によって生成された集合体が熱処理されることで、磁性粉体110が適切にナノ結晶化する。その結果、本実施形態に係る印刷装置1で印刷処理が実行された磁性粉体110を用いて製造される電子部品のエネルギー損失が小さくなる。
【0053】
本実施形態に係る印刷装置1は、磁石部材140を備えているので、均し部材130で磁性粉体110を均す工程が行われている間、近距離粉体を現在位置にとどめておくことができる。このため、第1実施形態に係る印刷装置1は、印刷領域に磁性粉体110が配置されない領域が発生することを防止し、磁性粉体110が印刷領域に確実に配置されるように配置領域300を広げることができる。すなわち、第1実施形態に係る印刷装置1は、比較例に係る印刷装置1の課題を解決できる。
【0054】
均し部材130は、ステージ部材120の表面121から所定距離X離れた位置を移動するので、生成される集合体の厚さを所定距離Xの大きさ以下にすることができる。よって、所定距離Xを調整することで、生成される集合体の厚さをより確実に適正な厚さ以下にすることができる。さらに、磁石部材140が磁性粉体110を引き付けつつ、均し部材130が移動することで磁性粉体110を均しているので、生成される磁性粉体110の集合体の厚さのばらつきを少なくすることができる。
【0055】
本実施形態に係る印刷装置1は、貫通穴151が形成されているマスク部材150を備えている。マスク部材150は、ステージ部材120の表面121に配置される。このため、均し部材130によって広げられる磁性粉体110の配置領域300は、マスク部材150によって規制される。すなわち、マスク部材150が表面121に配置されることで、工程S23において、均し部材130は、配置領域300が印刷領域と一致するように磁性粉体110を均すことができる。よって、第1実施形態に係る印刷装置1により生成される集合体の水平面内における形状のばらつきを抑制できる。すなわち、第1実施形態に係る印刷装置1は、磁性粉体110の集合体の安定した製造プロセスを提供できる。
【0056】
本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法では、均し部材130が表面121から所定距離X離れた位置を移動するため、生成される磁性粉体110の集合体の厚さを適正な厚さ以下にすることができる。よって、本実施形態の印刷方法によって生成された集合体が熱処理されることで、磁性粉体110が適切にナノ結晶化する。その結果、本実施形態に係る印刷方法で印刷処理が実行された磁性粉体110を用いて製造される電子部品のエネルギー損失が小さくなる。
【0057】
本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法では、磁石部材140に磁性粉体110を引きつけさせながら、磁性粉体110の配置領域300を広げる。よって、本実施形態に係る印刷方法は、近距離粉体を現在位置にとどめつつ、磁性粉体110の配置領域300を広げることができるので、印刷領域に磁性粉体110が配置されない領域が発生することを防止できる。すなわち、本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法では、印刷領域に磁性粉体110が確実に配置されるように配置領域300を広げることができる。さらに、本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法によれば、生成される磁性粉体110の集合体の厚さのばらつきを少なくすることができる。
【0058】
本実施形態に係る印刷方法は、貫通穴151が形成されたマスク部材150を使用するので、磁性粉体110の配置領域300が広げられる範囲が、貫通穴151によって規制される。よって、第1実施形態に係る印刷方法により生成される集合体の水平面内の形状のばらつきを抑制できる。すなわち、第1実施形態に係る印刷方法は、磁性粉体110の集合体の安定した製造プロセスを提供できる。
【0059】
(第2実施形態)
以下、本開示の第2実施形態に係る磁性粉体110の印刷装置1および磁性粉体110の印刷方法について、主に第1実施形態と異なる点を説明する。
【0060】
図6は、本開示の第2実施形態に係る磁性粉体110の印刷装置1および磁性粉体110の印刷方法を説明する図である。
【0061】
第2実施形態に係る磁性粉体110の印刷装置1が備えるステージ部材120は、搬送治具10と、ベース部20とを備える。
【0062】
搬送治具10には、磁性粉体110が配置される。搬送治具10は、表面121を有する。搬送治具10は、工程S3を実行する際に集合体を配置すべき配置位置まで集合体とともに搬送される。
【0063】
ベース部20は、搬送治具10と磁石部材140との間に配置される。ベース部20は、搬送治具10から分離可能である。ベース部20は、ステージ部材120の強度を確保するための部位であり、少なくとも搬送治具10よりも厚い。
【0064】
なお、搬送治具10の厚さは0.1mm以下であればよく、ベース部20の厚さは、0.5mm以上あればよい。
【0065】
<印刷方法>
本実施形態に係る磁性粉体110の印刷方法は、以下の工程を備える。
(工程S31)マスク部材150を搬送治具10の表面121に配置するとともに、磁石部材140を、その表面がベース部20の裏面に接するようにステージ部材120に配置する。なお、マスク部材150の配置と磁石部材140の配置は必ずしも同時に行われなくてもよく、いずれが先に行われてもよい。
(工程S32)供給装置が、ステージ部材120の表面121に向けて磁性粉体110を供給する。工程S32は、工程S22に対応している。
(工程S33)磁石部材140に磁性粉体110を引きつけさせながら、均し部材130が、磁性粉体110の配置領域300を印刷領域と一致するように広げる。工程S33は、工程S23に対応している。
(工程S34)磁石部材140を搬送治具10から引き離す。
(工程S35)マスク部材150およびベース部20を搬送治具10から引き離す。なお、マスク部材150を搬送治具10から引き離す工程は、工程S34と同じタイミングで実行されてもよい。
【0066】
工程S34において、磁石部材140と磁性粉体110とが互いに引き付け合う力を上回る力で、磁石部材140をステージ部材120から引き離す必要がある。磁石部材140を引き離す力が大きくなるほど、ステージ部材120に必要とされる強度が大きくなる。本実施形態に係る印刷装置1のステージ部材120は、比較的厚みが大きく、搬送治具10と磁石部材140との間に配置されるベース部20を備えているので、ステージ部材120の強度が確保できる。
【0067】
また、ベース部20の厚さを厚くすることでステージ部材120の強度を大きくすることができるので、搬送治具10の厚さをより薄くすることができる。
【0068】
ベース部20は、集合体とともに工程S3(つまり、熱処理工程)が施される。このため、ベース部20の厚さが比較的厚い場合、熱プレス装置により十分に磁性粉体110を加熱することができなくなる。もしくは、熱プレス装置のヒータブロックが、磁性粉体110の集合体、および、ベース部20からの熱を吸収しきれなくなる。これらの場合、熱処理中の磁性粉体110の温度が一定に保たれなくなり、その結果、磁性粉体110が適切にナノ結晶化されなくなり、磁性粉体110、ひいては、磁性粉体110を材料とする電子部品のエネルギー損失が大きくなる。
【0069】
本実施形態の印刷装置1によれば、搬送治具10をより薄くすることができるので、工程S3を実行することで、磁性粉体110がより適切にナノ結晶化する。その結果、本実施形態の印刷装置1は、磁性粉体110、ひいては、磁性粉体110を材料とする電子部品のエネルギー損失をより小さくすることができる。
【0070】
その他、本実施形態に係る印刷装置1および印刷方法は、それぞれ第1実施形態に係る印刷装置1および印刷方法と同様の効果を奏する。
【0071】
(変形例)
以下、変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1および磁性粉体110の印刷装置1について、主に第1実施形態と異なる点を説明する。
【0072】
図7は、変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1を示すブロック図である。なお、図7において、ステージ部材120、均し部材130、磁石部材140、および、マスク部材150については図示を省略している。
【0073】
変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1は、重量センサ510、供給装置520および制御装置530を備える。重量センサ510は、マスク部材150に配置されており、マスク部材150上に位置する磁性粉体110の重量を計測する。
【0074】
供給装置520は、制御装置530の制御の下、ステージ部材120に向けて磁性粉体110を供給する。実際には、供給装置520は、マスク部材150上に磁性粉体110を供給する。
【0075】
変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1の制御装置530は、供給装置520に決定された量の磁性粉体110をマスク部材150上に供給させる。また、制御装置530は、重量センサ510が計測した重量を取得する。そして、制御装置は、取得した重量に基づいて、磁性粉体110が供給されていないステージ部材120の上に配置されたマスク部材150上に供給される、磁性粉体110の量を決定する。なお、制御装置530は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)などの作業用メモリを有していてもよい。そして、CPUが所定のプログラムを実行することにより、重量センサ510から取得した重量に基づいて、磁性粉体110の供給量を決定してもよい。
【0076】
図8は、本開示の変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1が実行する磁性粉体110の供給に関する動作の流れを示す図である。
【0077】
制御装置530は、供給装置520を制御して、決定された供給量の磁性粉体110をマスク部材150上に供給する(ステップS101)。決定された供給量は、印刷装置1が稼働してから1度も印刷処理(後述するステップS102)が行われていない場合、初期値として予め決定された量である。ステップS101が行われるに際して、供給対象となるステージ部材120に対して、表面121側および裏面122側にマスク部材150および磁石部材140がそれぞれ配置されている。
【0078】
次に、印刷装置1は、磁性粉体110の印刷を行う(ステップS102)。ステップS102では、上述した工程S23が実行される。
【0079】
次に、制御装置530は、重量センサ510が計測した重量を取得する(ステップS103)。ここで、重量センサ510は、マスク部材150上に配置されている磁性粉体110の重量を計測する。
【0080】
次に、制御装置530は、重量センサ510から取得した重量に基づいて、磁性粉体110の新たな供給量を決定する(ステップS104)。ここで、制御装置530は、重量センサ510から取得した重量と、基準とする粉体量とに基づいて、新たに供給する磁性粉体110の量を算出し、算出された量を新たな供給量として決定する。基準とする粉体量は、所望の量の磁性粉体110が印刷工程(すなわち、ステップS102)で使用されるために、マスク部材150上にあるべき適正な量のことである。
【0081】
続いて、制御装置530は、供給装置520を制御して、決定された供給量の磁性粉体110をステージ部材120上に配置されているマスク部材150上に供給する(ステップS101)。ここで、決定された量は、印刷装置1が稼働してステップS102の処理がすでに行われている場合、ステップS104で決定された供給量である。
【0082】
印刷装置1は、ステップS101~S104を繰り返す。
【0083】
印刷処理に使用される磁性粉体110の量は、印刷工程が実行される前にマスク部材150上にある磁性粉体110の量に依存する。印刷処理が実行される前において、マスク部材150上にある磁性粉体110の量が多いほど、印刷処理に使用される磁性粉体110の量が多くなる。マスク部材150上の磁性粉体110が多いほど、均し部材130が操作された場合に、マスク部材150の貫通穴151の内部に配置できる磁性粉体110を量が多くなるからである。なお、印刷工程に使用される磁性粉体110の量は、磁性粉体110の集合体の生成に使用される磁性粉体110の量に相当する。
【0084】
よって、印刷工程(すなわち、ステップS102)の前にマスク部材150上の磁性粉体110の量を計測して、計測結果を管理することは、磁性粉体110を有効に利用する観点からも重要である。
【0085】
本変形例に係る磁性粉体110の印刷装置1は、マスク部材150上の磁性粉体110の重量に基づいて、磁性粉体110の供給量を決定する制御装置530を備える。そして、制御装置530は、ステージ部材120上のマスク部材150上に対して、磁性粉体110が供給されるたびに、供給量を決定する。
【0086】
このため、制御装置530は、印刷工程前のマスク部材150上の磁性粉体110の量を所望の範囲となるように制御することができる。よって、制御装置530は、印刷工程で使用される磁性粉体110の量、すなわち、集合体の生成に使用される磁性粉体110の量を所望の範囲となるように制御することができる。
【0087】
なお、本変形例に係る制御装置530は、印刷工程が行われる前に磁性粉体110をマスク部材150上に供給していた。しかしながら、制御装置530は、1度磁性粉体110の供給を行った後、複数回の磁性粉体110の印刷工程が行われてから磁性粉体の110の供給を行ってもよい。すなわち、複数回の印刷工程毎に磁性粉体110をマスク部材150上に供給してもよい。例えば、マスク部材150上に配置されている磁性粉体110の量が比較的多い場合、新たに磁性粉体110を供給しなくても、マスク部材150上に残留している磁性粉体110を使用して集合体を生成することができるからである。
【0088】
また、制御装置530は、マスク部材150上の磁性粉体110の重量に替えて、集合体の生成に使用された磁性粉体110の重量を取得し、取得した重量に基づいて、新たな磁性粉体110の供給量を決定してもよい。この場合、ステージ部材120に重量センサ510が、配置される。そして、重量センサ510は、マスク部材150がステージ部材120から引き離された後にステージ部材120に配置されている磁性粉体110の重量を計測する。この場合、印刷装置1は、マスク部材150を必ずしも備えていなくてもよい。また、マスク部材150が備えられていない場合は、印刷方法は、マスク部材150をステージ部材120に配置する工程やマスク部材をステージ部材120から引き離す工程を備えていなくてもよい。
【0089】
なお、第2実施形態に係る印刷装置1は、変形例に係る重量センサ510、供給装置520、および制御装置530を備えていてもよく、図8に示されているステップS101~S104の処理を実行してもよい。
【0090】
(その他の変形例)
第1実施形態、第2実施形態および変形例に係る印刷装置1が備える磁石部材140は、必ずしもステージ部材120の裏面122に接するように配置されなくてもよい。磁石部材140は、ステージ部材120の表面121よりも裏面122側に配置されればよい。例えば、磁石部材140とステージ部材120との間に別の部材が配置されていてもよい。また、ステージ部材120には、表面121と裏面122との間に挿入用穴が形成されていて、磁石部材140を配置する工程において、磁石部材140が挿入用穴に挿入されてもよい。
【0091】
また、均し部材130は、必ずしも均し部材130全体が移動しなくてもよく、均し部材130の少なくとも一部が移動すればよい。例えば、均し部材130の一端が鉛直方向に沿う軸周りに回転可能に固定されていてもよい。
【0092】
なお、第1実施形態、第2実施形態および変形例に係る印刷装置1を構成しており、かつ、図示されていない他の部材の材料は、ステージ部材120等と同様、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることが望ましい。他の部材の材料が、磁石を引き付けない材料、または、磁化しにくい材料であることで、電子部品の歩留まりを維持し、かつ、均し部材130の清掃時の負担を軽減することができる。
【0093】
また、第1実施形態および第2実施形態に係る印刷装置1は、必ずしもマスク部材150を備えていなくてもよい。ステージ部材120の表面121から所定距離X離れた位置を均し部材130が移動することで、生成される集合体の厚さは所定距離Xの大きさ以下となるからである。よって、第1実施形態および第2実施形態に係る印刷方法は、マスク部材150をステージ部材120に配置する工程やマスク部材150をステージ部材120から引き離す工程を備えていなくてもよい。
【0094】
さらに、磁石部材140は、磁石を引き付ける状態と磁石を引き付けない状態とが切り替えられるように形成されていてもよい。例えば、磁石部材140の材料は、電磁石であってもよい。このような磁石部材140を使用する印刷方法は、必ずしも磁石部材140を引き離す工程を備えていなくてもよい。
【0095】
また、均し部材130の形状は必ずしも板状でなくてもよく、均し部材130のステージ部材120側の端部が、磁性粉体110を均し、磁性粉体110の集合体の厚さを規制できる形状であればよい。
【0096】
なお、第2実施形態において、ステージ部材120が搬送治具10とベース部20とに分離可能に構成されている。しかしながら、搬送治具10とベース部20とが互いに別の部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示の磁性粉体の印刷装置および磁性粉体の印刷方法は、磁性粉体を用いて電子部品を製造する装置および電子部品を製造する方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 印刷装置
110 磁性粉体
120 ステージ部材
10 搬送治具
20 ベース部
121 表面
122 裏面
130 均し部材
140 磁石部材
150 マスク部材
151 貫通穴
200 領域
300 配置領域
510 重量センサ
520 供給装置
530 制御装置
X 所定距離
Z 厚さ
F1 力
F2 凝集力
F3 摩擦力
F4 磁力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8