(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240423BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
G01S7/40 126
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020140810
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 卓也
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064624(JP,A)
【文献】特開2018-054315(JP,A)
【文献】特開2020-020607(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110546528(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置により検出された反射点のそれぞれについて、前記レーダ装置に対する前記反射点の相対速度と、前記レーダ装置の基準として設計上定められた方向を基準とする前記反射点の方位角度と、をあらかじめ設定された測定サイクルごとに取得するように構成された反射点情報取得部(4、S10)と、
前記移動体の速度である移動体速度を、前記測定サイクルごとに取得するように構成された移動体速度取得部(4、S20)と、
前記レーダ装置により検出された前記反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される前記反射点を、静止反射点として抽出するように構成された抽出部(4、S30)と、
前記抽出部により抽出された前記静止反射点に基づき前記軸ずれ角度を推定するように構成された軸ずれ推定部(4、S40)と、
を備え、
前記抽出条件は、前記静止物で反射した点の前記方位角度と、当該静止物で反射した点の前記相対速度と前記移動体速度との比である速度比と、の間に成立する関係式に基づき定められるものであり、
前記抽出部は、前回までの前記測定サイクルで前記軸ずれ推定部により推定された前記軸ずれ角度に基づき、前記抽出条件を更新するように構成され
るものであって、
当該抽出部は、前記方位角度を、前回の前記測定サイクルで前記軸ずれ推定部により推定された前記軸ずれ角度である前回軸ずれ角度に基づき補正し、補正された前記方位角度を用いて前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記抽出条件は、前記反射点が、前記レーダ装置による前記反射点の検出誤差を
前記軸ずれが生じていない場合の前記関係式に加味した範囲である抽出範囲に存在する、という条件である、軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記抽出部は、前回までの前記測定サイクルごとの前記軸ずれ角度のばらつきが小さいほど前記抽出範囲が狭くなるように前記抽出範囲を補正して、前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記抽出部は、前記軸ずれ推定部が前記軸ずれ角度を推定した回数が増加するに従い前記抽出範囲が狭くなるように前記抽出範囲を補正して、前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記抽出部は、前記方位角度を、前回の前記測定サイクルで前記軸ずれ推定部により推定された前記軸ずれ角度である前回軸ずれ角度で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された前記方位角度を用いて前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記移動体速度取得部により取得された前記移動体速度に含まれる速度の誤差である移動体速度誤差を推定する移動体速度誤差推定部(4、S40)を更に備え、
前記抽出部は、前記移動体速度取得部により取得された前記移動体速度を、前記移動体速度誤差推定部により推定された前記移動体速度誤差に基づき補正し、補正された前記移動体速度を用いて前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記移動体速度取得部により取得された前記移動体速度に含まれる速度の誤差である移動体速度誤差を推定する移動体速度誤差推定部を更に備え、
前記抽出部は、前記移動体速度取得部により取得された前記移動体速度を、前記移動体速度誤差推定部により推定された前記移動体速度誤差で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された前記移動体速度を用いて前記抽出条件を更新するように構成される、軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれ角度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に搭載され、あらかじめ設定された測定サイクルごとに照射した照射波の反射波を受信することにより複数の反射点を検出する、レーダ装置が知られている。この種のレーダ装置では、何らかの原因で設置状態が変化することで、レーダ装置の基準方向が設計上定められた移動体の基準方向とずれる状態である軸ずれが生じることがある。軸ずれが生じると、検出誤差が大きくなり、物体の位置等を誤検出するおそれがある。
【0003】
このような軸ずれの角度である軸ずれ角度を推定する技術の一つとして、例えば特許文献1には、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出し、抽出された静止反射点に基づきレーダ装置の軸ずれ角度を推定する技術が開示されている。静止反射点は、静止物で反射した点の相対速度が方位角度に依存することを利用して抽出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーダ装置に軸ずれが生じている場合、実際の方位角度は、レーダ装置により取得される方位角度に軸ずれ角度を考慮した値となる。
特許文献1に記載のレーダ装置では、測定された軸ずれ角度を考慮せずに静止反射点の方位角度を算出し、算出された静止反射点の方位角度に基づき静止反射点を抽出している。発明者の詳細な検討の結果、レーダ装置に軸ずれが生じている場合には、静止反射点の抽出精度が低下し、ひいては軸ずれ角度の推定精度も低下する、という課題が見出された。
【0006】
本開示の一局面は、静止反射点の抽出精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、移動体に搭載されたレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置であって、反射点情報取得部(4、S10)と、移動体速度取得部(4、S20)と、抽出部(4、S30)と、軸ずれ推定部(4、S40)と、を備える。反射点情報取得部は、レーダ装置により検出された反射点のそれぞれについて、レーダ装置に対する反射点の相対速度と、レーダ装置の基準として設計上定められた方向を基準とする反射点の方位角度と、をあらかじめ設定された測定サイクルごとに取得するように構成される。移動体速度取得部は、移動体の速度である移動体速度を、測定サイクルごとに取得するように構成される。抽出部は、レーダ装置により検出された反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出するように構成される。軸ずれ推定部は、抽出部により抽出された静止反射点に基づき軸ずれ角度を推定するように構成される。抽出部は、前回までの測定サイクルで軸ずれ推定部により推定された軸ずれ角度に基づき、抽出条件を更新するように構成される。抽出条件は、静止物で反射した点の方位角度と、当該静止物で反射した点の相対速度と移動体速度との比である速度比と、の間に成立する関係式に基づき定められる。
【0008】
このような構成によれば、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】レーダ波の垂直方向における照射範囲を説明する説明図である。
【
図3】レーダ波の水平方向における照射範囲を説明する説明図である。
【
図6】静止反射点を抽出する原理を説明する説明図である。
【
図8】静止反射点抽出処理のフローチャートである。
【
図9】軸ずれ角度を推定する原理を説明する説明図である。
【
図12】移動体速度誤差による理想曲線の移動を説明する説明図である。
【
図13】移動体速度の補正を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムである。車両制御システム1は、レーダ装置2と、車載センサ群3と、信号処理部4と、支援実行部5と、軸ずれ通知装置6と、搭載角度調整装置7と、を備える。以下では、車両制御システム1を搭載する車両を自車ともいう。また、自車の車高方向を垂直方向、自車の車幅方向を水平方向ともいう。
【0011】
レーダ装置2は、レーダ波を送受信するアンテナ部を備える。アンテナ部は、垂直方向及び水平方向のいずれについても反射波の到来方向を検出できるように構成される。本実施形態では、アンテナ部は、垂直方向及び水平方向に並ぶ複数のアンテナを備える、アレイアンテナである。
【0012】
レーダ装置2は、
図2及び
図3に示すように、自車VHの前側に搭載される。レーダ装置2は、自車VH前方の所定の角度範囲である照射範囲にレーダ波を照射する。具体的には、レーダ装置2は、垂直方向における照射範囲Rv及び水平方向における照射範囲Rhに、レーダ波を照射する。レーダ装置2は、照射したレーダ波の反射波を受信することで、レーダ波を反射した反射点に関する反射点情報を検出する。レーダ装置2が検出する反射点情報には、レーダ装置2と反射点との相対速度、及び、反射点の方位角度、が少なくとも含まれる。
【0013】
反射点の方位角度とは、
図4に示すように、レーダ装置2の基準方向Aを基準として求められた反射点の角度のうち垂直方向の角度(以下、垂直角度)Ver及び水平方向の角度(以下、水平角度)Horの少なくとも一方である。本実施形態では、垂直角度Ver及び水平角度Horの両方が反射点の方位角度を表す情報として反射点情報に含まれる。垂直角度Verは、自車VHを右側面から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準(すなわち0°)として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。水平角度Horは、自車VHを上空から見た場合において、レーダ装置2の基準方向Aを基準として、レーダ装置2の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。レーダ装置2の基準方向Aとは、基準として設計上定められたレーダ装置2の方向である。本実施形態では、照射範囲の中心軸の方向がレーダ装置2の基準方向Aとして設定される。レーダ装置2は、本実施形態では、レーダ装置2の基準方向Aが車両の基準方向と一致するように自車VHに搭載される。車両の基準方向とは、基準として設計上定められた車両の方向であり、本実施形態では、自車VHの進行方向Bが車両の基準方向として設定される。レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとが一致するように、レーダ装置2が自車VHに搭載されると、検出された反射点の方位角度と、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度と、が一致する。換言すれば、レーダ装置2の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとの間にずれが生じると、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度を表す情報が正しく得られないことになる。
【0014】
図4は、レーダ装置2に、垂直方向における軸ずれ、すなわち垂直面であるx-z平面内における軸ずれが生じている様子を示している。軸ずれとは、レーダ装置2の基準方向Aが、車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とずれている状態をいう。また、軸ずれ角度とは、レーダ装置2の基準方向Aと車両の基準方向(本実施形態では、自車VHの進行方向B)とのずれの大きさを示す角度をいう。
【0015】
本実施形態では、レーダ装置2は、公知のFMCW方式を採用しており、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波をあらかじめ設定された変調周期で交互に送信し、反射したレーダ波を受信する。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。これにより、レーダ装置2は、変調周期ごとに、上述のように反射点との相対速度と、反射点の方位角度である垂直角度Ver及び水平角度Horと、を反射点情報として検出する。なお、レーダ装置2は、反射点までの距離と、受信したレーダ波の受信電力と、を更に反射点情報として検出し得る。
【0016】
図1に戻り、車載センサ群3は、自車VHの状態等を検出するために自車VHに搭載された各種センサである。ここでは、車載センサ群3を構成するセンサとして、車輪の回転に基づいて車速を検出する車速センサが少なくとも含まれている。
【0017】
信号処理部4は、CPU41と、ROM43、RAM44、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ42)と、を有するマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を中心に構成される。信号処理部4の各種機能は、CPU41が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ42が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、信号処理部4を構成するマイコンの数は1つでも複数でもよい。また、信号処理部4が有する各種機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現してもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現してもよい。
【0018】
信号処理部4が実行する処理には、物標認識処理及び軸ずれ推定処理が少なくとも含まれている。
このうち、物標認識処理は、レーダ装置2から得られる反射点情報や車載センサ群3から得られる各種情報に基づいて、自車VHが走行する車線や、自車VHと同一車線を走行する先行車両、その他の車両や障害物等を検出する公知のものである。この物標認識処理での処理結果は、支援実行部5等に提供される。
【0019】
一方、軸ずれ推定処理は、自車VHの進行方向に対するレーダ装置2の軸ずれ角度を検出するものであり、その詳細については後述する。
支援実行部5は、信号処理部4が実行する物標認識処理での処理結果に基づき、各種車載機器を制御して、所定の運転支援を実行する。制御対象となる車載機器には、各種画像を表示するモニタ、警報音や案内音声を出力する音響機器が含まれる他、自車VHの内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する制御装置が含まれていてもよい。
【0020】
軸ずれ通知装置6は、車室内に設置された音声出力装置である。軸ずれ通知装置6は、信号処理部4から出力される情報に基づき、自車VHの乗員に対して、警告音を出力する。
搭載角度調整装置7は、モータと、レーダ装置2に取り付けられた歯車とを備える。搭載角度調整装置7は、信号処理部4から出力される駆動信号に従ってモータを回転させる。これにより、モータの回転力が歯車に伝達され、垂直方向に沿った軸及び水平方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させることができる。
【0021】
[2.処理]
次に、信号処理部4が実行する軸ずれ推定処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。本処理は、イグニションスイッチがオンである間、レーダ波を送受信する測定サイクルごとに起動する。
【0022】
信号処理部4は、本処理が起動すると、S10で、レーダ装置2から反射点情報を取得する。以下では、反射点情報から特定される反射点を、取得反射点という。
続いて、S20で、信号処理部4は、車載センサ群3から、自車VHの速度である移動体速度Cmを取得する。
【0023】
続いて、S30で、信号処理部4は、静止反射点抽出処理を実行する。静止反射点抽出処理とは、取得反射点のうち、静止物によってレーダ波が反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出する処理である。
【0024】
ここで、静止反射点抽出処理において静止反射点を抽出する原理について説明する。信号処理部4は、横軸を方位角度、縦軸を相対速度qと移動体速度Cmとの比である速度比-q/Cm、とする座標系に取得反射点についての方位角度と速度比とをプロットして、静止反射点を抽出する。なお、相対速度qの向きは移動体速度Cmの向きと反対であるため、q/Cmは常に負となる。符号を正にするため、速度比-q/Cmはq/Cmの値に-1を掛けた値としている。ここでは、垂直方向における軸ずれを推定する場合に静止反射点を抽出する例を説明する。
【0025】
垂直方向における軸ずれとは、垂直面であるx-z平面内における軸ずれをいう。
図6が示す座標系は、横軸を垂直角度Ver、縦軸を相対速度qのx-z平面における大きさq
vと移動体速度Cmのx-z平面における大きさCm
vとの比である垂直速度比-q
v/Cm
v、とする座標系である。この座標系に、反射点についての垂直角度と垂直速度比とを投影してプロットすると、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合、静止物で反射した点は、特定の曲線100上にプロットされる。したがって、
図6が示す座標系に、反射点の垂直角度と垂直速度比とを投影してプロットした場合、曲線100上にプロットされている反射点は、静止物で反射した点であると推測される。
【0026】
すなわち、静止物で反射した点の速度比-q/Cmは、当該静止物で反射した点の方位角度に依存する、といえる。なお、以下では、
図6が示す座標系において、静止物で反射した点がプロットされる曲線を理想曲線ともいう。上述した例では、曲線100が理想曲線となる。
【0027】
上述した推測方法はあくまで理想状態における推測方法であり、実際には、レーダ装置2による反射点の検出誤差などの誤差が生じている。そのため、この誤差を考慮し、
図7のように、曲線100のような理想曲線に当該検出誤差などを加味した一定の範囲である抽出範囲101にプロットされ存在している反射点が、静止物で反射した点であると推測され、静止反射点として抽出される。
【0028】
ここで、S30で実行される静止反射点抽出処理について、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、S301で、信号処理部4は、前回の測定サイクルにおいて推定された軸ずれ角度に基づき軸ずれ補正値を算出する。軸ずれ角度は、後述するS40の処理で推定される。軸ずれ補正値とは、後述する想定速度比V
estを算出するときに、反射点の方位角度を補正するために用いる値である。信号処理部4は、前回の測定サイクルで算出された垂直方向における軸ずれ角度である前回垂直軸ずれ角度α
v_preに、忘却係数kを掛け合わせ、反射点の垂直角度を補正するために用いる値である垂直軸ずれ補正値β
vを、(1)式に従って算出する。
【0029】
【0030】
ここで、忘却係数kは(2)式で表される。(2)式において、numestは、信号処理部4が軸ずれ推定処理を実行した回数であり、Constnumは、あらかじめ設定された定数である。すなわち、信号処理部4が軸ずれ推定処理を実行した回数が増加するに伴い、忘却係数kの値は1に近づく。
【0031】
【0032】
同様にして、信号処理部4は、前回の測定サイクルで算出された水平方向における軸ずれ角度である前回水平軸ずれ角度αh_preに、忘却係数kを掛け合わせ、反射点の水平角度を補正するために用いる値である水平軸ずれ補正値βhを、(3)式に従って算出する。
【0033】
【0034】
続いて、S302で、信号処理部4は、前回の測定サイクルにおいて推定された移動体速度誤差に基づき移動体速度誤差補正値を算出する。移動体速度誤差γは、移動体速度Cmに含まれる速度の誤差であり、後述するS40の処理で推定される。移動体速度誤差補正値とは、後述する観測速度比Vobsを算出するときに、移動体速度Cmを補正するために用いる値である。例えば、信号処理部4は、前回の測定サイクルで算出された移動体速度誤差γpreと、忘却係数kと、に基づき(4)式に従って移動体速度誤差補正値γcorを算出する。
【0035】
【0036】
続いて、S303で、信号処理部4は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる垂直角度Ver及び水平角度Horに基づき、想定速度比Vestを算出する。なお、S303~S308の処理は、反射点ごとに行う。想定速度比Vestとは、反射点が静止物で反射した点である場合に想定される速度比である。本実施形態では、垂直角度Verを垂直軸ずれ補正値βvで、水平角度Horを水平軸ずれ補正値βhで、それぞれ補正した値に基づき、(5)式に従って想定速度比Vestを算出する。
【0037】
【0038】
続いて、S304で、信号処理部4は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる相対速度と、S20で取得した移動体速度と、に基づき、観測速度比Vobsを算出する。観測速度比Vobsとは、実際にレーダ装置2が検出した相対速度と、移動体速度と、から算出される速度比である。本実施形態では、相対速度qと、移動体速度Cmを移動体速度誤差補正値γcorで補正した値と、に基づき、(6)式に従って観測速度比Vobsを算出する。
【0039】
【0040】
続いて、S305で、信号処理部4は、後述する静止物判定で用いるしきい値である抽出しきい値THを算出する。抽出しきい値THは、理想曲線と抽出範囲の外縁との幅を表す。したがって、抽出しきい値THの値によって、抽出範囲101の広さが決定されるといえる。抽出しきい値THは、信号処理部4が軸ずれ推定処理を実行した回数が増加するに従い、あるいは、軸ずれ推定処理によって推定された軸ずれ角度の値のばらつきが小さくなるに従い、小さくなるように算出される。抽出しきい値THが小さくなるということは、すなわち、抽出範囲が狭くなる、ということである。本実施形態では、(7)式に従って抽出しきい値THを算出する。ここで、THminは最小値、THiniは初期値、THestは軸ずれ角度の値が一定の値に収束するために必要な軸ずれ推定処理の回数であり、いずれもあらかじめ定められた値である。また、Varestは軸ずれ角度の値のばらつきである。軸ずれ角度の値のばらつきは、例えば、測定サイクルごとの軸ずれ角度の推定値の標準偏差を用いることができる。ただし、本開示はこれに限定されるものではない。なお、numestの最大値はTHestとする。
【0041】
【0042】
続いて、S306で、信号処理部4は、当該反射点が静止物で反射した点であるかを判定する静止物判定を行う。具体的には、S303で算出した想定速度比Vestと、S304で算出した観測速度比Vobsと、S305で算出した抽出しきい値THと、が(8)式を満たすか否かを判定する。(8)式を満たすと判定した場合、S307へ移行する。(8)式を満たさないと判定した場合、S308へ移行する。
【0043】
【0044】
S307で、信号処理部4は、S306で(8)式を満たすと判定した反射点を静止反射点として抽出し、抽出後、S308へ移行する。
S308で、信号処理部4は、すべての反射点についてS303~S307の処理を実行したか否かを判定する。信号処理部4は、S303~S307の処理が実行されていない反射点があると判定した場合、S303へ戻る。信号処理部4は、すべての反射点についてS303~S307の処理が実行されたと判定した場合、静止反射点抽出処理を終了する。
【0045】
図5に戻り、S40で、信号処理部4は、S30で抽出された静止反射点を用いて、軸ずれ角度を推定する。以下では、垂直方向における軸ずれ角度である垂直軸ずれ角度α
vを推定する例を説明する。なお、水平方向における軸ずれ角度である水平軸ずれ角度α
hについても、同様の方法で推定する。例えば、信号処理部4は、垂直軸ずれ角度α
vを、(9)式を用いて推定する。
【0046】
【0047】
ここで、Ver’は、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合の垂直角度であり、VerはS10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる垂直角度である。qvは静止反射点の相対速度qのx-z平面における大きさであり、Cmvは移動体速度Cmのx-z平面における大きさである。γvは移動体速度誤差γのx-z平面における大きさである垂直移動体速度誤差である。
【0048】
(9)式に基づいて、静止反射点それぞれについて、垂直軸ずれ角度αvと垂直移動体速度誤差γvとを未知パラメータとした方程式が得られる。つまり、S30で抽出された静止反射点の数と同数の連立方程式が得られる。この連立方程式を解くことで、垂直軸ずれ角度αv及び垂直移動体速度誤差γvが求められる。連立方程式の具体的な解法としては例えば最小自乗法等を用いることができる。ただし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0049】
ここで、軸ずれ角度を推定する原理について説明する。上述のとおり、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合、
図6で示されるように、静止物で反射した点は曲線100上にプロットされる。しかしながら、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、
図9で示されるように、静止物で反射した点は、垂直軸ずれ角度α
vぶん横軸方向に曲線100を平行移動させた曲線である曲線102上にプロットされる。すなわち、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、理想曲線が、曲線100から垂直軸ずれ角度α
vぶん横軸方向に移動する、といえる。
【0050】
したがって、(9)式の連立方程式を解くことは、抽出された静止反射点が曲線102上にプロットされるような、最適な垂直軸ずれ角度αvと垂直移動体速度誤差γvとを求めることに相当する。
【0051】
なお、信号処理部4は、水平軸ずれ角度αhも、(10)式を用いて同様に推定することが可能である。水平方向における軸ずれとは、水平面であるx-y平面内における軸ずれをいう。
【0052】
【0053】
ここで、Hor’は、レーダ装置2に軸ずれが生じていない場合の水平角度であり、HorはS10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる水平角度である。qhは静止反射点の相対速度qのx-y平面における大きさであり、Cmhは移動体速度Cmのx-y平面における大きさである。γhは移動体速度誤差γのx-y平面における大きさである水平移動体速度誤差である。
【0054】
続いて、S50で、信号処理部4は、S40にて推定された垂直軸ずれ角度αvが、搭載角度調整装置7によって調整可能であるか否かを判定する。信号処理部4は、当該垂直軸ずれ角度αvがあらかじめ設定された調整可能範囲内である場合、軸ずれ調整が可能であると判定する。信号処理部4は、軸ずれ調整が可能であると判定した場合、S60へ移行する。信号処理部4は、軸ずれ調整が可能でないと判定した場合、S80へ移行する。
【0055】
S60で、信号処理部4は、搭載角度調整装置7へ駆動信号を出力する。当該駆動信号は、垂直方向において、垂直軸ずれ角度αvぶん自車VHの前後方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させる信号である。これにより、レーダ装置2の基準方向Aが自車VHの進行方向と一致するようにレーダ搭載角度が調整される。
【0056】
続いて、S70で、信号処理部4は、S10で取得された反射点の垂直角度を、垂直軸ずれ角度αvぶん補正した垂直角度を算出する。信号処理部4は、当該補正後の垂直角度に基づいて、上述の物標認識処理を実行する。信号処理部4は、以上で軸ずれ調整処理を終了する。
【0057】
S80で、信号処理部4は、レーダ装置2の基準方向Aがずれていることを示すダイアグ情報(以下、軸すれダイアグ)を信号処理部4の外部の装置に出力する。外部の装置は、例えば、軸ずれ通知装置6である。そして、信号処理部4は、軸ずれ推定処理を終了する。
【0058】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)信号処理部4は、レーダ装置2により検出された反射点の中から、所定の抽出条件に基づき、静止物で反射した点であると推測される反射点を、静止反射点として抽出するように構成される。また、信号処理部4は、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度に基づき、抽出条件を更新するように構成される。抽出条件は、静止物で反射した点の方位角度と、当該静止物で反射した点の相対速度と移動体速度との比である速度比と、の間に成立する関係式に基づき定められる。
【0059】
したがって、本実施形態によれば、信号処理部4は、前回までの測定サイクルで推定された軸ずれ角度を考慮して静止反射点の抽出条件を更新し、更新された抽出条件に基づき静止反射点を抽出しているため、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0060】
(3b)信号処理部4は、前回までの測定サイクルごとの軸ずれ角度のばらつきが小さいほど抽出範囲が狭くなるように抽出範囲を補正して、抽出条件を更新するように構成される。
【0061】
抽出範囲が広すぎる場合、理想曲線から離れた位置にプロットされた反射点も静止物で反射した点であると推測されてしまうことから、静止物で反射した点ではない反射点も静止反射点として抽出されてしまう可能性がある。一方で、抽出範囲が狭すぎる場合、レーダ装置2に軸ずれが生じていると、静止物で反射した点であっても、軸ずれを考慮しない理想曲線上にプロットされないため、静止物で反射した点であるにもかかわらず静止反射点として抽出されない可能性がある。よって、静止反射点の抽出精度を向上させるためには、抽出範囲を適切な広さに設定する必要がある。
【0062】
図10に示すように、測定開始直後など軸ずれ角度の推定値の信頼度が低い場合には、抽出範囲を補正前抽出範囲103のように広く設定しておき、軸ずれ角度の推定値の信頼度が向上するに伴い、補正前抽出範囲103を補正後抽出範囲104のように狭める補正をすることで、抽出範囲を適切な広さに設定することができる。なお、測定サイクルごとの軸ずれ角度のばらつきが小さくなるということは、すなわち、軸ずれ角度の推定値の信頼度が向上しているということである。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、軸ずれ角度の推定値の信頼度が向上するに伴い、抽出範囲が狭められるため、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
(3c)信号処理部4は、軸ずれ角度を推定した回数が増加するに従い抽出範囲が狭くなるように抽出範囲を補正して、抽出条件を更新するように構成される。
【0064】
軸ずれ角度の推定回数が増加するということは、軸ずれ角度の推定が安定し、軸ずれ角度の推定値の信頼度が向上することである、と考えられる。
したがって、本実施形態によれば、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0065】
(3d)信号処理部4は、方位角度を、前回の測定サイクルで推定された軸ずれ角度である前回軸ずれ角度に基づき補正し、補正された方位角度を用いて抽出条件を更新するように構成される。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、信号処理部4は、前回の測定サイクルで推定された軸ずれ角度を考慮して静止反射点の方位角度を補正し、補正された静止反射点の方位角度に基づき静止反射点を抽出しているため、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0067】
ここで、前回軸ずれ角度に基づき方位角度を補正し、補正された方位角度を用いて抽出条件を更新する意義について、
図11を用いて説明する。ここでは、垂直方向における軸ずれを推定する場合に静止反射点を抽出する例を説明する。上述のとおり、レーダ装置2に軸ずれが生じている場合、曲線100から垂直軸ずれ角度α
vぶん横軸方向に移動した曲線102が理想曲線となる。そして、曲線102に当該検出誤差などを加味した一定の範囲105を新たな抽出範囲とする。前回軸ずれ角度に基づき補正された方位角度を用いて抽出条件を更新することは、前回軸ずれ角度ぶん移動した理想曲線に基づき抽出範囲を定めることに相当するため、結果として、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0068】
(3e)信号処理部4は、方位角度を、前回の測定サイクルで軸ずれ推定部により推定された軸ずれ角度である前回軸ずれ角度で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された方位角度を用いて抽出条件を更新するように構成される。
【0069】
測定開始直後など軸ずれ角度の推定の信頼度が低い場合であっても、軸ずれ角度で補正する場合よりも小さい補正量で方位角度を補正することで、信号処理部4は、軸ずれ角度の推定値の信頼度の低さによる影響を軽減して方位角度を補正できる。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、方位角度の補正にあたり、軸ずれ角度で補正する場合と比較して、軸ずれ角度の推定の信頼度の影響を低く抑えて補正することができるため、結果として、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0071】
(3f)信号処理部4は、移動体速度を、移動体速度に含まれる速度の誤差である移動体速度誤差に基づき補正し、補正された移動体速度を用いて抽出条件を更新するように構成される。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、信号処理部4は、移動体速度を移動体速度誤差に基づき補正し、補正された移動体速度に基づき静止反射点を抽出しているため、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0073】
ここで、移動体速度誤差に基づき移動体速度を補正し、補正された移動体速度を用いて抽出条件を更新する意義について、
図12及び
図13を用いて説明する。ここでは、垂直方向における軸ずれを推定する場合に静止反射点を抽出する例を説明する。移動体速度誤差が生じている場合、
図12で示されるように、静止物で反射した点は、移動体速度誤差γぶん縦軸方向に曲線100を平行移動させた曲線である曲線106上にプロットされる。すなわち、移動体速度誤差が生じている場合、曲線100から移動体速度誤差γぶん縦軸方向に移動した曲線106が理想曲線となる。そして、
図13で示されるように、曲線106に当該検出誤差などを加味した一定の範囲107を新たな抽出範囲とする。移動体速度誤差に基づき補正された移動体速度を用いて抽出条件を更新することは、移動体速度誤差ぶん移動した理想曲線に基づき抽出範囲を定めることに相当するため、結果として、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0074】
(3g)信号処理部4は、移動体速度を、移動体速度に含まれる速度の誤差である移動体速度誤差で補正する場合よりも小さい補正量で補正し、補正された移動体速度を用いて抽出条件を更新するように構成される。
【0075】
測定開始直後など移動体速度誤差の推定の信頼度が低い場合であっても、移動体速度誤差で補正する場合よりも小さい補正量で移動体速度を補正することで、信号処理部4は、移動体速度誤差の推定値の信頼度の低さによる影響を軽減して移動体速度を補正できる。
【0076】
したがって、本実施形態によれば、移動体速度の補正にあたり、移動体速度誤差で補正する場合と比較して、移動体速度誤差の推定の信頼度の影響を低く抑えて補正することができるため、結果として、静止反射点の抽出精度を向上させることができる。
【0077】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(4a)上記実施形態では、S301で、信号処理部4は、忘却係数kを(2)式に従って算出しているが、開示されている(2)式は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、忘却係数k=1としてもよい。
【0079】
(4b)上記実施形態では、信号処理部4は、S303~S305の処理を順番に実行する例を示したが、本開示はこれに限定されるものではなく、処理を実行する順番は問わない。
【0080】
(4c)上記実施形態では、S303で、信号処理部4は、S10でレーダ装置2から取得した反射点情報に含まれる垂直角度Ver及び水平角度Horに基づき、想定速度比Vestを算出する例を示したが、本開示はこれに限定されるものではない。信号処理部4は、垂直角度Ver及び水平角度Horのいずれか一方に基づき、想定速度比Vestを算出してもよい。
【0081】
(4d)上記実施形態では、レーダ装置2がレーダ波を自車VHの前方に向けて送信する形態を示したが、レーダ波の送信方向は自車VHの前方に限定されるものではない。例えば、レーダ装置2は、自車VHの前方、右前方、左前方、後方、右後方、左後方、右側方及び左側方の少なくとも一方に向けてレーダ波を送信するように構成されてもよい。
【0082】
(4e)上記実施形態では、レーダ装置2は、垂直角度Ver及び水平角度Horの両方を反射点の方位角として含む反射点情報を生成したが、本開示はこれに限定されるものではない。レーダ装置2は垂直角度Verのみを含む反射点情報を生成してもよいし、水平角度Horのみを含む反射点情報を生成してもよい。
【0083】
(4f)上記実施形態では、レーダ装置2がFMCW方式を採用している例を示したが、レーダ装置2のレーダ方式は、FMCWに限定されるものではなく、例えば、2周波CW、FCM又はパルスを採用するように構成されてもよい。FCMは、Fast-Chirp Modulationの略である。
【0084】
(4g)上記実施形態では、信号処理部4が軸ずれ調整処理を実行する例を示したが、レーダ装置2が軸ずれ調整処理を実行するように構成されてもよい。
(4h)上記実施形態では、軸ずれ通知装置6として車室内に設置された音声出力装置を用いているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、支援実行部5が備える音響機器等が軸ずれ通知装置6として用いられてもよい。
【0085】
(4i)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0086】
(4j)本開示は、上述した軸ずれ推定装置の他、当該軸ずれ推定装置を備える車両制御システム1、当該軸ずれ推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で実現することができる。
【0087】
なお、上記実施形態において、信号処理部4が軸ずれ推定装置に相当する。また、S10が反射点情報取得部としての処理に相当し、S20が移動体速度取得部としての処理に相当し、S30が抽出部としての処理に相当し、S40が軸ずれ推定部及び移動体速度誤差推定部としての処理に相当する。また、自車VHが移動体に相当する。
【符号の説明】
【0088】
1…車両制御システム、2…レーダ装置、4…信号処理部、41…CPU、42…メモリ、43…ROM、44…RAM。