(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240423BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2020126702
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 光慶
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友希
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077652(JP,A)
【文献】特開2017-157617(JP,A)
【文献】特開2022-014775(JP,A)
【文献】特開2002-009064(JP,A)
【文献】特開2003-059789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に対して略直交する第1表面及び第2表面を含む板状の第1の板状部材、前記第1の板状部材の内部又は前記第2表面に配置された複数のヒータ、前記第1の板状部材に配置される複数の測温素子、前記測温素子と配線を介して接続される測温素子端子を有する保持基板と、
前記第2表面側に配されかつ冷却機構を有するベース部材とを備える保持装置であって、
前記測温素子は、前記第1の方向において、前記ヒータよりも前記第1表面側に位置し、
前記配線は、前記第1の板状部材の内部に配置され、前記測温素子から前記ヒータ側に向かって引き出され
、
前記第1の板状部材は、前記第1表面に形成された収容部であって、前記測温素子が配置される底部と、前記底部の周縁から前記第1表面側に立ち上がりかつ前記底部を取り囲む周壁部と、前記周壁部の前記第1表面側の端部からなる開口部とを含む収容部を有する保持装置。
【請求項2】
前記保持基板は、
前記第1の方向に対して略直交する第3表面及び第4表面を含み、前記第1の方向において、前記第4表面が前記第1表面と対向するように配置される板状の第2の板状部材と、
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を接合する接合部と、を備える
請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記第1の板状部材における前記開口部を塞ぐように配置される蓋材を有する
請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
複数の前記測温素子は、前記第1の方向における位置が、互いに異なる請求項1から
請求項3の何れか一項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際にウェハ(例えば、シリコンウェハ)を保持する保持装置として、静電チャックが用いられている。静電チャックは、チャック電極を内部に含むセラミックス製の板状部材を備えており、そのチャック電極に電圧が印加された際に生じる静電引力を利用して、ウェハが板状部材の表面(吸着面)に吸着される。なお、静電チャックは、板状部材の裏面側に接合させる金属製のベース部材を備えている。
【0003】
また、この種の静電チャックは、吸着面に吸着されたウェハの温度を調節するための複数のヒータを備えている。各ヒータは、板状部材の内部等に設けられており、各ヒータの発熱量を適宜、調節することによって、吸着面上のウェハの温度を調節することができる。更に、静電チャックのベース部材の内部には、冷媒流路(冷却機構)が設けられている。その冷媒流路内に冷却水等の冷媒を流すことによって、ベース部材に接合された板状部材が冷却される。
【0004】
このような静電チャックでは、板状部材の表面温度を正しく検知する必要があるため、板状部材には、複数の測温素子(サーミスタ等)が設けられている。測温素子は、例えば、板状部材の裏面側に点在するように設けられる。これらの測温素子の中には、ベース部材の冷却機構(冷媒流路)の近くに設けられるものがある。冷却機構の付近は、他と比べて熱が逃げ易くなっているため、その近くに配置された測温素子は、他と比べて低い温度を検出し易い。また、測温素子が板状部材やベース部材に設けられた貫通孔の近くに設けられると、それらの付近は熱引きが悪いため、それらの近くに配置された測温素子は、他と比べて高い温度を検出し易い。そのため、複数の測温素子の間で、検知温度のばらつきが発生することがあった。
【0005】
このような事情等により、従来、ヒータよりも表面側(上側)に配置されるように板状部材内に測温素子が設けられた静電チャックが提供されている(例えば、特許文献1,2参照)。この種の静電チャックでは、測温素子の近くにヒータが配置されているため、測温素子の近くに熱の逃げ易い箇所が局所的に形成されることが抑制されている。なお、測温素子は、板状部材の裏面側から表面側に向かって窪むように形成された凹部(つまり、下側に開口した形状の凹部)の底面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-60833号公報
【文献】特開2018-60834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ヒータよりも表面側に測温素子が配置されるように、板状部材に凹部が形成されると、そのような凹部を避けるように、板状部材内に測温素子に接続する配線を設ける必要があった。つまり、従来の静電チャックでは、測温素子に接続する配線の引き出し方向の自由度が低く、問題となっていた。
【0008】
本発明の目的は、測温素子に接続する配線の引き出し方向の自由度が高い保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 第1の方向に対して略直交する第1表面及び第2表面を含む板状の第1の板状部材、前記第1の板状部材の内部又は前記第2表面に配置された複数のヒータ、前記第1の板状部材に配置される複数の測温素子、前記測温素子と配線を介して接続される測温素子端子を有する保持基板と、前記第2表面側に配されかつ冷却機構を有するベース部材とを備える保持装置であって、前記測温素子は、前記第1の方向において、前記ヒータよりも前記第1表面側に位置し、前記配線は、前記第1の板状部材の内部に配置され、前記測温素子から前記ヒータ側に向かって引き出されている保持装置。
【0010】
<2> 前記第1の板状部材は、前記第1表面に形成された収容部であって、前記測温素子が配置される底部と、前記底部の周縁から前記第1表面側に立ち上がりかつ前記底部を取り囲む周壁部と、前記周壁部の前記第1表面側の端部からなる開口部とを含む収容部を有する前記<1>に記載の保持装置。
【0011】
<3> 前記保持基板は、前記第1の方向に対して略直交する第3表面及び第4表面を含み、前記第1の方向において、前記第4表面が前記第1表面と対向するように配置される板状の第2の板状部材と、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を接合する接合部と、を備える前記<1>又は<2>に記載の保持装置。
【0012】
<4> 前記第1の板状部材における前記開口部を塞ぐように配置される蓋材を有する前記<2>に記載の保持装置。
【0013】
<5> 複数の前記測温素子は、前記第1の方向における位置が、互いに異なる前記<1>1から<4>の何れか1つに記載の保持装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測温素子に接続する配線の引き出し方向の自由度が高い保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る静電チャックの外観構成を模式的に表した斜視図
【
図2】実施形態1に係る静電チャックの一部の断面構成を模式的に表した説明図
【
図3】板状部材内に設置されている測温素子の拡大断面図
【
図4】ベース部材内に設置されているコネクタの拡大断面図
【
図5】実施形態2に係る静電チャックの一部の断面構成を模式的に表した説明図
【
図6】実施形態3に係る静電チャックの一部の断面構成を模式的に表した説明図
【
図7】実施形態4に係る静電チャックの板状部材内に設置されている測温素子の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1に係る保持装置を、
図1~
図4を参照しつつ説明する。本実施形態では、保持装置の一例として静電チャック100を例示する。
図1は、実施形態1に係る静電チャック100の外観構成を模式的に表した斜視図であり、
図2は、実施形態1に係る静電チャック100の一部の断面構成を模式的に表した説明図である。なお、各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、説明の便宜上、Z軸方向を、「第1の方向」、「上下方向」等と称し、Z軸方向に直交する方向を、「面方向」等と称する場合がある。
図2には、第1の方向で切断した静電チャック100の断面構成が示されている。
【0017】
静電チャック100は、対象物(例えば、ウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、主として、保持基板10と、ベース部材20とを備えている。保持基板10及びベース部材20は、接合部30を介して上下方向(第1の方向)に並べて配置される。
【0018】
接合部30は、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤によって構成されている。
【0019】
保持基板10は、全体的には、円盤状をなしており、上下方向(第1の方向)に対して略直交する方向に延びた略円形平面状の表面(吸着面)S1及び裏面S2を含んでいる。表面S1の反対側に、裏面S2が配置されており、表面S1は、ウェハWを吸着する際に載せられる吸着面として機能する。なお、表面(吸着面)S1には、必要に応じて、凸部や凹部が設けられてもよい。
【0020】
保持基板10の直径は、例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、保持基板10の厚みは、例えば1mm~20mm程度である。
【0021】
保持基板10は、上下方向(第1の方向)に並べて配置される第1の板状部材11(以下、板状部材11)と、第2の板状部材12(以下、板状部材12)とを備えている。板状部材11は、板状部材12の下側に配置されている。板状部材11及び板状部材12は、アルミナを主成分とするアルミナ質焼結体からなる。
【0022】
板状部材11は、上下方向(第1の方向)に対して略直交する第1表面11a及び第2表面11bを含む板状の部材である。第1表面11aは、板状部材11の上側に配され、第2表面11bは、板状部材11の下側に配されている。なお、板状部材11の第2表面11bは、保持基板10の裏面S2を構成する。
【0023】
板状部材12は、上下方向(第1の方向)に対して略直交する第3表面12a及び第4表面12bを含み、板状部材11よりも厚みの小さい板状の部材である。第3表面12aは、板状部材12の上側に配され、第4表面12bは、板状部材12の下側に配されている。なお、板状部材12の第3表面12aは、保持基板10の表面(吸着面)S1を構成する。板状部材12は、上下方向(第1の方向)において、第4表面12bが板状部材11の第1表面11aと対向するように配置されている。板状部材12は、板状部材11の上側に、接合部31を介して固定されている。接合部31は、接合部30と同様の接着剤によって構成されている。接合部31の周りには、シリコーンゴム等からなるOリング32が配置されており、そのOリング32も板状部材11と板状部材12との間で挟まれつつ、それらの間に介在されている。
【0024】
保持基板10の内部には、チャック電極40、複数のヒータ50、複数の測温素子60等が配置されている。チャック電極40は、板状部材12の内部に配置され、ヒータ50、測温素子60等は、板状部材11の内部に配置されている。
【0025】
チャック電極40は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成される。チャック電極40は、上下方向から見た際(第1の方向視で)、略円形状をなしている。チャック電極40に電源(不図示)から直流高電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが、保持基板10の表面S1に吸着固定される。なお、チャック電極40には、図示されない周知の給電用端子が電気的に接続されている。
【0026】
保持基板10は、表面(吸着面)S1の温度分布の制御(即ち、表面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)を行うための複数のヒータ50を備えている。ヒータ50は、導電性材料(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼等)が層状に加工されたものからなり、板状部材11の内部に配置されている。
【0027】
ヒータ50は、電圧が印加されて電流が流れると発熱するライン状の発熱部51を備えている。発熱部51には、一対の配線52,53が接続されている。これらの配線52,53は、板状部材11の厚み方向(上下方向)に延びるビアや平面方向に延びる内部配線層によって形成されている。
【0028】
保持基板10には、平面視(第1の方向視)で、同心状に複数の加熱領域が設けられており、各加熱領域に、それぞれヒータ50(発熱部51)が割り当てられるように配置されている。なお、複数のヒータ50は、保持基板10の板状部材11内において、仮想的な平面上に配置されている。各ヒータ50には、周知の給電用端子(不図示)が電気的に接続されている。
【0029】
測温素子60は、温度によって自身の抵抗値が変化する例えばサーミスタであり、上記加熱領域と重なる位置に配置されている。測温素子60については、後述する。
【0030】
ベース部材20は、保持基板10と同径の、又は保持基板10より径が大きい略円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウム、アルミニウム合金等)により構成されている。ベース部材20は、保持基板10の裏面S2と、ベース部材20の表面S3との間に配置された接合部30によって、保持基板10に接合されている。ベース部材20の表面S3の反対側に、裏面S4が配置されている。ベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm程度)であり、ベース部材20の厚みは、例えば20mm~40mm程度である。
【0031】
ベース部材20の内部には、冷媒流路(冷却機構)24が設けられている。冷媒流路24に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体、水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と保持基板10との間の伝熱(熱引き)により、保持基板10が冷却され、保持基板10の表面S1で保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0032】
図3は、板状部材11内に設置されている測温素子60の拡大断面図である。測温素子60は、板状部材11の第1表面11aには、複数の凹部状の収容部13が形成されており、その収容部13内に、測温素子60が設置されている。収容部13は、測温素子60が配置される底部13aと、底部13aの周縁から第1表面11a側に立ち上がりかつ底部13aを取り囲む周壁部13bと、周壁部13bの第1表面11a側の端部からなる開口部13cとを備えている。収容部13同士は、互いに同じ形状及び大きさである。各収容部13の底部13aは、第1の方向において、ヒータ50よりも第1表面11a側(上側)に配置されている。そのため、底部13a上に配置される測温素子60も、ヒータ50よりも第1表面11a側(上側)に配置されている。
【0033】
なお、収容部13は、上下方向において、ヒータ50が配置されている位置を越えるように(跨ぐように)、形成されるものではない。そのため、板状部材11において、測温素子60から下側の部分を、一体のセラミックスで構成することができる。
【0034】
測温素子60は、
図3に示されるように、サーミスタ焼結体61と、サーミスタ焼結体61から延びる白金からなる一対の電極線62(62a,62b)から構成されている。一方の電極線62aがプラス側であり、他方の電極線62bがマイナス側である。
【0035】
測温素子60は、上方に開口した凹部状の収容部13内に収容されている。その収容部13の底部13aには、一対の電極パッド63が形成されており、この電極パッド63に電極線62が例えばろう付けにより接合されている。収容部13の内部には、隙間がないように接合部31の一部からなる充填剤31aが充填されている。
【0036】
各測温素子60には、それぞれ一対の配線57a,57bが接続されている。一方の配線57aは、プラス側の電極線62aに接続する電極パッド63から、下側(第2表面11b側)に向かって板状部材11の厚み方向(上下方向)に延びるビア57a1、ビア57a1の下端から平面方向に延びる内部配線層57a2、内部配線層57a2から、下側(第2表面11b側)にあるコネクタ71(測温素子端子の一例)に向かって板状部材11の厚み方向(上下方向)に延びるビア57a3から構成されている。各測温素子60の各配線57aは、1つのコネクタ71内に収容されている複数の接続部84に対して、別々に電気的に接続されている。
【0037】
他方の配線57bは、マイナス側の電極線62bに接続する電極パッド63から、下側(第2表面11b側)に向かって板状部材11の厚み方向(上下方向)に延びるビア57b1、ビア57b1の下端から平面方向に延びる内部配線層57b2、内部配線層57b2から、下側(第2表面11b側)にあるコネクタ71(測温素子端子の一例)に向かって板状部材11の厚み方向(上下方向)に延びるビア57b3から構成されている。各測温素子60の各配線57bは、1つのコネクタ71内に収容されている複数の接続部84に対して、別々に電気的に接続されている。
【0038】
図4は、ベース部材20内に設置されているコネクタ71の拡大断面図である。ベース部材20及び接合部30には、上下方向に貫通するように形成された内部孔21があり、その内部孔21から露出する板状部材11の第2表面11b上に複数の電極パッド81が設けられている。各電極パッド81の上側の面には、各測温素子60におけるプラス側の各配線57a及びマイナス側の各配線57bが接続されている。また、各電極パッド81の下側の面には、それぞれピン状の端子部82が立設されている。電極パッド81と端子部82とは、ろう付け等で接続されている。
【0039】
コネクタ71は、内部孔21の上側(表面S3側)に配置される樹脂製の先端コネクタ部71aと、内部孔21の下側(裏面S4側)に配置される樹脂製の後端コネクタ部71bと、先端コネクタ部71aと後端コネクタ部71bとを接続するケーブル部71cとを備えている。
【0040】
先端コネクタ部71aは、略直方体であり、その先端面71a1には、各々がピン状の端子部82が挿入される細長い端子部孔83を有する複数の接続部84が形成されている。各接続部84は、端子部孔83の周囲を構成すると共にケーブル部71c側に延びる導電材によって形成されている。
【0041】
後端コネクタ部71bは、基本的な構成が先端コネクタ部71aと同じであり、各々が細長い端子部孔85を有する複数の接続部86を備えている。そして、先端コネクタ部71aの各接続部84と、後端コネクタ部71bの各接続部86とは、ケーブル部71cの各導線87により、それぞれ電気的に接続されている。
【0042】
このようなコネクタ71の先端コネクタ部71aを、内部孔21に押し込むことにより、各端子部82と、各接続部84(端子部孔83)とが接続して、それらの導通が得られる。
【0043】
本実施形態の静電チャック100において、配線57a,57bは、板状部材11の内部に配置され、測温素子60からヒータ50側に向かって引き出されている。このように、本実施形態の静電チャック100では、測温素子60に接続する配線57a,57bの引き出し方向の自由度が高い構造となっている。
【0044】
また、本実施形態の静電チャック100では、測温素子60の下側に、ヒータ50や、ヒータ50等に接続する内部導電層(ドライバ等)の配置箇所を確保することができ、ヒータ50や内部導電層におけるデザインの自由度が高くなっている。
【0045】
また、本実施形態の静電チャック100において、板状部材11は、測温素子60を収容するための上側に開口した収容部13を備えている。収容部13は、上下方向において、ヒータ50よりも第1表面11a側に配置されており、そのような収容部13の底部13aに配置された測温素子60は、ヒータ50よりも第1表面11a側に配置された状態となっている。そのため、本実施形態の場合、測温素子60(底部13a)の下側に、測温素子60を収容するための凹部を形成する必要がなく、測温素子60(底部13a)から下側(第2表面11b側)の部分を、一体のセラミックスで構成することができる。そのような部分に、配線57a,57bを配置することができる。
【0046】
また、本実施形態の静電チャック100では、保持基板10が、板状部材12を備えており、その板状部材12が、収容部13内に収容された測温素子60を覆うように、板状部材11に対して接合部31を介して接合されている。収容部13内の測温素子60は、接合部31の一部からなる充填剤31aで覆われており、そのような状態の測温素子60が、板状部材12により覆われている。そのため、プラズマエッチング等の際に、充填剤31aが劣化等して、パーティクル状の異物が発生することが抑制される。特に、板状部材12と、板状部材11との間には、Oリング32が介在されており、板状部材12と、板状部材11との間の接合部31等の劣化が抑制されている。
【0047】
<実施形態2>
次いで、実施形態2に係る静電チャック(保持装置)100Bについて、
図5を参照しつつ説明する。
図5は、実施形態2に係る静電チャック100Bの一部の断面構成を模式的に表した説明図である。本実施形態の静電チャック100Bの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図5では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「B」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施形態の静電チャック100Bでは、保持基板10Bの板状部材11B内に、チャック電極40Bを備えている。保持基板10Bの表面SB1は、板状部材11Bの第1表面11Baからなり、保持基板10Bの裏面SB2は、板状部材11Bの第2表面11Bbからなる。板状部材11Bの第1表面11Baに、測温素子60Bを収容するための複数の収容部13Bが形成されている。収容部13Bは、測温素子60Bが配置される底部13Baと、底部13Baの周縁から第1表面11Ba側に立ち上がりかつ底部13Baを取り囲む周壁部13Bbと、周壁部13Bbの第1表面11Ba側の端部からなる開口部13Bcとを備えている。周壁部13Bbの開口部13Bc側には、底部13Ba側よりも、内径が大きい周壁を含みかつOリング81が載せられる環状の面を含む段差部13Bb1が設けられている。
【0049】
また、測温素子60Bを収容した状態の収容部13Bの開口部13Bcを塞ぐように、蓋材80が配置されている。段差部13Bb1上には、シリコーン樹脂等からなるOリング81が載せられており、そのOリング81に蓋材80が載せられた状態で、開口部13Bcが塞がれる。蓋材80は、板状部材11Bと同様、セラミックス材料からなる。なお、収容部13Bの内部には、充填剤82が充填されており、その充填剤82に蓋材80の裏面側(下面側)が接触する形で固定されている。充填剤82は、例えば、接合部30Bと同種の材料からなる。
【0050】
本実施形態の静電チャック100Bの配線57Ba,57Bbは、測温素子60Bからヒータ50B側に向かって引き出されており、配線57Ba,57Bbの引き出し方向の自由度が高い構造となっている。
【0051】
また、本実施形態の静電チャック100Bでは、測温素子60Bの下側に、ヒータ50Bや、ヒータ50B等に接続する内部導電層(ドライバ等)の配置箇所を確保することができ、ヒータ50Bや内部導電層におけるデザインの自由度が高くなっている。
【0052】
本実施形態の板状部材11Bは、測温素子60Bを収容するための上側に開口した収容部13Bを備えている。収容部13Bは、上下方向において、ヒータ50Bよりも第1表面11Ba側に配置されており、そのような収容部13Bの底部13Baに配置された測温素子60Bは、ヒータ50Bよりも第1表面11Ba側に配置された状態となっている。本実施形態の場合も、測温素子60B(底部13Ba)の下側に、測温素子60Bを収容するための凹部を形成する必要がなく、測温素子60B(底部13Ba)から下側(第2表面11Bb側)の部分を、一体のセラミックスで構成することができる。そのような部分に、配線57Ba,57Bbを配置することができる。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック100Bでは、板状部材11Bに形成された収容部13Bの開口部13Bcを塞ぐ蓋材80を備えている。蓋材80は、収容部13B内に収容された測温素子60Bを覆うように、収容部13B内に充填された充填剤82を介して板状部材11Bに固定されている。そのため、プラズマエッチング等の際に、充填剤82が劣化等して、パーティクル状の異物が発生することが抑制される。特に、収容部13B毎にOリング81が設けられており、収容部13B内の充填剤82の劣化等が防止されている。
【0054】
<実施形態3>
次いで、実施形態3に係る静電チャック(保持装置)100Cについて、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、実施形態3に係る静電チャック100Cの一部の断面構成を模式的に表した説明図である。本実施形態の静電チャック100Cの基本的な構成は、実施形態1と同じである。そのため、
図6では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「C」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態の静電チャック100Cでは、実施形態1と同様、複数の測温素子60Cが、板状部材11Cに設けられた複数の収容部13C内に1つずつ配置されている。収容部13Cは、上下方向において、ヒータ50Cよりも第1表面11Ca側に配置されており、そのような収容部13Cの底部13Caに配置された測温素子60Cは、ヒータ50Cよりも第1表面11Ca側に配置された状態となっている。ただし、本実施形態の場合、上下方向における収容部13Cの位置が、互いに異なっており、そのような収容部13Cの底部13Caに配置された測温素子60Cは、上下方向(第1の方向)における位置が、互いに異なっている。
【0056】
例えば、
図7の最も左側に示される収容部13C1が、上下方向における位置が最も第1表面11Ca側に配され、その収容部13C1の右側に配される収容部13C2及び収容部13C4が、上下方向における位置がもっともヒータ50C側に配されている。そして、収容部13C3は、上下方向において、収容部13C1と収容部13C2等との間の位置に配されている。
【0057】
そして、各測温素子60Cに接続する各配線57Ca,57Cbは、実施形態1と同様、各配線57Ca,57Cbからヒータ50C側に向かって引き出されている。このように、本実施形態の静電チャック100Cの配線57Ca,57Cbは、測温素子60Cからヒータ50C側に向かって引き出されており、配線57Ca,57Cbの引き出し方向の自由度が高い構造となっている。
【0058】
また、本実施形態の静電チャック100Cでは、測温素子60Cの下側に、ヒータ50Cや、ヒータ50C等に接続する内部導電層(ドライバ等)の配置箇所を確保することができ、ヒータ50Cや内部導電層におけるデザインの自由度が高くなっている。
【0059】
本実施形態の場合も、測温素子60C(底部13Ca)の下側に、測温素子60Cを収容するための凹部を形成する必要がなく、測温素子60C(底部13Ca)から下側(第2表面11Cb側)の部分を、一体のセラミックスで構成することができる。そのような部分に、配線57Ca,57Cbを配置することができる。
【0060】
<実施形態4>
次いで、実施形態4に係る静電チャック(保持装置)100Dについて、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、実施形態5に係る静電チャック100Dの板状部材11D内に設置されている測温素子60Dの拡大断面図である。本実施形態の静電チャック100Dの基本的な構成は、実施形態3と同じである。そのため、
図7では、実施形態3と対応する部分について、実施形態3の符号「C」を、符号「D」に変更した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施形態の静電チャック100Dでは、保持基板10Dの板状部材11D内に、チャック電極(不図示)を備えている。保持基板10Dの表面SD1は、板状部材11Dの第1表面11Daからなり、保持基板10Dの裏面(不図示)は、板状部材11の第2表面(不図示)からなる。板状部材11Dの第1表面11Daに、測温素子60Dを収容するための複数の収容部13Dが形成されている。収容部13Dは、測温素子60Dが配置される底部13Daと、底部13Daの周縁から第1表面11Da側に立ち上がりかつ底部13Daを取り囲む周壁部13Dbと、周壁部13Dbの第1表面11Da側の端部からなる開口部13Dcとを備えている。周壁部13Dbの開口部13Dc側には、底部13Da側よりも内径が大きい周壁を含み、かつ蓋材80Dが載せられる環状の面を含む段差部13Db1が設けられている。
【0062】
また、測温素子60Dを収容した状態の収容部13Dの開口部13Dcを塞ぐように、蓋材80Dが配置されている。段差部13Db1上に、蓋材80Dの周縁が載せられることで、開口部13Dcが蓋材80Dで塞がれる。なお、収容部13Bの内部には、測温素子60Dを取り囲むように、シリコーン樹脂等からなるOリング81Dが収容されている。Oリング81Dは、蓋材80Dと、底部13Daとの間で挟まれている。そして、収容部13Dの内部には、主として、Oリング81Dの内側に収まるように充填剤82Dが充填されている。そのような収容部13D内の充填剤82Dに蓋材80Dの裏面側(下面側)が接触する形で固定されている。
【0063】
本実施形態の静電チャック100Dの配線57Da,57Dbは、測温素子60Dからヒータ(不図示)側に向かって引き出されており、配線57Da,57Dbの引き出し方向の自由度が高い構造となっている。
【0064】
また、本実施形態の静電チャック100Dでは、測温素子60Dの下側に、ヒータや、ヒータ等に接続する内部導電層(ドライバ等)の配置箇所を確保することができ、ヒータ50や内部導電層におけるデザインの自由度が高くなっている。
【0065】
本実施形態の板状部材11Dは、測温素子60Dを収容するための上側に開口した収容部13Dを備えている。収容部13Dは、上下方向において、ヒータ(不図示)よりも第1表面11Da側に配置されており、そのような収容部13Dの底部13Daに配置された測温素子60Dは、ヒータ(不図示)よりも第1表面11Da側に配置された状態となっている。本実施形態の場合も、測温素子60D(底部13Da)の下側に、測温素子60Dを収容するための凹部を形成する必要がなく、測温素子60D(底部13Da)から下側(第2表面側)の部分を、一体のセラミックスで構成することができる。そのような部分に、配線57Da,57Dbを配置することができる。
【0066】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
(1)上記実施形態では、複数のヒータは、第1の板状部材内に配置されていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、板状部材の第2表面に配置されてもよい。
【0068】
(2)測温素子としては、サーミスタ以外に、白金測温抵抗体等を用いることができる。
【0069】
(3)各実施形態では、測温素子の電極線を電極パッドにろう付けしたが、電極パッド側にピン孔のような構成を設けて、電極線をピン孔に差し込むようにしてもよい。なお、測温素子と、板状部材上の電極パッドとの接続方法は、それらに限られず、本発明の目的を損なわない限り、特に問わない。
【0070】
(4)上記実施形態1等では、第2の板状部材内に、チャック電極が設けられていたが、他の実施形態には、第2の板状部材内にチャック電極を設けず、第1の板状部材内にチャック電極を設けてもよい。
【0071】
(5)他の実施形態では、本発明の目的を損なわない限り、各測温素子に接続するマイナス側の複数の配線を、1つの内部配線層にまとめて共通化してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…保持基板、11…第1の板状部材、11a…第1表面、11b…第2表面、12…第2の板状部材、13…収容部、13a…底部、13b…周壁部、13c…開口部、20…ベース部材、24…冷却機構(冷媒流路)、30…接合部、31…接合部、32…Oリング、40…チャック電極、50…ヒータ、57a,57b…配線、60…測温素子、71…コネクタ(測温素子端子)、100…保持装置(静電チャック)