(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240423BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2020148587
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌克
(72)【発明者】
【氏名】原田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】赤池 康彦
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-079683(JP,A)
【文献】特開2018-186197(JP,A)
【文献】特開2005-144741(JP,A)
【文献】特開2018-006497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/56
B29C 39/00
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主面に設けられた複数の端子と、前記主面上に搭載され、かつ前記端子とワイヤで電気的に接続された半導体チップと、を有する複数のデバイス領域を備える基板を準備する工程と、
(b)前記(a)工程の後、
前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記基板を搬送すると共に、前記基板の前記主面側に大気圧中で生成されたプラズマを
下方から照射する工程と、
(c)前記(b)工程の後、
前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記基板を搬送すると共に、前記基板の前記主面側を
下方から撮像する工程と、
(d)前記(c)工程の後、
前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記半導体チップおよび前記ワイヤを樹脂で封止して封止体を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程の前、前記基板は前記基板の表面のソルダレジストに含まれる油脂成分または有機溶剤の不純物がガスとして放出される温度以上に加熱される、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、アルゴンと酸素との混合ガスを供給して前記プラズマを生成する、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、前記プラズマを前記基板に複数回照射し、1回につき0.1秒照射する、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、前記プラズマを前記基板の前記主面に対して垂直に照射する、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、前記プラズマを前記基板の前記主面に対して斜めに照射する、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
1の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、撮像した画像に基づいて前記ワイヤの状態、異物の有無を検査する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
7の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、撮像した画像に基づいて樹脂量算出のための前記半導体チップの数の計数、前記半導体チップが前記基板に搭載されているかどうの目抜けチェックを行う、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項
8の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程は、
(d1)第一型と前記第一型と対向する位置に配置されるキャビティを備える第二型との間に前記基板を配置して、前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記第一型が前記基板を保持する工程と、
(d2)前記(d1)工程の後、前記第二型の前記キャビティ内に樹脂を供給する工程と、
(d3)前記(d1)工程および前記(d2)工程の後、前記半導体チップ、前記ワイヤおよび前記基板の前記主面が、前記キャビティ内の前記樹脂に覆われるように、前記第一型と前記第二型の距離を近づける工程と、
(d4)前記樹脂を硬化させることにより、前記封止体を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
主面に設けられた複数の端子と、前記主面上に搭載され、かつ前記端子とワイヤで電気的に接続された半導体チップと、を有する複数のデバイス領域を備える基板が搬入されるローダ部と、前記基板を搬送する基板搬送ユニットと、前記基板の前記主面と対向して設けられ、大気中でプラズマを生成するプラズマ発生ユニットと、前記基板の前記主面と対向して設けられ、前記基板、前記半導体チップおよび前記ワイヤを撮像する認識用カメラと、前記半導体チップおよび前記ワイヤを樹脂で封止して封止体を形成するモールド部と、を備える半導体製造装置に前記基板を搬入する工程と、
前記基板搬送ユニットにより前記ローダ部側から前記認識用カメラ側に前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記基板を搬送するのと並行して、前記プラズマ発生ユニットにより前記プラズマを前記基板の前記主面側に向けて照射する工程と、
前記基板搬送ユニットにより前記プラズマ発生ユニット側から前記モールド部側に前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記基板を搬送するのと並行して、前記認識用カメラにより前記基板の前記主面側を撮像する工程と、
前記基板の前記主面が下方を向いた状態で前記半導体チップおよび前記ワイヤを樹脂で封止して封止体を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置の製造方法に関し、例えば、半導体チップを樹脂封止してパッケージ化する半導体装置の製造方法に適用できる。
【背景技術】
【0002】
配線基板等の基板のチップ搭載領域に半導体チップを搭載し、半導体チップのパッド電極と基板の端子とをワイヤを介して電気的に接続し、それらを樹脂封止することにより、半導体パッケージ形態の半導体装置が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂封止型の半導体装置において、製造効率を向上させることが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、半導体装置の製造方法は、主面に設けられた複数の端子とワイヤで電気的に接続された半導体チップを有する複数のデバイス領域を備える基板を準備する工程と、基板を搬送すると共に、基板の主面側に大気圧中で生成されたプラズマを照射する工程と、基板を搬送すると共に、基板の主面側を撮像する工程と、半導体チップおよびワイヤを樹脂で封止して封止体を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態における半導体装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は
図1を用いて説明した半導体装置の組立工程のフローを示す説明図である。
【
図3】
図3は
図2に示す基板準備工程で準備する基板の概略構造を示す平面図である。
【
図4】
図4は
図3に示す基板上に半導体チップを搭載した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は
図2に示すプラズマクリーニング工程に用いられるプラズマ処理装置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は
図3に示す基板上の半導体チップと基板とをワイヤを介して電気的に接続した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は
図2に示す封止工程に用いられるモールド装置の一例を示す概念図である。
【
図8】
図8は
図7に示す第一搬送ユニット、プラズマ発生ユニットおよび認識カメラを示す図である。
【
図9】
図9は
図7に示す第一搬送ユニットおよびプラズマ発生ユニットの配置を示す図である。
【
図10】
図10は
図7に示す第一搬送ユニットおよび認識カメラの配置を示す図である。
【
図11】
図11は
図7に示す第二搬送ユニットによるモールドされた基板の搬送状態を示す図である。
【
図16】
図16は
図6に示す基板の上面側に封止体が形成された状態における断面図である。
【
図18】
図18は成形金型内に基板を配置した状態を示す断面図である。
【
図19】
図19は
図18に示す下型のキャビティ内に樹脂を供給し軟化させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0010】
[半導体装置]
まず、半導体装置の構成例について
図1を用いて説明する。
図1は実施形態における半導体装置の概略断面図である。
【0011】
実施形態における半導体装置1は平面視において四角形状に構成されている。
図1に示すように、半導体装置1は、基板2、基板2上に搭載される半導体チップ3および半導体チップ3を封止する封止体4を有する。半導体チップ3は基板2とワイヤ5を介して接続されている。封止体4は、基板2の主面としての上面2a上に形成され、上面2a全体を覆う。また、封止体4は、半導体チップ3および複数のワイヤ5の全体を覆う。
【0012】
基板2は基材2cを覆うソルダレジスト膜2dを備える。基材2cは、例えば、ガラス繊維に樹脂を含浸させたプリプレグで構成されている。ソルダレジスト膜2dは複数の配線間の短絡または断線などを防止する絶縁膜である。ソルダレジスト膜2dは基板2の最上面である上面2aおよび最下面である下面2bにそれぞれ形成されている。
【0013】
また、基板2は上面2aに複数の端子2eを含む複数の導体パターンが形成された配線層を備える。複数の端子2eのそれぞれは、基板2の上面2aにおいてソルダレジスト膜2dから露出する。基板2は下面2bに複数のランド2fを含む導体パターンが形成された配線層を備える。複数のランド2fのそれぞれは、基板2の下面2bにおいてソルダレジスト膜2dから露出する。
【0014】
複数の端子2eは複数のランド2fと基板2の厚さ方向(
図1のZ方向)に貫通する複数のビア配線(不図示)を介して電気的に接続される。
【0015】
複数のランド2fは複数の半田ボール6にそれぞれ接続される。ランド2fおよび半田ボール6は、半導体装置1とマザーボード等の実装基板とを電気的に接続するための外部電極である。
【0016】
また、基板2の上面2aおよび下面2bは、四角形状に構成されている。半導体チップ3は基板2の上面2aに搭載される。半導体チップ3は、平面視において基板2の外形に沿った四角形状に構成され、例えば、上面2aの略中央(中央部)に配置されている。上面2aにおいて半導体チップ3の周囲には上複数の端子2eが形成されている。複数の端子2eは、ワイヤ5と基板2とを電気的に接続するためのボンディングパッドであって、例えば、銅(Cu)などの金属で構成されている。また、複数の端子2eは、半導体チップ3の各辺に沿って配置されている。
【0017】
次に、基板2上に搭載される半導体チップ3について説明する。複数のパッド3cは半導体チップ3の表面3a上に形成されている。複数のパッド3cは半導体チップ3の各辺に沿って表面3a上の周縁部側にそれぞれ配置されている。
【0018】
ダイオードやトランジスタなどの複数の半導体素子は半導体チップ3の表面3aと裏面3bとの間に形成され、半導体素子上に形成された図示しない配線を介して、複数のパッド3cとそれぞれ電気的に接続されている。このように半導体チップ3は、半導体基板上に形成された複数の半導体素子とこれら複数の半導体素子を電気的に接続する配線により集積回路を構成している。
【0019】
なお、半導体チップ3を構成する半導体基板は、例えば、シリコン(Si)により構成されている。また、絶縁膜であるパッシベーション膜(不図示)は半導体チップ3の最表面である表面3aに形成されている。複数のパッド3cのそれぞれの表面は、このパッシベーション膜に形成された開口部において、パッシベーション膜から露出している。
【0020】
また、このパッド3cは金属により構成され、本実施形態では、例えばアルミニウム(Al)により構成されている。さらに、例えばニッケル(Ni)膜を介して、金(Au)膜、またはこれらの積層膜などの金属膜がこのパッド3cの表面に形成されても良い。
【0021】
また、本実施形態では、半導体チップ3は、その裏面3bと基板2の上面2aとが対向する、いわゆるフェイスアップ実装方式により基板2に搭載される。半導体チップ3は、接着材7を介して上面2a上のチップ搭載領域21a(後述する
図3参照)に固定される。接着材7は、基板2の上面2aに半導体チップ3をしっかりと固定できるものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を含むダイボンド材を用いている。
【0022】
また、半導体チップ3は複数のワイヤ5を介してそれぞれ基板2と電気的に接続されている。詳しくは、ワイヤ5の一方の端部は、半導体チップ3の表面3a上のパッド3cに接続され、他方は、基板2の端子2eに接続されている。ワイヤ5は、例えば金(Au)または銅(Cu)などの金属材料により構成されている。
【0023】
次に、半導体チップ3、複数のワイヤ5および複数の端子2eを封止する封止体4について説明する。封止体4の上面4aは、四角形状に構成されている。詳細は後述するが、半導体装置1は、複数のデバイス領域を一括して覆うように封止体を形成した後、封止体および基板を一括して切断する方式で製造される。この方式の場合、封止体4の側面と基板2の側面とが連続的に連なるように形成される。
【0024】
封止体4は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、硬化剤およびシリカなど、多数のフィラ粒子を主成分とする絶縁性の樹脂体である。また、封止体4には、着色剤として、カーボン粒子が混入されている。封止体4は、パッケージ内部に配置される半導体チップ3および複数のワイヤ5と密着した状態で硬化してる。つまり、封止体4は、半導体チップ3および複数のワイヤ5を保護する機能を有している。
【0025】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図1を用いて説明した半導体装置1の製造方法について、
図2を用いて説明する。
図2は
図1を用いて説明した半導体装置の組立工程のフローを示す説明図である。
【0026】
(基板準備工程S1、半導体チップ準備工程S2)
半導体装置1を製造するには、まず、基板準備工程S1において
図3に示すような基板20を準備する。また、半導体チップ準備工程S2において半導体チップ3を準備する。
図3は
図2に示す基板準備工程で準備する基板の概略構造を示す平面図である。基板2と半導体チップ3とは、どちらを先に準備してもよく、また、同時に準備してもよい。
【0027】
基板準備工程S1において、準備する基板20は、
図3に示すように、外枠21の内側に複数のデバイス領域22を備えている。デバイス領域22の数は、
図3に示す態様に限定されないが、本実施形態における基板20は、例えば8個のデバイス領域22を備えている。基板20は、複数のデバイス領域22を有する、いわゆる、多数個取り基板である。
【0028】
各デバイス領域22は、
図1に示す基板2に相当する。デバイス領域22は、上面2a(
図1参照)と、上面2aの反対側の下面2b(
図1参照)と、を備える。また、
図1を用いて説明した基板2の各部材がデバイス領域22に形成されている。基板20のデバイス領域22は、上面20aにおいてチップ搭載領域21aの周囲を囲むように配列される複数の端子2e(
図1参照)を備える。チップ搭載領域21aは、
図1に示す半導体チップ3を搭載する予定領域である。
【0029】
また、
図3に示すように、切断領域21bが複数のデバイス領域22のそれぞれの周囲に配置されている。切断領域21bは、隣り合うデバイス領域22の間、および外枠21とデバイス領域22の間を、各デバイス領域22の外縁を囲むように配置されている。切断領域21bは、
図2に示す個片化工程S8において基板20を切断する予定領域である。切断領域21bは、X方向に沿って延びる複数の切断線と、Y方向に沿って延びる複数の切断線と、を含む。
【0030】
(ダイボンディング工程S3)
次に、
図2に示すダイボンディング工程S3では、基板20のデバイス領域22の上面20a上に半導体チップ3が搭載される。
図4は、
図3に示す基板上に半導体チップが搭載された状態を示す断面図であり、
図3に示すA-A線に沿う断面に相当する断面図である。なお、
図4では、見易さのため、
図1に示す接着材7の図示を省略している。ただし、
図4に示す複数のデバイス領域22のそれぞれにおいて、
図1に示すように、半導体チップ3の下に接着材7が配置される。
【0031】
ダイボンディング工程S3において、半導体チップ3は、複数のデバイス領域22のそれぞれに搭載される。半導体チップ3は、
図3に示すチップ搭載領域21a上に、接着材7を介して接着固定される。本実施形態では、半導体チップ3は、裏面3b(
図1参照)と基板20の上面20aとが対向する、いわゆるフェイスアップ実装方式により基板20上に搭載される。接着材7は、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を含む。この場合、ダイボンディング工程S3では、まず、チップ搭載領域21a上に接着材7が塗布された後、チップ搭載領域21aに向かって半導体チップ3の裏面3bが押し付けられる。これにより接着材7はチップ搭載領域21a上に広がる。また、半導体チップ3は、接着材7を介して基板20上に接着される。その後、基板20の下に設けられるヒートステージにより、例えば、150℃程度の加熱処理が施こされ、接着材7に含まれる熱硬化性の成分が硬化して、半導体チップ3が基板20上に固定される。
【0032】
(プラズマクリーニング工程S4)
次に、
図2に示すプラズマクリーニング工程S4においては、例えば、真空プラズマ処理装置を用いる。
図5は
図2に示すプラズマクリーニング工程に用いられるプラズマ処理装置の一例を示す図である。
【0033】
図5に示すプラズマ処理装置300は、平行平板型のプラズマ処理装置である。
図5に示すように、プラズマ処理装置300は、チャンバ301と、チャンバ301内に配置され、かつ、互いに対向する下部電極302および上部電極303と、を有している。チャンバ301は、真空気密が可能な処理室である。下部電極302は、その上に基板20が配置可能に構成され、内部にヒータなどの加熱機構(不図示)が内蔵されている。また、下部電極302と上部電極303との間には、チャンバ301の外部に設けられた高周波電源304により高周波電力が供給される。例えば、下部電極302は高周波電源304が接続され、上部電極303は接地電位が接続されている。高周波電源304から供給される高周波電力の周波数は、例えば、13.56MHzである。また、チャンバ301は、ガス供給口301aおよびガス排気口301bを備える。ガス供給口301aからチャンバ301内にプラズマ処理用のガスが導入されると共に、ガス排気口301bからチャンバ301内が排気される。チャンバ301はガス排気口301bを介して真空ポンプなどのガス排気部(不図示)に接続されている。また、図示しない圧力制御部は、圧力センサなどが検出したチャンバ301内の圧力に応じて、ガス排気口301bからの排気速度などを調節し、チャンバ301内を通常の大気圧よりも低い所望の圧力に維持する。
【0034】
プラズマクリーニング工程S4を
図5に示すプラズマ処理装置300を用いて行う具体的な手法について、以下に説明する。
【0035】
プラズマ処理装置300を用いたプラズマクリーニングの際には、まず、
図4に示す半導体チップ3が搭載された基板20は、プラズマ処理すべき面を上方(上部電極303側)に向けて、下部電極302上に配置される。すなわち、半導体チップ3の表面3aや基板20の上面20aが、上部電極303側を向くように、基板20が下部電極302上に配置される。
【0036】
それから、ガス供給口301aからチャンバ301内にプラズマ処理用のガスとして例えばアルゴン(Ar)ガスが導入される。チャンバ301内へ導入されるガス流量と、チャンバ301からの排気速度とを調整することにより、チャンバ301内は、所定の圧力に維持される。一例を挙げれば、チャンバ301内へ導入するアルゴンガスの流量を1~20sccm程度とし、チャンバ301内の圧力を1~50Pa程度とすることができる。
【0037】
それから、高周波電源304は下部電極302と上部電極303との間に高周波電力を供給する。これにより、プラズマが上部電極303と下部電極302との間に生成され、基板20に対するプラズマ処理が開始される。すなわち、プラズマを基板20に照射する処理が開始される。
【0038】
この際、下部電極302に生じた自己バイアスなどによってプラズマ中のイオンを加速する電界が生じ、加速されたプラズマまたはプラズマ中のイオンが基板20に照射される。このため、基板20に対して加速されたプラズマまたはイオンを照射する処理は異方性プラズマ処理、例えばスパッタエッチング処理である。プラズマ処理では、プラズマまたはイオンを加速して基板20の処理面に照射するので、有機物はもちろん、無機物も物理的作用により除去することが可能である。プラズマ処理により、基板20の上面20aの汚染物質を除去することができる。ここで、ダイボンディング工程S3において、基板20は、上述したように、加熱されるため、基板20の表面のソルダレジスト膜2dに含まれている油脂成分または有機溶剤等の不純物がアウトガスとなって放出される。このため、基板20の上面20aが汚染されて汚染物質が付着する。この汚染物質を除去しないと、半導体チップ3上のパッド3cとワイヤ5との接合性および基板20上の端子2eとワイヤ5との接合性が低下し、製品品質が低下する。
【0039】
下部電極302と上部電極303との間に高周波電力を所定の時間供給されて、基板20に対するプラズマ処理が行われた後、下部電極302と上部電極303との間への高周波電力の供給が停止される。これにより、基板20に対するプラズマ処理が終了する。
【0040】
(ワイヤボンディング工程S5)
次に、
図2に示すワイヤボンディング工程S5として、
図6に示すように、半導体チップ3と基板20のデバイス領域22とを電気的に接続する。
図6は、
図3に示す基板上の半導体チップと基板とをワイヤを介して電気的に接続した状態を示す断面図であり、
図3に示すA-A線に沿う断面に相当する断面図である。
【0041】
ワイヤボンディング工程S5において、半導体チップ3は基板20のデバイス領域22とワイヤ5を介して電気的に接続される。詳しくは、
図1および
図6に示すように、ワイヤ5の一方の端部は、半導体チップ3の表面3aにあるパッド3cに接続され、他方の端部は、基板20の上面20aにある端子2eに接合される。ワイヤボンディング工程S5においては、基板20に下に設けられるヒートステージにより、基板20は、例えば、125℃程度に加熱処理される。なお、ダイボンディング工程S3、プラズマクリーニング工程S4およびワイヤボンディング工程S5は組立工程クリーンルーム内で行うのが好ましい。
【0042】
(封止工程S6)
次に、
図2に示す封止工程S6においては、例えば、
図7に示すモールド装置を用いる。
図7は
図2に示す封止工程に用いられるモールド装置の一例を示す模式図である。
図8は
図7に示す第一搬送ユニット、プラズマ発生ユニットおよび認識用カメラを示す図である。
図9は
図7に示す第一搬送ユニットおよびプラズマ発生ユニットの配置を示す図であり、
図6に示す基板の上面側が下方を向いた状態にある。
図10は
図7に示す第一搬送ユニットおよび認識用カメラの配置を示す図であり、
図6に示す基板の上面側が下方を向いた状態にある。
図11は
図7に第二搬送ユニットによるモールドされた基板の搬送状態を示す図である。
【0043】
図7に示すように、半導体製造装置としてのモールド装置100は、ローダ部101と、第一搬送ユニット102と、プラズマ発生ユニット103と、認識用カメラ104と、モールド部105と、第二搬送ユニット106と、アンローダ部107と、制御部108と、を備える。ローダ部101、第一搬送ユニット102およびモールド部105はX方向に沿ってこの順に配置され、モールド部105、第二搬送ユニット106およびアンローダ部107はX方向に沿ってこの順に配置されている。後述するように、モールド部105においては、基板20の上面20aが下方を向いた状態で処理されるので、モールド装置100はその他の各部および各部間の搬送においても、基板20の上面20aが下方を向いた状態で動作する。
【0044】
ローダ部101には、
図6に示す半導体チップ3が搭載されてワイヤ5が接続された基板20が上面20aを下にして搬入される。
【0045】
図8および
図9に示すように、第一搬送ユニット102は、支持板102aと、基板20を保持するチャック102bと、支持板102aをX方向に沿って移動させるための搬送レール102cと、を備える。チャック102bは支持板102aに複数設けられている。ローダ部101から供給される基板20をX方向に沿ってプラズマ発生ユニット103および認識用カメラ104の上方を経由してモールド部105に搬送する。
【0046】
プラズマ発生ユニット103は、認識用カメラ104よりもローダ部101側に設置される。
図9に示すように、第一搬送ユニット102が基板20をローダ部101から認識用カメラ104側に搬送する間に、プラズマ発生ユニット103は生成したプラズマを搬送される基板20に照射する。プラズマ発生ユニット103のプラズマ照射範囲は基板20の幅(Y方向の長さ)をカバーし、プラズマ発生ユニット103は固定して設置される。
【0047】
認識用カメラ104は、プラズマ発生ユニット103よりもモールド部105側に設置される。
図10に示すように、第一搬送ユニット102が基板20をプラズマ発生ユニット103側からモールド部105に搬送する間に、認識用カメラ104は基板20(半導体チップ3およびワイヤ5を含む)を撮像する。認識用カメラ104の視野が基板20の幅(Y方向の長さ)の一部しかカバーしないので、認識用カメラ104は駆動部(不図示)によりY方向に移動可能とされている。
【0048】
モールド部105は、基板20の複数のデバイス領域22にボンディングされた複数の半導体チップ3を一括して覆うように封止体を形成する。詳細は後述する。
【0049】
第二搬送ユニット106は、
図11に示すように、第一搬送ユニットと同様の構成であり、モールド部105から供給された基板20をアンローダ部107に搬送する。
【0050】
アンローダ部107から
図11に示すモールドされた基板20が下面20bを上にしてモールド装置100の外に搬出される。
【0051】
制御部108はモールド装置100の各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)を格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0052】
以下に、本実施形態における封止工程S6の詳細を順に説明する。
図2に示すように、本実施形態における封止工程S6は、プラズマクリーニング工程S61、検査工程S62およびモールド工程S63(金型準備工程、基板保持工程、樹脂供給工程、基板浸漬工程および樹脂硬化工程)を含む。まず、上述したように、
図6に示す半導体チップ3が搭載されてワイヤ5が接続された基板20が上面20aを下にしてローダ部101に搬入される。
【0053】
(プラズマクリーニング工程S61)
次に、
図2に示すプラズマクリーニング工程S61では、
図9に示すように、ローダ部101から供給される基板20を搬送しながらプラズマ発生ユニット103を用いてプラズマクリーニングを行う。
【0054】
次に、
図9に示したプラズマ発生ユニット103の詳細について
図9および
図12を用いて説明する。
図12は
図9に示すプラズマ発生ユニットの内部構造を示す図である。
【0055】
プラズマ発生ユニット103は、減圧を行わず、通常大気中でプラズマ(大気圧プラズマ)を発生する。
図8に示すように、プラズマ発生ユニット103は基板20の下方に設置され、真上にプラズマを照射する。プラズマ発生ユニット103は、プラマヘッド103a、ヘッド固定ユニット103bおよびガス導入口103cを有する。
【0056】
図12に示すように、プラズマヘッド103aはガス導入ノズル103dとその外周を覆う電極103eで構成され、電極103eは高周波電源103fに接続されている。ガス導入ノズル103dはヘッド固定ユニット103b内に配置され、ガス導入口103cと接続されている。ガス導入口103cは配管および流量制御器(不図示)を介してプラズマ生成用ガスの供給源に接続されている。ガス導入ノズル103dは配管および流量制御器(不図示)を介して噴射用の圧縮エア源に接続されている。
【0057】
ガス導入ノズル103dの材料としては、例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナなどのような導電性の低い、一般的に絶縁体と呼ばれる材質を使用する。但し、ガス導入ノズル103dの内、プラズマヘッド103a内の電極103eと接していない部分の一部を、ステンレススティール、アルミニウム(Al)といった一般的に導体と呼ばれる金属にしてもよい。ガス導入ノズル103dの形状は、下部および中央部がガスを導入する為に管状であり、その断面は円形であってもよいし、矩形であてもよい。上部は基板幅全体にガスを噴出するために基板幅方向に長い矩形であり、短尺方向の長さは、例えば、1mm程度である。
【0058】
この構成において、ガス導入口103cからプラズマ生成用のガスが導入され、ガス導入ノズル103dの下方から導入されるパルスジェットのキャリアガスによりガス導入ノズル103dの内部を通り、上方向に流れる。ここで、パルスジェットとは、高速のガス流を短時間で遠方に到達させるものである。この流れの途中で、プラズマヘッド103aにおいて高周波電源103fにより高周波電力が印加され、通過してきたプラズマ生成用のガスが活性化されて、プラズマ生成用のガスの活性種としてのプラズマ103gが発生する。高周波電源103fから供給される高周波電力の周波数は、例えば、13.56MHzである。このプラズマヘッド103aの内部で発生したプラズマ103gは、ガス流によって噴射され、第一搬送ユニット102によって搬送された基板20の上面20a側に照射される。プラズマ103gはパルスジェットにより間欠的に噴射されるので、一枚の基板20に対して複数回照射される。大気圧中でプラズマを生成することにより減圧する時間が必要なくなる。また、真空チャンバ等の大掛かりな設備が不要となることで設備コストが大幅に低減することができる。
【0059】
次に、プラズマ発生ユニット103を用いたプラズマクリーニングについて
図13を用いて説明する。
図13は
図9の部分拡大図である。
【0060】
図13に示すように、制御部108は、第一搬送ユニット102のチャック102bにより基板20の下面20bを保持し、基板20をX方向に沿っての図面の左から右に搬送すると共に、プラズマ発生ユニット103から真上にプラズマ103gを照射する。ワイヤボンディング工程S5において加熱されることにより、基板20の表面のソルダレジスト膜2dに含まれている油脂成分または有機溶剤等の不純物がアウトガスとなって放出され、基板20の上面20aが汚染されて汚染物質が付着する。しかし、プラズマ発生ユニット103からのプラズマ照射によりこの汚染物質を除去できる。
【0061】
ここで、プラズマ生成用のガスは、主に有機物を除去するために効果のあるガス、例えば、アルゴン(Ar)、酸素(O2)、窒素(N2)などが好ましい。アルゴン(Ar)と酸素(O2)との混合ガスがより好ましく、例えば、酸素はアルゴンの0.5%程度であるのが好ましい。また、プラズマ発生ユニット103のプラズマヘッド103aの上端は基板20の上面20aから所定距離(H)離して設置されている。半導体チップ3の厚さをT、ワイヤ5のループ高さをH1とする。例えば、T=280μm、H1=150μmである場合は、H=7000μmであるのが好ましい。また、プラズマ照射時間は0.1秒が好ましい。基板20の搬送速度は、例えば、10mm/秒が好ましい。
【0062】
なお、基板と樹脂の密着性を評価した結果、
図15に示す純水PWの接触角(α)が40度以下であることが求められる。
図15は水の接触角を説明する図である。本実施形態におけるプラズマクリーニングでは要求される接触角を満すことができる。
【0063】
プラズマ照射を行う方向は、
図13に示した真上方向以外であってもよい。
図14は
図12に対応し、プラズマ照射の方向を
図13に示す方向から変えた例を示す図である。例えば、
図14に示したように、基板20の上面20aに垂直な線に対して基板20の搬送方向に所定角度(θ)傾けて照射するようにしても良い。θは、例えば、45度が好ましい。基板20の搬送方向であるX軸方向に対してプラズマヘッド103aを傾けることによりプラズマ照射領域を広くすることができる。これにより、基板20の搬送スピードを、例えば、12mm/秒にすることができ、プラズマ照射を真上にするよりも速くできる。また、基板20の搬送方向とは同じ側に傾けてもよいし、反対側に傾けてもよい。
【0064】
(検査工程S62)
次に、
図2に示す検査工程S62では、
図10に示すように、プラズマクリーニングが行われた基板20を搬送しながら認識用カメラ104を用いて基板20等の外見検査等を行う。
【0065】
図10に示すように、認識用カメラ104は基板20の下方に設置される。制御部108は、第一搬送ユニット102のチャック102bにより基板20の下面20bを保持し、基板20をX軸方向に沿っての図面の左から右に搬送して、例えば、一つのデバイス領域22を認識用カメラ104の真上に配置する。認識用カメラ104により真上に位置するデバイス領域22の基板20、半導体チップ3およびワイヤ5を撮像する。その後、制御部108は認識用カメラ104をY軸方向に移動して隣のデバイス領域22の基板20、半導体チップ3およびワイヤ5を撮像する。基板幅方向の一列全てのデバイス領域の撮像が終わったら、制御部108は第一搬送ユニット102により基板20を次の列のデバイス領域22まで搬送する。それを繰り返して、基板20のすべてのデバイス領域の撮像を行う。制御部108は、認識用カメラ104により撮像した画像に基づいて、樹脂量算出のための半導体チップ3の数の計数、半導体チップ3が基板20に搭載されているかどうの目抜けチェック、ワイヤ5の状態の異常、異物等の検査を行う。制御部108は、この検査結果に基づいて、半導体チップ3の有無の基板アドレス情報、プラズマ照射後のワイヤ5の状態等の異常の有無とその異常位置の基板アドレス情報を取得する。ここで、基板アドレス情報とは、基板20が有する複数のデバイス領域22のうちのどのデバイス領域かを示す情報である。これにより、個片化工程S8において不良品のリジェクトが可能となる。
【0066】
ここで、ワイヤ間隔が狭くマージンが少ない製品の場合、プラズマクリーニング工程61において照射したプラズマの流速圧(ガスの風圧)によりワイヤ変形が起こり、隣接するワイヤ同士が接触し、ワイヤショート不良が発生する可能性ある。また、通常、モールド装置は組立工程クリーンルーム内には設置されず、モールド装置内は比較的クリーン度が低いので、異物が存在するポテンシャルがある。この異物は、樹脂バリ、基板20の擦れ屑、または、ローダ部101内の組立ラックのアルミニウム(Al)の削れ屑やワイヤ5の銅(Cu)の削れ屑等の金属異物である。プラズマ照射時の流速は、例えば、マッハ1.7(約578m/秒)であり、この異物がプラズマ照射時にガスの風圧で飛散し基板20等に付着する可能性がある。検査工程S62により、この不良および異物を検知することが可能となる。なお、プラズマクリーニング工程S4において用いた真空プラズマ処理装置と同様な装置を組立工程クリーンルーム内で用いた場合は、異物付着のポテンシャルは低い。
【0067】
(モールド工程S63)
次に、
図2に示すモールド工程S63として、
図6に示す半導体チップ3を樹脂で封止して封止体を形成する。モールド工程S63はモールド装置100のモールド部105において行われる。
図16は、
図6に示す基板の上面側に封止体が形成された状態における断面図である。
図17は
図16に示す断面図とは異なる面の断面図であり、
図3のB-B線に沿った断面に相当する断面図である。
【0068】
図16および
図17に示すように、本工程では、複数のデバイス領域22が一つの封止体4に一括して覆われる。
【0069】
金型準備工程では、
図18に示す成形金型200を準備する。
図18は、
図3のB-B線に沿った断面に相当する断面において、成形金型内に基板を配置した状態を示す断面図である。成形金型200は、基板20の上方に配置される第一型としての上型201と、基板20の下方に配置される第一型としての下型202と、を備える。モールド工程S63では、基板20の下面20bを上型201と対向させ、上面20aと下型202とを対向させた状態で、封止体4(
図17参照)を形成する。このため、上型201は、基板20の下面20bを保持する複数の吸着孔201aを有する。複数の吸着孔201aのそれぞれは、吸気経路201bに接続されている。上型201は、吸気経路201bを介して複数の吸着孔201aの先端部分の気体(例えば空気)を吸気することにより、複数の吸着孔201aの先端に基板20を吸着保持できる構造になっている。
【0070】
また、下型202は、封止体4を成形する型であるキャビティ202aを有する。キャビティ202aは、離型シート205に覆われている。離型シート205は、例えば樹脂からなる薄膜フィルムである。キャビティ202aと封止体4(
図17参照)との間に離型シート205が配置されることにより、封止体4を形成した後、下型202と封止体4との剥離性を向上させることができる。また、下型202に封止用の樹脂が付着することを防止できるので、下型202の洗浄作業を省略または短縮できる。また、下型202は、封止体4をキャビティ202aから取り出すためのイジェクトピン202bを有する。
【0071】
金型準備工程の後で行われる基板保持工程では、
図18に示すように、上型201と下型202との間に基板20を配置する。また、基板20の下面20bを複数の吸着孔201aで吸着することにより、基板20の上面20aが下方を向いた状態で、上型201が基板20を保持する。
【0072】
また、基板保持工程では、成形金型200と、基板20との平面視における位置関係を制御することにより、位置合わせを行う。基板保持工程では、基板20の端部に設けられた凹部(不図示)または周辺に設けられた孔(不図示)と上型201に設けられた位置決めピン(不図示)とが重なるように配置されることで、上型201と基板20との位置合わせを行う。また、上型201と下型202との位置関係は、予め調整されており、上型201と基板20との位置合わせを行えば、結果的に下型202と基板20との位置合わせも完了する。
【0073】
金型準備工程の後で行われる樹脂供給工程では、
図19に示すように、下型202のキャビティ202a内に樹脂204を供給する。
図19は、
図18に示す下型のキャビティ内に、樹脂204を供給し、軟化させた状態を示す断面図である。詳しくは、キャビティ202aは、離型シート205に覆われ、樹脂204は、離型シート205上に供給される。樹脂204は、
図16および
図17に示す封止体4の原料樹脂である。樹脂204には、熱硬化性の樹脂の他、封止体4の線膨張係数を調整するフィラ粒子および封止体4の色を黒色化させるカーボンブラックなどの材料が含まれる。本実施形態におけるモールド工程S63では、キャビティ202a内で軟化した樹脂204に複数の半導体チップ3および複数のワイヤ5を浸漬することにより封止する、コンプレッションモールド方式を適用する。
【0074】
コンプレッションモールド方式は、キャビティ202aと基板20とに挟まれた空間内に軟化させた樹脂を圧力で注入する、トランスファモールド方式とは区別される。コンプレッションモールド方式の場合、トランスファモールド方式と比較して、モールド工程中の樹脂204の流動が、実質的に無いと見做せる程度に少ない。このため、樹脂204の流動に起因する基板20上の部材、特に、ワイヤ5の変形を抑制できる点で好ましい。コンプレッションモールド方式は大型の基板のモールドに適している。トランスファモールド方式は小型の基板のモールドに適用可能である。
【0075】
ただし、樹脂204の材料は、トランスファモールド方式で利用される樹脂と同様の材料を用いることができる。トランスファモールド方式では、原料樹脂のペレットをポットと呼ばれる容器内で軟化させた後、押圧することにより、キャビティ内に供給する。一方、コンプレッションモールド方式の場合、顆粒状に成形された原料樹脂をキャビティ202a内に配置した後、キャビティ202a内で軟化させる。
【0076】
なお、基板保持工程と樹脂供給工程との工程順序は、特に限定されない。本明細書では、基板保持工程を先に説明したが、樹脂供給工程を先に実施しても良い。また、例えば、キャビティ202a内に顆粒状の原料樹脂を供給した後、基板保持工程を行い、その後、原料樹脂を加熱して、軟化した樹脂204を得ても良い。この場合、樹脂供給工程を先に行う場合と比較して、樹脂204の保温時間が短縮できる。また、下型202が加熱されていない状態で基板保持工程を行うことができる。
【0077】
基板保持工程および樹脂供給工程の後で行われる基板浸漬工程では、
図20に示すように、キャビティ202a内に半導体チップ3を浸し、半導体チップ3を封止する。
図20は、
図19に示す上型と下型との距離を近づけた状態を示す断面図である。
【0078】
基板浸漬工程では、半導体チップ3、基板20の上面20aが、キャビティ202a内の樹脂204に覆われるように、上型201と下型202の距離を近づける。また、
図20に示すように、本工程では、半導体チップ3および複数のワイヤ5のそれぞれが、樹脂204に封止される。
【0079】
基板浸漬工程の後で行われる樹脂硬化工程では、
図20に示す樹脂204を加熱して、樹脂204に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させる。本工程により、
図16および
図17に示す封止体4が得られる。
【0080】
図20に示すように、樹脂204とキャビティ202aとの間には、離型シート205が配置されている。これにより、
図21に示すように、イジェクトピン202bを押し上げながら上型201と下型202との距離を遠ざければ、封止体4はキャビティ202a内から離れると共に、離型シート205は樹脂204(または
図15に示す封止体4)から容易に剥離する。
図21は
図20に示す上型と下型との距離を遠ざけた状態を示す断面図である。一方、基板20と上型201とは、
図21に示す複数の吸着孔201aによる吸着力により保持されているので、吸着孔201aからの吸引を停止すれば、基板20と上型201とは容易に剥離する。
【0081】
最後に、モールドされた基板20が下面20bを上にしてアンローダ部107を介してモールド装置100の外に搬出される。そして、モールド外観検査およびワイヤX線検査が行われる。
【0082】
(ボールマウント工程S7)
次に、
図2に示すボールマウント工程S7として、基板20の下面20bに形成された複数のランド2f(
図1参照)に複数の半田ボール6を接合する。本工程では、基板20の下面20bにおいて露出する複数のランド2fのそれぞれの上に半田ボール6を配置した後、加熱することで複数の半田ボール6とランド2fとを接合する。本工程により、複数の半田ボール6は、基板20を介して半導体チップ3と電気的に接続される。ただし、本実施形態で説明する技術は、半田ボール6を接合した、いわゆるBGA(Ball Grid Array)型の半導体装置に限って適用させるものではない。例えば、本実施形態に対する変形例としては、半田ボール6を形成せず、ランド2fを露出させた状態、またはランド2fに半田ボール6よりも薄く半田ペーストを塗布した状態で出荷する半導体装置に適用することができる。この半導体装置は、いわゆるLGA(Land Grid Array)型の半導体装置である。
【0083】
(個片化工程S8)
次に、
図2に示す個片化工程S8として、
図3に示す複数のデバイス領域22の間のそれぞれの周囲を囲む切断領域21bに沿って基板20および封止体4を切断し、複数のデバイス領域22のそれぞれを個片化する。より詳細には、個片化工程S8では、ダイシングブレードと呼ばれる切削治具を用いて、基板20の切断領域21bを切削加工することにより、基板20を切断する。このため、切断領域21bは、延在方向と交差する方向に、数百μm程度の幅を有している。
【0084】
以上の各工程により、
図1を用いて説明した半導体装置1が得られる。その後、半導体装置1に対して、外観検査や電気的試験など、必要な検査、試験が行われ、半導体装置1は出荷、または、図示しない実装基板に実装される。
【0085】
以上、本開示者らによってなされた開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0086】
例えば、実施形態では、プラズマ発生ユニット103および認識用カメラ104を基板20の下方に設置してプラズマを上方に向けて照射すると共に認識カメラを上方に向けて撮像する例を説明した。しかし、これに限定されるものではなく、プラズマ発生ユニット103および認識用カメラ104を基板の上方に設置して下方に向けて照射すると共に認識カメラを下方に向けて撮像するようにしてもよい。
【0087】
また、実施形態では、コンプレッションモールド方式を例に説明したが、トランスファモールド方式にも適用することができる。この場合、プラズマ発生ユニット103および認識用カメラ104を基板の上方に設置して下方に向けて照射すると共に認識カメラを下方に向けて撮像する。
【0088】
また、実施形態では、プラズマクリーニング工程S4において真空プラズマ処理装置を用いる例を説明したが、プラズマクリーニング工程S61における大気圧プラズマの照射にしてもよい。この場合、プラズマ発生ユニットを基板の上方に設置して下方に向けて照射する。
【0089】
また、実施形態では、基板として配線基板を用いる例を説明したが、リードフレーム等の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1:半導体装置
2e:端子
3:半導体チップ
4:封止体
5:ワイヤ
20:基板
20a:上面(主面)
22:デバイス領域