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特許7477378粒子ソーター、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】粒子ソーター、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/149 20240101AFI20240423BHJP
   G01N 15/1409 20240101ALI20240423BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N15/149
G01N15/1409 100
G01N37/00 101
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020105774
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000611
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】蔡 坤鵬
(72)【発明者】
【氏名】マンカー シュリティ
(72)【発明者】
【氏名】マスロバ アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】阿尻 大雅
(72)【発明者】
【氏名】阪井 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 俊介
(72)【発明者】
【氏名】世取山 翼
(72)【発明者】
【氏名】田川 礼人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 武宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 佳昭
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050778(JP,A)
【文献】特開2014-029327(JP,A)
【文献】特開平07-242003(JP,A)
【文献】特開2010-151777(JP,A)
【文献】特表2018-522206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0213821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる標的粒子を検出するための検出領域、および、検出された前記標的粒子を含む標的粒子含有試料を分取するための分岐した分取領域を有する第1流路と、前記標的粒子含有試料を前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送するための第2流路と、が形成されたマイクロ流路カートリッジと、
前記マイクロ流路カートリッジが設置される設置部と、
前記マイクロ流路カートリッジ内の液体を送液する送液部と、
前記検出領域を通過する前記標的粒子に対応する信号を出力する検出部と、
前記検出部からの信号に基づき、前記分取領域において、前記標的粒子含有試料を分取するための分取動作を行う分取機構部と、
前記分取機構部により分取された前記標的粒子含有試料を、前記第2流路を介して前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送するように前記送液部を制御し、返送された前記標的粒子含有試料に対して前記分取動作を行うように、前記分取機構部を制御する制御部と、を備える、粒子ソーター。
【請求項2】
前記制御部は、
前記試料を前記マイクロ流路カートリッジの前記第1流路へ送液するように前記送液部を制御し、前記検出部からの信号に基づいて、前記分取動作を行うように前記分取機構部を制御することにより前記標的粒子含有試料を分取する第1分取工程と、
前記第1分取工程により分取された前記標的粒子含有試料を前記第2流路を介して前記第1流路へ返送するように前記送液部を制御する返送工程と、
返送された前記標的粒子含有試料を前記第1流路の前記検出領域および前記分取領域へ送液するように前記送液部を制御し、前記検出部からの信号に基づいて、前記分取動作を行うように前記分取機構部を制御する第2分取工程と、
を実行する、請求項1に記載の粒子ソーター。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1分取工程における前記試料の流速が、前記第2分取工程における前記標的粒子含有試料の流速よりも大きくなるように、前記送液部を制御する、請求項2に記載の粒子ソーター。
【請求項4】
前記制御部は、前記標的粒子含有試料を希釈するように前記送液部を制御し、希釈された前記標的粒子含有試料に対して、前記分取動作を行うように、前記分取機構部を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項5】
前記マイクロ流路カートリッジには、分取された前記標的粒子含有試料を回収する回収チャンバがさらに形成されており、
前記制御部は、前記標的粒子含有試料を前記回収チャンバ内で希釈するように、前記送液部を制御する、請求項4に記載の粒子ソーター。
【請求項6】
前記制御部は、希釈液を貯留している前記回収チャンバに前記標的粒子含有試料を送液することにより、前記標的粒子含有試料が前記回収チャンバ内で希釈されるように、前記送液部を制御する、請求項5に記載の粒子ソーター。
【請求項7】
前記マイクロ流路カートリッジには、前記第1流路に送液される前記試料を貯留するサンプルチャンバと、前記第2流路の下流端と連通するリザーバと、前記リザーバと、前記第1流路の前記検出領域よりも上流とをつなぐ接続流路と、が形成されており、
前記制御部は、前記サンプルチャンバから前記第1流路に送液された前記試料から前記標的粒子含有試料を分取するように前記分取機構部を制御し、分取した前記標的粒子含有試料を前記第2流路、前記リザーバ、および前記接続流路を介して前記第1流路へ返送するよう、前記送液部を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項8】
前記マイクロ流路カートリッジには、前記第1流路に送液される前記試料を貯留するサンプルチャンバが形成されており、
前記制御部は、前記サンプルチャンバから前記第1流路に送液された前記試料から前記標的粒子含有試料を分取し、分取した前記標的粒子含有試料を前記第2流路および前記サンプルチャンバを介して前記第1流路へ返送するように、前記送液部を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項9】
前記マイクロ流路カートリッジには、前記第1流路の前記分取領域において前記標的粒子含有試料として分取されなかった前記試料を、前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送するための第3流路が、さらに形成されており、
前記制御部は、前記第1流路の前記分取領域において前記標的粒子含有試料として分取されなかった前記試料を、前記第3流路を介して、前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送し、返送された前記試料を前記第1流路の前記検出領域へ送液するように前記送液部を制御し、前記検出部からの信号に基づいて、前記分取動作を行うように、前記分取機構部を制御する、請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項10】
前記マイクロ流路カートリッジには、分取された前記標的粒子含有試料を回収する回収チャンバがさらに形成されており、前記第1流路の前記分取領域は、前記試料を前記回収チャンバに導く第1誘導路と、前記第1誘導路とは異なる第2誘導路とに、前記第1流路を分岐するように形成されており、
前記制御部は、前記検出部からの信号に基づいて、前記分取領域に送液された前記試料および前記標的粒子含有試料を前記第1誘導路に振り分けるように前記分取機構部を制御するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項11】
前記分取機構部は、前記第1流路の前記分取領域において分岐した流路の少なくとも1つを開閉する流路開閉部を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項12】
前記流路開閉部は、ピンチバルブであり、前記マイクロ流路カートリッジの前記分岐した流路の少なくとも1つが形成された領域を外部から押圧して変形させることにより、前記分岐した流路の少なくとも1つを閉鎖するように構成されている、請求項11に記載の粒子ソーター。
【請求項13】
前記流路開閉部は、変位拡大型の圧電アクチュエータを含む、請求項12に記載の粒子ソーター。
【請求項14】
前記変位拡大型の圧電アクチュエータは、前記マイクロ流路カートリッジの押圧位置に対向する押圧部を有する可動部材と、前記可動部材を動かす圧電素子と、前記圧電素子および前記可動部材を保持する固定部材と、を含み、
前記可動部材は、前記圧電素子の変位量よりも大きな変位量で前記押圧部を変位させるように構成されている、請求項13に記載の粒子ソーター。
【請求項15】
前記第1流路および前記第2流路は、深さが1μm以上1000μm以下であり、幅が1μm以上1000μm以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の粒子ソーター。
【請求項16】
試料に含まれる標的粒子を検出するための検出領域および検出された前記標的粒子を分取するための分岐した分取領域を有する第1流路と、分取された前記標的粒子を含む標的粒子含有試料を前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送するための第2流路と、が形成されたマイクロ流路カートリッジを用いて標的粒子を分取する方法であって、
前記試料を前記マイクロ流路カートリッジの前記第1流路へ送液し、前記検出領域を通過する前記標的粒子に対応する信号に基づいて、分取動作を行うことにより前記試料から前記標的粒子含有試料を分取する第1分取工程と、
前記第1分取工程により分取された前記標的粒子含有試料を前記第2流路を介して前記第1流路へ返送する返送工程と、
返送された前記標的粒子含有試料を前記第1流路の前記検出領域および前記分取領域へ送液し、前記検出領域を通過する前記標的粒子に対応する信号に基づいて、前記分取動作を行う第2分取工程と、を備える、粒子分取方法。
【請求項17】
標的粒子を含む試料を流す流路が形成された流路形成体を備え、
前記流路は、試料に含まれる前記標的粒子を検出するための検出領域および検出された前記標的粒子を分取するための分岐した分取領域を有する第1流路と、分取された前記標的粒子を含む標的粒子含有試料を前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送するための第2流路と、を含む、マイクロ流路カートリッジ。
【請求項18】
前記流路形成体には、前記第1流路の前記分取領域において分取された前記標的粒子含有試料を回収する回収チャンバがさらに形成されている、請求項17に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項19】
前記第2流路は、上流端が前記回収チャンバと連通している、請求項18に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項20】
前記流路形成体には、前記第1流路に送液する前記試料を貯留するサンプルチャンバと、前記第2流路の下流端と連通するリザーバと、前記リザーバと、前記第1流路の前記検出領域よりも上流とをつなぐ接続流路と、がさらに形成されている、請求項17又は18に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項21】
前記流路形成体には、シース液を貯留するシース液チャンバと、前記シース液チャンバと連通するとともに、前記第1流路における前記検出領域より上流で、かつ、前記第1流路と前記接続流路との合流点より下流につながるシース液流路と、がさらに形成されている、請求項20に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項22】
前記流路形成体は、板状の基板と、前記基板に貼り合わされたシートと、を含む、請求項17~21のいずれか1項に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項23】
前記シートは、前記基板よりも柔軟で押圧により弾性変形可能な材料により形成され、
前記第1流路の前記分取領域は、前記シートが外部から押圧されることにより流路が閉塞されることが可能に構成されている、請求項22に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【請求項24】
前記流路形成体には、前記第1流路の前記分取領域において前記標的粒子含有試料として分取されなかった前記試料を、前記第1流路の前記検出領域よりも上流に返送可能に構成された第3流路が、さらに形成されている、請求項17~23のいずれか1項に記載のマイクロ流路カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中から標的粒子を分取するための粒子ソーター、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図36に示すように、サンプルリザーバー901、廃液リザーバー902、シース液リザーバー903、ソーティング液リザーバー904、回収リザーバー905、主流路906、シース流路907およびソーティング流路908が形成された交換型流路カートリッジ900が開示されている。試料がサンプルリザーバー901から主流路906に流れる。シース液がシース液リザーバー903からシース流路907を通じて主流路906に合流する。主流路906を流れる特定の粒子が検出領域909で検出される。ソーティング対象粒子と判定された粒子が主流路906とソーティング流路908との交差点を通過するタイミングにあわせて、パルス的な空気圧によりソーティング液リザーバー904から回収リザーバー905へ向かうソーティングパルス流を発生させることで、目的の粒子が分取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表特許第2016/182034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、サンプルリザーバー901に貯留された試料が廃液リザーバー902へ送液されるとき、検出領域909で検出されたソーティング対象粒子を回収リザーバー905に分取する。サンプルリザーバー901に貯留された全ての試料が廃液リザーバー902へ送液されると分取処理を終了する。しかし、分取処理による標的粒子の純度(分取後の試料における総粒子に対する標的粒子の割合)と、スループット(単位時間当たりの処理粒子数)とが、トレードオフの関係にあるため、標的粒子を十分な純度で分取するためには、試料の流速を遅くする必要があり、長時間を要する。特に、存在率の極めて小さい標的粒子を、他の大多数の非標的粒子を含む試料から分取するような場合、合理的な時間内に標的粒子を十分な純度で分取することが困難である。
【0005】
この発明は、標的粒子を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することを可能とする、粒子ソーター、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明による粒子ソーター(200)は、図1に示すように、試料に含まれる標的粒子(91)を検出するための検出領域(11)、および、検出された標的粒子(91)を含む標的粒子含有試料(81)を分取するための分岐した分取領域(12)を有する第1流路(10)と、標的粒子含有試料(81)を第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するための第2流路(20)と、が形成されたマイクロ流路カートリッジ(100)と、マイクロ流路カートリッジ(100)が設置される設置部(110)と、マイクロ流路カートリッジ(100)内の液体を送液する送液部(120)と、検出領域(11)を通過する標的粒子(91)に対応する信号を出力する検出部(130)と、検出部(130)からの信号に基づき、分取領域(12)において、標的粒子含有試料(81)を分取するための分取動作を行う分取機構部(140)と、分取機構部(140)により分取された標的粒子含有試料(81)を、第2流路(20)を介して第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するように送液部(120)を制御し、返送された標的粒子含有試料(81)に対して分取動作を行うように、分取機構部(140)を制御する制御部(150)と、を備える。
【0007】
第1の発明による粒子ソーター(200)は、上記のように、分取機構部(140)により分取された標的粒子含有試料(81)を、第2流路(20)を介して第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するように送液部(120)を制御し、返送された標的粒子含有試料(81)に対して分取動作を行うように、分取機構部(140)を制御する制御部(150)を備える。これにより、マイクロ流路カートリッジ(100)に形成された第2流路(20)を用いて試料を返送することにより、マイクロ流路カートリッジ(100)の内部で複数回の分取動作を繰り返し行える。ここで、分取動作によって得られた標的粒子含有試料(81)には、分取領域(12)において標的粒子(91)の近くを流れる標的粒子(91)以外の粒子も含まれる。そのため、複数回の分取動作を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子(91)を分取することができる。その結果、分取処理全体で、標的粒子(91)を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【0008】
第2の発明による粒子分取方法は、図2に示すように、試料に含まれる標的粒子(91)を検出するための検出領域(11)および検出された標的粒子(91)を分取するための分岐した分取領域(12)を有する第1流路(10)と、分取された標的粒子(91)を含む標的粒子含有試料(81)を第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するための第2流路(20)と、が形成されたマイクロ流路カートリッジ(100)を用いて標的粒子(91)を分取する方法であって、試料をマイクロ流路カートリッジ(100)の第1流路(10)へ送液し、検出領域(11)を通過する標的粒子(91)に対応する信号に基づいて、分取動作を行うことにより試料から標的粒子含有試料(81)を分取する第1分取工程(S1)と、第1分取工程(S1)により分取された標的粒子含有試料(81)を第2流路(20)を介して第1流路(10)へ返送する返送工程(S2)と、返送された標的粒子含有試料(81)を第1流路(10)の検出領域(11)および分取領域(12)へ送液し、検出領域(11)を通過する標的粒子(91)に対応する信号に基づいて、分取動作を行う第2分取工程(S3)と、を備える。
【0009】
この第2の発明による粒子分取方法は、上記の返送工程(S2)を行うことにより、第1分取工程(S1)と第2分取工程(S3)との複数回の分取工程を繰り返し行える。複数回の分取工程を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子(91)を分取することができる。そのため、上記第1の発明と同様に、標的粒子(91)を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【0010】
第3の発明によるマイクロ流路カートリッジ(100)は、図1に示すように、標的粒子(91)を含む試料を流す流路(MC)が形成された流路形成体(40)を備え、流路(MC)は、試料に含まれる標的粒子(91)を検出するための検出領域(11)および検出された標的粒子(91)を分取するための分岐した分取領域(12)を有する第1流路(10)と、分取された標的粒子(91)を含む標的粒子含有試料(81)を第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するための第2流路(20)と、を含む。
【0011】
この第3の発明によるマイクロ流路カートリッジ(100)は、上記のように、流路(MC)が、分取された標的粒子(91)を含む標的粒子含有試料(81)を第1流路(10)の検出領域(11)よりも上流に返送するための第2流路(20)を含む。これにより、上記第1の発明と同様に、第2流路(20)を用いて、複数回の分取動作を繰り返し行える。複数回の分取動作を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子(91)を分取することができる。その結果、標的粒子(91)を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、標的粒子を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することを可能とする、粒子ソーター、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】マイクロ流路カートリッジおよび粒子ソーターの概要を説明するための図である。
図2】粒子分取方法を示したフロー図である。
図3】マイクロ流路カートリッジの構造例を示した斜視図である。
図4】第2流路からサンプルチャンバへ標的粒子含有試料を返送する例を示した模式図である。
図5】リザーバを備えるマイクロ流路カートリッジの構造例を示した斜視図である。
図6図5の模式的な平面図である。
図7】リザーバを介した標的粒子含有試料の返送を説明する模式図である。
図8】希釈工程を備える粒子分取方法の例を示したフロー図である。
図9】希釈工程の第1の例を説明するための模式図である。
図10】希釈工程の第2の例を説明するための模式図である。
図11】第3流路を備えたマイクロ流路カートリッジを示した模式的な平面図である。
図12】流路形成体の構造を示した模式的な縦断面図である。
図13】流路形成体の基板およびシートを示した斜視図である。
図14】シートの押圧により流路を開閉する例を示した模式図である。
図15】分取機構部を説明するための模式図である。
図16】変位拡大型の圧電アクチュエータによる流路開閉部を示した模式図である。
図17図16の流路開閉部の斜視図である。
図18】変位拡大型の圧電アクチュエータの他の例を示した模式図である。
図19図16の変位拡大型の圧電アクチュエータの変形例を示した模式図である。
図20図18の変位拡大型の圧電アクチュエータの変形例を示した模式図である。
図21】変位拡大型の圧電アクチュエータの他の構成例を示した模式図である。
図22図21とは異なる変位拡大型の圧電アクチュエータの構成例を示した模式図である。
図23】設置部および分取機構部の具体的な構成例を示した斜視図である。
図24図23の設置部および分取機構部の分解斜視図および平面図である。
図25】分取機構部による開閉位置および送液制御バルブによる切替位置を説明するための流路の模式図である。
図26】粒子ソーターの具体的構成例を説明するためのブロック図である。
図27】検出部の出力信号を説明するためのグラフである。
図28】制御部による分取機構部の分取動作制御を説明するための図(A)および(B)である。
図29】粒子ソーターの動作の流れを説明するための流路の模式図(A)~(C)である。
図30】粒子ソーターの動作の流れを説明するための流路の模式図(D)~(F)である。
図31】第1分取工程を説明するためのフロー図(A)および第2分取工程を説明するためのフロー図(B)である。
図32】実施例による分取処理の結果を説明するための図である。
図33】比較例1による分取処理の結果を説明するための図である。
図34】実施例と比較例1との分取処理のスループットを比較したグラフである。
図35】実施例および比較例3におけるスループットと純度との関係を示したグラフである。
図36】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[粒子ソーターの概要]
図1を参照して、本実施形態による粒子ソーターの概要について説明する。
【0016】
図1に示すように、粒子ソーター200は、マイクロ流路カートリッジ100を用いて、マイクロ流路カートリッジ100の流路MC内を流れる試料80中の標的粒子91を分取する処理を行う装置である。
【0017】
分取とは、試料液から目的の物質を分離することを意味する。試料80は、多数の粒子を含む液体である。試料80は、標的粒子91と、標的粒子91以外の非標的粒子92とを含む。
【0018】
粒子は、小さい物体の総称であり、構成材料や構造は問わない。本明細書において、粒子は、細胞、高分子、無機材料または有機材料の粒状物質を含む広い概念である。標的粒子91の例としては、(1)細胞、(2)エクソソームなどの顆粒、または、(3)所定の成分が封入された液滴、でありうる。細胞としては、たとえば、希少細胞(循環腫瘍細胞(CTC)、希少循環細胞(CRC)、内皮がん細胞(Endothelial cancer cell)など)、一次B細胞(primary B cell)、抗体産生ハイブリドーマ、生殖細胞(精子、卵子、胚)、細胞間相互作用(Cell-Cell Interaction)における各単体細胞、などである。液滴に含まれる所定の成分としては、たとえば、薬剤分子、ウイルス、核酸(DNA、RNAなど)、タンパク質(抗体、バイオマーカー、酵素)、などである。
【0019】
粒子ソーター200は、流路MCを流れる試料80中から標的粒子91を含んだ標的粒子含有試料81を分離して回収する処理を行う。なお、本明細書で言う「分取」は、回収されたサンプルに標的粒子91のみが含まれることを意味するものではない。粒子ソーター200による分取処理は、サンプル中の総粒子数に対する標的粒子数の割合(純度)を増大させることである。標的粒子含有試料81における標的粒子91の純度が、分取前の試料80における標的粒子91の純度よりも上昇する。したがって、回収された標的粒子含有試料81は、最初にマイクロ流路カートリッジ100に導入された試料80のうち、大部分の標的粒子91を含み、一部の非標的粒子92を含む。ただし、回収される標的粒子含有試料81における標的粒子91の数は、必ずしも非標的粒子92の数よりも多いとは限らない。たとえば、標的粒子91が、試料80における存在率が極めて小さい希少粒子である場合、回収されるサンプルにおける標的粒子91の数は、標的粒子91とともに回収サンプルに混入した非標的粒子92の数よりも少なくてもよい。
【0020】
(粒子ソーターの構造)
粒子ソーター200は、設置部110と、送液部120と、検出部130と、分取機構部140と、制御部150と、を備える。
【0021】
設置部110は、マイクロ流路カートリッジ100の設置場所を提供する。設置部110は、マイクロ流路カートリッジ100の一部と接触して、マイクロ流路カートリッジ100を保持する。設置部110は、たとえばマイクロ流路カートリッジ100の下面を支持する。
【0022】
本実施形態では、設置部110に設置されるマイクロ流路カートリッジ100は、試料に含まれる標的粒子91を検出するための検出領域11、および、検出された標的粒子91を含む標的粒子含有試料81を分取するための分岐した分取領域12を有する第1流路10と、標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するための第2流路20と、が形成されたカートリッジである。第1流路10において、上流側から、検出領域11および分取領域12が順番に配置されている。
【0023】
送液部120は、マイクロ流路カートリッジ100内の液体を送液するように構成されている。送液部120は、マイクロ流路カートリッジ100内の試料80を第1流路10の上流から下流に向けて送液できる。送液部120は、分取領域12を通過して分取された標的粒子含有試料81を、第2流路20の上流から下流に向けて送液できる。第2流路20を通じた送液により、標的粒子含有試料81が、第1流路10に返送される。送液部120は、第1流路10に返送した標的粒子含有試料81を、第1流路10の上流から下流に向けて送液できる。
【0024】
送液部120は、たとえば、圧力により、マイクロ流路カートリッジ100内の送液を行う。送液部120は、たとえば流路MCの上流側に陽圧を付与することによって液体を加圧送液する。送液部120は、たとえば流路MCの下流側に陰圧を付与することによって、液体を吸引する形態で送液してもよい。送液部120は、たとえば、ポンプおよびバルブを備える。
【0025】
検出部130は、検出領域11を通過する標的粒子91に対応する信号を出力するように構成されている。つまり、送液部120によって第1流路10の上流から下流に向けて流される試料80中の標的粒子91が、検出領域11を通過するときに検出部130によって検出される。検出部130は、標的粒子91の存在を反映した信号を制御部150に出力する。
【0026】
検出部130による標的粒子91の検出方法は、特に限定されない。検出のため、標的粒子91は、標識されていてもよい。たとえば標的粒子91に特異的に結合する標識抗体により、標的粒子91が標識されうる。標識の方法は、公知の標識方法のうちから、検出方法に応じた方法が選択される。検出は、たとえば、蛍光検出、磁気検出、画像検出、電気検出などの手法が採用できる。蛍光検出では、検出部130は、蛍光標識から生じる蛍光を光検出器により検出することによって、標的粒子91を検出する。磁気検出では、検出部130は、磁性粒子により標識した標的粒子91を磁気検出器により検出する。画像検出では、検出部130は、検出領域11を通過する標的粒子91をイメージセンサにより撮影し、画像認識により標的粒子91を検出する。電気検出では、検出部130は、検出領域11に設けた電極間を標的粒子91が通過することによる電気抵抗変化やインピーダンス変化に基づいて標的粒子91を検出する。
【0027】
分取機構部140は、検出部130からの信号に基づき、分取領域12において、標的粒子含有試料81を分取するための分取動作を行うように構成されている。分取領域12で、第1流路10は、分岐している。分岐数は少なくとも2である。図1の例では、分取領域12は、第1誘導路12aと第2誘導路12bとの2つに分岐している。分取機構部140は、検出領域11において検出部130によって検出された標的粒子91を、分取領域12の特定の1つの流路(第1誘導路12a)に流入させる。試料80に含まれる標的粒子91が次々と分取領域12に到達すると、分取機構部140は、それらの標的粒子91を同じ第1誘導路12aに流入させる。一方、分取機構部140は、非標的粒子92を、標的粒子91とは異なる流路(第2誘導路12b)に流入させる。これにより、分取領域12において標的粒子含有試料81が分取される。
【0028】
分取機構部140による標的粒子91の分取方法は、特に限定されない。分取機構部140は、分取のため、第1流路10における標的粒子91自体、または標的粒子91を含んだ微小容積の試料80に、何らかの外力を付与しうる。分取方法は、たとえば、レーザー方式、圧力方式、電気方式、磁気方式、音響波方式、流路切り替え方式、などの方式が採用できる。
【0029】
レーザー方式では、分取機構部140は、分取領域12を流れる試料80にレーザー光を照射し、微小な気泡を発生させ圧力変化を引き起こすことによって、標的粒子91を第1誘導路12aへ押し出す。圧力方式では、分取機構部140は、分取領域12を横切る方向に圧力を印加することによって、標的粒子91を第1誘導路12aへ送る。圧力は、マイクロ流路カートリッジ100の外部から、またはマイクロ流路カートリッジ100の内部に設けたアクチュエータを介して、印加される。電気方式では、分取機構部140は、標的粒子91を帯電させ、誘電泳動の原理によって標的粒子91を第1誘導路12aへ送る。磁気方式では、分取機構部140は、磁性粒子に結合させた標的粒子91に磁力を作用させることによって、標的粒子91を第1誘導路12aへ送る。音響波方式では、分取機構部140は、トランスデューサーにより分取領域12に音響波を付与し、流路MC中に圧力勾配を形成することによって、標的粒子91を第1誘導路12aへ送る。流路切り替え方式では、分取機構部140は、マイクロ流路カートリッジ100内に設けたバルブ構造を駆動するか、または外部から第1誘導路12aおよび第2誘導路12bを開閉することにより、標的粒子91を第1誘導路12aへ送り、非標的粒子92を第2誘導路12bへ送る。
【0030】
制御部150は、送液部120、検出部130および分取機構部140を制御するように構成されている。制御部150は、送液部120による送液の開始、停止、バルブの開閉などの制御を行う。制御部150は、検出部130を制御するとともに、検出部130からの信号を取得する。制御部150は、標的粒子91に対応する信号に基づいて、分取機構部140による分取動作を制御する。制御部150は、コンピュータにより構成され、1つ以上のプロセッサと、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む記憶部と、を備える。
【0031】
分取動作において、非標的粒子92を混入させることなく標的粒子91だけを取り出すことは困難である。そのため、標的粒子含有試料81には、分取された標的粒子91と、標的粒子91に混じって分取された非標的粒子92とが含まれる。
【0032】
制御部150は、分取機構部140により分取された標的粒子含有試料81を、第2流路20を介して第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するように送液部120を制御し、返送された標的粒子含有試料81に対して分取動作を行うように、分取機構部140を制御する。つまり、本実施形態では、試料80に対して1回目の分取動作を行い、その結果分取された標的粒子含有試料81に対して、2回目の分取動作を行う。分取動作は、3回以上行われてもよい。分取動作の繰り返しにより、非標的粒子92の割合が減少し、標的粒子91の純度が増大する。
【0033】
(粒子ソーターの効果)
本実施形態の粒子ソーター200は、上記のように、分取機構部140により分取された標的粒子含有試料81を、第2流路20を介して第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するように送液部120を制御し、返送された標的粒子含有試料81に対して分取動作を行うように、分取機構部140を制御する制御部150を備える。これにより、マイクロ流路カートリッジ100に形成された第2流路20を用いて試料を返送することにより、マイクロ流路カートリッジ100の内部で複数回の分取動作を繰り返し行える。ここで、分取動作によって得られた標的粒子含有試料81には、分取領域12において標的粒子91の近くを流れる標的粒子91以外の粒子も含まれる。そのため、複数回の分取動作を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子91を分取することができる。その結果、分取処理全体で標的粒子91を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【0034】
[粒子分取方法の概要]
次に、本実施形態による粒子分取方法の概要について説明する。本実施形態の粒子分取方法は、試料に含まれる標的粒子91を検出するための検出領域11および検出された標的粒子91を分取するための分岐した分取領域12を有する第1流路10と、分取された標的粒子91を含む標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するための第2流路20と、が形成されたマイクロ流路カートリッジ100を用いて標的粒子91を分取する方法である。また、上記した粒子ソーター200は、制御部150が送液部120、検出部130および分取機構部140を制御することによって、本実施形態による粒子分取方法を実施する装置である。
【0035】
図2に示すように、粒子分取方法は、少なくとも、第1分取工程S1と、返送工程S2と、第2分取工程S3と、を備える。
【0036】
第1分取工程S1は、試料80をマイクロ流路カートリッジ100の第1流路10へ送液し、検出領域11を通過する標的粒子91に対応する信号に基づいて、分取動作を行うことにより試料80から標的粒子含有試料81を分取することを含む。図1の構成例の場合、制御部150が送液部120を制御して、試料80を第1流路10の上流から下流に向けて送液させる。検出部130は、検出領域11に到達した標的粒子91に対応する信号を出力する。制御部150は、検出部130からの信号に基づいて、分取領域12に到達した標的粒子含有試料81を第1誘導路12aへ送るように、分取機構部140を制御する。制御部150は、分取領域12に到達した標的粒子91を含まない試料を、第2誘導路12bへ送るように分取機構部140を制御する。
【0037】
返送工程S2は、第1分取工程により分取された標的粒子含有試料81を第2流路20を介して第1流路10へ返送することを含む。図1の構成例の場合、第1分取工程S1の後、制御部150が送液部120を制御して、第1誘導路12aへ送られた標的粒子含有試料81を、第2流路20の上流から下流に向けて送液させる。これにより、標的粒子含有試料81が第1流路10の検出領域11よりも上流に戻される。
【0038】
第2分取工程S3は、返送された標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11および分取領域12へ送液し、検出領域11を通過する標的粒子91に対応する信号に基づいて、分取動作を行うことを含む。図1の構成例の場合、返送工程S2の後、制御部150が送液部120を制御して、標的粒子含有試料81を第1流路10の上流から下流に向けて送液させる。検出部130は、検出領域11に到達した標的粒子91に対応する信号を出力する。制御部150は、検出部130からの信号に基づいて、分取領域12に到達した標的粒子含有試料81を再度第1誘導路12aへ送るように、分取機構部140を制御する。制御部150は、分取領域12に到達した標的粒子91を含まない試料を、第2誘導路12bへ送るように分取機構部140を制御する。返送工程S2および第2分取工程S3をさらに繰り返してもよい。
【0039】
本実施形態による粒子分取方法は、上記の返送工程S2を行うことにより、第1分取工程S1と第2分取工程S3との複数回の分取工程を繰り返し行える。複数回の分取工程を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子91を分取することができる。そのため、標的粒子91を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【0040】
[マイクロ流路カートリッジの概要]
図1を参照して、本実施形態によるマイクロ流路カートリッジの概要について説明する。
【0041】
マイクロ流路カートリッジ100は、流路MCを備える。流路MCは、流体が流通可能な管状要素である。マイクロ流路カートリッジ100は、流路MC内で複数種類の粒子を含む試料80中から標的粒子91を分取することができる。
【0042】
マイクロ流路カートリッジ100は、標的粒子91を含む試料を流す流路MCが形成された流路形成体40を備えている。流路形成体40が、粒子ソーター200の設置部110に設置される。
【0043】
流路形成体40の材料としては、たとえば、ガラス、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、環状オレフィン樹脂(COC)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または金属などが採用されうる。
【0044】
本実施形態では、流路MCは、第1流路10と、第2流路20と、を含む。
【0045】
第1流路10は、試料に含まれる標的粒子91を検出するための検出領域11および検出された標的粒子91を分取するための分岐した分取領域12を有する。
【0046】
検出領域11は、第1流路10の一部分であり、第1流路10の上流端と下流端との間にある。検出領域11は、分取領域12よりも上流に配置されている。検出領域11は、粒子ソーター200の検出部130によって外部から標的粒子91を検出可能に構成されている。たとえば光学的検出を行う場合、検出領域11は、透光性を有し外部から流路MC内の標的粒子91を光学的に検出できる。
【0047】
分取領域12は、第1流路10の一部分であり、第1流路10の上流端と下流端との間にある。分取領域12は、検出領域11よりも下流に配置されている。分取領域12は、上流側で検出領域11と接続している。分取領域12の下流側は、少なくとも2つの流路に分岐している。図1では、分取領域12は、それぞれ下流側に延びる第1誘導路12aと第2誘導路12bとを含む。第1誘導路12aと第2誘導路12bとは、上流端で互いに接続され、分岐路を形成している。第1誘導路12aは、直接、または間接的に、第2流路20に連通している。第1誘導路12aは、標的粒子含有試料81が流れる流路である。第2誘導路12bは、第2流路20とは非接続である。第2誘導路12bは、非標的粒子92が流れる流路である。
【0048】
第2流路20は、分取された標的粒子91を含む標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するために設けられている。第2流路20における送液方向(図1の右から左)は、第1流路10における送液方向(図1の左から右)とは反対である。第2流路20の上流端に、分取された標的粒子91を含む標的粒子含有試料81が送られる。第2流路20の上流側は、直接、または間接的に、第1誘導路12aと連通している。第2流路20の下流側は、直接、または間接的に、第1流路10に接続している。
【0049】
第2流路20から第1流路10への標的粒子含有試料81の返送位置は、少なくとも、検出領域11より上流である。これにより、第1流路10に返送された標的粒子含有試料81を再度第1流路10の下流へ向けて流すことにより、検出領域11での標的粒子91の検出と、検出部130からの信号に基づく分取領域12での分取動作と、が実行される。
【0050】
第1流路10の上流から下流への送液、および第2流路20の上流から下流への送液を行うため、マイクロ流路カートリッジ100には、流路MCを開閉するバルブ構造が設けられていてもよい。バルブ構造は、たとえば第1誘導路12a、第2誘導路12bおよび第2流路20に1つずつ設けられる。バルブ構造は、流路MCを開閉(すなわち、連通および遮断)するオンオフバルブでもよいし、下流から上流へ向かう流れ(逆流)を防止する逆止弁でもよい。また、後述するように、マイクロ流路カートリッジ100の流路MCの部分に外部から押圧力を作用させ、押圧箇所を変形させることにより流路MCの開閉が行われてもよい。このため、マイクロ流路カートリッジ100にはバルブ構造が設けられなくてもよい。
【0051】
本実施形態によるマイクロ流路カートリッジ100は、上記のように、流路MCが、分取された標的粒子91を含む標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11よりも上流に返送するための第2流路20を含む。これにより、第2流路20を用いて、複数回の分取動作を繰り返し行える。複数回の分取動作を行うことにより、1回のみの分取処理を行う場合と比較して大きい速度で試料を流したとしても、高い純度で標的粒子91を分取することができる。その結果、標的粒子91を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮することができる。
【0052】
(マイクロ流路カートリッジの構造例)
次に、マイクロ流路カートリッジ100の構造について例示する。マイクロ流路カートリッジ100は、試料80や標的粒子含有試料81などの液体を収容するための液体収容部を備えていてもよい。液体収容部は、たとえばチャンバ、リザーバ、ウェルなどでありうる。
【0053】
図3に示す例では、流路形成体40が平板形状を有し、平板形状の流路形成体40の主表面から立ち上がるように、筒状のチャンバが設けられている。
【0054】
図3に示すように、流路形成体40には、第1流路10の分取領域12において分取された標的粒子含有試料81を回収する回収チャンバ51が形成されている。回収チャンバ51は、分岐した分取領域12の一方である第1誘導路12aの下流端に接続している。第1誘導路12aへ送られた標的粒子含有試料81は、回収チャンバ51に収容される。これにより、分取された標的粒子含有試料81を外部に排出することなく、回収チャンバ51に収容させた上で、第2流路20に送液できる。標的粒子含有試料81を外部に取り出すことなく返送できるので、複数回の分取動作を行ってもコンタミネーションのおそれなく分取処理を行える。
【0055】
図3の例では、第2流路20は、上流端が回収チャンバ51と連通している。これにより、回収チャンバ51から標的粒子含有試料81を直接、第2流路20に送液できる。たとえば第2流路20に全ての標的粒子含有試料81を収容可能にする場合と比べて、標的粒子含有試料81の送液経路が不必要に長くなることがないので、送液経路に標的粒子91が残留することを抑制できる。
【0056】
図3の例では、マイクロ流路カートリッジ100には、第1流路10に送液される試料80を貯留するサンプルチャンバ52が形成されている。これにより、送液部120から試料80を供給するのではなく、サンプルチャンバ52に予め注入され貯留された試料80が、送液部120によって第1流路10内へ送液される。第2流路20の下流端が、サンプルチャンバ52に連通している。
【0057】
この場合、図4に示すように、制御部150は、サンプルチャンバ52から第1流路10送液された試料80(図3参照)から標的粒子含有試料81を分取し、分取した標的粒子含有試料81を第2流路20およびサンプルチャンバ52を介して第1流路10へ返送するように、送液部120を制御する。これにより、元の試料80を収容していたサンプルチャンバ52に、分取された標的粒子含有試料81を収容できる。つまり、1回目の分取動作における元の試料80の送液と、2回目以降の分取動作における標的粒子含有試料81の送液とを、同一の構成によって行える。そのため、元の試料80と標的粒子含有試料81とを別々のチャンバに収容する場合と比較して、粒子ソーター200の構造および制御を簡素化できる。
【0058】
図3および図4の例では、マイクロ流路カートリッジ100には、分取領域12において標的粒子含有試料81として分取されなかった試料82を貯留する廃棄チャンバ55が形成されている。廃棄チャンバ55は、分岐した分取領域12の他方である第2誘導路12bの下流端に接続している。第2誘導路12bへ送られた試料80は、廃棄チャンバ55に収容される。これにより、分取されなかった試料82を外部に排出することなく、分取動作を複数回繰り返し行える。特に、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51および廃棄チャンバ55を設けたマイクロ流路カートリッジ100をディスポーザブル(使い捨て)とする場合、粒子ソーター200が試料と接触することなく、試料80の注入から、複数回のソーティング、廃棄までの一連の作業をマイクロ流路カートリッジ100内で完結できる。
【0059】
図5および図6に示す例では、流路形成体40には、第1流路10に送液する試料を貯留するサンプルチャンバ52と、第2流路20(図6参照)の下流端と連通するリザーバ53と、リザーバ53と、第1流路10の検出領域11よりも上流とをつなぐ接続流路53aと、が形成されている。リザーバ53は、サンプルチャンバ52とは別個に設けられている。
【0060】
この場合、制御部150は、サンプルチャンバ52から第1流路10に送液された試料80(図6参照)から標的粒子含有試料81を分取するように分取機構部140(図1参照)を制御し、図7に示すように、分取した標的粒子含有試料81を第2流路20、リザーバ53、および接続流路53aを介して第1流路10へ返送するよう、送液部120を制御する。すなわち、第1分取工程では、サンプルチャンバ52から試料80が第1流路10に送液される。分取された標的粒子含有試料81は、回収チャンバ51および第2流路20を介してリザーバ53に収容される。第2分取工程では、標的粒子含有試料81が、リザーバ53から接続流路53aを介して第1流路10に送液される。
【0061】
これにより、サンプルチャンバ52とは別のリザーバ53に標的粒子含有試料81を収容することによって、サンプルチャンバ52内の残留粒子が標的粒子含有試料81中に混入することを防止できる。そのため、サンプルチャンバ52に標的粒子含有試料81を返送する場合と比較して、標的粒子含有試料81中の標的粒子91の純度を高くできる。
【0062】
また、図6および図7に示す例では、流路形成体40には、シース液を貯留するシース液チャンバ54と、シース液チャンバ54と連通するとともに、第1流路10における検出領域11より上流で、かつ、第1流路10と接続流路53aとの合流点より下流につながるシース液流路54aと、が形成されている。制御部150は、分取動作において、試料80または標的粒子含有試料81を第1流路10に送液するとともに、シース液チャンバ54からシース液流路54aを介してシース液を第1流路10に送液するように、送液部120を制御する。その結果、第1流路10の検出領域11の位置では、試料の流れがシース液流に包まれる。
【0063】
これにより、シース液の流れによって試料中の粒子を整列させることができるので、検出領域11における標的粒子91の検出を容易かつ高精度に行える。そして、シース液流路54aが第1流路10と接続流路53aとの合流点より下流につながるので、第2流路20を介して返送された標的粒子含有試料81に対する分取動作を行う場合にも、シース液の流れによる粒子の整列を行うことができる。
【0064】
ところで、第1分取工程によって回収チャンバ51に送液される標的粒子含有試料81の液量は、廃棄チャンバ55へ送られた試料82の分だけ、初期の試料80の液量よりも減少する。第2分取工程のため、分取された標的粒子含有試料81を希釈してもよい。
【0065】
図7において、制御部150は、標的粒子含有試料81を希釈するように送液部120を制御し、希釈された標的粒子含有試料81に対して、分取動作を行うように、分取機構部140を制御するように構成されうる。
【0066】
これにより、希釈により標的粒子含有試料81の液量を増大させることができるので、2回目以降の分取動作においても、安定した流速制御が可能となる。その結果、分取性能のばらつきを低減できる。
【0067】
この場合、図8に示すように、制御部150は、第1分取工程S1と第2分取工程S3との間で、標的粒子含有試料81を希釈する希釈工程S4を行うように、送液部120、検出部130および分取機構部140を制御する。すなわち、図8では、本実施形態の粒子分取方法が、第1分取工程S1と第2分取工程S3との間で、標的粒子含有試料81を希釈する希釈工程S4をさらに備える。希釈工程S4は、返送工程S2の前に行われてもよいし、返送工程S2の後に行われてもよい。
【0068】
具体的には、図9の例では、制御部150は、標的粒子含有試料81を回収チャンバ51内で希釈するように、送液部120を制御する。すなわち、制御部150は、第1分取工程の後、シース液チャンバ54から、シース液流路54a、第1流路10および第1誘導路12aを介して、所定量のシース液を回収チャンバ51に送液するよう、送液部120を制御する。これにより、たとえば第2流路20中で希釈する場合と比べて、容易かつ均一に希釈を行える。
【0069】
図10の例では、第1分取工程の前に、予め、希釈用のシース液が回収チャンバ51内に貯留されている。制御部150は、希釈液を貯留している回収チャンバ51に標的粒子含有試料81を送液することにより、標的粒子含有試料81が回収チャンバ51内で希釈されるように、送液部120を制御する。
【0070】
これにより、分取した標的粒子含有試料81を回収チャンバ51に送液するだけで、簡単に標的粒子含有試料81の希釈を行える。分取動作と、第2流路20による標的粒子含有試料81の返送動作との間で希釈液の送液を行う必要がないので、初回の分取動作の後、すぐに希釈された標的粒子含有試料81を送液できる。
【0071】
なお、希釈液は、マイクロ流路カートリッジ100を設置部110に設置する際に、予めユーザによって回収チャンバ51内に注入されてもよいし、第1分取工程の前に、シース液チャンバ54(図9参照)から回収チャンバ51へ希釈液を送液する工程が実施されてもよい。
【0072】
その他の例として、制御部150は、返送工程S2の後、図6において、シース液チャンバ54からリザーバ53に希釈液を送液し、リザーバ53に貯留されている標的粒子含有試料81を希釈するように、送液部120を制御してもよい。
【0073】
なお、第1および第2分取工程において、第1流路10を流れる全ての標的粒子91を第1誘導路12aへ分取することは容易ではなく、標的粒子91のうち一部は、分取できずに第2誘導路12bへ送られる。そのため、第2誘導路12bへ送られた試料82を、第1流路10の上流へ返送可能としてもよい。
【0074】
すなわち、図11の例では、流路形成体40には、第1流路10の分取領域12において標的粒子含有試料81として分取されなかった試料を、第1流路10の検出領域11よりも上流に返送可能に構成された第3流路30が、形成されている。
【0075】
制御部150は、第1流路10の分取領域12において標的粒子含有試料81として分取されなかった試料82を、第3流路30を介して、第1流路10の検出領域11よりも上流に返送し、返送された試料82を第1流路10の検出領域11へ送液するように送液部120を制御し、検出部130(図1参照)からの信号に基づいて、分取動作を行うように、分取機構部140(図1参照)を制御する。
【0076】
これにより、標的粒子含有試料81に対する分取動作だけでなく、分取されなかった試料82に対する分取動作を行うことにより、分取漏れによって第3流路30から返送された標的粒子91を回収できる。その結果、試料80中の標的粒子91の回収率を向上させることができる。
【0077】
図11では、第3流路30の上流端が、廃棄チャンバ55に接続している。流路形成体40には、第3流路30に加えて、第3流路30の下流端と連通する第2リザーバ56と、第2リザーバ56と第1流路10の検出領域11よりも上流とをつなぐ接続流路56aと、が形成されている。第2リザーバ56と接続流路56aとを設ける代わりに、第3流路30の下流端をサンプルチャンバ52またはリザーバ53に接続してもよいし、第3流路30の下流端を第1流路10の検出領域11よりも上流に接続してもよい。
【0078】
〈流路形成体の構造〉
次に、流路形成体40の構造例を示す。
【0079】
図12に示すように、流路形成体40は、板状の基板41と、基板41に貼り合わされたシート42と、を含む。流路MCは、基板41のシート42側表面、および、シート42の基板41側表面、の少なくとも一方に形成された溝により形成される。図13の例では、シート42の基板41側表面に、溝部42aが形成され、基板41のシート42側表面によって溝部42aが覆われることにより、液体を流通可能な管状構造の流路MCが構成されている。これにより、基板41にシート42を貼り合わせるだけの簡単な構造で、流路形成体40を構築できる。
【0080】
第1流路10および第2流路20は、たとえば、深さDが1μm以上1000μm以下であり、幅Wが1μm以上1000μm以下である。本実施形態の粒子ソーター200は、このようなマイクロ流路を備えるマイクロ流路カートリッジ100に対して特に好適である。
【0081】
また、図12の場合、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、シース液チャンバ54およびリザーバ53などの液体収容部は、基板41のシート42とは反対側の主表面に形成される。基板41には、主表面からシート42側表面まで基板41を厚み方向に貫通する貫通孔41aが形成されている。貫通孔41aは、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、シース液チャンバ54およびリザーバ53などの液体収容部の内底部と、流路MC(シート42の溝部42a)とを接続する。これにより、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、シース液チャンバ54およびリザーバ53などの液体収容部の上面開口側に圧力を印加することによって、液体収容部の内部の液体が、貫通孔41aを介して流路MCへと送液される。
【0082】
また、図14に示す例では、シート42は、基板41よりも柔軟で押圧により弾性変形可能な材料により形成されている。たとえば、基板41がガラス基板であり、シート42がPDMSシートである。そして、第1流路10の分取領域12は、シート42が外部から押圧されることにより流路MCが閉塞されることが可能に構成されている。図13の例では。分取機構部140がシート42に対して接近および離隔する方向に移動可能な押圧部142aを有する。押圧部142aによりシート42が押圧される。
【0083】
これにより、分取領域12の流路部分を覆うシート42に、外部から押圧力を付与するだけで、簡単に流路を開閉できる。そして、流路の開閉によって、分取領域12に到達した標的粒子91の分取を容易に行える。
【0084】
(分取機構部の構成)
次に、分取機構部140の構成について説明する。
【0085】
図15に示す例では、分取機構部140は、第1流路10の分取領域12において分岐した流路の少なくとも1つを開閉する流路開閉部141を含む。これにより、流路開閉部141を設けるだけの簡素な構成によって、分取機構部140を構築できるので、粒子ソーター200の構成を簡素化できる。
【0086】
図15の例では、第1流路10の分取領域12は、試料を回収チャンバ51に導く第1誘導路12aと、第1誘導路12aとは異なる第2誘導路12bとに、第1流路10を分岐するように形成されている。流路開閉部141は、第1誘導路12aと第2誘導路12bとに、1つずつ設けられている。
【0087】
制御部150は、検出部130(図1参照)からの信号に基づいて、分取領域12に送液された試料80および標的粒子含有試料81を第1誘導路12aに振り分けるように分取機構部140を制御するように構成されている。
【0088】
これにより、分取機構部140は、第1誘導路12aと第2誘導路12bとのいずれかに試料の流れを振り分けるという流路切替機構によって構成される。流路切り替えを行うだけで分取動作ができるので、分取機構部140の構成を簡素化できる。
【0089】
流路開閉部141は、ピンチバルブである。流路開閉部141は、マイクロ流路カートリッジ100の分岐した流路の少なくとも1つが形成された領域を外部から押圧して変形させることにより、分岐した流路の少なくとも1つを閉鎖するように構成されている。
【0090】
これにより、マイクロ流路カートリッジ100を外部から押圧するだけの簡素な構成で、流路開閉部141を構成できる。また、流路開閉部141がマイクロ流路カートリッジ100の内部の液体と接触することがないので、コンタミネーションを防止できる。
【0091】
図16図22は、流路開閉部141の構成例を示している。図16図22では、流路形成体40の下面であるシート42が図中上側に位置するように、上下を逆転させて示している。
【0092】
図16に示す例では、流路開閉部141は、変位拡大型の圧電アクチュエータを含む。これにより、応答性が高い圧電アクチュエータによって、流路MCの開閉を高速で行えるので、分取された試料中に標的粒子91以外の粒子が混入することを抑制できる。その一方、圧電アクチュエータは発生可能な変位量が小さいという欠点があるが、変位拡大型の圧電アクチュエータによって変位量を大きくできるので、マイクロ流路カートリッジ100の流路MCを外部から押圧する場合でも、確実に流路MCの開閉を行える。
【0093】
変位拡大型の圧電アクチュエータは、マイクロ流路カートリッジ100の押圧位置に対向する押圧部142aを有する可動部材142と、可動部材142を動かす圧電素子143と、圧電素子143および可動部材142を保持する固定部材144と、を含む。そして、可動部材142は、圧電素子143の変位量よりも大きな変位量で押圧部142aを変位させるように構成されている。
【0094】
これにより、可動部材142を介して圧電素子143の変位を拡大することによってマイクロ流路カートリッジ100の流路MCを確実に開閉するのに必要な押圧部142aの変位量を容易に得ることができる。
【0095】
図16に示す例では、上下に延びる圧電素子143の一端が、固定部材144に固定されている。圧電素子143の他端には、可動部材142と接触する当接部材143aが設けられている。圧電素子143は、複数の圧電体を変位発生方向に積層した、いわゆるスタック型の圧電アクチュエータである。圧電素子143は、電圧印加により、積層方向である上下方向に、伸縮する。可動部材142は、当接部材143aと接触するように圧電素子143の他端側に配置されている。可動部材142は、固定部材144から流路形成体40のシート42に沿って延びる片持ち梁構造を有する。また、可動部材142は、直線の板状形状を有する。可動部材142の先端には、押圧部142aが、シート42に向けて凸状に設けられている。当接部材143aは、可動部材142の固定端と、押圧部142aとの間の位置で、可動部材142と接触するように配置されている。これにより、固定端から当接部材143aまでの長さL1と、固定端から押圧部142aまでの長さL2との比だけ、圧電素子143の変位が拡大される。すなわち、圧電素子143の変位d1と、押圧部142aの変位d2とについて、d2=d1×(L2/L1)の関係が成立する。なお、L1<L2である。
【0096】
図17に示すように、固定部材144は、設置部110の下面(図17中の上側の面)に設けられる。押圧部142aは、設置部110の開口から露出した流路形成体40の下面であるシート42を、下側から押し上げることにより、流路MCを閉鎖させる。
【0097】
図18に示す例では、可動部材142の一端に押圧部142aが形成され、可動部材142の他端に圧電素子143の当接部材143aが配置されている。そして、固定部材144が、押圧部142aと当接部材143aとの間の位置で、可動部材142を回動可能に保持している。圧電素子143が可動部材142の他端を押し上げると、可動部材142が固定部材144による保持位置を支点として回転し、押圧部142aをシート42に向けて変位させる。この場合、当接部材143aから保持位置(支点)までの長さL3と、保持位置(支点)から押圧部142aまでの長さL4との比(L3/L4)の分だけ、圧電素子143の変位が拡大される。なお、L3<L4である。
【0098】
なお、図19および図20に示すように、押圧部142aが押圧を解除する方向に向けて、可動部材142を付勢する付勢部材145が圧電アクチュエータに設けられてもよい。付勢部材145により、流路MCを閉じた後、再び流路MCを開く時に、押圧部142aを元の位置へ戻すことができるので、確実に流路MCを開放できる。
【0099】
〈変位拡大型の圧電アクチュエータの他の例〉
変位拡大型の圧電アクチュエータの構造には、様々な種類があり、特定の構造には限定されない。以下では、変位拡大型の圧電アクチュエータのバリエーションを例示する。
【0100】
図21では、可動部材142が、先端に押圧部142aを有し、他端側にY字状に分岐した支持部142b、142cを有する。一方の支持部142bは、弾性ヒンジ146を介して固定部材144に支持されている。他方の支持部142cは、弾性ヒンジ146を介して圧電素子143に連結されている。これにより、圧電素子143が伸張すると、弾性ヒンジ146を介して可動部材142が押圧され、押圧部142aをシート42側へ変位させる。
【0101】
図22では、可動部材142が、先端に押圧部142aを有し、他端側にY字状の支持部142d、142eを有する。一対の支持部142d、142eが、複数の弾性ヒンジ146を介して環状に連結されている。圧電素子143は、環状部分の内側に配置され、両端が別々の弾性ヒンジ146に連結されている。これにより、圧電素子143が収縮すると、両端の弾性ヒンジ146を介して可動部材142が押圧され、押圧部142aをシート42側へ変位させる。
【0102】
[粒子ソーターの具体的構成例]
図23図26を参照して、本実施形態の粒子ソーター200の、より具体的な構成例を説明する。粒子ソーター200に設置されるマイクロ流路カートリッジ100は、図5および図6に示した構成を例に説明する。
【0103】
試料80は、たとえば、希釈および蛍光標識された血液であり、標的粒子91は、たとえば蛍光標識された血中細胞である。マイクロ流路カートリッジ100は、標的粒子91である標的細胞を、非標的粒子92である標的細胞以外の他の細胞から分取する。標的細胞は、血中を循環する希少細胞とされる。以下の実施形態において、標的細胞は、血中循環癌細胞(CTC)であり、非標的細胞は、赤血球、白血球、および血小板などである。
【0104】
〈設置部〉
図23および図24に示すように、設置部110は、カートリッジホルダ111および蓋部材112を含む。設置部110は、マイクロ流路カートリッジ100を着脱可能に支持する。マイクロ流路カートリッジ100は使い捨ての消耗部品である。マイクロ流路カートリッジ100は、ユーザによって設置部110に設置され、分取処理に供される。分取処理が完了すると、設置部110から取り出される。別の試料80について分取処理が行われる場合、新たなマイクロ流路カートリッジ100が設置部110に設置される。
【0105】
カートリッジホルダ111は、マイクロ流路カートリッジ100の周縁部を下方から支持する底部111aを有する。底部111aは、マイクロ流路カートリッジ100の検出領域11および分取領域12などの流路MCの形成部分を下方に露出させるように、中央部が開口(図17参照)した枠状形状を有する。
【0106】
カートリッジホルダ111は、底部111aの外周部から上方に立ち上がる壁状の側面部111bを有する。
【0107】
蓋部材112は、カートリッジホルダ111の上面上に着脱可能(または開閉可能)に取り付けられている。蓋部材112は、カートリッジホルダ111に保持されたマイクロ流路カートリッジ100における液体収容部の上面開口を覆うように設けられている。つまり、蓋部材112は、マイクロ流路カートリッジ100のサンプルチャンバ52、回収チャンバ51、リザーバ53、廃棄チャンバ55、シース液チャンバ54の各々の上面開口を、封止する。なお、蓋部材112の下面には、上面開口を気密封止するためのシール部材が設けられている。
【0108】
図24に示すように、蓋部材112には、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、リザーバ53、廃棄チャンバ55、シース液チャンバ54の各々に対して1つずつ、連通孔112aが形成されている。連通孔112aは、蓋部材112を厚み方向に貫通している。各連通孔112aは、蓋部材112の上面において、後述する管部材121(図26参照)を介して1つずつ送液部120と接続されている。
【0109】
設置部110の下部には、分取機構部140が設けられている。分取機構部140は、カートリッジホルダ111の下面に取り付けられるベース部材147と、ベース部材147に設けられた流路開閉部141と、を含む。また、送液部120は、マイクロ流路カートリッジ100における液体の流通経路を切り替えて送液経路を制御するための送液制御バルブ122を備えている。これらの送液制御バルブ122も、ベース部材147に設けられている。
【0110】
流路開閉部141は、変位拡大型の圧電アクチュエータ(図17参照)を備えたピンチバルブにより構成されている。流路開閉部141は、ベース部材147から下向きに突出するように設けられている。流路開閉部141は、流路形成体40の下面であるシート42に対して、押圧部142aが下から押し上げるように上向きに押圧することによって、流路MCを閉鎖する。流路開閉部141は、分取領域12の下流の第1誘導路12aおよび第2誘導路12b(図25参照)に対応して、1つずつ設けられている。具体的には、2つの流路開閉部141は、図25の第1誘導路12aの開閉位置P1と、第2誘導路12bの開閉位置P2と、をそれぞれ押圧により閉鎖可能なように設けられている。
【0111】
ベース部材147に設けられた送液制御バルブ122も、流路開閉部141と同様に、流路形成体40のシート42を押圧して変形させることにより、流路MCを閉鎖するピンチバルブにより構成されている。そのため、送液制御バルブ122は、マイクロ流路カートリッジ100の下面に対して上向きに設けられている。なお、送液制御バルブ122は、流路開閉部141とは異なり、エアシリンダによって押圧部を動作させるタイプのシリンダバルブである。
【0112】
送液制御バルブ122は、処理工程に応じてマイクロ流路カートリッジ100の流通経路を切り替えられるように、流路MC上に複数設けられている。
【0113】
具体的には、図25に示すように、送液制御バルブ122は、第1流路10における接続流路53aとの接続位置の上流の切替位置P3と、一方のシース液流路54a上の切替位置P4および他方のシース液流路54a上の切替位置P5と、第2流路20上の切替位置P6と、接続流路53a上の切替位置P7と、に1つずつ設けられている。いずれかの位置の送液制御バルブ122をオンにすると、送液制御バルブ122がシート42を押圧することにより、対応する流路を閉じる。送液制御バルブ122をオフにすると、送液制御バルブ122によるシート42の押圧が解除され、対応する流路が開放される。
【0114】
なお、第1誘導路12aおよび第2誘導路12bには、送液制御バルブ122が設けられていない。すなわち、開閉位置P1における第1誘導路12aおよび開閉位置P2における第2誘導路12bが、それぞれ対応する流路開閉部141によって開閉される。流路開閉部141は、分取動作のみならず、送液制御のための流路の開閉も行うように構成されている。
【0115】
〈送液部〉
図26に示すように、送液部120は、管部材121を介して、マイクロ流路カートリッジ100の各液体収容部(回収チャンバ51、サンプルチャンバ52、リザーバ53、シース液チャンバ54、廃棄チャンバ55)と個別に接続されている。また、送液部120は、上記した複数の送液制御バルブ122を含んでいる。
【0116】
送液部120は、制御部150の制御の下、圧力を印加することにより、マイクロ流路カートリッジ100の流路MCに送液を行うように構成されている。送液部120は、回収チャンバ51、サンプルチャンバ52、リザーバ53、シース液チャンバ54、廃棄チャンバ55に対して個別に陽圧を印加して内部の液体を流路MCへ送り出すことが可能である。送液部120は、回収チャンバ51、サンプルチャンバ52、リザーバ53、シース液チャンバ54、廃棄チャンバ55を、個別に大気開放して、流路MCから送液された液体を内部へ収容させることが可能である。送液部120は、エアポンプなどの空圧源123と、圧力調整器(レギュレータ)124と、圧力供給部125と、を含みうる。送液部120は、制御部150の制御の下、圧力調整器124により空圧源123から供給される圧力を調整することにより、各チャンバ、リザーバからの送液速度を調整する。圧力供給部125は、各送液制御バルブ122への圧力供給のオンオフを個別に制御可能な多ポートのバルブターミナルを含む。送液部120は、制御部150の制御の下、圧力供給部125によって、空圧源123からの圧力供給のオンオフを送液制御バルブ122毎に個別に切り替えることにより、各送液制御バルブ122を個別に動作させる。
【0117】
〈検出部〉
検出部130は、設置部110の下方に設けられている。検出部130は、流路形成体40のうち、シート42が配置される下面側から、標的粒子91の検出を行う。検出部130は、検出領域11を通る標的粒子91に対して光学的検出を行うように構成されている。なお、図24に示したように、ベース部材147には、押圧部142aが配置される分取領域12と、検出領域11とを包含する範囲にわたって切欠状の貫通部147aが形成されている。検出部130は、ベース部材147の下方から、貫通部147aの領域LPを介して検出領域11を通過する標的粒子91の検出を行う。図26では、検出部130は、光源131と、光学系132と、光検出器133とを含む。
【0118】
光源131は、標的粒子91に結合した蛍光標識に対する励起光を発生させる。光源131は、たとえば半導体レーザ素子により構成される。
【0119】
光学系132は、対物レンズ132aと、ダイクロイックミラー132bおよび132cとを有する。
【0120】
光検出器133は、励起光により励起された蛍光標識から発生した蛍光を検出し、蛍光強度に応じた信号を出力するように構成されている。光検出器133は、光子計数器(フォトンカウンタ)である。光検出器133には、たとえば光電子増倍管またはMPPC(マルチピクセルフォトンカウンタ)などが用いられる。
【0121】
光源131から出射された励起光は、ダイクロイックミラー132bに反射されて、対物レンズ132aを通過して検出領域11に照射される。検出領域11を通る標的粒子91に励起光が照射されると、蛍光標識から蛍光が発生する。蛍光は、対物レンズ132aおよびダイクロイックミラー132bを通り、ダイクロイックミラー132cに反射されて、光検出器133により検出される。検出部130は、標的粒子91に励起光が照射されたことにより発生した蛍光を検出すると、検出した蛍光に対応する電気信号を出力する。
【0122】
〈制御部〉
制御部150は、たとえばCPUにより構成される。制御部150は、記憶部151に記憶されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。記憶部151は、RAM、ROM、ハードディスク等により構成される。
【0123】
制御部150は、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、リザーバ53、廃棄チャンバ55、シース液チャンバ54について個別に加圧または大気開放するように、送液部120を制御する。また、制御部150は、送液部120の送液制御バルブ122と、流路開閉部141とを制御して、流路MC上の各位置の開閉を行うことにより、液体の送液経路を切り替える。
【0124】
制御部150は、ドライバ回路152を介して、2つの流路開閉部141に個別に接続されている。制御部150は、押圧部142aを動作させて流路MCを閉じる場合、流路開閉部141の圧電素子143に対して、ドライバ回路152から所定の作動電圧を印加させる。これにより、圧電素子143の伸縮動作に起因する押圧部142aの変位の結果、流路MCが閉じられる。
【0125】
制御部150は、流路MCを開く場合、流路開閉部141の圧電素子143に対するドライバ回路152からの電圧印加を停止させる。これにより、押圧部142aがシート42の押圧を解除する結果、流路MCが開放される。
【0126】
また、制御部150は、送液部120の圧力供給部125を介して、切替位置P3~切替位置P7(図25参照)に配置された各送液制御バルブ122を個別に制御する。
【0127】
制御部150は、本実施形態の粒子分取方法を実施するための制御を行う。すなわち、制御部150は、図2に示したように、第1分取工程S1と、返送工程S2と、第2分取工程S3と、を行うように、送液部120、検出部130および分取機構部140を制御する。第1分取工程S1は、試料80をマイクロ流路カートリッジ100の第1流路10へ送液するように送液部120を制御し、検出部130からの信号に基づいて、分取動作を行うように分取機構部140を制御することにより標的粒子含有試料81を分取する工程である。返送工程S2は、第1分取工程S1により分取された標的粒子含有試料81を第2流路20を介して第1流路10へ返送するように送液部120を制御する工程である。第2分取工程S3は、返送された標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11および分取領域12へ送液するように送液部120を制御し、検出部130からの信号に基づいて、分取動作を行うように分取機構部140を制御する工程である。
【0128】
これにより、返送工程S2を行うことにより、試料80に対する第1分取工程S1と、第1分取工程S1によって分取された標的粒子含有試料81に対する第2分取工程S3とを、マイクロ流路カートリッジ100の内部で順次行える。なお、制御部150は、図8に示したように、さらに希釈工程S4を行うように、送液部120および分取機構部140を制御する。
【0129】
〈分取動作の制御〉
次に、分取機構部140を用いた分取動作の制御について説明する。
【0130】
図26に示したように、制御部150は、送液部120により送液を行い、検出部130から信号を取得する。試料80中の非標的粒子92が検出領域11を通過する際に励起光が非標的粒子92に照射されても、標的粒子91の蛍光標識に起因する特定波長の蛍光は生じない。試料80中の標的粒子91が検出領域11を通過する場合、励起光により蛍光標識が励起され、発生した特定波長の蛍光が検出部130により検出される。この結果、検出部130の信号には、図27に示すように、特定波長の蛍光強度の立ち上がり(ピーク)が生じる。制御部150は、検出された蛍光強度が予め設定された閾値TH以上となる場合に、標的粒子91を検出したと判断する。制御部150は、検出された蛍光強度が閾値TH未満となる場合に、標的粒子91を検出していないと判断する。
【0131】
図28(A)に示すように、制御部150は、蛍光強度が閾値TH未満となる場合、第1誘導路12aの流路開閉部141により第1誘導路12a(開閉位置P1)を閉鎖させ、第2誘導路12bの流路開閉部141は第2誘導路12b(開閉位置P2)を開放させる。これにより、非標的粒子92が第2誘導路12bへ送られる。
【0132】
図28(B)に示すように、制御部150は、蛍光強度が閾値TH以上となる場合、第1誘導路12aの流路開閉部141に第1誘導路12aを開放させ、第2誘導路12bの流路開閉部141には第2誘導路12bを閉鎖させる。これにより、標的粒子91が第1誘導路12aへ送られる。
【0133】
ここで、第1流路10における試料の流速は、送液部120により所定値に制御される。そのため、検出領域11で検出された標的粒子91が分取領域12に到達するのに要する時間t1は、既知である。制御部150は、図27に示したように、閾値TH以上の蛍光強度が検出されてから時間t1が経過したタイミングで、第1誘導路12aを開放させ、第2誘導路12bを閉鎖させるように流路開閉部141を制御する。そして、制御部150は、第1誘導路12aを開放させ、第2誘導路12bを閉鎖させた状態を、所定時間t2の間、継続させる。所定時間t2は、第1流路10における流速に基づいて、分取領域12に到達した標的粒子91が流路開閉部141による開閉位置P1を確実に通過するための余裕時間である。
【0134】
これにより、分取領域12において標的粒子91が第1誘導路12aへ分取される。分取される標的粒子含有試料81は、所定時間t2の間に、流路開閉部141による開閉位置P1を通過した試料成分(すなわち、標的粒子91、非標的粒子92および液相)を含む。所定時間t2が経過すると、制御部150は、第1誘導路12aを閉鎖させ、第2誘導路12bを開放させるように流路開閉部141を制御する。
【0135】
〈粒子ソーターの動作〉
次に、図29および図30を参照して、粒子ソーター200の動作の流れを説明する。なお、図29および図30において、マイクロ流路カートリッジ100以外の構成については、図23図26を参照するものとする。
【0136】
まず、事前準備として、ユーザが、新品のマイクロ流路カートリッジ100のサンプルチャンバ52に試料80を注入し、シース液チャンバ54にシース液を注入する。ユーザは、マイクロ流路カートリッジ100を設置部110に設置して、蓋部材112を取り付ける。これにより、分取処理の準備が整う。その後、ユーザの操作入力に応じて、粒子ソーター200による分取処理動作が開始される。
【0137】
制御部150は、第1分取工程S1(図8図31(A)参照)を開始する。図31(A)に示すように、制御部150は、ステップS11において、サンプルチャンバ52の試料80およびシース液チャンバ54のシース液を第1流路10に送液する処理を実行する。具体的には、制御部150は、図29(A)に示すように、切替位置P3、切替位置P4、切替位置P5の流路を開放し、切替位置P6および切替位置P7の流路を閉鎖するように、各送液制御バルブ122を動作させる。制御部150は、サンプルチャンバ52およびシース液チャンバ54に陽圧を印加し、回収チャンバ51、廃棄チャンバ55およびリザーバ53を大気開放するように、送液部120を制御する。これにより、サンプルチャンバ52から試料80が第1流路10に送液され、シース液チャンバ54からシース液がシース液流路54aを介して第1流路10に送液される。試料およびシース液の送液は、第1分取工程S1が終了するまで、継続される。
【0138】
送液を開始すると、ステップS12において、制御部150は、検出部130の信号に基づき標的粒子91を検出する。送液が継続されているため、第1流路10を流れる試料80が検出領域11を通過する。標的粒子91が検出領域11で検出されない場合(ステップS12:No)、検出部130の信号から得られる蛍光強度が閾値THに達することがないので、制御部150は、第1誘導路12aを閉鎖し、第2誘導路12bを開放する状態を維持するように、流路開閉部141を制御する。また、制御部150は、ステップS12の検出処理を継続する。分取されなかった試料82は、第2誘導路12bを介して廃棄チャンバ55へ送られる。
【0139】
図29(B)に示すように、標的粒子91が検出領域11を通過すると、検出部130の信号から得られる蛍光強度が閾値TH(図27参照)以上になる(ステップS12:Yes)。この場合、制御部150は、ステップS13において、標的粒子含有試料81を第1誘導路12aへ分取する処理を実行する。具体的には、制御部150は、第1誘導路12aを開放し、第2誘導路12bを閉鎖するように、流路開閉部141を制御する。これにより、標的粒子含有試料81が第1誘導路12aへ分取される。所定時間t2経過後、制御部150は、第1誘導路12aを閉鎖し、第2誘導路12bを開放する状態に切り替える。次に制御部は、ステップS14において、サンプルチャンバ52の試料80の全量が、第1流路10に送液されたか否かを判断する。サンプルチャンバ52の試料80の全量が、第1流路10に送液されていれば(ステップS14:Yes)、処理をステップS4(図8参照)に進める。サンプルチャンバ52の試料80の全量が、第1流路10に送液されていなければ(ステップS14:No)、処理をステップS12に戻す。なお、サンプルチャンバ52の試料80の全量が、第1流路10に送液されたか否かの判断は、試料の体積および送液速度から全量の送液に必要な時間を算出しておき、試料の送液開始からの経過時間が算出した時間に達したか否かで判断することができる。
【0140】
このようにして、第1分取工程S1が行われる。第1分取工程S1は、サンプルチャンバ52内の試料80の全量の送液が完了するまで、実施される。第1分取工程S1の完了後、第1誘導路12aへ分取された標的粒子含有試料81は、すべて回収チャンバ51内に貯留される。
【0141】
次に、制御部150は、シース液を回収チャンバ51へ送液することにより、標的粒子含有試料81を希釈する希釈工程S4(図8参照)を実施する。具体的には、制御部150は、図29(C)に示すように、切替位置P4、切替位置P5の流路を開放し、切替位置P3、切替位置P6および切替位置P7の流路を閉鎖するように、各送液制御バルブ122を動作させる。また、制御部150は、第1誘導路12aを開放し、第2誘導路12bを閉鎖する状態を維持するように、流路開閉部141を制御する。制御部150は、シース液チャンバ54に陽圧を印加し、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51、廃棄チャンバ55およびリザーバ53を大気開放するように、送液部120を制御する。これにより、シース液チャンバ54からのシース液が、シース液流路54a、検出領域11、第1誘導路12aを通って回収チャンバ51に送液される。制御部150は、所定の流速で所定時間の間シース液の送液を継続することにより、予め設定された液量のシース液を、希釈液として回収チャンバ51内に収容させる。その結果、標的粒子含有試料81が所定倍率に希釈される。なお、希釈工程S4は、第1分取工程S1の前に実行されてもよい。これにより、回収チャンバ51における標的粒子含有試料81とシース液の混合をより効果的に行うことができる。
【0142】
次に、制御部150は、返送工程S2(図8参照)を実施する。制御部150は、ステップS2において、回収チャンバ51内の希釈された標的粒子含有試料81を第1流路10の検出領域11より上流に返送するように、送液部120を制御する。具体的には、制御部150は、図30(D)に示すように、切替位置P6の流路を開放し、切替位置P3、切替位置P4、切替位置P5および切替位置P7の流路を閉鎖するように、各送液制御バルブ122を動作させる。また、制御部150は、第1誘導路12aを閉鎖するように、流路開閉部141を制御する。制御部150は、回収チャンバ51に陽圧を印加し、サンプルチャンバ52、シース液チャンバ54、廃棄チャンバ55およびリザーバ53を大気開放するように、送液部120を制御する。これにより、回収チャンバ51内の希釈された標的粒子含有試料81が、第2流路20を通ってリザーバ53に送液される。制御部150は、回収チャンバ51内の標的粒子含有試料81の全量を、リザーバ53に収容させる。なお、回収チャンバ51内の希釈された標的粒子含有試料81の全量をリザーバ53に収容させるためには、回収チャンバ51の収容体積および送液速度から、回収チャンバ51内の液体の全量の送液に必要な時間を算出しておき、算出した時間より長い期間、回収チャンバ51から送液すればよい。
【0143】
次に、制御部150は、第2分取工程S3(図8図31(B)参照)を開始する。図31(B)に示すように、制御部150は、ステップS31において、リザーバ53の標的粒子含有試料81およびシース液チャンバ54のシース液を第1流路10に送液する処理を実行する。具体的には、制御部150は、図30(E)に示すように、切替位置P4、切替位置P5および切替位置P7の流路を開放し、切替位置P3および切替位置P6の流路を閉鎖するように、各送液制御バルブ122を動作させる。制御部150は、リザーバ53およびシース液チャンバ54に陽圧を印加し、サンプルチャンバ52、回収チャンバ51および廃棄チャンバ55を大気開放するように、送液部120を制御する。これにより、標的粒子含有試料81が、リザーバ53から接続流路53aを介して第1流路10に送液され、シース液がシース液チャンバ54からシース液流路54aを介して第1流路10に送液される。
【0144】
第2分取工程S3における検出および分取動作の内容は、上記第1分取工程S1と同様である。すなわち、図31(B)に示すように、制御部150は、検出処理(ステップS32)、分取処理(ステップS33)および全量送液判断処理(ステップS34)を実行する。検出処理(ステップS32)、分取処理(ステップS33)および全量送液判断処理(ステップS34)は、それぞれ、図31(A)の第1分取工程S1におけるステップS12、ステップS13、およびステップS14の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。図30(F)に示すように、標的粒子91が検出領域11で検出され、検出部130の信号から得られる蛍光強度が閾値TH以上になると、制御部150は、第1誘導路12aを開放し、第2誘導路12bを閉鎖するように、流路開閉部141を制御する。蛍光強度が閾値TH未満の状態では、制御部150は、第1誘導路12aを閉鎖し、第2誘導路12bを開放する状態に切り替える。これにより、標的粒子含有試料81が、再度、第1誘導路12aへ分取される。
【0145】
第2分取工程S3は、リザーバ53内の標的粒子含有試料81の全量の送液が完了するまで、実施される。第2分取工程S3の完了後、第1誘導路12aへ再度分取された標的粒子含有試料81は、すべて回収チャンバ51内に貯留される。
【0146】
なお、第1流路10を流れる標的粒子含有試料81は、第1分取工程S1の試料80と比較して、非標的粒子92の数が顕著に減少している。そのため、第2分取工程S3によって、標的粒子含有試料81中に混入した非標的粒子92がさらに除去され、標的粒子含有試料81中の標的粒子91の純度が高まる。
【0147】
ここで、第2分取工程S3における送液速度は、第1分取工程S1における送液速度と同一でもよいが、第1分取工程S1における送液速度と異ならせてもよい。たとえば、制御部150は、第1分取工程S1における試料の流速が、第2分取工程S3における標的粒子含有試料81の流速よりも大きくなるように、送液部120を制御する。言い換えると、第2分取工程S3における標的粒子含有試料81の流速を、第1分取工程S1における試料の流速よりも小さくする。標的粒子含有試料81の流速は、圧力調整器124を制御し、第1流路10に供給される陽圧の大きさを変えることにより調整できる。
【0148】
これにより、第1分取工程S1を短時間で完了させることができる。そして、第1分取工程S1によって標的粒子91の純度が高められた標的粒子含有試料81に対する第2分取工程S3では、相対的に小さい流速での送液により分取精度を向上できる。その結果、分取するのに要する時間を短縮しつつ、標的粒子の純度を効果的に向上させることができる。
【0149】
以上のようにして、本実施形態の粒子ソーター200による標的粒子91の分取処理が行われる。上記の説明では、第1分取工程S1および第2分取工程S3の合計2回の分取工程を行う例を示したが、分取工程を3回以上行ってもよい。3回目以降の分取工程は、上記希釈工程S4、返送工程S2、第2分取工程S3の繰り返しになる。
【0150】
[実施例]
次に、本実施形態の粒子ソーターに関する検証のために行った各種の実験結果について説明する。
【0151】
(実施例)
本実施形態の粒子ソーターによって、図25に示したマイクロ流路カートリッジ100を用いて、第1分取工程および第2分取工程(すなわち、合計2回の分取工程)を行った場合の標的粒子91の純度および所要時間を計測した。
【0152】
〈試料およびシース液〉
下記のように、異なる種類の蛍光ビーズを標的粒子91、非標的粒子92とみなして試料を調製した。
標的粒子:緑色蛍光ビーズ(直径15μm、Thermo Scientific社製)
非標的粒子:赤色蛍光ビーズ(直径3.2μm、Thermo Scientific社製)
シース液:2%界面活性剤含有の超純水
【0153】
試料の体積、総粒子(標的粒子および非標的粒子の合計)の濃度および個数、標的粒子の個数、および標的粒子の純度は、下記の表1の通りである。
【表1】
なお、標的粒子の純度=(標的粒子数/総粒子数)である。試料中の標的粒子の純度(0.0056%)は、血液試料中のCTCなど、試料中の含有数が極めて小さい希少粒子を標的粒子とした分取処理を想定したものである。
【0154】
試料およびシース液をマイクロ流路カートリッジ100のサンプルチャンバ52およびシース液チャンバ54にそれぞれ注入した後、下記の条件で、粒子ソーター200による分取処理(第1分取工程、希釈工程、返送工程、第2分取工程)を実施した。
〈実験条件〉
試料の流速:12.2μL/min(設定値)
シース液流速:130μL/min
検出部のサンプリングレート:100kHz
流路開閉部の切り替え速度:310Hz
希釈工程におけるシース液の添加量:200μL
なお、流速は、第1分取工程および第2分取工程において、同一条件とした。
【0155】
実施例による分取処理(第1分取工程および第2分取工程後)の結果は、下記の表2の通りである。なお、粒子の個数は、回収された標的粒子含有試料をフローサイトメータで測定した結果である。
【表2】
実施例による2回の分取工程(第1分取工程および第2分取工程)の結果、標的粒子の純度は25.7%、処理時間は1442秒であった。表1および表2より、分取前試料における標的粒子の純度(0.0056%)から、純度25.7%まで、標的粒子が約4600倍濃縮されたことがわかる。標的粒子の回収率は約80%であった。また、処理効率の評価指標として、スループットを求めた。スループット=(処理した総粒子数/処理時間)である。1つ1つの粒子に対する分取を、eventと呼ぶ。実施例のスループットが8114(event/sec)となった。
【0156】
〈比較例1および比較例2〉
次に、比較例1および比較例2として、1回のみの分取工程で、実施例の純度(25.7%)と同等の純度を得るために必要な所要時間を計測した。
【0157】
実施例との対比のため、比較例1および比較例2では、実施例と同じマイクロ流路カートリッジを用いて、1回の分取工程のみを実施した。そのため、比較例1および比較例2では、第2流路20およびリザーバ53は使用されない。比較例1および比較例2で使用する粒子ソーター200も、上記実施例と同じである。
【0158】
〈試料およびシース液〉
比較例1および比較例2に使用した粒子およびシース液は、上記実施例と同一である。
〈実験条件〉
試料の流速:10.5μL/min(設定値)
シース液流速:130μL/min
検出部のサンプリングレート:100kHz
流路開閉部の切り替え速度:310Hz
【0159】
比較例1および比較例2における、試料の体積、総粒子(標的粒子および非標的粒子の合計)の濃度および個数、標的粒子の個数、および標的粒子の純度は、下記の表3の通りである。
【表3】
ここで、比較例1および比較例2では、総粒子の濃度を、上記実施例と比較して1/100に希釈した。分取前試料における標的粒子の純度は、0.58%であった。
【0160】
比較例1および比較例2による分取処理の結果は、下記の表4の通りである。
【表4】
比較例1では、標的粒子の純度が29.4%となり、比較例2では、標的粒子の純度が37.9%となった。このため、比較例1および比較例2では、分取された標的粒子の純度に関して、上記実施例と概ね同等の結果が得られた。
【0161】
比較例1では処理時間が343秒、比較例2では処理時間が570秒となった。比較例1のスループットが306(event/sec)、比較例2のスループットが185(event/sec)となった。
【0162】
〈考察〉
図32に示すように、上記実施例では、純度0.0056%の分取前試料から、純度25.7%の標的粒子含有試料を得るのに、1442秒を要した。一方、比較例1(図33参照)では、実施例の100倍である純度0.58%の分取前試料から、実施例と同程度の純度の標的粒子含有試料を得るのに343秒を要した。比較例2では570秒を要した。
【0163】
このように、比較例1および比較例2では、標的粒子の純度を上記実施例と同等にするためには、非標的粒子の数を100倍にする必要があった。そのため、上記実施例で使用した試料(純度0.0056%)の全量を、比較例1および2の手法で同等の結果が得られるように処理するためには、単純計算で100倍の体積の試料を準備する必要があり、そのために必要な処理時間も100倍となる。つまり、比較例1の場合、34300秒の処理時間を要することになる。このことから、上記実施例(1442秒)では、同じ分取前試料を同程度の純度まで処理する場合、比較例1(34300秒)と比較して、処理に要する時間を約1/24に短縮できることが分かった。
【0164】
この結果を端的に示すのが、スループットである。上記実施例では、1秒当たり8114個の粒子を処理しているのに対して、比較例1では1秒当たり306個、比較例2では1秒当たり185個の粒子しか処理できないことが分かる。図34に示すように、実施例のスループットは、比較例1の約27倍である。以上から、本実施形態の粒子ソーター200、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジ100により、標的粒子を十分な純度で分取するのに要する時間を短縮できることが確認された。
【0165】
〈比較例3〉
分取処理における標的粒子の純度とスループットとの関係を調査した結果を説明する。
【0166】
比較例3では、下表5に示すように、標的粒子の割合を一定に調整し、総粒子の濃度を異ならせた3種類の分取前試料(サンプル1、サンプル2、サンプル3)を用いて、1回のみの分取工程を行った。各サンプルについて、分取工程の実験条件は上記比較例1および比較例2と同一である。
【表5】
サンプル2は、サンプル1を2倍に希釈したものである。サンプル3は、サンプル2を2倍に希釈したものである。同一の実験条件で、2倍ずつ希釈されたサンプルを処理するため、スループットは、サンプル2がサンプル1の約1/2であり、サンプル3がサンプル2の約1/2となる。表5から分かるように、サンプル1では純度が26.8%となり、サンプル2では純度が57.6%となり、サンプル3では純度が80.3%となった。
【0167】
〈考察〉
サンプル1~サンプル3について、スループットと、得られた純度との関係をプロットしたグラフを図35に示す。図35において、縦軸が標的粒子の純度であり、横軸がスループットである。図35からは、分取処理のスループットと標的粒子の純度とには、トレードオフの関係があることが分かる。つまり、図36の交換型流路カートリッジ900のように、1回のみの分取処理を行うマイクロ流路カートリッジでは、スループットと純度との間で図35に示すようなトレードオフ関係が成立し、この関係を超えてスループット(処理速度)を増大させることが困難であることが分かる。
【0168】
図35では、本実施形態のマイクロ流路カートリッジ100を用いた上記実施例の結果もプロットしている。図35から、本実施形態では、1回のみの分取処理では達成し得ない高いスループットでの処理が可能であることが確認された。これにより、本実施形態により、本実施形態の粒子ソーター200、粒子分取方法およびマイクロ流路カートリッジ100により、1回のみの分取処理を行う場合では達成し得ない処理時間の短縮が可能であることが裏付けられた。
【0169】
また、本実施形態では、これに加えて、下記のような利点がある。
【0170】
1回のみの分取処理を行う交換型流路カートリッジ900(図36参照)を利用して得られた標的粒子含有試料を、ユーザがピペッタなどにより回収し、再度、新たな交換型流路カートリッジ900に注入することで、上記実施例と同様の複数回の分取工程を行うことが考えられる。しかし、この場合、カートリッジの外部に試料を取り出す作業が必要になることから、コンタミネーションおよびヒューマンエラーが発生する虞がある。また、ピペッティングに起因して標的粒子にダメージが加わる可能性がある。これに対して、本実施形態では、複数回の分取工程がマイクロ流路カートリッジ100の内部だけで完結するため、試料を外部に取り出すことに起因するコンタミネーションの発生やヒューマンエラーの発生を防止できる。また、ピペッティングが不要であるので、標的粒子へのダメージが抑制される。このことは、特に細胞などを標的粒子91として分取処理を行う場合に大きなメリットであると言える。
【0171】
また、粒子ソーティングの他の手法として、フローサイトメータを利用したFACS(Fluorescence assisted cell sorting)がある。FACSは、高いスループットを実現できる一方、分取処理における粒子へのダメージが大きくなる点、および開放環境で処理が行われるため、コンタミネーションの虞がある点に問題がある。これに対して、本実施形態では、分取機構部140が流路の開閉を行うことによって分取を行うため、粒子へのダメージを抑制できる。また、分取処理がマイクロ流路カートリッジ100の内部だけで実行されるため、コンタミネーションの発生を防止できる。
【0172】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0173】
例えば、上記した実施形態では、送液部120、検出部130、分取機構部140、制御部150、記憶部151、およびドライバ回路152は、マイクロ流路カートリッジ100とは別に設けられていたが、これらの少なくとも一部をマイクロ流路カートリッジ100に組み込んでもよい。例えば、検出部130を構成する光源131、光学系132、および光検出器133をマイクロ流路カートリッジ100に組み込んでもよいし、光検出器133を組み込んでもよい。また、分取機構部140をマイクロ流路カートリッジ100に組み込んでもよいし、分取機構部140を構成する流路開閉部141を組み込んでもよいし、送液制御バルブ122を組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0174】
10:第1流路、11:検出領域、12:分取領域、12a:第1誘導路、12b:第2誘導路、20:第2流路、30:第3流路、40:流路形成体、41:基板、42:シート、51:回収チャンバ、52:サンプルチャンバ、53:リザーバ、53a:接続流路、54:シース液チャンバ、54a:シース液流路、80:試料、81:標的粒子含有試料、82:試料、91:標的粒子、100:マイクロ流路カートリッジ、110:設置部、120:送液部、130:検出部、140:分取機構部、141:流路開閉部、142:可動部材、142a:押圧部、143:圧電素子、144:固定部材、150:制御部、200:粒子ソーター、MC:流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36