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特許7477427難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240423BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/5357
C08L77/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020179568
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070479
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中西 智哉
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157598(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119303(WO,A1)
【文献】特開2012-67172(JP,A)
【文献】特開2010-120978(JP,A)
【文献】特開2004-35480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂(A成分)および(B)下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)を含む難燃性樹脂組成物であって、A成分100重量部に対してB成分が1~50重量部であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)において、R、R、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。)
【請求項2】
ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)は、熱重量測定(TGA)で求められる5%重量減少温度が370℃以上である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)が、下記式(2)で示される化合物である請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
【化2】
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A成分)が半芳香族ポリアミドである請求項1~3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物を含む難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂は、その優れた諸物性を活かし、機械部品、電気部品、自動車部品等の幅広い分野に利用されている。一方、これらの樹脂は本質的に可燃性である為、上記用途として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に、火炎に対する安全性、すなわち、高度な難燃性が要求される場合が多い。
【0003】
難燃性を発現させる為には、各種方法が存在するが、通常はハロゲン系化合物の難燃剤及びアンチモン化合物等の難燃助剤が添加されている。しかし、この様な難燃剤は、一般に加工時或いは燃焼時に腐食性ガスの発生があるため、成形加工時の金型の保守による工数増加等の問題がある。また将来、製品廃棄時の環境への影響等の懸念もあり、ハロゲン系難燃剤を含有しない難燃性樹脂組成物が望まれている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤を使用しないで難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加することが広く知られている。しかし、充分な難燃性を得る為には、上記金属水和物を多量に添加する必要があり、樹脂本来の特性が失われるという欠点を有していた。
【0005】
別の方法として、有機リン化合物が広く使用され、多くの研究がなされている。かかる化合物の代表として、トリフェニルホスフェートが挙げられる。しかし、トリフェニルホスフェートの添加は組成物の耐熱性を大きく低下させ、かつ、トリフェニルホスフェートは揮発性が高い為に、押出し時や成形時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があった。さらに、この化合物は樹脂を高温に加熱するとその少なくとも一部が揮発、あるいはブリード等によって樹脂中から失われるという問題点を有していた。
【0006】
特に、半芳香族ポリアミド等の耐熱ポリアミドの難燃化においては、特定の有機リン化合物を使用した例も見受けられるが(特許文献1)、耐熱ポリアミドは高融点ゆえに加工温度が高いため、有機リン化合物を使用する場合は上述のガスの発生、ハンドリング性、ブリード等の問題が顕著になり易く、少ない配合量での高度な難燃化が困難であった。耐熱ポリアミドの難燃化にはホスフィン酸金属塩等の無機リン化合物が使用されているが、溶融加工時において、押出機のスクリューやダイス、また成形機のスクリューや金型などの金属部品を激しく摩耗するという金属腐食性の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-67172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に耐熱性の高い熱可塑性樹脂においても高度な難燃化を達成することができる難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を含有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物が高い耐熱性を有し、それを用いることで上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
【0010】
1.(A)熱可塑性樹脂(A成分)および(B)下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)を含む難燃性樹脂組成物であって、A成分100重量部に対してB成分が1~50重量部であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)において、R、R、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。)
【0013】
2.ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)は、熱重量測定(TGA)で求められる5%重量減少温度が370℃以上である、前項1に記載の難燃性樹脂組成物。
3.ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)が、下記式(2)で示される化合物である前項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
4.熱可塑性樹脂(A成分)が半芳香族ポリアミドである前項1~3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
5.前項1~4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の構造を含有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物を用いることで、熱可塑性樹脂、特に耐熱ポリアミドなどの耐熱性が高い樹脂においても高度な難燃性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の難燃性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂(A成分)および(B)上記式(1)で示されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)を含有する。上記A成分は成形用樹脂組成物の主成分であり、B成分は難燃性を付与するための成分である。配合割合としてはA成分100重量部に対して、B成分が1~50重量部であり、1.5~40重量部が好ましく、2~30重量部がより好ましく、3~20重量部がさらに好ましく、4~15重量部が特に好ましく、5~10重量部がもっとも好ましい。
【0019】
本発明のA成分として使用する熱可塑性樹脂としては、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボイミド、液晶樹脂、複合化プラスチックなどが挙げられる。上記樹脂は1種であっても、2種以上が混合されて用いられてもよい。なかでも、ポリアミド、ポリエステルが好ましく、特に半芳香族ポリアミドが好ましい。
【0020】
本発明において、下記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)が難燃剤として使用される。
【0021】
【化3】
【0022】
式(1)において、R、R、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、または炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である。
【0023】
、R、RおよびRは水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基、各種キシリル基、各種クメニル基、ジ-t-ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、プロペニル基、フェニル基、各種トルイル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0024】
式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリール基、炭素数6~20の置換もしくは非置換のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。
【0025】
、R が、水素原子、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、各種プロピルオキシ基、各種ブトキシ基、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、ジ-t-ブチルフェニル基、各種クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、各種キシルオキシ基、各種トルオキシ基、ジ-t-ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基が好ましく、フェニル基、各種キシリル基、各種トルイル基、フェノキシ基、各種キシルオキシ基がより好ましく、フェニル基、各種キシリル基、フェノキシ基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0026】
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物として、具体的には、
3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2-メチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(3-メチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(4-メチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0027】
3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2-sec-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(4-sec-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4-ジ-sec-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-sec-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0028】
3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0029】
3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(4-ビフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(1-ナフチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2-ナフチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(1-アントリル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2-アントリル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(9-アントリル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0030】
3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェノキシホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,6-ジメチルフェノキシ)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0031】
3,9-ビス(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)プロピル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(1-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0032】
3-(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-9-(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-9-(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(1-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(1-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-(1-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-9-(2-((オキソ)ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、
【0033】
3,9-ビス(2-((オキソ)ジメチルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジエチルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジイソプロピルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジメトキシホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジエトキシホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジイソプロピルオキシホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0034】
なかでも、3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェノキシホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(1-メチル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)プロピル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(1-フェニル-2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
【0035】
特に下記式(2)で示されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物が好ましい。
【化4】
【0036】
かかる化合物は、各種の製造法が存在するが、例えば、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて、水、アルコール、カルボン酸などの水酸基含有の化合物を水素導入剤として作用させてペンタエリスリトールジヒドロホスホネートを得て、さらに、ビニルリン化合物を遷移金属触媒下で付加反応させることで得ることができるが、他の方法によって製造されたものであってもよい。
【0037】
本発明のペンタエリスリトールジホスホネート化合物は、熱重量測定(TGA)で求められる5%重量減少温度が370℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましい。5%重量減少温度が370℃以上となる場合は、押出、成形中に熱分解が進行し難く、特に加工温度が高い樹脂に対する難燃剤として使用する場合には、高い難燃性を付与することができる。
【0038】
一般に耐熱性が高いリン系難燃剤として、赤リンやホスフィン酸金属塩などの無機リン
化合物が用いられているが、これらは溶融加工時にホスフィンガスを発生させ、金属部品を激しく摩耗するという金属腐食性の問題がある。本発明のペンタエリスリトールジホスホネート化合物は有機リン化合物であり、金属腐食は発生しない。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)の他に、B成分以外の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂または他の添加剤を、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。
【0040】
B成分以外の難燃剤として、例えば他のリンまたはリン系難燃剤(C成分)を使用することができる。C成分としては、下記(C-1)~(C-7)を例示することができる。(C-1):赤リン
(C-2):下記一般式(C-2)で表されるホスフィン酸金属塩
【化5】
【0041】
(C-3):下記一般式(C-3)で表されるジホスフィン酸金属塩
【化6】
【0042】
(C-4):下記一般式(C-4)で表されるトリアリールホスフェート
【化7】
【0043】
(C-5):下記一般式(C-5)で表される縮合リン酸エステル
【化8】
【0044】
(C-6):下記一般式(C-6)で表される縮合リン酸エステル
【化9】
【0045】
(C-7):下記一般式(C-7)で表される有機リン化合物
【化10】
【0046】
前記式(C-2)および(C-3)中、RおよびRはそれぞれ独立しても同一であってもよく、直鎖または分岐鎖の炭素数1~16のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、好ましくは直鎖または分岐鎖の炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、フェニル基である。RとRは互いに環を形成してもよい。
【0047】
は直鎖または分岐鎖の炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、炭素数6~10のアリールアルキレン基、または炭素数6~10のアルキルアリーレン基である。
【0048】
Mはアルカリ土類金属、アルカリ金属、亜鉛、アルミニウム、鉄、またはホウ素であり、好ましくはカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛であり、より好ましくはアルミニウムである。
【0049】
mは金属イオンの価数を表し、1~3の整数である。aは金属イオンの個数、bはジホスフィン酸イオンの個数を表し、a、bは2×b=m×aの関係式を満たす整数である。
【0050】
前記式(C-4)~(C-6)中Q~Qは、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6~15のアリール基、好ましくは炭素数6~10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1~5個、好ましくは1~3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1~12のアルキル基、好ましくは炭素数1~9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1~12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1~9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1~12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1~9のアルキルチオ基および(iv)Ar-W1-式で表される基(ここでWは-O-、-S-または炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6~15、好ましくは炭素数6~10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0051】
式(C-5)および(C-6)において、ArおよびArは、両者が存在する場合(C-6の場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6~15のアリーレン基、好ましくは炭素数6~10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1~4個、好ましくは1~2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基の如き炭素数1~4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7~20のアラルキル基、(iii)Q-W-式で示される基(ここでWは-O-または-S-を示し、Qは炭素数1~4、好
ましくは炭素数1~3のアルキル基または炭素数6~15、好ましくは6~10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6~15のアリール基が挙げられる。
【0052】
式(C-5)および(C-6)において、nは1~5の整数、好ましくは1~3の整数を示し、特に好ましくは1である。
【0053】
式(C-6)においてZはArおよびArを結合する単結合もしくは基であり、-Ar-Z-Ar-は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-または炭素数1~3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、-O-、またはイソプロピリデンである。
【0054】
前記式(C-7)の芳香族環は1~4個、好ましくは1~3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1~12のアルキル基、好ましくは炭素数1~9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1~12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1~9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1~12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1~9のアルキルチオ基および(iv)Ar-W1-式で表される基(ここでWは-O-、-S-または炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6~15、好ましくは炭素数6~10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0055】
前記(C-1)~(C-7)のリンまたはリン化合物以外のリン化合物であってもB成分と併用することができる。
【0056】
前記(C-1)~(C-7)のリンもしくはリン化合物を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(B成分)100重量部当たり、好ましくは1~100重量部、より好ましくは5~80重量部、特に好ましくは10~60重量部の範囲が適当である。前記(C-1)~(C-7)のリンもしくはリン化合物の内、好ましくは(C-4)~(C-7)のリン化合物である。
【0057】
本発明の樹脂組成物には難燃助剤として、更に下記化学式で示されるビスクミル(D成分)を配合することができる。
【0058】
【化11】
【0059】
このビスクミル化合物の芳香族環は好ましくは1~5個の置換基、より好ましくは1~3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1~12のアルキル基、好ましくは炭素数1~9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1~12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1~9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1~12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1~9の
アルキルチオ基および(iv)Ar-W-式で表される基(ここでWは-O-、-S-または炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6~15、好ましくは炭素数6~10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0060】
このビスクミル(D成分)をポリアミド系樹脂組成物に配合する場合、その割合は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対して好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.02~2重量部、特に好ましくは0.03~1重量部である。このビスクミルを前記割合で配合することによる難燃効果はラジカル発生によるものと推測され、その結果として難燃性のレベルが向上する。
【0061】
本発明の樹脂組成物には、さらに知られた難燃助剤を配合することができる。難燃助剤としては、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。かかるシリコーンオイルとしては、ポリジオルガノシロキサンを骨格とし、好ましくはポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、あるいはそれらの任意の共重合体または混合物であり、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。その粘度は好ましくは0.8~5000センチポイズ(25℃)、より好ましくは10~1000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは50~500センチポイズ(25℃)であり、かかる粘度の範囲のものは難燃性に優れ好ましい。かかるシリコーンオイルの配合量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対して、0.5~10重量部の範囲が好ましい。
【0062】
別の難燃助剤の例としては、窒素含有化合物が挙げられる。窒素含有化合物の中でも、とりわけトリアジン基含有化合物が好ましく、さらに好ましくはメラミン塩系化合物である。
【0063】
さらに本発明の樹脂組成物は種々の難燃性改良剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物に配合することができる難燃性改良剤の例として、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0064】
難燃性改良剤として使用されるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0065】
フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7~1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。
【0066】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1~1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。
【0067】
ここで、フェノール類とはフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-tert-ブチルフェノール、tert-ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o-メトキシフェノール、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0068】
フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200~2,000、さらに好ましくは400~1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
【0069】
難燃性改良剤として使用されるエポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0070】
前記難燃性改良樹脂(熱硬化性樹脂)を配合する場合、その割合は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対して好ましくは0.01~45重量部、より好ましくは0.1~40重量部、特に好ましくは0.5~35重量部である。
【0071】
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに滴下防止剤としてフッ素含有樹脂を配合することができる。フッ素含有樹脂の配合により成形品の難燃性が改良される。殊に成形品の燃焼テストにおける滴下が抑制される。
【0072】
滴下防止剤として使用するフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
【0073】
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において好ましくは100万~1,000万、より好ましくは200万~900万である。
【0074】
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05~1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1~0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1~1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10~500μmのものを用いることができる。
【0075】
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jおよびテフロン(登録商標)30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA-500、ポリフロンF-201LおよびポリフロンD-1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
【0076】
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70~95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において好ましくは1万~100万、より好ましくは1万~80万である。
【0077】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
【0078】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
【0079】
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0080】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン-ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα-オレフィンの共重合体、エチレン-ブチルアクリレート等のエチレン-不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート-ブタジエン等のアクリル酸エステル-ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0081】
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01~1μm、特に0.05~0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05~10μm、特に0.05~1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0082】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40~70重量%、特に50~65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25~60重量%、特に30~45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1~80重量%、特に1~60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0083】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0084】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸-2-エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0085】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
【0086】
フッ素含有樹脂を配合する場合その割合は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対して好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.1~5重量部である。0.01重量部以上では十分な溶融滴下防止性能が得られ易く、10重量部以下では外観不良や分散不良を起こし難くなり、さらに経済的にも有利となるため好ましい。
【0087】
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、ガラス繊維、炭素繊維などの補強繊維、タルク、マイカ、ワラストナイトなどの充填剤、顔料などの着色剤などを添加してもよい。前記添加剤の使用量は、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類に応じて適当に選択できる。
【0088】
本発明の難燃性樹脂組成物は、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【実施例
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
【0090】
(1)5%重量減少温度
島津製作所製DTG-60A(熱重量測定装置)により、昇温速度20℃/minで測定した。
【0091】
(2)難燃性
表2記載の各成分を表2記載の量(重量部)で配合し、15mmΦ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを120℃の熱風乾燥機にて5時間乾燥を行った。該ペレットを射出成形機((株)日本製鋼所、J75EEIII)にて12.5mm×125mm×1.6mm(1/16インチ)の試験片を成形した。
試験片の下端にガスバーナーで10秒間接炎させた後の燃焼時間を測定し、燃焼が30秒以内に止まった場合、さらに10秒間接炎させ、燃焼時間を測定した。本測定を5本実施し、全ての接炎に対する総燃焼時間と最大燃焼時間に関して比較評価を行った。
【0092】
<熱可塑性樹脂(A成分)>
A-1:ナイロン9T((株)クラレ製、商品名Genestar N1000A)
A-2:ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス(株)製、商品名500FP EF202X)
<リン化合物(B成分)>
B-1:3,9-ビス(2-((オキソ)ジフェニルホスフィノ)エチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(片山化学工業(株)製)
B-2:1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(大八化学工業(株)製、商品名PX-200)
B-3:ホスフィン酸塩化合物(クラリアント社製、商品名Exolit OP1240)
各リン化合物の5%重量減少温度を下記表1に記載する。
【0093】
【表1】
【0094】
<実施例1~5、比較例1~7>
表2記載の各成分を表2記載の量(重量部)で配合し、15mmΦ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化し、乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所、J75EEIII)にて成形し評価した。その結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
本発明のペンタエリスリトールジホスホネート化合物を用いることで、燃焼時間が短い、難燃性に優れた樹脂組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。