(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】樹脂構造体
(51)【国際特許分類】
H02G 3/08 20060101AFI20240423BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20240423BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240423BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240423BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02G3/08 080
H02G3/14
H02G3/16
H05K5/02 L
B60R16/02 610B
(21)【出願番号】P 2020141114
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 良也
(72)【発明者】
【氏名】金子 信崇
(72)【発明者】
【氏名】井坂 直貴
(72)【発明者】
【氏名】永田 知宏
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-050823(JP,A)
【文献】特開2019-213395(JP,A)
【文献】特開2015-077060(JP,A)
【文献】特開2019-213393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
H02G 3/14
H02G 3/16
H05K 5/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂体と、前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備える、樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
当該第1樹脂体の壁部に設けられる第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1樹脂体と当該第2樹脂体との組付方向に沿って当該第2樹脂体の壁部から前記第1樹脂体に向けて延び且つ前記第1係合部と係合する第2係合部と、前記第2係合部の基端部を貫通するように設けられる排水孔と、前記排水孔を間に挟むように前記第2係合部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って延びる一対の止水壁と、を有
し、
前記第2樹脂体は、
前記排水孔を囲むように前記排水孔の周縁から前記一対の前記止水壁に挟まれる領域内に向けて延びる囲み壁を、更に有し、
前記第2樹脂体の前記壁部と前記囲み壁とは、
筒状の排水経路を画成する、
樹脂構造体。
【請求項2】
第1樹脂体と、前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備える、樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
当該第1樹脂体の壁部に設けられる第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1樹脂体と当該第2樹脂体との組付方向に沿って当該第2樹脂体の壁部から前記第1樹脂体に向けて延び且つ前記第1係合部と係合する第2係合部と、前記第2係合部の基端部を貫通するように設けられる排水孔と、前記排水孔を間に挟むように前記第2係合部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って延びる一対の止水壁と、を有し、
前記第2樹脂体は、
前記排水孔を区分けするように前記基端部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って前記一対の前記止水壁に挟まれる領域内に向けて延びる分割壁を、更に有する、
樹脂構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに組み付けられる複数の樹脂体を備える樹脂構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される電気接続箱(例えば、リレーボックス)等のように、複数の樹脂体を互いに組み付けて構成される樹脂構造体が提案されている(例えば、特許文献1~3を参照。)。例えば、従来の電気接続箱の一つは、電子部品などを保持する樹脂製の本体ケースと、本体ケースの下部に組み付けられる樹脂製のロアカバーと、を有している。この電気接続箱では、ロアカバーから本体ケースに向けて延びるロック片を本体部の係止孔に挿入して係止させることで、本体ケースにロアカバーが固定されるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-077060号公報
【文献】特開2015-077059号公報
【文献】特開2013-062967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の樹脂構造体のロアカバー及び本体ケースのように、複数の樹脂体が互いに組み付けられたとき、それら樹脂体同士の境界には、一般に、それら樹脂体の成形精度や使用環境の温度などに起因する僅かな隙間(例えば、それら樹脂体の表面同士が突き合わされている箇所での面間の隙間)が存在し得る。そのような境界の近傍に上述したロック片と係止孔との係合箇所がある場合において、ロック片と係止孔との係合箇所が被水したとき、係合箇所に入り込んだ水が、上述した境界の隙間を通じて樹脂構造体の内部に侵入する可能性がある。樹脂構造体の防水性能を高める等の観点から、このような水の侵入を出来る限り抑制することが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、防水性能に優れた樹脂構造体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂構造体は、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
第1樹脂体と、前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備える、樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
当該第1樹脂体の壁部に設けられる第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1樹脂体と当該第2樹脂体との組付方向に沿って当該第2樹脂体の壁部から前記第1樹脂体に向けて延び且つ前記第1係合部と係合する第2係合部と、前記第2係合部の基端部を貫通するように設けられる排水孔と、前記排水孔を間に挟むように前記第2係合部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って延びる一対の止水壁と、を有し、
前記第2樹脂体は、
前記排水孔を囲むように前記排水孔の周縁から前記一対の前記止水壁に挟まれる領域内に向けて延びる囲み壁を、更に有し、
前記第2樹脂体の前記壁部と前記囲み壁とは、
筒状の排水経路を画成する、
樹脂構造体であること。
[2]
第1樹脂体と、前記第1樹脂体に組み付けられる第2樹脂体と、を備える、樹脂構造体であって、
前記第1樹脂体は、
当該第1樹脂体の壁部に設けられる第1係合部を有し、
前記第2樹脂体は、
前記第1樹脂体と当該第2樹脂体との組付方向に沿って当該第2樹脂体の壁部から前記第1樹脂体に向けて延び且つ前記第1係合部と係合する第2係合部と、前記第2係合部の基端部を貫通するように設けられる排水孔と、前記排水孔を間に挟むように前記第2係合部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って延びる一対の止水壁と、を有し、
前記第2樹脂体は、
前記排水孔を区分けするように前記基端部から前記第2樹脂体の前記壁部に沿って前記一対の前記止水壁に挟まれる領域内に向けて延びる分割壁を、更に有する、
樹脂構造体であること。
【0007】
上記[1]及び上記[2]の構成の樹脂構造体によれば、第1樹脂体の第1係合部と、第2樹脂体から延びる第2係合部と、の係合箇所が被水した場合であっても、第2係合部の基端部に設けられた排水孔から水が流れ出ることで、係合箇所から速やかに水を取り除き、係合箇所に水が滞留することが抑制される。更に、排水孔を挟むように一対の止水壁が設けられていることで、排水孔そのものが被水することが抑制され、排水孔を通じて係合箇所に水が入り込むこと(即ち、本来の排水ルートを逆流するような水の侵入)が抑制される。加えて、止水壁が第2係合部から第2樹脂体の壁部に沿って延びることで、止水壁が第2係合部を支える構造を有することになる。よって、第2係合部に排水孔を設けることによる第2係合部の剛性の低下を抑制でき、第2係合部に排水孔を設けても、第1係合部と第2係合部との係合強度を適正に維持できる。したがって、本構成の樹脂構造体は、第1係合部および第2係合部の本来の機能を損なうことなく、従来の樹脂構造体に比べ、防水性能を向上できる。
【0008】
更に、上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第2樹脂体の壁部と、排水孔の周縁から延びる囲み壁と、によって筒状の排水経路が画成される。これにより、第1係合部と第2係合部との係合箇所が被水した際、この筒状の排水経路に沿って水が流れ出るように水が案内され、単なる貫通孔を設ける場合に比べ、より効率良く水を排出することができる。更に、この排水経路が一対の止水壁に挟まれることで、排水経路そのものが被水することが抑制される。加えて、第2樹脂体の壁部と囲み壁とが筒状の構造体を構成することで、囲み壁が第2係合部を支える構造を有することになり、第2係合部に排水孔を設けることによる第2係合部の剛性の低下を更に抑制できる。
【0009】
更に、上記[2]の構成の樹脂構造体によれば、排水孔を区分けするように第2係合部の基端部から延びる分割壁が、第2係合部に設けられる。上述した一対の止水壁に加えて分割壁が設けられることで、排水孔そのものが被水することが更に抑制される。更に、分割壁が第2樹脂体の壁部に沿って延びることで、分割壁が第2係合部を支える構造を有することになり、第2係合部に排水孔を設けることによる第2係合部の剛性の低下を更に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、防水性能に優れた樹脂構造体を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂構造体の斜視図である。
【
図2】
図2は、本体ケースとロアカバーとが分離した状態にある
図1に示す樹脂構造体の斜視図である。
【
図3】
図3は、本体ケースの第1係合部とロアカバーの第2係合部とを示す斜視図であり、
図3(a)は、第1係合部と第2係合部とが分離した状態を示し、
図3(b)は、第1係合部と第2係合部とが係合した状態を示す。
【
図5】
図5(a)は、ロアカバーの第2係合部の下面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のB-B断面図である。
【
図6】
図6は、ロアカバーの第2係合部を下側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1に示す本発明の実施形態に係る樹脂構造体1について説明する。樹脂構造体1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品を収容するリレーボックス(電気接続箱)である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、樹脂構造体1は、リレー等の電子部品(及び、その他の部品、図示省略)が収容されることになる本体ケース10と、本体ケース10の下端開口部を塞ぐように本体ケース10の下端部に組み付けられるロアカバー20と、を含んで構成される。本体ケース10及びロアカバー20の各々は、樹脂成形体である。本体ケース10は、本発明の「第1樹脂体」に対応し、ロアカバー20は、本発明の「第2樹脂体」に対応している。
【0015】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「上下方向」、「周方向」、「内外方向」、「上」、「下」、「内」及び「外」を定義する。「上下方向」、「周方向」及び「内外方向」は、互いに直交している。樹脂構造体1の車両搭載時において、「上下方向」は、車両の上下方向に対応している。「周方向」は、本体ケース10の後述する周壁11及びロアカバー20の後述する周壁21における周方向に対応し、「内外方向」は、周壁11及び周壁21における厚み方向に対応している。以下、樹脂構造体1を構成する各部材について順に説明する。
【0016】
まず、本体ケース10について説明する。本体ケース10は、
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁11を有する。周壁11の略矩形枠状の下端縁部の外面には、周方向の複数箇所(本例では、9箇所)にて、第1係合部12がそれぞれ設けられている。本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)にて、複数の第1係合部12は、ロアカバー20に設けられた後述する複数の第2係合部23とそれぞれ係合することになる(
図3(b)も参照)。
【0017】
各第1係合部12は、具体的には、
図3(a)に示すように、周方向に所定距離だけ離れて周壁11の下端縁部の外面から外側に突出し且つ上下方向に平行に延びる一対の矩形平板状の側壁部13と、一対の側壁部13の外側端縁同士を周方向に連結して周方向に延びる略矩形平板状の外壁部14と、で構成されている。この結果、第1係合部12には、周壁11と一対の側壁部13と外壁部14とによって、係止孔15が画成されている(
図4も参照)。係止孔15は、上下方向に貫通し、且つ、上下方向からみて周方向に長い矩形状の形状を有している。
【0018】
外壁部14には、周方向に所定距離だけ離れて上下方向に平行に延びる一対のスリット16が、外壁部14の上端縁から上下方向の中央部近傍までに亘って形成されている。この結果、外壁部14における一対のスリット16の間に位置する部分は、片持ち梁状に上方に延びるロックアーム17を構成している。ロックアーム17は、内外方向の所定範囲に亘って弾性変形可能である。ロックアーム17の内面(即ち、係止孔15の外側端を画成する面)には、
図4に示すように、内側に突出し且つ周方向に延びる係止突起18が形成されている。
【0019】
次いで、ロアカバー20について説明する。ロアカバー20は、
図2に示すように、上下方向に延びる略矩形筒状の周壁21と、周壁21の下端開口部を塞ぐ略矩形平板状の底壁部22と、を一体に有する。なお、本例では、周壁21の周方向の一部分(
図2では、紙面手前側にて横方向に延びる部分)における上端縁部を除く領域は、上下方向から傾斜して周方向に延びている。
【0020】
周壁21の略矩形枠状の上端縁部の外面には、本体ケース10の複数の第1係合部12に対応して、周方向の複数箇所(本例では、9箇所)にて、第2係合部23がそれぞれ設けられている。
【0021】
各第2係合部23は、具体的には、
図3(a)に示すように、周壁21の上端縁部の外面から外側に突出し且つ周方向に延びる略矩形平板状の基端部24と、基端部24の外側端縁部から上方に延びる略矩形平板状の延出部25と、を有している。この結果、周壁21と延出部25との間には、基端部24によって下端が画成され且つ上方に開口する壁間スペースSが形成されている(
図4も参照)。延出部25の上端は、周壁21の上端縁よりも上方に位置している。
【0022】
延出部25の外面には、内側に窪み且つ外側及び下側に開口する略矩形状の凹部26が形成されている。凹部26の周方向に延びる上端縁部は、段差部27を構成している。段差部27は、本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)にて、第1係合部12の係止突起18と係合することになる(
図4参照)。
【0023】
基端部24には、
図4~
図6に示すように、周方向の中央部にて、排水孔28が形成されている。排水孔28は、上下方向に貫通して壁間スペースSに連通し、且つ、上下方向からみて周方向に長い矩形状の形状を有している。
【0024】
基端部24には、
図5(a)及び
図6に示すように、排水孔28の周縁に沿って基端部24から下方に突出する囲み壁29が形成されている。囲み壁29は、下方からみて、周壁21の外面から略U字状に延びている(
図5(a)及び
図6参照)。この結果、周壁21と囲み壁29とによって、略矩形筒状の排水経路31が画成されている。排水経路31は、上下方向に貫通して排水孔28に連通し、且つ、上下方向からみて周方向に長い矩形状の形状を有している。
【0025】
基端部24の周方向の両端部には、
図3(a)、
図5及び
図6に示すように、基端部24から下方に延びる一対の止水壁32が、排水孔28(排水経路31)を間に挟むように、形成されている。更に、基端部24の周方向の中央部には、基端部24から下方に延びる分割壁33が、排水孔28(排水経路31)を周方向に二分するように、形成されている。
【0026】
一対の止水壁32及び分割壁33の各々は、周壁21の外面から外側に突出し且つ当該外面に沿って下方に延びている。一対の止水壁32及び分割壁33の各々の下端部は、囲み壁29の下端部よりも下方に位置している。囲み壁29、及び、分割壁33は、一対の止水壁32に挟まれる領域内に位置している。
【0027】
基端部24から連続する囲み壁29、一対の止水壁32及び分割壁33は、基端部24を支える構造を有している。このため、基端部24に排水孔28を設けることによる基端部24、ひいては第2係合部23の剛性の低下が抑制されている。以上、樹脂構造体1を構成する各部材について説明した。
【0028】
次いで、本体ケース10とロアカバー20との組み付けについて説明する。本体ケース10とロアカバー20とを組み付けるためには、まず、
図2に示すように、本体ケース10がロアカバー20の上方に位置するように、本体ケース10及びロアカバー20を配置する。
【0029】
次いで、本体ケース10及びロアカバー20を上下方向に近づけて、本体ケース10の周壁11の下端縁部と、ロアカバー20の周壁21の上端縁部との嵌合を開始させる。この嵌合は、本体ケース10の周壁11の下端縁部がロアカバー20の周壁21の上端縁部の外側に位置するように、複数の第1係合部12の係止孔15に複数の第2係合部23の延出部25がそれぞれ挿入されるように、且つ、周壁11の下端縁部における複数の第1係合部12に対応する部分が複数の第2係合部23の壁間スペースSにそれぞれ挿入されるように、進行していく。
【0030】
この嵌合は、壁間スペースS内に位置する周壁11の下端面と、壁間スペースSの下端を画成する第2係合部23の基端部24の上面と、が上下方向に互いに突き合わされるまで継続される。
【0031】
周壁11の下端面と基端部24の上面とが互いに突き合わされる直前にて、各第1係合部12にて、係止孔15内に挿入された延出部25からの押圧によるロックアーム17の一時的な外側への弾性変形を経て、段差部27と係止突起18とが互いに相手の頂部を乗り越える。そして、
図4に示すように、周壁11の下端面と基端部24の上面とが互いに突き合わされると、段差部27が係止突起18の上側に隣接して段差部27及び係止突起18が互いに係合すると共に、本体ケース10とロアカバー20との組み付けが完了する。この結果、
図1に示す樹脂構造体1が得られる。
【0032】
本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)では、複数の段差部27と複数の係止突起18とが互いに係合していることで、本体ケース10とロアカバー20との上下方向への分離が防止される。
【0033】
本体ケース10とロアカバー20との組付完了状態(
図1参照)では、本体ケース10の周壁11の下端縁部及びロアカバー20の周壁21の上端縁部は、周壁11の下端縁部が周壁21の上端縁部の外側に位置するように、嵌合している。周壁11の下端縁部の内面と周壁21の上端縁部の外面との間には、両面の形状精度(面精度)や使用環境の温度などに起因して、周方向且つ上下方向に拡がる微小隙間H(
図4参照)が存在し得る。
【0034】
微小隙間Hの下端は、第1係合部12及び第2係合部23の係合箇所以外の周方向位置では、樹脂構造体1の外側空間に対して下向きに開口している。このため、第1係合部12及び第2係合部23の係合箇所以外の周方向位置にて、周壁11の下端縁部及び周壁21の上端縁部の嵌合箇所が樹脂構造体1の外側から被水しても、水に対して下向きに働く重力の作用によって、微小隙間Hの下端から微小隙間Hに水が進入すること、並びに、微小隙間Hに進入した水が上方に移動して微小隙間Hの上端を介して樹脂構造体1の内部に侵入すること、が抑制される。
【0035】
一方、微小隙間Hの下端は、第1係合部12及び第2係合部23の係合箇所では、第1係合部12の一対の側壁部13によって挟まれた壁間スペースSの内部に面している。壁間スペースSは上方に開口している。このため、第1係合部12及び第2係合部23の係合箇所が樹脂構造体1の外側から被水した場合、水が、周壁11の外面と延出部25の内面との間の微小隙間を介して壁間スペースS内に進入し、壁間スペースSの下部に滞留し易い。ここで、基端部24に排水孔28が形成されていない場合、壁間スペースSの下部に滞留した水は、微小隙間Hの下端から微小隙間Hに進入し易くなる。
【0036】
この点、樹脂構造体1では、基端部24に排水孔28が形成されている。よって、壁間スペースS内に進入した水は、排水孔28及び排水経路31を介して樹脂構造体1の外部空間に向けて下方に流れ落ちていく。この結果、壁間スペースSの下部に水が滞留すること、並びに、壁間スペースSの下部に滞留した水が微小隙間Hの下端から微小隙間Hに進入すること、が抑制される。
【0037】
更に、第2係合部23には、排水孔28(即ち、排水経路31)を挟むように一対の止水壁32が設けられ、且つ、排水孔28(排水経路31)を二分するように分割壁33が形成されている。このため、排水孔28(排水経路31)そのものが被水することが抑制される。この結果、排水孔28(排水経路31)を通じて壁間スペースSに水が侵入すること(即ち、本来の排水経路を逆流するような水の侵入)が抑制される。
【0038】
なお、上記説明から理解されるように、上述した排水孔28(排水経路31)による排水作用や止水作用は、樹脂構造体1が
図1に示されるような周壁11が上下方向に沿うような姿勢で使用される場合に限らず、発揮される。例えば、第1係合部12が設けられている周壁11が上方に向かうように傾いた姿勢(例えば、
図1の姿勢を基準に0~90度の範囲内で傾いた姿勢)で樹脂構造体1が用いられる場合であっても、上記同様の排水効果が発揮される。
【0039】
<作用・効果>
以上より、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、本体ケース10の第1係合部12と、ロアカバー20から延びる第2係合部23と、の係合箇所が仮に被水しても、第2係合部23の基端部24に設けられた排水孔28から水が流れ出ることで、その係合箇所に水が滞留することが抑制される。更に、排水孔28を挟むように一対の止水壁32が設けられていることで、排水孔28そのものが被水することが抑制され、排水孔28を通じて係合箇所に水が侵入すること(即ち、本来の排水経路を逆流するような水の侵入)が抑制される。加えて、止水壁32が基端部24からロアカバー20の周壁21に沿って延びることで、止水壁32が基端部24を支える構造を有することになり、基端部24に排水孔28を設けることによる第2係合部23の剛性の低下を抑制できる。よって、第2係合部23の基端部24に排水孔28を設けても、第1係合部12と第2係合部23との係合強度を維持できる。したがって、本実施形態に係る樹脂構造体1は、第1係合部12と第2係合部23との係合箇所の本来の機能を損なうことなく、従来の樹脂構造体に比べ、防水性能を向上できる。
【0040】
更に、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、ロアカバー20の周壁21と、排水孔28の周縁から延びる囲み壁29と、によって筒状の排水経路31が画成される。これにより、第1係合部12と第2係合部23との係合箇所が被水した際、この筒状の排水経路31に沿って水が案内され、効率良く水を排出することができる。更に、この排水経路31が一対の止水壁32に挟まれることで、排水経路31そのものが被水することが抑制される。加えて、第2係合部23から延びる囲み壁29が基端部24を支える構造を有することになり、基端部24に排水孔28を設けることによる第2係合部23の剛性の低下を更に確実に抑制できる。
【0041】
更に、本実施形態に係る樹脂構造体1によれば、排水孔28を区分けするように、第2係合部23の基端部24から延びる分割壁33が設けられる。これにより、排水孔28そのものが被水することが更に確実に抑制される。加えて、分割壁33が基端部24を支える構造を有することになり、基端部24に排水孔28を設けることによる第2係合部23の剛性の低下を更に確実に抑制できる。
【0042】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を発揮できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
上記実施形態では、ロアカバー20の周壁21と、排水孔28の周縁から延びる囲み壁29と、によって筒状の排水経路31が画成されている。これに対し、囲み壁29(即ち、筒状の排水経路31)が設けられていなくてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態では、第2係合部23に、排水孔28(排水経路31)を挟むように一対の止水壁32が設けられ、更に、排水孔28(排水経路31)を二分するように分割壁33が形成されている。これに対し、分割壁33が省略されていてもよい。
【0045】
ここで、上述した本発明に係る樹脂構造体1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
第1樹脂体(10)と、前記第1樹脂体(10)に組み付けられる第2樹脂体(20)と、を備える、樹脂構造体(1)であって、
前記第1樹脂体(10)は、
当該第1樹脂体(10)の壁部(11)に設けられる第1係合部(12)を有し、
前記第2樹脂体(20)は、
前記第1樹脂体(10)と当該第2樹脂体(20)との組付方向に沿って当該第2樹脂体(20)の壁部(21)から前記第1樹脂体(10)に向けて延び且つ前記第1係合部(12)と係合する第2係合部(23)と、前記第2係合部(23)の基端部(24)を貫通するように設けられる排水孔(28)と、前記排水孔(28)を間に挟むように前記第2係合部(23)から前記第2樹脂体(20)の前記壁部(21)に沿って延びる一対の止水壁(32)と、を有する、
樹脂構造体(1)。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体(1)において、
前記第2樹脂体(20)は、
前記排水孔(28)を囲むように前記排水孔(28)の周縁から前記一対の前記止水壁(32)に挟まれる領域内に向けて延びる囲み壁(29)を、更に有し、
前記第2樹脂体(20)の前記壁部(21)と前記囲み壁(29)とは、
筒状の排水経路(31)を画成する、
樹脂構造体(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の樹脂構造体(1)において、
前記第2樹脂体(20)は、
前記排水孔(28)を区分けするように前記基端部(24)から前記第2樹脂体(20)の前記壁部(21)に沿って前記一対の前記止水壁(32)に挟まれる領域内に向けて延びる分割壁(33)を、更に有する、
樹脂構造体(1)。
【符号の説明】
【0046】
1 樹脂構造体
10 本体ケース(第1樹脂体)
11 周壁(壁部)
12 第1係合部
20 ロアカバー(第2樹脂体)
21 周壁(壁部)
23 第2係合部
24 基端部
28 排水孔
29 囲み壁
31 排水経路
32 止水壁
33 分割壁