(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】部品装着誘導装置
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H01R43/00 Z
(21)【出願番号】P 2020190384
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 和城
(72)【発明者】
【氏名】稲田 典夫
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-330640(JP,A)
【文献】特開平06-349399(JP,A)
【文献】特開平02-024914(JP,A)
【文献】特開2000-019214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01B 13/012
H01H 85/24
G01R 31/55
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具板上で組み立てられるワイヤハーネスの複数の端末への部品の装着を誘導する装置であって、
前記治具板上に前記複数の端末にそれぞれ対応して配置され、前記部品が装着された状態の端末が挿入セットされることで、当該端末に装着された部品の正誤をチェックする複数の検査装置と、
前記各端末に装着する部品をそれぞれ収容し、蓋が開くことで、中に収容された部品の取り出しが可能となる蓋付きの部品収納ボックスと、
前記各検査装置に該当端末を挿入セットするように作業者を誘導するため各検査装置に設けられた誘導灯と、
前記各検査装置との間で信号の授受を行うと共に、前記部品収納ボックスの蓋の開閉制御と前記誘導灯の点灯制御とを行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
1つの前記部品の誘導処理において、次に取り付けるべき部品が収容されている前記部品収納ボックスの蓋を開状態にすると共に、当該部品が装着された端末を検査する検査装置に対応する前記誘導灯を点灯させ、当該検査装置により当該部品が正しく装着されていると判定されたとき、前記部品収納ボックスの蓋を開状態から閉状態に戻すと共に、点灯状態にある前記誘導灯を消灯させ、次の誘導処理に進む、
ことを特徴とする部品装着誘導装置。
【請求項2】
前記複数の端末が、ワイヤハーネス上に設けられた分岐点から延びる第1、第2、第3の枝線の端末であり、前記第2の枝線の長さが前記第3の枝線の長さより長く、且つ、該第2、第3の枝線の端末が、前記部品の装着状態において、正規に対応するものと反対の前記検査装置に誤挿入セットが可能である場合に、
前記制御装置は、
前記部品が装着された状態の前記第1の枝線の端末が、対応する検査装置に挿入セットされた状態であることを前提条件として、次の前記第2の枝線の端末への部品の装着、および、前記第3の枝線の端末への部品の装着を誘導処理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の部品装着誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具板上でワイヤハーネスを組み立てる際に利用される部品装着誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車用のワイヤハーネスは、各種オプション要求(ユーザーの希望により、後から追加される装備要求)に対応できるように汎用化されて組み立てられている。例えば、あるオプションが選択された場合は、ワイヤハーネスの該当する枝線の端末のコネクタを相手コネクタに嵌合することで、オプションを含めたワイヤハーネスが形成される。
【0003】
反対に、そのオプションが選択されない場合は、ワイヤハーネスの該当する枝線の端末のコネクタが相手コネクタに嵌合されないことになるので、そのコネクタの保護のために、ダミーコネクタと呼ばれる保護キャップを当該コネクタに装着して、ワイヤハーネスの組み立てを完成させている。
【0004】
したがって、ワイヤハーネスの製造現場では、オプションの選択の有無に対応するため、枝線の端末の数に応じた多種類のダミーコネクタを用意し、ワイヤハーネスの品番に応じて、作業者が選択的にダミーコネクタを取り付けできるようにしている。また、ダミーコネクタには、車体係止用クリップを取り付けることが多くあり、その種類も複数であるため、装着部品の多種類化がより一層増えている。
【0005】
そのため、作業者は、適正なダミーコネクタを間違いなく該当端末のコネクタに装着するために、大きな負担が伴うようになってきている。
【0006】
実際の現場では、ワイヤハーネスを組み立てると、チェッカーフィクスチャ(C/F)と呼ばれる検査装置によって導通検査を行うようになっており、作業者によるダミーコネクタの付け間違いが生じた場合には、チェッカーフィクスチャに嵌らないようになっている。しかし、検査段階で取り付け間違いを発見して付け直しを行うという作業の頻度が増すと、作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
なお、特許文献1には、保護キャップが正しく取り付けられているかどうかを検出する検出手段を設けることが記載されている。しかし、この技術においても、保護キャップの付け間違いを検出した場合に、保護キャップを正しいものに付け替えなければならない点は同じであり、それ以前の課題については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、部品の付け間違いが発生した場合に付け直しを行うことは多大な手間を要する。特に多品番のワイヤハーネスを製造する場合は、部品(ダミーコネクタ)の種類が増えるので、付け間違いが起こる可能性が高まる。そのため、部品(ダミーコネクタ)を取り付ける段階での付け間違いの頻度をできるだけ減らしたいという課題がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品の取り付け間違いを低減することにより、生産効率の低下を防止することのできる、ワイヤハーネスに対する部品装着誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る部品装着誘導装置は、下記(1)~(2)を特徴としている。
(1) 治具板上で組み立てられるワイヤハーネスの複数の端末への部品の装着を誘導する装置であって、
前記治具板上に前記複数の端末にそれぞれ対応して配置され、前記部品が装着された状態の端末が挿入セットされることで、当該端末に装着された部品の正誤をチェックする複数の検査装置と、
前記各端末に装着する部品をそれぞれ収容し、蓋が開くことで、中に収容された部品の取り出しが可能となる蓋付きの部品収納ボックスと、
前記各検査装置に該当端末を挿入セットするように作業者を誘導するため各検査装置に設けられた誘導灯と、
前記各検査装置との間で信号の授受を行うと共に、前記部品収納ボックスの蓋の開閉制御と前記誘導灯の点灯制御とを行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
1つの前記部品の誘導処理において、次に取り付けるべき部品が収容されている前記部品収納ボックスの蓋を開状態にすると共に、当該部品が装着された端末を検査する検査装置に対応する前記誘導灯を点灯させ、当該検査装置により当該部品が正しく装着されていると判定されたとき、前記部品収納ボックスの蓋を開状態から閉状態に戻すと共に、点灯状態にある前記誘導灯を消灯させ、次の誘導処理に進む、
ことを特徴とする部品装着誘導装置。
【0012】
(2) 前記複数の端末が、ワイヤハーネス上に設けられた分岐点から延びる第1、第2、第3の枝線の端末であり、前記第2の枝線の長さが前記第3の枝線の長さより長く、且つ、該第2、第3の枝線の端末が、前記部品の装着状態において、正規に対応するものと反対の前記検査装置に誤挿入セットが可能である場合に、
前記制御装置は、
前記部品が装着された状態の前記第1の枝線の端末が、対応する検査装置に挿入セットされた状態であることを前提条件として、次の前記第2の枝線の端末への部品の装着、および、前記第3の枝線の端末への部品の装着を誘導処理する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の部品装着誘導装置。
【0013】
上記(1)の構成の部品装着誘導装置によれば、次に装着する対象の部品を収納した部品収納ボックスの蓋が開くことで、作業者は間違いなく、その部品収納ボックスから、次に装着すべき適正な部品を取り出して該当端末に装着することができる。また、部品装着後の端末は、誘導灯の点灯している箇所の検査装置に間違いなく挿入セットすることができる。そして、検査結果が「正」のときには、部品収納ボックスの蓋が閉じ、誘導灯が消灯して、次の誘導処理に進む。全部の部品の装着が終了するまで、順次、部品の装着のための誘導処理が行われる。このように、蓋が開いてランプが点灯するという誘導内容に従って作業を順次進めることにより、部品装着段階での付け間違いを無くすことができる。
【0014】
上記(2)の構成の部品装着誘導装置によれば、第1、第2、第3の枝線の端末にそれぞれ部品を装着して検査する際に、検査装置への挿入セット間違いを起こす可能性のある第2、第3の端末への作業の前に、先行して、第1の枝線の端末に部品を装着して該当検査装置に挿入セットする。そして、その第1の枝線の端末の該当検査装置への挿入セットを前提条件として、次の第2の枝線の端末への作業と第3の枝線の端末への作業とを行う。したがって、分岐点の拘束のない状態でのフリーな作業と違って、第1の枝線の端末固定による分岐点の拘束により、それぞれ該当する検査装置への第2、第3の枝線の端末の可動範囲が各枝線の長さで規制された状態となり、その規制された状態での作業となるため、間違った検査装置に第2、第3の枝線の端末を誤挿入セットすることが回避される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤハーネスの各端末に対する部品の取り付け間違いを低減することにより、ワイヤハーネスの生産効率の低下を防止することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る概要説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態における蓋付き部品収納ボックスの側断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態における部品としてのダミーコネクタの概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態における検査としてのチェッカーフィクスチャ(C/F)の概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態におけるワイヤハーネスの部品装着作業手順の説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る制御ブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る概要説明図である。
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネスに対する部品装着誘導装置Mは、治具板5上で組み立てられるワイヤハーネスWの複数の端末コネクタ1A、1B、1Cへのダミーコネクタ(部品)10(10A、10B、10C)の装着を誘導するための装置である。ワイヤハーネスWには、分岐点WXを介して分岐延出する第1、第2、第3の枝線WA、WB、WCが設けられており、各枝線WA、WB、WCの先端に端末コネクタ1A、1B、1Cが取り付けられている。ここでは、第2の枝線WBは第3の枝線WCより長く設定されている。
【0020】
この部品装着誘導装置Mは、複数の端末コネクタ1A、1B、1Cに対応した複数の検査装置30と、複数の蓋付き部品収納ボックス20と、検査装置30ごとに配置された誘導用LED(ランプ)40と、全体を統御する制御装置100と、を備えている。
【0021】
検査装置(C/F)30は、チェッカーフィクスチャと呼ばれるもので、治具板5上に搭載されるワイヤハーネスWの複数の端末コネクタ1A、1B、1Cにそれぞれ対応して配置固定されている。
【0022】
各C/F30は、それぞれの端末コネクタ1A、1B、1Cの位置や仕様に対応して設けられており、ダミーコネクタ10A、10B、10Cが装着された状態の各端末コネクタ1A、1B、1Cが挿入セットされることで、当該端末と装着されたダミーコネクタ10A、10B、10Cの組み合わせの「正」「誤」をチェックする機能を果たす。具体的な構成は後述する。
【0023】
部品収納ボックス20は、容器状のボックス本体21の上面開口を開閉自在な蓋22で塞いだもので、各部品収納ボックス20の中には、それぞれ各端末コネクタ1A、1B、1Cに嵌合装着するダミーコネクタ10A、10B、10Cが収容されている。そして、特定の一つの部品収納ボックス20の蓋22だけが開くことで、中に収容したダミーコネクタ10(10A、10B、10C)の取り出しを、作業者に対して促すようになっている。
【0024】
各部品収納ボックス20は、作業者の手の届く位置に並べて配置されており、例えば、
図2に示すように、蓋22が上に開いた際に、作業者が無理なく中の部品(ダミーコネクタ10)を取り出せるように斜めに設けられ、上面開口が作業者に向いている。この例では、エアシリンダ25のロッド26の下端が蓋22に連結されており、エアシリンダ25に駆動エアを給排することで、ロッド26の上下動により蓋22の開閉ができるようになっている。
【0025】
本実施形態の装着対象部品であるダミーコネクタ10は、端末コネクタ1A、1B、1Cに嵌合装着することで、端末コネクタ1A、1B、1Cを保護する保護キャップ状のものであり、
図3に示すように、端末コネクタ1A、1B、1Cに嵌合する本体11の端子収容室12を防水栓13で塞いで、装着状態において防水性を確保できるようにしている。また、このダミーコネクタ10には、必要に応じて、車体係止用のクリップ15が着脱自在のベース16を介して取り付けられている。
【0026】
図4は、C/F30の概略構成図である。
C/F30は、治具板5(
図1参照)に固定されるベース31上に、固定ホルダ32と可動ホルダ34を設けたものである。固定ホルダ32には、ダミーコネクタ10(10A、10B、10C)を嵌合装着した状態の端末コネクタ1A、1B、1Cを上方から挿入セットするための凹部33が設けられている。可動ホルダ34は、固定ホルダ32の凹部33に挿入セットされたダミーコネクタ10(10A、10B、10C)に対して接近離間できるよう、ベース31上にスライド自在に設けられている。そして、レバー35を倒すことにより、可動ホルダ34を、ダミーコネクタ10(10A、10B、10C)に対して接近させることができるようになっている。なお、レバー35を倒した状態を、C/F30を閉じた状態という。
【0027】
ここでは、検査スイッチ(SW)として、固定ホルダ32の凹部33の底面に、端末コネクタ1A、1B、1Cを検出するピンスイッチ51と、ダミーコネクタ10に取り付けられたクリップ15を検出するピンスイッチ52とが設けられている。また、可動ホルダ34のダミーコネクタ10との対面する位置に、ダミーコネクタ10と接触してC/F30が閉じられたことを検出するピンスイッチ53と、ダミーコネクタ10に防水栓13が適正に取り付けられていることを検出するピンスイッチ54とが設けられている。
【0028】
これらのスイッチ51~54は、ワイヤハーネスWの所定の端末コネクタ1A~1Cに、適正なダミーコネクタ10が正しく装着されているかどうかをチェックする。例えば、ダミーコネクタ10の形状が正規であるか、防水栓13が嵌っているか、適正なクリップ15が取り付けられているか、等を検出する。
【0029】
また、C/F30の可動ホルダ34の上面に、C/F30に対して、ダミーコネクタ10が嵌合装着された端末コネクタ1A、1B、1Cを挿入セットするように作業者を誘導するための誘導用LED(ランプ)40が設けられている。
【0030】
これらの統括制御を行う制御装置100は、
図6に概略ブロック図を示すように、C/F30の各スイッチ51~54との間で信号の授受を行うと共に、蓋開閉コントローラ102を介して部品収納ボックス20の蓋22の開閉制御と誘導用LED40の点灯制御とを行う。そして、制御装置100は、ワイヤハーネスの品番検出手段(例えば、QRコード(登録商標)リーダー)101の信号(読み取り品番)に応じた誘導処理を行う。
【0031】
具体的には、制御装置100は、1つのダミーコネクタ10の装着誘導処理において、次に取り付けるべきダミーコネクタ10が収容されている部品収納ボックス20の蓋22を開状態にして、作業者に、中に収容されているダミーコネクタ10の取り出しを促す。それと共に、そのダミーコネクタ10が装着された端末コネクタ1A~1Cを検査するC/F30に搭載された誘導用LED40を点灯させ、そのC/F30に、ダミーコネクタ10を嵌合装着した端末コネクタ1A~1Cを挿入セットするように誘導する。
【0032】
作業者は、例えば、
図1の(1)の位置のC/F30の誘導用LED40が点灯し、(1)の位置の部品収納ボックス20の蓋22が開いているとき、その部品収納ボックス20からダミーコネクタ10Aを取り出して、誘導用LED40が点灯しているC/F30の近傍の端末コネクタ1Aにダミーコネクタ10Aを嵌合装着する(矢印aの動作)。そして、それを当該C/F30に挿入セットして(矢印bの動作)、レバー35を倒す(矢印cの動作)。そうすると、そのタイミングで制御装置100が、スイッチ51~54の信号により、端末コネクタ1Aとダミーコネクタ10Aの組み合わせの正誤を判定する。
【0033】
C/F30による検査結果が「正」のとき、制御装置100は、部品収納ボックス20の蓋22を開状態から閉状態に戻すと共に、点灯状態にある誘導用LED40を消灯させて、その回の誘導処理を終え、次の誘導処理に進む。一連の誘導処理は、予め決められた順番で実行される。
【0034】
ここでは、
図1及びそれを模式化した
図5、並びに
図7のフローチャートを参照して、具体的な誘導処理の一例を説明する。
【0035】
まず、この誘導処理が実行される場合の前提条件は以下のとおりである。
1.前述した複数の端末コネクタ1A~1Cが、ワイヤハーネスW上に設けられた分岐点WXから延びる第1、第2、第3の枝線WA~WCの端末コネクタであること。
2.第2の枝線WBの長さが、第3の枝線WCの長さより長いこと。
3.第2、第3の枝線WB、WCの端末コネクタ1B、1Cが、ダミーコネクタ10B、10Cの装着状態において、正規に対応するものと反対のC/F30に誤挿入セットが可能であること。
【0036】
例えば、ダミーコネクタ10B、10Cの品番は同じで、クリップ15の品番だけが違うような場合に、第2の枝線WBの端末コネクタ1Bも、第3の枝線WCの端末コネクタ1Cも、第2の端末コネクタ用のC/F30に挿入セットできてしまうことがある。あるいは、第3の枝線WCの端末コネクタ1Cに、第2の枝線WBの端末コネクタ1B用のダミーコネクタ10Bを装着して、第2の端末コネクタ1B用のC/F30に挿入セット(誤挿入)できてしまうことがある。そうした誤挿入を避けるために、次のような処理が実行される。
【0037】
すなわち、制御装置100は、ダミーコネクタ10Aが装着された状態の第1の枝線WAの端末コネクタ1Aが、ダミーコネクタ10Aと共に対応するC/F30に挿入セットされた状態であることを前提条件として、次の第2の枝線WBの端末コネクタ1Bへのダミーコネクタ10Bの装着、および、第3の枝線WCの端末コネクタ1Cへのダミーコネクタ10Cの装着を誘導処理する。
【0038】
つまり、第1の枝線WAの端末コネクタ1Aを最初にC/F30にセットすることを必須の前提条件として、第3の端末コネクタ1Cを誤って第2の端末コネクタ1B用のC/F30にセットできないようにしている。このように誘導処理をすると、第3の枝線WCは短く、第3の端末コネクタ1Cは第2の端末コネクタ1B用のC/F30まで届かないため、第2の端末コネクタ1B用のC/F30に誤挿入されることを防止できる。
【0039】
次に、
図7のフローチャートを参照して処理の流れを説明する。
最初の誘導処理がスタートすると、制御装置100は、ステップS201、S202で、該当する誘導LED40を点灯し、該当する部品収納ボックス20の蓋22を開ける。その誘導内容に従い、作業者は、ステップS203、S204、S205で、ダミーコネクタ10を取り付け、端末コネクタ1A~1CをC/F30にセットし、C/F30のレバー35を倒す。
【0040】
次に、制御装置100は、ステップS206で、今回の処理に、今回の処理対象外の端末が関係するかどうかをチェックする。例えば、今回の処理が、前述した第1の枝線WAの端末コネクタ1Aに対するダミーコネクタ10Aの装着誘導処理の場合は、このステップS206の判断が「NO」となる。そのため、制御装置100は、次のステップS207に進み、C/F30の検出スイッチ51~54の検出結果が全て「OK」ならば、ステップS207の判定が「YES」となり、ステップS208、S209に進み、部品収納ボックス20の蓋22を閉じ、誘導用LED40を消灯して、今回の処理を終える。一方、ステップS207の判定が「NO」の場合は、制御装置100は、判定が「YES」となるまでプログラム上で処理をループし続ける。
【0041】
また、今回の処理が、前述した第2の枝線WBの端末コネクタ1Bに対するダミーコネクタ10Aの装着誘導処理の場合は、ステップS206の判断が「YES」となるため、制御装置100は、ステップS210に進む。つまり、前述した前提条件(第1の枝線WAの端末コネクタ1Aが先にC/F30にセットされていること)が必要な場合には、その旨がプログラムに記載されている。
【0042】
ステップS210では、制御装置100は、関係する対象外の端末(第1の枝線WAの端末コネクタ1A)が該当C/F30にセットされているかどうかを確認する。この場合は、レバーを倒す倒さないにかかわらず、端末コネクタ1AがC/F30にセットされていれば、制御装置100は、確認信号が取れるようになっている。セットされていない場合(「NO」の場合)は、待機状態となる。セットが確認された場合は、制御装置100は、ステップS211に進み、今回の端末コネクタ1B用のC/F30の検出スイッチ51~54の検出結果が全て「OK」ならば、ステップS211の判定が「YES」となって、ステップS208、S209に進む。ステップS211の判定が「NO」の場合は、制御装置100は、判定が「YES」となるまでプログラム上で処理がループし続ける。
【0043】
以上のように、本発明の実施形態に係る部品装着誘導装置によれば、上記のような処理が行われることで、ダミーコネクタ10の付け間違いを無くすことができる。その結果、付け間違いを修正する手間が減り、作業効率が向上する。
【0044】
なお、選択的に取り付ける必要のないダミーコネクタについては、特に蓋付きの部品収納ボックス20に収容しておく必要はなく、例えば蓋が付いていない部品収納ボックスに収容しておき任意に取り付けを進めるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、部品としてダミーコネクタを端末コネクタに装着する場合を説明したが、ダミーコネクタ以外の部品(例えば、バンドクリップ)を取り付ける場合にも使用することができる。その場合は、C/Fの形状をバンドクリップに合うように変更すればよい。
【0046】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る部品装着誘導装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 治具板(5)上で組み立てられるワイヤハーネス(W)の複数の端末(1A~1C)への部品(10,10A~10C)の装着を誘導する装置(M)であって、
前記治具板(5)上に前記複数の端末(1A~1C)にそれぞれ対応して配置され、前記部品(10,10A~10C)が装着された状態の端末が挿入セットされることで、当該端末(1A~1C)に装着された部品(10,10A~10C)の正誤をチェックする複数の検査装置(30)と、
前記各端末(1A~1C)に装着する部品(10,10A~10C)をそれぞれ収容し、蓋(22)が開くことで、中に収容された部品(10,10A~10C)の取り出しが可能となる蓋付きの部品収納ボックス(20)と、
前記各検査装置(30)に該当端末(1A~1C)を挿入セットするように作業者を誘導するため各検査装置(30)に設けられた誘導灯(40)と、
前記各検査装置(30)との間で信号の授受を行うと共に、前記部品収納ボックス(20)の蓋(22)の開閉制御と前記誘導灯(40)の点灯制御とを行う制御装置(100)と、を備え、
前記制御装置(100)は、
1つの前記部品(10,10A~10C)の誘導処理において、次に取り付けるべき部品(10,10A~10C)が収容されている前記部品収納ボックス(20)の蓋(22)を開状態にすると共に、当該部品(10,10A~10C)が装着された端末(1A~1C)を検査する検査装置(30)に対応する前記誘導灯(40)を点灯させ、当該検査装置(30)により当該部品が正しく装着されていると判定されたとき、前記部品収納ボックス(20)の蓋(22)を開状態から閉状態に戻すと共に、点灯状態にある前記誘導灯(40)を消灯させ、次の誘導処理に進む、
ことを特徴とする部品装着誘導装置(M)。
【0047】
[2] 前記複数の端末(1A~1C)が、ワイヤハーネス(W)上に設けられた分岐点(WX)から延びる第1、第2、第3の枝線(WA~WC)の端末であり、前記第2の枝線(WB)の長さが前記第3の枝線(WC)の長さより長く、且つ、該第2、第3の枝線(WB、WC)の端末(1B、1C)が、前記部品(10,10A~10C)の装着状態において、正規に対応するものと反対の前記検査装置(30)に誤挿入セットが可能である場合に、
前記制御装置(100)は、
前記部品(10A)が装着された状態の前記第1の枝線(WA)の端末(1A)が、対応する検査装置(30)に挿入セットされた状態であることを前提条件として、次の前記第2の枝線(WB)の端末(1B)への部品(10B)の装着、および、前記第3の枝線(WC)の端末(1C)への部品(10C)の装着を誘導処理する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の部品装着誘導装置(M)。
【符号の説明】
【0048】
1A~1C 端末コネクタ
5 治具板
10,10A~10C ダミーコネクタ(部品)
20 部品収納ボックス
22 蓋
30 C/F(検査装置)
40 誘導用LED(誘導灯)
100 制御装置
M 部品装着誘導装置
W ワイヤハーネス
WA~WC 枝線
WX 分岐点