(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】織機
(51)【国際特許分類】
D03D 49/02 20060101AFI20240423BHJP
D03D 51/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
D03D49/02
D03D51/00 Z
(21)【出願番号】P 2020097688
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-107838(JP,A)
【文献】特開2007-107147(JP,A)
【文献】特開平05-156551(JP,A)
【文献】特開昭53-074160(JP,A)
【文献】特開昭62-170559(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10318819(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機を駆動するための原動モータと、筬を揺動駆動するための揺動軸に対し揺動機構を介して連結される駆動軸であって前記原動モータに対し駆動伝達機構を介して連結されて前記原動モータにより回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸及び前記揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで前記駆動軸及び前記揺動軸を収容する筐体状のサイドフレームとを備えた織機において、
前記駆動伝達機構は、前記サイドフレームの空間内で前記駆動軸と平行に延在すると共に前記サイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって前記原動モータに連結される駆動伝達軸と、
前記サイドフレームの前記空間内で前記駆動伝達軸と前記駆動軸とを連結する歯車列とを含む
ことを特徴とする織機。
【請求項2】
前記駆動伝達機構は、前記歯車列とは別の原動歯車列であって前記幅方向において前記サイドフレームから離間した位置に設けられる原動歯車列を備え、
前記原動モータの出力軸と前記駆動伝達軸とが前記原動歯車列で連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載の織機。
【請求項3】
前記原動歯車列を収容する原動ボックス内の空間が、前記サイドフレームの前記空間に対して独立している
ことを特徴とする請求項2に記載の織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機を駆動するための原動モータと、筬を揺動駆動するための揺動軸に対し揺動機構を介して連結される駆動軸であって原動モータに対し駆動伝達機構を介して連結されて原動モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸及び揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで駆動軸及び揺動軸を収容する筐体状のサイドフレームとを備えた織機に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、フレームは、一対のサイドフレームを含み、そのサイドフレームが複数の梁材で連結された構成となっている。また、織機は、主駆動源としての原動モータを備えており、その原動モータにより主軸(メインシャフト)を駆動するように構成されている。そして、その原動モータは、一対のサイドフレームのうちの一方のサイドフレームの側に設けられている。なお、各サイドフレームは、筐体形状を成しており、その内部に空間を有している。
【0003】
また、前記一方のサイドフレーム内には、主軸に連結される駆動軸が収容されている。そして、その駆動軸が原動モータによって回転駆動されることで、その駆動軸に連結された主軸が回転駆動される。また、その駆動軸の回転は、筬を揺動駆動するためのものともなっている。具体的には、前記一方のサイドフレーム内には筬を揺動駆動するための揺動軸も収容されており、その揺動軸がカム機構、クランク機構といった揺動機構を介して駆動軸と連結されている。そして、前記のように駆動軸が回転駆動されるのに伴い、揺動軸が揺動駆動され、それによって筬が揺動駆動されるように織機が構成されている。
【0004】
なお、前記のように原動モータにより駆動軸を回転駆動するために駆動軸と原動モータとを連結する構成(駆動伝達機構)としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された構成では、駆動軸は、サイドフレームの外側の側壁から突出するように設けられている。また、特許文献1には説明は無いが、原動モータは、駆動軸を収容するサイドフレームの外側において、サイドフレーム等に取り付けられたブラケットに支持されるかたちで設けられる。そして、その原動モータと駆動軸とは、原動モータの出力軸及び駆動軸におけるサイドフレームの側面から突出する部分の端部のそれぞれに取り付けられたプーリと、両プーリに掛けられたタイミングベルトとで連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、織機においては、経年劣化や機械的な異常の発生等により、サイドフレーム内の揺動機構等のメンテナンスを行う場合がある。なお、特許文献1に開示された織機もそうであるように、一般的な織機では、そのようなメンテナンスが行えるように、サイドフレームは、主体的な部分であって外側面の少なくとも一部(揺動機構等に対応する部分)が開放されたフレーム本体とフレーム本体における前記のように開放された部分を覆うかたちで着脱可能に取り付けられるフレームカバとで構成されている。そして、そのメンテナンスは、サイドフレームにおいてそのフレームカバをフレーム本体から取り外した上で行われる。
【0007】
しかしながら、従来の織機では、特許文献1に開示された織機におけるプーリ等のように、駆動軸におけるサイドフレームの側面から突出する部分の端部に対し、原動モータ(出力軸)の回転を駆動軸に伝達するための駆動伝達機構が連結されている。したがって、前記のようにメンテナンスを行うべくサイドフレームにおいてフレームカバを取り外すためには、プーリを駆動軸から取り外す等、駆動軸と駆動伝達機構との連結状態を解除する必要がある。
【0008】
そのため、従来の織機における前記メンテナンスにおいては、フレームカバの着脱に伴い、前記のような駆動軸と駆動伝達機構との連結状態の解除、及び再連結を行わなければならず、そのメンテナンスのための作業が全体として煩雑なものとなっている。また、その駆動伝達機構が特許文献1のようなプーリ及びタイミングベルトで構成されるものである場合には、前記再連結に伴ってタイミングベルトの張力の再調整等も行わなければならず、その場合は、その作業が更に煩雑なものとなる。
【0009】
そこで、本発明は、前記メンテナンスを行う上で、駆動軸と駆動伝達機構との連結状態の解除等を不要としてその作業の簡略化を図ることができる織機の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような織機において、駆動伝達機構が、サイドフレームの空間内で駆動軸と平行に延在すると共にサイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって原動モータに連結される駆動伝達軸と、サイドフレームの空間内で駆動伝達軸と駆動軸とを連結する歯車列とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、そのような本発明による織機において、駆動伝達機構が、歯車列とは別の原動歯車列であって幅方向においてサイドフレームから離間した位置に設けられる原動歯車列を備えるものとし、原動モータの出力軸と駆動伝達軸とを原動歯車列で連結するようにしても良い。さらに、原動歯車列を収容する原動ボックス内の空間を、サイドフレームの空間に対して独立したものとしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明による織機によれば、前記メンテナンスを行う上で、駆動軸と駆動伝達機構との連結状態の解除が不要となるため、そのメンテナンスのための作業を簡略化することができる。詳しくは、本発明による織機においては、駆動伝達機構は、原動モータに連結される駆動伝達軸がサイドフレーム内において歯車列を介して駆動軸と連結されるように構成されている。それにより、駆動軸と駆動伝達機構との連結状態を解除すること無くフレームカバの取り外しを行うことが可能となる。したがって、そのように構成された本発明の織機によれば、原動モータの配置を適宜な位置とすることで、前記メンテナンスのために行わなければならないフレームカバの取り外し作業が簡略化される。その結果として、前記メンテナンスが容易に行えることとなる。
【0013】
また、そのような本発明による織機において、駆動伝達軸と原動モータの出力軸とを連結する連結構成を歯車列(原動歯車列)とすることにより、そのように構成された駆動伝達機構は、メンテナンスの面において有利なものとなる。詳しくは、前記連結構成については、プーリ及びタイミングベルトを介して連結する構成とすることも考えられる。但し、その場合には、タイミングベルトの張力の調整等の作業が必要となる。それに対し、前記連結構成を原動歯車列とすることで、そのような作業が不要となる。したがって、その構成によれば、駆動伝達機構は、メンテナンスの面において有利なものとなる。
【0014】
また、前記連結構成を原動歯車列とする場合において、原動歯車列を収容する原動ボックス内の空間がサイドフレーム内の空間から独立するように構成することで、各空間内の機械部品の発熱や摩耗等を軽減する潤滑油を、原動ボックス側とサイドフレーム側とで自由に選択することができる。その結果として、サイドフレーム側と原動ボックス側とで採用する潤滑油を、それぞれの空間内に収容される機械部品に適した種類の潤滑油とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態における織機1の正面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、
図1及び
図2に基づき、本発明が適用された織機の一実施形態(実施例)について説明する。
【0017】
織機1において、フレーム10は、筐体形状を成す一対のサイドフレーム12、12を含み、そのサイドフレーム12が複数の梁材で連結された構成となっている。また、織機1は、原動モータ20を備えており、その原動モータ20により織機1の主軸5を駆動するように構成されている。そして、その原動モータ20は、一対のサイドフレーム12、12のうちの一方のサイドフレーム(以下、「駆動側フレーム」と言う。)12の側に設けられている。
【0018】
そして、駆動側フレーム12は、主体的な部分であるフレーム本体14と、フレーム本体14に取り付けられるフレームカバ16とで構成されている。具体的には、フレーム本体14は、内部に空間を有する筐体形状に形成されているが、織機1の幅方向において外側となる側壁(外壁部)14aにおける一部分(幅方向に見て後述する揺動機構60等に対応する部分)が開放された形状となっている。また、フレームカバ16は、板状に形成された部材であり、フレーム本体14の開放された部分(開放部)14cを覆うことが可能な大きさを有している。そして、駆動側フレーム12は、フレーム本体14に対し開放部14cを覆うようなかたちでフレームカバ16が取り付けられる構成となっている。したがって、前記幅方向において外側となる駆動側フレーム12の側壁(外側壁)12aは、フレーム本体14の外壁部14aとその開放部14cを覆うフレームカバ16とから成っている。なお、フレーム本体14に対するフレームカバ16の取り付けは、ボルト等のネジ部材(図示略)を用いて行われており、フレームカバ16はフレーム本体14に対し着脱可能となっている。
【0019】
また、織機1は、原動モータ20と主軸5との間に介装される駆動軸30であって、原動モータ20によって回転駆動されると共に主軸5を回転駆動する駆動軸30を備えている。さらに、織機1は、筬打ち装置40におけるロッキング軸44を揺動駆動するための揺動軸50、及びその揺動軸50と駆動軸30とを連結する揺動機構60を備えている。なお、本実施例は、その揺動機構60としてクランク機構が採用された例である。そして、その駆動軸30、揺動軸50及び揺動機構60は、前記幅方向に見て駆動側フレーム12における開放部14cの範囲内に位置するような配置で、前記した駆動側フレーム12内の空間に収容されている。そのような織機1における各構成について、詳しくは以下の通り。
【0020】
駆動軸30は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。但し、駆動軸30は、その中間の部分が両側の部分(両側部)に対し偏心する偏心部32として形成されたクランク形状の軸となっている。そして、駆動軸30は、その軸線方向を前記幅方向に一致させた向きで、駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して回転可能に支持されており、そのようなかたちで駆動側フレーム12に収容されている。
【0021】
なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30がフレーム本体14における開放部14c内の中間付近よりも下側に位置するような位置となっている。そして、駆動軸30は、その一端側においては、その一端部でフレームカバ16に対し支持されている。したがって、駆動軸30は、その他端側においては、他端部を含む部分がフレーム本体14の前記幅方向における内側の側壁(内壁部)14bから突出するかたちで設けられた状態となっている。そして、その駆動軸30は、その突出する部分よりも駆動側フレーム12側の部分においてフレーム本体14の内壁部に支持されている。そして、その駆動軸30における他端部には、カップリング部材70によって主軸5が連結されている。
【0022】
揺動軸50は、駆動軸30と同じく、駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。そして、揺動軸50は、駆動軸30と平行を成す向きで、駆動軸30と同様に駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して支持され、駆動側フレーム12に収容されている。なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30と同じくフレーム本体14における開放部14cの範囲内の位置であって、駆動軸30よりも上側の位置となっている。そして、揺動軸50も、その一端部においてフレームカバ16に支持されると共に、他端部を含む部分がフレーム本体14の内壁部14bから突出するように設けられ、その他端側においてフレーム本体14の内壁部14bに支持されている。その上で、その揺動軸50の他端部には、筬42を支持するロッキング軸44がカップリング部材72によって連結されている。
【0023】
揺動機構60は、前記のようにクランク機構であり、揺動軸50に対し相対的に回転不能に設けられた揺動アーム62と、その揺動アーム62と駆動軸30の偏心部32とを連結するリンクである連結レバ64とを含んでいる。なお、図示の例では、揺動軸50と揺動アーム62とは一体的に形成されている。また、連結レバ64は、揺動アーム62及び駆動軸30(偏心部32)に対し相対的に回転可能に連結されている。その上で、その揺動機構60においては、駆動軸30が回転駆動されて偏心部32が両側部の軸心から偏心した位置で回転運動することで、連結レバ64を介して偏心部32に連結された揺動アーム62(揺動軸50)が揺動駆動される。したがって、その構成では、駆動軸30の一部も揺動機構60として機能している。そして、そのように揺動軸50が揺動駆動されることで、その揺動軸50に連結されたロッキング軸44、及びそのロッキング軸44に支持された筬42が揺動運動し、筬打ち動作が行われる。
【0024】
以上のような織機1において、その織機1は、主軸5に連結された駆動軸30を原動モータ20で回転駆動すべく駆動軸30と原動モータ20とを連結する駆動伝達機構80を備えている。その上で、本発明では、その駆動伝達機構80が、原動モータ20に連結される駆動伝達軸82、及びその駆動伝達軸82と駆動軸30とを連結する歯車列84を含むように構成される。そして、本実施例は、その駆動伝達機構80が、前記の駆動側フレーム12内の歯車列84とは別の原動歯車列92によって駆動伝達軸82と原動モータ20とが連結されるように構成され、その原動歯車列92が原動ボックス94に収容される例である。そのような本実施例の駆動伝達機構80について、詳しくは、以下の通りである。
【0025】
駆動伝達軸82は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きく且つ前記した駆動軸30の長さ寸法よりも大きい軸として形成されている。そして、駆動伝達軸82は、駆動軸30と平行を成す向きで、その一端部において駆動側フレーム12の内側壁12bに対し軸受を介して支持されている。但し、その駆動伝達軸82の支持位置は、フレーム本体14における開放部14cの範囲外の位置であって駆動軸30に対し下方に離間した位置となっている。したがって、駆動伝達軸82は、フレーム本体14の外壁部14aを貫通し、その他端部を含む部分がフレーム本体14の外壁部14aよりも外側に位置するように設けられるかたちとなる。
【0026】
そこで、フレーム本体14の外壁部14aには、前記のような駆動伝達軸82の貫通を許容すべく、前記した支持位置に対応する位置に貫通孔14dが形成されている。そして、駆動伝達軸82は、その一端部を含む部分が駆動側フレーム12に収容されると共に、他端部を含む部分がその貫通孔14dを貫通してフレーム本体14の外壁部14a(駆動側フレーム12の外側壁12a)から突出するようなかたちで設けられた状態となる。その上で、そのように設けられた駆動伝達軸82は、駆動側フレーム12内において、その一端部側の部分で歯車列84により駆動軸30と連結されている。
【0027】
その歯車列84は、本実施例では、2つの歯車で構成されている。具体的には、その歯車列84は、駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車84aと、その駆動歯車84aに噛合する従動歯車84bであって駆動軸30に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車84bとで構成されている。なお、駆動軸30に取り付けられる従動歯車84bは、本実施例では、前記幅方向に関し、駆動軸30における偏心部32よりも駆動側フレーム12における内側壁12bの側に設けられている。
【0028】
また、駆動伝達軸82は、その他端部側において、その駆動伝達軸82を回転駆動するための原動機構90であって、原動モータ20を含む原動機構90と連結されている。その原動機構90は、原動モータ20に加え、原動モータ20の出力軸22と駆動伝達軸82とを連結する原動歯車列92とを備えている。また、原動機構90は、基体となる筐体形状の原動ボックス94を有しており、原動モータ20がその原動ボックス94の外側面に取り付けられると共に、原動歯車列92がその原動ボックス94内に収容される構成となっている。
【0029】
なお、その原動ボックス94は、対向する一対の側壁94a、94bのうちの一方の側壁94aにおける外側面94a1に原動モータ20が取り付けられると共に、その両側壁94a、94bが駆動側フレーム12における外側壁12aと平行を成すように設けられている。そして、原動ボックス94は、織機1の前後方向において駆動側フレーム12と重複して設けられている。また、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82が原動ボックス94内に収容された原動歯車列92と連結されることから、駆動伝達軸82は、原動ボックス94における一対の側壁94a、94bのうちの他方の側壁94bを貫通し、その他端部側の部分が原動ボックス94内に位置する(原動ボックス94に収容される)こととなる。そこで、その原動ボックス94における他方の側壁94bには、そのような駆動伝達軸82の貫通を許容する貫通孔94dが形成されている。
【0030】
その上で、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82は、その他端部において原動ボックス94における一方の側壁94aに対し軸受を介して支持されている。但し、その原動ボックス94は、その駆動伝達軸82が貫通する他方の側壁94bが駆動側フレーム12から離間するように設けられている。
【0031】
原動モータ20は、前記のように支持された駆動伝達軸82に対し上方に離間した位置で、出力軸22を駆動側フレーム12の側へ向ける向きで、ボルト等(図示略)によって原動ボックス94に取り付けられている。なお、その原動モータ20が取り付けられる原動ボックス94における一方の側壁94aには、その取り付け位置において、原動モータ20の出力軸22の貫通を許容する貫通孔94cが形成されている。したがって、前記のように原動ボックス94に原動モータ20が取り付けられた状態では、その出力軸22は、原動ボックス94内で前記幅方向に延在すると共に、駆動伝達軸82と平行を成すように存在している。その上で、その出力軸22は、原動ボックス94内において、駆動伝達軸82の他端部側の部分に対し原動歯車列92を介して連結されている。
【0032】
その原動歯車列92は、駆動軸30と駆動伝達軸82とを連結する歯車列84と同じく、2つの歯車で構成されている。具体的には、原動歯車列92は、原動モータ20の出力軸22に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車92aと、その駆動歯車92aに噛合する従動歯車92bであって駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車92bとで構成されている。
【0033】
また、本実施例では、フレーム本体14は、その外壁部14aにおける駆動伝達軸82が突出する貫通孔14dの周囲において外壁部14aから原動ボックス94の側へ向けて突出するように形成された突出部14eであって、その内部の空間が貫通孔14dに連通する中空状の突出部14eを有している。一方、原動ボックス94も、その他方の側壁94bにおける駆動伝達軸82が貫通する貫通孔94dの周囲において他方の側壁94bから駆動側フレーム12の側へ向けて突出するように形成された突出部94eであって、その内部の空間が貫通孔94dに連通する中空状の突出部94eを有している。
【0034】
その両突出部14e、94eは、前記幅方向に関しその突出端側で重複するような大きさ(突出量)であると共に、一方(図示の例では、駆動側フレーム12側)の突出部14eが他方(原動ボックス94側)の突出部94eに対し嵌まり込むような大きさに形成されている。したがって、駆動側フレーム12の貫通孔14dと原動ボックス94側の貫通孔94dとは、その両突出部14e、94eの内部の空間を介して連通している。すなわち、そのフレーム10の構成では、駆動側フレーム12内の空間と原動ボックス94内の空間とが貫通孔14d、94d及び突出部14e、94e内の空間を介して連通するようになっている。但し、本実施例では、その突出部14e、94e内の空間において、突出部14e、94eの内周面と駆動伝達軸82との間にオイルシール100が設けられており、前記した駆動側フレーム12内の空間と原動ボックス94内の空間との連通状態がそのオイルシール100により遮断されている。すなわち、駆動側フレーム12内の空間と原動ボックス94内の空間とは、互いに独立した状態となっている。
【0035】
以上のように構成された本実施例の織機1によれば、原動モータ20(出力軸22)の回転を主軸5に伝達する駆動伝達機構80における駆動伝達軸82であって、主軸5に連結されると共に原動モータ20によって回転駆動される駆動伝達軸82は、その一端部側の部分が駆動側フレーム12に収容されると共に、駆動側フレーム12内において駆動軸30と連結されている。しかも、その駆動側フレーム12における駆動伝達軸82が設けられる位置は、フレームカバ16が取り付けられるフレーム本体14における開放部14cの範囲外となっている。その上で、原動モータ20は、駆動側フレーム12から離間して設けられた原動ボックス94において、フレームカバ16と対向しない側面(外側面94a1)に設けられている。すなわち、原動モータ20は、フレームカバ16の取り外しの障害とならないように、駆動側フレーム12から離間した位置に設けられている。
【0036】
したがって、そのように構成された織機1においては、駆動軸30と駆動伝達軸82(駆動伝達機構80)との連結状態を維持したまま、駆動側フレーム12において、フレーム本体14からフレームカバ16を取り外すことが可能となっている。それにより、駆動側フレーム12内の揺動機構60等のメンテナンスを行うにあたって、そのフレームカバ16を取り外す作業が従来の織機と比べて簡略化され、その結果として、そのメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0037】
また、本実施例では、駆動伝達軸82が、駆動側フレーム12及び原動ボックス94間に亘って設けられている。そして、そのような構成の場合においては、駆動伝達軸82における駆動側フレーム12と原動ボックス94との間の部分が覆われているのが好ましい。その上で、本実施例では、その織機1は、駆動側フレーム12及び原動ボックス94を前記のように貫通孔14d、94dが連通する突出部14e、94eが形成されたものとし、その両突出部14e、94eが連結されて駆動伝達軸82が覆われる構成とされている。すなわち、駆動側フレーム12及び原動ボックス94自体で駆動伝達軸82を覆う構成が採用されている。それにより、部品点数を増やすこと無く、その駆動伝達軸82を覆うような構成が実現されている。
【0038】
なお、そのように駆動側フレーム12と原動ボックス94とを突出部14e、94eを介して連結する構成とした場合、前記のように駆動側フレーム12内の空間と原動ボックス94内の空間とが連通するかたちとなるが、本実施例では、突出部14e、94eの内部にオイルシール100を設け、そのオイルシール100により両空間の連通を遮断するような構成としている。それにより、両空間が独立した状態となることから、例えばそれぞれの空間内に配置される歯車列84、92を潤滑に駆動するための潤滑油を、その歯車列84、92に適した種類の潤滑油とすることができる。
【0039】
以上では、本発明が適用された織機の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0040】
(1)駆動伝達機構について、前記実施例は、一端部側の部分が駆動側フレーム12に収容される駆動伝達軸82を原動ボックス94まで延在するものとした上で、その駆動伝達軸82に対し原動モータ20に連結される原動歯車列92を構成する歯車の1つ(従動歯車92b)が取り付けられることで、駆動伝達軸82と原動モータ20とが連結されるように駆動伝達機構80を構成した例となっている。しかし、駆動伝達機構は、そのように構成されたものに限らず、駆動伝達軸とは別の軸(中間軸)であって原動歯車列によって原動モータと連結される中間軸が、カップリング部材等で駆動伝達軸と連結されるように構成しても良い。
【0041】
なお、その場合、その中間軸は、その一端部が原動ボックスにおける前記した一方の側壁に支持されるかたちで設けられる。その上で、中間軸を原動ボックスにおける他方の側壁から突出するようなものとし、その中間軸と駆動伝達軸との連結が、フレーム本体及び原動ボックスの連結された両突出部内で行われるようにしても良い。又は、駆動伝達軸を原動ボックスにおける他方の側壁を貫通して原動ボックス内まで延在するものとし、原動ボックス内でその連結が行われるようにしても良い。
【0042】
また、駆動伝達機構において原動モータと駆動伝達軸又は前記した中間軸とを連結する構成(連結構成)は、前記実施例のような駆動歯車92a及び従動歯車92bの2つの歯車から成る原動歯車列92には限らない。例えば、その連結構成は、同じく歯車列で構成されたものであっても、3以上の歯車から成る歯車列であっても良い。また、その連結構成は、歯車列で構成されたものに限らず、原動モータの出力軸に取り付けられたプーリと駆動伝達軸に取り付けられたプーリとをタイミングベルトで連結するように構成されたものであっても良い。
【0043】
なお、そのようなタイミングベルトを用いた連結構成の場合、前記実施例のような駆動側フレーム12とは別の原動ボックス94を省略することが可能である。そして、その場合、駆動伝達軸の他端部側の支持は、駆動伝達軸におけるプーリが取り付けられる位置よりも駆動側フレーム側に位置する部分がフレーム本体の外壁部に対し支持されるかたちとすれば良い。また、原動モータの支持は、例えばフレーム本体に取り付けられた支持ブラケット等により、原動モータをフレームカバの取り外しに障害とならないように駆動側フレームから離間した位置で行われるようなかたちとすれば良い。
【0044】
また、その連結構成は、前記のような歯車列やタイミングベルト等を用いて構成されたものに限らず、原動モータの出力軸と駆動伝達軸とをカップリング部材等によって直接的に連結するように構成されたものであっても良い。
【0045】
(2)駆動伝達機構における駆動軸と駆動伝達軸との連結について、前記実施例では、駆動軸30と駆動伝達軸82とが、駆動歯車84a及び従動歯車84bの2つの歯車から成る歯車列84により連結されている。また、その連結位置は、前記幅方向に関し、駆動軸30の偏心部32に対する駆動側フレーム12の内側壁12bの側となっている。しかし、駆動軸30と駆動伝達軸82とを連結する歯車列は、前記実施例のような2つの歯車から成るものに限らず、3以上の歯車から成るものであっても良い。また、その連結位置は、前記幅方向に関し、駆動軸30の偏心部32に対する駆動側フレーム12の外側壁12aの側であっても良い。
【0046】
(3)駆動側フレーム及び原動ボックスについて、前記実施例では、駆動側フレーム12及び原動ボックス94を前記のような突出部14e、94eが形成されたものとし、その両突出部14e、94eにより駆動側フレーム12の外側壁12aと原動ボックス94の他方の側壁94bとの間に位置する駆動伝達軸82(あるいは前記した中間軸)の部分(軸部分)を覆うように織機1が構成されている。そのように前記の軸部分を覆うべく設けられる前記の突出部について、駆動側フレーム及び原動ボックスの両方に形成されて両側壁間で連結されるように設けられたものには限らず、駆動側フレーム及び原動ボックスの一方のみに対し他方にまで延在するように形成されて他方に連結されるように設けられたものであっても良い。
【0047】
また、そのように駆動側フレーム及び/又は原動ボックスに設けられる突出部は、それが設けられる駆動側フレーム又は原動ボックスのそれ以外の部分に対し一体的に形成されたものに限らず、別体の部材として形成され、前記の駆動側フレーム又は原動ボックスの部分に取り付けられるものであっても良い。
【0048】
また、前記軸部分を覆うための構成(部分、部材)は、前記のような駆動側フレーム及び/又は原動ボックスの一部として設けられたものには限らず、駆動側フレーム及び原動ボックスとは別の部材として形成され、駆動側フレームと原動ボックスとの間でそれぞれから独立して設けられるものであっても良い。但し、本発明の織機においては、以上のような前記軸部分を覆うための構成は必ずしも必要では無く、駆動側フレームと原動ボックスとの間で前記軸部分が露出するように、その織機が構成されていても良い。
【0049】
また、前記実施例では、前記のように突出部14e、94eが連結されることで連通し得る状態となっている駆動側フレーム12内の空間と原動ボックス94内の空間との連通状態を遮断して両空間を独立した状態とするために、突出部14e、94eの内部にオイルシール100を設けている。しかし、本発明の織機においては、その構成等によっては前記両空間を必ずしも独立した状態とする必要は無いため、そのオイルシールは省略可能である。
【0050】
(4)揺動機構について、前記実施例は、揺動機構60としてクランク機構が採用された織機に対して本発明を適用した例である。そして、前記実施例では、揺動機構60における揺動アーム62が揺動軸50と一体的に形成されたものとなっている。しかし、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構であっても、揺動アームと揺動軸とが別部材として形成された上で、両者が相対回転不能に連結されるように構成されたものであっても良い。また、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構に限らず、カム機構であっても良い。そして、その場合には、カムが取り付けられる軸が、本発明で言う駆動軸となる。
【0051】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 織機
5 主軸
10 フレーム
12 駆動側フレーム(サイドフレーム)
12a 駆動側フレームの外側壁
12b 駆動側フレームの内側壁
14 フレーム本体
14a フレーム本体の外壁部
14b フレーム本体の内壁部
14c 開放部
14d 貫通孔
14e 突出部
16 フレームカバ
20 原動モータ
22 出力軸
30 駆動軸
32 偏心部
40 筬打ち装置
42 筬
44 ロッキング軸
50 揺動軸
60 揺動機構
62 揺動アーム
64 連結レバ
70 カップリング部材
72 カップリング部材
80 駆動伝達機構
82 駆動伝達軸
84 歯車列
84a 駆動歯車
84b 従動歯車
90 原動機構
92 原動歯車列
92a 駆動歯車
92b 従動歯車
94 原動ボックス
94a 一方の側壁
94a1 外側面
94b 他方の側壁
94c 貫通孔
94d 貫通孔
94e 突出部
100 オイルシール