(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20240423BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02K1/12 Z
H02K5/16
(21)【出願番号】P 2020104898
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】中原 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利文
(72)【発明者】
【氏名】天池 将
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀一
(72)【発明者】
【氏名】米岡 恭永
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大作
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 潤
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6208331(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/12
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心にコイルが巻回された複数の固定子コアと、
前記複数の固定子コアが環状に配列された固定子と、
前記固定子にエアギャップを介して対向する回転子と、
前記固定子を覆うハウジングと、
前記鉄心の側面を封止するモールド樹脂であって、前記回転子と対向する対向面を有するモールド樹脂と、
前記鉄心の周囲を取り囲むように前記対向面上に設けられ、前記鉄心の周囲の一部に切欠き部を有するリング状の第1導電体であって、前記ハウジングと電気的に接続された第1導電体と、
前記対向面上で前記鉄心における前記固定子の内径側と外径側の少なくとも一方に位置し、前記第1導電体と前記鉄心とを電気的に接続するように設けられた第2導電体と
を備え
、
前記第1導電体及び前記第2導電体が、導電性塗料または導電性接着剤であることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項2】
請求項
1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第2導電体は、前記鉄心と前記第1導電体の上に塗布されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記固定子は、中央に貫通孔を有し、
前記切欠き部は、前記貫通孔の開口縁を形成するモールド樹脂に接続することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項
3のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記切欠き部は、前記鉄心における前記固定子コアの内径側に位置することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記ハウジングには、前記モールド樹脂と嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記モールド樹脂のうち、前記第1導電体と前記コイルの間に位置するモールド樹脂が、前記第1導電体と前記コイルに接触することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第1導電体と前記第2導電体が、同じ導電部材により形成されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第1導電体と前記第2導電体が、異なる導電部材により形成されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記鉄心は、前記固定子の径方向に積層された複数の鋼板を備え、
前記第2導電体は、前記鉄心の前記回転子に対向する端面に線状に設けられ、前記複数の鋼板を電気的に接続することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項10】
鉄心の側面を覆うボビンを介してコイルが巻回された複数の固定子コアと、
前記複数の固定子コアが環状に配列された固定子と、
前記固定子にエアギャップを介して対向する回転子と、
前記固定子を覆うハウジングと、
前記ボビンの端部に設けられた鍔部であって、前記回転子と対向する対向面を有する鍔部と、
前記鉄心の周囲を取り囲むように前記対向面上に設けられ、前記鉄心の周囲の一部に切欠き部を有するリング状の第1導電体であって、前記ハウジングと電気的に接続された第1導電体と、
前記対向面上で前記鉄心における前記固定子の内径側に位置し、前記第1導電体と前記鉄心とを電気的に接続するように設けられた第2導電体とを備え
、
前記第1導電体及び前記第2導電体が、導電性塗料または導電性接着剤であることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項11】
請求項1
0のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第2導電体は、前記鉄心と前記第1導電体の上に塗布されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項12】
請求項1
0のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第1導電体と前記第2導電体が、同じ導電体により形成されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項13】
請求項1
0のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記第1導電体と前記第2導電体が、異なる導電体により形成されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアキシャルギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸方向において、所定のエアギャップを介して固定子と回転子とが対向するアキシャルギャップ型回転電機は、コイルと回転子の間の静電容量が大きくなり易く、軸電圧が発生し易い。特に、固定子コアがモールド樹脂により封止された固定子は、固定子コアがモールド樹脂により電気的に絶縁されるため、固定子の電位が浮遊電位となり、コイルと回転子の間の静電容量が一層大きくなって軸電圧がさらに増加する。この軸電圧が軸受の油膜の絶縁破壊電圧を超えると、軸受には電食が発生し、軸受の寿命が短くなる。この軸電圧を低減する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているアキシャルギャップ型回転電機は、鉄心における固定子の外径側の側面とハウジングを板状導電体により電気的に接続させ、鉄心を接地電位にして軸電圧を低減させるとともに、ボビンの鍔部の回転子と対向する対向面上にテープ状導電体を配置してコイルと回転子の間を遮蔽し、静電容量を低減して軸電圧をさらに低減している。しかし、板状導電体とテープ状導電体は、取り付ける場所に合った形状に予め加工しておく工程が必要となる。
【0005】
そこで、発明者は、取り付ける場所に合った形状に予め加工しておく工程が不要な代替部材により、鉄心とハウジングを電気的に接続させ、コイルと回転子の間を遮蔽すれば、生産性を向上できることを思いついた。さらに、発明者は、経年劣化により鉄心とモールド樹脂の間または鉄心とボビンの間に隙間が生じる虞があり、上記代替部材を用いて鉄心とハウジングを電気的に接続する場合にはこの点に留意する必要があることを知見した。
【0006】
本発明の目的は、固定子の生産性を向上させるとともに、鉄心とハウジングの電気的接続が、経年劣化により断線することを抑止できるアキシャルギャップ型回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、鉄心にコイルが巻回された複数の固定子コアと、前記複数の固定子コアが環状に配列された固定子と、前記固定子にエアギャップを介して対向する回転子と、前記固定子を覆うハウジングと、前記鉄心の側面を封止するモールド樹脂であって、前記回転子と対向する対向面を有するモールド樹脂と、前記鉄心の周囲を取り囲むように前記対向面上に設けられ、前記鉄心の周囲の一部に切欠き部を有するリング状の第1導電体であって、前記ハウジングと電気的に接続された第1導電体と、前記対向面上で前記鉄心における前記固定子の内径側と外径側の少なくとも一方に位置し、前記第1導電体と前記鉄心とを電気的に接続するように設けられた第2導電体とを備え、前記第1導電体及び前記第2導電体が、導電性塗料または導電性接着剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアキシャルギャップ型回転電機によれば、固定子の生産性を向上させるとともに、経年劣化による電食の発生を抑止し、寿命の低下を抑止できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機の断面斜視図である。
【
図2】比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子の軸方向断面図である。
【
図3】比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機の、固定子と回転子とハウジングの斜視図である。
【
図4】比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、導電体が設けられた側の軸方向から見た模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、回転子側から見た模式図である。
【
図6】本発明の第2実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、回転子側から見た模式図である。
【
図7】本発明の第3実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、回転子側から見た模式図である。
【
図8】本発明の第4実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、回転子側から見た模式図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の嵌合部の拡大斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子の軸方向断面図である。
【
図11】本発明の第6実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子を、回転子側から見た模式図である。
【
図12】本発明の第6実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第5の実施形態によるアキシャルギャップ型回転電機の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
【0011】
図1は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機の断面斜視図である。
図1に示すように比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100は、2枚の回転子が固定子を挟み込んだダブルロータ型である。
【0012】
アキシャルギャップ型回転電機100は、固定子2と、2枚の回転子3、シャフト4と、ハウジング5と、2つの軸受6と、フロントハウジング7と、バックハウジング8とを備えている。
【0013】
固定子2は、複数の固定子コア21を環状に配列した電機子である。固定子コア21は、鉄心22とボビン23とコイル24とを備える。鉄心22は所定の形状に打抜いた電磁鋼板等の軟磁性薄板を固定子2の径方向に積層した鉄の塊である。なお、軟磁性薄板には、鉄損を減少させるため、アモルファス金属を用いることが好ましい。ボビン23は筒状の樹脂である。ボビン23には鉄心22が挿入される。コイル24は磁界を発生させる電線で、ボビン23に巻回されている。
【0014】
回転子3は、複数の磁石31と、バックヨーク32と基台33とを有する。複数の磁石31は、基台33の固定子2側の面にバックヨーク32を介して環状に固定されるとともに、エアギャップを介して固定子2に対向する。バックヨーク32は、帯状の電磁鋼板を巻回した巻き鉄心で、基台33の固定子2側の面に設けられた円環状の溝33aに固定されている。基台33は、円環状の溝33aと貫通孔33bを有する円板状の非磁性体である。貫通孔33bは、基台33の中央に設けられ、シャフト4が挿入される。
【0015】
シャフト4は回転軸で、2つの軸受6により支持されている。また、2つの軸受6のそれぞれは、フロントハウジング7とバックハウジング8に固定されている。
【0016】
ハウジング5は、固定子2を覆う部品である。ハウジング5には、フロントハウジング7とバックハウジング8が取り付けられている。フロントハウジング7とバックハウジング8は円盤状の部品で、ハウジング5の両端に取り付けられ、ハウジング5の開口を塞ぐ。
【0017】
図2は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子の軸方向断面図である。ハウジング5には、固定子2を覆う円筒部51の内周面から内径方向に円板状のガイド部52が突き出ている。ガイド部52によって固定子2はハウジング5内の所定場所に位置決めされる。
【0018】
また、ハウジング5内の所定場所に位置決めされた固定子2は、モールド樹脂9によりモールドされている。モールド樹脂9は、ガイド部52の回転子3に対向する対向面521が露出するように固定子2をハウジング5内にモールドする成形材料で、中央に貫通孔である軸心穴25を有する。モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91のうち、ガイド部52の対向面521が露出する側の対向面91上には導電体10が設けられている。導電体10は、鉄心22とガイド部52に接触している。
【0019】
図3は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機の、固定子と回転子とハウジングの斜視図である。なお、固定子コ
ア21の配置とモールド樹脂9の形状を明らかにするため、ハウジング5の円筒部前側と導電体10とガイド部52とを省略して示した。
図3に示すように、モールド樹脂9は、複数の固定子コア21を環状に配列した固定子2をモールドし、ハウジング5に固定している。
【0020】
図4は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100の固定子2とハウジング5を、導電体10が設けられた側の軸方向から見た模式図である。
【0021】
前記のとおり、モールド樹脂9には中央に貫通孔である軸心穴25が設けられ、回転子3に対向する対向面91上に設けられた導電体10が、鉄心22とガイド部52に接触している。そのため、導電体10は、ハウジング5と鉄心22を電気的に接続している。このことにより、鉄心22は導電体10を介してハウジング5によりアースされ、鉄心22の電位が浮動電位となることを防止され、軸電圧の発生が抑制されている。
【0022】
導電体10には、設けた(塗布した)後に硬化する液状の導電性部材、例えば、導電性塗料または導電性接着剤(以下、導電性塗料等という。)が用いられる。そのため、導電体10を予め取り付ける場所に合った形状に加工しておく工程が不要となり、生産性を向上させることができる。
【0023】
導電性塗料等のベース基材には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が、単独または混合して使用される。また、導電性塗料等の導電性粒子には、導電性を有する物質、例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミニウム、炭素が用いられ、特に電気抵抗値が低い物質(即ち、導電性が高い物質)、例えば、銀や銅が好ましい。また、加熱溶融後固化するペースト状導電性粒子を導電体10に用いてもよい。
【0024】
また、導電体10は非磁性体であることが好ましい。非磁性体の導電体10は、コイル24から回転子3へ誘起されるコモンモード電圧による静電結合を遮蔽(シールド)する。これにより、軸受6に加わる電圧は低減され、軸受6の電食は抑制される。したがって、非磁性体の導電体10は、固定子2の回転子3に対向する対向面上の全てに設けることが好ましい。
【0025】
一方、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100は以下の課題がある。即ち、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に塗布された導電体10により、複数の鉄心22の各々を取り囲む複数の環状部101が形成される。そのため、複数の環状部101の各々に沿って電流が流れ、導電体10には複数の渦電流が発生する。また、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に塗布された導電体10により、軸心穴25を取り囲む円環部102が形成される。そのため、導電体10には円環部102に沿って渦電流が発生する。したがって、アキシャルギャップ型回転電機100は、渦電流損の増加による効率の低下という課題がある。
【0026】
また、アキシャルギャップ型回転電機100を長期間使用すると、モールド樹脂9の鉄心22の側面の各々を封止する封止面92~95が変形し、鉄心22の各側面から分離し、封止面92~95と鉄心22の各側面の間に隙間が生じる場合がある。封止面92~95と鉄心22の各側面の間に隙間が生じると、導電体10が亀裂し、導電体10と鉄心22の電気的接続が切断してしまう。すると、鉄心22の電位は浮遊電位となってしまい、軸電圧が発生する。したがって、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100は、長期間使用すると、軸受6に電食が発生し寿命が低下するという課題がある。
【0027】
(第1の実施形態)
図5は、本発明の第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1のハウジング5と固定子2を、回転子3の側から見た模式図である。本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1が比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100と異なる点は、導電体10の構成と形状と配置である。
【0028】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の導電体10は、第1導電体11と複数(鉄心22と同数)の第2導電体12により構成される。
【0029】
第1導電体11は、鉄心22の周囲を取り囲むように、固定子コア21を封止するモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に設けられ、鉄心22の周囲の一部に切欠き部13を有するリング状の導電体で、ハウジング5と電気的に接続されている。
【0030】
次に、
図5を用いて本実施形態に係る第1導電体11を詳細に説明する。第1導電体11は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に塗布された導電性塗料等で、外径部111と複数の間部112と内径部113と複数の切欠き部13を有する。
【0031】
外径部111は、環状に配置された複数の鉄心22の外側の側面を封止するモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に塗布された環状の導電性塗料等である。外径部111と複数の鉄心22の各々との間には、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91から突起する第1絶縁帯141が設けられている。そのため、外径部111は第1絶縁帯141により複数の鉄心22の各々に対して絶縁されている。また、外径部111の外径方向の端は、ハウジング5のガイド部52と接している。そのため、第1導電体11とハウジング5は、電気的に接続している。
【0032】
複数の間部112は、複数の鉄心22のうち隣合う2つの鉄心22の側面を封止するモールド樹脂9の回転子3に対向する複数の対向面91上に塗布された矩形状の導電性塗料等である。隣合う2つの鉄心22と、複数の間部112の各々の間には、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91から突起する第2絶縁帯142と第3絶縁帯143が各々設けられている。そのため、複数の間部112の各々は、第2絶縁帯142と第3絶縁帯143により、隣合う2つの鉄心22の各々に対して絶縁されている。
【0033】
内径部113は、環状に配置された複数の鉄心22の内側の側面を封止するモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上に塗布された環状の導電性塗料等である。内径部113と複数の鉄心22の各々との間には、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91から突起する第4絶縁帯144が設けられている。そのため、内径部113は、第4絶縁帯144により複数の鉄心22の各々に対して絶縁されている。また、内径部113の内径方向の端は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91から軸心穴25に沿って環状に突起する環状凸部251に接する。したがって、内径部113は、環状凸部251により軸心穴25に対して隔てられている。そのため、内径部113を塗布する工程において、導電性塗料等が軸心穴25に流出することを防止できる。
【0034】
外径部111と複数の間部112と内径部113の各々を形成する導電性塗料等は接続する。そのため、複数の鉄心22の各々は、外径部111と複数の間部112と内径部113の各々を形成する導電性塗料等により取り囲まれている。そのため、複数の鉄心22の各々の周囲には、複数の鉄心22の各々を環状に取り囲む導電性塗料等である環状部114が形成されている。したがって、第1導電体11は、環状に配置された複数の鉄心22の各々の周囲を取り囲む環状部114を形成する導電性塗料等の集合体となっている。
【0035】
また、第1絶縁帯141~第4絶縁帯144により、複数の鉄心22の各々の周囲を取り囲む環状の絶縁帯14が形成されている。そのため、複数の鉄心22の各々と第1導電体11は、絶縁帯14により絶縁されている。
【0036】
切欠き部13は、鉄心22を取り囲む環状部114を電気的に切断する部分である。切欠き部13が環状部114を電気的に切断することにより、環状部114に沿って流れる電流は遮断され、渦電流の発生を防止できる。
【0037】
切欠き部13は、具体的にはモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91から突起し、環状部114の内側と外側の絶縁部に接続する絶縁体である。切欠き部13が環状部114の内側と外側の絶縁部に接続することにより、環状部114は電気的に切断される。逆に、切欠き部13が環状部114の内側または外側の導電体に接続する場合には、環状部114は電気的に切断されない。例えば、切欠き部13が環状部114の外側の導電体であるハウジング5のガイド部52に接続する場合、環状部114に沿って流れる電流は、切欠き部13と接続するガイド部52を流れて遮断されない。
【0038】
なお、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の切欠き部13は、環状部114の内側の絶縁部として第4絶縁帯144と接続し、環状部114の外側の絶縁部として環状凸部251に接続する。
【0039】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の切欠き部13は、前記のとおり環状凸部251に接続する。そのため、内径部113は切欠き部13により切断されている。
【0040】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100と同様に、長期間使用すると鉄心22の側面の各々を封止するモールド樹脂9の封止面92~95が変形して鉄心22から遊離し、封止面92~95と鉄心22の間に隙間が生じる場合がある。
【0041】
発明者らは、この隙間の発生が、固定子2の周方向に鉄心22の側面を封止する封止面92,93で多く、固定子2の内径側と外径側で鉄心22の側面を封止する封止面93、94で少なく、固定子2の内径側で鉄心22の側面を封止する封止面94で最も少ない傾向になっていることを、長期間使用したアキシャルギャップ型回転電機から知見した。そのため、本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面上で鉄心22における固定子2の内径側と外径側の少なくとも一方に位置し、第1導電体11と鉄心22とを電気的に接続するように塗布された導電体塗料等である第2導電体12を備える。
【0042】
特に、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、
図5に示すように、第2導電体12がモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で鉄心22における固定子2の内径側に位置し、環状に配置された複数の鉄心22の各々の内径側の内径部222と、第1導電体11の内径部113とを電気的に接続する。
【0043】
また、第2導電体12は、
図5に示すように、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上だけでなく、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221と、第1導電体11の内径部113の上に塗布してもよい。
【0044】
また、第2導電体12は、複数の鋼板を固定子2の径方向に積層した鉄心22の回転子3に対向する端面221に線状に塗布し、複数の鋼板を電気的に接続してもよい。
【0045】
なお、第1導電体11と第2導電体12は、同じ導電部材により形成されていてもよい。
【0046】
また、第1導電体11と第2導電体12は異なる導電部材、例えば、第1導電体11に導電性塗料等を用い、第2導電体12に粘着層に導電性のフィラーを混ぜたテープである導電性テープにより形成してもよい。その理由は、下記のとおりである。
【0047】
第1導電体11はモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上のみに設けられ、複数の鉄心22の各々を取り囲み、切欠き部13を備え、円弧や矩形が組み合わさった複雑な形状となっている。それに対し、第2導電体12は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上と鉄心22の回転子3に対向する端面221上と第1導電体11上の3つの異なる部分に設けられ、矩形という単純な形状となっている。
【0048】
一方、導電性塗料等は、塗布した後に硬化する液状であるため、前記の通り、取り付ける場所に合った形状に予め加工しておく工程が不要となる。また、複雑な形状であっても容易に対応できる。しかし、導電性塗料等は液体であるため、塗布をする材質の親和性により、濃淡や変形が発生する場合がある。そのため、導電性塗料等を一つの面に塗布する場合、同じ材質により形成された面に塗布することが好ましい。また、導電性塗料等は、塗布した後に硬化するため、塗布する面に密着する。そのため、塗布する面が亀裂すると導電性塗料等も亀裂しやすい。これらより、第1導電体11に適する。
【0049】
他方、導電性テープは固体であるため、複雑な形状に容易に対応することは困難である。しかし、塗布をする材質に依らず貼り付けられ、濃淡や変形が発生しない。そのため、導電性テープは異なる材質により形成された面に塗布することができる。また、導電性テープは、固体を貼り付けるため、塗布する面に密着しない。そのため、塗布する面が亀裂しても導電性テープは亀裂しにくい。これらより、第2導電体12に適する。
[効果]
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、第1導電体11がハウジング5と電気的に接続するため、第1導電体11をハウジング5によりアースでき、第1導電体11の電位が浮動電位となることを防止し、軸電圧の発生を抑止できる。
【0050】
また、複数の鉄心22の各々は、複数の第2導電体12の各々により、第1導電体11と電気的に接続している。そのため、複数の鉄心22の各々を、第1導電体11と複数の第2導電体12を介してハウジング5によりアースでき、複数の鉄心22の各々の電位が浮動電位となることを防止し、軸電圧の発生を抑止できる。
【0051】
特に、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の第2導電体12は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で、鉄心22における固定子2の内径側に塗布される。即ち、アキシャルギャップ型回転電機1を長期間使用したときに、鉄心22の側面を封止するモールド樹脂9と鉄心22の側面の間に隙間が最も発生しにくい位置に第2導電体12は塗布されている。そのため、アキシャルギャップ型回転電機1を長期間使用しても、第2導電体12は破断されにくく、鉄心22と第1導電体11の電気的接続を維持できる。したがって、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、長期間使用しても軸受6に電食が発生しにくく、寿命の低下を抑止することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、第1導電体11に備わる複数の環状部114の各々に切欠き部13が設けられている。そのため、複数の環状部114の各々に沿って流れる電流を遮断できる。したがって、渦電流を抑止でき、アキシャルギャップ型回転電機1の効率の低下を抑止することができる。
【0053】
また、複数の切欠き部13の各々は、軸心穴25の開口縁を形成するモールド樹脂である環状凸部251に接続し、第1導電体11の内径部113を径方向に分断する。そのため、内径部113に沿って流れる電流を遮断できる。したがって、渦電流を抑止でき、アキシャルギャップ型回転電機1の効率の低下を抑止することができる。
【0054】
また、複数の切欠き部13の各々は、鉄心22における固定子コア21の内径側に位置する。そのため、複数の切欠き部13の各々の面積の拡大を防止でき、第1導電体11の面積の減少を抑制できる。したがって、シールド面積の減少を抑制できる。また、複数の切欠き部13の各々は、鉄心22における固定子コア21の内径側に位置するため、第1導電体11の塗布工数を抑制でき、生産性を向上できる。
【0055】
また、第1導電体11と第2導電体12は、導電性塗料等により構成されている。そのため、第1導電体11と第2導電体12を予め取り付ける場所に合った形状に加工しておく工程が不要となり、生産性を向上させることができる。
【0056】
また、第2導電体12は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上だけでなく、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221上と、第1導電体11の内径部113の上に塗布される。このことにより、第2導電体12は、複数の鉄心22の各々と第1導電体11の内径部113と接触する部分が広がる。そのため。複数の鉄心22の各々と第1導電体11の内径部113との電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、第1導電体11と第2導電体12を同じ導電部材より形成しても良い。このことにより、製造コストの抑制や作業効率の向上ができる。
【0058】
また、第1導電体11と第2導電体12を異なる導電部材より形成しても良い。このことにより、導電体の形状や導電体を設ける場所に適した導電部材を用いて、作業効率や耐久性等を向上させることができる。
【0059】
また、第2導電体12は、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に線状に塗布することが好ましい。このことにより、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に塗布された第2導電体12に渦電流が発生することを防ぐことができる。
【0060】
特に、第2導電体12は、複数の鋼板を固定子2の径方向に積層した鉄心22の回転子3に対向する端面221に線状に塗布され、複数の鋼板を電気的に接続することが好ましい。このことにより、鉄心22を構成する複数の鋼板の各々をアースでき、鉄心22の電位が浮動電位となることを確実に防止できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20のハウジング5と固定子2を、回転子3側から見た模式図である。
【0062】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1と異なる点は、第2導電体15の配置である。即ち、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で鉄心22における固定子2の外径側に位置し、環状に配置された複数の鉄心22の各々の外径側の外径部223と、第1導電体11の外径部111を電気的に接続する第2導電体15を備える。
[効果]
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20の第2導電体15は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で、鉄心22における固定子2の外径側に位置する。そのため、鉄心22の接地経路が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1より短く、接地経路の電気抵抗値を抑制することができる。したがって、複数の鉄心22の各々とハウジング5の電位差を第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1より低下でき、軸電圧の発生を抑止できる。
【0063】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20の第2導電体15は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で鉄心22における固定子2の外径側に位置している。そのため、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で鉄心22における固定子2の周方向の両側に位置させた第2導電体よりも、破断されにくく鉄心22と第1導電体11の電気的接続を維持できる。したがって、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20は、長期間使用しても軸受6に電食が発生しにくく、寿命の低下を抑止することができる。
【0064】
また、第2導電体15は、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に線状に塗布することが好ましい。このことにより、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に塗布された第2導電体15に渦電流が発生することを防ぐことができる。
【0065】
特に、第2導電体15は、複数の鋼板を固定子2の径方向に積層した鉄心22の回転子3に対向する端面221に線状に塗布され、複数の鋼板を電気的に接続することが好ましい。このことにより、鉄心22を構成する複数の鋼板の各々をアースでき、鉄心22の電位が浮動電位となることを確実に防止できる。
【0066】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機30のハウジング5と固定子2を、回転子3側から見た模式図である。
【0067】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機30は、
図7に示すように、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の第2導電体12と、第2実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機20の第2導電体15の双方を備える。
[効果]
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機30は、第2導電体12がモールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で、鉄心22における固定子2の内径側に位置する。即ち、アキシャルギャップ型回転電機30を長期間使用したときに、鉄心22を封止するモールド樹脂9と鉄心22の間に隙間が最も発生しにくい位置に第2導電体12は塗布されている。そのため、アキシャルギャップ型回転電機1を長期間使用しても、第2導電体12は破断されにくく、鉄心22と第1導電体11の電気的接続を維持できる。したがって、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機30は、長期間使用しても軸受6に電食が発生しにくく、寿命の低下を抑止することができる。
【0068】
さらに、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機30の第2導電体15は、モールド樹脂9の回転子3に対向する対向面91上で、鉄心22における固定子2の外径側に位置する。そのため、鉄心22の接地経路が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1より短く、接地経路の電気抵抗値を抑制することができる。したがって、複数の鉄心22の各々とハウジング5の電位差を第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1より低下でき、軸電圧の発生をさらに抑止できる。
【0069】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機40のハウジング5と固定子2を、回転子3側から見た模式図である。
【0070】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機40が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1と異なる点は、ガイド部52に嵌合部522が設けられ、ガイド部52及びモールド樹脂9の回転子3に対向する表面の嵌合部522を中心とする所定の領域16に第1導電体11が塗布されている点である。
【0071】
図9に本発明の第1の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の嵌合部522の拡大斜視図を示す。
図9に示すように、嵌合部522は、ガイド部52の内周壁523から円筒部51の外径方向に凹む凹部である。嵌合部522は、円筒部51の周方向における嵌合部522の隙間の幅が内径側より外径側において広くなる部分を有している。これにより、嵌合部522はくびれ形状の部分を有している。
【0072】
図8に示された所定の領域16は、嵌合部522に充填され固化したモールド樹脂9により、ガイド部52の内周壁に接するモールド樹脂9をガイド部52の内周壁から離れることを妨げることができる領域である。
【0073】
なお、所定の領域16は、嵌合部522の形状やモールド樹脂9の材質によって、その範囲が異なる。また、第1導電体11は、所定の領域16の全体に設けることが好ましいが、ガイド部52とモールド樹脂9の結合部分を含んだ所定の領域16の一部分に設けてもよい。
[効果]
嵌合部522に充填され固化したモールド樹脂9は、経年劣化等により固定子2の径方向に収縮してガイド部52の内周壁から離れる力が働いても、嵌合部522のくびれ形状の部分に嵌合し、ガイド部52の内周壁から離れることが抑制される。
【0074】
また、所定の領域16に第1導電体11が塗布されているため、長期間使用したアキシャルギャップ型回転電機1の鉄心22とハウジング5の電気的接続を維持することができる。これにより、軸受6の電食は引き続き抑制され、軸受電食に対する信頼性の高いアキシャルギャップ型回転電機40を提供できる。
【0075】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機50のハウジングと固定子の軸方向断面図である。
【0076】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機50が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1と異なる点は、鉄心22とコイル24が絶縁シート等の絶縁体26より絶縁され、第1導電体11とコイル24の間にボビン23の鍔部232を備えない点である。
【0077】
即ち、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1は、鉄心22を包む筒部231と、筒部231の両端開口付近から開口縁の形状に沿って周方向に延伸しコイル24の巻幅を規制する鍔部232をと備えるボビン23により鉄心22とコイル24が絶縁されている。それに対し、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機50は、筒部231のみ備え、鍔部232を備えない絶縁体26(例えば、絶縁シート)により鉄心22とコイル24が絶縁されている。そのため、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機50の第1導電体11とコイル24の間に位置するモールド樹脂9は、第1導電体11とコイル24に接触する。
[効果]
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機50は、絶縁体26が鍔部232を備えない。そのため、ボビン23を容易に製造でき、コストを抑制することができる。
【0078】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60のハウジング5と固定子2を、回転子3側から見た模式図である。また、
図12は、本発明の第6実施形態係るアキシャルギャップ型回転電機のハウジングと固定子の軸方向断面図である。
【0079】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60が第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1と異なる点は、導電体10がモールド樹脂9ではなくボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上に設けられている点である。
【0080】
即ち、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、鉄心22の側面を覆うボビン23を介してコイル24が巻回された複数の固定子コア21と、複数の固定子コア21が環状に配列された固定子2と、固定子2にエアギャップを介して対向する回転子3と、固定子2を覆うハウジング5と、ボビン23の端部に設けられた鍔部232であって、回転子3と対向する対向面233を有する鍔部232と、鉄心22の周囲を取り囲むように対向面233上に設けられ、鉄心22の周囲の一部に切欠き部13を有するリング状の第1導電体11であって、ハウジング5と電気的に接続された第1導電体11と、対向面233上で鉄心22における固定子2の内径側に位置し、第1導電体11と鉄心22とを電気的に接続するように設けられた第2導電体12とを備える。
【0081】
図11と
図12を用いて本実施形態に係る第1導電体11を詳細に説明する。第1導電体11は、ボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上に塗布された導電性塗料等で、鉄心22の周囲を取り囲む環状部114と切欠き部13を有する。
【0082】
環状部114は、ハウジング5のガイド部52と接する。そのため、第1導電体11とハウジング5は、電気的に接続している。また、環状部114と鉄心22の間には絶縁帯14が形成されている。絶縁帯14は、鍔部232の回転子3に対向する対向面233からボビン23の筒部231の開口に沿って環状に突起する絶縁体である。そのため、複数の鉄心22の各々と第1導電体11は、絶縁帯14により絶縁されている。
【0083】
切欠き部13は、鉄心22を取り囲む環状部114を電気的に切断する部分である。切欠き部13が環状部114を電気的に切断することにより、環状部114に沿って流れる電流は遮断され、渦電流の発生を防止できる。
【0084】
切欠き部13は、具体的には鍔部232の回転子3に対向する対向面233から突起し、絶縁帯14と鍔部232の外縁に接続する絶縁体である。
【0085】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、比較例に係るアキシャルギャップ型回転電機100と同様に、長期間使用すると鉄心22の各側面と接するボビン23の内側面234~237が変形して鉄心22から遊離し、内側面234~237と鉄心22の各側面の間に隙間が生じる場合がある。
【0086】
発明者らは、この隙間の発生が、第1実施形態と同じように、固定子2の周方向に鉄心22の側面と接する内側面234、235で多く、固定子2の内径側で鉄心22の側面と接する内側面237で最も少ない傾向になっていることを、長期間使用したアキシャルギャップ型回転電機から知見した。そのため、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、
図11に示すように、第2導電体12が鍔部232の回転子3に対向する対向面233上で鉄心22における固定子2の内径側に位置し、鉄心22の内径側の内径部222と、第1導電体11の内径部113とを電気的に接続する。
【0087】
また、第2導電体12は、
図11に示すように、鍔部232の回転子3に対向する対向面233上だけでなく、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221と、第1導電体11の内径部113の上に塗布してもよい。
【0088】
なお、第1導電体11と第2導電体12は、同じ導電体で形成してもよい。また、第1導電体11はボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上のみに設けられ、複数の鉄心22の各々を取り囲み、切欠き部13を備え、円弧や矩形が組み合わさった形状となっている。それに対し、第2導電体12は、ボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上と鉄心22の回転子3に対向する端面221上と第1導電体11上の3つの異なる部分に設けられ、矩形のみの単純な形状となっている。そのため、第1導電体11と第2導電体12は異なる導電体により形成してもよい。例えば、第1導電体11に導電性塗料を用い、第2導電体12に導電性テープを用いてもよい。
[効果]
本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、第1導電体11がハウジング5と電気的に接続するため、第1導電体11をハウジング5によりアースでき、第1導電体11の電位が浮動電位となることを防止し、軸電圧の発生を抑止できる。
【0089】
また、鉄心22は、第2導電体12により第1導電体11と電気的に接続している。そのため、鉄心22を第1導電体11と複数の第2導電体12を介してハウジング5によりアースでき、鉄心22の電位が浮動電位となることを防止し、軸電圧の発生を抑止できる。
【0090】
特に、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60の第2導電体12は、ボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上で、鉄心22における固定子2の内径側に塗布される。即ち、アキシャルギャップ型回転電機60を長期間使用したときに、鉄心22に接するボビン23の内側面と鉄心22の側面の間に隙間が最も発生しにくい位置に第2導電体12は塗布されている。そのため、アキシャルギャップ型回転電機60を長期間使用しても、第2導電体12は破断されにくく、鉄心22と第1導電体11の電気的接続を維持できる。したがって、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、長期間使用しても軸受6に電食が発生しにくく、寿命の低下を抑止することができる。
【0091】
また、本実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機60は、第1導電体11に切欠き部13が設けられている。そのため、環状部114に沿って流れる電流を遮断できる。したがって、渦電流を抑止でき、アキシャルギャップ型回転電機60の効率の低下を抑止することができる。
【0092】
また、第2導電体12は、ボビン23の鍔部232の回転子3に対向する対向面233上だけでなく、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221と、第1導電体11の内径部113の上に塗布される。このことにより、複数の鉄心22の各々と第1導電体11の内径部113との電気的接続を強固にすることができる。
【0093】
また、第1導電体11と第2導電体12を同じ導電体により形成しても良い。このことにより、作業効率を向上させることができる。
【0094】
また、第1導電体11と第2導電体12を、各々の配置する場所に適した材質を用いて、異なる導電体より形成しても良い。このことにより、作業効率や耐久性等を向上させることができる。
【0095】
また、第2導電体12は、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に線状に塗布することが好ましい。このことにより、複数の鉄心22の各々の回転子3に対向する端面221に塗布された第2導電体12に渦電流が発生することを防ぐことができる。
【0096】
特に、第2導電体12は、複数の鋼板を固定子2の径方向に積層した鉄心22の回転子3に対向する端面221に線状に塗布され、複数の鋼板を電気的に接続することが好ましい。このことにより、鉄心22を構成する複数の鋼板の各々をアースでき、鉄心22の電位が浮動電位となることを確実に防止できる。
【0097】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0098】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。アキシャルギャップ型回転電機はシングルロータ型でもよい。また、鉄心22は、磁性鉄粉を成型してもよい。また、12スロットの例を示したが他のスロット数でもよい。また、導電体10上に、他の材料、例えば、複合樹脂やフィルム、無機繊維を設けて、導電体10の接着性や密着性、耐熱性などを高めてもよい。また、導電性塗料が塗布される面を粗面にし、アンカー効果が作用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,20,30,40,50,60,100…アキシャルギャップ型回転電機、2…固定子、3…回転子、5…ハウジング、6…軸受、9…モールド樹脂、10…導電体、11…第1導電体、12,15…第2導電体、13…切欠き部、21…固定子コア、22…鉄心、23…ボビン、24…コイル、91,233,521…対向面