(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240423BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240423BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20240423BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/64
B22D17/26 J
B22D17/32 Z
(21)【出願番号】P 2020165158
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】広富 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀臣
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-77297(JP,A)
【文献】特開平6-71714(JP,A)
【文献】特開平9-76277(JP,A)
【文献】特開2009-234144(JP,A)
【文献】特開2010-110948(JP,A)
【文献】特開2015-66880(JP,A)
【文献】特開2018-15936(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064734(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/64
B22D 17/26
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテンに対して可動プラテンを型開閉方向に移動させる移動機構と、
型締力の実績値を検出する型締力検出器と、
成形サイクル中の所定の取得タイミングで検出された前記型締力の実績値に基づいて、前記移動機構を制御する制御装置と、
前記取得タイミングが入力される設定画面を表示する表示装置と、を備え、
前記制御装置は、前記設定画面に入力された前記取得タイミングで検出された前記型締力の前記実績値を取得
し、
前記制御装置は、前記設定画面に入力された前記取得タイミングが適切か否かを、(A)前記取得タイミングにおいて単位時間当たりの前記型締力の前記実績値の変化量が閾値以下であるか否か、(B)前記取得タイミングにおいてショット間での前記型締力の前記実績値の変動量が閾値以下であるか否か、(C)前記取得タイミングにおいて前記型締力の前記実績値と設定値の偏差が閾値以下であるか否か、の少なくとも1つに基づき判断する、射出成形機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記取得タイミングが前記型締力の安定しているタイムゾーン内である場合に、前記取得タイミングが適切であると判断する、請求項
1に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の射出成形機は、固定金型が取付けられる固定プラテンと、可動金型が取付けられる可動プラテンと、固定プラテンと間隔をおいて配置されるトグルサポートと、固定プラテンとトグルサポートを連結するタイバーと、トグルサポートに対して可動プラテンを型開閉方向に移動させるトグル機構と、を有する。固定金型と可動金型とで金型装置が構成される。
【0003】
金型装置の温度変化等によって、金型装置の厚さが変わることがある。金型装置の温度は時間の経過と共に上昇する傾向にあるため、金型装置の厚さは時間の経過と共に厚くなる傾向にある。但し、金型装置の厚さが薄くなることもありうる。金型装置の厚さが変わると、型締力の実績値が変わってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1の射出成形機は、固定プラテンとトグルサポートの間隔を調節する型厚調整機構を有する。型厚調整機構は、タイバーに形成されるねじ軸と、トグルサポートに回転可能に取付けられるねじナットと、ねじ軸に螺合したねじナットを回転させる型厚調整モータとを含む。型厚調整機構は、トグルサポートの位置を調整することで、型厚調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御装置は、成形サイクル中の所定の取得タイミングで検出された型締力の実績値に基づいて、移動機構を制御する。移動機構は、固定プラテンに対して可動プラテンを型開閉方向に移動させる。取得タイミングで検出した検出値は、移動機構の制御に用いる型締力の実績値である。
【0007】
型締力の実績値に基づいて、移動機構の制御が行われ、例えば型厚調整が行われる。型厚調整には、型締力の実績値が用いられる。型締力の実績値と設定値の偏差が許容範囲外である場合に、型厚調整が実施される。一方、上記偏差が許容範囲内である場合、型厚調整は実施されない。
【0008】
従来、型締力の実績値を取得する取得タイミングは、予め制御装置の記憶媒体に記憶されており、変更できなかった。それゆえ、ユーザの利便性が悪かった。例えば、型締工程中に型締力の実績値が変動する場合には、型厚調整が禁止される等の制約が課せられ、ユーザの利便性が悪かった。型厚調整が禁止されるのは、型締工程中に型締力の実績値が変動する場合、型締力の実績値の取得タイミングが悪ければ、型締力の実績値の誤差が大きくなってしまうからである。
【0009】
本発明の一態様は、射出成形機のユーザの利便性を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る射出成形機は、
固定プラテンに対して可動プラテンを型開閉方向に移動させる移動機構と、
型締力の実績値を検出する型締力検出器と、
成形サイクル中の所定の取得タイミングで検出された前記型締力の実績値に基づいて、前記移動機構を制御する制御装置と、
前記取得タイミングが入力される設定画面を表示する表示装置と、を備え、
前記制御装置は、前記設定画面に入力された前記取得タイミングで検出された前記型締力の前記実績値を取得し、
前記制御装置は、前記設定画面に入力された前記取得タイミングが適切か否かを、(A)前記取得タイミングにおいて単位時間当たりの前記型締力の前記実績値の変化量が閾値以下であるか否か、(B)前記取得タイミングにおいてショット間での前記型締力の前記実績値の変動量が閾値以下であるか否か、(C)前記取得タイミングにおいて前記型締力の前記実績値と設定値の偏差が閾値以下であるか否か、の少なくとも1つに基づき判断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、型締力の実績値の取得タイミングを変更でき、射出成形機のユーザの利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t0における金型装置を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t1における金型装置を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t2における金型装置を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t3における金型装置を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t4における金型装置を示す図である。
【
図8】
図8は、型締圧縮の設定画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8の設定画面に従って制御される型締力の推移の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
【
図11】
図11は、型締力の実績値の取得タイミングが入力される設定画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、型締力の実績値の取得タイミングが入力される設定画面の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0014】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0015】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0016】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0017】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0018】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0019】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0020】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0021】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0022】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0023】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0024】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0025】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0026】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0027】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0028】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0029】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0030】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0031】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0032】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0033】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0034】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0035】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0036】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0037】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0038】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0039】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0040】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0041】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0042】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0043】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0044】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0045】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0046】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0047】
型締装置100は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器190を有してもよい。タイバー温調器190は、例えばヒータなどの加熱器を含む。加熱器は、タイバー140を加熱する。なお、タイバー温調器190は、水冷ジャケットなどの冷却器を含んでもよい。冷却器は、タイバー140を冷却する。タイバー温調器190は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0048】
タイバー温調器190は、タイバー140の温度を調節し、タイバー140の長さを調節する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140の熱膨張が大きく、タイバー140の長さが長くなる。タイバー140の長さが変わると、型締時に固定金型810と可動金型820の分割面(いわゆる、パーティング面)に生じる面圧の分布が変わる。その分布が所望の分布になるように、タイバー140の温度が調節される。
【0049】
制御装置700は、複数本のタイバー140に取付けられた複数のタイバー歪検出器141によって、型締時に固定金型810と可動金型820の分割面に生じる面圧の分布を検出する。そして、制御装置700は、面圧の分布が所望の分布になるように、タイバー140の温度を制御する。タイバー温調器190は、1本以上のタイバー140に取付けられ、1本以上のタイバー140の温度を調節する。
【0050】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0051】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0052】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0053】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0054】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0055】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0056】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0057】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0058】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0059】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0060】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0061】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0062】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0063】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0064】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0065】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0066】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0067】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0068】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0069】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0070】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0071】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0072】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0073】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0074】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0075】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0076】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0077】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0078】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0079】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0080】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0081】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0082】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0083】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0084】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0085】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0086】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0087】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0088】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0089】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0090】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0091】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0092】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0093】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0094】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0095】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0096】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0097】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0098】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0099】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0100】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0101】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0102】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0103】
(型締圧縮)
型締装置100の移動機構102は、制御装置700による制御下で、
図3~
図7に示すように可動プラテン120を前進させ、キャビティ空間801に充填される成形材料を圧縮する。型締装置100の動作によって成形材料を圧縮することを、「型締圧縮」と呼ぶ。型締圧縮は、制御装置700による制御下で実施される。
図3は、型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t0における金型装置を示す図である。
図4は、
図3に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t1における金型装置を示す図である。
図5は、
図4に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t2における金型装置を示す図である。
図6は、
図5に続く型締装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t3における金型装置を示す図である。
図7は、
図6に続く金型装置の動作の一例を示す図であって、
図9の時刻t4における金型装置を示す図である。
【0104】
金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。固定金型810は、例えば、固定プラテン110に取付けられる固定取付板811と、型締時にキャビティ空間801を形成する固定型板812と、射出装置300のノズル320が押し付けられるスプルーブッシュ813とを有する。スプルーブッシュ813は、固定型板812の貫通穴に挿通されるブッシュと、固定取付板811の貫通穴に挿入されるフランジとを含む。スプルーブッシュ813には、スプルー802が貫通形成される。スプルー802は、成形材料の流路である。射出装置300のノズル320は、スプルーブッシュ813に押し付けられ、スプルー802に成形材料を射出する。
【0105】
可動金型820は、可動プラテン120に取付けられる可動取付板821と、型締時にキャビティ空間801を形成する可動型板822と、可動型板822を後方から支持する可動受板823と、可動受板823と可動取付板821の間に配置されるスペーサブロック824とを有する。スペーサブロック824は、エジェクタプレート826が型開閉方向に移動する空間を形成する。後側から前側に向けて、可動取付板821と、スペーサブロック824と、可動受板823と、可動型板822とが、この順番で積層される。
【0106】
可動金型820は、成形品を突き出すエジェクタピン825と、エジェクタピン825が取付けられるエジェクタプレート826とを有する。エジェクタピン825は、可動型板822と可動受板823を貫通する貫通穴に挿通される。エジェクタプレート826は、エジェクタピン825のフランジを挟んで押さえる2枚の板826a、826bを含む。
【0107】
可動金型820は、可動型板822によって型開閉方向にガイドされる可動コア827と、可動コア827を型閉方向に付勢するバネ828とを更に含む。バネ828の代わりに、可動コア827を型開閉方向に移動させるシリンダ(不図示)が設けられてもよい。可動コア827は、型締時に固定型板812に接触する。
【0108】
可動コア827は、
図5に示すように、型締時にランナー803を形成する。ランナー803は、スプルー802に続く成形材料の流路であり、ゲート804を介してキャビティ空間801に接続される。成形材料は、スプルー802、ランナー803及びゲート804を通り、キャビティ空間801に充填される。
【0109】
可動金型820は、ランナー803で固化された不要品を突き出すコアピン829を有する。コアピン829は、可動コア827と可動受板823を貫通する貫通穴に挿通される。コアピン829は、エジェクタピン825と同様に、エジェクタプレート826に取付けられ、エジェクタプレート826と共に進退する。
【0110】
金型装置800は、型締時に可動型板822と固定型板812のギャップGを検出するギャップ検出器831を含む。ギャップ検出器831は、例えば可動受板823に取付けられる変位センサ831aと、可動コア827に取付けられるターゲット831bとを含む。
【0111】
変位センサ831aは、ターゲット831b、ひいては可動コア827の変位を検出することで、可動型板822と固定型板812のギャップG(
図4~
図7参照)を検出する。なお、ターゲット831bは、可動コア827の代わりに、固定型板812に取付けられてもよい。また、変位センサ831aとターゲット831bの配置は、逆でもよい。
【0112】
型締装置100の移動機構102は、制御装置700による制御下で、
図3~
図7に示すように可動プラテン120を前進させ、キャビティ空間801に充填された成形材料を圧縮する。先ず、
図3に示すように、型閉工程の開始時には、可動金型820と固定金型810とは離れている。次に、移動機構102が可動プラテン120を前進させると、
図4に示すように、可動コア827が固定型板812に当接し、型閉工程が完了する。
【0113】
次に、移動機構102が可動プラテン120を前進させると、
図5に示すようにバネ828が縮む。バネ828の弾性復元力と、型締力とは釣り合う。型締力が予め設定されたFrst(
図9参照)に達すると、可動プラテン120の前進が停止され、昇圧工程が完了する。昇圧工程の完了時に、ギャップ検出器831によって検出されるギャップGがゼロにリセットされる。ギャップGが負であることはギャップGが狭くなることを意味し、ギャップGが正であることはギャップGが広くなることを意味する。
【0114】
次に、ギャップGが予め設定されたG0(
図8参照)に達するまで、又は型締力が予め設定されたF0(
図9参照)に達するまで、移動機構102が可動プラテン120を後退又は前進させる。G0とF0は1対1で対応し、G0が小さいほどF0が大きい。
【0115】
次に、ギャップGがG0又は型締力がF0の状態で、
図6に示すように、射出装置300のノズル320が、金型装置800の内部に成形材料を射出する。成形材料は、スプルー802、ランナー803及びゲート804を通り、キャビティ空間801に充填される。
【0116】
次に、
図7に示すように、移動機構102が可動プラテン120を前進させ、キャビティ空間801に充填された成形材料を圧縮する。成形材料の圧縮によって、成形材料をキャビティ空間801の全体に行き渡らせることができる。従って、薄型の成形品を精度良く成形できる。また、ギャップGを広げた状態で、成形材料の充填を開始するので、充填圧を低減できる。
【0117】
キャビティ空間801に充填された成形材料は、圧縮された後、冷却され、固化される。その結果、成形品が得られる。成形品は、型開の後、エジェクタピン825によって可動金型820から突き出される。具体的には、エジェクタロッド210が前進してエジェクタプレート826を押し、その結果、エジェクタピン825が前進して成形品を突き出す。その際に、コアピン829も前進して不要品を突き出す。その後、エジェクタロッド210は、元の位置まで後退させられる。
【0118】
図8は、型締圧縮の設定画面の一例を示す図である。
図8に示す設定画面780は、表示装置760によって表示される。設定画面780は、型締圧縮の段階毎に、型締圧縮の設定を入力する入力欄781A~781E、782A~782E、783A~783D、784B~784Eを含む。
図8では、型締圧縮の段階として、初期段階と、第1段階と、第2段階と、第3段階と、第4段階とが用意されている。
【0119】
入力欄781A~781Eには、各段階の制御方式が入力される。制御方式は、位置と型締力のいずれかが選択される。制御方式として位置が選択された場合、ギャップGの検出値が設定値になるように型締装置100の移動機構102のフィードバック制御が実施される。一方、制御方式として型締力が選択された場合、型締力の検出値が設定値になるように型締装置100の移動機構102のフィードバック制御が実施される。
図8では、初期段階の制御方式として位置が入力され、第1段階~第4段階の制御方式として型締力が入力されている。
【0120】
入力欄782A~782Eには、制御方式として選択された物理量の設定値が入力される。制御方式として位置が選択された場合、ギャップGの設定値が入力される。一方、制御方式として型締力が選択された場合、型締力の設定値が入力される。
図8では、初期段階の位置の設定値としてG0が入力され、第1段階の型締力の設定値としてF1が入力され、第2段階の型締力の設定値としてF2が入力され、第3段階の型締力の設定値としてF3が入力され、第4段階の型締力の設定値としてF4が入力されている。
【0121】
入力欄783A~783Dには、各段階の時間の長さが入力される。
図8では、初期段階の時間の長さとしてTh0が入力され、第1段階の時間の長さとしてTh1が入力され、第2段階の時間の長さとしてTh2が入力され、第3段階の時間の長さとしてTh3が入力されている。なお、第4段階の時間の長さは、冷却工程の時間の長さで自動的に決められるので、入力されない。
【0122】
入力欄784B~784Eには、初期段階を除く各段階において、制御方式として選択された物理量の設定値を、1つ前の段階の完了時の値から、入力欄782B~782Eに入力された値まで変更する時間の長さが入力される。
図8では、第1段階において型締力の設定値をF0からF1まで変更する時間の長さとしてTm1が入力され、第2段階において型締力の設定値をF1からF2まで変更する時間の長さとしてTm2が入力され、第3段階において型締力の設定値をF2からF3まで変更する時間の長さとしてTm3が入力され、第4段階において型締力の設定値をF3からF4まで変更する時間の長さとしてTm4が入力される。
【0123】
図9は、
図8の設定画面に従って制御される型締力の推移の一例を示す図である。
図9は、型締力の推移に加えて、スクリュ位置の推移を示す。充填工程では、スクリュ330が充填開始位置からV/P切換位置まで前進させられ、スクリュ位置の値が小さくなる。保圧工程では、成形材料の圧力が設定値になるように、スクリュ330が前進又は後退(
図9では前進)させられる。冷却工程では、計量工程が行われ、スクリュ330が計量完了位置まで後退させられる。計量完了位置と、充填開始位置とは、同じ位置であってもよい。
【0124】
図9に示す時刻t0で、型締装置100の移動機構102が可動プラテン120の前進を開始させ、型閉工程を開始させる。その後、時刻t1で型閉工程が完了する。続いて、昇圧工程が開始され、型締力が予め設定されたFrstに達するまで、移動機構102が可動プラテン120を前進させる。型締力がFrstに達すると、昇圧工程が完了し、ギャップ検出器831によって検出されるギャップGがゼロにリセットされる。
【0125】
次に、型締圧縮の初期段階が開始され、ギャップGが予め設定されたG0になるまで、移動機構102が可動プラテン120を後退又は前進(
図9では後退)させる。ギャップGと型締力とは1対1で対応し、ギャップGがG0になると、型締力がF0になる。ギャップGがG0に達した時点から予め設定された時間が経過し、ギャップGが安定化すると、充填工程が開始される。充填工程は、初期段階の途中で開始される。
【0126】
初期段階の開始からの経過時間がTh0に達すると、第1段階が開始され、型締力の設定値がF0からF1まで連続的又は段階的に変更される。その変更にかかる時間は、Tm1である。型締力の設定値をF1に保持する時間は、Th1(Th1>Tm1)とTm1の差に等しい。
【0127】
第1段階の開始からの経過時間がTh1に達すると、第2段階が開始され、型締力の設定値がF1からF2まで連続的に又は段階的に変更される。その変更にかかる時間は、Tm2である。型締力の設定値をF2に保持する時間は、Th2(Th2>Tm2)とTm2の差に等しい。
【0128】
第2段階の開始からの経過時間がTh2に達すると、第3段階が開始され、型締力の設定値がF2からF3まで連続的に又は段階的に変更される。その変更にかかる時間は、Tm3である。型締力の設定値をF3に保持する時間は、Th3(Th3>Tm3)とTm3の差に等しい。
【0129】
第3段階の開始からの経過時間がTh3に達すると、第4段階が開始され、型締力の設定値がF3からF4まで連続的に又は段階的に変更される。その変更にかかる時間は、Tm4である。その後、冷却工程が完了すると、脱圧工程が開始され、その後、型開工程が行われる。
【0130】
(型締力の実績値の取得タイミング)
金型装置800の温度変化等によって、金型装置800の厚さが変わることがある。金型装置800の温度は時間の経過と共に上昇する傾向にあるため、金型装置800の厚さは時間の経過と共に厚くなる傾向にある。但し、金型装置800の厚さが薄くなることもありうる。金型装置800の厚さが変わると、型締力の実績値が変わってしまう。型締力の実績値は、タイバー歪検出器141等の型締力検出器によって検出する。
【0131】
そこで、射出成形機10の移動機構102は、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔Lを調節する型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転可能に取付けられるねじナット182と、ねじ軸181に螺合したねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを含む。型厚調整機構180は、トグルサポート130の位置を調整することで、型厚調整を行う。
【0132】
制御装置700は、成形サイクル中の所定の取得タイミングで検出された型締力の実績値に基づいて、移動機構102を制御する。取得タイミングで検出した検出値は、移動機構102の制御に用いる型締力の実績値である。型締力の実績値に基づいて、移動機構102の制御が行われ、例えば型厚調整が行われる。型厚調整には、型締力の実績値が用いられる。型締力の実績値と設定値の偏差が許容範囲外である場合に、型厚調整が実施される。一方、上記偏差が許容範囲内である場合、型厚調整は実施されない。
【0133】
従来、型締力の実績値を取得する取得タイミングは、予め制御装置700の記憶媒体702に記憶されており、変更できなかった。それゆえ、ユーザの利便性が悪かった。例えば、型締工程中に型締力の実績値が変動する場合には、型厚調整が禁止される等の制約が課せられ、ユーザの利便性が悪かった。型厚調整が禁止されるのは、型締工程中に型締力の実績値が変動する場合、型締力の実績値の取得タイミングが悪ければ、型締力の実績値の誤差が大きくなってしまうからである。
【0134】
そこで、本実施形態の制御装置700は、ユーザの利便性を高めるべく、各種の機能を有する。
図10は、制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
図10に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0135】
図10に示すように、制御装置700は、例えば、型締力の実績値の取得タイミングが入力される設定画面を表示装置760に表示する設定画面表示部711と、設定画面に入力されたデータを受信する入力データ受信部712と、受信したデータに従って取得タイミングを設定する取得タイミング設定部713と、設定した取得タイミングで検出された型締力の実績値を取得する実績値取得部714とを有する。型締力の実績値の取得タイミングを設定画面で変更できるので、射出成形機のユーザの利便性を向上できる。
【0136】
図11は、型締力の実績値の取得タイミングが入力される設定画面の一例を示す図である。設定画面790は、例えば、基準タイミングが入力される第1入力欄791と、基準タイミングから取得タイミングまでの遅延時間が入力される第2入力欄792とを含む。基準タイミングと遅延時間を入力することで、取得タイミングを特定できる。なお、第2入力欄792には、遅延時間の代わりに、前倒し時間が入力されてもよい。
【0137】
基準タイミングとして予め複数の選択肢が用意され、複数の選択肢から1つの選択肢が第1入力欄791に入力される。選択肢としては、特に限定されないが、例えば、充填工程の開始、保圧工程の開始、保圧工程の完了、型締圧縮の第1段階の開始、昇圧工程の完了、型閉工程の開始などが用意される。
図11では、基準タイミングとして、充填工程の開始である「充填開始」が入力されている。取得タイミングは、型締工程中には限定されず、1成形サイクル中であればよく、例えば型閉工程中、昇圧工程中、脱圧工程中、又は型開工程中であってもよい。
【0138】
また、設定画面790は、型締力の推移を示す波形データ793と、波形データ793の上で取得タイミングを入力するのに用いられるポインタ794とを含んでもよい。波形データ793は、実績値でもよいし、設定値でもよい。ポインタ794は波形データ793の時間軸に沿って移動自在であり、ポインタ794の停止位置で取得タイミングが指定される。
【0139】
ユーザは、操作装置750を用いてポインタ794を移動し、取得タイミングを入力する。ポインタ794で指定された取得タイミングを示すデータが、自動で第1入力欄791及び第2入力欄792に入力されてもよい。ユーザは、波形データ793を眺めながら、取得タイミングを入力できる。
【0140】
なお、設定画面790は、第1入力欄791と第2入力欄792を含み、波形データ793とポインタ794を含まなくてもよい。また、設定画面790は、波形データ793とポインタ794を含み、第1入力欄791と第2入力欄792を含まなくてもよい。いずれにしろ、型締力の実績値の取得タイミングを設定画面で変更できるので、射出成形機のユーザの利便性を向上できる。
【0141】
設定画面790は、入力されたデータを確定する入力確定ボタン795を更に含んでもよい。入力確定ボタン795が操作されると、設定画面790に入力されたデータが入力データ受信部712に送信される。なお、入力確定ボタン795は無くてもよく、その場合、データが入力された時点で、自動的に、データが入力データ受信部712に送信される。
【0142】
制御装置700は、設定画面790に入力された取得タイミングが適切か否かを判断する適否判断部715を更に有してもよい。適否判断部715は、例えば、取得タイミングが型締力の安定しているタイムゾーンZ1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11内である場合に、取得タイミングが適切であると判断する。
【0143】
型締力が安定しているか否かは、(A)単位時間当たりの型締力の実績値の変化量が閾値以下であるか否か、(B)ショット間での型締力の実績値の変動量が閾値以下であるか否か、又は(C)型締力の実績値と設定値の偏差が閾値以下であるか否かで判断される。(A)~(C)から選ばれる複数の判断基準が用いられてもよい。
【0144】
適否判断部715によって設定画面790に入力された取得タイミングが適切か否かを判断することで、型締力の安定しているタイムゾーンZ1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11で型締力の実績値を取得でき、型締力の実績値の誤差を低減できる。
【0145】
制御装置700は、適否判断部715によって取得タイミングが適切であると判断されるまで、取得タイミング設定部713による取得タイミングの設定を保留する設定保留部716を更に有してもよい。取得タイミング設定部713は、適否判断部715によって取得タイミングが適切であると判断されると、取得タイミングを設定する。
【0146】
設定保留部716によって取得タイミングの設定を保留することで、取得タイミングを修正する機会をユーザに与えることができ、適切な取得タイミングで型締力の実績値を取得できる。
【0147】
制御装置700は、表示装置760を制御し、取得タイミングの適切な候補を設定画面790に表示する取得タイミング提案部717をさらに有してもよい。ユーザの入力した取得タイミングが型締力の安定していないタイムゾーンZ2、Z4、Z6、Z8、Z10である場合に、取得タイミング提案部717が取得タイミングの適切な候補を設定画面790に表示する。
【0148】
取得タイミング提案部717は、例えば、取得タイミングの適切な候補を、第1入力欄791と第2入力欄792に表示するか、又は波形データ793の上にポインタ794で表示する。取得タイミング提案部717の表示する候補と、ユーザの入力したデータとは、同時に設定画面790に表示されてもよい。
【0149】
取得タイミングの適切な候補としては、ユーザの入力した取得タイミングから最も近く、且つ型締力の安定しているタイムゾーンが用いられる。あるいは、取得タイミングの適切な候補として、ユーザの入力した取得タイミングに関係なく、型締力の安定しているタイムゾーンのうち、型締力の最も高いタイムゾーンが用いられてもよい。
【0150】
取得タイミング提案部717は、取得タイミングの候補として、型締力の安定している複数のタイムゾーンを設定画面に表示し、ユーザが複数の候補から取得タイミングを選択できるようにしてもよい。その場合、取得タイミング設定部713は、ユーザが選択したタイムゾーンを、取得タイミングとして設定する。
【0151】
取得タイミング提案部717によって取得タイミングの適切な候補を設定画面790に表示することで、取得タイミングの修正方針をユーザに示すことができ、ユーザの利便性をより向上できる。
【0152】
制御装置700は、実績値取得部714によって取得した型締力の実績値を用いて、型厚調整を実行する型厚調整実行部718を有してもよい。型締圧縮が行われる場合、例えば、型締力が最も高くなるタイミングでトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。この場合、型締力が最も高くなるタイミングで型締力の実績値を取得することが、型締力が最も高くなるタイミングでリンク角度θを所定の角度に調節する上で好ましい。
【0153】
制御装置700は、実績値取得部714によって取得した型締力の実績値を用いて、タイバー140の温調を実行する型厚調整タイバー温調実行部719を有してもよい。型締圧縮が行われる場合、例えば、型締力が最も高くなるタイミングで、固定金型810と可動金型820の分割面に生じる面圧の分布が所望の分布になるように、タイバー140の温度が調節される。この場合、型締力が最も高くなるタイミングで型締力の実績値を取得することが、型締力が最も高くなるタイミングで面圧の分布を所望の分布に調節する上で好ましい。
【0154】
型締力の実績値には様々な用途がある。そこで、用途毎に、設定画面790が用意されてもよい。
【0155】
なお、設定画面790が無くてもよく、その場合、取得タイミング設定部713は自動で取得タイミングを設定してもよい。例えば、取得タイミング設定部713は、型締力の安定しているタイムゾーン中に、取得タイミングを設定する。好ましくは、取得タイミング設定部713は、型締力の安定しているタイムゾーンのうち、型締力の最も高いタイムゾーン中に、取得タイミングを設定する。型締力が安定しているか否かは、型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件から判断でき、例えばクロスヘッド151の移動速度若しくは位置、又は型締力の設定から判断できる。例えば、取得タイミング設定部713は、型締力の推移を示すデータを取得し、取得したデータから型締力の安定しているタイムゾーンを選択し、選択したタイムゾーンを取得タイミングとして設定する。型締力の推移を示すデータは、実績値でもよいし、設定値でもよい。
【0156】
本実施形態では型締圧縮が行われる場合について説明したが、本発明は型締圧縮が行われない場合、つまり、型締工程の開始から完了まで可動プラテン120の位置又は型締力が一定に制御される場合にも適用可能である。以下、型締工程の開始から完了まで可動プラテン120の位置が一定に制御される場合について、
図12を参照して説明する。
【0157】
図12は、型締力の実績値の取得タイミングが入力される設定画面の別の一例を示す図である。
図12は、型締力の実績値の推移に加えて、スクリュ位置の実績値の推移と、成形材料の充填圧の実績値の推移とを示す。充填工程では、スクリュ330が充填開始位置からV/P切換位置まで前進させられ、充填圧が上昇する。
【0158】
型締力が小さく、型締時に固定金型810と可動金型820の分割面に生じる面圧が小さい場合、充填圧の上昇によって固定金型810と可動金型820が開くことがある。その開きの分、タイバー140が伸びており、タイバー歪検出器141によって検出される型締力が大きくなることがある。
【0159】
なお、型締力は充填圧の上昇によって固定金型810と可動金型820が開くことで、キャビティ空間801の内部のガスを外部に逃がすことができる。その結果、キャビティ空間801に成形材料を充填しやすくなる。また、ガスの断熱圧縮を抑制でき、発熱を抑制できるので、成形材料の炭化を抑制できる。
【0160】
上記の通り、型締工程の開始から完了まで可動プラテン120の位置が一定に制御される場合であっても、成形材料の充填圧の変動によって、型締力の実績値が変動することがある。
【0161】
そこで、
図12に示す設定画面790も、
図11に示す設定画面790と同様に、第1入力欄791と、第2入力欄792と、波形データ793と、ポインタ794と、入力確定ボタン795とを含む。従って、型締力の実績値の取得タイミングを設定画面790で変更できる。
【0162】
型締力の実績値が型厚調整、又はタイバー温調に用いられる場合、つまり、取得タイミングで検出された型締力の実績値を移動機構102の制御に使用する場合、型締力の実績値の取得タイミングとしては、型締力の安定しているタイムゾーンZ1が好ましい。但し、型締力の実績値の用途は様々であり、その用途によっては、取得タイミングは型締力の安定していないタイムゾーンZ2が好ましいこともある。
【0163】
例えば、型締力の実績値は、取得タイミングで検出された型締力の実績値を移動機構の制御に使用するだけでなく、成形品の品質管理に使用することも可能である。型締力の実績値の用途が成形品の品質管理である場合、型締力の実績値の取得タイミングは型締力の安定していないタイムゾーンZ2であることが好ましい。ショット間での充填圧の違いが型締力の実績値に現れやすく、ショット間での成形品の品質の違いが型締力の実績値に現れやすいからである。
【0164】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0165】
制御装置700は、取得タイミングで検出した型締力の実績値を、記録及び/又は表示してもよい。制御装置700は、取得タイミングで検出した型締力の実績値を、記憶媒体702に記憶する。また、制御装置700は、取得タイミングで検出した型締力の実績値を、表示装置760に表示する。
【符号の説明】
【0166】
10 射出成形機
102 移動機構
110 固定プラテン
120 可動プラテン
141 タイバー歪検出器(型締力検出器)
700 制御装置
760 表示装置