(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】エレベーター出入口装置
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B66B13/30 N
(21)【出願番号】P 2020106964
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智宏
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 啓太
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-118931(JP,A)
【文献】特開2007-176687(JP,A)
【文献】特開2017-218320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの出入口を開閉するドアと、前記出入口の下部に設けられて上面に溝を有する敷居と、前記溝を摺動するドアシューと、を備えたエレベーター出入口装置において、
前記敷居には、前記溝に沿った水平方向の軸を中心に回転可能な遮蔽帯が設けられ、
前記遮蔽帯は、前記ドアの開閉動作に伴って回転するものであり、前記ドアが閉状態のときには前記ドアの面と対向し、前記ドアが開状態のときには中央部分が前記敷居の面と対向
し、
前記ドアは、前記遮蔽帯を立ち上げるガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記ドアの閉じ端よりも突出していることを特徴とするエレベーター出入口装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター出入口装置において、
前記ドアは、かごドアであって、
前記かごドアの閉動作時に、前記遮蔽帯の中央部分が、水平状態から反乗り場側に向かって立ち上がることを特徴とするエレベーター出入口装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーター出入口装置において、
前記ドアは、乗り場ドアであって、
前記乗り場ドアの閉動作時に、前記遮蔽帯の中央部分が、水平状態から反かご側に向かって立ち上がることを特徴とするエレベーター出入口装置。
【請求項4】
請求項
1に記載のエレベーター出入口装置において、
前記ガイド部材は、前記ドアに対してバネを介して固定されていることを特徴とするエレベーター出入口装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のエレベーター出入口装置において、
前記ドアの開閉動作中、前記ガイド部材は、セフティシューよりも突出量が小さいことを特徴とするエレベーター出入口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの出入口装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターの出入口の敷居には、敷居溝が形成され、ドア本体に設けられたドアシューを敷居溝に沿って摺動させることで、ドアの奥行方向の変位が抑制されている。この敷居溝内に異物が入ると、ドアの動作不良や異音の原因となる場合があるため、保守員や清掃員などが敷居溝内の異物を除去する必要があった。そこで、敷居溝を塞ぐことにより、異物の侵入を防ぐ技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「エレベータの出入口に設けられたドアと、出入口の下縁部に設けられ、上方に開口した敷居溝を有した敷居と、ドアの下部に設けられ、敷居溝に摺動自在に嵌め込まれたドアシューと、を備え、ドアシューは、敷居溝の長手方向に渡ってベルト状に配置され、ドアの開閉に追従して敷居溝内を摺動し、敷居溝を常時遮蔽する構成とした」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、敷居溝を塞ぐベルト状のドアシュー上面から排出される異物を受け止める構造が必要であり、しかも、出入口中央のドア下方には異物が残ってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造で、出入口中央のドア下方に異物が残るのを抑制したエレベーター出入口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、エレベーターの出入口を開閉するドアと、前記出入口の下部に設けられて上面に溝を有する敷居と、前記溝を摺動するドアシューと、を備えたエレベーター出入口装置において、前記敷居には、前記溝に沿った水平方向の軸を中心に回転可能な遮蔽帯が設けられ、前記遮蔽帯は、前記ドアの開閉動作に伴って回転するものであり、前記ドアが閉状態のときには前記ドアの面と対向し、前記ドアが開状態のときには中央部分が前記敷居の面と対向し、前記ドアは、前記遮蔽帯を立ち上げるガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記ドアの閉じ端よりも突出している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構造で、出入口中央のドア下方に異物が残るのを抑制したエレベーター出入口装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係るエレベーター出入口装置の要部正面図である。
【
図3】
図1のB-B断面図であり、エレベーター出入口装置の下部を上方から見たときのものである。
【
図4】ドアが(全)閉状態となったときの出入口中央下部を示す要部正面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る遮蔽帯の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面に従って説明する。エレベーターの出入口としては、各乗り場に設けられる乗り場ドアと、乗りかごに設けられるかごドアと、があるが、以下の実施例では、かごドアを例に挙げて説明する。ただし、乗り場ドアについても、同様の構成を適用することが可能である。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係るエレベーター出入口装置の要部正面図である。本実施例に係るエレベーター出入口装置は、エレベーターの出入口を開閉する両開き式のドア1(かごドア)と、出入口の上部に設けられてドア1を案内するレール(図示せず)と、出入口の下部に設けられて上面に敷居溝8を有する敷居2と、敷居溝8を摺動するドアシュー(図示せず)と、を備えている。
【0012】
また、敷居2の上面には、敷居溝8に沿った水平方向(ドア開閉方向)の軸を中心に回転可能な遮蔽帯3が設けられている。この遮蔽帯3は、敷居2のドア開閉方向の中央にある取付部4によって支持され、ドアの開閉動作に伴って回転する構成となっている。遮蔽帯3は、ドア1が上方に位置しない領域では水平状態となって敷居溝8を塞ぎ、ドア1が上方に位置する領域では鉛直状態となってドア1の下端と敷居2との隙間を塞ぐ。さらに、ドア1が上方に位置しない領域のうち、ドア1に近い領域では、ドア1に設けられたガイド部材5が、水平状態の遮蔽帯3を捩りながら徐々に鉛直状態に立ち上げる。このように、遮蔽帯3が徐々に立ち上がることにより、ドア1が閉じる際にドア1の進行方向に存在する異物を除去することができる。ここで、ガイド部材5は、ドア1に対してバネ6を介して固定されているので、その押付力によって、遮蔽帯3を立ち上げることが可能となっている。また、立ち上がった遮蔽帯3は、ドア1に設けられた押さえ部材7によって鉛直状態に保持される。
【0013】
なお、各ドア1には、ドアが閉動作中に人や物と接触したときにドア1が反転して開くように動作させる安全装置であるセフティシュー(図示せず)が、ドア1の閉じ端より突出した状態で設けられている。本実施例のガイド部材5は、ドア1の開閉動作中にドア1の閉じ端より突出しているが、このセフティシューよりも突出量を小さくすることで、人や物との接触を抑制できる。
【0014】
図2は、
図1のA-A線における断面図である。
図2に示すように、ドア1が(全)開状態のときには、遮蔽帯3のドア開閉方向中央の部分が敷居2の上面と対向して水平状態となり、敷居溝8の上方が塞がれる。一方、ドア1が(全)閉状態のときには、遮蔽帯3全体がドア1と対向して鉛直状態となり、押さえ部材7によって鉛直状態が保持され、ドア1(かごドア)の反乗り場側の下端と敷居2との隙間が塞がれる。
【0015】
また、本実施例の取付部4は、遮蔽帯3を敷居2に対して回転可能に支持するだけでなく、遮蔽帯3に水平状態になろうとする自閉力を与えるため、例えばトルクヒンジを用いるのが望ましい。遮蔽帯3は、ドア開閉方向中央にある取付部4から与えられる自閉力によって、ドア1が開く際に取付部4から遠ざかるにつれて、水平状態になって敷居溝8を塞ぐ。
【0016】
図3は、
図1のB-B線における断面図であり、エレベーター出入口装置の下部を上方から見たときのものである。
図3に示すように、ガイド部材5は、ドア1が(全)開状態あるいは開閉中では、ドア1の閉じ端よりも突出するように、バネ6を介してドア1に固定されている。また、ガイド部材5の突出部は、斜面または曲面を有しているため、ドア1が閉動作時に遮蔽帯3を立ち上げ易くなっている。さらに、ドア1(かごドア)が閉状態のときには、一方のドアのガイド部材5端部が、他方のドアのガイド部材5端部と突き当たり、出入口中央側(取付部4側)の遮蔽帯3も乗りかご側へ立ち上がる。このため、両開きドア1(かごドア)の閉じ端の下方について、乗りかご側(反乗り場側)の隙間が遮蔽帯3で塞がれ、乗りかご内の異物が出入口中央下方から敷居溝8や昇降路内へ侵入するのを防止できる。
【0017】
また、ドア1(かごドア)の閉動作時に、遮蔽帯3が水平状態から反乗り場側に向かって立ち上がるので、水平状態のときの遮蔽帯3上にあった異物は、乗りかご内へはじき出される。同様に、ドア1(乗り場ドア)の閉動作時に、遮蔽帯3が水平状態から反乗りかご側に向かって立ち上がるので、水平状態のときの遮蔽帯3上にあった異物は、乗り場側へはじき出される。したがって、異物の発見および回収が容易になるとともに、異物が昇降路内へ落下するのも防止できる。
【0018】
なお、遮蔽帯3は、ドア1の開閉動作の過程で軸方向のねじれが生じるため、屈曲性を有する材料(例えばゴムやシリコン)で、帯状に形成するのが望ましい。また、遮蔽帯3の長さは、出入口幅よりも長く、ドア1が(全)閉状態のときでも両端がドア1内へ収まる長さとなっている。
【0019】
図4は、ドア1が(全)閉状態となったときの出入口中央下部を示す正面図である。
図4に示すように、両開きのドア1が(全)閉状態のときは、ガイド部材5の先端どうしが相互に押し合うことでバネ6が圧縮され、ガイド部材5の先端がドア1の閉じ端に対して突出せずに、ドア1内に収納される。このように、本実施例によれば、ドア1の下方が、出入口中央を含む出入口幅全域にわたって遮蔽帯3によって塞がれる。したがって、敷居溝8内に異物が入りドア1の駆動中に騒音を発生させるのを防止できる。さらに、敷居2の下方に異物を受けるための特別の構造を設けなくても、昇降路内に異物が落下するのを防止でき、異物回収の手間を節減することが可能となる。
【実施例2】
【0020】
実施例1では、遮蔽帯として屈曲性のある材料を用いた場合を例に挙げたが、実施例2では、遮蔽帯として、金属など一定の荷重に耐えうる材料と用いた場合を例に挙げる。
【0021】
図5は、本発明の実施例2に係る遮蔽帯の正面図である。
図5に示すように、本実施例の遮蔽帯は、複数の遮蔽片をドア開閉方向に並べ、軸11を介して連結することで構成されている。また、本実施例では、遮蔽片として、第1の遮蔽片9と、第2の遮蔽片10と、が交互に並べられており、隣接ずる遮蔽片の回転動作に追従することにより、各遮蔽片が段階的に回転できるようになっている。なお、遮蔽片の数を増やすほど、実施例1のように遮蔽帯の全体が連続的に変形するようになるが、製作効率を考慮すると遮蔽片の数は少ない方が良い。
図6は
図5のC-C線における断面図である。
図6に示すように、第1の遮蔽片9は、軸11を支持する凸部が具備されており、この凸部が、ドア開閉方向に延びて隣接する第2の遮蔽片に達している。一方、第2の遮蔽片10は、第1の遮蔽片9の凸部を受ける凹部が具備されている。また、第2の遮蔽片10の凹部は、軸11の周方向に所定角度の空隙12が形成されているので、隣接する第1の遮蔽片9の回転に対し、空隙分の遅れを伴って第2の遮蔽片10が回転する。これにより、遮蔽帯を金属など屈曲し難い材料で形成した場合でも、ドア1の開閉動作に応じて、遮蔽帯を鉛直状態にしたり水平状態にしたりすることが可能となっている。したがって、本実施例においても、ドア1が閉状態のときには遮蔽帯が鉛直状態となってドア1下方からの異物侵入を防ぎ、ドア1が開状態のときには遮蔽帯が水平状態となって敷居溝8内への異物侵入を防ぐことができる。なお、本実施例では、第1の遮蔽片9と第2の遮蔽片10を、異なる形状としたが、軸方向一方に凸部を有し軸方向他方に凹部を有する左右非対称の共通の遮蔽片で形成しても良い。
【0022】
また、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 ドア(かごドア)
2 敷居
3 遮蔽帯
4 取付部
5 ガイド部材
6 バネ
7 押さえ部材
8 敷居溝
9 第1の遮蔽片
10 第2の遮蔽片
11 軸
12 空隙