(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020143214
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 靖
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-81490(JP,A)
【文献】特開2010-20600(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108026(WO,A1)
【文献】特開2019-70998(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号線を介して複数の機器を接続する機器I/Fと、
第2の信号線を介して複数の表示器を接続する表示器I/Fと、
前記複数の機器および前記複数の表示器をそれぞれ制御する制御回路と、
記憶回路とを備え、
前記記憶回路は、前記複数の表示器のそれぞれと、当該表示器で表示対象となる表示対象ループとの組が登録されたフィルタルール設定情報を記憶するように構成されており、
前記制御回路は、
前記複数の機器のそれぞれを、当該機器に予め対応付けられているループ設定情報に基づいてループ制御するように構成されたループ制御部と、
前記フィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれで、当該表示器の表示対象ループに関する制御情報を画面表示するように構成された表示器制御部とを備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記フィルタルール設定情報は、前記複数の表示器のそれぞれと、前記表示対象ループと、当該表示器で操作対象となる操作対象ループとの組が登録されており、
前記表示器制御部は、前記記憶回路のフィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれについて、当該表示器での操作入力に応じて当該表示器の操作対象ループに関するループ設定情報の設定変更を行うように構成されている
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記フィルタルール設定情報は、前記複数の表示器のそれぞれについて、当該表示器と各制御ループとの組合せごとに、当該表示器における当該制御ループに関する制御情報の表示可否と、当該表示器における当該制御ループに関するループ設定情報の操作可否とが、当該表示器のフィルタルールとして登録されており、
前記表示器制御部は、前記複数の表示器のそれぞれのフィルタルールのうち、当該表示器との組合せに表示可が登録されている制御ループを当該表示器の表示対象ループとして特定し、前記表示器との組合せに操作可が設定されている制御ループを当該表示器の操作対象ループとして特定するように構成されている
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置において、
前記フィルタルール設定情報は、前記複数の表示器のうち、機器の監視に用いる表示器のフィルタルールにおいて、当該表示器と当該機器の制御ループとの組合せのすべてに対して、表示可と操作不可とが設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の制御装置において、
前記フィルタルール設定情報は、前記複数の表示器のうち、機器のメンテナンスに用いる表示器のフィルタルールにおいて、当該表示器と当該機器の制御ループとの組合せのすべてに対して、表示可と操作可とが設定されていることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項3~請求項5のいずれかに記載の制御装置において、
前記フィルタルール設定情報は、前記複数の表示器のそれぞれについて、予め設定された異なる条件ごとに前記フィルタルールが個別に登録されており、
前記表示器制御部は、前記フィルタルール設定情報のうち、前記条件が成立するフィルタルールに基づいて、前記表示器の表示対象ループおよび操作対象ループを特定するように構成されている
ことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
第1の信号線を介して複数の機器を接続する機器I/Fと、第2の信号線を介して複数の表示器を接続する表示器I/Fと、前記複数の機器および前記複数の表示器をそれぞれ制御する制御回路と、記憶回路とを備える制御装置で用いられて、前記複数の機器および前記複数の表示器を制御するための制御方法であって、
前記記憶回路が、前記複数の表示器のそれぞれと、当該表示器で表示対象となる表示対象ループとの組が登録されたフィルタルール設定情報を記憶するように構成されたステップと、
前記制御回路が、前記複数の機器のそれぞれを、当該機器に予め対応付けられているループ設定情報に基づいてループ制御するように構成されたループ制御ステップと、
前記制御回路が、前記フィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれで、当該表示器の表示対象ループに関する制御情報を画面表示するように構成された表示器制御ステップと
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節計や温調器などの制御装置に信号線を介して接続した表示器で、制御装置で制御する複数の制御ループに関する表示・操作を行うための制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場やビル建物に設置された機器を自動制御する調節器や温調器などの制御装置には、複数の機器のそれぞれを並列的にループ制御できる制御装置がある。従来、このような制御機器は、信号線を介して表示器を接続してデータ通信を行うことにより、表示器を用いて機器の制御ループに関する表示や操作を行う場合がある(例えば、特許文献1など参照)。表示器には、LCDなどの画面表示装置やタッチパネルなどの操作入力装置を含むユーザーインターフェース(UI)が設けられている。制御装置は、表示器での人の操作に基づいて、各制御ループに関する制御情報を表示器で画面表示し、あるいは各制御ループに関する制御内容を設定変更などの操作を行う。これにより、制御装置において、高いユーザービリティを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術では、制御装置に複数の表示器を接続した場合、各表示器の動作が共通化されるため、各表示器で各制御ループに関する表示だけでなく設定変更などの操作も可能である。これにより、いずれの表示器でも、指定した制御ループに関する表示や操作が可能であるため、メンテナンス作業の効率化を図ることができる。しかしながら、人の誤認識や誤操作に応じて、トラブルが発生する場合があるという問題点があった。
【0005】
例えば、3つ制御ループ1,2,3を並列的に制御する制御装置に2つの表示器A,Bを接続したケースを考える。この際、制御装置を制御盤に設置し、一方の表示器Aで制御ループ1,2を主に表示・操作するため、制御ループ1,2で制御する機器が設置されている場所(現場)に表示器Aを配置し、他方の表示器Bで制御ループ3を主に表示・操作するため、制御ループ3で制御する機器が設置されている場所(現場)に表示器Bを配置したものとする。
【0006】
このようなケースでは、表示器Bにおいて制御ループ3だけでなく、表示器Aの制御ループ1,2に関する表示も行われ、制御ループ1,2に関する設定変更も可能である。このため、人が制御ループ1,2に関する表示を、制御ループ3に関する表示であると誤認識する場合がある。また、人が表示器Bで制御ループ3の設定変更を行う際、誤操作により制御ループ1または制御ループ2を指定してしまい、誤って制御ループ1または制御ループ2の設定変更が行われてしまう場合がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、複数の表示器を用いた制御ループに関する表示さらには操作に対する人の誤認識や誤操作を、抑制することができる制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる制御装置は、第1の信号線を介して複数の機器を接続する機器I/Fと、第2の信号線を介して複数の表示器を接続する表示器I/Fと、前記複数の機器および前記複数の表示器をそれぞれ制御する制御回路と、記憶回路とを備え、前記記憶回路は、前記複数の表示器のそれぞれと、当該表示器で表示対象となる表示対象ループとの組が登録されたフィルタルール設定情報を記憶するように構成されており、前記制御回路は、前記複数の機器のそれぞれを、当該機器に予め対応付けられているループ設定情報に基づいてループ制御するように構成されたループ制御部と、前記フィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれで、当該表示器の表示対象ループに関する制御情報を画面表示するように構成された表示器制御部とを備えている。
【0009】
本発明にかかる上記制御装置の一構成例は、前記フィルタルール設定情報が、前記複数の表示器のそれぞれと、前記表示対象ループと、当該表示器で操作対象となる操作対象ループとの組が登録されており、前記表示器制御部は、前記記憶回路のフィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれについて、当該表示器での操作入力に応じて当該表示器の操作対象ループに関するループ設定情報の設定変更を行うようにしたものである。
【0010】
本発明にかかる上記制御装置の一構成例は、前記フィルタルール設定情報が、前記複数の表示器のそれぞれについて、当該表示器と各制御ループとの組合せごとに、当該表示器における当該制御ループに関する制御情報の表示可否と、当該表示器における当該制御ループに関するループ設定情報の操作可否とが、当該表示器のフィルタルールとして登録されており、前記表示器制御部は、前記複数の表示器のそれぞれのフィルタルールのうち、当該表示器との組合せに表示可が登録されている制御ループを当該表示器の表示対象ループとして特定し、前記表示器との組合せに操作可が設定されている制御ループを当該表示器の操作対象ループとして特定するようにしたものである。
【0011】
本発明にかかる上記制御装置の一構成例は、前記フィルタルール設定情報が、前記複数の表示器のうち、機器の監視に用いる表示器のフィルタルールにおいて、当該表示器と当該機器の制御ループとの組合せのすべてに対して、表示可と操作不可とが設定されている。
【0012】
本発明にかかる上記制御装置の一構成例は、前記フィルタルール設定情報が、前記複数の表示器のうち、機器のメンテナンスに用いる表示器のフィルタルールにおいて、当該表示器と当該機器の制御ループとの組合せのすべてに対して、表示可と操作可とが設定されている。
【0013】
本発明にかかる上記制御装置の一構成例は、前記フィルタルール設定情報が、前記複数の表示器のそれぞれについて、予め設定された異なる条件ごとに前記フィルタルールが個別に登録されており、前記表示器制御部は、前記フィルタルール設定情報のうち、前記条件が成立するフィルタルールに基づいて、前記表示器の表示対象ループおよび操作対象ループを特定するようにしたものである。
【0014】
本発明にかかる制御方法は、
第1の信号線を介して複数の機器を接続する機器I/Fと、第2の信号線を介して複数の表示器を接続する表示器I/Fと、前記複数の機器および前記複数の表示器をそれぞれ制御する制御回路と、記憶回路とを備える制御装置で用いられて、前記複数の機器および前記複数の表示器を制御するための制御方法であって、前記記憶回路が、前記複数の表示器のそれぞれと、当該表示器で表示対象となる表示対象ループとの組が登録されたフィルタルール設定情報を記憶するように構成されたステップと、前記制御回路が、前記複数の機器のそれぞれを、当該機器に予め対応付けられているループ設定情報に基づいてループ制御するように構成されたループ制御ステップと、前記制御回路が、前記フィルタルール設定情報に基づいて、前記複数の表示器のそれぞれで、当該表示器の表示対象ループに関する制御情報を画面表示するように構成された表示器制御ステップと備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の表示器を用いた制御ループに関する表示さらには操作に対する、人の誤認識や誤操作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、フィルタルールの構成例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、表示器制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御情報の表示画面例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第3の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる制御装置10について説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかる制御装置の構成を示すブロック図である。
この制御装置10は、全体として調節器や温調器などの制御装置からなり、工場やビル建物に設置された機器を、予め設定されている制御ループに基づいて、自動制御するように構成されている。以下では、制御ループを単にループと云うことがある。
【0018】
図1に示すように、制御装置10には、信号線(第1の信号線)L1を介して複数の機器30が接続されており、制御装置10は、これら機器30を並列的にループ制御するように構成されている。
また、制御装置10には、信号線(第2の信号線)L2を介して複数の表示器20が接続されており、制御装置10は、これら表示器20で各機器30の制御ループに関する制御情報を表示するように構成されている。各表示器20には、LCDなどの画面表示装置やタッチパネルなどの操作入力装置を含むユーザーインターフェース(UI)が設けられている。
【0019】
[制御装置]
次に、
図1を参照して、制御装置10の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、制御装置10は、主な回路構成として、機器I/F11、表示器I/F12、記憶回路13、および制御回路14を備えている。
【0020】
[機器I/F]
機器I/F11は、信号線L1を介して各機器30とデータ通信することにより、これら機器30をループ制御するための制御データを送受信するように構成されている。
[表示器I/F]
表示器I/F12は、信号線L2を介して各表示器20とデータ通信することにより、これら表示器20で表示する、それぞれの制御ループに関する制御情報を表示するための表示データを送受信するように構成されている。
【0021】
[記憶回路]
記憶回路13は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、制御回路14でのループ制御や表示器制御に用いる各種処理データやプログラム13Pを記憶するように構成されている。
【0022】
プログラム13Pは、制御回路14のCPUと協働することにより、制御回路14がループ制御や表示器制御を実行するための各種処理部を実現するプログラムである。プログラム13Pは、例えば信号線を介して制御装置10に接続された外部装置や記録媒体(ともに図示せず)から、予め記憶回路13に格納されている。
【0023】
記憶回路13で記憶する主な処理データとして、ループ設定情報13Aとフィルタルール設定情報13Bがある。
【0024】
[ループ設定情報]
ループ設定情報13Aは、各機器30で実行する制御ループに関する制御内容を示す処理データである。
図2は、第1の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
図2に示すように、ループ設定情報13Aには、機器30ごとに、当該機器30で実行する制御ループ名と、当該制御ループの詳細を示す制御内容とが登録されている。制御内容には、ループ制御に用いるPIDなどの制御アルゴリズム、ループ周期長、設定値(目標値)などの、制御ループを規定する一般的な公知の設定データが含まれている。
図2の例では、機器30のうち機器U1でループ#1とループ#2を実行し、機器U2でループ#3を実行するように設定されている。
【0025】
[フィルタルール設定情報]
フィルタルール設定情報13Bは、各表示器20で表示すべき対象ループを示す処理データである。
図3は、第1の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
図3に示すように、フィルタルール設定情報13Bには、表示器20ごとに、当該表示器20に適用するフィルタルール名と、制御ループのうち当該表示器20の対象となる表示対象ループとが、フィルタルールとして登録されている。
図3の例では、表示器20のうち表示器Aに「2ループ表示」というフィルタルールが割り当てられており、表示器Bに「1ループ表示」というフィルタルールが割り当てられている。
【0026】
表示対象ループについては、
図3に示すように、表示器20と制御ループとの組合せごとに、当該表示器20によるループ制御に関する制御情報の表示可否で設定してもよい。
図3の例では、表示器20のうち表示器Aについて、ループ#1,#2に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#3には表示不可「×」、すなわち表示対象外であることが設定されている。また、表示器Bについて、ループ#3に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#1,#2には表示不可「×」、すなわち表示対象外であることが設定されている。
【0027】
図4は、フィルタルールの構成例を示す説明図である。
図4に示すように、3つの制御ループ#1,#2,#3がある場合、フィルタルールは全部で8通り考えられる。まず、任意の表示器20で、いずれか1つループを表示対象ループとする「1ループ表示」のフィルタルールが3通りあり、いずれか2つループを表示対象ループとする「2ループ表示」のフィルタルールも3通りある。また、すべてのループを表示対象とする「3ループ表示」のフィルタルールが1通りあり、ループ表示をしない「ループ表示なし」のフィルタルールも1通り考えられる。この「ループ表示なし」のフィルタルールは、制御ループの制御内容以外の任意の画面を表示器20で表示する場合に適用される。このような、フィルタルール群を予め記憶回路13に登録しておき、フィルタルール設定情報13Bを設定する際、フィルタルール群のうちから任意のフィルタルールを選択するようにしてもよい。
【0028】
なお、フィルタルール設定情報13Bについては、表示器20と制御ループとの組合せごとに表示可否を設定した構成に限定されるものではない。例えば、フィルタルール設定情報13Bとして、表示器20ごとに、当該表示器20で表示可である制御ループ、すなわち表示対象ループをリストとして設定し、さらには後述のような、当該表示器20で操作可である操作対象ループをリストとして設定した構成を用いてもよい。
【0029】
[制御回路]
制御回路14は、CPUとその周辺回路を有し、CPUと記憶回路13から読み出したプログラム13Pとを協働させることにより、ループ制御や表示器制御を実行するための各種処理部を実現するように構成されている。
制御回路14で実現される主な処理部として、ループ制御部14Aと表示器制御部14Bとがある。
【0030】
[ループ制御部]
ループ制御部14Aは、機器I/F11を介して機器30とデータ通信を行うことにより、機器30ごとに、当該機器30に予め対応付けられている記憶回路13のループ設定情報13Aに基づいて、当該機器30をループ制御するように構成されている。
例えば、前述した
図2のようにループ設定情報13Aが設定されている場合、ループ制御部14Aは、機器U1に対してループ#1,#2の2つの制御ループに基づいてループ制御を実行し、機器U2に対してループ#3の制御ループに基づいてループ制御を実行する。
【0031】
[表示器制御部]
表示器制御部14Bは、記憶回路13のフィルタルール設定情報13Bに基づいて、それぞれの表示器20で、制御ループのうち当該表示器20の表示対象ループに関する制御情報を表示するように構成されている。
例えば、前述した
図3のようにフィルタルール設定情報13Bが設定されている場合、表示器制御部14Bは、表示器Aでループ#1,#2に関する制御情報を画面表示し、表示器Bでループ#3に関する制御情報を画面表示する。
【0032】
[第1の実施の形態の動作]
次に、
図5を参照して、本実施の形態にかかる制御装置10の動作として、表示器20を制御する表示器制御動作について説明する。
図5は、表示器制御処理を示すフローチャートである。
制御装置10の制御回路14は、例えば周期的あるいは任意の表示器20での操作に応じて表示タイミングが到来した場合、表示器制御部14Bにより、
図5の表示器制御処理を実行する。
【0033】
まず、表示器制御部14Bは、ループ制御部14Aが機器30から取得した制御状況や、記憶回路13のループ設定情報13Aから、各ループに関する制御情報を取得し(ステップS100)、各ループの制御情報を表示するための表示画面を作成する(ステップS101)。
次に、表示器制御部14Bは、記憶回路13からフィルタルール設定情報13Bを取得し(ステップS102)、表示器20のうち未処理の表示器20を1つ選択する(ステップS103)。
【0034】
続いて、表示器制御部14Bは、フィルタルール設定情報13Bに基づいて、選択した表示器20の表示対象ループを確認し(ステップS104)、表示対象ループの表示画面の画面データを、選択した表示器20に対して表示器I/F12から送信する(ステップS105)。これにより、画面データは、信号線L2を介して選択した表示器20で受信され、LCDなどの表示画面で表示される。この際、複数のループを表示対象ループとする表示器20の場合、これら表示対象ループの画面データを順に送信してもよく、これら表示対象ループの画面データを1つの画面にレイアウトして得られた画面データを送信してもよい。
【0035】
図6は、制御情報の表示画面例を示す説明図である。
図6に示す表示画面は、ループ#1,#2の2つのループに関する制御情報が上下にレイアウトされている。それぞれの制御情報は、測定値(PV)および設定値(SP)が数字で表示されており、操作量(MV)が棒グラフで表示されている。また、制御中であることを示す「RUN」や自動制御を示す「AUTO」が表示されている。なお、
図6はあくまでも画面表示例であり、これに限定されるものではなく、表示する制御情報の内容やレイアウトについては、アプリケーションに応じて適宜変更すればよい。
【0036】
この後、表示器制御部14Bは、表示器20のうち未処理の表示器20の有無を確認し(ステップS106)、未処理の表示器20がある場合(ステップS106:YES)、ステップS103へ戻って、新たな未処理の表示器20を選択する。
一方、未処理の表示器20がない場合(ステップS106:NO)、一連の表示器制御処理を終了する。
【0037】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、記憶回路13が、表示器20と当該表示器20で表示対象となる表示対象ループとの組が登録されたフィルタルール設定情報13Bを記憶するように構成されており、表示器制御部14Bが、フィルタルール設定情報13Bに基づいて、表示器20ごとに、制御ループのうち当該表示器20の表示対象ループに関する制御情報を表示するようにしたものである。
【0038】
これにより、各表示器20で表示する表示内容を、当該表示器20に予め対応付けた制御ループに関する制御情報に限定することができ、当該表示器20とは離れた場所に設置されている機器30の制御ループに関する制御情報など、当該表示器20とは関係のない制御ループに関する制御情報の表示を抑止することができる。したがって、すべての制御ループに関する制御情報を、各表示器20で一律に表示する場合と比較して、当該表示器20と関係のある制御情報を正確に効率よく認識でき、表示された制御情報に対する人の誤認識を抑制することが可能となる。
【0039】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる制御装置10について説明する。
表示器20がタッチパネルなどの操作入力装置を備える場合、表示器20での操作により、制御ループに関する制御内容を遠隔で設定変更することができる。この際、表示器20の表示対象ループを設定対象ループと見なせば、制御情報が表示されるすべての制御ループについて、当該表示器20でその制御内容を遠隔で設定変更することができる。しかし、制御内容の設定変更は、メンテナンスの知識を有する特定の作業者だけが行うものであり、制御情報の表示とは別個に許可する必要がある。
【0040】
本実施の形態では、このような表示器20からの設定変更操作に対応するため、各表示器20で表示対象となる制御ループとは別個に、各表示器20で操作対象となる制御ループを対応付けるようにしたものである。なお、本実施の形態では、ループ設定情報13Aには、前述の
図2に示した内容に沿って、機器30のうち機器U1でループ#1とループ#2を実行し、機器U2でループ#3を実行するように設定されているものとする。
【0041】
[フィルタルール設定情報]
本実施の形態において、フィルタルール設定情報13Bは、表示器20ごとに、当該表示器20に適用するフィルタルール名と、制御ループのうち当該表示器20で表示対象となる表示対象ループと、当該表示器20で操作対象となる操作対象ループとが、フィルタルールとして設定されている。
図7は、第2の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
【0042】
表示対象ループと操作対象ループについては、
図7に示すように、表示器20と、表示または操作のいずれかからなる種別、制御ループとの組合せごとに、当該表示器20による表示可否または操作可否で設定してもよい。
図7の例では、表示器20のうち表示器Aについて、ループ#1,#2,#3のすべてに表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#1,#2,#3のすべてに操作不可「×」、すなわち操作対象外であることが設定されている。また、表示器Bについて、#1,#2,#3のすべてに表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#1,#2,#3のすべてに操作可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定されている。
【0043】
[表示器制御部]
本実施の形態において、表示器制御部14Bは、記憶回路13のフィルタルール設定情報13Bに基づいて、表示器20ごとに、制御ループのうち当該表示器20の表示対象ループに関する制御情報を表示し、当該表示器20での操作入力に応じて、制御ループのうち当該表示器20の操作対象ループに関するループ設定情報の設定変更を行うように構成されている。
【0044】
例えば、前述した
図7のようにフィルタルール設定情報13Bが設定されている場合、表示器制御部14Bは、表示器Aおよび表示器Bの両方でループ#1,#2,#3に関する制御情報を画面表示する。また、表示器Bでの操作に応じてループ#1,#2,#3に関するループ設定情報の設定変更を行うが、表示器Aでの操作に応じてループ#1,#2,#3に関するループ設定情報の設定変更は行わない。
この際、表示器制御部14Bは、任意の表示器20から指定した制御ループに関する設定変更を要求する操作入力が通知された場合、フィルタルール設定情報13Bに基づいて、指定された制御ループが当該表示器20の操作対象ループであるか確認し、操作対象ループである場合にのみ要求を受け付けて設定変更を実行し、操作対象ループでない場合には要求を受け付けず、設定変更は実行しない。
【0045】
これにより、表示器Aを、ループ#1,#2,#3で制御する機器30の監視を行うオペレータが使用する監視用の表示器20として運用し、表示器Aで、オペレータが通常行わないループ#1,#2,#3の設定変更は禁止することができる。また、表示器Bを、ループ#1,#2,#3で制御する機器30のメンテナンスを行う作業者が使用するメンテナンス用の表示器20として運用し、表示器Bで、ループ#1,#2,#3に関する制御情報の表示およびループ設定情報の設定変更を行うことができる。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる制御装置10について説明する。
第2の実施の形態では、各表示器20で表示対象となる制御ループとは別個に、各表示器20で操作対象となる制御ループを対応付けるようにした場合について説明した。これにより、例えば、表示器Aを、監視用の表示器20として運用し、表示器Bを、メンテナンス用の表示器20として運用することができる。
【0047】
しかしながら、制御ループでアラームが発生した場合、緊急処置として、監視用の表示器20をメンテナンス用の表示器20として、柔軟に運用したい場合がある。
本実施の形態では、制御ループでアラームが発生した場合などの一定の条件に基づいて、表示器20に適用するフィルタルールを切り替えるようにしたものである。
図8は、第2の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
図8に示すように、本実施の形態において、ループ設定情報13Aには、機器30のうち機器U1でループ#1を実行し、機器U2でループ#2を実行するように設定されているものとする。
【0048】
[フィルタルール設定情報]
本実施の形態において、フィルタルール設定情報13Bは、制御ループでのアラームの発生状況を条件として、表示器20ごとに、互いに異なるフィルタルールが複数設定されている。
図9は、第2の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
図9に示すように、フィルタルール設定情報13Bには、表示器20ごとに、制御ループでのアラームの発生状況を示す条件ごとに、制御ループのうち当該表示器20で表示対象となる表示対象ループと、当該表示器20で操作対象となる操作対象ループとが設定されている。
【0049】
条件については、
図8に示すように2つのループ#1,#2が設定されている場合、「アラームなし」、「アラーム発生(ループ#1)」、「アラーム発生(ループ#2)」、「アラーム発生(ループ#1,#2)」の、合わせて4通りの発生状況が考えられる。フィルタルール設定情報13Bでは、これら発生状況を4つの条件とし、これら条件ごとに、表示対象ループおよび操作対象ループが個別に設定されている。
【0050】
図9の例では、表示器20のうち表示器Aに対して、すべての条件でループ#1,#2に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されている。
一方、表示器Aに対して、条件「アラームなし」では、ループ#1,#2には操作不可「×」、すなわち操作対象外であることが設定されている。また、条件「アラーム発生(ループ#1)」では、ループ#1には操作可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定され、ループ#2には操作不可「×」、すなわち操作対象外であることが設定されている。
【0051】
また、条件「アラーム発生(ループ#2)」では、ループ#2には操作可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定され、ループ#1には操作不可「×」、すなわち操作対象外であることが設定されている。また、条件「アラーム発生(ループ#1,#2)」では、ループ#1,#2に操作可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定されている。
また、表示器B対して、すべての条件で、ループ#1,#2に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#1,#2に設定可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定されている。
【0052】
これにより、表示器Aでは、いずれの条件においても、ループ#1,#2に関する制御情報が表示される。また、表示器Aでは、アラームなしの場合、ループ設定情報の設定変更は禁止され、いずれかのループでアラームが発生した場合、当該アラームのループに関するループ設定情報の設定変更が許可されることになる。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、制御ループでアラームが発生した場合、表示器Aに適用されるフィルタルールが切り替えられることになる。したがって、緊急処置として、監視用の表示器20をメンテナンス用の表示器20として、柔軟に運用することができる。このため、監視用の表示器20であっても、アラームが発生したループのループ設定情報を設定変更することができ、アラームに対して迅速に対処することが可能となる。
【0054】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態にかかる制御装置10について説明する。
第3の実施の形態では、制御ループでのアラーム発生を条件として、表示器20に適用するフィルタルールを切り替える場合について説明した。本実施の形態では、フィルタルールを切り替える条件として、時間帯を用いる場合について説明する。
図10は、第3の実施の形態にかかるループ設定情報の構成例を示す説明図である。
図10に示すように、本実施の形態において、ループ設定情報13Aには、機器30のうち機器U1でループ#1,#2を実行し、機器U2でループ#3,#4を実行するように設定されているものとする。
【0055】
[フィルタルール設定情報]
本実施の形態において、フィルタルール設定情報13Bは、時間帯を条件として、表示器20ごとに、互いに異なるフィルタルールが複数設定されている。
図11は、第3の実施の形態にかかるフィルタルール設定情報の構成例を示す説明図である。
図11に示すように、フィルタルール設定情報13Bには、表示器20ごとに、時間帯を示す条件ごとに、制御ループのうち当該表示器20で表示対象となる表示対象ループと、当該表示器20で操作対象となる操作対象ループとが設定されている。
【0056】
条件については、「8時~17時」と「上記以外」(17時~8時)の、合わせて2通りの時間帯発が設定されている。フィルタルール設定情報13Bでは、これら時間帯を2つの条件とし、これら条件ごとに、表示対象ループおよび操作対象ループが個別に設定されている。
【0057】
図11の例では、表示器20のうち表示器Aに対して、時間帯「8時~17時」では、ループ#1,#2に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#3,#4には表示不可「×」、すなわち表示対象外であることが設定されている。また、時間帯「上記以外」では、ループ#1,#2に表示不可「×」、すなわち表示対象外であることが設定されており、ループ#3,#4には表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されている。
また、表示器B対して、すべての条件で、ループ#1,#2,#3,#4に表示可「○」、すなわち表示対象ループであることが設定されており、ループ#1,#2,#3,#4に設定可「○」、すなわち操作対象ループであることが設定されている。
【0058】
これにより、表示器Aでは、時間帯「8時~17時」において、ループ#1,#2に関する制御情報が表示されるとともに、ループ設定情報の設定変更が許可され、ループ#3,#4に関する制御情報およびループ設定情報の設定変更はともに禁止されることになる。一方、時間帯「上記以外」では、ループ#3,#4に関する制御情報が表示されるとともに、ループ設定情報の設定変更が許可され、ループ#1,#2に関する制御情報およびループ設定情報の設定変更はともに禁止されることになる。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、時間帯に応じて、表示器Aに適用されるフィルタルールが切り替えられることになる。したがって、時間帯に応じて制御するループが異なる場合、1つの監視用の表示器20で、これらループに関する制御情報を表示でき、これらループのループ設定情報を設定変更することができ、効率よく表示器20を運用することが可能となる。
【0060】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
10…制御装置、11…機器I/F、12…表示器I/F、13…記憶回路、13A…ループ設定情報、13B…フィルタルール設定情報、13P…プログラム、14…制御回路、14A…ループ制御部、14B…表示器制御部、20…表示器、30…機器、L1,L2…信号線。