(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】鋼殻エレメントの接合構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20240423BHJP
E21D 13/02 20060101ALI20240423BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20240423BHJP
E21D 9/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D13/02
E21D11/14
E21D9/04 F
(21)【出願番号】P 2020158551
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】小山 正幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 克己
(72)【発明者】
【氏名】中村 太三
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125340(JP,A)
【文献】特開2014-218867(JP,A)
【文献】特開2015-071904(JP,A)
【文献】特開平04-062292(JP,A)
【文献】特開2003-064980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E21D 1/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、を有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、
前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、
前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雄継手と、前記雌継手に形成された前記溝部に挿入可能で前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、
前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に
一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、
前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、
前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものである
ことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項2】
地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、
前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、
前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、
前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記雄継手にそれぞれ形成され前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記溝部に挿入可能で前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、
前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間及び前記第二鋼殻エレメントと前記第三鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に
一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がそれぞれかけ渡されており、
前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートによりそれぞれ定着されており、
前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間の距離より大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメントもしくは前記第二鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントもしくは前記第三鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものである
ことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項3】
地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、
前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、
前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、
前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記第一鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第一鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第一鋼殻エレメントの前記雌継手と係合しない突出部と、前記第三鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第三鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第三鋼殻エレメントの前記雌継手と係合する突出部と、を有しており、
前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に
一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、
前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、
前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものである
ことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項4】
前記連結材は、前記中間部連結棒と前記端部連結棒とを接続する接続具とを有し、前記対向する側壁間に設けられた連結材挿通孔を通してかけ渡されており、
前記接続具は、前記側板より定着される側に配置され、前記接続具の外径は、前記連結材挿通孔の孔径より大きい
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項5】
前記接続具と前記接続具に接続された前記端部連結棒との長さが、定着長として設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項6】
前記接続具に接続された前記端部連結棒の長さが、定着長として設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の鋼殻エレメントの接合構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の鋼殻エレメントの接合構造の施工方法であって、
隣り合う鋼殻エレメントの対向する側壁間に土砂を残したまま、一方の鋼殻エレメント側から前記中間部連結棒をかけ渡す
ことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非開削工法により地下構造物を構築する際に用いる鋼殻エレメントの接合構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下構造物を構築する際に、地上での交通規制が不要であり、周辺地盤への影響も少ない非開削工法を採用することがある。
非開削工法としては、一側に凹継手を有し、他側に凸継手を有する中空の鋼殻エレメントを、継手を繋ぎ合わせながら推進工法により地中に並設して鋼殻構造体を形成し、鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して外殻躯体を形成し、その後、外殻躯体で囲まれた内側を掘削して地下構造物を構築する方法がある。
【0003】
しかし、このような工法は、隣接する鋼殻エレメント間に引張力が加わると、継手が外れて隣接する鋼殻エレメントどうしが分離する恐れがある。この結果、外殻躯体の構築に支障をきたし、地下構造物の内部に地下水が侵入する等の重大な事態が発生しかねない。
【0004】
そこで、従来、凹継手の溝部内に内周面両側から突出する係止部を形成し、凸継手の先端に両側へ突出する突起部を設けた鋼殻エレメントの継手構造が、例えば、特許文献1として提案されている。
上記特許文献1に記載の鋼殻エレメントの継手構造は、隣接する鋼殻エレメント間に引張力が加わっても、突起部が係止部に係合して凸継手が凹継手から抜け出すことがなく、隣接する鋼殻エレメントが離れるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のような鋼殻エレメントの継手構造は、施工による隣接する鋼殻エレメント間の位置関係が、凸継手と凹継手との係合可能な許容範囲を超えると、凸継手の突起部が凹継手の係止部にぶつかってしまうため凸継手を凹継手へ差し込むことができず、特に位置関係が大きくなりやすい閉合エレメントを設置する部分では、凸継手の先端の突起部を省略せざるを得ない場合があった。そのような場合、凸継手の突起部と凹継手の係止部との係合による抜け止め機能を発揮することができず、隣接する鋼殻エレメント間に引張力が作用した際には、鋼殻エレメントによる分離を防止することはできなくなる。
本発明が解決しようとする課題は、鋼殻エレメントの施工誤差を吸収できるとともに、隣接する鋼殻エレメント間に引張力が作用しても、鋼殻エレメントによる分離を防止することができ、鋼殻エレメントの変形を防止できる、鋼殻エレメントの接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、を有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雄継手と、前記雌継手に形成された前記溝部に挿入可能で前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項2に係る発明は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記雄継手にそれぞれ形成され前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記溝部に挿入可能で前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間及び前記第二鋼殻エレメントと前記第三鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がそれぞれかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートによりそれぞれ定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間の距離より大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメントもしくは前記第二鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントもしくは前記第三鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項3に係る発明は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記第一鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第一鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第一鋼殻エレメントの前記雌継手と係合しない突出部と、前記第三鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第三鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第三鋼殻エレメントの前記雌継手と係合する突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に一端側のみが接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項4に係る発明は、前記連結材は、前記中間部連結棒と前記端部連結棒とを接続する接続具とを有し、前記対向する側壁間に設けられた連結材挿通孔を通してかけ渡されており、前記接続具は、前記側板より定着される側に配置され、前記接続具の外径は、前記連結材挿通孔の孔径より大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項5に係る発明は、前記接続具と前記接続具に接続された前記端部連結棒との長さが、定着長として設定されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項6に係る発明は、前記接続具に接続された前記端部連結棒の長さが、定着長として設定されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の鋼殻エレメントの接合構造の施工方法であって、隣り合う鋼殻エレメントの対向する側壁間に土砂を残したまま、一方の鋼殻エレメント側から前記中間部連結棒をかけ渡すことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造の施工方法である。
また、別発明として以下のものでも良い。
手段1は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、を有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雄継手と、前記雌継手に形成された前記溝部に挿入可能で前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
【0008】
手段2は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記雄継手にそれぞれ形成され前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記溝部に挿入可能で前記第一鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの双方の前記雌継手と係合しない突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間及び前記第二鋼殻エレメントと前記第三鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に接続された端部連結棒とを有する連結材がそれぞれかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートによりそれぞれ定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメント並びに前記第二鋼殻エレメント及び前記第三鋼殻エレメントの対向する側板間の距離より大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメントもしくは前記第二鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントもしくは前記第三鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
【0009】
手段3は、地中に並設され、第一鋼殻エレメントと、前記第一鋼殻エレメントの隣に設置された第二鋼殻エレメントと、前記第二鋼殻エレメントの隣に設置された第三鋼殻エレメントとを有する外殻躯体における複数の鋼殻エレメントの接合構造であって、前記第一鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第三鋼殻エレメントは、軸方向に沿って形成された雌継手と、前記雌継手の前記第二鋼殻エレメント側に開口された溝部と、を有し、前記第二鋼殻エレメントは、軸方向に沿って第一鋼殻エレメント側及び第三鋼殻エレメント側の双方に形成された雄継手と、前記第一鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第一鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第一鋼殻エレメントの前記雌継手と係合しない突出部と、前記第三鋼殻エレメント側の前記雄継手に形成され前記第三鋼殻エレメントの前記溝部に挿入可能であって、前記第三鋼殻エレメントの前記雌継手と係合する突出部と、を有しており、前記第一鋼殻エレメントと前記第二鋼殻エレメントとの間において、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間には、中間部連結棒と、その両端部に接続された端部連結棒とを有する連結材がかけ渡されており、前記連結材の両端部は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側壁の外側において充填されたコンクリートにより定着されており、前記中間部連結棒は、前記第一鋼殻エレメント及び前記第二鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、前記第一鋼殻エレメント又は前記第二鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いものであることを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造である。
【0010】
手段4は、前記連結材は、前記中間部連結棒と前記端部連結棒とを接続する接続具とを有し、前記対向する側壁間に設けられた連結材挿通孔を通してかけ渡されており、前記接続具は、前記側板より定着される側に配置され、前記接続具の外径は、前記連結材挿通孔の孔径より大きいことを特徴とする手段1乃至手段3のうちいずれかに記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
【0011】
手段5は、前記接続具と前記接続具に接続された前記端部連結棒との長さが、定着長として設定されていることを特徴とする手段4に記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
【0012】
手段6は、前記接続具に接続された前記端部連結棒の長さが、定着長として設定されていることを特徴とする手段4に記載の鋼殻エレメントの接合構造である。
【0013】
手段7は、手段1乃至手段6のうちいずれかに記載の鋼殻エレメントの接合構造の施工方法であって、隣り合う鋼殻エレメントの対向する側壁間に土砂を残したまま、一方の鋼殻エレメント側から前記中間部連結棒をかけ渡すことを特徴とする鋼殻エレメントの接合構造の施工方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、雄継手の係合しない突出部は雌継手の溝部に対して挿入深さを調整できるので、隣り合う鋼殻エレメント間の施工誤差を吸収でき、しかも、隣り合う鋼殻エレメントどうしは、その内部に充填されたコンクリートに両端部が定着された連結材で連結されているため引張力に対しても抵抗し、強固な外殻躯体を構築することが可能である。
また、中間部連結棒は、隣り合う鋼殻エレメントの対向する側板間の距離よりも大きい長さであって、かつ、隣り合ういずれかの鋼殻エレメントの本体部の側板間の距離よりも短いので、中間部連結棒の長手方向を鋼殻エレメントの軸方向に向けた状態で鋼殻エレメントの本体部の内部を通して所定位置まで運搬でき、隣り合う鋼殻エレメント間の土砂を残してその間を開放する前に、中間部連結棒を挿通させることもできるので、できるだけ隣り合う鋼殻エレメントの間での作業を少なくできるので、安全性と止水性がより高い施工が可能となっている。
【0015】
加えて、連結材は、中間部連結棒と端部連結棒とを接続する接続具とを有し、対向する側壁間に設けられた連結材挿通孔を通してかけ渡されており、接続具は、側板より定着される側に配置され、接続具の外径は、連結材挿通孔の孔径より大きいので、挿通された中間部連結棒の両端部に取付けられた接続具が、側板(連結材挿通孔)を超えて移動することがなく、鋼殻エレメントの内部にコンクリートが打設されるまでの位置決め具として機能し、中間部連結棒が対向する側板に適切な位置にかけ渡されるようにすることができる。
【0016】
加えて、接続具と接続具に接続された端部連結棒との長さ又は接続具に接続された端部連結棒の長さが、定着長として設定されているので、定着長を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る外殻躯体の断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る基準エレメントの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る一般エレメントの断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る閉合エレメントの断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る外殻躯体の要部断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る鋼殻エレメントの接合部分の断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るが外殻躯体の要部断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る外殻躯体の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態を
図1~
図6と共に説明する。
図1は、外殻躯体の断面図であり、
図2は、基準エレメントの断面図であり、
図3は、一般エレメントの断面図であり、
図4は、閉合エレメントの断面図であり、
図5は、外殻躯体の要部断面図であり、
図6は、鋼殻エレメントの接合部分の断面図である。
図7は、
図6における要部断面図であり、閉合エレメント側の連結材の定着長を示したものである。
なお、外殻躯体は、鋼殻構造体にコンクリートが打設されたものであり、図面において、外殻躯体は、コンクリートは図示が省略されている。
【0020】
非開削工法により地下構造物を構築するには、まず、
図1に示すように、鋼製の多数の中空筒状の鋼殻エレメント1を、断面視で周方向に閉鎖するよう、相互に接合して地中に並設して鋼殻構造体を形成し、鋼殻エレメント1の内部にコンクリートを充填して外殻躯体2を形成する。その後、外殻躯体2の内側の土砂を掘削する。
【0021】
鋼殻エレメント1には、基準エレメント1aと、一般エレメント1bと、閉合エレメント1cとがあり、鋼殻構造体を形成するには、例えば、基準エレメント1aを構築位置の頂部中央と底部中央に推進埋設し、基準エレメント1aの周方向両側に一般エレメント1bを順次接合しながら並設し、掘削順序において末端となる位置に閉合エレメント1cを推進埋設して先に埋設されている一般エレメント1bと接合する。
【0022】
基準エレメント1aは、
図2に示すように、断面略矩形で中空の本体部10と、本体部10の両側の上下端部から側方へ張り出し軸方向に沿って形成された雌継手11とを備える。
本体部10は、左右一対の側板100と、側板100の上下端からそれぞれ延びて左右の側板100間を連結する頂板101及び底板102とを備える。
一方の側板100には、開閉自在な蓋103で閉鎖された出入口104が形成されている。
また、側板100の上端部と頂板101の側端部との間、及び、側板100の下端部と底板102の側端部との間には、コーナー補強材105が軸方向の適宜間隔ごとに架設されている。
【0023】
雌継手11は、内側片11aと外側片11bとで側方に開口する溝部110を有し、溝部110の内部には上下両面から突出する係止部111が形成される。
溝部110の開口は、シール材が注入されたバネ状の二重のパッキング112で閉鎖されている。
また、雌継手11には、内側片11aを貫通し外側片11bを貫通しないネジ孔113が形成されている。このネジ孔113は、溝部110の開口が開かないよう、図示しない開き止めボルトを螺合させることができる。外側片11bに形成されたネジ孔113が有底であるのは止水効果を高めるためである。
【0024】
一般エレメント1bは、
図3に示すように、本体部10と、本体部10の一側の上下端部から側方へ張り出し軸方向に沿って形成された雌継手11と、本体部10の他側の上下端部から側方へ張り出し軸方向に沿って形成された雄継手12とを備える。
本体部10及び雌継手11は、基準エレメント1aの本体部10及び雌継手11とほぼ同様の構造を有する。
また、閉合エレメント1cに接合される一般エレメント1bの雌継手11側の側板100の上下端部に、連結材挿通孔106が穿設されている(
図5、
図6)。なお、本実施形態では、閉合エレメント1cに接合される一般エレメント1bの雌継手11にネジ孔113が設けられているが、ネジ孔113を設けないようにしても良い。
【0025】
雄継手12は、溝部110へ開口を通して挿入される板状の突出部120と、突出部120の先端から溝部110の上下両面方向へ突出する係合部121とを備える。
突出部120を溝部110内に挿入した状態で、雄継手12と雌継手11とを引き離そうとする力(引張力)が働くと、係合部121が係止部111に係合して抜け止めとなる。
また、図示しないが、突出部120には、雌継手11のネジ孔113に対応して、開き止めボルトを挿通するための孔が形成される。この孔は、雌継手11と雄継手12との施工誤差とのパッキング112による止水性の確保の双方を考慮して、接続方向に例えばネジ孔113の径の数倍の大きさとしてある。
【0026】
閉合エレメント1cは、
図4に示すように、本体部10と、本体部10の両側の上下端部から側方へ張り出し軸方向に沿って形成された雄継手12とを備える。
本体部10の構造は、基準エレメント1a及び一般エレメント1bの本体部10と同様の構造を有する。また、閉合エレメント1cの側板100の上下端部に、連結材挿通孔106が穿設されている。
雄継手12は、雄継手12と同様に板状の突出部120を有するが、突出部120の先端に係合部121が形成されていない。
【0027】
隣り合う鋼殻エレメント1の雌継手11と雄継手12とは互いに接合されるが、閉合エレメント1cの雄継手12には、雌継手11の係止部111と係合する係合部121が形成されていないので、互いに係合せず、閉合エレメント1cとこれに隣接する一般エレメント1bとの位置誤差を吸収することはできるが、両者を引き離そうとする力(引張力)に対抗することはできない。
そこで、
図5に示すように、閉合エレメント1cとその両側に隣接する一般エレメント1bとを棒状の連結材3で連結する。閉合エレメント1cが本発明の第二鋼殻エレメントに相当し、両側の一般エレメント1bのうち一方が本発明の第一鋼殻エレメントに、他方が本発明の第三鋼殻エレメント相当する。
【0028】
図6に示すように、連結材3は、鋼等の金属を素材とし、中間部連結棒30と、2本の端部連結棒31と、中間部連結棒30の両端部にそれぞれ端部連結棒31を接続するための接続具32とを備える。連結材3の全長は、閉合エレメント1cとこれに隣接する一般エレメント1bとの対向する側板100間の距離より大きい長さを有する。
【0029】
中間部連結棒30は、閉合エレメント1cとこれに隣接する一般エレメント1bの対向する側板100間の距離よりも大きい長さを有する。また、中間部連結棒30は、中間部連結棒30の長手方向を閉合エレメント1c又は一般エレメント1bの軸方向に向けた状態で鋼殻エレメントの本体部10の内部を運搬され、エレメントの側板100から対向するエレメントの側板100に挿通されるため、閉合エレメント1c又は一般エレメント1bの本体部10の側板間の距離より短く設定されている。
また、中間部連結棒30の両端部には雄ネジ部300が形成される。
端部連結棒31は、中間部連結棒30と同径であり、その一端部に雄ネジ部310が形成される。
【0030】
接続具32は、側板100より本体部10の内部の定着される側に配置され、両側内周に互いに逆向きの雌ネジが形成されたネジ筒体より成り、両端から中間部連結棒30の雄ネジ部300及び端部連結棒31の雄ネジ部310をねじ込んで、中間部連結棒30の端部に端部連結棒31を接続できるようになっている。そして、接続具32を回転させることにより、中間部連結棒30と端部連結棒31との接続部分の長さを調整することもできる。
接続具32の筒体の外径は、連結材挿通孔106の孔径より大きくしてある。このため、挿通された中間部連結棒30の両端部に取付けられた接続具32は、側板100(連結材挿通孔106)を超えて移動することはなく、鋼殻エレメント1の内部にコンクリートが打設されるまでの位置決め具として機能し、中間部連結棒30が対抗する側板100に適切な位置にかけ渡されることになる。
【0031】
また、接続具32の軸方向中央部分に、接続具32の外部から内部に連通する貫通孔を形成し、この貫通孔を通して接続具32の内部にグラウト材を注入することで、中間部連結棒30と端部連結棒31を強固に接続できるようにしても良い。
中間部連結棒30は、その両端部を閉合エレメント1c及びその隣の一般エレメント1bの対向する側板100に形成された連結材挿通孔106に挿通し、閉合エレメント1c及び一般エレメント1bの本体部10の内部において、中間部連結棒30の両端部の雄ネジ部300に接続具32を介して端部連結棒31を接続する。
【0032】
連結材3による閉合エレメント1cとその両側に隣接する一般エレメント1bとの連結は、連結材3の両端部が閉合エレメント1cとそれに隣接する一般エレメント1bの本体部10の内部に充填されたコンクリートによって定着することで達成される。すなわち、閉合エレメント1cとそれに隣接する一般エレメント1bとの接合中心側の本体部10の側板100より外側に充填されたコンクリートにより定着される。
具体的には、
図7に示すように、閉合エレメント1c及び一般エレメント1bの本体部10の内部に位置する連結材3の両端部のうち、端部連結棒31の外側端部から接続具32の中間部連結棒30側の端部までの距離L1を定着長として設定している。すなわち、接続具32と接続具32に接続されて露出する部分の端部連結棒31との長さL1を定着長として設定している。この場合、露出した部分のうち雄ネジ部310の部分は定着長としては考慮しないようにしても良い。(実際には、側板100の本体部10側に位置する中間部連結棒30の部分も含んで定着されることになる。)
上述したように、接続具32の筒体の外径は、連結材挿通孔106の孔径より大きくしてあるので、鋼殻エレメント1の内部にコンクリートが打設されるまでの位置決め具として機能し、その結果、端部連結棒31の外側端部から接続具32の中間部連結棒30側の端部までの距離L1の定着長を確保することができる。
【0033】
本実施形態では、連結材3の両端部の定着長として、端部連結棒31の外側端部から接続具32の中間部連結棒30側の端部までの距離L1を設定したが、これに限られず、
図7に示すように、端部連結棒31の外側端部から接続具32が螺合される雄ネジ部310との境界部までの距離L2としても良い。このようにすれば、端部連結棒31の接続具32との螺合の度合いによって定着長が不足することも防ぐことができる。
【0034】
以下、地下構造物を構築する手順について説明する。
鋼殻エレメント1を、その先端面に掘削装置を装着し、発進立坑から軸方向に継ぎ足しながら推進させる。また、周方向に隣り合う鋼殻エレメント1を雌継手11と雄継手12とを接合しながら、基準エレメント1a、一般エレメント1b、閉合エレメント1cの順に推進させていく。
【0035】
鋼殻エレメント1を周方向に接合するには、埋設しようとする雄継手12の突出部120を、先に埋設されている鋼殻エレメント1の雌継手11の溝部110に軸方向端部から差し込み、軸方向に推進させる。
溝部110の開口はバネ状のパッキング112で閉鎖されているので、溝部110に突出部120を挿入すると、突出部120の両面にパッキング112が圧接され、雌継手11と雄継手12の接合部が密封される。
【0036】
基準エレメント1a及び一般エレメント1bを設置したら、隣接する二つの一般エレメント1bの間に閉合エレメント1cを設置する。
閉合エレメント1cの設置は、一般エレメント1bと同様に行う。
閉合エレメント1cの両側の雄継手12は、両側に位置する一般エレメント1bの雌継手11と係合されるが、板状の突出部120を有するだけで、その先端に係合部121が形成されていないので、突出部120の溝部110に対する挿入長さを現地にあわせて調整することができ、両側の一般エレメント1bの施工誤差を吸収できる。すなわち、突出部120が、溝部110のパッキング112に接して止水性さえ確保できる程度の位置であれば、その程度の施工誤差まで吸収できることになる。
【0037】
次いで、閉合エレメント1c及びこれに隣接する一般エレメント1bの対向する側板100に形成された連結材挿通孔106に中間部連結棒30の両端部を挿通させ、中間部連結棒30の両端部の雄ネジ部300を閉合エレメント1c及び一般エレメント1bの本体部10の内部に突出させる。さらに、中間部連結棒30の雄ネジ部310に、接続具32と取付け、さらに端部連結棒31の雄ネジ部310を接続する。
中間部連結棒30は、閉合エレメント1cとこれに隣接する一般エレメント1bとの対向する側板100間の距離より大きい長さを有するので、閉合エレメント1c又はこれに隣接する一般エレメント1bの一方の側板100に形成された連結材挿通孔106から対抗する側板100に形成された連結材挿通孔106にまで挿通させることができる。
【0038】
挿通に際しては、例えば、一方から閉合エレメント1cとその両側の一般エレメント1bとの間の土砂を穿孔して貫通孔を設けた後に挿通させるようにしても良い。また、穿孔に際しては事前に閉合エレメント1cとその両側の一般エレメント1bとの間の土砂を地盤改良や凍結などを施し止水性を確保した後に穿孔するようにしても良い。さらに、また、エレメントの側板100に連結材挿通孔106を予め設けないで、土砂の穿孔と同時に側板100も穿孔することで、連結材挿通孔106を設けるようにしても良い。
中間部連結棒30は、連結材挿通孔106に摺動可能に挿通されているので、閉合エレメント1cと隣接する一般エレメント1bとの距離の変化に対応することができる。
【0039】
次に、閉合エレメント1c及びその隣の一般エレメント1bの側板100に設けられた蓋103を開けて出入口104を開放し、閉合エレメント1cとその両側の一般エレメント1bとの間の土砂を撤去する。
すなわち、中間部連結棒30は、閉合エレメント1cとこれに隣接する一般エレメント1bとの対向する側板100間の距離より大きい長さを有するので、閉合エレメント1cとその両側の一般エレメント1bとの間の土砂が残ったまま、側板100に設けられた蓋103を開けて出入口104を開放する前に、中間部連結棒30を挿通させ接続具32を螺合させることができるので、できるだけ隣り合う鋼殻エレメントの間での作業を少なくできるので、安全性と止水性がより高い施工が可能となっている。
【0040】
また、中間部連結棒30は、中間部連結棒30の長手方向を鋼殻エレメントの軸方向に向けた状態で閉合エレメント1c又は一般エレメント1bの本体部10の内部を運搬され、回転させて一方の側板100から対向するエレメントの側板100に挿通されるため、閉合エレメント1c又は一般エレメント1bの本体部10の側壁間の距離より短く設定されている。
【0041】
すべての鋼殻エレメント1の設置が完了したら、鋼殻エレメント1の内部、及び、閉合エレメント1cとその両側の一般エレメント1bとの隙間にコンクリートを充填して外殻躯体を構築する。
すると、連結材3がコンクリートに定着されて、閉合エレメント1cとその隣の一般エレメント1bとを強固に接続する。
さらに、外殻躯体2で囲まれた内側の土砂を撤去した後、外殻躯体2の内周面に仕上げ材を設けて地下構築物とする。
【0042】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について
図8及び
図9と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0043】
第2の実施形態では、
図8に示すように、閉合エレメント1c’の両側に設けられた雄継手12のうち、一側の雄継手12のみが、板状の突出部120の先端に形成された係合部121を備えており、他側の雄継手12には係合部121が形成されていない。
【0044】
従って、閉合エレメント1c’とその一側に隣接する一般エレメント1bとの間は、連結材3で連結する必要がなく、
図9に示すように、閉合エレメント1c’と、他側に隣接する一般エレメント1bとの間のみが、連結材3で連結されている。閉合エレメント1c’が本発明の第二鋼殻エレメントに相当し、両側の一般エレメント1bのうち閉合エレメント1c’と係合しない一方が本発明の第一鋼殻エレメントに、閉合エレメント1c’と係合する他方が本発明の第三鋼殻エレメント相当する。
【0045】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0046】
本実施形態では、鋼殻エレメントの本体部は断面略矩形としてあるが、長方形であっても良い。
【0047】
本実施形態では、雌継手の開口をパッキングで閉鎖しているが、このパッキングを省略して、雌継手と雄継手を係合した後、雌継手の溝部内にコンクリート等を充填することもできる。
【0048】
本実施形態では、基準エレメントの両側に一般エレメントを並設し、隣接する一般エレメントの間に閉合エレメントを設置しているが、これに限られない。
基準エレメントの雌継手と一般エレメントの雄継手との接合においても、本発明の連結材を用いた接合構造を適用しても良い。この場合には、基準エレメントが本発明の第一鋼殻エレメントで一般エレメントが本発明の第二鋼殻エレメントに相当することになる。
また、先行して埋設された一般エレメントの雌継手と後行して埋設された一般エレメントの雄継手との接合においても、本発明の連結材を用いた接合構造を適用しても良い。この場合には、先行して埋設された一般エレメントが本発明の第一鋼殻エレメントに後行して埋設された一般エレメントが本発明の第二鋼殻エレメントに相当することになる。
【0049】
本実施形態では、閉合エレメントとその両側の一般エレメントとの間の土砂が残ったまま、側板に設けられた蓋を開けて出入口を開放する前に、中間部連結棒を挿通させ接続具を螺合させたが、これに限られない。側板に設けられた蓋を開けて出入口を開放して、閉合エレメントとその両側の一般エレメントとの間の土砂を除去した後に、中間部連結棒を挿通させ接続具を螺合させるようにしても良い。この場合でも、中間部連結棒を、閉合エレメントとこれに隣接する一般エレメントとの対向する側板間の距離より大きい長さとしておけば、中間部連結棒の配置の際にその両端を隣り合う鋼殻エレメントの側板間でかけ渡すだけで連結作業もなく、施工性が向上する。
【0050】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼殻エレメント
1a 基準エレメント
1b 一般エレメント
1c,1c’ 閉合エレメント
10 本体部
100 側板
101 頂板
102 底板
103 蓋
104 出入口
105 コーナー補強材
106 連結材挿通孔
11 雌継手
110 溝部
111 係止部
112 パッキング
113 ネジ孔
12 雄継手
120 突出部
121 係合部
2 外殻躯体
3 連結材
30 中間部連結棒
300 雄ネジ部
31 端部連結棒
310 雄ネジ部
32 接続具